2026年4月23日 (木曜日)

再ミントンハウスのクリスチャン

チャーリー・クリスチャンは1916年生まれ。ジャズ・ギターの開祖とされるレジェンド。1939年、ベニー・グッドマン楽団のメンバーに起用される。楽団で演奏活動を行う一方、ニューヨークで、次世代のジャズを担うであろうキーマン的ジャズマン達、ディジー・ガレスピー、セロニアス・モンクらと出会い、ジャム・セッションを重ねる。

Charlie Christian & Dizzy Gillespie『Jazz Immortal: After Hours Monroe's Harlem Mintons - Live』(写真左)。1941年5月、ハーレムにあるミントンズ・プレイハウスでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charley Christian (g), Dizzy Gillespie, Joe Guy (tp), Don Byas (ts), Kenny Kersey, Thelonious Monk (p), Nick Finton (b), Kenny Clarke (ds)。

1941年5月、ハーレムにあるミントンズ・プレイハウスで行われた「ビ・バップ誕生前夜」の必殺ライヴ音源。そんな、次世代のジャズを担うであろうキーマン的ジャズマン達と、ジャズ・ギターの開祖とされるレジェンド、チャーリー・クリスチャンとのジャム・セッションの記録である。録音したのは、アマチュアのジェリー・ニューマン。ダイレクト・カッティング方式の機械を持ち込んで収録したらしい。

2000年のリマスター音源を聴いているのだが、これが意外に良い。チャーリー・クリスチャンのギター・ソロもクリアーに録れていて、ガレスピーのトランペットや、ドン・バイアスのテナーのソロなど、躍動感の感じられる音で、なかなかに楽しめる。以前は、いかんせん、録音が悪いなあ、とヘビロテ盤とまではいかなかなったが、この音質であれば、ながら聴きにも十分耐える。
 

Charlie-christian-dizzy-gillespiejazz-im

 
チャ-リー・クリスチャンが、ジャズ界に残した功績は、それまでコード弾きでリズム楽器、若しくは伴奏楽器として、バッキング・オンリーだったギターという楽器を、脅威の一本弾きで、管楽器同様、フロント楽器として、ソロがとれる楽器へと進化させたこと。

そのフロント楽器としてのソロ・パフォーマンスがこのライヴ盤にしっかりと記録されていて、今の耳にも十分に訴求するテクニックの素晴らしさ、フレーズのユニークさである。このライヴ盤でのチャーリー・クリスチャンのギターを、現代のジャズ・シーンに持ち込んでも十分に通用する内容とテクニックの高さ。電光石火なクリスチャンの「カッ飛び」ソロは聴き応え十分。

ちなみに、このライヴ盤は、チャーリー・クリスチャンとディジー・ガレスピーとの双頭リーダー扱いになっているが、そもそも、チャーリー・クリスチャンは生涯、リーダー作を出していない。

わが国では、邦題「ミントンハウスのチャーリー・クリスチャン」でリリースされているのでややこしいのだが、収録全9曲中、5曲までチャーリー・クリスチャン入りのジャム・セッションの記録になる。その5曲「Swing to Bop」「Stompin' at the Savoy」「Up on Teddy's Hill」「Guy's Got to Go」「Lips Flips」のパフォーマンスで、チャーリー・クリスチャンの弾くギターの特徴がはっきりと判る。

2000年のリマスター音源では、ジャズ者初心者の方々にもお勧め出来る音質になっていて、チャーリー・クリスチャンの「ジャズ・ギターの開祖」とされる所以が良く判る。今までは、ジャズ者中堅の方々からジャズ者ベテランの方々向け、としていたが、音質が改善された音源については、ジャズ者初心者の方々に是非、聴いて欲しいレベルのライヴ盤に昇格している。
 
 
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2026年4月22日 (水曜日)

エリントン楽団の小作品集です

リラックスして聴けるビッグバンドの演奏の数々。ピアノをストレイホーンに全面的に任せている曲や、珍しい楽器(バスクラリネットやバイオリンなど)がソロをとる場面が多くあって、普段のエリントン楽団のビッグバンド・サウンドとは一味違う、「室内楽のような親密さ」を感じられるのが最大の特徴。

Duke Ellington『Blues in Orbit』(写真左)。1958年2月4, 12日、1959年2月25日、12月2, 3日の録音。ちなみにパーソネルは、Duke Ellington (p), Billy Strayhorn (p), Ray Nance (tp, vln), Britt Woodman (tb), Jimmy Hamilton (cl, ts), Johnny Hodges (as), Russell Procope (as, cl), Paul Gonsalves (ts), Harry Carney (bs), Jimmy Woode (b), Jimmy Johnson, Sam Woodyard (ds) をはじめとする、デューク・エリントン楽団。

当時のエリントン楽団の充実ぶりを伝える重要作として高く評価すべきアルバムである。豪華なブルース・ナンバーがやっぱり良い。「Three J's Blues」は、3人の「J」から始まる奏者、ジミー・ハミルトン(クラリネット)、ジョン・サンダース(トロンボーン)、ジョニー・ホッジス(アルトサックス)のソロをフィーチャーした12小節ブルース。「C Jam Blues」は、エリントンの代表的なスタンダード曲。
 

Duke-ellingtonblues-in-orbit

 
このアルバムのタイトル曲は「Blues in Orbit」。非常にスローで重厚なブルース。夜の静寂を感じさせるような、深く落ち着いた演奏が、当時の「深夜のセッション」という録音環境を象徴している。アルバムの最後を飾る「Villes Ville Is the Place, Man」は、アップテンポでエネルギッシュな曲。ホッジスの伸びやかなサックスと、楽団全体のダイナミックなアンサンブルが最高に恰好良い。

エリントンの右腕、ビリー・ストレイホーンが作曲・編曲を手がけ、自らピアノも弾く、洗練されモダンな響きを持つ「Smada」。「Blues in Blueprint」は、低音のバスクラリネットが印象的な、不気味でミステリアスな雰囲気を持つブルース。エリントンとストレイホーンによる実験的な響きがユニーク。

ブルースを中心とした小作品集。当時、エリントンが取り組んでいた組曲形式の大作とは対照的な内容。プロデューサーのテオ・マセロによると、セッションは深夜0時に始まり、午前2時にはステーキの出前で休憩を挟むといった、非常にリラックスした環境で録音されたとのこと。「ルーズなジャム(即興)」志向の、当時のエリントン楽団としては珍しいスタジオ録音盤。バーチャル音楽喫茶「松和」のエリントンの愛聴盤の一枚である。
 
 

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2026年4月12日 (日曜日)

”エラの歌唱力に舌を巻く” 盤

僕のジャズ・ヴォーカルの好みは偏っている。基本、旧来の伝統的なジャズ・ヴォーカルのマナー、こってこてのオールド・スタイルのフェイクやヴィブラートの入った歌唱が苦手。ストレートでポップな唄いっぷりが好みで、ヴォーカル盤はたまにしか聴かなかった、のだが、最近、何故か、ちょくちょく聴く様になった。歳を取ったせいだろうか(笑)。

Ella Fitzgerald『The Sunshine of Your Love』(写真左)。1968年10月、サンフランシスコのフェアモント・ホテル、ベネチアン・ルームでのライヴ録音。MPSレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ella Fitzgerald (vo), バックバンド=Tracks 1–6:Ernie Hecksher's Big Band、Track 7–12 Tommy Flanagan Trio、Tommy Flanagan (p), Frank DeLaRosa (b), Ed Thigpen (ds)。

収録曲の大部分は、1960年代後半の現代的なポップ・ソングのジャズ・カヴァー。女性ジャズ・シンガーの最古参の一人、レジェンドのエラ・フィッツジェラルドが、1960年代後半の現代的なポップ・ソングを唄う。旧来の伝統的なジャズ・ヴォーカルのマナーで唄うのかな、とあまり期待して無かったのだが、冒頭のレノン=マッカートニーの「Hey Jude」を聴いて、これは、と思わず引き込まれる。
 

