2024年12月 5日 (木曜日)

マイケル急逝前の傑作の一枚

1970年代以降での「早逝の天才サックス奏者」、マイケル・ブレッカー。コルトレーン&ロリンズ時代の「後を継ぐ」ジャズ・サックスのリーダー格であった。我が国では何故か「コルトレーンのフォロワー」と看做され、何かとコルトレーンと比較されては、コルトレーンよりもレベルが低いとか、コルトレーンの方が優れている、とか的外れな評価をされていた。

が、そんな的外れの評価はとんでもないもので、マイケル・ブレッカーは、コルトレーン流のジャズ・サックスを更に発展・深化させ、マイケル独特の個性を反映させた、「コルトレーンの次に現れた、ジャズ・サックスの新たなスタイリスト」と僕は認識している。大仕掛けで大向こうを張った吹き回しは無いが、「テクニック、歌心、イマージネーション」の全てが超一流でマイケル独特なもの。

Michael Brecker『Wide Angles』(写真左)。2003年1月22–24日の録音。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (ts, arr), Adam Rogers (g), John Patitucci (b), Antonio Sánchez (ds), Daniel Sadownick (perc), Steve Wilson (a-fl), Iain Dixon (b-cl, cl), Robin Eubanks (tb), Alex Sipiagin (tp), にオーケストラがバックに付く。

J2007年1月13日、57歳の若さで急逝する4年前のリーダー作。いわゆる「ウィズ・ストリングス」に類する、マイケル念願の15人編成、オーケストラがバックに入るラージ・アンサンブル。ホーンセクションとストリングスが効果的に入り、かつ、優れたアレンジによって、マイケル・ブレッカーのテナー・サックスが更に際立つ企画盤である。
 

Michael-breckerwide-angles

 
始まりは、15人編成、ホーンセクションとストリングスのバッキングがフルフルで、大仕掛けでスケールの大きい「ウィズ・ストリングス」風の演奏から入る。「ウィズ・ストリングス」風の伴奏なので、どこかイージーリスニング風のイメージが漂い、これはなあ、と一瞬思ったするが、マイケルのテナーが出てくると、演奏の雰囲気はグッと締まって、メインストリームな純ジャズの響きにガラッと変わる。

マイケルのテナーの音は、コルトレーンのそれとは似て非なるもので、似ているところは「ストレートな吹奏」なところだけ。フレーズの吹き回し、フレーズ展開のイマージネーション、テナー自体の「音」、どれもがマイケル独自の独特の個性であって、このテナーを聴いて、コルトレーンのフォロワーとするところが全く理解できない。今一度、確認するが、マイケル・ブレッカーは「コルトレーン時代の次に現れた、ジャズ・サックスの新たなスタイリスト」である。

そんなマイケルのテナーが一番目立ち、一番格好良い。大編成の演奏から、曲を進めるうちに、少しずつ編成が小さくなっていき、それにつれて、マイケルのテナーがグングン前へ出て、グングンとクールに鳴り響き、マイケルのテナーの、唯一無二で優れた「テクニック、歌心、イマージネーション」の全てが堪能できるなって、ラストの「"Never Alone」を迎える。このアルバム展開の作りも優秀。

全く耳につかない、今の耳にも新しく響くゴージャスな「ウィズ・ストリングス」風のメインストリーム・ジャズ。自然と流れる様に展開するモーダルなフレーズ。スケール大きく大らかで力感溢れ、優しく繊細な吹き回し。この『Wide Angles』は、マイケルの傑作の一枚、ジャズ・サックスの名盤の一枚でしょう。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 

2024年7月11日 (木曜日)

マイケルの創る「モード・ジャズ」

さて、ブログを再開です。東四国を旅している間のジャズ盤は何故か「マイケル・ブレッカー(Michael Brecker)」。

Michael Brecker『Two Blocks from the Edge』(写真左)。1997年12月20–23日の録音。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (ts), Joey Calderazzo (ac-p), James Genus (b), Jeff 'Tain' Watts (ds)。マイケル・ブレッカーがフロント1管のワンホーン・カルテット。

もちろん主役はマイケル。しかし、バックのリズム隊には、当時、まだまだ若手駆け出しのジョーイ・カルデラッツォがピアノを担当、復活後のブレッカー・ブラザースでベースを担当したジェームス・ジーナス、そして、ドラムには実績十分、中堅のポリリズミック・ドラマーのジェフ・ティン・ワッツ。当時としては、「抜擢」レベルのリズム隊をバックにマイケルがテナーを吹きまくる。

