2026年7月20日 (月曜日)

AEOCの”Great Black Music”

ECMレコード・カタログの1100〜1200番台のカタログを見ていて、アート・アンサンブル・オブ・シカゴのアルバムが、ECMレコードのもとで4枚もリリースしていることに気がついた。

今から語るアルバムは、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ(AEOC)が、5年間のレコーディング活動休止を経てリリースした最初のアルバムであり、ECMレーベルからのグループ初のアルバムである。

Art Ensemble of Chicago『Nice Guys』(写真左)。1978年5月、独の「Tonstudio」での録音。ECMの1126番。ちなみにパーソネルは、Lester Bowie (tp, celeste, b-ds), Joseph Jarman (sax, cl, perc, vo), Roscoe Mitchell (sax, cl, fl, perc), Malachi Favors Maghostut (b, perc, melodica), Famoudou Don Moye (ds, perc, vo)。

シカゴ派フリージャズの伝説的グループであるアート・アンサンブル・オブ・シカゴ(Art Ensemble of Chicago=AEOC)の、ECMレーベルでの初のアルバム。活動休止以降、5年振りのアルバムであり、グループにとって大きな転換点となったアルバムでもある。

1960年代後半から、アフリカの民族音楽や演劇的な要素を取り入れたアヴァンギャルドな即興演奏で知られていた彼らが、プロデューサーのマンフレート・アイヒャー率いるECMとタッグを組んだ作品。

ECMレコードのアルバム制作方針と録音手法により、従来の荒々しいフリー・ジャズとは一線を画す、整理されたエレガントな空間構成と緻密なアンサンブルがメインのフリー・ジャズに変身しているのが判る。
 

Art-ensemble-of-chicagonice-guys

 
5人のメンバーそれぞれが作曲を手掛け、ユーモア、アブストラクト、叙情性など多彩な世界観が1枚に凝縮されている。彼らの特徴は、サックスやベースといった通常のジャズ楽器に加え、「リトル・インストゥルメンツ(おもちゃの楽器)」と呼ばれる無数の小楽器を使用することです。これが、他のフリー・ジャズな演奏との大きな差異化要素のひとつになっている。

この盤でのAEOCのフリー・ジャズの特徴は、従来の一般的なフリー・ジャズの、エモーショナルなエネルギーの爆発や、高密度で激しい即興演奏では無く、音と音の間のスペースを重視した、静寂と空間を聴かせるフリー・ジャズであるということ。この「音の引き算の美学」は、従来のフリー・ジャズの熱量とは対極にある、現代音楽に近い緻密な空間構成を持っている。これが、AEOCならではの、唯一無二のフリー・ジャズになっている。

加えて、多くのフリー・ジャズが政治的メッセージや精神性を帯び、シリアスで難解な方向へ進む中、AEOCは演劇的なユーモアを前面に出している。

1曲目の「Ja」が象徴的で、フリー・ジャズの不穏な空気から突如として、当時最先端のポップスであった「レゲエ」のリズムへとジャンプする。リトル・インストゥルメンツを鳴らし、コミカルな歌声を即興の中に融合するスタイルは、シリアス一辺倒だったフリー・ジャズにおいて極めて異質であり、ポップかつ批評的な新しさを持っている。

そういうAEOCのフリー・ジャズは、自らの音楽をフリージャズという枠に留めず、「古代から未来へ(Ancient to the Future)」を掲げた「Great Black Music」と呼んでいる。R&B、レゲエ、ゴスペル、ファンクなど、黒人音楽の歴史すべてを内包したアプローチが、本作でより洗練された形で提示されている。欧州系フリー・ジャズの名盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
 記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
 の記事をアップ。
 
Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

2026年7月19日 (日曜日)

ユッコのデビュー10周年盤です

この10周年アルバムには3つの特徴がある。一つ目は「初の全曲オリジナル」。過去の作品で見せた優れたカヴァー演奏を封印し、全10曲すべてを自身が作曲。ソングライター・編曲家としての進化が確認できる。二つ目は「こだわりの一発録り」。ライブさながらの息の合った生々しいグルーヴがそのまま録音されている。三つ目は「新たな表現への挑戦」。ソプラノ・サックスのプレイを多く取り入れ、一部楽曲では自身によるボーカルも披露している。

Yucco Miller『Bloomin'』(写真左)。2026年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、ユッコ・ミラー (sax), 平手裕紀 (p, key), 中村ヒロキ (b), Dennis Lwabu (ds), 一彩 (taiko)。ピンクヘアーのエキセントリックなビジュアルと卓越した演奏力とのギャップが人気のジャズ・サックス奏者、ユッコ・ミラー。そんなユッコ・ミラー自身、初の全曲オリジナルとなるメジャー・デビュー10周年アルバム。

冒頭の「Miracle Shine」がこのアルバムの雰囲気、内容、出来を代表している。四つ打ちのダンサブルなアッパー・チューン。ユッコ・ミラーの愛器「YAMAHA YAS-62(初期モデル)」のポテンシャルを最大限に引き出して、とても良い音で鳴っている。まさに“踊れるジャズ”を体現する一曲。この音が、この演奏が、ユッコ・ミラーのメジャー・デビュー10周年の音である。
 

Yucco-millerbloomin  

 
2曲目「Hair Style」と9曲目「Anemone」では、ユッコ・ミラー自身が作詞とボーカルを担当している。普段の超絶技巧のカッ飛びサックス・プレイとは打って変わって、空気に優しく溶け込んでいくような、柔らかい歌声が新鮮に響く。意外といっては失礼だが、このボーカルがなかなか良い感じ。フュージョン志向のボーカルとして一級品である。

3曲目「3-3-7」と8曲目「AKUJYO」では、太鼓パフォーマー・一彩(Taiko)をゲストに迎え、「和楽器×ジャズ」の融合に挑戦した楽曲。「和楽器×ジャズ」の融合については、1970年代のフリー・ジャズ畑を中心に、何枚かのアルバムの成果はあったが、近年では珍しい。お互いの限界をぶつけ合った壮絶なアンサンブルが素晴らしい。

当アルバム『Bloomin'』のサウンドは、本人曰く「トッピング全部入りのラーメン」。メジャー・デビュー10周年を迎えた彼女が「今やりたいこと」をストレートに詰め込んだ、バラエティ豊かで生々しいエネルギーに満ちたサウンドが最大の特徴である。音的にも、今までのフュージョン・ジャズ志向というより、ストレート・アヘッドな、コンテンポラリー・ジャズと評価出来る。、着実にステップアップした秀作だと僕は思う。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
 記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
 の記事をアップ。
 
Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

2026年7月18日 (土曜日)

クリス・ポッターの異色の企画盤

1859年にアメリカで起きた「ハーパーズ・フェリー襲撃事件」と、その中心人物である奴隷制度廃止運動家 John Brown(ジョン・ブラウン)の物語にインスパイアされている。アメリカの核心にある矛盾や暴力、理想、そして現代にも通じる未解決の緊張感をテーマに描いた、コンセプチュアルで社会派な作品。歴史的にジャズが得意とする一作品ジャンルである。

Chris Potter『Alive with Ghosts Today』(写真左)。2025年3月24〜26日、NYでの録音。2026年5月にリリース。ちなみにパーソンネルは、Chris Potter (ts, ss), Bill Frisell (g), Rane Moore (cl), Zekkereya El-magharbel (tb), Sara Caswell (vln), Burniss Travis (b), Nate Smith (ds)。「限られた楽器編成ながらも深い個性を持つ 小さな町のバンド」のような響きを目指し、独自の変則的なアンサンブルを編成している。

本作はブルースやフォーク、現代音楽を想起させる和声、力強いリズム&ビートが交錯する、泥臭くも美しい「米国ルーツ・ミュージック」を彷彿とさせる、スピリチュアルなサウンドが特徴。19世紀のアメリカ奴隷解放の歴史、不屈の精神、そしてアメリカの「ルーツ」が、ジャズの即興演奏を通じて、より立体的に浮かび上がる仕掛けになっている。
 

Chris-potteralive-with-ghosts-today

 
アルバムの核となる楽曲群はクリス・ポッターのオリジナル作曲だが、曲の終盤の展開や一部フレーズには「John Coltrane / Traditional: 『Song of the Underground Railroad(地下鉄道の歌)』の要素、「Antonin Dvořák: 交響曲第9番『新世界より』第2楽章の『Going Home(家路)」を一部抜粋・引用しているのが特徴。アレンジに相当な力を入れているのが判る。

奴隷制度廃止運動家、ジョン・ブラウンの足跡を追うように、アルバムは厳かに展開していく。フロント陣に通常の管楽器セクションに加え、ヴァイオリン、クラリネット、トロンボーンを配した変則的なアンサンブルと、現代ジャズ界の最高峰であるリズムセクションの対話が見事。特に、リーダーのポッターのエモーショナルなサックスの咆哮と抑制された吹奏は、嫌が応にも、スピリチュアルな響きを増幅させている。

古き良きアメリカの「小さな田舎町のバンド」のような素朴で生々しい響きとゆったりしたテンポの演奏は、現代の「コンテンポラリーなスピリチュアル・ジャズ」な響きを湛えていて、実に個性的な内容になっている。演奏の響きは、ブルースやフォークの「泥臭さ」をあえて残した、エモーショナルで力強いトーンで、米国ルーツ・ミュージック志向の音世界を展開している。異色の企画盤。ジャズとして優れた内容だと僕は思う。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
 記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
 の記事をアップ。
 
Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

2026年7月17日 (金曜日)

タイトルは『エヴァーグリーン』

最近の当ブログの記事は、1950年代から1960年代のブルーノートやプレスティッジの隠れ好盤とか、ECMレコードの1100番台とか、CTIレーベルの全作品の記事化とか、レーベルのアルバム・カタログを片っ端から記事化する、なんてことを進めているが、最近のジャズについても、時間を見つけては、都度、聴いている。決して、懐古趣味、昔のアルバムに偏ったリスニングにはならないように心がけている。

Julius Rodriguez『Evergreen』(写真左)。2024年6月のリリース。ちなみにパーソネルは、曲によって異なるので、以下を参照されたい。ジュリアス・ロドリゲス本人のマルチ演奏を中心に、楽曲ごとに多数の気鋭ミュージシャンを迎えて、ロサンゼルスで録音されている。

Julius Rodriguez (p, key, syn, cl, g, b,ds), Nate Mercereau (g-syn :#1,#3, el-g :#4, #9), Philip Norris (b :#2, #3, #5, #7, ds :#5, ), Nicole McCabe (as :#1, #3), Chris Lewis (ts :#7), Emilio Modeste (sax :#9), Alonzo Demetrius (tp :#3, #7), Keyon Harrold (tp :#8), Jermaine Paul (b :#10), Declan Miers (el-b :4), Brian Richburg Jr. (ds :#2, #3), Luke Titus (ds :#1), Tim Anderson (ds-program :#2, #5), Jay Adlher (vo :#4)Georgia Anne Muldrow (vo :#10), Maddi St John (back-vo :#4)。
 

Julius-rodriguezevergreen

 
従来のジャズという枠組みに囚われず、ゴスペル、R&B、ポップス、サイケデリック・ロック、エレクトロニックなどの要素をシームレスにに融合させた、ジャンルレスなサウンド。現代のコンテンポラリーなクロスオーバー・ジャズといった内容。

僕は冒頭の「Mission Statement」で、グッと心を掴まれた。アルバムの方向性を提示する様な、疾走感のあるオープニング曲。マケイブのアルト・サックスと、マーセローによる浮遊感のあるギター・シンセがユニゾン&ハーモニーを奏で、モダンでダイナミックなアンサンブルを展開する。これが、まるで、プログレッシヴ・ロックみたくもあり、コンテンポラリーなエレ・ジャズみたくもあり、この音世界は今までに無い。現代のコンテンポラリーなクロスオーバー・ジャズである。

すべての曲において、ゲスト・ミュージシャンの組み合わせや、ジュリアス自身が担当する楽器の構成が毎回異なっており、1枚のアルバムでありながら、曲ごとに全く異なるセッションの様な、ロドリゲスの音のショーケースの様なサウンドがこの盤の特徴。

タイトルの『エヴァーグリーン(時を経ても色あせない)』の通り、「ジャンルに縛られない不変の音楽」を追求した作品。ロドリゲス自身がピアノ、シンセサイザー、ドラム、ベース、ギターなど、ほぼすべての楽器を演奏するマルチな才能が遺憾なく発揮されている。「Z世代のジャズ」を象徴する一枚。好盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
 記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
 の記事をアップ。
 
Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

2026年7月16日 (木曜日)

ECMのスピリチュアル・ジャズ

英国の現代ジャズ・トリオであるAzimuth(アジマス)。ブラジルの有名なクロスオーバー/フュージョン・バンド「Azymuth(アジムス)」とは異なる(気を付けたい)。本作の「アジマス」はイギリスの即興音楽や現代ジャズにおける重要人物たちによって結成された室内楽的ジャズ・トリオである。

