2026年2月11日 (水曜日)

ケリーの個性を盤一枚で感じる

昔から、ジャズ・ピアノは、僕の一番得意な楽器。今、レコード・コレクターズ2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいる。ジャズ・ピアノ盤の名盤・好盤の類がズラリ記事に並んでいて、今の耳で、このジャズ・ピアノの名盤・好盤を聴き直すのは、以外と楽しい作業である。

Wynton Kelly『Kelly Blue』(写真左)。Wynton Kelly『Kelly Blue』(写真左)。1959年2月19日と3月10日の録音。ちなみにパーソネルは以下の通り。セクステット編成が2月19日、ピアノ・トリオ編成が3月10日の録音になる。

セクステット編成での2月19日の録音「Kelly Blue」「Keep It Moving」は、Wynton Kelly (p), Nat Adderley (cor), Bobby Jaspar (fl), Benny Golson (ts), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。

トリオ編成での3月10日の録音「Softly, as in a Morning Sunrise」「On Green Dolphin Street」「Willow Weep for Me」「Keep It Moving」「Old Clothes」は、Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。

さて、ウィントン・ケリーは、健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。これは、この盤のトリオ編成の演奏で良く判る。この盤のトリオ演奏でのケリーのピアノは絶好調。ケリーのメイン楽器としてのピアノの個性が手に取るように判る。
 

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一方、ウィントン・ケリーは伴奏上手でも有名で、彼のピアノの個性である「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」が、フロント管をサポートする上で、ボーカルをサポートする上で、効果的に響くのだろう。その「伴奏上手のケリー」は、この盤のセクステット編成の演奏で、じっくり聞けば良く判る。

冒頭のタイトル曲「Kelly Blue」のセクステット演奏の前奏部分が、フロント3管のユニゾン&ハーモニーが、ファンキーだが、どこかダルで、どこか間延びした、ちょっと古い響きがするので、ちょっと聴き始めは戸惑うが、次の有名スタンダード曲「Softly, as in a Morning Sunrise」がトリオ演奏なので、ケリーのピアノが前面に出てくるのでホッとする。後は「On Green Dolphin Street」から「Willow Weep for Me」では、ケリーのスタンダード曲の解釈を感じ取る事ができる。

この盤は、ケリーのピアノを愛でるという切り口では、トリオ編成の演奏をメインに聴くべくアルバムだと思う。伴奏上手なケリーも聴くべき個性だとは思うが、この「伴奏上手」を聴き取るには、ある程度のレベルのステレオ装置が必要となって、気軽にという訳にいかず、なかなか判り難い個性である。

この盤、リヴァーサイドの中でも「ポップでキャッチャーな内容のファンキー・ジャズ盤」として、ジャズ者初心者向けのアルバムとして、よくそのタイトル名が上がる盤。しかし、ファンキー・ジャズとして聴くより、ケリーのピアノの個性がとても良く判る「ウィントン・ケリー入門盤」の一枚だろう。
 
 

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2026年1月13日 (火曜日)

伴奏上手のケリーを聴き直す・3

ウィントン・ケリーは「伴奏上手なピアニスト」という評価をよく目にするのだが、フロント管などの「楽器」のバックでの伴奏上手なケリーの「音の記録」は多々ある、しかし、ケリーの「伴奏上手」は、ボーカルのバックでこそ、最大限に発揮される、とされるのだが、このボーカルのバックに回った、伴奏上手のケリーの「音の記録」については、意外と数が少ない。

Dinah Washington『For Those in Love』(写真左)。1955年3月15–17日の録音。ちなみにパーソネルは、Dinah Washington (vo), Clark Terry (tp), Paul Quinichette (ts), Cecil Payne (bs), Jimmy Cleveland (tb), Wynton Kelly (p), Barry Galbraith (g), Keter Betts (b), Jimmy Cobb (ds)。ダイナ・ワシントンのボーカル盤。バックは、フロント4管、ギター、ピアノ・トリオのリズム・セクションのオクテット編成。