前々作『Now You See It... (Now You Don't)』で、素敵な内容のコンテンポラリーな「マイケルの考えるエレ・ジャズ」を提示したマイケルだが、前作の『Tales From the Hudson』では、コンテンポラリーではあるが、メインストリームな純ジャズ路線に軌道修正、この『Two Blocks from the Edge』も、そんな「コンテンポラリーでメインストリームな純ジャズ路線」を踏襲している。

せっかく、前々作『Now You See It... (Now You Don't)』で、復帰後マイルスのエレ・ジャズのコンセプトをベースにした、マイケルならではのエレ・ジャズを世に問うたのに、前作の『Tales From the Hudson』ではメインストリームな純ジャズ路線へ軌道修正。これはあまりに面白くない展開なんだが、所属していたレコード会社が大手のVerveだったので、売れ筋の「メインストリームな純ジャズ路線」を余儀なくされたのかもしれない。
 

Michael-breckertwo-blocks-from-the-edge

 
マイケル・ブレッカーがフロント1管のワンホーン・カルテットなので、当時、我が国では「コルトレーンの二番煎じ」などと揶揄する向きもあったが、マイケルのテナー自体が既にコルトレーンの影響下から脱して、マイケルならではのテナーの個性を振り撒いているので、二番煎じなどと揶揄される謂れは無い。

カルデラッツォがピアノがマッコイ・タイナーそっくりだ、なんて揶揄されたこともあったが、今の耳で聴き直しても、どこがタイナーそっくりなのか判らない。確かに、タイナーやハンコックのモーダルなピアノの「いいとこ取り」している風に聴こえないことも無いが、そこは、要のタッチやフレーズについては、カルデラッツォならではの個性で弾きまくっているので問題ない。

ジェフ・ティン・ワッツのドラムだって、エルヴィンそっくりと言うジャズ者の方もいたが、ワッツのドラミングは、自由奔放の様でいて、意外と理知的で自己コントロールが行き届いている。野生味溢れ、思いのままに叩きまくるエルヴィンとはそこが違う。

以上の様な聴いた印象でまとめると、コルトレーンが確立した、サックスがメインの「モーダルなメインストリーム志向の純ジャズ」を二段も三段も深化させた、1997年時点での新しい「モーダルなネオ・ハードバップ」がこの盤で提示されている、と考えるのが妥当だろうと思う。

1960年代のモード・ジャズを焼き直してマイナー・チェンジを施した、懐古趣味的な新伝承派のアプローチとは全く異なる、マイケル率いるワンホーン・カルテットが提示してくれる「モーダルなメインストリーム志向の純ジャズ」の深化の音は、当時の新伝承派のモード・ジャズよりも、新鮮で思索に富んでいる。現代につながるネオ・ハードバップの良質な音がこの盤に詰まっている。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年4月24日 (水曜日)

マイケルの考えるエレ・ジャズ

マイケル・ブレッカーを聴きたくなった。マイケルが白血病で急逝したのが、2007年1月。57歳の早すぎる逝去だった訳だが、当時、とても驚いた。人生の中間点の50歳を過ぎて、マイケルのテナーには円熟味が増し、スタイル・フレーズ共に、マイケルならではの個性を揺るぎないものにした矢先の逝去だったので、実に残念な思いをしたことを記憶している。

Michael Brecker 『Now You See It... (Now You Don't)』(写真左)。1990年の作品。ちなみにパーソネルは、曲ごとにメンバーを入れ替えて録音しているので、主だったものだけ列挙する。Michael Becker (ts, EWI, key, drum programming), Joey Calderazzo (ac-p), Jim Beard (syn, key), Jon Herington (g), Victor Bailey (b), Jay Anderson (b), Omar Hakim (ds), Adam Nussbaum (ds, cymbals), Don Alias, Milton Cardona, Steve Berrios (perc) etc.

パーソネルを見渡し、プロデュースがドン・グロルニックということから、当時の先端を行く、メイストリーム志向のコンテンポラリーなエレ・ジャズだと予想できる。実際、聴いてみると、確かにこの盤に詰まっている演奏は、パーソネルが曲毎に代わっているとはいえ、硬派でクールな、メイストリーム志向のコンテンポラリーなエレ・ジャズで統一されている。

マイケルは「コルトレーンのフォロワー」と十把一絡げに評価される傾向にあるが、マイケルのテナーはコルトレーンとは全く異なる。ストレートな吹奏はコルトレーンと同じだが、これって、1950年代のハードバップ時代以降、サックスの吹奏は皆、ストレートがスタンダードになっている。これはもはや、モダン・ジャズ・テナーの標準であって、コルトレーンの専売特許ではないだろう。

