2014年10月19日 (日曜日)

突然に The Band のライブ音源 『LIve in Washington DC 1976』

僕が敬愛して止まない「The Band(ザ・バンド)」。米国ルーツ・ロックの伝説的バンドである。オリジナル・メンバーとしては、1967年から1976年にかけて活動。1983年にロビー・ロバートソン以外のメンバーにて再結成。1999年まで活動した。

ザ・バンドの、ロックをベースに、カントリー・ミュージック、フォーク、R&B、ゴスペルといった米校ルーツ・ミュージックの要素を反映させた音楽性は、まさに米国ルーツ・ロックの源とも言える。オリジナル・メンバーでのバンドの解散が1976年なので、今年で既に38年が経過したことになる。が、今でも色褪せない音世界は、米国ルーツ・ロックの範でもある。

今年、そんなザ・バンドのライブ音源が突如としてリリースされた。The Band『Carter Baron Amphitheater, Washington DC, July 17th 1976』(写真左)である。邦題は『ライヴ・イン・ワシントン1976』。1976年7月17日にワシントンのCarter Barron Amphitheatreで行われたコンサートの模様を収録したものである。

1975年、傑作『Northern Lights - Southern Cross(邦題:南十字星)』をリリースしたザ・バンドではあるが、この傑作はギター担当のロビー・ロバートソンの意向が前面に出たアルバムで、グループ・サウンドとしての「和」は失われていた。それでも、このアルバムは傑作で、1975年、ロックの曲がり角的な時代に、ザ・バンドの存在を再認識させた。

しかし、リリース後のツアーが、リチャード・マニュエルの交通事故による怪我でキャンセルになり、翌1976年6月にツアーを開始したもののメンバー間の関係悪化などで、満足いくツアーが行うことが出来なかった。この不調だったツアーがオリジナル・メンバーでのバンドの解散の直接原因となった。そんな曰く付くのツアーのライブ音源である。
 

The_band_washington_dc_live

 
今まで眠っていたライブ音源である。過度な期待は禁物と思いつつ聴いてみたが、やはり、既にリリースされているライブ音源である『ロック・オブ・エイジス』やボブ・ディランとの『偉大なる復活』での単独のライブパートに比べると、一段落ちる内容。

まず、演奏が荒い。シンプルではありながら、緻密でハイテクニックな演奏がザ・バンドの特徴なのだが、さすがにこのライブ音源の音は荒い。バンド全体のアンサンブルもざらざらしていて、ぴったり息の合ったバンド演奏という感じでは無い。メンバーそれぞれのパフォーマンスは可も無く不可も無くというレベルだろうか。

収録された曲も、前年にリリースされた『Northern Lights - Southern Cross』からの曲は当たり前として、その他の曲は、1968年リリースのファーストアルバム『Music From Big Pink』と1969年リリースのセカンドアルバム『The Band』からの曲がほとんどを占める。

この演奏された曲の選曲からも、当時のザ・バンドの厭世観漂うマンネリ状態、バンドの中の不協和音が見てとれる。ポジティブなクリエイティブ感覚が潰えれば、バンドの活力は萎え、バンドのポテンシャルは急低下する。そんな状態に陥りつつあるザ・バンドの状態が演奏の向こうに見えるようだ。

まあ38年を経てのリリースなので、過度な期待は出来る無い様では無い。まず、ザ・バンドを知らない、若きロック者の方々には、このザ・バンドのライブ盤はお勧め出来ない。ザ・バンドの演奏力がこんなものか、と思われたくないのである。ザ・バンドのマニアにとっても、一度は聴いてみる価値はあるものの、恐らく、愛聴盤にはならないだろうと思われる。

ザ・バンド者にとって、38年経って、なんとも悩ましいライブ音源をリリースしたものである。それでも、ゲットしてしまうんだなあ。ザ・バンドの音楽に惚れた弱みである(笑)。
 
 
 
★震災から3年7ヶ月。決して忘れない。まだ3年7ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2012年7月 8日 (日曜日)

米国・ルーツ・ロックの楽しさ 『Ramble at the Ryman』

今日はジャズの話題をちょっと離れて、70年代ロックの話題を。といっても、正確には70年代ロックで活躍したミュージシャンの近況についてではあるが・・・。

レボン・ヘルム(Levon Helm)が亡くなって、約3ヶ月が経った。レボン・ヘルムと言えば、アメリカン・ルーツ・ロックの伝説的バンド、ザ・バンドのドラマー。オリジナル・メンバー5人中、唯一のアメリカ人。ザ・バンドの解散後もソロで活躍したアメリカン・ルーツ・ロックの古参であった。

1996年に喉頭癌と診断され、一時、歌うことは困難となったが、彼の声は奇跡的な回復を見せ、2007年の『Dirt Farmer』、2009年の『Electric Dirt』は良かった。喉頭癌を克服し、70歳を目前にしながらのこの活躍は、実に頼もしく感じたものだ。しかし、今年の4月19日、ニューヨークにあるメモリアル・スローン・ケタリング癌センターで逝去してしまった。71歳であった。

今日は、久し振りにレボン・ヘルムのライブ盤『Ramble at the Ryman』(写真左)を聴いた。レボン・ヘルムの元気いっぱいな姿が伺える、2008年の「The Ryman Auditorium」で行われたライヴの模様を収めたライブ盤である。

なかなか楽しいライブ盤である。数多くのゲスト・ミュージシャン達が登場し、レボン・ヘルムと共に、その素晴しい歌声を聞かせてくれています。アメリカン・ルーツ・ロックの楽しさ満載の内容。マニアには堪えられないライブ盤です。
 

Ramble_at_the_ryman

 
5曲目の「Evangeline」では、シェリル・クロウが登場、レボン・ヘルムとのデュエットが素敵です。7曲目の「Wide River To Cross」では作者のバディ・ミラーが登場し、その歌声を聞かせてくれます。8曲目の「Deep Elem Blues」では、サム・ブッシュがヴォーカルを披露。そして、ラストの「The Weight」では、ジョン・ハイアットが登場し、その渋いヴォーカルを聞かせます。

本当に良い雰囲気のライブ盤ですね。アメリカン・ルーツ・ロックの楽しさ、渋さ、素朴さがビンビンに伝わってきます。リズム&ビートはアーシー。アメリカン・ルーツ・ロックのショーケースの様なライブです。そんな中で、レボン・ヘルムはとても楽しそうに唄い、ドラムを叩くのだ。う〜ん、良い雰囲気です。

バック・バンドの音もアメリカン・ルーツ・ロックを彷彿とさせるものばかり。特に、サム・ブッシュのマンドリンの音色は堪りませんね〜。アメリカン・ルーツ・ミュージック好きには堪らないマンドリンの音。これだけでももうコロッといってしまいます(笑)。そして、このライブ盤、ホーン・セクションが大健闘しています。アメリカン・ルーツ・ロックにホーン・セクションは必須です。

レボン・ヘルム亡き今、ラストの「The Weight」は泣ける。ステージ上の全員が本当に楽しそうに唄い、レボン・ヘルムも負けずに楽しそうに唄い、叩く。アメリカン・ルーツ・ロックの名曲のひとつ。レボン・ヘルムの熱唱が泣ける。惜しいミュージシャンを亡くした。もう、これだけの、絵に描いた様なアメリカン・ルーツ・ロックは聴くことは出来ないのかもしれない。
 
 
 
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2012年4月22日 (日曜日)

追悼・リヴォン・ヘルム 『Levon Helm & the RCO All-Stars』

リヴォン・ヘルムが亡くなった。ザ・バンドのドラマー&ボーカル担当。アメリカン・ルーツ・ロックの優れた古参であった。

1996年に喉頭癌と診断され、一時、歌うことは困難となったが、彼の声は奇跡的な回復を見せ、2007年にソロ・アルバム『Dirt Farmer』で復活、そして、なんとこの『Dirt Farmer』は、2008年の第50回グラミー賞に於いて、Best Traditional Folk Albumを受賞している。

その後、快進撃は続く。2年後の2010年には第52回グラミー賞に於いて、『Dirt Farmer』の続編とも言える『Electric Dirt』でBest Americana Albumを受賞した。喉頭癌を克服し、70歳を目前にしながらのこの活躍は、実に頼もしく感じたものだ。

なんせ、僕の大のお気に入りロック・バンドであるザ・バンドのドラマー&ボーカルである。彼の活躍に刺激されて、ちょくちょく、彼のソロ・アルバムを聴き返していた矢先の出来事であった。2012年4月19日、ニューヨークにあるメモリアル・スローン・ケタリング癌センターで逝去との報に接する。71歳没。落胆の極みである。

僕の世代は、ザ・バンドについては、ギリギリでリアルタイムでの体験であった。ザ・バンドがオリジナル・メンバーでの活動を停止したのが1976年。僕はザ・バンドと出会った年にザ・バンドは活動を停止したことになる。それはさておき、リヴォン・ヘルムは、その翌年、最初のソロ・アルバムをリリースしている。

リヴォン・ヘルム追悼として、今日は、この彼のファースト・ソロ・アルバムである『Levon Helm & the RCO All-Stars』(写真左)を流している。懐かしいアルバムである。僕はこのアルバムについては、リリースとほぼ同時に手に入れた。しかし、このアルバムの渋い内容に戸惑い、ちょっと落胆して、何度か聴いたが暫くお蔵入りになってしまった。

なんと「おこちゃま」なことであるか(笑)。当時、まだ高校時代から浪人時代。この渋さはちょっと僕には早かった(笑)。この渋さが癖になり始めたのが、40歳を過ぎてから。このアメリカン・ルーツ・ロックが湛える「ブルージーな渋さとラフなノリ」をしっかりと感じるには、どうも、ある程度の「年齢」が必要なようだ。

さて、この『Levon Helm & the RCO All-Stars』は、アメリカン・ルーツ・ロックの傑作である。今から振り返ると、メンバーの顔ぶれが凄い。当時の米国を代表するメンツが「キラ星」の如く並んでいる。
 

Levon_rco_allstars

 
MG'sのSteve Cropper、Donald Duck Dann、Booker T Jones、Doctor John、Paul Butterfield、Robbie Robertson、Garth Hudson等々。リヴォン・ヘルムと同じ、米国南部育ちの腕利きミュージシャン達を中心に起用されている。

