2026年5月30日 (土曜日)

ルーさんのジャズ・ファンク好盤

1960年代後半からドナルドソンが精力的に取り組んでいた、ソウル・ジャズ&ジャズ・ファンク路線のアルバムの中で、最もポップでイージーリスニング志向なアルバム。

後のフュージョン・ジャズのイージーリスニング志向盤と比べても、引けを取らない内容である。あまりに、ポップでイージーリスニング志向なので、硬派な純ジャズ者の方々からは毛嫌いされる傾向にあるが、後年のレア・グルーヴやヒップホップのサンプリング・ソースとしても非常に高く評価されている。

Lou Donaldson『Pretty Things』(写真左)。1970年1月9日、6月12日の録音。ブルーノートの4359番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (varitone-as, vo), Blue Mitchell (tp), Lonnie Smith (org, track 1), Leon Spencer (org, tracks 2–6), Melvin Sparks (g, track 1), Ted Dunbar (g, tracks 2–6), Jimmy Lewis (el-b, track 1), Idris Muhammad (ds)。

冒頭、パティ・ペイジなどの歌唱で有名な往年の名曲「Tennessee Waltz」を、ゆるゆるのブルース・ロック調のキャッチーなビートでのカバーが出てくるので面食らう。あまりに俗っぽくて、あまりにイージーなカバーなので、これはなあ、と思うんだが、じっくり聴いていると、演奏するメンバーが、ハードバップ後期から活躍する一流どころなので、意外と演奏自体は充実している。なので、演奏途中で飽きることは無い。
 

Lou-donaldsonpretty-things

 
逆に、こんなにポピュラーで俗っぽい曲をテーマに据えても、アドリブ部に入ると、上質な純ジャズ調のアドリブが展開されるからたまらない。この「上質な純ジャズ調のアドリブ展開」が、後のフュージョン・ジャズに欠けていくところなので、このルーさんの「テネシー・ワルツ」のカバー演奏は隅に置けない。

5曲目の「Pot Belly」の8分に渡る、イージーリスニング志向のソウル・ジャズ&ジャズ・ファンクな演奏が象徴的。イドリス・ムハマッドによる、タイトで重いドラム・ブレイクから始まり、ヴァリトーン・サックスのソウルフルな音色、ファンキーでパーカッシヴなオルガン、重低音溢れるジャズ・ファンクなエレベのライン。その独特な、ちょっとダルでサイケな部分が見え隠れする音世界は、ジャズ・ファンクの名演のひとつだろう。
 
ラストの「Love」は、ナット・キング・コールなどの歌唱で世界的に大ヒットしたポップ・ナンバー「L-O-V-E」のカバー。ハッピーで爽快なグルーヴ、メインストリーム志向のアドリブ展開、ブルー・ミッチェルのトランペットもブラスの響きがブリブリ輝いている。テッド・ダンバーの「ヘタウマ」ファンキーなエレギが、演奏全体のグルーヴ感を煽っている。

ルーさんのアルト・サックスは全編に渡って絶好調。当時流行していた電子エフェクターを通した「ヴァリトーン(Varitone)」サックスも演奏しており、よりディープで太いファンク・サウンドを響かせていて良好。ポップでイージーリスニング志向なアルバムだが、意外とメインストリームしていて、聴き応えがある。好盤。
 
 

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2026年5月27日 (水曜日)

コルトレーンの様なオーネット

本作は、オーネット・コールマンが、同性代のフリー・ジャズなサックス奏者、デューイ・レッドマンと、ジョン・コルトレーンの伝説のカルテットを支えた鉄壁のリズム隊と組んだ、ユニークな内容のフリー・ジャズ盤である。オーネットのアルト・サックス&トランペットとデューイのテナー・サックスがフロント2管のピアノレス・カルテット。

Ornette Coleman『Love Call』(写真左)。1968年4月29日、5月7日の録音。1971年2月のリリース。ブルーノートの4356番。ちなみにパーソネルは、Ornette Coleman (as, tp), Dewey Redman (ts), Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds)。フリー・ジャズ盤。同時期に録音されたアルバム『New York Is Now!』の姉妹作。