Ella-fitzgeraldthe-sunshine-of-your-love  

 
続くタイトル曲が「The Sunshine Of Your Love」は、当時、人気のロック・グループ「クリーム」のヒット曲。ジャック・ブルースとエリック・クラプトンの作。これがまた、見事にジャズ・ボーカル曲に変身している。ベースがブルースという有利な点はあるにせよ、先の「Hey Jude」を含めて、マーティ・ペイチのアレンジが素晴らしい。

他の曲、バカラックの名曲や、ディオンヌ・ワーウィックやアレサ・フランクリンの歌唱でお馴染みの「This Girl's in Love With You」、映画音楽のスタンダード曲の「Watch What Happens」や「Give Me The Simple Life」など、ポップな曲を、エレは難なく、モダンに、ポップに、ロックに唄い上げる。エラの歌唱力に脱帽である。エラは、どんなポップ曲もスインギーなジャズ・ボーカルに変身させる。

実は、僕は高校時代、FMで、エラの「Hey Jude」と「The Sunshine Of Your Love」を聴いて、この2曲はエアチェックして愛聴していた。この2曲、どのアルバムに入っているんだろう、と思いながら、大学時代、例の秘密の喫茶店のママさんがこのライヴ盤を教えてくれた。それ以来、ジャズ・ヴォーカルが苦手な僕の愛聴盤の一枚になった。思い出深いエラのライヴ盤である。
 
 

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2026年1月27日 (火曜日)

エロール・ガーナーを再聴する

昔、僕がジャズを本格的に聴き始めた約50年前。ジャズ初心者向けのアルバムの紹介本や、紹介記事、紹介チラシに、なぜか必ず入っていたピアニスト、エロール・ガーナー(Erroll Garner)。僕は、当時、このエロール・ガーナーのリーダー作、それも何故か『Concert By The Sea』ばかりが紹介されていて、これも勉強とばかりに購入、意気込んで聴き始めたのだが、これが、なんとも良く判らない。戸惑った。

Erroll Garner『Contrasts』(写真左)。1954年7月27日の録音。ちなみにパーソネルは、Erroll Garner (p), Wyatt Ruther (b), Fats Heard (ds)。エロール・ガーナーが1954年に発表したスタジオ録音のアルバムである。1988年のCDリイシュー時には「The Original Misty」というタイトルでリイシューされた。

ガーナーの個性は、スイング・ジャズを踏まえたピアノだったり、当時の流行の弾き方だったブギウギ・ピアノであったり、スライド・ピアノであったりする。つまりは、モダン・ジャズの基となった、モダン・ジャズ以前の、モダン・ジャズの要素となった、ポップで大衆的なピアノの響きなのである。つまり、モダン・ジャズにおけるピアノとは、アプローチ、テクニック、響きが違う。そこが「戸惑い」の原因。

ガーナーの個性は、即興性というジャズの基本を踏まえつつ、テクニックは優秀、そして、曲の美しいフレーズを捉えて、歌心満点のピアノを弾きまくるという点。つまり、聴き手を十分に意識した、聴き手に「聴いて楽しませる」ことn主眼を置いた、ジャズ・ピアノの「エンタテインメント性」を表出した、最初のピアニストということになる。
 

Erroll-garnercontrasts 
 

例えば、アート・テイタムは、ガーナーと同じ時代を生きたピアニストだが、テイタムは、驚異的なテクニックを武器に、アクロバティカルな、テクニックの高さをウリにした、エンタテインメント性を追求したピアノ。ガーナーは、逆に、テクニックの高さはあるが、それよりも歌心溢れるフレーズ、いわゆる、聴き手を意識したエンタテインメント性をウリにしたピアノであると言える。

そんなガーナーの個性がとても良く理解出来るアルバムがこの『Contrasts』。ガーナーはテクニックの高さを優先しないで、歌心を重視した弾きっぷりで、明らかにビ・バップとは違う切り口での弾き回し。スイング・スタイルのピアノは、この歌心だけを重視して、テクニックは二の次、あとはリズム楽器としての役割を追求するものだったので、ガーナーのピアノとは全く性質が違う。

ガーナーの「ビハインド・ザ・ビート」が心ゆくまで感じる事ができる。「ビハインド・ザ・ビート」とは、左手でビートを刻み、右手のメロディーが、左手のビートから若干遅れて出てくる弾き方。弾き方というか、エロル・ガーナーの場合は、自然発生的にこの弾き方になっている。これが、このアルバムでは良く判る。

モダン・ジャズ期にテイタムのテクニックの高さをウリにした、エンタテインメント性を弾き継いで、モダン・ジャズ・ピアノとして成立させたのが「バド・パウエル」、歌心溢れるフレーズをウリにした、エンタテインメント性を弾き継いで、モダン・ジャズ・ピアノとして成立させたのが「ビル・エヴァンス」。そんな単純な解釈を僕はして、彼らのピアノを楽しんでいる。
 
 

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2026年1月18日 (日曜日)

ベネット&エヴァンスの続編盤

伴奏上手でも名を馳せていたビル・エヴァンス。フロントがホーン楽器の伴奏を記録したアルバムはいろいろあるが、ボーカルのバックで演奏上手を披露したセッションは、男性ジャズ&ポップス歌手、トニー・ベネット(Tony Bennett)、そして、スウェーデンの女性歌手、モニカ・ゼタールンド(Monica Zetterlund)の2人とだけ。

Tony Bennett and Bill Evans『Together Again』(写真左)。1976年9月27–30日の録音。ちなみにパーソネルは、Tony Bennett (vo), Bill Evans (p)。男性ジャズ・ボーカリストの代表格の1人、トニー・ベネットと、ジャズ・ピアニストのレジェンド、ビル・エヴァンスとのデュオ盤である。

1975年6月の録音の『Tony Bennett / Bill Evans Album』(2021年2月19日のブログ・左をクリック)の続編である。約1年3ヶ月後の「アゲイン盤」。アルバム全体の雰囲気は、『Tony Bennett / Bill Evans Album』と変わらない。気持ち良い伴奏を得て、朗々と気持ち良く唄うベネットと、そんな気持ちの良い伴奏を供給する、伴奏上手のエヴァンス。
 

Tony-bennett-and-bill-evanstogether-agai

 
ミッド・テンポのバラードからジャズ・スタンダード曲がメイン。影なく朗々とダンディズム溢れる唄いっぷりのベネットのバックで、耽美的なフレーズながら、意外とバップな覇気ある伴奏ピアノが浮き出てきて、なかなか良い雰囲気。それでいて、ベネットの熱唱を決して邪魔しないのだから、伴奏上手のエヴァンスの面目躍如である。

「You Must Believe in Spring」「A Child Is Born」「You Don't Know What Love Is」など、ビル・エヴァンスのお気に入り曲も選曲されていて、ビル・エヴァンスのピアノ歌伴との親密感溢れるベネットの歌唱が堪能出来る。朗々と唄い上げるベネット、そして、間奏で、耽美的なフレーズを回しながら、クールでバップな弾き回しを聴かせるビル・エヴァンス。この2人のレジェンドの熟練したパフォーマンスの共演は、やはり優れいている。

一枚目の共演盤『Tony Bennett / Bill Evans Album』と、この続編の『Together Again』のどちらが優れているか、という議論もあるが、どちらも、2人のレジェンドの個性と味のあるテクニックとが相乗効果を生んでいて、甲乙つけるのは「野暮」というものだろう。まあ、我が国では「続編盤」は「二番煎じ」と決めつけて、最初の盤より続編の方が、居抜きで評価をさげる傾向にあるので、まずは、自らの耳で聴いてみることが先決だろう。
 
 

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2026年1月 5日 (月曜日)

”Jazz At Massey Hall”を再聴

初心者向けのジャズ盤紹介の中で、この盤がなぜ、初心者向けの、ジャズ入門者向けのアルバムとして紹介されているのか、理解に苦しむアルバムが何枚かある。どう考えたって、そのアルバムの演奏内容って、ジャズ者中級者レベルでも、ちょっと難しいものが、初心者向けのジャズ盤紹介に上がったりしている。その代表格がこの盤、かな。

『The Quintet: Jazz At Massey Hall』(写真左)。1953年5月15日、カナダ・トロントの「マッセイ・ホール」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dizzy Gillespie (tp, vo), Charlie Parker (as), Bud Powell (p), Charles Mingus (b), Max Roach (ds)。 メンバーそれぞれが「ビ・バップ」の立役者、ビッグ・ネームばかり5人が集結したクインテット編成。

このライヴ録音では、ハプニング続きで、資料を見る限り、通常であれば、ライヴ・パフォーマンスをするような状態ではなかった。そもそも、このライヴが行われた時間帯に、ロッキー・マルシアーノとジャージー・ジョー・ウォルコットのボクシングの試合が同時開催されていたのが元凶で、コンサートを見に来る観客が激減。演奏メンバーへのギャラがまともに払え無い状態。

加えて、パーカーは、質屋に入れてしまった自分の楽器の代わりに、借りてきた白いプラステック製のアルト・サックスで演奏、加えて、契約の関係で、アルバムには「チャーリー・チャン」の変名でクレジットされている。ガレスピーは、ボクシングの試合が気になって、自分のソロが終わると、楽屋に引っ込んでテレビを見ていた。真面目実直なミンガスは、そんなガレスピーに切れて食ってかかったとか。とまあ、まともな演奏ができる状態では無い(笑)。
 

The-quintet-jazz-at-massey-hall
 

しかし、このライヴ音源を聴けば、それぞれが水準以上の演奏をくり広げているのだから、ジャズというのは「良く判らない」(笑)。ボクシングが見たくて、気もそぞろだったガレスピーは溌剌とトランペット・ソロをくり広げ、パーカーは、プラスチック製のアルト・サックスとは思えない、エモーショナルなバップ・フレーズを吹き上げる。問題児2人のフロントは、意外とまずまずのパフォーマンスをくり広げている。が、ベストに近いとは思えないけど。

パウエルのピアノは、彼として水準レベルの演奏に留まる。体調が優れなかったのだろう。覇気が不足している様に感じる。ドラムのマックス・ローチが一番安定していて、ビ・バップ時代で活躍していたと同じレベルのドラミングを披露していて立派。一番、実直真面目だったミンガスのベースは、実際の録音では、録音レベルが低すぎたので、後日、オーヴァーダビングしている。なので、ミンガスのベースのパフォーマンスは割り引いて聴くしかない。

2002年にジャズファクトリーレーベルからリリースされた『 Complete Jazz at Massey Hall』(写真右)には、オーヴァーダビングなしのコンサート全曲が収録されている。これは「ジャズの歴史の記録」としては有用だが、ミンガスのベースが聴き取り難く、ライヴ音源としては、明らかにレベルは落ちる。

メンバーそれぞれが「ビ・バップ」の立役者、ビッグ・ネームばかり5人が集結したライヴ音源なので、ジャズ初心者の方々が「ビ・バップ」時代のビッグネームの演奏を、まとめて手軽に聴けるお徳用盤、という評価もあるが、それは逆だろう。ビッグネームそれぞれのベスト・パフォーマンスを体験・理解してから、このユニークなライヴ盤を聴くべきで、ビ・バップを理解しているからこそ、エピソードも含めて楽しめる、ユニークなライヴ盤である、と僕は解釈している。
 
 

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2025年11月27日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・140

1980年のリリースの、Alberta Hunter『Amtrak Blues』を突然、思いだして、45年振りの再聴。ブルースとジャズが融合した、独特の個性的なボーカル。ブルースの泥臭さをジャズが中和している感じ。唄いっぷりは堂々としていて迫力満点だが、耳に優しく心に心地よく響く。素晴らしいボーカル。そして、このアルバータ・ハンターの他のアルバムを物色していて、この盤に行き当たった。