つまり、ストレートなテナーの吹奏だけを捉えて、コルトレーンの後継とか、コルトレーンの物真似とかと評価するのは違う、ということ。マイケルの音楽性、テナーのフレーズの創りなど、コルトレーンとは全く異なる。この『Now You See It... (Now You Don't)』を聴いても、マイケル独特の個性と才能が良く判る。
 

Michael-brecker-now-you-see-it-now-you-d  

 
この『Now You See It... (Now You Don't)』を聴いていて思うのは、マイケルは、復活後のエレ・マイルスの音楽性に影響を受けていたのではないか、ということ。リズム&ビートが、1980年代エレ・マイルスのリズム&ビートにどこか似ている。ファンクネスの濃度が薄いのと、重量感が軽減されていて、アーバンで洗練されたリズム&ビートだが、どこかエレ・マイルスの雰囲気を感じる。

そういう感覚で、マイケルのテナーのフレーズを聴いていると、どこかマイルス風のところが見え隠れする。マイルスのトランペットから、尖ったところ、切れ味の鋭いところを差し引いて、力感溢れクールではあるが、ソフト&メロウな味付けをしつつ、ブレッカー・ブラザーズ仕込みの、アーバンで乾いたファンクネスを宿したフレーズ。

このリーダー作には、マイケルのやりたかった音世界がぎっしり詰まっている。1作目はワーナー、2-3作目はインパルスと大手レコード会社からのリリースだったので、どこかアルバムの売り上げを気にさせられて、聴き手に迎合している音世界が気になったのだが、今回のリーダー作はGRPに移籍してのリリースなので、マイケルはグロルニックと組んで、やりたいことを存分にやった感じが濃厚。マイケルならではの音世界がこのアルバムに確立されている。

この『Now You See It... (Now You Don't)』を聴いて、マイケルのテナーが、コルトレーンのフォロワー、だとか、コルトレーンの物真似だとか評価する向きは、恐らく、この盤をしっかり聴いていないのだろう。

コブハムのバンドで、ブレッカー兄弟でジャズ・ファンクをブイブイ言わせ、兄弟自ら立ち上げたブレッカー・ブラザーズでフュージョン・ファンクを確立した、力感溢れクールではあるが、ソフト&メロウな味付けをしつつ、アーバンで乾いたファンクネスを宿したマイケルのテナー。

そんなテナーを前面に押し出した、硬派でクールな、メイストリーム志向のコンテンポラリーなエレ・ジャズ。そんなマイケル・ブレッカーの音世界を確立した、内容の濃いリーダー作。秀作です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年3月30日 (土曜日)

1980年の新感覚のアコ・ジャズ

1970年代後半から1980年代前半は「フュージョン・ジャズの時代」。電気楽器をメインに基本のビートは8ビート、テクニック優秀、聴き応えと聴き心地を優先したジャズ。1950年代から培われてきた、生楽器をメインに基本のビートは4ビート、テクニック優秀、即興演奏の妙とインタープレイを主とした「ハードバップな純ジャズ」とは正反対の音楽性。

しかし、1979年、このフュージョン・ジャズとハードバップな純ジャスを足して2で割った様な「新感覚のアコースティック・ジャズ」が出現する。ヴァイブ奏者のマイク・マイニエリがメインに結成した「ステップス "Steps" 」(後にステップス・アヘッド "Steps Ahead" と改名)。このバンドの出す音は、僕にとっては衝撃的だった。

Steps『Step By Step』(写真左)。1980年12月8, 10日の録音。ちなみにパーソネルは、Mike Mainieri (vib), Mike Brecker (ts), Don Grolnick (p), Eddie Gomez (b), Steve Gadd (ds)。日本コロンビアの「Better Daysレーベル」の録音&リリース。なんと、フュージョン・ジャズとハードバップな純ジャスを足して2で割った様な「新感覚のアコースティック・ジャズ」は、我が国のレーベルで録音されていた。
 

Stepsstep-by-step

 
フュージョン・ジャズの名手達が、フュージョン・ジャズが生み出した「スクエアなノリの4ビート」に乗って、新しい感覚の純ジャズをやる。とりわけ、マイケル・ブレッカーのテナーが「純ジャズ」ライクに、モーダルに吹きまくる様は迫力満点。ゴメス、ガットの生み出す「スクエアなノリの4ビート」がクールでスインギー。

面白いのは、リーダーのマイニエリのヴァイブとグロルニックのアコピが、凝ってこてにフュージョンしていること。フュージョンの音志向「ソフト&メロウ」は、このマイニエリとグロルニックが一手に担っている。但し、バンドのリズム&ビートが「スクエアなノリの4ビート」なので、イージーリスニングに流れることはない。意外と硬派でダイナミックなパフォーマンスが見事。

僕はこのゴメス、ガットの生み出す「スクエアなノリの4ビート」に感じ入って、このステップスの音が大のお気に入りに。全曲オリジナルで、純ジャズの様な迫力ある即興演奏なアドリブとフュージョン・ライクな聴き心地の良いキャッチャーなフレーズが共存した、聴き易く聴き応えのある、後のネオ・ハードバップに通じる「新感覚のアコースティック・ジャズ」。今の耳で聴いても、新鮮な感覚が満載です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2022年11月 5日 (土曜日)

マイケルの素晴らしいライヴ音源

現代で活躍するジャズマンを見渡して見ると、ピアノ、トランペット、アルト・サックス、ベース、ドラムなどは、現代ジャズにおいて、演奏スタイルやトレンドをリードする「後を継ぐ者」がしっかりと存在している。が、テナー・サックスについては、ちょっと低調な感がある。

そもそも、マイケル・ブレッカーが、2007年早々に57歳で急逝してしまって、21世紀に入って、ブランフォードが活動を徐々にスローダウンさせて、それ以降、何人かの優れたテナーマンは現れ出でてはいるのだが、そんな中で突出した名前が浮かばない。

まあ、テナー・サックスについては、1967年に逝去した「ジョン・コルトレーン」という偉大な存在が未だに君臨していて、テナーマンの新人が出てくる度に、やれコルトレーンそっくり、だの、コルトレーンの方が優れている、だの、何かにつけ、コルトレーンと比較され、コルトレーンの存在は絶対で、常に低評価される傾向にあるので、正統な評価を得ることが出来無いのだろう。

Michael Brecker Band『Live at Fabrik, Hamburg 1987』(写真)。1987年10月18日、The Jazzfestival Hamburgでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (sax), Joey Calderazzo (key), Mike Stern (g), Jeff Andrews (b), Adam Nussbaum (ds)。テナー・サックスの雄、マイケル・ブレッカーがリーダーの、ギター入りクインテット編成。ライヴ・アット・ファブリーク・シリーズ第3弾になる。

録音年の1987年は、マイケルにとって、自身単独の初リーダー作がリリースされた記念すべき年。このライヴ盤では、とても充実したマイケルのサックスが堪能出来る。そして、ライヴ盤であるがゆえ、マイケルのサックスの個性がとても良く判る。
 

Michael-brecker-bandlive-at-fabrik-hambu

 
マイケルもデビュー以降、常にコルトレーンと比較され、やれ、コルトレーンの後継だの、やれ、コルトレーン以下だの、マイケルのテナーは、概ねコルトレーンのフォロワーと評価されていたが、このライヴ盤のマイケルのテナーを聴くと「それは違う」ことが良く判る。コルトレーンと似ているのは、ヴィブラートやフェイク無しのストレートな吹奏だけ。

マイケルのバンドの音志向は、どちらかと言えば、当時の「復活後のエレ・マイルス」を志向していたと感じる。とてもヒップで疾走感溢れる「クールなジャズ・ファンク」。

リズム&ビートは切れ味良くコンテンポラリーでファンキー。そんなリズム&ビートをバックに、クールでモーダルなフレーズを吹きまくるマイケル。そのフレーズは、シーツ・オブ・サウンドでもなければ、エモーショナルでスピリチュアルなフリーでも無い。

バックの演奏もそうだ。ジェフ・アンドリュースとアダム・ナスバウムの叩き出す、ポリリズミックでファンキーなリズム&ビートに乗った、キーボードのジョーイ・カルデラッツォとギタリストのマイク・スターンのインプロは凄絶。まるで、1960年代後半のエレ・マイルスのチック・コリアとか、ジョン・マクラフリンとかを彷彿させる、その「ど迫力と自由度」。
 
マイケルのテナーは、当時の「復活後のエレ・マイルス」におけるマイルスのトランペットのフレーズをフォローし、自家薬籠中のものとしたもので、それが唯一無二の個性なのだ。マイケルは、決して、コルトレーンのフォロワーでは無かった。それがとても良く判る未発表ライヴ盤。こんなライヴ音源が残っていたなんて。1987年辺り、タイムリーにリリースして欲しかったなあ。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2020年4月10日 (金曜日)

凄い未発表ライブ盤 『Live and Unreleased』

僕がジャズを聴き始めた1970年代後半は、フュージョン・ジャズの全盛時代。ジャズ者初心者だったので、しっかりハードバップやビバップの名盤と呼ばれる盤を順に聴いてはいたが、当然、フュージョン・ジャズも聴きに聴いた。もともと、ロックのインストルメンタル、いわゆる「プログレ」が大好きだったので、電気楽器ベースのフュージョン・ジャズは、すんなり入った。

フュージョン・ジャズについては、ムードや聴き心地重視の「ソフト&メロウ」なもの、かたや、ノリ重視でR&B志向の「フュージョン・ファンク」の2つが主流。後者の代表格が「ブレッカー・ブラザース(The Brecker Brothers)」。トランペッターのランディ、テナー/サックス奏者のマイケルのブレッカー兄弟が双頭リーダーの伝説のフュージョン・バンドである。

The Brecker Brothers『Live and Unreleased』(写真)。1980年7月2日、ドイツ、ハンブルグの伝説的ジャズ拠点、Onkel Pos Carnegie Hallでのライヴ録音。80年の夏、5週間に渡る欧州ツアーの一コマ。ちなみにパーソネルは、Randy Brecker (tp & vo), Michael Brecker (ts), Mark Gray (key), Barry Finnerty (g), Neil Jason (b & vo), Richie Morales (ds)。収録曲については「Strap Hangin'」「Sponge」「Some Skunk Funk」他、代表曲のオンパレード。
 
 
Live-and-unreleased-brecker-brothers  
 
 
もうかれこれ40年前のライヴ音源である。内容が良ければ、もう既にリリースされているはず。あんまり期待せずに聴き始めたんだが、これがビックリ。冒頭の「Strap Hangin'」を聴いただけで、椅子から転げ落ちそうになった。なんだ、この凄い演奏は。しかも音が良い。迫力満点、各楽器の分離も良く、パンチとメリハリの効いた音。全盛期のブレッカー・ブラザースのパフォーマスの「ど迫力」がダイレクトに伝わってくる。内容良し、音良し、ジャケット良しと「好盤条件3拍子」が揃った未発表ライヴ音源である。

まず、兄弟のパフォーマンスが凄い。ランディはトランペットを疲れ知らずに吹きまくり、マイケルはテナー・サックスを疾走感満点に吹きまくる。どちらのパフォーマンスも、純ジャズのレジェンド級のトランペッターやテナーマンと比較しても決して引けを取らない、素晴らしい内容。グレイのキーボードも凄いし、フィナティのエレギはファンキー度満点。ジェイソンのベース、モラリスのドラムのリズム隊もフロント楽器を鼓舞し、ガッチリとサポートする。

ファンク・グルーヴとキャッチーなメロディ、そして炸裂のソロ。それらを的確に表現し、イメージを増幅する。このライブ盤のブレッカー・ブラザースの演奏能力は凄まじいものがある。フュージョンだから演奏パフォーマンスはイマイチで、純ジャズだから優秀なんてことは絶対に無い。このライブ盤を聴いて改めてそう思う。フュージョン・ジャズだからと言って侮ってはならない。しかし、どうして、これだけ凄い内容のライブ音源が40年もの間、倉庫に眠っていたのか。いやはや、今回、発掘リリースされて良かった。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》

【更新しました】2020.03.29
  ★ まだまだロックキッズ ・・・・ ELP「恐怖の頭脳改革」である

【更新しました】2020.04.01
  ★ 青春のかけら達 ・・・・ チューリップのセカンド盤の個性

 

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から9年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 

2019年11月17日 (日曜日)

マイケルが吹きまくる 『Magnetic』

ランディ・ブレッカーの新盤を聴いていて、ふと弟のマイケル・ブレッカーのテナーが聴きたくなった。弟マイケルは、2007年1月13日、57歳にて早逝している。よって、最近の新盤は無いので、マイケルのテナーらしいブロウが収録されている旧盤を物色することになる。マイケルは、フュージョン、メインストリーム、両方いける口ではあるが、自由奔放なブロウという面ではフュージョン・ジャズ系のアルバムが良い。

Steps Ahead『Magnetic』(写真左)。1986年のリリース。参加ミュージシャンは、Michael Brecker (ts, EWI), Mike Mainieri (vib, key), Peter Erskine (ds), Hiram Bullock (g), Victor Bailey (b), Warren Bernhardt (p, syn), Chuck Loeb (g), Dianne Reeves (vo) 等々。フュージョン・ジャズの名うてのジャズメン達がズラリと並ぶ。いやはや、今から振り返れば、錚々たるメンバーである。

このアルバムでのマイケルのブロウは「はっちゃけている」。ブレッカー・ブラザース時代以来の「ポジティヴに吹きまくる」マイケルがここにいる。思えば、ブレッカー・ブラザースが解散、その後、アンチ・フュージョンな、硬派なコンテンポラリーな純ジャズ集団「ステップス」に参加。ストイックなテナーを吹いていた分、この「ステップス」後の「ステップス・アヘッド」で「はじけた」。
 
 
Magnetic_steps-ahead  
 
 
そんな感じのマイケルのテナーとEWI (Electronic Wind Instrument)である。そもそも「スッテプス・アヘッド」というバンドの演奏の個性が「明るくポップでキャッチャーな」フュージョン・ジャズといったもので、どの曲もフュージョン・ジャズらしく、超絶技巧なテクニックを駆使して、キャッチャーなアドリブ・フレーズを吹きまくり、弾きまくる。とにかく聴いていて楽しい。

特にリズム・セクションが強力。ウエザー・リポートで鳴らしたピーター・アースキンのドラミングがまず「見事」。コンテンポラリーな純ジャズ風のドラミングを叩きまくり、バンド全体のリズム&ビートを引き締める。そして、ハイラム・ブロックやチャック・ローブのエレギが、これまた「見事」。リズムにリードに大活躍。マイニエリのヴァイブも良いアクセントになっていて「見事」。

今の耳で振り返って聴けば、この「ステップス・アヘッド」のパフォーマンスは、1970年代に生まれ発展したフュージョン・ジャズの究極の姿と言っても良いのでは無いか。ムーディーでアーバンな個性はスムース・ジャズに任せれば良い。フュージョン・ジャズは「明るくポップでキャッチャー」そして「超絶技巧なテクニックで吹きまくり、弾きまくる」。これがフュージョン・ジャズにとって一番である。
 
 
 
東日本大震災から8年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年6月13日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・115

バック・ミュージシャンに徹したからだろうか、このピアニストの名前はなかなかお目にかかれない。1938年生まれ、米国マサチューセッツ州出身。1973ー75年、キャノンボール・アダレイのクインテットで、1980ー90年はフィル・ウッズのクインテットでバックを務めている。エレギのジョンスコとは幾度か共演し、これまた印象的なバックを務めている。
 
つまりは「伴奏上手」な、フロント・ミュージシャンを盛り立てるのが上手いピアニストなんだと思っている。ピアノ演奏の基本は「モード」。左手のベースラインがゴーンと来て、右手の速くて多弁なフレーズが印象的に鳴り響く。それでいて、ちょっと典雅で、ちょっと温和。良い意味でジェントルで流麗な「マッコイ・タイナー」といった印象。そのピアニストとは「Hal Galper(ハル・ギャルパー)」である。

Hal Galper『Reach Out』(写真左)。1976年11月11日の録音。ちなみにパーソネルは、Hal Galper (p), Randy Brecker (tp), Michael Brecker (ts, fl), Wayne Dockery (b), Billy Hart (ds)。欧州のジャズ・レーベルSteepleChaseからのリリース。どこから切っても「モード・ジャズ」がてんこ盛り。さすが「流麗なマッコイ・タイナー」といった印象を持つピアニスト。モーダルなピアノのフレーズ展開が特徴である。
 
 
Reach-out-hal
 
 
この盤のジャケットを見た時、訳が判らなかったことを覚えている。ピアノのギャルパーがリーダー。フロントを張るのが「ブレッカー・ブラザース」の2管。ブレッカー・ブラザースといえば、当時、エレクトリックなジャズ・ファンクの雄。ギャルパーのピアノは「モード・ジャズ」。どんな音が詰まっているのか、とんと見当がつかぬ。リリースしたレーベルが、欧州の純ジャズ・レーベルの雄、SteepleChase。まさかフュージョンなジャズ・ファンクでは無かろう。
 
詰まっていた音は純ジャズの「モード・ジャズ」。逆にこの盤、ジャズ・ファンクの雄「ブレッカー・ブラザース」が純ジャズを、モード・ジャズをバリバリに吹きまくっているのだ。これが凄い。ランディのトランペットも、マイケルのテナーも凄い迫力でモーダルなフレーズを吹きまくる。この2人、純ジャズをやらせても超一流なのだ。ビリー・ハートのドラムも良い。モーダルなドラミングって、こういうドラミングを言うんだろう、という思いを強く持たせてくれる。
 
さて、肝心のリーダーのギャルパーのピアノについてはソロはあまり目立たないのですが、伴奏に回った時の、その伴奏の上手さは特筆もの。フロントを支えつつ、時に積極的に鼓舞し、時に一緒に盛り上がる。端正ではあるが、緩急自在、硬軟自在なアドリブ展開はギャルパーの個性。やっぱ「モーダルで伴奏上手なピアニスト」なんだろうな。でも、それが良い。それが良い方向に出た好盤です。ご一聴あれ。
 
 
 
東日本大震災から8年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月13日 (木曜日)

個性全開のセカンド盤 『Don't Try This at Home』

マイケル・ブレッカーのテナーは個性的だった。宣伝では「コルトレーンの再来」なんて表現されたが、どうして、ストレートなブロウがコルトレーンと同じだけで、アドリブ・フレーズの展開、モーダルな音の選び方、運指の癖、どれもが個性的で、コルトレーンとは似ても似つかぬもの。しかも、フュージョン・ジャズにも通じる、コンテンポラリーな純ジャズの音世界が、1970年代〜1980年代のテナー奏者ならでは、と強く感じる。

Michael Brecker『Don't Try This at Home』(写真左)。Impulseレーベルからの2ndアルバム。1988年のリリース。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (ts, EWI), Mike Sternx(g), Don Grolnick (p), Charlie Haden, Jeff Andrews (b), Jack DeJohnette, Adam Nussbaum, Peter Erskine (ds), Mark O'Connor (vln), Herbie Hancock, Joey Calderazzo (p), Judd Miller, Jim Beard (syn)。豪華メンバーが脇を固めて、どんな曲でもどんとこい、という布陣。

初ソロ盤に比べて、オリジナリティ豊かなサウンドが展開されている。4ビートに拘らない、新しい感覚のニュー・ジャズが心地良い。エレクトリックなのかアコースティックなのか、4ビートなのか16ビートなのかといった固定概念に拘らない、柔軟で多様な音世界が実にユニーク。1988年なので、純ジャズ復古後のネオ・アコースティックに手を染めるかと思いきや、マイケルはそんな当時のジャズ界のトレンドに目もくれず、1970年代以降のニュー・ジャズの音世界に没入している。
 

Dont_try_this_at_home

 
恐らく、Impulseレーベルとしては「現代のJohn Coltrane」としてセールス的にも大きな期待を寄せていたはずで、この期待と自分のやりたいことの狭間で、マイケルは結構揺らいでいたのかなあ、と思う。この盤はどちらかといえば「やりたいことをやる」マイケルが存在していて、後の1990年代のマイケルの音世界に直結する、オリジナリティ豊かなニュー・ジャズなサウンドがなかなか個性的。

この盤を聴いていて、マイケルってウェザー・リポートが好きだったのかなあ、とも感じます。良く似た音の展開が見え隠れするんですが、そこはマイケル、展開のコピーに終始すること無く、ウェザー・リポートよりもマイルドでアーバンな音世界を展開していて、これはこれで実に個性的な仕上がりになっている。こういうところがマイケルの非凡なところ。

アルバム全体の印象は、マイケルの音世界のプロトタイプという印象だが、演奏全体も充実していて、とても内容の濃いコンテンポラリーな純ジャズに仕上がっている。マイケルはEWIをかなり使用しているので、硬派なジャズ者の方々には受けが悪いのかもしれません。が、このEWIの音が僕は大好物。電気楽器も効果的に使用されていて、1980年代のコンテンポラリーな純ジャズ盤として、意外と僕は愛聴しています。

 
 

★東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月12日 (水曜日)

マイケルの初リーダー作 『Michael Brecker』

2007年1月13日、マイケル・ブレッカーの急逝はジャズ・テナー界における大きな損失であった。当時57歳。あまりに若すぎる死であった。ジャズ界で57歳と言えば「中堅」。「ベテラン」の域に向けての端境期での逝去であった。コルトレーン〜ショーター〜ブレッカーと引き継がれてきたジャズ・テナーの系譜(ロリンズは孤高のテナーとして別格扱い)がいきなり途切れた。今ではジャズ・テナー界は「群雄割拠」の時代。

マイケル・ブレッカーはテナー・サックス奏者。1949年、フィラデルフィア生まれ。1970年代から頭角を現したがソロでは活動せず、兄のランディと共に「ブレッカー・ブラザース」を結成。コ・リーダーとして活躍。その後、1970年代の終わりから「ステップス・アヘッド」を結成し、ここでもコ・リーダーとして活躍。なかなかソロでの活動には踏み出さず、ソロとして初のリーダー作をリリースしたのは1987年の事であった。

その初リーダー作が『Michael Brecker』(写真左)。1987年のリリース。ちなみにパーソネルは、    Michael Brecker (ts, EWI), Pat Metheny (g), Kenny Kirkland (key), Charlie Haden (b), Jack DeJohnette (ds)。どちらかと言えば、フュージョン・ジャズ畑を歩いてきたマイケルにとって、コンテンポラリーな純ジャズのファーストコール・ジャズメンばかり、とても素晴らしいサイドメンに恵まれている。
 

Michael_brecker_album  
 

この盤にはマイケルのやりたかった事が全て詰め込まれている印象。ちょっとバラエティーに富み過ぎているかな、とは思うが、マイケル自身、そして、バックのサイドメンの全てが個性派揃いで、どんなジャズ演奏のトレンドにも「ぶれない」。故にバラエティーに富んだ内容ながら、散漫な印象を感じることは無い。特に、マイケルのテナーについては一本筋が通っていて、しっかりとマイケルならではのテナーを吹き上げていて立派だ。

確かにテナーのスタイルはコルトレーンのスタイルを継ぐものだが、これって、当時も今も変わらないものであって、今となっては重要なことではないだろう。この盤でのマイケルのテナーは、コルトレーンの奏法を踏襲してはいるが、フレーズの節回しやバラードのニュアンスなど、マイケルの個性で固められている。コルトレーンの雰囲気をカヴァーするものでは全く無い。そういう意味では、ジャズ・テナーのスタイリストとして唯一無二な個性を確立していた、と言える。

そんなマイケルの唯一無二の個性をこの初リーダー作で確認することが出来る。この盤にコルトレーンは存在しない。ましてやショーターも存在しない。明らかにマイケルのテナーだけが存在していて、その個性は「今後を十分に期待させてくれる」ものであった。1987年当時の最先端のコンテンポラリーな純ジャズを追求していることに頼もしさを感じる。好盤です。

 
 

★東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

その他のカテゴリー

A&Mレーベル AOR Bethlehemレーベル Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteの100枚 Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル ECMのアルバム45選 ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル Jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 こんなアルバムあったんや ながら聴きのジャズも良い アイク・ケベック アキコ・グレース アジムス アストラッド・ジルベルト アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラウンド・マイルス アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アントニオ・サンチェス アンドリュー・ヒル アンドレ・プレヴィン アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イリアーヌ・イリアス インパルス!レコード ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウォルフガング・ムースピール ウディ・ショウ ウラ名盤 エグベルト・ジスモンチ エスビョルン・スヴェンソン エスペランサ・スポルディング エディ・ハリス エメット・コーエン エリック・アレキサンダー エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルヴィン・ジョーンズ エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリスマスにピッタリの盤 クリス・ポッター クリフォード・ブラウン クルセイダーズ クレア・フィッシャー クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニーG ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン コンテンポラリーな純ジャズ ゴンサロ・ルバルカバ ゴーゴー・ペンギン サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド・ジョーンズ サム・ヤヘル サム・リヴァース サンタナ ザ・バンド ジャケ買い「海外女性編」 シェリー・マン シダー・ウォルトン シャイ・マエストロ シャカタク ジェイ & カイ ジェイ・ジェイ・ジョンソン ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジェリー・マリガン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・バリトン・サックス ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャズ喫茶で流したい ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・ラージ ジョエル・ロス ジョシュア・レッドマン ジョナサン・ブレイク ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・コルトレーン on Atlantic ジョン・コルトレーン on Prestige ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン ジョー・ロヴァーノ スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン ステイシー・ケント ステップス・アヘッド スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トランペットの隠れ名盤 トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ナット・アダレイ ニルス・ラン・ドーキー ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハービー・マン ハーブ・アルパート ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・シャンク バド・パウエル バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグバンド・ジャズは楽し ビッグ・ジョン・パットン ビリー・コブハム ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビル・ブルーフォード ビートルズ ビートルズのカヴァー集 ピアノ・トリオの代表的名盤 ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・ウッズ フェンダー・ローズを愛でる フォープレイ フュージョン・ジャズの優秀盤 フランク・ウエス フランク・シナトラ フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・リトル ブライアン・ブレイド ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザーズ プログレッシブ・ロックの名盤 ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボビー・ハンフリー ボブ・ジェームス ボブ・ブルックマイヤー ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイケル・ブレッカー マイルス( ボックス盤) マイルス(その他) マイルス(アコ)改訂版 マイルス(アコ)旧版 マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マハヴィシュヌ・オーケストラ マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・5 マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モンティ・アレキサンダー モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラムゼイ・ルイス ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラルフ・タウナー ランディ・ブレッカー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レイ・ブラウン レジェンドなロック盤 レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロニー・リストン・スミス ロバート・グラスパー ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー ヴィンセント・ハーリング 上原ひろみ 僕なりの超名盤研究 北欧ジャズ 古澤良治郎 吉田拓郎 向井滋春 和ジャズの優れもの 和フュージョンの優秀盤 四人囃子 国府弘子 増尾好秋 夜の静寂にクールなジャズ 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 松岡直也 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 阿川泰子 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 音楽喫茶『松和』の昼下がり 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー