2024年9月 6日 (金曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・27

この盤は、僕がジャズ者初心者の頃、よく聴いた。確か、当時、大手レコード屋が、ジャズ者初心者向けにアルバム紹介の冊子を配っていて、それをもらって、片っ端から「購入しては聴く」を繰り返していた。全40枚あったと思う。

そんな中に、このアルバムはあった。ジャケは「秋の公園のベンチで日向ぼっこをして寛ぐ老人の男性」の写真をあしらっていて、ちょっと違和感があったが、思い切って購入したのを覚えている。

Horace Silver『Song for My Father』(写真左)。1963年10月31日、1964年10月26日 の2回のセッションの寄せ集め。ここでは、CDリイシュー時のボートラの扱いは割愛する。ちなみにパーソネルは、当然、以下のの2つの編成に分かれる。

1963年10月31日の録音(#3, 6)が、Horace Silver (p), Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Gene Taylor (b), Roy Brooks (ds)。1964年10月26日(#1. 2. 4. 5)の録音が、Horace Silver (p), Carmell Jones (tp), Joe Henderson (ts), Teddy Smith (b), Roger Humphries (ds)。

この盤の大ヒット・チューン、冒頭のタイトル曲「Song for My Father」は、1964年10月26日のパーソネルでの演奏。併せて、2曲目「The Natives Are Restless Tonight」、4曲目「Que Pasa」、5曲目「Que Pasa」も同じパーソネルでの演奏。カーメル・ジョーンズのトランペットが効いている。ねじれたモーダルな演奏に走らない、ストレートアヘッドなファンキー・テナーを聴かせるヘンダーソンも聴き逃せない。
 

Songformyfathe_r

 
一方、3曲目「Calcutta Cutie」と5曲目は「Lonely Woman」は、1963年10月31日の録音で、パーソネルは、お馴染みの、ミッチェルのトランペット、クックのテナーがフロントの、伝説のシルバー・クインテット。手慣れた、聴き慣れた、シルバー流ファンキー・ジャズな音世界が広がる。

どちらのセッションの演奏も、どこか理知的な雰囲気が漂う、シルバー流のファンキー・ジャズなんだが、ファンキー度合いは、1964年のセッションの方が濃い。併せて、1964年のセッションは、ポップでメジャーな雰囲気で開放感がある。同じクインテットの演奏でも、1964年のセッションの演奏では、いわゆる「イメチェン」に成功している。

冒頭の「Song for My Father」が、かなりポップでコマーシャルなファンキー・ジャズなんだが、2曲目以降は、ジャズ者初心者が聴いても判り易い、理知的なシルバー流のファンキー・ジャズが続くので、アルバム全体に統一感もあって、よくまとまったシルバーのリーダー作だと思う。やはり、この盤は、ジャズ者初心者にピッタリのファンキー・ジャズ盤だと言える。

ちなみに、本作のタイトル曲「Song For My Father」はホレス・シルバーが自分の父親に捧げたもの。この盤のジャケ写の「帽子を被った葉巻のおじいさん」が実はホレス・シルヴァーの父君そのものである。

ブルーノート・レーベルって、モダン・ジャズの硬派でならしたレーベルなんだが、こういうジャケ写での「粋な計らい」をする、お茶目なレーベルでもある。
 
 

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2022年3月25日 (金曜日)

ホレスの「日本贔屓 (びいき)」盤

Horace Silver(ホレス・シルヴァー)ほど、ファンキーなピアノを弾き続けたピアニストはいないだろう。ファンキーなピアノというよりは、もはや「ホレス節」というほどの、マイナーでファンキーでダンサフルなピアノを弾きまくる訳で、ホレスのピアノは1曲聴けば「ああ、これはホレス・シルヴァー」のピアノと判る位に個性的なもの。これが「ホレス者(ホレス・シルヴァーのファン)」にとっては堪らないのだ。

Horace Silver『The Tokyo Blues』(写真左)。1962年7月13–14日の録音。ブルーノートの4110番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Gene Taylor (b), Joe Harris (ds)。ミッチェルのトランペット、クックのテナー・サックスが2管フロントのクインテット編成。ホレス・シルヴァー・クインテットの黄金時代の一枚である。

ホレスは1962年1月、初来日公演を敢行、全国19もの会場で大成功を収め、以降、すっかり「日本贔屓(びいき)」になったらしい。この盤はその初来日公演の半年後の録音なので、その興奮冷めやらぬまま、タイトルも明確に「東京ブルース」。収録曲も「Too Much Sake(日本酒が過ぎる)」「Sayonara Blues(さよならブルース)」「The Tokyo Blues(東京ブルース)」「Cherry Blossom(桜)」「Ah! So(あっそう)」と日本を想起させるタイトルばかり。
 

The-tokyo-blues_horace-silver

 
洒脱なファンキー・ジャズが良い感じに響いている。「The Tokyo Blues」のエキゾティックな響きも良い感じだし、どの曲も大胆な展開をしつつも、要所要所は繊細にキメているところがこの盤の特徴的なところ。ホレス・シルヴァー・クインテットの演奏のレベルが一段上がった様な感じがする。曲のラストに、そこはかとなく「オリエンタルなフレーズ」が出てきたりするが、これがまったく違和感が無いところがホレスの作曲&アレンジの優れたところ。

ホレスの優れた作曲&アレンジによって、フロントのミッチェルのトランペット、クックのテナー・サックスも実に気持ち良く、吹きまくっている。溌剌として明るくて、それでいて、しっかりキメるとことはキメる、テクニック良く、メリハリの効いたブロウが実に良い感じ。ジーン・テイラーのベース、ジョー・ハリスのドラムのリズム隊も、ファンキーなリズム&ビートをキメにキメていて、とても良い感じのファンキー・ジャズ盤に仕上がっている。

1962年1月、初訪日した印象をホレスならではの解釈で、鯔背に粋にファンキーにキメてくれている盤。ジャケット写真も思いっ切り「日本風」に、しかもカラーでキメている。この盤、ホレスの初来日時の「感謝」をそこはかとなく感じるなあ。ちなみに、ジャケット写真の左側の女性は、出光佐三の四女で映像作家の出光真子さんです。NYの日本庭園での撮影とのこと。良いジャケットですね。
 
 

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2021年10月29日 (金曜日)

シルヴァー5の代表的名ライヴ盤

ホレス・シルヴァー(Horace Silver)のファンキーなピアノが好きだ。学生時代にシルヴァーの『Horace Silver and the Jazz Messengers』を大学近くの「秘密の喫茶店」で聴かせて貰って、即、お気に入りのピアニストになった。特に「The Preacher」のファンクネスにはゾッコンである。この曲が好きになって、自分はファンクネス濃厚なジャズがお気に入りなんだ、と認識した。

Horace Silver『Doin' the Thing : The Horace Silver Quintet at The Village Gate』。1961年5月19,20日、NYの「The Village Gate」でのライヴ録音。ブルーノートの4076番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Gene Taylor (b), Roy Brooks (ds)。ホレス・シルヴァー・クインテットの最盛期のライヴ録音である。

このライヴ音源でのホレス・シルヴァーのファンキー・ピアノは凄い。左手のブロック・コードはどこまでもジャジーでファンキーな響きを醸し出す。右手は適度なテンションを張りながら、切れ味の良い素晴らしい指捌きで、ファンキーなフレーズをバシッと決めていく。緩んだ所は全く無く、アドリブ・フレーズが破綻することは全く無い。確かにこのライブ盤でのシルヴァーのピアノは鬼気迫る様な迫力で耳に迫ってくる。
 

Doin-the-thing

 
フロント2管は、ミッチェルのトランペットとクックのテナー・サックス。これがまた素晴らしいアドリブ・フレーズを吹き上げる。フロント2管のユニゾン&ハーモニーは、どっぷりファンキーで、とことんジャジー。その運指は流麗で淀みが無い。このライブ盤では、このミッチェル=クックの2管フロントのベスト・パフォーマンスを聴くことが出来る。それほどまでに素晴らしいフロント2管のブロウである。

そして、改めて感心するのが、ホレス・シルヴァー率いる、テイラー+ブルックスのリズム・セクション。シルヴァーの醸し出すファンクネスを増幅する様な、躍動感溢れるオフビートでファンキーな、煽る様なリズム&ビートが凄い。意外と指摘されていないのだが、この時代のシルヴァー・クインテットのリズム・セクションのファンキー度合いは相当に高い。このリズム・セクションがあるからこそ、この時代のシルヴァー・クインテットは限りなくファンキーなのだ。

録音も秀逸でライブ感濃厚。シルヴァー・クインテットの演奏の迫力がビンビンに伝わってくる。演奏がウケにウケた観客の熱気が伝わってくる。こういうライブ音源をしっかり残しているのは、さすがブルーノートと言える。ジャケット・デザインも秀逸。シルヴァーのアップ写真のポジショニングも良い感じで、特にタイポグラフィーは芸術的。シルヴァー・クインテットの代表的名盤である。
 
 
 
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2021年10月18日 (月曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・7 『At the Cafe Bohemia』

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズは、1954年から1990年の36年間、アート・ブレイキーの下、活動し続けた、伝説のジャズ・バンドである。リーダーはブレイキーだが、他のメンバーはそれぞれの時代で入れ替わる。しかも、このジャズ・メッセンジャーズに所属して活躍したジャズマンは、おおよそ、一流のジャズマンとして育っていった。

Art Blakey & The Jazz Messengers『At the Cafe Bohemia, Vol. 1&2』(写真)。1955年11月23日、NYのライヴ・スポット「カフェ・ボヘミア」でのライヴ録音。ブルーノートの1507 & 1508番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Kenny Dorham (tp). Hank Mobley (ts), Horace Silver (p), Doug Watkins (b)。ブレイキーとシルヴァーが共存した時代のザ・ジャズ・メッセンジャーズの傑作ライヴである。

1955年と言えば、ハードバップ初期から中期への移行期。ハードバップについて、その演奏の方法、雰囲気、音楽理論が体験的に整理され、その方法論が確立された時期。この『カフェ・ボヘミア』は、そんな時期にライヴ録音された、奇跡的なハードバップ演奏の記録である。なんせ、このライヴ盤2枚に録音されている内容については「文句の付けようが無い」。
 

At-the-cafe-bohemia

 
演奏の要は「ブレイキーとシルヴァー」。ブレイキーのドラミングは、ハードバップ期の代表的ドラミングの1つ。演奏のリズム&ビートを牽引し、フロント楽器を鼓舞し、フロント楽器の展開をコントロールする。コードがベースのハードバップにおいて、シルヴァーのピアノの演奏スタイルは、ハードバップ期の流行スタイルの1つ。後のファンキー・ピアノの先駆。ワトキンスのベースは、ブレイキーとシルヴァーとの「ビート」の橋渡し役。このバンド演奏の「ビート」の方向性を示し続けている。

フロント楽器に目を転じると、このライヴ盤でのハンク・モブレーは何時になく絶好調。というか、モブレーのサックス奏者としての生涯最高のブロウかもしれない。それほどまでに内容が素晴らしい。ケニー・ドーハムのトランペットも同様。そのパフォーマンスがバラツキがちなドーハムが、優れたテクニックでバリバリ吹きまくっている。このフロント2管のパフォーマンスは、ハードバップ期を代表するものの1つだろう。

このライヴ盤のハードバピッシュ度は相当に高い。ハードバップ演奏の良好なサンプルであり、ショーケースでもある。ハードバップとは何か、に迷ったら、僕はこの盤を聴く。この盤にある演奏の好要素を記憶に留めて、他のハードバップの演奏を聴く。ハードバップ演奏の基準となる演奏がこのライヴ盤に詰まっている。
 
 
 
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2021年8月21日 (土曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・4 『A Night at Birdland』

「僕なりの超名盤研究」の第4回目。この盤については、どのジャズ盤紹介本でも「ジャズの代表的な演奏トレンドであるハードバップの始まりを記録した盤」としている。いわゆる「ハード・バップ誕生の瞬間」を記録した歴史的名盤と評価されている。が、売り文句としては実にキャッチャーな表現だが、この盤が記録したライヴ・パフォーマンスを境目に、ハードバップが一気に展開されていった訳ではない。

Art Blakey『A Night at Birdland Vol.1&2』。1954年2月21日、NYのライブスポット、バードランドでのライヴ録音。邦題『バードランドの夜』。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Clifford Brown (tp), Lou Donaldson (as), Horace Silver (p), Curley Russell (b)。アナウンスは「Pee Wee Marquette」。バードランドの夜は、このピー・ウィー・マーケットの熱気溢れる紹介アナウンスから幕を開ける。臨場感抜群である。

さて、この『バードランドの夜』、この演奏がハードバップの萌芽とされる訳だが、聴いてみてどこがそうなんだか、特に、ジャズを聴き始めた頃、このライヴ盤を聴いても「さっぱり判らん」が正直なところ。

ところで「ハードバップ」とは何か、であるが、Wikipediaを紐解き、要約すると「アメリカ東海岸で、1950年代に始まり1960年代まで続いた演奏スタイル。一般的なジャズサウンドのイメージはこのスタイルと言える。アレンジなどにも工夫を凝らし、メロディアスで聴きやすいと同時に、演奏者の個性や情熱を表現することができ、大衆性と芸術性の共存を可能とした演奏スタイル」とのこと。

これでもまだ「良く判らん」なので、他の演奏スタイルと比較してみる必要がある。ハードバップに至るまでのジャズの演奏形式の変化である。これをやらないと、この『バードランドの夜』を聴いても、何が「ハード・バップ誕生の瞬間」を記録した歴史的名盤なのか、さっぱり判らないままである。
 

A-night-at-birdland

 
ハードバップの前の流行の演奏スタイルは「ビ・バップ」。最初に決まったテーマ部分を演奏した後、コード進行に沿いつつ、自由な即興演奏を順番に行う形式。演奏テクニックとアドリブ・フレーズの優秀性に重きが置かれ、スインギーな側面やメロディーを楽しむ側面はそぎ落とされ、アクロバティックな即興演奏だけが着目される演奏形式となった。音楽としての「聴き手」の嗜好を無視した内容に陥り易く、ジャズの大衆性が阻害され易い演奏形式ともいえる。

で、比較である。まず、ビ・バップの演奏の雰囲気は、Dizzy Gillespie『Groovin' High』(2015年7月28日のブログ参照)などで感じることが出来る。次に、ビ・バップからハードバップの過渡期の雰囲気は、Charlie Parker『The Genius Of Charlie Parker, #3 - Now's The Time』(2021年4月8日のブログ参照)、そして、ハードバップ初期の雰囲気はこの『A Night at Birdland Vol.1&2』で感じることが出来る。

特に面白いのは、ビバップからハードバップの過渡期の雰囲気を記録してパーカー盤。ビバップの祖の一人、パーカーがメインとなっているリーダー作だが、内容的には、ハードバップの特色である「アレンジなどにも工夫を凝らし、メロディアスで聴きやすいと同時に、演奏者の個性や情熱を表現する」部分の兆しがこの過渡期の盤に記録されている。確かにこのパーカー盤はビ・バップでは無い。

そして、今回の『バードランドの夜』。確かに、この盤の演奏は明らかに「アレンジなどにも工夫を凝らし、メロディアスで聴きやすいと同時に、演奏者の個性や情熱を表現する」部分が貫かれている。曲のコードをより細かく分けたり、テンポの速くして演奏をより複雑にしたり、演奏のニュアンス、バリエーション豊かにして、演奏の表現力を豊かにした、いわゆる「聴かせること」そして「アーティスティックなこと」を前面に押し出した演奏は聴き応え十分。

このライヴ盤には、ハードバップの要素がぎっしり詰め込まれている。しかも、このアルバムはスタジオ盤では無い、一発録りのライブ録音。つまり、1954年には、皆が皆では無いにしろ、このハードバップ的な演奏がライヴで、一発録りな雰囲気で行われていたのである。当時のジャズの演奏レベルの高さというものを改めて感じる。
 
 
 
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2021年4月25日 (日曜日)

シルヴァーはブルーノートの音

ブルーノート・レーベルについては、独特の「音と演奏の雰囲気」がある。他のレーベルに無い、というより、ブルーノートだけが持つ独特の「音と演奏」の雰囲気。ブルーノートのアルバムを聴けば、冒頭の1曲を聴くだけで、ほぼブルーノートのアルバムであることが判る位である。

特に、その傾向は、1500番台、4000番台、4100番台という、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンがガッチリと関与しているシリーズに顕著である。録音技師のルディ・ヴァン・ゲルダーいわく「ブルーノート・レーベルだけが具体的に録音する音に関して指定をしてきた。私はそれを録音時に具現化しただけだ」。つまり、ブルーノート独特の「音と演奏の雰囲気」は、レーベルの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンと天才録音技師のルディ・ヴァン・ゲルダーのタッグによって生まれたものなのだ。

Horace Silver『Finger Poppin'』(写真左)。1959年1月31日の録音。ブルーノートの4008番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Gene Taylor (b), Louis Hayes (ds)。それまで頻繁にメンバーチェンジしてきたホレス・シルヴァー・クインテットであったが、遂に「ミッチェル~クック」の鉄壁のフロントラインが確立した盤である。
 

Finger-poppin

 
ホレス・シルヴァーの「鉄壁のクインテット」が確立した盤であり、シルヴァーのファンキー・ジャズが成熟した盤でもある。冒頭の表題曲「Finger Poppin'」の充実した内容を聴けば、それが良く判る。しかし、シルヴァーのファンキー・ジャズはただの「脳天気」なファンキー・ジャズでは無い。ヴァラエティに富んだ曲想、そして、理知的で先進的でスッキリとしたグルーヴ感溢れるフレーズと展開。ホレス・シルヴァーの「鉄壁のクインテット」は「アーティスティック」なファンキー・ジャズ集団である。

そして、3曲目の「Swingin' The Samba」は、サンバのリズムを取り入れたファンキー・チューン。ボサノバ・ジャズ誕生以前のこの演奏は、後の「ボサノバ・ジャズ」のブームを先取りして余りあるもの。シルヴァーはポルトガルと黒人の混血である父親とアイルランドとアフリカ系黒人の混血である母親の血を引くピアニスト。その「血」がこのノリノリで爽快感溢れるサンバ・ジャズを生み出したと言えるでしょう。

ホレス・シルヴァーはブルーノート・レーベルのお抱えピアニスト。この盤の音は明らかに「ブルーノート・レーベルの音」。「ミッチェル~クック」の鉄壁のフロントラインのユニゾン&ハーモニーの響き、シルヴァーのファンキーなピアノの響き。テイラー〜ヘインズのリズム隊の臨場感溢れるアタック音。どれもが「ブルーノート・レーベルの音」。良い音してます。惚れ惚れします。
 
 
 

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  ・Journey『Infinity』1978

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  ・Yes Songs Side C & Side D
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  ・浪花ロック『ぼちぼちいこか』
 
 
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2021年2月18日 (木曜日)

「モーダルなホレス」もクールだ

ブルーノートの看板ピアニストと言えば、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)。ホレスはデビューから遺作まで、基本的にブルーノートからのリリースだった。ブルーノートで見出されメジャーになったジャズマンは、ほとんどが弱小なレーベルだったブルーノートを離れて、メジャーなレーベルに移籍していった。

しかし、ホレスは違った。ずっとブルーノートを離れなかった。それも、ホレスを見出したブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンがブルーノートを離れた後も、ホレスはブルーノートを見放さなかった。ブルーノートが一旦活動停止し、純ジャズ復古のタイミングで復活した後も、ホレスはブルーノートにいた。

Horace Silver『Further Explorations』(写真)。1958年1月13日の録音。ブルーノートの1589番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Art Farmer (tp), Clifford Jordan (ts), Teddy Kotick (b), Louis Hayes (ds)。ファンキー・ジャズの雄、ホレス・シルヴァー好調のクインテット盤。
 
 
Further-explorations
 
 
全6曲中、ファーマーのトラペットとジョーダンのテナー、フロント2管のクインテット演奏が3曲。フロント2管を抜いた、ピアノ・トリオでの演奏が3曲。パーソネルを見渡すと、ファンキー・ジャズの臭いがしない。ベースとドラムを見ると、どちらかと言うと、モード・ジャズ。そう、この盤、ホレスの「モード・ジャズへのチャレンジ」な感じの盤なのだ。

冒頭の「The Outlaw」の前奏の2管フロントのユニゾン&ハーモニーには、しっかり「ファンキー臭さ」があるんだが、以降、ホレスのアドリブに入ると、ファンキー臭さを抑えて、モーダルな展開になっていく。ホレスのリーダー作に、これだけファンキー臭さが少ないのは、この盤だけだと思う。それでも、モーダルなフレーズの奥に、ファンクネスがそこはかとなく漂っているところがクール。

この盤、モード・ジャズの影が見え隠れし、新しい音へのチャレンジが頼もしい。熱かったファンキー・ジャズが、この盤では、クールでモーダルなファンキー・ジャズに大変身。ホレスの異色作として、これはこれで「アリ」だと感じる。何も「ファンキー」ばかりがホレスのジャズでは無い。
 
 
 
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  ・『TOTO』(宇宙の騎士) 1977

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.02.09 更新

  ・Yes Songs Side A & Side B

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  ・そしてタツローはメジャーになる
 
 
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2020年7月 3日 (金曜日)

普遍的なハードバップなジャズ

ホレス・シルヴァーのファンキー・ピアノが長年のお気に入りである。とにかく判り易い。ジャズを聴き始めたジャズ者初心者の頃、ホレス・シルヴァーのピアノは判り易かった。マイナー調の愁いを、時にラテンの哀愁を帯びた、それでいて躍動感のあるフレーズ。これが「ファンキー」というものか、と僕は「ファンキー」というワードを、ホレス・シルヴァーのピアノのパフォーマンスを通じて理解した。

Horace Silver『Song for My Father』(写真左)。1963年10月31日、1964年10月26日 の2回のセッションの寄せ集め。ちなみにパーソネルは、次の2つの編成に分かれる。 1963年10月31日の録音で、Horace Silver (p), Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Gene Taylor (b), Roy Brooks (ds)。1964年10月26日の録音で、Horace Silver (p), Carmell Jones (tp), Joe Henderson (ts), Teddy Smith (b), Roger Humphries (ds)。

アルバム冒頭のタイトル曲「Song for My Father」が特に有名。一度聴いたら忘れない、とてもキャッチャーでポップで躍動感溢れるテーマが格好良い。この曲は、1964年の録音なので、テーマの印象的な、溌剌ファンキーなトランペットは「カーメル・ジョーンズ」である。ブルー・ミッチェルでは無い。寄り添うようなテナー・サックスは「ジョー・ヘン」。
 
 
Song-for-my-father  
 
 
この盤、冒頭のタイトル曲「Song for My Father」ばかりが有名だが、2曲目以降も、なかなかのファンキー・ジャズが展開されている。特に、1964年の録音の方が内容的に優れていて、ファンキーでポップな曲で固められたこの盤では、カーメル・ジョーンズとジョー・ヘンのフロント2管の相性がバッチリ。曲で言うと「The Natives Are Restless Tonight」「Que Pasa」「The Kicker」。

時は1960年代前半、モード・ジャズが主流を占めつつあったが、この盤にはスインギーなハードバップ、スインギーなブルースが満載。シルヴァーのピアノがファンキーなので「ファンキー・ジャズ」に分類されたりするが、この盤は古き良き時代のハードバップがメイン。演奏も端正で躍動感溢れ、イマージネーション溢れるアドリブが展開される。普遍的なハードバップなジャズがこの盤に詰まっている。

本作のタイトル曲「Song For My Father」はホレス・シルバーが自分の父親に捧げたもの。この盤のジャケ写の「帽子を被った葉巻のおじいさん」が実はホレス・シルヴァーの父君そのものである。ブルーノート・レーベルって、モダン・ジャズの硬派でならしたレーベルなんだが、こういうジャケ写での「粋な計らい」をする、お茶目なレーベルでもある。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・『You’re Only Lonely』 1979

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・Zep『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・太田裕美『手作りの画集』

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2019年5月13日 (月曜日)

見た目で判断したら駄目です。

ブルーノート・レーベルの4300番台は、1968年〜1972年の間のリリースなので、ジャズのポップス化の影響をモロに受けた時代。よって、4300番台のアルバムは、聴き易さ、ポップさを前面に押し出したプロデュースがなされていたように思う。ジャズらしい尖った要素は基本的に横に置いておいて、とにかく聴き易さ優先。

Horace Silver『You Gotta Take a Little Love』(写真左)。1969年1月の録音。ブルーノート・レーベルの4309番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Randy Brecker (tp, flh), Bennie Maupin (ts, fl), John Williams (b), Billy Cobham (ds)。往年のフロントである、Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts) は既にいない。
 
今の目で見ると、凄いフロントである。かのブレッカー・ブラザースで一世を風靡するランディ・ブレッカーのトランペットに、マイルスやハンコックのバンドで活躍したベニー・モウピンのテナー。そこに、なんとドラムに、クロスオーバー・ジャズの雄、千手観音ドラミングで勇名を馳せたビリー・コブハム。これだけのサイドメンであれば、尖ったクロスオーバー・ジャズが炸裂しそうだが、この盤ではそうならない。
  
 
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なんせリーダーが、ファンキー・ジャズの親玉、ホレス・シルバーである。尖ったクロスオーバー・ジャズなぞ、とんでもない。明らかに明確な、シルバー節満載のファンキー・ジャズが展開されている。ランディもモウピンもポジティブに神妙にファンキー・ジャズをやっている。しかし、これが「味があって良い」。やはり、ジャズの基本はハードバップなんやなあ、と妙に感心させられる。
 
コブハムのドラミングも千手観音ドラミングを封印して、オーソドックスなファンキー・ドラミングをやっており、これがまた、しっかりとファンキー・ジャズに「はまっている」。上手いんだなあ、これが。ということで、ブルーノートのホレス・シルバーらしいファンキー・ジャズ盤に仕上がっている。しかも、かなりポップな仕上がりになっているところが、時代背景を反映しているようで面白い。
 
しかしなあ、このアルバム・ジャケットだけがなあ。およそ従来のブルーノートの仕事とは思えない、思いっきりイラっとさせるジャケット・ワーク。これがまた、ブルーノートの4300番台の仕業でもある。でも、この盤のシルバー節満載のファンキー・ジャズは良い感じ。このギャップもまたブルーノートの4300番台の仕業でもある。いわゆる「見た目で判断したら駄目」な盤が多いので要注意である。
 
 
 
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2019年3月29日 (金曜日)

「ファンキー・ジャズ」の完成形

今を去ること40年余。ジャズを聴き始めた頃から、ホレス・シルヴァーのピアノが好きである。ファンクネスだだ漏れのスッと切れ味の良いピアノ。加えて、シルヴァーの書く曲がこれまたファンキーで良い。とにかく、シルヴァーのピアノは判り易い。どこから聴いても「ファンキー・ジャズ」なのだ。
 
そんなホレス・シルヴァー、ブルーノート・レーベルの「ハウス・ピアニスト」として、25年の間、契約を維持した。1956年以降、リーダーとして毎年アルバムをブルーノートで吹き込みながら、シルヴァーのポップなオリジナル曲は数々のヒット作となり、ブルーノート・レーベルを経営難から救っている。
 
そんなファンキー・ジャズの雄、ホレス・シルヴァーの「ファンキー・ジャズ」の完成形のひとつがこの盤であると思っている。Horace Silver『In Pursuit of the 27th Man』(写真左)。1972年10月6日、11月10日の録音。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Randy Brecker (tp, flh), Michael Brecker (ts), David Friedman (vib), Bob Cranshaw (el-b), Mickey Roker (ds)。
 
 
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シルヴァーのピアノ、クランショウのエレベ、ローカーのドラムをベースに、1つのセッションは、ブレッカー兄弟のフロントで、もう1つのセッションは、フリードマンのヴァイブをフロントに、シルヴァーのファンキー・ジャズが繰り広げられる。今から振り返ると、凄いメンバーが揃っている。特に、若きマイケル&ランディのブレッカー・ブラザースが溌剌とファンキーテナー&トランペットを吹きまくっている。
 
バイオレンス感の漂うファンキー・バップなタイトル曲「In Pursuit Of The 27th Man」、Moacir Santos作のアーバンでアダルトなジャズ・ナンバー「Kathy」、Weldon Irvine作のラテン・タッチの「Liberated Brother」など、スピリチュアル・ジャズな要素が楽しい演奏も興味を惹く。そんなスピリチュアルな音世界の中でも、シルヴァーのピアノはとりわけファンキーに響いている。
 
シルヴァーのピアノが躍動している。演奏全体の雰囲気が明るくてポップでハッピー。聴いて楽しい、独特のフレーズと音色を持ったシルヴァーのピアノ。ホント、躍動感が溢れ、活き活きとしたファンキー・ジャズである。演奏の内容もテクニックも上々で、しっかりまとまっている。安心して繰り返し聴ける「ファンキー・ジャズ」の完成形である。
 
 
 
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