Alberta Hunter With Lovie Austin's Blues Serenaders『Chicago - The Living Legends』(写真左)。1961年9月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Alberta Hunter (vo), Darnell Howard (cl), Jimmy Archey (tb), Lovie Austin (p), Pops Foster (b), Jasper Taylor (ds)。伝説の女性ブルース・シンガー、アルバータ・ハンターのピアニストのロヴィー・オースチンと共演した名作。

まずは、アルバータ・ハンターの歌声である。根っこはブルース。ブルースの泥臭さをディキシーランド&ニューオリンズ・ジャズに乗せて整える、そんな感じのハンターの歌唱はジャジーであり、説得力がある、そして、とにかく上手い。「St. Louis Blues」「Downhearted Blues」「You Better Change」といった曲で最高のパフォーマンスを聴かせてくれる。
 

Chicago-the-living-legends

 
そして、1961年の録音にも関わらず、演奏全体の雰囲気は、ディキシーランド&ニューオリンズ・ジャズ志向。このオースティンの「ブルース・セレナーダーズ」(トロンボーンのジミー・アーキー、クラリネットのダーネル・ハワード、ベースのポップス・フォスター、ドラマーのジャスパー・テイラーを含む五重奏団)の演奏、これが良い。やはり、このジャズの音が、ジャズの原風景なんだろうな、と改めて納得する。

このオースティンの「ブルース・セレナーダーズ」の演奏、ハンターのボーカル曲では、簡潔なソロ・パフォーマンスのスペースがあって、ここで瞬間芸的なアドリブ・パフォーマンスを披露する。これが見事。そして、「Sweet Georgia Brown」「C-Jam Blues」「Gallion Stomp」の3曲が、「ブルース・セレナーダーズ」単独のインスト・ナンバーであり、このインスト・パフォーマンスが、ディキシーランド&ニューオリンズ・ジャズ志向のハードバップという感じで、これも見事。

ピアニストのロビー・オースティンにとって、20年ぶりのレコーディングだった。彼女は当時74歳近くで、シカゴのダンススクールでピアニストとして働いていた。アルバータ・ハンターは、1954年に看護師になるために音楽界を引退し、その間、2週間前に一度しかレコーディングしていなかった。そんな二人が奇跡の邂逅を果たしてのこのライヴ録音、そして、この優れたパフォーマンス。ジャズって凄いなあ、と思う瞬間である。
 
 

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2025年9月 5日 (金曜日)

エリントン楽団の異色盤です。

ベツレヘムのデューク・エリントン作品の人気盤である。この盤では、エリントン楽団としては珍しい、デュークのオリジナル曲だけでなく、ジャズ・スタンダード曲を演奏している。ジャズ・スタンダード曲をエリントン楽団が演奏すると「こうなる」が明快に理解出来る貴重盤でもある。

『Duke Ellington Presents..』(写真左)。1956年2月の録音。ベツレヘム・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは以下の通り。元メンバーが再集結、往年のエリントン・サウンドの再演という様なパーソネルである。

Duke Ellington (p), Cat Anderson, Willie Cook, Ray Nance, Clark Terry (tp), Quentin Jackson, Britt Woodman (tb), John Sanders (valve-tb), Jimmy Hamilton (cl, ts), Johnny Hodges (as), Russell Procope (as, cl), Paul Gonsalves (ts), Harry Carney (bs), Jimmy Woode (b), Sam Woodyard (ds), Ray Nance (vin, vo), Jimmy Grissom (vo)。

1曲目「Summertime」(George Gershwin, Ira Gershwin, Dubose Heyward)
2曲目「Laura」 (Johnny Mercer, David Raksin)
3曲目「I Can't Get Started」 (Vernon Duke, Ira Gershwin)
4曲目「My Funny Valentine」 (Lorenz Hart, Richard Rodgers)
(この間はデューク曲が続く)
9曲目「Deep Purple」 (Peter DeRose, Mitchell Parish)
10曲目「Indian Summer」 (Al Dubin, Victor Herbert) 
 

Duke-ellington-presents

 
ジャズ・スタンダード曲が、エリントン・アレンジに染まっていく、濃密で幻想的なエリントン・サウンドで演奏されるジャズ・スタンダード曲は、アーバンでブルージーでジャジー。エリントン楽団ならではの、スタンダード曲の解釈が、この盤の最大の聴きものである。

聴いていると気がつくが、個性のあるメンバー達をフューチャーした音作りも、この盤のユニークなところ。キャット・アンダーソンのトランペットが見事な「Summertime」、ポール・ゴンザルベスのテナー・サックスが印象的な「Laura」「Cotton Tail」。

ハリー・カーネーのバリトンが熱い「Frustration」、ジョニー・ホッジスのアルト・サックスに惚れ惚れする「Day Dream」。ジミー・ハミルトンのクラリネットが楽しい「Deep Purple」。ラッセル・プロコープのアルト・サックス・ソロが美しい「Indian Summer」。エリントン楽団の面目躍如。

ネットを眺めてたら、このアルバムを「エリントニアンのショーケース」とする記事があって、なるほど、っと納得。個性のあるメンバー達をフューチャーするところは確かに「エリントニアンのショーケース」。そして、エリントン・バンドっぽくないところが魅力の「エリントン楽団が考えるジャズ・スタンダード集」。この盤、エリントン楽団の異色盤。意外と面白い内容です。
 
 

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2025年8月 4日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・292

ハワード・マギーは、1918年3月生まれ、米国オクラホマ出身。速い運指と高音で知られた、ビーバップにおけるトランペット奏者の先駆者の一人。マギーはロサンゼルスのビーバップ・シーンを代表するミュージシャンであり、数多くのコンサートやレコーディングに参加している。1950年代の大半は薬物問題で活動は停滞。1960年代に入って、一時、リーダー作を連発したが、1960年代半ばには再びキャリアが停滞し、1976年までレコーディングは再開しなかった。

Howard McGhee『The Return of Howard McGhee』(写真左)。1955年10月22日、NYでの録音。ベツレヘム・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Howard McGhee (tp), Sahib Shihab (bs, as : tracks 1, 2, 4-9 & 11), Duke Jordan (p), Percy Heath (b), Philly Joe Jones (ds)。

ハワード・マギーは「ビーバップ」のトランペッターと言って良いかと思う。そんなマギーの、麻薬禍からの復帰を記念したアルバムがこの『The Return of Howard McGhee』。1955年のアルバムなので、演奏のトレンドは「ハードバップ」ど真ん中。ビーバップにおけるトランペット奏者の先駆者の一人のマギーが、ハードバップなマナーでトランペットを吹きまくる。ここがこの盤の「聴きどころ」。
 

The-return-of-howard-mcghee

 
ハードバップを吹きまくるマギー。これが凄く良い。テクニックが確かなのはもちろん、マギーの吹くトランペットが実に個性的。少し濁った様なザラッとしたジャジーな音、伸びの良い高音、溢れる歌心。最初聴いた時の印象が「誰や、これ」。ビーバップにおけるトランペット奏者の先駆者なんで、どれだけハードなブロウが出てくるかとおもいきや、東海岸には無い、聴き心地優先、趣味の良い小気味良いトランペット。

サイドマンも良い演奏。パーソネルを見渡すと、まず、マギーとフロント2管を組む、サヒブ・シハブのバリサクが印象に残る。流麗なマギーのトランペットに、ゴツゴツブリブリなシハブのバリサクの対比が珍しくも実にブルージー。そして、ジョーダン=ヒース=フィリージョーのリズム隊の素晴らしいバッキング。このリズム隊の叩き出す「ハードバップ」がマギーのトランペットを鼓舞し引き立てる。

録音はNYだが、アレンジはLA。東海岸ジャズと西海岸ジャズのハイブリットな内容は、ベツレヘム・レーベルならではの「仕業」。そんな西海岸ジャズ志向の「聴かせる」アレンジに乗って、マギーのバラード演奏が秀逸。ジャケットも秀逸。もっともっと評価されて然るべき、ハードバップなマナーのマギーのトランペットである。
 
 

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2025年7月21日 (月曜日)

カーメン・マクレエの名ライヴ盤

アトランティックはブラック・ミュージック」というレーベル・カラーの印象は強く、ミュージシャンの多彩さ及びジャズ・ジャンルの幅広さは、ジャズ・レーベルの中でも白眉。ジャズ・ボーカルも、ルース・ブラウン、クリス・コナー、メル・トーメ、レイ・チャールズなど、充実のラインナップである。

Carmen McRae『Great American Songbook』(写真左)。1971年11月6日、ロスの「Donte's」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Carmen McRae (vo, p on "If the Moon Turns Green" and "Mr Ugly"), Jimmy Rowles (p), Joe Pass (g), Chuck Domanico (b), Chuck Flores (ds)。グレート・アメリカン・ソング・ブック。SwingJournal 選定ゴールドディスク 第2期 第56弾。

カーメン・マクレエは 1920年4月、NYハーレムにて、ジャマイカ移民の両親の間に生まれ、.1994年11月、脳卒中から呼吸器疾患を合併し、74歳にて逝去。若い頃、ピアニストとして活動していたので、ピアノの腕もまずまず。女性ジャズ・ヴォーカルを代表する一人である。

実は、僕がジャズを本格的に聴き始めて、最初に購入したアルバムである。ジャズ・ボーカルについては、FMをメインに聴き始めたのだが、女性ボーカルがどうしても馴染めない。ビリー・ホリディ、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーンと、ジャズ盤入門本の勧めるままに聴いていくのだが、どうにも耳に馴染まない。

女性ジャズ・ボーカルの正統派、朗々とした唄いっぷりと「こぶし回し」、過剰なビブラート、フェイク、どうしても耳に馴染まない。困ったなあ、と思っていたところに、FM放送から僕の耳に飛び込んで来た歌声、曲は「(They Long to Be) Close to You(遙かなる影)」。
 

Carmen-mcraegreat-american-songbook

 
カーペンターズがカヴァーして大ヒットしたバカラックの名曲。このポップな曲を、スッキリとしたストレートな声で、暖かく繊細なニュアンスをしっかりと唄い上げる。確かに伴奏はジャズ。この女性ボーカリストは誰か。カーメン・マクレエその人でした。次の日、この曲が収録されているアルバムをレコード屋で探し当てゲットした。

やっと、このライヴ盤で、僕は、耳に馴染む女性ジャズ・ボーカルに出会った気がした。まず、小編成のジャズ・コンボをバックにしたライヴ・ステージの様子を収録した演奏が、シンプルで風通しが良くて良い。オケをバックにした女性ボーカルのアルバムは、耳に「もたれて」いけない。

タイトル通り、米国のヒット・ソングを出来るだけ、多く扱い多く唄い収録する。そんなシンプルなアルバム制作の方針も好感度抜群。名曲・秀曲のオンパレードで、聴いていてとても楽しい。レオン・ラッセルの名曲「A Song for You」が、さり気なく入っているのが「ニクい」。

ロックやポップスの名曲も、このライヴでの解釈はもちろんモダン・ジャズ的なものだが、とにかくアレンジが秀逸。いわゆる変な「ジャズ臭さ」が無くて、すっきりストレートな伴奏に乗って、シンプルにウォームに唄い上げるマクレエ。得意のバラード曲も良い感じだが、軽快なポップな曲での歌唱が絶妙で、本当に楽しく聴かせてくれる。

このライヴ盤、録音もとても良くて、聴いていてとても気持ちが良い。レコードやCDでは、曲前お楽しいおしゃべりが聴けて、これも楽しく聴ける。

僕は、この『Great American Songbook』に出会って、女性ジャズ・ボーカルに馴染むことが出来た。以来、このマクレエのボーカル盤、長年の愛聴盤です。
 
 

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