オーネットの個性的でエキセントリックなアルト・サックス&トランペットの演奏と、オーネット旧知のテナーサックス奏者デューイのコルトレーン・ライクでフリーキーなテナー・サックスの絶妙な2管の絡み合いが、この盤の聴きどころ。ピアノレス・カルテットなので、オーネットとデューイのアドリブ展開については、コードの束縛を受けないが故、自由度が高い。
 
しかし、聴いていて面白いのは、オーネットは自分だけに通じる展開で、無手勝流のフレーズを吹きまくるのだが、デューイは、コルトレーンのフリーな吹奏を理路整然と再構築して判り易くして、このオーネットの無手勝流のフレーズに絡みまくる。すると、今度は攻守を交代して、デューイのコルトレーンのフリーな吹奏を理路整然と再構築して判り易くしたテナーに、オーネットがコルトレーン・ライクなフリーな吹奏になって絡みまくるのだ。
 
Ornette-colemanlove-call  
 
この後者の「デューイのコルトレーンのフリーな吹奏を理路整然と再構築して判り易くしたテナーに、オーネットがコルトレーン・ライクなフリーな吹奏になって絡みまくる」ところがユニーク。オーネットが、コルトレーンの様なフリー・インプロビゼーションを展開するのだ。俺だってコルトレーンの様に吹けるんだぜ、と言いたいのか、ついつい、デューイのブロウに引き込まれてしまったのか。
 
フリー・ジャズとしての吹奏という切り口だけで評価すると、明らかにデューイの方がフリー・ジャズらしい。オーネットはあくまでも「オーネット・オンリー」。しかし、当時、演奏トレンドの一部を席巻したフリー・ジャズな吹奏という点では、オーネットは、オーネットの感性で無手勝流に展開するが故、フォロワーがいない分、割を食っている。

オーネットが、いち早くフリー・ジャズを提唱していながら、フリー・ジャズの第一人者にならなかった理由の一つがこの盤に潜んでいる様に思う。デューイのフリーなブロウは判り易いが、オーネットのフリーなブロウは、予測が付かない分、理解難易度が高い。僕は、このアルバムでは、デューイのブロウのバリエーションの豊かさに感心したくらいだ。

この盤では、コルトレーン・フォロワーのレッドマン、ギャリソン、エルヴィンは、オーネットの考えるフリー・ジャズに全く染まらなかった。逆に、コルトレーンにはこういうフリー・ジャズをやって欲しかったという、レッドマン、ギャリソン、エルヴィンらの想いに、オーネットが寄り添い過ぎて、「オーネットが演奏するコルトレーンのフリー・ジャズ」になってしまった。そんな雰囲気がするのがこのアルバムだと僕は解釈している。
 
 

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2026年3月21日 (土曜日)

1966年のマクリーン・その2

録音年月日、録音場所を見ると、昨日、当ブログでご紹介した『Dr. Jackle』と同一日、同一場所のライヴ音源になる。記録を見てみると、『Dr. Jackle』の収録曲からの流れで、この『Tune Up』の収録曲になっているみたい。記録によると、1966年12月18日、米国ボルチモアのジャズ・ソシエティ「Left Bank」でのライヴ音源は全11曲。そのうち、前半5曲が『Dr. Jackle』に、後半6曲が『Tune Up』に収録されている。

Jackie McLean『Tune Up』(写真左)。1966年12月18日、米国ボルチモアのジャズ・ソシエティ「Left Bank」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、SteepleChase Recordsから1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), LaMont Johnson (p), Scotty Holt (b), Billy Higgins (ds)。

つまり、『Dr. Jackle』と、この『Tune Up』を併せて、1966年のジャキー・マクリーンのライヴ・パフォーマンスが体験出来るということ。こちらのパフォーマンスも、マクリーン流のモード・ジャズをガンガンに展開している。限りなくフリーに近いが、しっかりと秩序と統制がとれたモード。マクリーンの考える「限りなくフリーに近いモード」。マクリーンのオリジナルである。
 

Jackie-mcleantune-up

 
雰囲気的には、エリック・ドルフィーのパフォーマンスに類似性がある。ドルフィーは、フレーズが、セロニアス・モンクのピアノの様に「飛んだり跳ねたり」するが、マクリーンは流麗。しかし、二人とも、それぞれなりに「人が吹かないフレーズ」を吹きまくる。決して「フリー」ではない。あくまで、秩序があり、統制がとれた、クールで熱い吹奏である。

バックのリズム・セクションが、オーネットのバンド・メンバーというのも興味深い。オーネットのバンド・メンバーを借りてきているのであれば、オーネット流のフリーな吹奏を踏襲するのでは、と思いきや、マクリーンはそうなならない。あくまで、マクリーン流の「限りなくフリーに近いが、しっかりと秩序と統制がとれたモード」なフレーズを吹きまくる。

こういうところに、マクリーンの矜持を感じる。決して、人後に落ちない、あくまで、その時代その時代のジャズの演奏トレンドをいち早く押さえつつ、オリジナルな自分の個性的な吹奏を追求する。進化するアルト・サックス奏者、マクリーンの面目躍如的なライヴ・パフォーマンスがこの盤にも記録されている。録音が少し悪いが気にならない。マクリーンのパフォーマンスが圧倒的である。
 
 

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2026年3月20日 (金曜日)

1966年のマクリーンのライヴ盤

北欧の老舗ジャズ・レーベルである「スティープルチェイス・レコード」からのリリースなので、ホームグラウンドのコペンハーゲンの「カフェ・モンマルトル」のライヴ録音かとおもいきや、1966年、米国ボルチモアでのライヴ録音である。恐らく、ライヴ音源をスティープルチェイスが買い取って、録音から13年後の1979年にリリースしたものと思われる。

Jackie McLean『Dr. Jackle』(写真左)。1966年12月18日、米国ボルチモアのジャズ・ソシエティ「Left Bank」でのライヴ録音。SteepleChase Recordsから1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), LaMont Johnson (p), Scotty Holt (b), Billy Higgins (ds)。進化するアルト・サックスの雄、ジャキー・マクリーンがフロント1管のワンホーン・カルテットである。

つまり、このライヴ盤では、1960年代半ば辺りの、進化するアルト・サックス奏者、ジャキー・マクリーンのパフォーマンスが聴ける貴重なライヴ音源ではある。1960年代半ば辺りのマクリーンと言えば、ブルーノートでのスタジオ録音『Consequence』(1965年12月3日録音)、『New and Old Gospel』(1967年3月24日録音)の間、確かに、マクリーンのディスコグラフィーからすると、1966年の録音がごっそり抜けている。そういう意味で、このスティープルチェイスのリリースは意味があったことになる。
 

Jackie-mcleandr-jackle

 
ここでのマクリーンは、マクリーン流のモード・ジャズをガンガンに展開している。限りなくフリーに近いが、しっかりと秩序と統制がとれたモード。コルトレーンのようだ、という形容する人がいるが、これは違う。聴いていると、エリック・ドルフィーが浮かぶ。ドルフィーほど、飛んだり跳ねたりしない。マクリーンは流れる様な、人が吹かないフレーズを連発する。この人が吹かないフレーズを吹くところは、ドルフィーとよく似ている様に感じる。

バックのトリオはオーネットのバンド・メンバー。限りなくフリーに近いモーダルな展開にしっかり適応している様は見事。マクリーンのフレーズの個性をしっかり捉えて、マクリーンのフレーズ展開にしっかり追従するリズム&ビートはなかなかのもの。その適応力はレギュラー・バンドと言っても良い位である

