突然のリリース『SANTANA Ⅳ』
いやはや、この時代になって、こんなに魅力的なラテンロックのアルバムが出てくるなんて思わなかった。サンタナ初期メンバーが実に45年振りに再結集して制作したオリジナル・スタジオ盤がリリースされたのだ。
そのタイトルもズバリ『SANTANA Ⅳ(サンタナⅣ)』(写真)。アルバム・ジャケットもサンタナ初期の時代を彷彿させるデザイン。このアルバム・ジャケットだけでも、僕達、70年代ロックのマニアは「買い」である。
さて、その初期メンバーとは、グレッグ・ローリー(キーボード/ヴォーカル:後にジャーニーに加入)、マイケル・カラベロ(パーカッション)、マイケル・シュリーヴ(ドラムス)、そして71年の『サンタナⅢ』で当時弱冠17歳という若さで抜擢されたギタリストの二ール・ショーン(現ジャーニー)、そして、親分であるカルロス・サンタナ(ギター)。
とにかく、二ール・ショーンがサンタナを口説きに口説いたらしい。確かに、サンタナ初期の音はサンタナとしても、とうの昔に置いてきた音なんだろうし、今、何もその音世界にチャレンジすることもないんだろうしね〜。
サンタナのコメントは以下の通り。「魔法にかかったようだった。無理せずとも、途方もないヴァイブが起こったんだ。あとは歌とジャム・セッション部分のバランスを考えただけだね。聞いた人が即座にサンタナだとわかるようにね。この音楽は僕らの中から出てきた叫びだ。郷愁ではなく、情熱のね。僕らはとてもレアなことを成し遂げたと感じているよ」。
サンタナ初期のメンバーが再結集したからと言って、かっての『SANTANA Ⅲ』のラテンでパーカッシブな音世界を再現するというのは当たらない。あれはあれ、これはこれ、である。ただ、サンタナのコメントにある「聞いた人が即座にサンタナだとわかるようにね」の部分、この部分をこの『SANTANA Ⅳ』を聴いていて強く実感する。
この『SANTANA Ⅳ』の音世界は、今の時代における「サンタナ」の音を創造していると感じる。サンタナ初期のメンバーだって、皆、同様に歳をとった。尖って挑戦的な感覚は明らかに丸くなった。鋭角で攻撃的なフレーズは、この『SANTANA Ⅳ』では影を潜める。逆に円熟味が増し、余裕のあるフレーズ&展開が見事。
1970年代初頭、若者の心の叫びだったロックが、急速に大衆に受け入れられる中で、コマーシャルでポップな側面が協調され、1970年代半ばには「商業ロック」というレッテルが貼られ、1970年代後半にはAOR化し、硬派なロックファンから「もはやこれはロックでは無い」と切り捨てられた、そんなロックの変遷そのものが、この『SANTANA Ⅳ』に反映されているように感じる。
僕はこの『SANTANA Ⅳ』を聴いて、AOR化したサンタナ、と感じた。決して悪い意味では無い。1970年代の『SANTANA Ⅲ』のアフリカンなロック、荒々しい躍動的なリズム&ビート、そして、超絶ギター・テクニック、そんな「尖って挑戦的」「鋭角で攻撃的な」音世界が、21世紀のこの時代に、ほどよく趣味良くAOR化された、と感じている。
これはサンタナでは無い、とバッサリ切り捨てられたり、時代が違うので聴き手も進化しないと、としながら、この『SANTANA Ⅳ』の音世界を好意的に受け入れたり、ネットを見れば「賛否両論」。いつの時代もロック者の方々の論評って熱いですね。まあ音楽というものは個人的嗜好が思い切り反映されますので、この賛否両論についてはこれはこれで良いかと。
ちなみに僕は好盤と感じて、週末の「70年代ロック」盤の特集聴きの場面で、結構、ヘビロテになってます。
震災から5年2ヶ月。決して忘れない。まだ5年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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