どの曲でも、ウィントン・ケリーのピアノが映える。ダイナの歌唱のバックでは、ダイナの歌唱を引き立てる、ダイナの歌唱に彩りを添えるようなフレーズを弾き回し、ソロになると、ケリーの個性である「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」を惜しげも無く披露する。
 

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ケリーのハッピー・スウィングするピアノが、ダイナのボーカルのスウィング感と共鳴して、ダイナのボーカルを引き立て、スィング感を増幅する。ケリーの「そこはかとなく、マイナーな影を宿しながらの端正で流麗なピアノ」でのイントロは、ダイナの歌唱の雰囲気を的確にセットアップしている。

とりわけ、ダイナの歌唱のバックでは、ダイナの歌唱を引き立てる、ダイナの歌唱に彩りを添えるようなフレーズを弾き回しが見事で、これだけ「ハッピー・スウィングするピアノ」で、ダイナの歌唱に彩りを添えるような、寄り添うような弾き回しをするのだが、決して、ダイナの歌唱の邪魔になっていない、どころか、ダイナの歌唱に溶け込んで、ダイナの歌唱をハ映えに映えさせているところが、見事というか、これぞ「職人芸」である。

ボーカルのバックに回った、伴奏上手のケリーの「音の記録」については、意外と数が少ないのだが、まずは、このダイナ・ワシントンのバックでの、「伴奏上手」の面目躍如的パフォーマンスを聴くのが、まず「いの一番」だろう。特に、この『For Those in Love』でのケリーの「伴奏ピアノ」は絶品。リヴァーサイドから、本格的なリーダー作を出す3年も前のケリーのピアノなんだが、ケリーの個性と伴奏上手が確立していて見事である。
 
 

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2026年1月11日 (日曜日)

伴奏上手のケリーを聴き直す・2

伴奏上手なウィントン・ケリー。彼のピアノの個性である「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」が、フロント管を効果的にサポートし引き立て、メイン・ボーカルに効果的に寄り添い引き立てる。それが、とても良く判るサイドマン盤がこれ。

Miles Davis『Someday My Prince Will Come』(写真左)。1961年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp) Hank Mobley (ts) John Coltrane (ts) Wynton Kelly (p) Paul Chambers (b) Jimmy Cobb (ds) 。マイルスが、その先進的な歩みをふと止めて、当時のジャズの演奏スタイルのど真ん中だった「ハード・バップ」メインで演奏したアルバムである。

マイルスのトランペット、モブレーのテナーの2管フロントに、ケリー=ポルチェン=コブのリズム・セクションがバックに付くクインテット編成。演奏のスタイルは「ハードバップ」がメイン。演奏内容は、バラード演奏をメインにミッド・テンポのリラックスしたクールな演奏がメイン。つまりは「ごまかしが利かない」演奏内容。そんな中で、ここでは、サイドマンで参加している、ウィントン・ケリーのピアノにだけ注目してみる。
 

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「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」が個性のウィントン・ケリーが、そのハッピー・スウィンガーぶりを適度に抑制しつつ、そこはかとなく翳りを宿しつつ、そこはかとなくファンキーなソロを奏でる。ハッピー・スイングの「ハッピー」部分を適度に抑制し「クール」に置き換え、そこはかとなく「ハッピー」、マイナーな影を宿しつつ、クールにスイングするケリーの伴奏ピアノには惚れ惚れ。

ミッド・テンポな演奏に端正で正確、そこはかとなくハッピーでファンキーで、クールにスイングする。このケリーの「スイング感」が、マイルスのミッド・テンポで吹奏されるトランペットにバッチリ合っている。しかも、マイルスのバックに回って弾き回すクールなスイング感溢れるケリーのピアノは、マイルスのクールなトランペットを引き立て、映えに映えさせる。特に、ミュートで耽美的にリリカルにクールに吹き上げるマイルスのバックでの、ケリーの伴奏は絶品。

