2026年6月 3日 (水曜日)

尖ったジャズ・ファンクの萌芽

ジャズ・オルガン奏者ジョン・パットンが録音したソウル・ジャズ志向のオルガン・ジャズである。1970年に録音されながら、録音当時は「お蔵入り」。26年後の1996年に、初めて陽の目を見た「幻のセッション」である。伝統的なこってこてのソウル・ジャズやファンク、ブルースのグルーヴをベースにしつつ、当時の流行でもあった、実験的でアヴァンギャルドな要素(やや尖った「アウト」な演奏)を取り入れているのが特徴。

John Patton『Memphis To New York Spirit』(写真左)。1970年6月9日(tracks 6~8), 10月2日(tracks1~5), Van Gelder Studioでの録音。リリースは1996年。ブルーノートの2366番。ちなみにパーソネルは、Big John Patton (org), Marvin Cabell (ts, ss, fl), George Coleman (ts :tracks 6–8), James Blood Ulmer (g :tracks 1–5), Leroy Williams (ds)。

1970年10月2日のセッション(tracks1~5)については、マーヴィン・キャベルのサックスと、ジェームズ・ブラッド・ウルマーが、ところどころで、やや尖った「アウト」な演奏をしていて、ソウル・ジャズというよりは、ソウル・ジャズな雰囲気を借りた、温和なアヴァンギャルド志向のコンテンポラリー・ジャズといった雰囲気。ただ、その突っ込みと徹底が曖昧で、悪くは無い、水準以上の演奏なのだが、中途半端感が漂うのが残念。
 

John-pattonmemphis-to-new-york-spirit

 
中途半端感が漂うが、内容的には、アヴァンギャアルドなジャズ・ファンクという新しい演奏トレンドが芽生えているのが判る。アヴァンギャルドといえば「フリー・ジャズ」だったところに、ソウル・ジャズのファンクネスを強めて、アヴァンギャルドな演奏要素を取り入れるという大胆な演奏方針の変更をしているところが興味深い。ソウル・ジャズが最後に陥った「商業主義的なアプローチ」を全面的に払拭している。

1969年6月9日のセッション(tracks 6~8)では、テナーにジョージ・コールマンが入っていて、このセッションの3曲は、コールマンの十八番である「モーダルな」演奏がセッション全体に影響して、ソウル・ジャズに、当時の「新主流派」のモーダルなパフォーマンスを持ち込んだ、オルガンがメインのポスト・バップな、個性的な演奏が展開されている。モーダルに展開するジョン・パットンのオルガンは興味深い。

本作は当初、ブルーノートの「BLP 4364」というカタログ番号が与えられ、発売が2度も計画されながらも見送られた、ブルーノートお得意の「何故だか判らないお蔵入り盤」。時代の変化やレーベルの体制変更によりマスターテープ倉庫に眠り続け、録音の26年後、1996年にマイケル・カスクーナらの監修による『Blue Note Groove Series』の一環として世界で初めてCD化。「尖ったファンクグルーヴ」漂うユニークな内容は発掘されて良かったと思う。好盤である。
 
 

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2026年6月 2日 (火曜日)

極上ソウル・ジャズ・パーティー

米国のジャズ・オルガン奏者ルーベン・ウィルソン(Reuben Wilson)の、ソウルフルでファンキーなジャズ・ファンク盤である。全体の音的には、ソウル・ジャズというよりも、軽くアーシーなリズム&ビートをメインにしたジャズ・ロック&ジャス・ファンクという雰囲気で、1960年代のソウル・ジャズとは、グルーヴが縦ノリなのが特徴。

Reuben Wilson『A Groovy Situation』(写真左)。1970年9月18 & 25日、Van Gelder Studioでの録音。ブルーノートの4365番。ちなみにパーソネルは、Reuben Wilson (org), Earl Turbinton (as), Eddie Diehl (g), Harold White (ds)。滑らかでファンキーなグルーヴを湛えた、楽しいクロスオーバー・ファンキーなアルバムである。

ルーベン・ウィルソン自身、前作『Blue Mode』(1969年)の硬派な路線から、本作では意図的にポップで親しみやすい「コマーシャル・ルート」へと舵を切った、ということだろう。ジャズ者(ジャズ・マニア)に対してだけでは無く、幅広いリスナー層にアプローチを試みた、キャッチーな作品として評価できる。
 

Reuben-wilsona-groovy-situation  

 
ポップス&ソウルのカバーが中心で、当時のヒット曲に対して、大胆にジャズ・ファンクなアレンジを充てている。乾いた明るい粘り気のあるソウルフルな、そしてR&Bな音色と、タイトなリズム・セクションが融合して、このアレンジに乗って、滑らかでファンキーなグルーヴを醸し出している。ジャズ者御用達の濃厚なグルーヴではない、軽快で明るい傾向のグルーヴである。

4曲目「A Groovy Situation」は、メル&ティムの有名なシカゴ・ソウル名曲をカバーしたタイトル曲。5曲目「Happy Together」は、ポップロックなバンド、ザ・タートルズの代表曲をソウルフルなジャズ・ファンクへ大胆カバー。6曲目「Signed, Sealed, Delivered I'm Yours」は、スティーヴィー・ワンダーの大ヒット曲をジャズ・ファンクにアレンジ。

レーベル全体がジャズ・ファンクやソウル・ジャズ、そして商業的でキャッチーな路線へシフトしていく過渡期を象徴する、ファンクやR&B、ロックの要素を取り入れたサウンドが全盛の中での、ブルーノートの「コマーシャル路線」への挑戦の音である。難しいことを考えずに、純粋に、滑らかでファンキーなグルーヴを楽しむ盤だろう。ながら聴きに最適な好盤である。
 
 

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2026年5月29日 (金曜日)

サイケなジャズ・ファンク盤です

マクダフが1969年から1971年にかけてブルーノートに残した4枚のアルバムのうち、最後の作品。ソウル・ジャズ、ジャズ・ファンク、そしてサイケデリック・ジャズな要素がほどよく融合した、実験的な演奏内容がユニーク。そして、更にユニークなのが、楽曲提供とアレンジを、ハードバップ時代の変わり種ジャズマンの一人、チューバ奏者のレイ・ドレイパーが担当している。

Brother Jack McDuff『Who Knows What Tomorrow's Gonna Bring』(写真左)。1970年12月1–3日、ブルーノートの4358番。ちなみにパーソネルは、Brother Jack McDuff (org), Randy Brecker, Olu Dara (tp), Dick Griffin, John Pierson (tb), Paul Griffin (p), Joe Beck (g), Tony Levin (el-b), Donald McDonald (ds), Mike Mainieri (perc), Ray Draper (perc, vo, tuba, arr)。

全編に渡って、ポップ色豊かな、ライトで明るいジャズ・ファンクが展開され、その中で、怪しげなサイケデリック・ジャズな要素が忍ばされていたり、オルガンの弾きっぷりは、ジャズというよりは、ロックな響きと乾いた音色が大半を占めていたり、一風変わったファンクネスを伴いながら、スペーシーなポップ・ロックな音世界がユニーク。
 

Brother-jack-mcduffwho-knows-what-tomorr
 
ジョー・ベックのエレギは、R&B志向+サイケデリック色なエレギで、ジャズ・ファンクというよりは、ファンク・ロック風の乾いたオフビートの粘らないファンクネスを前提としたエレギで、これはこれで、やっぱりユニーク。後にピーター・ガブリエル・バンドやキング・クリムゾン等で活動するトニー・レヴィンが、ジャズ・ファンクなベース・フレーズを弾きまくっているのもユニーク。

楽器の定位が浮遊するような不思議な音響ミックスがユニークで、従来のコッテコテなソウル・ジャズ(コテコテのオルガン+サックス+ギター)とは一線を画する。この浮遊感がサイケデリックな雰囲気に直結している。バックのサウンドには、サックスなどの木管楽器を一切排除し、トランペット、トロンボーン、チューバという金管楽器(ブラス)のみを配置して、アルバム全体に独特の「泥臭さ」と「重量感」を与えている。

なんか聴いていて、どこか「隅に置けない」好盤。従来のコッテコテなソウル・ジャズではない、サイケデリックな、ポップでロックで、どこか明るいジャズ・ファンクという雰囲気がとにかくユニーク。特にラストの「Wank's Thang」は、そんな雰囲気の代表的演奏だと感じていて、どこかディスコ調が漂う、マイルドでメロウなグルーヴが芳しい、マクダフのどこか哀愁あるオルガン・プレイが心地良い。
 
 

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2026年5月22日 (金曜日)

アーバンなファンクネスとソウル

ジェームス・ブラウン風の泥臭いファンク、ストリート感溢れるジャズ、そしてアフリカ的なリズムを、彼の代名詞であるハモンドオルガン(B-3型)のカラフルな音色で包み込んだ、アーバンなファンクネスとソウルに満ちた内容である。

Lonnie Smith『Drives』(写真左)。1970年1月2日の録音。Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jerseyでの録音。ブルーノートの4351番。ちなみにパーソネルは、Lonnie Smith (org), Dave Hubbard (ts), Ronnie Cuber (bs), Larry McGee (g), Joe Dukes (ds)。

ジャズ・オルガン奏者ロニー・スミス(Dr. Lonnie Smith)のソウル・ジャズ/ファンク・ジャズの佳作。アーバンでウォーム、ソウルフルかつエモーショナルなグルーヴが蔓延している。オリジナル盤は全5曲で構成されており、ジャズのスタンダードから当時のR&B/ポップスのカバーまで幅広く収録されている。

1.Twenty-Five Miles(エドウィン・スターのファンク・ナンバー)
2.Spinning Wheel(ブラッド・スウェット&ティアーズの大ヒット曲)
3.Seven Steps to Heaven(マイルス・デイヴィスの名演曲をアレンジ)
4.Psychedelic Pi(ロニー・スミス自身のオリジナル楽曲)
5.Who's Afraid of Virginia Woolf?(ジミー・スミスの名演で知られる佳曲)
 

Lonnie-smithdrives

 
ロニー・スミスのオルガンをメインに、デイヴ・ハバードのテナーとロニー・キューバ―のバリサクの2管に加えてラリー・マギーのギター、ノリの良いタイトなドラムはマクダフ・バンドのジョー・デュークス。ジャズ・シーンを見渡した時、ロニー・スミス以外、あまり名の通ったメンバーでは無いが、出てくるグルーヴ感は一流。

ロニー・キューバーが奏でるバリトンサックスの太い低音ラインが、ロニーの操るフットペダル(足鍵盤)によるベースラインと効果的に絡み合い、ロック曲やファンク曲にも引けを取らない、小粋でヘビーなグルーヴを生み出している。

晴れ渡る青空のもと、当時の最新型高級車(1970年型リンカーン・コンチネンタル)のサンルーフから美女と共に顔を出すロニーの姿を捉えたジャケットは、「車の中で窓全開で聴くのに最高の音楽」というアルバムのコンセプトとのこと。

そういう意味では、このアルバムも商業主義に傾いた、売らんが為のイージーリスニング志向のオルガン・ジャズということになる。ただし、そこはブルーノート。演奏内容は及第点以上、アレンジもポップでファンキーで良好。アルバムの演奏自体のクオリティは高いと言える。
 
 

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2026年5月20日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・323

マクグリフのオルガンの個性満載。洗練されたブルース感覚、ゴスペルなど教会音楽の取り込み、抜群のタイム感が生み出す泥臭いグルーヴがマクグリフのオルガンの個性。彼独特のアーシー名音色、左手と足鍵盤による強烈なウォーキング・ベース、独特の「間」とパーカッシブな打鍵、そして、ドローバー(音色調整レバー)の見事なコントロール。マクグリフのオルガンは、その響き、音色、弾き回し、どれをとっても独特の個性。

Jimmy McGriff『Electric Funk』(写真左)。1969年9月、NYでの録音。ブルーノートの4350番。ちなみにパーソネルは、Jimmy McGriff (el-org), Blue Mitchell (tp), Stanley Turrentine (ts), Horace Ott (el-p, arr), Unknown (g), Chuck Rainey (el-b), Bernard Purdie (ds)。ギターが誰だか判らないセプテット編成。

ソウル・ジャズ/ジャズ・ファンクな演奏ではあるが、こってこてファンキーなグルーヴに乗って疾走するマクグリフのオルガンは、それまでの4ビート中心のハードバップではない、ジャズ志向のアレンジによる、8ビートの「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックそのものである。なので、それまでのブルーノート4300番台のオルガン・ジャズ盤が陥り易かった、イージーリスニング志向のラウンジ風のオルガン・ジャズからは脱却している。
 