Azimuth『The Touchstone』(写真左)。1978年6月、オスロの「Talent Studio」での録音。ECMの1130番。ちなみにパーソネルは、John Taylor (p, org), Kenny Wheeler (tp, flh), Norma Winstone (vo)。トランペット奏者のケニー・ウィーラー、ボーカリストのノーマ・ウィンストン、ピアニストのジョン・テイラーで構成された変則トリオ編成。とことんECMのサウンド・イメージを踏襲したスピリチュアル・ジャズ。

テイラーによるミニマルで催眠的なパルス・パターンやリリカルなピアノの旋律が演奏全体をリードしながら、ウィンストーンの楽器の一部として溶け込むような美しいヴォイス・パフォーマンスと、ホイーラーの哀愁を帯びたトランペットの音色とが、独創的かつスピリチュアルな絡み合いで、フレーズを紡ぎ上げていく。そこに、ECMらしい透明感のある、深いエコーの音響空間の中で、静謐ながらも緊張感に満ちた独自の即興演奏が展開される。
 

Azimuththe-touchstone  

 
実にユニークな即興演奏の世界。ECMレコードでしか為し得ない、欧州的で現代音楽志向な、ECMならではのスピリチュアル・ジャズの音世界。ウィンストンのボイス&ボーカルが効いている。これが明らかな差異化要素。歌詞を歌うだけでなく、自身の声を楽器のように扱う「ヴォイス」という即興表現が唯一無二である。このボーカルが、このあるアルバムの浮遊感&静謐感の中で、幽玄にスピリチュアルに響く。ボーカルを一つの楽器として扱う。見事である。

全曲の作曲をピアニストのジョン・テイラーが担当。現代音楽家スティーヴ・ライヒからの影響を強く感じさせる、ミニマルなピアノの反復パターンが催眠的であり、叙情的であり、ジャズで言うビートとグルーヴを提供している。このテイラーのピアノが、即興演奏ジャズの要となるリズム&ビートをしっかりと恐々している。そして、そこに、哀愁を帯びたホイーラーのホーンと、歌詞を持たないウィンストンの幽玄なヴォイスがレイヤリングされていくのが最大の特徴である。

アジマスの個性である「催眠的なミニマリズムと静謐な抒情性」が最大限に発揮されたアルバム。その変則的な楽器編成とスピリチュアルな音世界から、従来のジャズの枠に収まらない、ECMらしい「ニュー・ジャズ」として捉えられていたが、アンビエントやニューエイジ、チルアウト・ミュージックの先駆としての評価も高まっている。とにかく、とてもECMらしい音世界であり、スピリチュアルなジャズ世界である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
 記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
 の記事をアップ。
 
Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年7月15日 (水曜日)

ワールド・ミュージック系即興盤

コドナ(Codona)は、アメリカのシタール・タブラ奏者であるコリン・ウォルコット、ジャズ・トランペット奏者のドン・チェリー、ブラジルのパーカッション奏者のナナ・ヴァスコンセロスの3人がメンバー。

ジャズ、インド古典音楽、ブラジル音楽、アフリカの伝統音楽など、世界中のあらゆるルーツ・ミュージックを融合させた「ワールド・ミュージック」の先駆的な存在である。グループ名は、3人の名前(Collin, Don, Naná)の頭文字を組み合わせて名付けられた、とのこと。

Collin Walcott,  Don Cherry, Naná Vasconcelos『Codona』(写真左)。1978年9月、独の「Tonstudio」での録音。ECMの1132番。 ちなみにパーソネルは、グループ名「Codona」で、Collin Walcott (sitar, tabla, hammered dulcimer, kalimba, vo), Don Cherry (tp, wood-fl, doussn' gouni, vo), Naná Vasconcelos (perc, cuica, berimbau, vo)。1978年に結成された、伝説的なワールド・ミュージック/フリー・ジャズ・トリオのファースト・アルバム。

全編を聴き通して思うのは、何だか「日本の雅楽」に良く似ているフレーズがガンガンに出てくる、ということ。透明感あふれる詩的なアンサンブルと、独自のスピリチュアルな音響空間が個性なのだが、とにかく「日本の雅楽」を想起するフレーズが印象的。ドン・チェリーのフルートや木管楽器: 雅楽で宇宙や空間を切り裂くように鳴り響く「龍笛(りゅうてき)」や「篳篥(ひちりき)」の掠れた、息づかいを感じる響きに酷似している。
 