しかも、この腕利きミュージシャン達が効果的に配置されていて、ホーンセクション+ダブルリードギター+ダブルキーボードの分厚いサウンドが、リヴォン・ヘルムの小気味よいドラミングに乗って、うねるようにアメリカン・ルーツ・ロックの音世界が広がっていく。これだけの腕利きミュージシャン達を集めて、これだけのリーダーシップを発揮するリヴォン・ヘルムは只者ではない。素晴らしいプロデュース力である。

当時流行った「レイド・バック」な雰囲気を色濃く漂わせて、このアルバムに収録された演奏のどれもが、アメリカン・ルーツ・ロックのお手本的な「ブルージーな渋さとラフなノリ」を湛えており、これがまあ、聴いていて心地良いこと、心地良いこと。アメリカン・ルーツ・ロック好きにはたまらない「レイド・バック」度である。

今の耳で聴いても、実に良いですね〜。今のアメリカン・ルーツ・ロックの優れたアルバムと比べても、決してひけを取らない、このアルバムは、かなり上位に君臨するレベルです。とにかく「渋い」。それでいて、決して緩まない。拡散すること無く、リヴォン・ヘルムのリーダーシップ溢れるドラミングがしっかりと統率し、しっかりとしたグループ・サウンズとして充実している。

ちなみに、RCOとはリヴォン・ヘルムが所有していた、ウッドストックのスタジオの名前。アルバム・ジャケットに描かれている家がRCOスタジオです。

きっと、あの世にも、このRCOが建っていて、リヴォン・ヘルムはこの世の時と同じように、歌い始めているのではないでしょうか。ザ・バンドの先に鬼籍に入ったメンバー、リチャード・マニュアルとリック・ダンゴとも再会しているんじゃないかなあ。

リヴォン・ヘルムが亡くなった。喉頭癌を克服して復活した時は嬉しかったなあ。もう再発はないのでは、と期待もした。しかし、残念な結果になってしまった。でも、リヴォン・ヘルムの残してくれたアメリカン・ルーツ・ロックの傑作の数々は、これからもいつでもどこでも、再生環境さえあれば聴くことができる。いつまでも悲しんでいても仕方が無い。

リヴォン・ヘルムのアメリカン・ルーツ・ロックの功績を称えつつ、愛でつつ、彼の冥福を祈りたい。
 
 
 
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2011年9月11日 (日曜日)

ザ・バンドの原点を再確認する 『Moondog Matinee』

ライブ盤『ロック・オブ・エイジス』のリリースで、バンドのキャリア第1期の総括をすませた、我らが「The Band」。

総括を済ませて、一服している間に、ロビー・ロバートソンのソング・ライティングのモチベーションが低下。有名になった分、次なる新作の期待に高まるプレッシャー。そんな中、ザ・バンドは、再び、第1期の総括として、全曲ロックンロールやR&Bのオールディーズの名曲に彩られたカバー集を選択した。

1973年発表作品。チャック・ベリー、エリヴィス・プレスリー、ファッツ・ドミノなどの名曲カヴァーで構成されたアルバム『Moondog Matinee』(写真)。

リーダーのロビー・ロバートソンいわく、「このアルバムは単なるオールディーズのカバー集ではなく、オリジナル曲が充分表現できなかった部分を補おうとしたものだ」。これはちょっと格好つけ過ぎかと思うが、この『Moondog Matinee』は、形こそカバー集ではあるが、ザ・バンドの原点を再確認出来る、ザ・バンドとしての重要な位置付けの作品であり、傑作である。

このアルバムでは、ザ・バンドは、オリジナル曲それぞれに、ザ・バンド風の解釈とアレンジを施すことによって、オリジナルな演奏とは異なる「音の魅力」を引き出し、単なるカバー集ではない、ザ・バンドの解釈とアレンジを前面に押し出した「オリジナル越えのカバー集」を狙ったということだろう。
 

Moondog_matinee

 
この目論見は成功している。カバーした曲は、どれもが「ザ・ ホークス」と名乗っていた、ロニー・ホーキンスのバック・バンド時代から馴れ親しみ、曲の魅力を熟知したR&B、オールティズ、ロックンロールである。ザ・バンドならではの解釈とアレンジは秀逸で、アルバム収録における音作りにも様々な手を加えており、メンバーそれぞれが活き活きと演奏している様が感じ取れる。

マニュエル節炸裂の 「Share Your Love」「Great Pretender」。ダンコの名唱中の名唱「Change Is Gonna Come」。レヴォンの唄うロックンロール・ナンバーも味があって聴き応え十分。こうやって並べてみると、ザ・バンドで優れたボーカリストが3人もいたんやなあ〜、と改めて感心する。

R&B、オールティズ、ロックンロールの名曲をカバーしているが、全然黒っぽさがない。むしろフォーキーでサラリとしている。当時、スワンプ・ロック系の演奏は「米国南部のルーツ音楽的なねちっこい音」を目指していたんですが、ザ・バンドは、意外とあっさりしていて、乾いた音なんですね。この個性が、当時、クラプトンやハリスンらがはまった「スワンプ」とは一線を画するところで、ザ・バンドが「米国ルーツ・ロックの祖のひとつ」と位置づけられる所以かと思います。

アルバム・ジャケットもなかなか凝っていて、もとのスリーヴは黒地に文字が入っているだけのシンプルかつ地味なものですが(写真右)、そのスリーヴに、オールディーズ時代の街の風景とバンドのメンバーが要所要所に配置されたイラストポスターが巻かれていて(写真左)、実に素敵な、アメリカン・チープなジャケットに仕上がっています。日本の紙ジャケにて、このLPの凝ったジャケットが、ほぼ忠実に再現されているので、興味のある方は、この紙ジャケを探されてみてはいかがでしょう。
 
 
 
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2011年6月26日 (日曜日)

ザ・バンドの 1st.アルバム 『Music From Big Pink』

ザ・バンド(The Band)。1970年代ロックのグループを見渡してみて、あまり、メジャーなバンドではない。特に、日本では知る人ぞ知る、玄人好みのロック・バンドである。しかし、その音楽性ゆえ、1970年代以降のロック・ミュージシャンからは一目置かれ、リスペクトの対象となっているバンドで、いわゆる「ミュージシャンズ・ミュージシャン」である。

そんなザ・バンドのファースト・アルバム『Music From Big Pink』(写真左)は、サイケデリック真っ盛りの1968年リリースの、ロックの歴史にその名を残す「伝説の大名盤」である。

冒頭の「Tears Of Rage」の前奏を聴いて、これは今までのロック・アルバムとは違うという、とんでもない「違和感」を感じる。この「違和感」を喜びと感じるか、感じないかで、ザ・バンドに対する評価が決まるような気がする。

ワウ・ワウ・ペダルやテープ・ループを全く用いず、オルガンやフィドル、マンドリンが前面に出てくる、「アメリカン・ルーツ・ミュージック」の融合の様な、伝統的な音の作り。シンプルで、無骨なようで繊細、緻密なようで良い意味で「スカスカ」、ドスンと腹に染み入るような重心の低いリズム。どれもが素晴らしい、奇跡的な内容のアルバムです。

ロビー・ロバートソン、ベーシストのリック・ダンコ、ピアニストのリチャード・マニュエルが全11曲を提供していて、どの曲も素晴らしい出来だ。ホントに、どれも甲乙付けがたい素晴らしい曲、素晴らしい演奏内容である。これって、ロック界ではこれって結構、奇跡的な事ではないか。

どこから見ても、偏りの無い、バランスの取れたアルバムとなっている。中でも、マニュエルは2曲でヴォーカルを担当する他、もの悲しいオープニング「Tears of Rage」をボブ・ディランと共作している。このバランスの良さが、このアルバムを「完全無欠」で「類い希な」伝説的アルバムにしている。

シンプルで、渋くて、落ち着いていて、トラディショナルで、それでいて古くなく、演奏テクニックは抜群で、歌心があって、スピード感もあり、バラードは情感タップリ。当時「これがロックなのか」と唸りに唸ったのを覚えている。
 

Music_from_big_pink

 
そりゃあそうで、後で知ったことなんだが、このザ・バンドって、当時から、ミュージシャンズ・ミュージシャンだったそうで、今でも若手ロック・バンドの連中からも「リスペクトの対象」であり続けているいる、凄いバンドなのだ。

米国人1人+カナダ人4人という構成ながら、彼らは米国人以上に「古き良き米国」を理解していた。その楽曲とサウンドはアメリカのルーツを掘り下げたものであった。彼らの唄い上げる世界は実に落ち着いていて優しい、今や失われてしまった「古き良き米国」の姿そのもの。

彼らの音は「アメリカン・ルーツ・ミュージック」の数々の要素を演奏のベースとしているが、1970年代において、完全な「アメリカン・ルーツ・ロック」を表現していたバンドは、この「ザ・バンド」だけである。そういう意味では、最近トレンドとなって来た「アメリカン・ルーツ・ロック」の源と言えるだろう。

ザ・バンドの音楽は「アメリカン・ルーツ・ミュージック」を融合させた「アメリカン・ルーツ・ロック」と言えるものであり、当時スワンプと呼ばれた米国南部指向のロックとは明らかに一線を画した、唯一無二のオリジナリティー溢れるサウンドは、ザ・バンドだけのものであり、だからこそ、今でも、若手ロック・ミュージシャンから目標とされる「伝説のロック・バンド」であり「アメリカン・ロックの最高峰」であり続けている。

ミュージシャンズ・ミュージシャンとして、今なお、多くのロック・アーティストからリスペクトの念を持って扱われている「ザ・バンド」。カナダ人4人とアメリカ人1人が見た、感じた「米国の原風景」がアルバムの中に散りばめられています。

このファースト・アルバムを体験して、それまでの音楽的な価値観が変わっちゃった人、結構、いるんじゃないかと思います(僕もそうです)。嗜好が合えば「とことん聴き込んでしまう」そんなアルバムですね。

有名な話では、クリームで過激なロック・インプロビゼーションをやっていたエリック・クラプトンがこのファースト・アルバムを聴いた途端、今までの自分を捨てて、スワンプ一辺倒に鞍替えしたという逸話があります。とにかく、スワンプやサザン・ロック、1970年代クラプトンが好きな人は、一度、聴いてみて下さい。きっと気に入るというか、「こんなロックがあったんや」と、ちょっとした衝撃を受けると思います。
 
 
 
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2011年4月 2日 (土曜日)

70年代米国ルーツロックの終焉 『The Last Waltz (2002 album)』

The Bandは僕に大のお気に入り。70年代ロックで好きなバンドを挙げろ、と言われたら、1に「The Band」、2に「Led Zeppelin」、3に「King Crimson」かな。それほど、The Bandが好きで、今でも、自分でロック/バンドをやるなら、The Bandの様なバンドをやりたいと思っているほどだ。

The Bandは、70年代ロックの中では異質な存在で、確かに、70年代初頭に頭角を現した「スワンプ・ロック」との関連性については良く問われるが、僕はThe Bandは「スワンプ」では無いと思っている。The Bandは「スワンプ・ロック」以上に米国ルーツ・ミュージックの取り込みが多く、その米国ルーツ・ミュージックの要素を上手くロックのイディオムに収斂している。そういう意味で、The Bandは、現代の米国ルーツ・ロックの源と位置づけた方がしっくりくる。

そんな米国ルーツロックの源、The Bandは、オリジナルメンバーとしての活動は1976年で終えている。その「解散コンサート」が、1976年11月25日、サンフランシスコのウィンターランドで催された。そのタイトルは「Last
Waltz」。

その解散コンサートの様子を押さえたライブ盤が、1978年4月にリリースされた。当時LP2枚組だった。途中、このLP2枚組の収録曲にボートラを加えたCDバージョンが発売されたりしたが、現時点で正式リリースとしての決定盤が『The Last Waltz (2002 album)』(写真左)。

巷ではコンプリート盤とされるが、実際は「コンプリート盤」では無い(何曲かの欠け落ちがある)。それでも、LPオリジナルのバージョンからすると、24曲もの未発表曲及び、リハーサルなどの音源をプラスした、CD4枚組のボックス・セット仕様に加えて、初出し写真満載の80頁ブックレット付きという構成なので、The Band者としては、垂涎ものの決定盤である。
 

The_last_waltz

 
この「Last Waltz」は、ゲストミュージシャンが豪華絢爛ではあるが、LPバージョンでは、ゲスト毎に1曲のライブ・パフォーマンスを原則として収録されていたので、はっきり言って「食い足りない」印象は強くあった。まあ、本当の意味でのコンプリート盤では無いが、この、CD4枚組のボックス・セット仕様の 『The Last Waltz (2002 album)』は、The Bandの解散コンサート「Last Waltz」の決定版だろう。

この『The Last Waltz (2002 album)』の内容については、ネットの中で語りに語られているので、検索エンジンを駆使して、その内容の素晴らしさを確認して頂きたい。

簡単にその内容に触れると、このThe Band の解散コンサート「The Last
Waltz」は、70年代の米国ルーツ・ロック&フォーク・ロックを総括する一大イベントだった。錚々たるゲスト・ミュージシャンが名を連ね、演奏を披露している。どのミュージシャンもどの演奏も70年代という時代を彩るものばかりで、米国ルーツ・ロックのファンは狂喜乱舞状態になること請け合い。

僕がThe Bandのファンになった時、The Bandは解散宣言をし、結局、The Bandとはリアルタイムな時期を過ごしたことは無かった。そして、The Band解散後に出てきた、The Bandのライブ・パフォーアンスの決定版。僕が70年代ロックの中で一番お気に入りのバンドは、唯一、リアルタイムで過ごしたことのないThe Bandだったんですよね〜。ちなみに、僕にとっては、実に印象深いライブ盤で、The Bandのライブバンドとしての力量が遺憾なく発揮されていて、The Bandに対して、心の底から忠誠心を感じましたね〜。

ラスト・ライヴが「豪華ゲストを招いてのイベントライヴ」。米国ルーツ・ロックの源The Bandにとっては、豪華すぎるほどの設定ではあるが、ゲストの演奏が、それぞれ全て、The Band仕様のルーツ・ロックな雰囲気になっているのには、改めて驚いた。それだけ、The Bandの演奏は、米国ルーツ・ロックとしての個性が強く、影響力が強かったということだろう。米国ルーツ・ロックを語るに、The Bandは決して外せない。
 
 
 
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2011年1月20日 (木曜日)

荒ぶるワイルドな ザ・バンド『Stage Fright』

我がバーチャル音楽喫茶『松和』の「懐かしの70年代館」。秋から冬にかけてのブームは「The Band」。
  
事の発端は、高校3年生の晩秋に遡る。文化祭の後、好きな女の子に振られ、受験勉強の拠り所を無くした松和のマスターは、やけになって持てる小遣いを叩いて、LPを2枚買う。一枚は、なぜか、オフコースの「Song Is Love」。そして、もう一枚は「The Best Of The Band」。これがまあ、どちらも僕にとっては「大当たり」。
 
特に、The Bandには感じ入った。こんなロックがあったのかと思った。それまでは、プログレ小僧であり、ゼップ小僧であり、サザンロック野郎だった。が、ここで、生まれて初めて、米国ルーツ・ロックに出会い、これぞ、自分の感性にピッタリ合ったロック・バンドだと確信した。その確信は、今でも変わらない。

