マイケル急逝前の傑作の一枚
1970年代以降での「早逝の天才サックス奏者」、マイケル・ブレッカー。コルトレーン&ロリンズ時代の「後を継ぐ」ジャズ・サックスのリーダー格であった。我が国では何故か「コルトレーンのフォロワー」と看做され、何かとコルトレーンと比較されては、コルトレーンよりもレベルが低いとか、コルトレーンの方が優れている、とか的外れな評価をされていた。
が、そんな的外れの評価はとんでもないもので、マイケル・ブレッカーは、コルトレーン流のジャズ・サックスを更に発展・深化させ、マイケル独特の個性を反映させた、「コルトレーンの次に現れた、ジャズ・サックスの新たなスタイリスト」と僕は認識している。大仕掛けで大向こうを張った吹き回しは無いが、「テクニック、歌心、イマージネーション」の全てが超一流でマイケル独特なもの。
Michael Brecker『Wide Angles』(写真左)。2003年1月22–24日の録音。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (ts, arr), Adam Rogers (g), John Patitucci (b), Antonio Sánchez (ds), Daniel Sadownick (perc), Steve Wilson (a-fl), Iain Dixon (b-cl, cl), Robin Eubanks (tb), Alex Sipiagin (tp), にオーケストラがバックに付く。
J2007年1月13日、57歳の若さで急逝する4年前のリーダー作。いわゆる「ウィズ・ストリングス」に類する、マイケル念願の15人編成、オーケストラがバックに入るラージ・アンサンブル。ホーンセクションとストリングスが効果的に入り、かつ、優れたアレンジによって、マイケル・ブレッカーのテナー・サックスが更に際立つ企画盤である。
始まりは、15人編成、ホーンセクションとストリングスのバッキングがフルフルで、大仕掛けでスケールの大きい「ウィズ・ストリングス」風の演奏から入る。「ウィズ・ストリングス」風の伴奏なので、どこかイージーリスニング風のイメージが漂い、これはなあ、と一瞬思ったするが、マイケルのテナーが出てくると、演奏の雰囲気はグッと締まって、メインストリームな純ジャズの響きにガラッと変わる。
マイケルのテナーの音は、コルトレーンのそれとは似て非なるもので、似ているところは「ストレートな吹奏」なところだけ。フレーズの吹き回し、フレーズ展開のイマージネーション、テナー自体の「音」、どれもがマイケル独自の独特の個性であって、このテナーを聴いて、コルトレーンのフォロワーとするところが全く理解できない。今一度、確認するが、マイケル・ブレッカーは「コルトレーン時代の次に現れた、ジャズ・サックスの新たなスタイリスト」である。
そんなマイケルのテナーが一番目立ち、一番格好良い。大編成の演奏から、曲を進めるうちに、少しずつ編成が小さくなっていき、それにつれて、マイケルのテナーがグングン前へ出て、グングンとクールに鳴り響き、マイケルのテナーの、唯一無二で優れた「テクニック、歌心、イマージネーション」の全てが堪能できるなって、ラストの「"Never Alone」を迎える。このアルバム展開の作りも優秀。
全く耳につかない、今の耳にも新しく響くゴージャスな「ウィズ・ストリングス」風のメインストリーム・ジャズ。自然と流れる様に展開するモーダルなフレーズ。スケール大きく大らかで力感溢れ、優しく繊細な吹き回し。この『Wide Angles』は、マイケルの傑作の一枚、ジャズ・サックスの名盤の一枚でしょう。
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