Collin-walcott-don-cherry-nana-_20260715195201

 
そして、コリン・ウォルコットのシタールが、シタール特有の「バズ音(共鳴弦のジーンという残響)」や持続音は、雅楽で天から降り注ぐ光を表すオルガンのような和音を奏でる「笙(しょう)」の持続音と、空間的な役割が非常に近い。ナナのパーカッションは、コリンのインド音楽の静寂と、ドンのジャズの自由さを、ブラジル音楽の「生命力で包み込む様な」リズム&ビートで演奏のボトムをしっかり支える。

インド音楽のシタール、ブラジルのビリンバウ、ジャズのポケット・トランペットが対等に、かつ極めて高い精神性をもって融合された様は、ワールド・ミュージック系即興演奏ジャズの出発点であり、ワールド・ミュージック系スピリチュアル・ジャズの萌芽である。緊迫感と開放感が共存する静謐な音世界は、ECMレーベルの美学を純粋に体現したといっていい。

お互いの呼吸や空気感を察知しながら音を重ねていく引き算の美学。この張り詰めた静寂と、音が消えていく余韻を大切にする演奏は、まさに日本の伝統音楽や雅楽の持つ「間」の感覚そのもの。

しかしながら、1984年11月にコリン・ウォルコットがツアー中の交通事故により39歳で急逝したため、トリオの活動は、アルバム3枚を残して、幕を閉じました。この残されたアルバム3枚、ワールド・ミュージック系即興演奏ジャズの傑作だと思います。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
 記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
 の記事をアップ。
 
Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年7月14日 (火曜日)

デジョネットの”New Directions”

ECMレコード・カタログの1100番台(#1101-1199)の当ブログでの記事化のコンプリートを目指している。1000番台については、全くの現代音楽志向(ECMのアイヒャーはこれが好きみたい)の即興演奏のアルバムについては記事化を控えたが、その他のアルバムについては記事化が完了している。そして、次は1100番台。これが結構、記事化が進んでいない。

Jack DeJohnette『New Directions』(写真左)。1978年6月の録音。ECMの1128番。ちなみにパーソネルは、Jack DeJohnette (ds, p), John Abercrombie (g, el-mandolin), Lester Bowie (tp), Eddie Gómez (b)。屈指のポリリズミックなドラマー、ジャック・デジョネットがリーダー。基本はピアノレス、ギターとトランペットがフロントと変則カルテット編成。曲によって、デジョネットがピアノを弾いている。

デジョネットの「一見交わりそうにない、強力で異なる個性を持ったキャラクターを一堂に会する」というアイデアのもと、集められたメンバーらしい。デジョネットのドラム、ゴメスのベースという、メインストリーム志向の純ジャズなリズム隊に、アート・アンサンブル・オブ・シカゴから、トランペットのレスター・ボウイ、欧州ジャズ志向のソリッドでストレートで、プログレッシヴなギターのジョン・アバークロンビーと、確かに一見どころか、こんなチャンスでもないと未来永劫交わることの無いメンバーである。
 

Jack-dejohnettenew-directions  

 
ディジョネットの空間的かつシャープなポリリズミックなドラミング、ジョン・アバークロンビーの浮遊感溢れる捻れギター、そしてエディ・ゴメスの堅実なベース。この3人が創り出すECMらしい透明感のあるサウンドがベースとなって、そこにフリー・ジャズ界の奇才レスター・ボウイが加わる。独特の緊張感と実験精神の下、そしてスピリチュアルでモーダルな即興演奏が展開されている。そして、時折、静寂とカオスが織りなす緊張感が顔を出す。

アバークロンビーのアタック感を消した、浮遊感のあるギター&エレクトリック・マンドリンが、アルバム全体にスピリチュアルなトーンを与え、アヴァンギャルドなボウイのトランペットが、ハーフバルブを駆使した歪んだ音、うなり声のようなグロウ・トーン、叫び声のようなハイノートなどを多用して、そのスピリチュアルなトーンを増幅する。そして、デジョネットとゴメスの変幻自在、硬軟自在、緩急自在なリズム&ビートが、フロントの二人をがっちりサポートしている。

ECMの洗練された欧州的なニュー・ジャズの音世界と、米国ブラック・ジャズの生々しいダイナミズムとの完璧な融合がここにある。緻密な4ビートや美しいモーダル・ジャズ(伝統)、フリー・インプロビゼーション(前衛)、そしてエレクトリック・ギターやマンドリンを取り入れたクロスオーバーなアプローチ(フュージョン)が、1枚のアルバムの中に違和感なく同居している。1970年代ジャズの名盤の一枚。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
 記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
 の記事をアップ。
 
Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年6月25日 (木曜日)

D・バードの考えるエレジャズ

ハードバップ時代のバップ・トランペットの名手、ドナルド・バードの「1970年代のドナルド・バードが考えるエレ・ジャズ」がこの盤に詰まっている。ジャズ・ファンクの傑作とする向きもあるが、アフロセントリックで漆黒のグルーヴがあまりに個性的で、アフリカン・ネイティヴな音志向がかなり強く出ているので、単に「ジャズ・ファンク」とするにはちょっと抵抗がある。

Donald Byrd『Ethiopian Knights』(写真左)。ブルーノートの4380番。録音日は、1971年8月25日が「The Emperor」と「Jamie」 (#1–2)、1971年8月26日が「The Little Rasti」 (#3)。

ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Thurman Green (tb), Harold Land (ts), Bobby Hutcherson (vib), Joe Sample (org), Bill Henderson III (el-p), Don Peake (g), Greg Poree (g: tracks 1 & 2), David T. Walker (g: track 3), Wilton Felder (el-b), Ed Greene (ds), Bobbye Porter Hall (congas, tambourine)。

冒頭の「The Emperor」のリズム&ビートの扱いとキーボードの音色は、どこか「ヘッドハンターズ以前のハンコックのエレ・ファンク」を想記するし、トランペットのパフォーマンスは「端正なマイルスっぽい」。ただ、リズム&ビートの扱いが、ハンコックやマイルスよりも、アフリカン・ネイティヴ色が強く出ていて、このアフリカン・ネイティヴ色が強く出たことで、このアルバムは、ドナルド・バードのオリジナルな位置づけをキープしている。
 

Donald-byrdethiopian-knights

 
均一ビートなところは、なんとかく「初期のウエザー・リポート」っぽくもある。ここでテナーがブイブイ出てきたら、と思うんだが、そこがドナルド・バードの巧妙なところ、新主流派ヴァイブの第一人者、ボビー・ハッチャーソンをフィーチャーするのだから、ドナルド・バードの深慮遠謀は相当なものである。

ドナルド・バードが考えるエレ・ジャズ。平易で聴き易く判り易い。ハンコックのエレ・ジャズ初期やマイルスのエレジャズは、テナーやトラペット、ピアノなどが、どこか捻れたところがって、従来に無い音の変化や音色のユニーク度が高いのだが、このドナルド・バードの考えるエレ・ジャズは、楽器の活用の仕方、音の響きや展開が、とにかくシンプルで判り易い。

2曲目の「Jamie」に至っては、もうこの演奏内容は、後のフュージョン・ジャズを地で行っている様な演奏で、トランペットはまるで、チャック・マンジョーネ(笑)。ファンクネスを希薄にした、リフレインなビートは、まるでプログレッシヴ・ロックみたい(笑)。フュージョン・ジャズにおけるバラード演奏の代表的演奏としても、違和感のない演奏である。

面白い内容のアルバム。このアルバムの翌年に『Black Byrd』を録音することを鑑みると、この盤は、「1970年代のドナルド・バードが考えるエレ・ジャズ」の最初の第一歩を記したアルバムなんだろう。リズム&ビート、楽器の取り扱い方&音色など、当時のジャズ界で先進的だったバンド・サウンドを十分に研究しているなあ、と感じる、真面目実直なドナルド・バードの考えるエレ・ジャズである。コマーシャル性が皆無なところも、このアルバムに対する好感度は高い。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
 記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
 の記事をアップ。
 
Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年6月19日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・326

聴いてみて、意外とコンテンポラリーな、メインストリーム志向のエレ・ジャズしているのに気がつく。1970年当時のコンテンポラリーな純ジャズと評価しても良い、硬派でストレートアヘッドな内容。当時のジャズ〜クロスオーバー界のトッププレイヤー達のパフォーマンスなので、内容的にもテクニック的にもレベルは高い。今回、聴き直しである。

J & K『Stonebone』(写真左)。1969年9月の録音。A&M 3000 seriesのSP-3027番。日本限定のリリース。ちなみにパーソネルは、J. J. Johnson, Kai Winding (tb), Herbie Hancock, Bob James, Ross Tompkins (key), George Benson (g), Ron Carter (b), Grady Tate (ds)。当時のジャズ〜クロスオーバー界のトッププレイヤーが集結した超豪華なオールスター編成。

