「しみじみ」とするジャズが良い
年末である。今年もあと僅かである。こういう時期は、聴いて「しみじみ」とするジャズが聴きたい。「しみじみ」とする音色と言えば、やはり「管楽器」だろう。そう、サックスだ。サックス系の音色で「しみじみ」したい。
ということで選んだアルバムがこれ。Roland Kirk『The Inflated Tear』(写真左)。1967年11月27〜30日の録音。「ジャズの虚無僧」、ローランド・カークの名盤である。ちなみにパーソネルは、Ron Burton (p), Steve Novosel (b), Jimmy Hopps (ds), Dick Griffin (tb), そして、Roland Kirk (tenor saxophone, manzello, stritch, clarinet, flute, whistle, cor anglais, flexafone)。
ローランド・カークは、マルチ・リード&マルチ・インストルメント奏者であるが、やはり、まずはテナーが秀逸。冒頭の「The Black and Crazy Blues」のゆったりとした、漢字で書くと「哀歌」と書くような、思いっきりブルージーなテナーの音色が心を揺さぶる。思わず「しみじみ」する。とこれは、テナーとクラリネットの2本吹きの効果が出ているのかなあ。
この1曲目の「The Black and Crazy Blues」については、ローランド・カークは「俺が死んだらこの曲を流して欲しい」と語っていたという。なるほど、ニューオーリンズ伝統の葬送行進曲に則った曲なのね。感涙の名演、名曲です。ほんと、心が揺さぶられる様に「しみじみ」します。
そして、ローランド・カークはフルートの名手でもある。2曲目の「A Laugh for Rory」を聴けば、その腕前が良く判る。なんと愛らしいフルートだろう。これがあの強面の「ジャズの虚無僧」、ローランド・カークが奏でる音だろうか。カークの強面な表情とこのフルートの愛らしい音色とのギャップが激しい。でも、これが良い。あっけらかんと「しみじみ」する。
そして、5曲目のタイトル曲「The Inflated Tear」。これがまた、心揺さぶられる「しみじみ」さ。哀愁の咆哮です。複数管楽器の同時吹きで、思いっきり個性的で重厚なハーモニーが耳に押し寄せます。音として「怒り・悲しみ・喜び」を織り交ぜ、マルチ・リード&マルチ・インストルメントで唄い上げた、感涙の名演、名曲です。
この「しみじみ」系の名演、名曲が要所要所に配置されて、他の曲は聴いていて楽しいモダン・ジャズの演奏の数々。しみじみしつつも、躍動的な演奏にもポジティブに心揺さぶられる。いやはや、この『The Inflated Tear』って、聴けば聴くほど、その良さにどんどん填まっていく、そんなジャズ名盤です。
ローランド・カークのリーダー作の中で、普通に聴いていて、あまり違和感の無いアルバムがこの『The Inflated Tear』だと思います。ローランド・カークの入門盤としても最適でしょう。そして、「しみじみ」とする名曲、名演を聴きたければ、このアルバムはイチ押しの一枚です。
震災から3年9ヶ月。決して忘れない。まだ3年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
最近のコメント