最近、このThe Bandについては、ファースト・アルバムの『Music From Big Pink』とセカンド・アルバムの『The Band(Brown Album)』だけが、やけに名盤として紹介され、後のアルバムは、あまり採りあげられないのに不満を覚えている。このサード・アルバムの『Stage Fright』(写真)だって名盤なんだぞ〜(笑)。

1970年発表作品。観客のいない空席のホールで録音するというユニークな発想で作られたアルバム。確かに、演奏の録音のエコーが普通のスタジオでのエコーでは無い。ホールの広さが感じられる自然なエコーなのだ。よって、演奏の雰囲気は結構「生々しい」。

前の2作に比べて、演奏は少し荒く、ワイルドになっている。丁寧に作られた、というよりは、ライブの勢いで、ほとんど一発録りで録られたような程良い荒さが、このアルバムの最大の特徴です。僕はこのワイルドなThe Bandも大好きなんですね〜。
 

Stage_fright

 
米国ルーツ・ロックの雰囲気は、このアルバムにも、ギッシリ詰まっています。というか、前の2作に比べて、米国ルーツ・ロックの雰囲気は強い。これだけの米国ルーツ・ロックのアルバムは現代でもありません。米国ルーツ・ロックの世界の中で、如何にThe Bandが優れていたかが判ります。

フィドルが歌い、フォーキーなアコギは魅力的に響き、歩く速さがゆったりとして魅力的な、重心の低いリズムセクションが心地良いビートを供給する。オルガンの響きも豊か。そこに、ロックなピッキング・ハーモニクスを駆使したエレギが雄叫びをあげ、魅惑的な若年寄風のボーカルが絡みまくる。 

『Stage Fright』とは、日本語に訳すと「ステージ恐怖症」。当時、ソング・ライティングを担当していたロビー・ロバートソンは、前の2作の成功がプレッシャーになって、曲が書けなくて困った、なんてことを言っていたが本当だろうか。

「Time To Kill」「All La Glory」「The Shape I'm In」「The W.S. Walcott Medicine Show」「Daniel And The Sacred Harp」そして「Stage Fright」と名曲、名演が目白押し。ほんまにロバートソンって、スランプやったんかいな、と思ってしまう。まあ、ロバートソンは策士やからなあ。自分の虚言で、架空の伝説を創っている雰囲気がプンプンするので、ロバートソンの発言は信用できん(笑)。

僕は、特に「Stage Fright」という楽曲にぞっこんで、この「Stage Fright」こそが、The Band のベスト・チューンと信じて止みません。リチャード・マニュエルのヴォーカルが男らしく、とにかく格好良い。加えて、ガース・ハドソンのウネウネ・キーボードが絶品。これって癖になります(笑)。冒頭の「Strawberry Wine」でのレボン・ヘルムのボーカルも良い。

つまり、このサード・アルバムの『Stage Fright』も名盤ということです。前の2作で、The Bandを好きになった方は、この『Stage Fright』も絶対に聴いて下さい。『Music From Big Pink』と『The Band(Brown Album)』、そして『Stage Fright』の3枚を聴き通せば、The Band者初心者の仲間入りができます(笑)。
 

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2010年3月 2日 (火曜日)

ザ・バンド「この一枚」と言えば 『Northern Lights-Southern Cross』

バンクーバー冬期五輪が閉幕した。いろいろあったが、皆、よく頑張った。もっと強くなって、ソチでは、もっと僕たちを熱くして欲しい。まだまだいける。4年なんてあっという間だ。

さて、カナダ出身の70年代ロックにおける「有名なバンド」といえば「ザ・バンド」とご紹介した(2月21日のブログ参照・左をクリック)。「ザ・バンド」は、1967年から1976年に活動した米国のロック・バンド。オリジナル・メンバーは、カナダ人4人(ロビー・ロバートソン、リチャード・マニュエル、ガース・ハドソン、リック・ダンコ)とアメリカ人1人(リヴォン・ヘルム)という構成。基本的にはカナダ出身のロックバンドと言いだろう。

しかも、である。僕は、数多あるロックバンドの中で、この「ザ・バンド」が一番好きだ。もともと、子供の頃から、アメリカン・ルーツ・ミュージックが好きな、変な子供だったので、このアメリカン・ルーツ・ミュージックを踏まえた、シンプルかつ重厚、フォーキーでロックンロールな「ザ・バンド」は、高校3年生の秋から、ずっと30数年間、大のお気に入りである。

ザ・バンドのオリジナル・アルバムは、どれも味わい深い。ザ・バンドを聴きたいと言われれば、「全部聴け」と言いたい。ファーストアルバム、大名盤の誉れ高い『Music Form Big Pink』から、ラストの『Islands』まで、全部聴いて頂きたい。でも、そんな全部で7枚もある。7枚も一気に入手するのは困難な学生の方々もいるだろう。僕も学生の頃はそうだった。気持ちは判る。7枚も一気に入手するのは、学生の身では、かなりの財力を必要とする。

で、ザ・バンドの「この一枚」と問われれば、僕は『Northern Lights-Southern Cross(南十字星)』(写真左)をお奨めしたい。1975年発表の7作目。僕が、リアルタイムで聴いた初めての「ザ・バンド」。アメリカン・ルーツ・ロックの真髄が、最高のお手本がここにある。

確かに『Music Form Big Pink』の方が、ザ・バンドの本質を感じる事が出来るのではないか、という向きもあるだろう。でも、この『Northern Lights-Southern Cross(南十字星)』の音が良いのだ。
 

Nothern_southern

 
音が新しい。今の耳で聴いても古さを感じさせない、シンセサイザーなどの当時最新の機材の使い方が秀逸な、優れたアレンジ。今の耳で聴いても新鮮。この鮮度の良さが、この『Northern Lights-Southern Cross(南十字星)』を、ザ・バンドを代表するアルバムとして君臨する所以である。

冒頭の「Forbidden Fruit」の前奏を聴いて欲しい。けっして、アメリカン・ルーツ・ミュージックぽくない、今風のシンセサイズされた捻れた電気楽器の音。ザ・バンドが精一杯にモダン化した音である。これ以上のモダン化は無い。ボーカルが出てくれば、そこからは「ザ・バンド」の世界。アメリカン・ルーツ・ロックの世界である。この曲での、ロビー・ロバートソンのギターが凄い。僕は、このロバートソンのギターに痺れっぱなしである。

哀愁溢れる「Hobo Jungle」。ニューオリンズ・チックな「Ophelia」。そして、カナダ人メンバーの心を移したような、旅情溢れる「Acadian Driftwood」。モダンでアーバンな、それでいて、良き古さを感じる「Ring Your Bell」。そして、リック・ダンコの名唱が素晴らしい、情感あふれ、ウェット感が心地良い、名曲「It Makes No Difference」。ガース・ハドソンのシンセが大活躍、今風のシンセサイズされた捻れた音が、なぜかルーツ・ミュージックを感じさせてくれる、異色の曲「Jupiter Hollow」。そして、ザ・バンドの大団円、エンディング・ロールのような「Rags and Bones」。

演奏は「モダン」のひとこと。ガース・ハドソンはいつも最新の機材を揃えてスタジオ入りしていたが、このアルバムでの、ARPやミニムーグの分厚いサウンドが、その「モダンさ」を裏付ける。そして、このアルバムの特徴的なことは、ロビー・ロバートソンが、ギターを「弾きまくっている」ということ。このアルバムでは、彼の特徴的な「ピッキング・ハーモニクス」がふんだんに聴くことができる。

このラスト・アルバムでは、垢抜けて都会的になってモダンになったザ・バンドが、自らの故郷であるカナダ(米国人レヴォン・ヘルム1人を除いて)に向かって帰って行く、そんな感じの感動的なラスト・アルバム。もうやること無くなった、っていう無常観すら漂う傑作である。しかし、その垢抜けて都会的になってモダンになった音にも、しっかりとアメリカン・ルーツ・ミュージックのエッセンスが散りばめられている。今の時代の耳にも十分に耐える、永遠の名盤である。
 
 
 
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2010年1月10日 (日曜日)

ザ・バンドの有終のラスト・アルバム 『Islands』

70年代ロックの「聴き初め」のアルバムはもう一枚ある。僕のロックバンドの中で一番好きなバンド、ザ・バンドの『Islands』(写真左)である。

ザ・バンドのアルバムならば、他にもあるだろう、と思われる方もあるかと思うが、「聴き初め」には絶対に『Islands』なのだ。いや、「聴き初め」というには、ちょっと正確ではない。年末から年始にかけて、ずっと流れているロック・アルバムである。年始にかけてずっと流れているので、自動的に「聴き初め」になるというアルバムである(笑)。

なぜ年末から聴き始めるかというと、5曲目の「Christmas Must Be Tonight(今宵はクリスマス)」の存在がある。実に良い感じの、ザ・バンドのクリスマスソング。この曲があるから、12月の半ば過ぎには、このアルバムは必ずCDトレイに載り、8曲目の「Georgia on My Mind(わが心のジョージア)」のリチャード・マニュエルの最高の名唱に年の瀬を強く感じる。

そして、冒頭の「Right as Rain(優しい雨のように)」や4曲目の「Ain't That a Lot of Love(胸にあふれる想い)」のような、実に優しい、ミドルテンポのアメリカン・ルーツ・ロックに新年の明るさを感じ、インスト・ナンバー「Islands」の、トロピカルでカリビアンなポジティブな長閑さに癒されながら、新年に英気を養う。

以上のような流れで、僕はこのアルバムを、年末から年始にかけて、毎年、ずっと流し続けるのだ。振り返ると、このアルバムって、確かに、僕にとって、ずっと冬のアルバムですね。圧倒的に冬の季節にCDトレイに載る機会が多い。恐らく、自分にとって、前述のような雰囲気や流れがアルバムに充満しているのでしょうね。
 

Theband_islands

 
このアルバムとの出会いは、昨日のJackson Browneの『Running on Empty』と同様、浪人時代に遡る。このアルバムのリリースは、1977年3月。確か、日本盤は1ヶ月遅れだったかと思う。受験校に全て綺麗サッパリ振られた僕は、浪人時代は絶対にレコードは買わない、と決めた。が、当時より最愛のロック・バンドである「ザ・バンド」の最新作である。しかも、解散が噂されており、最後のオリジナルアルバムになる可能性が高い。これは絶対に欲しい。ということで、このアルバムを最後に、浪人時代は絶対にレコードは買わない、と決めた(笑)思い出のアルバムである。

自ら覚悟していたとはいえ、浪人の身になった時に、社会の中での正式な所属のない「言いようのない孤独感」はかなり辛いものがあった。辛うじて仲の良い友人達は残ったものの(一緒に浪人になった・笑)、高校時代の大切な人達のほとんどが、自分の近くから去ってしまったことは、かなり辛かった。そんな辛さを緩和してくれたのが、このザ・バンドの『Islands』である。

このアルバム全体に詰まった優しさ、明るさ、シンプルさには癒された。6曲目のインスト・ナンバー「Islands」を聴くと、「ザ・バンド」には、まだまだ先があった、と感じる。アメリカン・ルーツ・ロックを追求し、南部はニューオリンズへ到達したバンドは、メキシコ湾へ漕ぎ出し、カリブ海を目指したような雰囲気がある。アルバム全体に流れる、ポジティブでのんびりした明るさは、恐らく、このカリビアン志向が作用したのではないか、と勝手に解釈している。

そんなこんなで、個人的にも思い入れの強い、大切な「聴き初め」アルバムです。このアルバム全体に詰まった、優しさ、明るさ、シンプルさには癒されて、年末、一年を振り返り締めくくり、年明けて、新年には、新年に向けての鋭気を養う。一粒で二度美味しい、ではありませんが、一枚で二度美味しいアルバムです(笑)。 
 
 
 
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2009年11月16日 (月曜日)

米国ルーツロックの渋い名盤 『Dirt Farmer』

唐突であるが、僕はアメリカン・ルーツロックが大好きである。アメリカン・ルーツ・ミュージック、ブルースやフォーク、カントリー&ウエスタン、ゴスペルなどをベースとしたロックが大好きである。

アメリカン・ルーツ・ロックの雄といえば「ザ・バンド」。ザ・バンドは、1967年から1976年にアメリカで活動したロック・バンド。オリジナル・メンバーは、カナダ人4人(ロビー・ロバートソン、リチャード・マニュエル、ガース・ハドソン、リック・ダンコ)とアメリカ人1人(リヴォン・ヘルム)。

ロックにカントリー、フォーク、R&Bといったアメリカン・ルーツ・ミュージックの要素を色濃く反映させた音楽性は非常に高く、ミュージシャンズ・ミュージシャンとして今なお多くのアーティストから尊敬を集めている。ザ・バンドについては、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の「懐かしの70年代館」の「My Favorite Rocks」のコーナー、『アメリカンロックの最高峰/ザ・バンド』(左をクリック)を参照されたい。

さて、そのザ・バンドの唯一の米国人、ドラマーのリヴォン・ヘルムの『Dirt Farmer』(写真左)を手に入れた。久しぶりのリヴォン・ヘルムである。ザ・バンド解散後、リヴォン・ヘルムは、RCOオール・スターズを結成し、ソロ活動を展開。しかし、1996年、ヘルムは喉頭ガンと診断され、以後歌うことは困難になり、その治療費の為、金銭的にも苦しんだが、その後、奇跡的とも言える回復を見せ、この『Dirt Farmer』では元気な歌声を聴かせてくれている。
 

Dirt_farmer

 
とにかく、冒頭の「False Hearted Lover Blues」から徹頭徹尾、米国ルーツロック満載である。印象的なフィドルの音、マンドリンの音、C&Wな雰囲気をプンプンさせながら、アコースティック・ギターをフィーチャーしてフォーキーな雰囲気をプンプンさせながら、しかも、ビートはR&B基調。いいぞ、いいぞ。リヴォン・ヘルムの世界を満足いくまで聴かせてくれる。

収録された全13曲は、いずれも古いトラディショナルな曲ばかりがズラリと並ぶ。娘のエイミー・ヘルムを加えた二人の女性シンガーも、絶妙のバックコーラスで、リヴォン・ヘルムのボーカルを盛り立てる。実に良い雰囲気だ。しかも、13曲それぞれがアレンジ良く、メリハリが効いていて飽きない、というか実に楽しい。

良いですよ〜。所謂、アメリカン・ルーツ・ミュージック、ブルースやフォーク、カントリー&ウエスタン、ゴスペルなどが好きな方々には絶対のお勧めです。また、ザ・バンドのファンの方々にも絶対お勧め。ザ・バンドの往年の世界がここにあります。現代の音で、ザ・バンドの伝説の米国ルーツロックの世界が、リヴォン・ヘルム流に再現されています。

しかも、本盤は音が非常に良い。録音もグッド。リヴォン・ヘルムの考える「米国ルーツロック」が心ゆくまで味わえます。なお、このアルバムは、2008年のグラミー賞(Grammy Award)のベスト・トラディショナル・フォーク・アルバム(Best Traditional Folk Album)を受賞しました。

米国ルーツロックの大御所、リヴォン・ヘルムの米国ルーツロックの名盤。晩秋の夜長、現代の米国ルーツロックの名盤を愛でる。至福の時である。
 
 
 
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