音作り的に見ると、「CTIサウンド(クロスオーバー/ジャズ・ファンク)」のまさにプロトタイプとなった、当時として先進的なサウンドが耳を引く。クロスオーバー・ジャズの良いところをベースに、キャッチーなフレーズ、印象的なアドリブと、ジャズ寄りのアレンジとパフォーマンスで、CTIらしいサウンドを確立している。
 

J-kstonebone

 
そんなCTIサウンドの中で、J & Kのトロンボーンが素晴らしいパフォーマンスを披露する。J.J.ジョンソンは左チャンネルで、完璧なピッチと驚異的なスピードの16分音符フレーズを繰り出す。:カイ・ウィンディングは右チャンネルで、エフェクター(マイクの加工など)を実験的に導入したような、ザラついた太いトーンを繰り出す。ユニゾン&ハーモニー、そして、アドリブソロ。いずれも両者、見事なアグレッシブ・トロンボーンである。

J.J.が都会的なら、カイはブルージーで泥臭く、野生的なトロンボーン・ソロで楽曲を煽りまくる。そのバックでの、ハンコックのサイケデリックなローズが尖って、ベンソンの切れの良いカッティングがファンキーなリズムを刻みまくる。ロンのアンプの低音を限界まで強調したような、地響きのような図太い低音フレーズと、テイトのジャストのタイミングで正確無比、かつ非常に重いファンク・ビートを叩き出すドラミングがバンド全体を牽引する。

提携解消などの事情が絡んだ結果、米国での発売が急遽キャンセル、結果的に日本だけでひっそりとリリースされる形になったそうで、これだけの名盤的な内容なのに、「激レア盤」となってしまったのは非常に惜しい。なぜ、状況が改善された折に、正式にリリースされなかったのか。これだけの濃い内容を誇っているだけ「大いなる謎」である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
 記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
 の記事をアップ。
 
Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年6月12日 (金曜日)

ECMの音世界の完璧な具現化

これは傑作だろう。北欧の冷涼で幻想的なサウンドと、創造的で圧倒的な即興演奏が融合した、初期ECMを代表する傑作。モダン・ジャズの枠組みを飛び越え、裾野を広げ、アンビエント・ミュージック(環境音楽)や現代音楽、プログレッシブ・ロックの要素までをも内包した、緊張感溢れ、切れ味鋭い、底知れぬ深みを持つ独自の静謐な音世界を構築している。

『Terje Rypdal / Miroslav Vitous / Jack DeJohnette』(写真左)。1978年6月、オスロの「Talent Studio」での録音。ECMの1125番。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (g, g-syn, org), Miroslav Vitouš (b, el-p), Jack DeJohnette (ds)。トリオ3人による、ECMの標榜する音世界「沈黙の次に美しい音」を具現化した、完全な即興演奏の記録。

ジャック・デジョネットの鋭く変幻自在なシンバルワークと、アグレッシブでポリリズミックなドラミング。ミロスラフ・ヴィトウスのソリッドでモーダルな自由度の高いベースライン、アルコを使った幻想的なベースプレイ。ノルウェー出身のギタリスト、テリエ・リピダルの独自のディレイやボリュームペダル、ギターシンセを駆使した、クリスタルで冷涼な空間的な美音を飛翔させるギタープレイ。この3人によるインタープレイが尋常では無い。
 

Terje-rypdal-miroslav-vitous-ja_20260612214101  

 
ヴィトウスの哀愁を帯びたベースライン、リピダルのドライブ感あるギター、デジョネットのポリリズミックな緩急自在・変幻自在・硬軟自在なドラミング。そして、単なる「ギター・ベース・ドラム」のトリオにとどまらず、メンバーが複数の楽器やエフェクターを駆使してオーケストラのような空間的な広がりを作っている。この3人の「三位一体」となったインプロビゼーションの圧倒的な空気感、即興演奏の緊張感、豊かな音の色彩感は、筆舌に尽くしがたい。

冒頭の「Sunrise」からして、既にただならぬ雰囲気の音世界。デジョネットの緊張感溢れる切れ味抜群のシンバルワークから始まり、エレキピアノでベースラインを表現する独創的なアプローチが重なり、そこにリピダルの魂を揺さぶるエレキギターが飛翔し浮遊し、切れ込む。この冒頭の1曲が、このアルバム全体の音世界を代表している。

米国のジャズとは一線を画す、1970年代以降の「欧州ジャズ」のアイデンティティを決定づけた、歴史的一枚である。非現実的で、痛烈な美しさを持つ音響空間、ジャズの枠を超越したスピリチュアルな音楽といった、ECMが追求する「沈黙の次に美しい音」を完璧に具現化した一枚である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

 ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

  ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

 ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
  の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

_Blue Noteの100枚 _ECMのアルバム45選 _この盤のドラムを聴け! _この盤のピアノを聴け! _こんなアルバムあったんや _ながら聴きのジャズも良い _クリスマスにピッタリの盤 _コンテンポラリーな純ジャズ _ジャケ買い「海外女性編」 _ジャズ・ギターの名演 洋楽編 _ジャズ喫茶で流したい _トランペットの隠れ名盤 _ビッグバンド・ジャズは楽し _ビートルズのカヴァー集 _ピアノ・トリオの代表的名盤 _フェンダー・ローズを愛でる _フュージョン・ジャズの優秀盤 _僕なりの超名盤研究 _和ジャズの優れもの _和フュージョンの優秀盤 _夜の静寂にクールなジャズ _音楽喫茶『松和』の昼下がり A&Mレーベル AOR Argo & Cadetレーベル Atlanticレーベル Bethlehemレーベル Blue Note 1500番台 Blue Note 4000番台 Blue Note 4100番台 Blue Note 4200番台 Blue Note 4300番台 Blue Note 4400番台 Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル DD・ブリッジウォーター ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル Jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 アイク・ケベック アキコ・グレース アジムス アストラッド・ジルベルト アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラン・ホールズワース アリス・コルトレーン アル・ディ・メオラ アントニオ・サンチェス アンドリュー・ヒル アンドレ・プレヴィン アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・ゴールドバーグ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イリアーヌ・イリアス イリノイ・ジャケー インパルス!レコード ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウォルフガング・ムースピール ウディ・ショウ ウラ名盤 エグベルト・ジスモンチ エスビョルン・スヴェンソン エスペランサ・スポルディング エディ・ハリス エメット・コーエン エリック・アレキサンダー エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルヴィン・ジョーンズ エロール・ガーナー エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オズ・ノイ オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ ガボール・ザボ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリス・ポッター クリフォード・ブラウン クルセイダーズ クレア・フィッシャー クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニーG ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン ゴンサロ・ルバルカバ ゴーゴー・ペンギン サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド・ジョーンズ サム・ヤヘル サム・リヴァース サンタナ サン・ラ・アーケストラ ザ・バンド シェリー・マン シダー・ウォルトン シャイ・マエストロ シャカタク ジェイ & カイ ジェイ・ジェイ・ジョンソン ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジェリー・マリガン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジミー・ヒース ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・バリトン・サックス ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・ラージ ジョエル・ロス ジョシュア・レッドマン ジョナサン・ブレイク ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・コルトレーン on Atlantic ジョン・コルトレーン on Prestige ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ファレル ジョー・ヘンダーソン ジョー・ロヴァーノ ジーン・アモンズ スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン ステイシー・ケント ステップス・アヘッド スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ スーパーサックス ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・スティット ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャーリー・ヘイデン チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テッド・カーソン テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ドン・チェリー ナット・アダレイ ニルス・ラン・ドーキー ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハワード・マギー ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハービー・マン ハーブ・アルパート ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・シャンク バド・パウエル バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグ・ジョン・パットン ビリー・コブハム ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビル・ブルーフォード ビートルズ ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・アップチャーチ フィル・ウッズ フォープレイ フランク・ウエス フランク・シナトラ フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・アーヴィン ブッカー・リトル ブライアン・ブレイド ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザーズ プログレッシブ・ロックの名盤 ヘレン・メリル ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボビー・ハンフリー ボブ・ジェームス ボブ・ブルックマイヤー ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイク’・スターン マイケル・ブレッカー マイルス( ボックス盤) マイルス(その他) マイルス(アコ)改訂版 マイルス(アコ)旧版 マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マハヴィシュヌ・オーケストラ マルグリュー・ミラー マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・5 マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モンティ・アレキサンダー モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラムゼイ・ルイス ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラリー・ヤング ラルフ・タウナー ランディ・ブレッカー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レイ・ブラウン レジェンドなロック盤 レス・マッキャン レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロニー・リストン・スミス ロバート・グラスパー ロベン・フォード ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー ヴィンセント・ハーリング 上原ひろみ 北欧ジャズ 古澤良治郎 吉田拓郎 向井滋春 四人囃子 国府弘子 増尾好秋 大村憲司 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 松岡直也 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 阿川泰子 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー