尖ったジャズ・ファンクの萌芽
ジャズ・オルガン奏者ジョン・パットンが録音したソウル・ジャズ志向のオルガン・ジャズである。1970年に録音されながら、録音当時は「お蔵入り」。26年後の1996年に、初めて陽の目を見た「幻のセッション」である。伝統的なこってこてのソウル・ジャズやファンク、ブルースのグルーヴをベースにしつつ、当時の流行でもあった、実験的でアヴァンギャルドな要素(やや尖った「アウト」な演奏)を取り入れているのが特徴。
John Patton『Memphis To New York Spirit』(写真左)。1970年6月9日(tracks 6~8), 10月2日(tracks1~5), Van Gelder Studioでの録音。リリースは1996年。ブルーノートの2366番。ちなみにパーソネルは、Big John Patton (org), Marvin Cabell (ts, ss, fl), George Coleman (ts :tracks 6–8), James Blood Ulmer (g :tracks 1–5), Leroy Williams (ds)。
1970年10月2日のセッション(tracks1~5)については、マーヴィン・キャベルのサックスと、ジェームズ・ブラッド・ウルマーが、ところどころで、やや尖った「アウト」な演奏をしていて、ソウル・ジャズというよりは、ソウル・ジャズな雰囲気を借りた、温和なアヴァンギャルド志向のコンテンポラリー・ジャズといった雰囲気。ただ、その突っ込みと徹底が曖昧で、悪くは無い、水準以上の演奏なのだが、中途半端感が漂うのが残念。
中途半端感が漂うが、内容的には、アヴァンギャアルドなジャズ・ファンクという新しい演奏トレンドが芽生えているのが判る。アヴァンギャルドといえば「フリー・ジャズ」だったところに、ソウル・ジャズのファンクネスを強めて、アヴァンギャルドな演奏要素を取り入れるという大胆な演奏方針の変更をしているところが興味深い。ソウル・ジャズが最後に陥った「商業主義的なアプローチ」を全面的に払拭している。
1969年6月9日のセッション(tracks 6~8)では、テナーにジョージ・コールマンが入っていて、このセッションの3曲は、コールマンの十八番である「モーダルな」演奏がセッション全体に影響して、ソウル・ジャズに、当時の「新主流派」のモーダルなパフォーマンスを持ち込んだ、オルガンがメインのポスト・バップな、個性的な演奏が展開されている。モーダルに展開するジョン・パットンのオルガンは興味深い。
本作は当初、ブルーノートの「BLP 4364」というカタログ番号が与えられ、発売が2度も計画されながらも見送られた、ブルーノートお得意の「何故だか判らないお蔵入り盤」。時代の変化やレーベルの体制変更によりマスターテープ倉庫に眠り続け、録音の26年後、1996年にマイケル・カスクーナらの監修による『Blue Note Groove Series』の一環として世界で初めてCD化。「尖ったファンクグルーヴ」漂うユニークな内容は発掘されて良かったと思う。好盤である。
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