「ケリーはマッチみたいな奴だ。奴がいなきゃプレイに火が付かない」とマイルスが語っているのは有名なエピソードですが、この盤の演奏を聴いていると、そのマイルスの言葉に至極納得。この盤での「一ランク上をいくハードバップ演奏」を支えているのは、ケリーの「クールにスイングするバッキング」に因るところが大きいと思います。もちろん、マイルスのトランペットが一番恰好良くて、クールでヒップなんですけどね。マイルスとケリーの相性は抜群です。
 
 

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2026年1月10日 (土曜日)

伴奏上手のケリーを聴き直す・1

ウィントン・ケリー(Wynton Kelly)は、リーダー作もさることながら、サイドマンで参加の盤もかなりの数がある。実は、ケリーは伴奏上手で有名で、彼のピアノの個性である「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」が、フロント管をサポートする上で、ボーカルをサポートする上で、効果的に響くのだろう。

Paul Chambers『Go』(写真左)。1959年2月2, 3日、シカゴでの録音。Vee-Jayレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Paul Chambers (b), Freddie Hubbard (tp), Cannonball Adderley (as), Wynton Kelly (p), Philly Joe Jones, Jimmy Cobb (ds)。当時のマイルス・バンドのリズム隊メンバーが集結した、素敵な内容のハードバップ盤。ベースのポール・チェンバースのリーダー作である。

この盤では、参加メンバー全員が好調。特に、アルト・サックスのマクリーンが絶好調というか、ほとんど「躁状態」で、マクリーン節をキュイキュイ吹きまくる。ハバードは、ハイテクニックで吹きまくるが、マクリーンの押されて、ちょっと温和しい。チェンバースのベースは、リーダーだけあって、ブンブン、良い音で鳴っている。フィリージョーのバップ・ドラミングは出力全開。皆、アッパラパーにハードバップをやりまくる。
 

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ここでは、ウィントン・ケリーのピアノのパフォーマンスに注目する。どの曲をとってみても、ケリーのピアノは絶好調。マクリーンの「躁状態」アルト・サックスに煽られたのか、ここでのケリーは、躁状態の「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」を弾きまくる。どの曲でも、端正に淀みなく、ジャジーにブルージーにファンキーにスイングしまくる。

自分のリーダー作より、サイドマンの方が気楽だったのかもしれない。この『Go』でのケリーは、本当に伸び伸びとリラックスして弾いている。恐らく、一番「躁状態」に振れたケリーのパフォーマンスだと思う。それでも、ケリーのピアノの個性であった「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ」のニュアンスを、躁状態の演奏でありながら、しっかりと忍ばせているのだから恐れ入る。やはり、ケリーは、ジャズ・ピアニストとして、超一流であり、プロフェッショナルだった。

ウィントン・ケリーの伴奏上手。サイドマンに回った時のケリーのパフォーマンスは、ケリーのピアノの個性である「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」が映えに映える。しかも、フロントのバックに回れば、フロント楽器、ボーカルを最高に引き立てる。ケリー・マジックとでも形容して良い、ケリーのピアノのバッキング。その一端を、この『Go』の数々の演奏の中でしっかりと聴き取ることが出来る。
 
 

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2026年1月 9日 (金曜日)

ケリー、最後のトリオ作品です。

ウィントン・ケリーは1971年4月12日、てんかん発作のためカナダのトロントで死亡した。39歳という早逝だった。1963年にマイルスの下を離れて以降、十分な仕事を見つけるのに苦労している。そして、最後のトリオは、チェンバースが亡くなる1969年まで活動を続けた。そして、その2年後の39歳の早逝である。

さて、翳りが足りないとは言え、ケリーのピアノの個性は明確に「ある」ので、リラックスして聴くには良いトリオ演奏。ながら聴きにも適している。ただ、ケリーのピアノの個性と特徴を体験するには、ちょっと物足りない、ケリーの最終作である。

Wynton Kelly『Last Trio Session』(写真左)。1968年8月4日の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。ウィントン・ケリーが1968年に録音し、 1988年にデルマーク・レーベルからリリースされたアルバム。タイトル通り、ケリーにとって、最後のピアノ・トリオでのリーダー作である。

ケリーのピアノの個性である「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」から、マイナーな影が希薄になって、ミッド・テンポのご機嫌でハッピー・スインギーなピアノ・パフォーマンスに、ケリーは終始する。翳りのない「旨味」の薄いジャズ・ピアノとでも形容したら良いか。
 

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それでも、ケリーのピアノは、端正でハイテクニック、速いフレーズも破綻無く弾き進めている。それもそのはず、録音当時、ケリーは36歳。ジャズ・ピアニストとしては、若手の位置付けから、ベテランへと深化する入口に立った位の若さである。

その割には、ちょっと老成した様な、落ち着きとご機嫌さである。録音時は1968年。ジャズ人気が下降傾向が明らかになりつつある頃、一般万民向けのイージー・リスニング志向のトリオ演奏に迎合した結果だろうか。

ピアノ・トリオ演奏としては及第点レベル。とにかく、ハッピー・スインギーな演奏に終始していて、曲毎に陰影が不足している分、聴き進めるにつれ、ちょっと飽きてくる。イージー・リスニング志向を明快に打ち出しているのが、当時のヒット・ポップス曲のカヴァー。

ホセ・フェリシアーノの大ヒット作「Light My Fire」、そして、ビートルズの「Yesterday」。ケリーは端正な弾き回しで、イージーリスニング志向にピアノを弾き進める。

さて、これで、当ブログでの「ウィントン・ケリー」のリーダー作の紹介記事は打ち止めでございます。過去の記事は、ブログの右側列下「カテゴリー」(50音順)の「ウィントン・ケリー」をクリックしていただければ見ることができます。
 
 

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2026年1月 8日 (木曜日)

イージーリスニング志向のケリー

さすがに、大手のレコード会社、ヴァーヴからのリリースである。メインのジャズ・バンドは、ケリー=ポルチェン=コブという、元マイルス・バンドの「名うて」のリズム・セクションに、アーバン、ジャジー、漆黒なギタリスト、ケニー・バレルが入るカルテット編成。しかし、そのバックに、こってりとストリングスが入り、砂糖菓子の様に甘いブラス・セクションが入る。明らかに、ジャズ・ファンを通り越して、一般向けのイージーリスニング志向である。

Wynton Kelly『Comin' In the Back Door』(写真左)。1963年5月&11月の録音。ヴァーヴ・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Kenny Burrell (g :tracks 1, 3–6 & 8–11), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。このメイン・バンドのバックに、ブラス・セクションとストリングスが付く。ストリングスのアレンジは、クラウス・オガーマン。

ただ、こってりストリングスと甘いブラス・セクションに我慢しながら、メインのカルテットの演奏だけに集中して耳を傾けると、意外と素性の良い、ハードバップな演奏が繰り広げられているのが判る。主役のウィントン・ケリーのピアノが端正で安定の弾き回しを見せる。そして、彼のピアノの個性である「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」が、しっかりとメインにある。
 

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バレルのアーバン・ジャジーなギターも、ポルチェン=コブのリズム隊も、良い味出している。バレルのギターは、ハッピー・スイングするケリーのピアノに呼応するように、バレルのギターは何時になくスインギー。職人芸である。ポルチェンのベースはしっかり音の底をガッチリ確保し、コブはストリングスとブラスをものともせず、しっかりとジャジーなリズム&ビートを供給する。

確かに、ケリーのピアノは、イージーリスニング志向を意識して、甘めのフレーズ、判り易いシンプル過ぎる弾き回しになっているところはあるが、端正で安定の「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」は健在。この破綻の無い、意外とジャジーな、メインのクインテットの演奏だけを取ってみれば、意外と良いハードバップな演奏になっている。

この盤、マルチ・トラックで保存されているのであれば、ストリングスとブラス・セクションの演奏を取り払って、カルテットだけの演奏だけで、リイシューして欲しいくらい。よって、この盤、ストリングスとブラス・セクションのお陰で、ながら聴きにはまずまずの内容の普通盤止まり。残念である。
 