Jimmy-mcgriffelectric-funk

 
従来のメンストリーム系のモダン・ジャズとは全く異なるリズム&ビートを底に忍ばせている。ドラムの**バーナード・パーディーとベースのチャック・レイニーという、R&B/ソウル界屈指の黄金コンビがリズム&ビートを支えているところが、この盤の、8ビートのジャズ志向のアレンジによる、「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックな雰囲気、を確実なものにしている。特にエレベの弾き出すベースラインはエグい。

ホレス・オットがアレンジするエネルギッシュなホーン・セクションの存在も大きい。「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックの音世界を、より濃いものにしている。凄まじいファンク・グルーヴでカヴァーした、当時の大ヒットロックバンド、ブラッド・スウェット&ティアーズのヒット曲「Spinning Wheel」も、オットのアレンジに負うところが大きい。

このアルバムは、従来の4ビート&スインギーな純ジャズとは、一線を画すものではあるが、当時のソウル・ジャズ/ジャズ・ファンクの最大の成果の一つ。マクグリフのディスコグラフィーの中でも最高傑作の1つとして良いだろう。コッテコテでスマートで泥臭い、オルガン・グルーヴが全編にわたって炸裂している。ジャズ志向のアレンジによる、8ビートの「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックとして聴けば違和感は全く無い。
 
 

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2026年4月24日 (金曜日)

ジャック・マクダフの代表作です

今まで、あまり指摘されてこなかったが、ブルーノート・レーベルは、オルガン・ジャズの宝庫である。というのも、あのジャズ・オルガンの神様、ジミー・スミスをハウス・オルガニストとして囲っていた時代があって、それに加えて、その経験とノウハウを基に、以降、ポスト「ジミー・スミス」なオルガニストをこぞって、デビューさせた実績がそれを物語っている。

Brother Jack McDuff『Down Home Style』(写真左)。1969年6月10日の録音。ブルーノートの4322番。ちなみにパーソネルは、Brother Jack McDuff (org), Jay Arnold (ts), Charlie Freeman (g), Sammy Creason (ds), Unknown (el-b), Unidentified large band (tracks 2, 3 & 6)。フロント管がテナー1管、エレベ入りのクインテット編成。

躍動感溢れるエレ・ファンクとソウルフルなブルースで占められたオルガン・ジャズ。ブラザー・ジャック・マクダフのオルガンが大活躍、彼のオルガンの個性と特徴が良く判る好盤である。全体的には、聴き易さ優先のイージーリスニング志向で、躍動感溢れるエレ・ファンクとは言え、リズム&ビートは軽快、ソウルフルなブルースとは言え、雰囲気は洗練されていて都会的。ジャック・マクダフのオルガンも癖のないライトでアーバンなジャズ・オルガンを披露する。
 

Brother-jack-mcduffdown-home-style  

 
冒頭の「The Vibrator」を聴けば、その雰囲気が良く判る。聴き易さ優先のイージーリスニング志向。それでいて、リズム&ビートは軽快なファンク・ビート、フレーズの醸し出す雰囲気は「洗練されていて都会的」。上質なエレ・ファンクである。そして、4曲目の「Theme from Electric Surfboard」などは上質なソウル・ジャズで、リズム&ビートは明らかにR&B志向、オフビートが強烈でない分、ソウルフルなジャズの要素が前面に押し出されて、ジャジーな雰囲気が増幅されている。

そして、全編に渡って、誰のプレイなのか判らないのだが、エレクトリック・ベースのパフォーマンスが半端ない。どの曲でも、単にビートの供給に留まらない、フロントにカウンターをかますフレーズ弾きや、エレ・ファンクのビートを増幅する強烈なオフビートのフレーズ弾きなど、このアルバムの演奏のファンク度とソウル度を何段階にも増幅している。このエレベ、いったい誰が弾いたんだろう。このエレベはただ者ではない。相当のエレベの名手だと僕は想像している。

オルガン・ジャズが得意なブルーノート・レーベルの面目躍如的なブラザー・ジャック・マクダフの好盤。録音も、オルガン・ジャズとして、ジミー・スミスのダイナミックかつ攻撃的な神的オルガンで鍛えられたであろう、素晴らしい録音手法で、マクダフのパフォーマンスを記録している。4300番台のオルガン・ジャズの名盤として良い内容である。
 
 
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2026年4月13日 (月曜日)

ライトでポップなロニー・スミス

イージーリスニング志向のジャズ・オルガンの名手、ロニー・スミスが、トランペットのリー・モーガン、トロンボーンのジュリアン・プリースター、テナーサックスのベニー・モーピン、ギターのメルヴィン・スパークス、ドラムのイドリス・ムハンマドと組んだ、セクステット編成。

Lonnie Smith『Turning Point』(写真左)。1969年1月3日の録音。ブルーノートの4313番。ちなみにパーソネルは、Lonnie Smith (org), Lee Morgan (tp), Bennie Maupin (ts), Julian Priester (tb), Melvin Sparks (g), Idris Muhammad (ds)。ロニー・スミスのオルガンがメインの、ファンキー&ソウル・ジャズ志向のジャズ・ファンク。

とてもスッキリした内容のジャズ・ファンク。ファンキー&ソウル・ジャズの雰囲気濃厚なジャズ・ファンクは、緩やかでダンサフル。しかし。踊りまくるというグルーヴではない。イージーリスニング志向のライトでポップなジャズ・ファンクで、ながら聴きに最適なオルガン・ジャズでもある。
 

Lonnie-smithturning-point

 
ロニー・スミスのオルガンは、端正で明瞭。癖がなく、音は真っ直ぐに伸びる。テクニックはそこそこ、しかし、聴き心地は良好。そんなロニー・スミスのオルガンが、アレサ・フランクリンもカヴァーしたドン・コヴェイの「シー・ソー」、レノン=マッカートニーの「エリナー・リグビー」などのポップス曲をカヴァーする。良い雰囲気だ。

途中出てくるトランペットが只者では無い。誰だろうと聴き耳を立てたら、これはリー・モーガンでした。さすがのバイタルでブリリアントなトランペット。そして、切れ味良い、新主流派っぽいテナーが魅力のモウピンのテナー、ソウルフルでR&B志向のエレギが堪らない。このメンバーでのライトでポップなジャズ・ファンク。切れ味良く、輪郭の良いオルガン・ジャズを演出する。

抽象的なジャケット・デザインとは正反対の、正統派で硬派な、ライトでポップなオルガン・ジャズ。ファンキー&ソウル・ジャズ志向の音作りがクール。従来のオルガン・ジャズとはことなる、新しいタイプのオルガン・ジャズ。さすが、オルガン・ジャズに強いブルーノート・レーベルの成果である。
 
 

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2026年4月 4日 (土曜日)

ファンキー&硬派なヤングである

ラリー・ヤングのオルガン。オルガンによるモーダルなフレーズ、オルガンによる「シーツ・オブ・サウンド」、オルガンによるエモーショナルな展開、確かに「オルガンのコルトレーン」と呼ばれるのが、実に良く判る。

ジャズ・オルガンの基準、ジミー・スミスのオルガンとは全く異なる。つまり、それまでのジャズ・オルガンのスタンダード、ジミー・スミスの影響下に無い、当時として「新しいオルガンの響き」なのだ。

Larry Young『Heaven On Earth』(写真左)。1968年2月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Larry Young (org), Byard Lancaster (as), Herbert Morgan (ts), George Benson (g), Eddie Gladden (ds), Althea Young (vo)。ジャズ・オルガンの革命児、ラリー・ヤングのブルーノート第5弾目のリーダー作。

それまでのジャズ・オルガンのスタンダード、ジミー・スミスの影響下に無い、当時として「新しいオルガンの響き」のラリー・ヤング。このアルバムでは「憑きものが取れた様に」ファンキー・ジャズ路線のポップなアルバムに変身。冒頭曲など、しばらく、聴いていても、オルガンを弾いているのかが判らないくらいなのだ。

その冒頭曲「The Infant」から、ブーガルー色満載のファンキー・チューン炸裂。思わず、ルー・ドナルドソンのリーダー作かと思ったくらい。出てくるアルト・サックスが全く純ジャズっぽくないので、これはいったい誰のリーダー作だ。このオルガンは誰だ。という感じになる。
 

Larry-youngheaven-on-earth

 
この冒頭曲を聴き進めて行くと、かなり攻撃的な尖ったオルガン・ソロが出てくる。これはいままでのオルガニストに無い音で、ファンキー・チューンでこの尖り具合は無いだろう、ということで、やっと、このオルガンは、ラリー・ヤングだと気がつく次第。ファンキー・ジャズをやってる割に、かなり攻撃的で尖ったオルガンなので、これでは踊れないぞ、と思わず苦笑い(笑)。

ヤングのオルガンに続く、若きジョージ・ベンソンのギターも負けずに、攻撃的で尖っていて思わず苦笑い。それでも、ファンキー・ジャズよろしく、ファンキーなフレーズを叩き出してくるので、思わず吹き出してしまう。でも、ベンソンの演奏レベルは高い。ベンソンは真剣に攻撃的で尖ったファンキー・フレーズを集中して弾いている。

2曲目「The Cradle」に至っては、確かに曲想はファンキー・ジャズだが、ヤングのオルガンは、更に攻撃的に尖って、ストイックなフレーズを弾きまくる。もう、これはファンキー・ジャズの弾き回しでは無い。純ジャズの弾き回し。ダンサフルの蔭も形も無い(笑)。

ラリー・ヤングがファンキー・ジャズに身をやつしたと揶揄されがちな、この盤であるが、1曲目の前半のブーガルー色満載の部分だけ我慢すれば、あとは、ファンキー・ジャズのリズム&ビートとフレーズ展開に乗ってはいるが、そこに出てくるヤングの、ベンソンのパフォーマンスは純ジャズそのもの。

ファンキー・ジャズのリズム&ビートとフレーズ展開に乗った、硬派で尖ったメインストリーム・ジャズと捉えれば、この盤はなかなか面白い内容だということに気がつく。加えて、この盤のジャケット・デザインと、ラストのボーカル曲の存在が、この盤の評価を下げているんだろうな。まあ、これは仕方がない。
 
 

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2026年4月 2日 (木曜日)

英国録音のジャック・マクダフ

ブルノートの4300番台のアルバムを聴き直している。ブルーノートの4300番台は、録音年月として、1968年9月から1972年1月まで。ジャズがロックの台頭に押されて、大衆音楽の枠から追い出され始めた時代。

あくまで、メインストリームなジャズを守るところと、大衆音楽として聴衆に迎合した、ポップなクロスオーバー・ジャズが入り交じっている、聴いていて興味深いカタログである。まだ、当ブログで記事化していないアルバムも結構あるみたいで、組織的に粛々と聴き直している最中。

Brother Jack McDuff『To Seek A New Home』(写真左)。1970年3月23日、ロンドンでの録音。ブルーノートの4348番。ちなみにパーソネルは、以下の通り。ジャック・マクダフのオルガンがリーダー、ブラス・セクションにハープ入りという、大所帯の編成。動機は分からぬが、この盤はロンドン録音。英国のミュージシャンが中心になって、バックを務めている。

Brother Jack McDuff (org, p), Martin Drover, Terry Noonan, Bud Parks (tp), John Bennett, Adrian Drover (tb), David Statham, Willie Watson (French horn), Norman Leppard, Dick Morrissey, Jack Whitford, Dave Willis (reeds), Typhena Partridge (harp), J.J. Jackson (p, perc), Chris Parren (el-p), Terry Smith (g), Peter Chapman, Larry Steele (el-b), Trevor Armstrong, Phil Leaford (ds), Debrah Long, Jerry Long (vo)。
 

Brother-jack-mcduffto-seek-a-new-home

 
米国のジャズ・オルガン奏者であるジャック・マクダフが英国に渡り、ロンドンで現地のミュージシャンたちと共に録音した異色作。従来のソウル・ジャズの範疇を外れ、クロスオーバー志向のジャズ・ロックなサウンドをメインに、サイケデリックな要素や重厚なファンク・グルーヴを融合した、当時としては意外と挑戦的でポップなサウンド。

全体的な雰囲気は、ポップなジャズ・ファンク&ジャズ・ロック盤。英国録音ということもあるんだろうか、どこか「プログレッシヴ・ロック」な音の響きも混ざっている、不思議な雰囲気のオルガン・ジャズ盤である。マクダフのオルガンも、ジャズ・オルガン独特のファンクネスを薄めながら、ファンク&ロック・ビートに乗った、ポップなオルガンを弾きまくっている。

定番のドラム・ブレイク入り、ディック・モリシーのフルートが格好良い、強力なジャズ・ファンク・クラシックの「Hunk O' Funk」がやはり聴きもの。グルーヴ感満載で、テンション・マックスな演奏が格好良い「Yellow Wednesday」も良い感じ。タイトルの通り「神秘的な」、どこか静的サイケデリックな、独特の雰囲気を持った「Mystic John」も興味を引く内容。

この盤、CD化やリイシューが途絶えていて、なかなか聴くことが出来なかったが、最近、ネットで検索すると、LPから起こした音源でフルアルバムを聴くことが出来るみたい。便利な世の中になったものだ。
 
 

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2025年12月20日 (土曜日)

クリスマス・ジャズの定盤・3

あと4日でクリスマス・イヴである。コロナ禍以降、クリスマス・シーズンになっても、世間が過剰にクリスマス、クリスマスと騒がなくなったので、うっかりしていると「気がつけば、クリスマス・イヴ」状態になることがしばしば。今年も、気がつけば、あと4日でクリスマス・イヴ。我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、やっと10日前から、クリスマス・ジャズを流し始めた次第。

クリスマス・ソングと言えば、僕の発想は「オルガン」になる。幼稚園と大学がミッション系だったこともあって、クリスマス・シーズンの賛美歌には馴染みが深い。特に、伴奏オルガン、曲調としてはゴスペル、というのが、自分としては最高の組みあわせで、この組みあわせで、クリスマス・ソングをジャズ化してくれると、それだけで至福の時となる。そんなアルバム、あるのか、と思って探せば、これが「ある」んですね。

Jimmy Smith『Christmas Cookin'』(写真左)。1964年4月20日、9月29日の録音。1966年のリリース。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Kenny Burrell, Quentin Warren (g), Art Davis (b), Grady Tate, Billy Hart (ds), George Devens (perc) がメインのバンド編成で、ここに、ジャズ・オーケストラが入る(パーソネルは割愛)。

ジャズ・オルガンの神様、ジミー・スミスのクリスマス・アルバムである。大手レーベルのヴァーヴからのリリースで、一流のメンバーをこれでもかと投入、ゴージャズなジャズ・オケもバックにつけている。音のイメージとしては、ジミーの名盤『The Cat』のジャズ・オーケストラをバックにつけたゴージャズな演奏の雰囲気で、クリスマス・ソングを、良いアレンジでやっちゃいました、って感じの音世界。
 

Christmas_cookin_3

 
加えて、アレンジが秀逸なのと、演奏するメンバーが一流どころで、ダレたりよれたりところが皆無で、しっかりと端正な演奏で、クリスマス・ソングをカバッてるんで、聴き応えが実に良い。ジャズ・オーケストラをバックにつけたゴージャズな演奏と最小構成単位のトリオでの演奏と、ほぼ半々で「1粒で2度美味しい」てな感じの、聴いて楽しい、オルガン・ジャズのクリスマス・ソング集。

超一流のジャズ・オルガンが唸りを上げるだけで、数々の有名なクリスマス・ソングは、どっぷりとゴスペルっぽくなるからたまらない。教会でクリスマスの賛美歌を聴いている様な、そんな敬虔でファンキーな、思わず腰が動くような雰囲気は、とにかく「たまらない」。そこに、ゴージャズなジャズ・オケの伴奏がガッツリ入ったりして、敬虔な雰囲気をより増幅して、極上のクリスマス・ソング集になっていくのだから、このアルバム、聴き甲斐、満載である。

実は、この『Christmas Cookin'』というアルバム、1964年に『Christmas '64』(写真右)として、先行リリースされている。大手ヴァーヴ・レコードとしては安易な対応だったが、当時、クリスマス商戦期にクリスマス・アルバムをリリースするのが
定番だった時代だったことを考えると、まあ仕方が無いところですかね。聴く方としては紛らわしいですけどね。良い内容のクリスマス・アルバムなんで再発したくなったんでしょうね。でも、ジャケット、タイトルまで変えなくて良いのに(笑)。

また、CD化に際して、CDの録音可能時間の長さに合わせてか、アルバム『ダイナミック・デュオ』から「外は寒いよ」、アルバム『オルガン・グラインダー・スゥイング』から「グリーンスリーブス」という、クリスマスにゆかりのある曲を追加収録していて、これまた、紛らわしい(笑)。クリスマス・ソングを、ジャズ・オルガンの神様であるジミー・スミスの演奏で聴けることを考えると、これも仕方の無いところですかね。
 
 

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