マクリーンと言えば、初期はプレスティッジ、1959年からはブルーノートで、このプレスティッジ&ブルーノートーという印象が強いが、1970年代は、スティープルチェイスの時代。北欧コペンハーゲンの「モンマルトル」でのライヴ音源をはじめ、欧州ナイズされた「進化するマクリーン」が聴ける。このライヴ盤は、その前触れ的位置づけの米国録音のライブ音源である。ひたむきなマクリーンが恰好良い。
 
 

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2026年3月19日 (木曜日)

”マクリーンとジェンキンス” です

フレーズの作り方は「うり二つ」。マクリーンは、トレードマークの「ちょっとピッチがフラットした」伸びのある吹奏、ジェンキンスは、端正で明朗で伸びのある吹奏。「ぼうっと聴いているとどちらがどちらかわからなる」との声もあるが、マクリーンのアルト・サックスは、そんな「癖」があるので、暫く聴いていると、聴き分けることが出来る。

Jackie Mclean & John Jenkins『Alto Madness』(写真左)。1957年5月3日の録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean, John Jenkins (as), Wade Legge (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。当時の人気アルト・サックス奏者のジャキー・マクリーンと地味な存在に甘んじていたジョン・ジェンキンスの双頭リーダー&フロントの佳作である。

どちらにしても、素性確かなアルト・サックス奏者の2人である。この盤でのパフォーマンスは、ジャズの楽しさ、ハードバップの楽しさが蔓延している。冒頭のタイトル曲「Alto Madness」、マクリーンのソロから始まって、ジェンキンスが続く。そして、チェイスが繰り広げられ、和やかなエールの交換という感じだろうか。聴いていて楽しくなる。
 

Jackie-mclean-john-jenkinsalto-madness

 
4曲目「Easy Living」は、美しいスタンダード・バラード。マクリーン、ジェンキンスともに、それぞれのアルト・サックスの個性をしっかり踏まえて、吹き上げていく様は感動的。特に、マクリーンはバラードを吹かせたら味わい深い。「ちょっとピッチがフラットした」伸びのある吹奏が、どこか切ない哀愁感を醸し出して、ついつい、しみじみと聴き込んでしまう。

バックのリズム&ビートを司る、ウェイド・レッジのピアノ、ダグ・ワトキンスのベース、アート・テイラーのドラムのリズム・セクションが、フロント2管をしっかり支え、しっかり鼓舞している。特に、早逝してしまった、ワトキンスの野太いソリッドなベースラインには、思わずグッとくる。テイラーの職人芸的ドラミングも聞き物。

まるで兄弟の様なアルト・サックスの、マクリーンとジェンキンス。マクリーンは、この後、数年のうちに個性を増していった一方、ジェンキンスは完全に表舞台から姿を消した。マクリーンは「進化の人」で、ジャズのその時、その時の演奏トレンドに果敢に挑戦し、自家薬籠中のものとした。ジェンキンスはと言えば、その個性「端正で明朗で伸びのある吹奏」では、ジャズ界に生き残れなかった。なんだか、身につまされる想いに駆られる。
 
 

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2026年1月 5日 (月曜日)

”Jazz At Massey Hall”を再聴

初心者向けのジャズ盤紹介の中で、この盤がなぜ、初心者向けの、ジャズ入門者向けのアルバムとして紹介されているのか、理解に苦しむアルバムが何枚かある。どう考えたって、そのアルバムの演奏内容って、ジャズ者中級者レベルでも、ちょっと難しいものが、初心者向けのジャズ盤紹介に上がったりしている。その代表格がこの盤、かな。

『The Quintet: Jazz At Massey Hall』(写真左)。1953年5月15日、カナダ・トロントの「マッセイ・ホール」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dizzy Gillespie (tp, vo), Charlie Parker (as), Bud Powell (p), Charles Mingus (b), Max Roach (ds)。 メンバーそれぞれが「ビ・バップ」の立役者、ビッグ・ネームばかり5人が集結したクインテット編成。

このライヴ録音では、ハプニング続きで、資料を見る限り、通常であれば、ライヴ・パフォーマンスをするような状態ではなかった。そもそも、このライヴが行われた時間帯に、ロッキー・マルシアーノとジャージー・ジョー・ウォルコットのボクシングの試合が同時開催されていたのが元凶で、コンサートを見に来る観客が激減。演奏メンバーへのギャラがまともに払え無い状態。

加えて、パーカーは、質屋に入れてしまった自分の楽器の代わりに、借りてきた白いプラステック製のアルト・サックスで演奏、加えて、契約の関係で、アルバムには「チャーリー・チャン」の変名でクレジットされている。ガレスピーは、ボクシングの試合が気になって、自分のソロが終わると、楽屋に引っ込んでテレビを見ていた。真面目実直なミンガスは、そんなガレスピーに切れて食ってかかったとか。とまあ、まともな演奏ができる状態では無い(笑)。
 

The-quintet-jazz-at-massey-hall
 

しかし、このライヴ音源を聴けば、それぞれが水準以上の演奏をくり広げているのだから、ジャズというのは「良く判らない」(笑)。ボクシングが見たくて、気もそぞろだったガレスピーは溌剌とトランペット・ソロをくり広げ、パーカーは、プラスチック製のアルト・サックスとは思えない、エモーショナルなバップ・フレーズを吹き上げる。問題児2人のフロントは、意外とまずまずのパフォーマンスをくり広げている。が、ベストに近いとは思えないけど。

パウエルのピアノは、彼として水準レベルの演奏に留まる。体調が優れなかったのだろう。覇気が不足している様に感じる。ドラムのマックス・ローチが一番安定していて、ビ・バップ時代で活躍していたと同じレベルのドラミングを披露していて立派。一番、実直真面目だったミンガスのベースは、実際の録音では、録音レベルが低すぎたので、後日、オーヴァーダビングしている。なので、ミンガスのベースのパフォーマンスは割り引いて聴くしかない。

2002年にジャズファクトリーレーベルからリリースされた『 Complete Jazz at Massey Hall』(写真右)には、オーヴァーダビングなしのコンサート全曲が収録されている。これは「ジャズの歴史の記録」としては有用だが、ミンガスのベースが聴き取り難く、ライヴ音源としては、明らかにレベルは落ちる。

メンバーそれぞれが「ビ・バップ」の立役者、ビッグ・ネームばかり5人が集結したライヴ音源なので、ジャズ初心者の方々が「ビ・バップ」時代のビッグネームの演奏を、まとめて手軽に聴けるお徳用盤、という評価もあるが、それは逆だろう。ビッグネームそれぞれのベスト・パフォーマンスを体験・理解してから、このユニークなライヴ盤を聴くべきで、ビ・バップを理解しているからこそ、エピソードも含めて楽しめる、ユニークなライヴ盤である、と僕は解釈している。
 
 

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2025年12月25日 (木曜日)

クリスマス・ジャズの定盤・7

クリスマスである。今年もあと一週間。甘々なラウンジ・ジャズ志向のクリスマス・ソング集は「ノー・サンキュー」なのだが、しっかり探せばあるもので、今回、過去に聴いてはいるが、当ブログに記事として上がっていない、フュージョン・ジャズ系のクリスマス・ソング集も、なかなかの内容のものが出てきたのだから、楽しいことこの上ない。

Grover Washington Jr.『Breath Of Heaven - A Holiday Collection』(写真左)。1997年の作品。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr. (sax), Hiram Bullock (g), Billy Childs (p, key), Joe Locke (key, chimes, vib, marimba), Donald Robinson (p, key,), Adam Holzman (syn), Will Lee, Gerald Veasley (b), Steven Wolf,Victor Lewis (ds), Pablo Batista, Bashiri Johnson (perc), Dawn Andrews (cello, vo), Lisa Fischer (vo)。

グローヴァー・ワシントンJr.の逝去する2年前のクリスマス・ソング集。ジャケットの印象通り、端正で誠実なキッチリとまとまったクリスマス・ソング盤の好盤の一枚。パーソネルを見渡せば、フュージョン・ジャズ畑で活躍する名うてのミュージシャンばかりで、出てくる音は、明快に極上のクロスオーバー&フュージョンの音世界。浮ついたところの無い、誠実で真摯で温かい、極上のクリスマス・ソング集に仕上がっている。
 

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もともと、フュージョン・ジャズにおけるサックスの第一人者、グローヴァー・ワシントンJr.のクリスマス・ソング集である。フュージョン界の「ミスター・ソフト&メロウ」と僕は呼んでいる、フュージョンなサックスを吹かせたら屈指のグローヴァー・ワシントンJr.が奏でるクリスマス・ソングの数々。悪かろうはずが無い。ソフト&メロウ、そしてジェントリーで力強いサックスは聴き応え十分。数々の有名なクリスマス・ソングの美しい旋律が映えに映える。

適度にファンキーで適度にソウルフル。角にならないソウルな雰囲気が実に上品。アレンジが優れていて、グローヴァー・ワシントンJr.のサックスが映えに映え、クリスマス・ソングの旋律の美しさが映えに映える。アルバム全体の熱気は「クール」。このしっかり抑制された中で、ミュージシャンそれぞれ、モテるテクニックの粋を尽くして、有名クリスマス・ソングに相対している。決して退屈しない。派手さは無いが、じっくり聴き込むに値する、クリスマス・ソング集の中でも優秀な部類の秀作アルバム。

派手さがないので、地味&退屈とする向きもあるが、とんでもない。派手さはないが、クリスマスもの特有の敬虔な雰囲気と静謐な落ち着いた雰囲気がこの盤の個性。賑やかでリズミカルで派手な内容のクリスマス・ソング集は他に沢山ある。それより、こういう落ち着いた雰囲気の、ゆったりとリラックスして聴き込めるフュージョン志向のクリスマス・ソング集はそうそうあるものではない。一聴に値するクリスマス・ソング集の秀作である。
 
 

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2025年12月22日 (月曜日)

キャノンボールとウィルソンと...

クリスマス・イヴまであと2日。といって、クリスマス・ジャズのアルバムばかりかけていると、そもそも、クリスマス・ソングって、数が限られているから、アルバム毎に重複する曲も結構出てきて、段々飽きてくる。なので、このクリスマス・シーズンには、クリスマス・ジャズ盤の合間合間に、ジャズ・ボーカル盤を効果的に挟んで、その「飽き」を回避している(笑)。

『Nancy Wilson / Cannonball Adderley』(写真左)。1961年7, 8月の録音。ちなみにパーソネルは、Nancy Wilson (vo, tracks: 1 to 7, CD 1993), Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cor), Joe Zawinul (p), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)。

キャノンボールのバンドにウィルソンのボーカルがゲスト参加した「ボーカルもの」と、キャノンボールの「クインテット演奏」のハイブリッド構成。LP時代の曲の構成は「ボーカルもの」と「クインテット演奏」が互い互いに収録されていたのだが、CDになって「ボーカルもの」が7曲全部、前半に寄せられ、後半に「クインテット演奏」の収録になった。

これが解せない。LP時代の編成の方が、「ボーカルもの」と「クインテット演奏」を互い互いに楽しめたものを、CDの構成では、キャノンボールのバンドにウィルソンのボーカルがゲスト参加した「ボーカルもの」と、キャノンボールの「クインテット演奏」、それぞれのアルバムをカップリングした感じで、「ボーカルもの」と「クインテット演奏」それぞれにおける、キャノンボール・クインテットの演奏の妙が楽しみ難くなっている。
 

Nancy-wilson-cannonball-adderley

 
さて、ナンシー・ウィルソンの歌唱が素晴らしい。ナンシー・ウィルソンは、単なるジャズ歌手という枠に収まることなく、ジャズ、R&B、ポップスを自在に歌いこなす「ソング・スタイリスト」として知られた偉大な歌手である。「どんな曲も自分のものにする」という自負から自らを「ソング・スタイリスト」呼び、端正な唄いっぷりと囁く様な透明感溢れる歌声。大胆にて細心、とにかく聴き応え満点のボーカルである。

そんなウィルソンの迫力あるボーカルを、キャノンボールのクインテットがガッチリと受け止め、ガッチリとサポートし、ガッチリと鼓舞する。キャノンボールのクインテット演奏が迫力満点、ウィルソンの迫力満点のボーカルに負けること無く、さりとて、ウィルソンのボーカルを凌駕すること無く、とてもバランスの良い歌伴をしているところに、この頃のキャノンボール・クインテットの力量、懐の深さを感じる。

その、この頃のキャノンボール・クインテットの力量、懐の深さは、クインテット単体の演奏で十分に感じ取ることが出来る。迫力満点、ハイテクニックで歌心満点のキャノンボールのアルト・サックス、ばりばりバップなナットのトランペット、ファンクネスを撒き散らすザヴィヌルのピアノ、ブンブン唸るジョーンズのペース、端正で柔軟なヘイズのドラム。このキャノンボール・クインテットは無敵である。

キャノンボール・アダレイがナンシー・ウィルソンと出会った時、キャノンボールはウィルソンにキャリア・アップのためにニューヨークへ行くよう勧めている。そして、1959年、ウィルソンはニューヨークへ移り住み、メジャーな存在になっていく。そんな間柄のキャノンボールとウィルソンだからこそ成立した、この魅力的なクインテットとボーカルのコラボレーション。キャピトル・レコードのスマッシュ・ヒットであった。
 
 

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2025年12月 4日 (木曜日)

1970年代西海岸ジャズの名演

ボサノヴァ・ギタリストの第一人者のアルメイダと、西海岸ジャズを代表するサックス奏者のシャンクが中心になって結成された「L.A.フォア」。バックのリズム&ビートを司るリズム隊に、ジャズ・ベースのレジェンド職人、レイ・ブラウン、西海岸ジャズを代表するドラマー、シェリー・マンが控える。テクニック優秀、歌心満載、極上のカルテット演奏を聴くことが出来る。

『The L.A. Four Scores!』(写真左)。1974年7月27日、カルフォルニアの「Concord Boulevard Park」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Bud Shank (sax, fl), Lurindo Almeida (g), Ray Brown (b), Shelly Manne (ds)。西海岸ジャズを代表するサックス奏者、バド・シャンクと、ボサノヴァ・ギタリストの第一人者、ローリンド・アルメイダが中心になって結成されたジャズ・グループ ”L.A.フォア”の、The Concord Summer Festival で行ったライヴ音源。

演奏の雰囲気は、ウエストコースト・ジャズ。アルメイダのギターが入っているので、ブラジリアン・ジャズへの展開もあるので、演奏のアレンジがふるっている。聴き手を十分に意識した「聴かせるジャズ」、いわゆる、ウエストコースト・ジャズの十八番。1970年代の純ジャズ演奏なので、ジャズ・ファンクの演奏もあって、これはこれで、また見事にアレンジされている。
 

The-la-four-scores

 
フロントのアルメイダとシャンクが見事なパフォーマンスを披露するなら、リズム隊のレイ・ブラウンのベースと、シェリー・マンのパフォーマンスもこれまた見事。特級のリズム隊。ベース音がブンブン響き、ドラムがタイトなビートを叩き出す。変幻自在、硬軟自在、緩急自在のリズム&ビートをフロントに供給し、フロントを支え、フロントを鼓舞する。フロントと対等の立場のリズム隊。これが、”L.A.フォア”の最大の魅力。

ドラム・ブレイクではじまるファンキーな冒頭の「Sundancers」、メロウなアルメイダのギターと、シャンクのフルートがクール。2曲目は、お洒落なサンバ・ジャズが小粋な「Carioca Hills」。5曲目は、ボッサ・ビートに見事に乗った、ソフト&メロウなシャンクのフルートが魅力の「Cielo」。そして、ラストは、究極のボサノヴァ・ジャズ「 Manha De Carnaval」(黒いオルフェ ”カーニヴァルの朝”)。

1950年代のウエストコースト・ジャズの良いところをそのままに、1970年代に実現している小粋なカルテット。ダイナミックで繊細、ファンキーでボサノヴァチック、クールで耽美的。ウエストコースト・ジャズの切れ味の良い、聴き応えのあるグルーヴをそのまま、1970年代に連れてきた、そんな ”L.A.フォア”の躍動感溢れるパフォーマンスが、余すところなく記録されているライヴ盤である。
 
 

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2025年11月23日 (日曜日)

21世紀のマリアーノを堪能する

スーッと真っ直ぐな伸びの良い爽やか音。これがチャーリー・マリアーノのアルトサックスの個性である。そして、マリアーノは、ビバップ、ハードバップに留まらず、1960年代後半には、クロスオーバー・ジャズにチャレンジし、良好なパフォーマンスを残している。インド音楽にも興味を示し、マルチなアルト・サックス奏者という印象を残している。

Charlie Mariano『Not Quite a Ballad』(写真左)。2000年7月21日、ドイツのヴュルツブルグでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Alto Saxophone – Charlie Mariano (as), Bernhard Pichl (p), Rudi Engel (b), Bill Elgart (ds), Jonathan Seers (cond)、で、バックにヴュルツブルグ管弦楽団がつく。

もともとは、1998年11月、マリアーノはヴュルツブルク・フィルハーモニー管弦楽団と、長年の悲願であった、クラシックの交響楽団との共演を果たしている。そして、2年後、ヴュルツブルクで2度目のコラボレーションが実現、そのコンサートのライヴ音源が今回のライヴ盤である。そして、このライヴには、マリアーノのバックに「ニュー・オン・ザ・コーナー・トリオ」がリズム・セクションとして参加している。

そして、この「ニュー・オン・ザ・コーナー・トリオ」(Bernhard Pichl (p), Rudi Engel (b), Bill Elgart (ds))は、1994年以来、ヴュルツブルク管弦楽団と定期的にジャズ・プロダクションを共同で企画していて、今回、マリアーノとヴュルツブルク管弦楽団とのコラボレーションの中で、リズム・セクションを担うニュー・オン・ザ・コーナー・トリオが、マリアーノと管弦楽団の橋渡し的役割を果たしている。
 

Charlie-marianonot-quite-a-ballad

 
チャーリー・マリアーノのアルト・サックスの音色って、 とても流麗で渋いっていう印象が強い。 質実剛健、切れ味の良いよく響くブラス。そして、マリアーノのアルト・サックスは、なにより、音が「明るく耽美的」なバップなアルト・サックスという雰囲気で、音が力強く、良く通り、よく唄う。

このライヴ盤では、この明るく耽美的で、音が力強くてよく通り、よく唄う。そんなマリアーノアルト・サックスを、トリオを従えた「ワンホーン・カルテット」として、また、ヴュルツブルグ管弦楽団を従えた「ウィズ・ストリングス」として楽しむ事が出来る。

アルビノーニの「Adagio」では、そんなマリアーノのアルト・サックスが映えに映える。道化師のアリア「Vesti La Giubba」は、マリアーノのリリカルで耽美的でドラマチックな吹きっぷりが見事。インドの作曲家ラママニの「Yagapriya」は、インド音楽の雰囲気が織り込まれたユニークなもの。そしてタイトル曲の「Not Quite a Ballad」では、マリアーノのベスト・パフォーマンスを聴くことが出来る。

このライヴ盤は、マリアーノの「ワンホーン・カルテット」と「ウィズ・ストリングス」の両方を堪能することが出来、マリアーノのアルト・サックスの個性を存分に楽しむことができる好盤。「ニュー・オン・ザ・コーナー・トリオ」のトリオ演奏も、ヴュルツブルグ管弦楽団の演奏もレベルが高く、申し分無い。決して、メジャーな存在ではないが、良いライヴ盤です。
 
 

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