 

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2025年6月19日 (木曜日)

”at The Half Note” ウエス再び

モダン・ジャズ、クロスオーバー/フュージョン・ジャズの範疇の中の名盤・好盤の中で、ギターに特化して評価できるアルバムをピックアップして紹介している、今月発売のレココレ2025年7月号の特集「ジャズ/フュージョン・ギターの名演・洋楽編」。

その記事の中のアルバムを順に見ていて、これまでに当ブログで以前に記事にしたアルバム達が懐かしく、ついつい、聴き直している。今日は「モダン・ジャズ・ギターのレジェンド」。ギタリストは、ウエス・モンゴメリー。

Wynton Kelly Trio and Wes Montgomery『Smokin' at The Half Note』(写真左)。1965年6, 9月の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Wes Montgomery (g), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。

当時のマイルス・バンドのリズム・セクション(ケリー、ポルチェン、コブ)をバックに、ウエス・モンゴメリーのギターがフロントのカルテット編成。

全曲、ハーフノートでのライヴ録音っぽいアルバム・タイトルだが、実は、1965年6月、ハーフノートで録音されたのは「No Blues」と「If You Could See Me Now」の2曲のみ。残りは、1965年9月22日に、ニュージャージー州のルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで再録音されている。

このアルバムは、ジャズを本格的に聴き始めた、今から46年前に、ウィントン・ケリーのピアノ目当てに入手した。ベースにポール・チェンバース、ドラムにジミー・コブ。このウィントン・ケリー・トリオが目当てでウキウキしながら、LPに針を落とした。
 

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1曲目は「No Blues」。ケリーのピアノが出てくるのを心待ちにしていたら、ウエスのギターが耳に飛び込んできた。なんや、このギターは....!。思わず僕は叫んでいた。骨太で切れ味の良いピッキング。執拗に繰り返されるファンキーでグルーヴィーなリフ。印象的なフレーズを流麗に力強く弾きまくる「オクターブ奏法」の炸裂。ウエスのギターは「かっ飛んでいる」。

2曲目の「If You Could See Me Now」を含め、ライヴのウエスは、スタジオ録音をはるかに凌駕する、凄まじい疾走感と超絶技巧がある。ウェスの真骨頂は、ライヴ録音を経験するのが一番。加えて、演奏表現が実に豊か。「If You Could See Me Now」などは聴いていて常に思う。とにかく美しい。ウェスもケリーも実に美しいソロをとる。本当に美しい。

ケリーのピアノ目当てに入手したアルバムだったが、このウエスの驚異的なパフォーマンスの前では、ケリーのピアノは「影が薄くなる」。ケリーも大健闘している。健康優良児的なハッピー・スインガー、そこはかとなく漂いマイナーな感覚。そんな個性が魅力のケリーのピアノ。ウエスのギターとの相性は抜群。そんな類まれなパフォーマンスがこの盤に記録されている。

この時期のウエスは、鬼気迫るテンション溢れる、超絶技巧な演奏のピークだった。ケリーのファンキーなピアノに触発されたということではない。逆に、ウェスがケリーを触発したといってもいいほどケリーの方が、この時期においては、いつになく元気である。

僕はこのアルバムで、ウエス・モンゴメリーのギターの虜になった。以降、ウエスは僕の大のお気に入りのギタリストの一人である。
 
 

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2025年6月 5日 (木曜日)

早熟 ”ケリー” のデビュー盤

さて、ブログの再開です。5月31日(土)以降、5日ぶりのブログになります。今日はウィントン・ケリーのデビュー盤の記事でスタートです。

Wynton Kelly『Piano Interpretations』(写真左)。1951年7月25日、8月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p: all tracks, celeste: track 17), Oscar Pettiford (b, tracks 1 & 5–10), Franklin Skeete (b, tracks 2–4 & 11–19), Lee Abrams (ds, congas)。

ウィントン・ケリーが19歳でデビューした初ソロアルバム(1951年作品)は、スタンダード中心のピアノ・トリオ盤。全曲2~3分程度と短めで、CDでは19曲。初出は10インチLP、オリジナルは8曲で、タイトルは、Wynton Kelly『New Faces-New Sounds』(ブルーノートの5025番) 。

こういったCDリイシュー時、未発表音源を追加するのが、流行し、今では常態化しているが、アルバム評論をまとめる場合。LPでの初出のイメージで語るのか、CDリイシュー時の未発表音源込みで語るのか、はっきり宣言しないといけない盤も多々あるから困る。
 

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では、この『Piano Interpretations』は、オリジナルは8曲、CDリイシュー時に11曲追加という、強烈なボートラ追加がなされている。が、演奏自体は統一感があり、1951年7月25日、8月1日と2つの録音日に分かれているが、CDリイシュー時の未発表音源込みで語っても、全く問題の無いレベル。

さて、ウィントン・ケリーは、健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。

そんなケリーのピアノの個性が、このデビュー盤で既に確立されている。早熟の天才ジャズ・ピアニストと形容してよいであろう、このデビュー盤の録音時、ウィントン・ケリーは弱冠19歳。どんなスピードの弾き回しも難なくこなす最高のテクニック。バラード曲などでの溢れんばかりの歌心。どう聴いたって、19歳のピアニストのテクニックだとも、感情移入だとも思えない。

このデビュー盤を聴くと、ウィントン・ケリーがいかに早熟の天才だったが判る一方、弱冠19歳にして、ケリーのピアノの個性の確立を確認して、以降の「伸びしろ」が不安になる。そんな期待と不安が入り交じったデビュー盤である。
 
 

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2025年5月30日 (金曜日)

ケリーの熱い「好ライヴ盤」です

春になると「ウィントン・ケリー」が聴きたくなる、と以前書いたが、今年はもう初夏である。それでも、突如「ウィントン・ケリー」が聴きたくなった。手元のディスコグラフィーを見ると、「ウィントン・ケリー」のリーダー作で、普通に手に入る範囲で、当ブログの記事にしていない盤があと5枚。ラストスパートである。

Wynton Kelly featuring Hank Mobley『Interpretations』(写真左)。1967年11月12日、メリーランド州ボルチモアのジャズ・ファン団体「レフト・バンク・ジャズ・ソサエティ」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Hank Mobley (ts), Cecil McBee (b), Jimmy Cobb (ds)。

ウィントン・ケリーのマニア「ケリー者」がこよなく愛する、知る人ぞ知る、ウィントン・ケリー晩期のライヴ・パフォーマンスの記録である。基本は、ウィントン・ケリーのピアノ、セシル・マクビーのベース、ジミー・コブのドラムのピアノ・トリオがメインで、ゲストとして、ハンク・モブレーのテナー・サックスが参加している。

ケリーは、どこまで行っても「ケリー」である。いつの時代も、ケリーのピアノには「ブレ」が無い。健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。

コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。健康優良児的にスイングするところと揺らぎの翳りの対比が「ケリー」の個性。
 

Wynton-kelly-featuring-hank-mobleyinterp

 
そんなケリーの個性が、このライヴ盤の中で弾けている。徹頭徹尾、ハードバップである。モードに傾くことも、フリーに傾くことも無い。ケリー節を振り撒きながら、ファンクネスをそこはかとなく漂わせながら、好調ケリーは弾きまくっている。

モブレーも吹きまくっている。モブレーもこの頃は、ポップに傾いたり、モーダルに走ったり、ジャズの多様化にビビットに反応していたのだが、ここでは、徹頭徹尾、オーソドックスなハードバップである。しかも、バリバリ積極的に、ストレート・アヘッドに吹きまくっている。

これは、バックのリズム隊との相性が良い証拠。モブレーのテナーには、ケリーのピアノが合う。そして、コブのドラムが、そんなモブレーとケリーの「ハードバップ」を的確にフォローし、効果的に鼓舞する。ケリーのピアノの個性とモブレーのテナーの個性を熟知しているコブならではのドラミングは、このライヴ・パフォーマンスの聴きものの一つ。

新進気鋭のマクビーのベースが新しい響きを連れてきている。フロント管のモブレーや、ピアノのケリーは、圧倒的にハードバップなんだが、マクビーのベースは、どこか新主流派のモーダルな響きとフレーズを連れてきている。生粋のハードバップのフロントに、モーダルなベースラインの対比。これがこのライヴ・パフォーマンスの面白さの一つ。1967年のハードバップ最先端である。

ジャズの多様化、モードだのフリーだの全く関係無し。ここでのカルテットの4人は、徹底的にハードバップを演っている。しかも、その時代の最先端のハードバップ。以前から意外と話題に上らないライヴ盤だが、ライヴ特有の熱っぽい雰囲気も芳しい、なかなか熱い内容の、ハードバップな好盤である。
 
 

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2023年4月 1日 (土曜日)

2曲目以降のトリオ演奏が良い

ウィントン・ケリーのディスコグラフィーを確認していて、あれっ、と思った。ケリーのリーダー作と言えば、リヴァーサイドとヴィージェイの2つのレーベルからのリリースと思い込んでいたら、なんと、あの大手のヴァーヴ・レコードからのリリースもあったんですね。

ヴァーヴからのリーダー作は『Comin' in the Back Door』『It's All Right!』『Undiluted』『Smokin' at the Half Note』の4枚なのだが、そう言えば『Comin' in the Back Door』は聴いたことが無い。近々に聴きたいなあ。後は今までに聴いたことはあるんですが、ヴァーヴからのリリースとは印象が薄かったですね。

Wynton Kelly『Undiluted』(写真左)。1965年2月5日の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds), Rudy Stevenson (fl, track 1 only), Unknown musician (perc, track 1 only)。1曲目の「Bobo」だけフルートを入れたカルテット、後は全てピアノ・トリオでの演奏になる。

1曲目の「Bobo」はカリプソ調の演奏で、フルートとパーカッションがカリプソ色を濃厚にしている。そう言えば、ケリーはジャマイカの血を引く家系の生まれ。そういう面で、カリプソには愛着があったのかな。ただ、この曲は如何にも「売らんが為」のポップで軽音楽的な演奏で、この曲だけ聴くと、後の曲は聴く気が起こらないほど。しかし、この盤の本質は2曲目以降にある。
 

Wynton-kellyundiluted

 
2曲目の「Swingin Till the Girls Come Home」以降、素敵なピアノ・トリオのパフォーマンスを愛でることが出来る。ケリーのピアノの個性である「健康優良児的にコロコロと明るく転がるように、独特の「揺らぎ」が翳りとなってスイングする」が、この盤のトリオ演奏で良く判る。

大手のヴァーヴ・レコードからのリリース故、やや商業主義に走った、ポップで軽音楽的なアレンジが、かえって良かったのだろう。ケリーはコロコロと明るく転がるようにピアノを弾くのだが、どこか「翳り」が見え隠れして、それが哀愁感となって我々の耳に響く。そんなケリーのピアノの翳り、哀愁感が、ポップで軽音楽的なアレンジが故に、明確に浮き出てくるようなのだ。

ただ、この翳りや哀愁感は、一般万民向けの大衆音楽としては地味な印象になって損をする。恐らく、このケリーのリーダー作は、セールス的にはあまり良くなかったのでは無いだろうか。でも、ケリーのピアノの個性については、この盤ではしっかりと前面に出ていて、ケリーのピアノの個性を愛でるには好適なリーダー作ではある。

ジャケもやっつけ感満載で、ヴァーヴ・レコードとしては、あまり多くは期待して無かったのかなあ。それでも、このリーダー作の2曲目以降の、ケリーのピアノ・トリオ演奏は実に味わい深い。ベースのポルチェンもドラムのコブも好演。ウィントン・ケリーのファンには聴き逃せない好盤だと思います。
 
 

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