2015年4月 8日 (水曜日)

Tangerine Dreamの最終到達点

1980年代に入って、ほとんどのロック・グループ、ロック・ミュージシャンは、デジタルの壁に苦しんだ。アナログ録音、アナログ機材とは全くと言って良いほど勝手の違う、デジタル録音、デジタル機材の扱いに大苦戦。

音が薄くなったり、音のエッジが立ちすぎでケバケバの音になったり、軽薄短小な音の傾向に陥ったり、高音しゃりしゃりの腰の高い据わりの悪い音になったり、とにかく、簡単に言って音が悪い。ペラペラのスッカスカの音に陥ったバンドは数知れず。

そんな中、デジタルの壁に全く苦しまず、瞬時の内にデジタル録音、デジタル機材を押さえ込み、アナログ時代と変わらない音作りをする、逆にデジタルならではの音作りをしっかりと会得するバンドもあった。例えば、このTangerine Dream(タンジェリン・ドリーム)はその好例である。

このアルバム『White Eagle』(写真)を聴けば、それが良く判る。この『White Eagle』は1982年のリリース。1982年と言えば、ほとんどのロック・グループ、ロック・ミュージシャンが、デジタルの壁に苦しんでいた頃。特に、エレクトロニカ、アンビエントの先駆だったタンジェリン・ドリームはさぞかし苦しんでいるだろうと、最初、このアルバムを聴くのが憚られた。

エレクトロニカ、アンビエントなロックと言えば、シンセサイザーとシーケンサーが主役。シーケンサーはともかく、シンセサイザーはアナログとデジタルでは、音の差が天と地ほどある。音の質も響きも拡がりも全く違う。1970年代のアナログチックなアルバムとは全く違う音になってしまうはずである。

が、この『White Eagle』の音を聴けば、音のコンセプトは1970年代のアナログ時代の音と全く変わっていないことが良く判る。確かに、音のエッジはアナログよりも立っているし、音の抜けは明らかに良い。音の傾向は明るく、音の分離が凄く良いのだが、音の基本はアナログ時代の音の基本をしっかりとキープしている。これには本当に感心した。
 

White_eagle

 
ドイツのシンセサイザーエンジニアであるヴォルフガング・パームがカスタムメイドしたプロトタイプのPPGシンセサイザーの音が決め手。デジタル方式のシンセでありながら、デジタル臭さを極力押さえ込んだ、このPPGシンセサイザーの存在が、1980年代のタンジェリン・ドリームを支えている。

タンジェリン・ドリームの音はデジタルの時代になって、透明度とリリカルさが増している。この『White Eagle』の音も全編、透明感のある抜けの良い音とリリカルな音の響きが中心。透明度とリリカルさが相まって、叙情性が強調されている。

もはやロック・ミュージックというよりはアンビエント・ミュージックとして、ロック色がかなり減退している。まあ、それでも、シーケンサー自体がロックしているんで、この『White Eagle』も、辛うじて、シンセサイザー・ロックに留まっている。

展開されるフレーズは、1970年代後半に培ってきた独特のフレーズ回し。さすがにこの『White Eagle』に至っては、成熟の頂点と言って良い程の、タンジェリン・ドリーム独特のフレーズ回しが満載。ほとんどマンネリズムと隣り合わせ、マンネリズムと紙一重の音世界となっている。

そういう意味で、この『White Eagle』は、エレクトロニカ、アンビエントなロックとして、タンジェリン・ドリームの頂点、最終到達点を記したアルバムと言って良いと思う。ノイジーな電子音楽がベースの現代音楽の様な初期の音世界から、どんどんポップになっていって、デジタル機材に出会って、タンジェリン・ドリームはその個性的な音を完結させた。

その瞬間の記録がこの『White Eagle』だろう。シンセサイザー・ミュージックの好きな人には必聴のアルバムの一枚です。

 
 

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2014年11月15日 (土曜日)

Tangerine Dream『ロゴスLive』

シーケンサーによる躍動感溢れるビートに乗って、シンセサイザーが縦横無尽に、変幻自在に駆け巡る。時には幻想的に、時には攻撃的に、時には広大に、時には陰鬱に、シンセサイザーの旋律が疾走する。そんなTangerine Dream(タンジェリン・ドリーム)の音世界は、ジャズを聴きまくっての「耳休め」にピッタリ。

そんなTangerine Dreamの音世界は、ライブ音源では、よりメリハリ良くポップに、よりプログレッシブ・ロックっぽく展開して、気軽に聴けて聴き応えのある演奏になっている。シンセサイザー・ミュージックではあるが、リズム&ビートが前面に押し出て、ロック色が濃くなった演奏になったとも言える。

そんなTangerine Dreamのライブ音源の中でお勧めの一枚が、Tangerine Dream『Logos Live』(写真左)。1982年11月、英国ロンドンのDominion Theaterでのライブ録音。ライブ録音ですが、過去の既発表曲の焼き直しでは無く、当時、全くの新曲なので、演奏時のテンションや聴衆の耳の傾け具合の雰囲気など、オリジナル・アルバムとしての聴き応えは十分です。

タイトルの「Logos(ロゴス)」とは、ギリシア語で「ことば」を意味します。もともとは哲学の世界で用いられた用語で、「人を超えた存在」を意味します。キリスト教では、神の言葉の人格化としての神の子イエス=キリストを意味します。なかなか重厚なタイトルですよね。
 

Tangerine_dream_logos

 
さて、このライブは、1.Logos 45.06、2.Dominion 5.44 の2曲だけで構成される。1曲目の「Logos」はトータルで45分の長編で、LP時代は25:40頃にA面終了、続きは盤を裏返さなければならなかった(笑)。 CDの時代になって、この「裏返し」が無くなって、このライブ盤が聴きやすくなった。

この「Logos」は、45分を超える長尺の楽曲だが、8つのセクションに分かれている。この8つのセクションに分かれている「組曲」風な展開が、プログレッシブ・ロックっぽい展開という印象をより強くさせている。起伏のあるメリハリある展開で聴き所も満載。シンセの「泣きの旋律」が美しい。

しかし、シンセサイザーを駆使した演奏なんだけど、これだけの完成度の高さは単純に凄いなあ、と感心する。しかも、ライブですよ。1982年の時代で、電子楽器を駆使したライブ演奏で、これだけの完成度の高さを実現していたなんて驚異ですよね。

とにかく、Tangerine Dreamのライブ音源は、リズム&ビートが前面に押し出て、よりプログレッシブ・ロックっぽく展開していて、1970年代プログレ小僧の僕達にとっては聴いていてとても楽しい。 

 
 

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2014年11月13日 (木曜日)

デジタルなTangerine Dream

今日は、ジャズを聴きまくっての「耳休め」アルバムのお話しを。シンセサイザー・ミュージックと言う言葉を聞いて、僕達がリアルタイムで体験したバンドを振り返ってみると、Yellow Magic Orchestra、Kraftwerk、そして、Tangerine Dream。

僕の中では、Yellow Magic OrchestraとKraftwerkは「テクノ・ポップ」。Tangerine Dreamが、70年代ロックのプログレッシブ・ロック(以降プログレと略)に端を発した「シンセサイザー・ミュージック」。ジャズを聴きまくっての「耳休め」として良く聴くのは、Tangerine Dream。

シーケンサーによる躍動感溢れるビートに乗って、シンセサイザーが縦横無尽に、変幻自在に駆け巡る。時には幻想的に、時には攻撃的に、時には広大に、時には陰鬱に、シンセサイザーの旋律が疾走する。そんなTangerine Dreamの音世界は、ジャズを聴きまくっての「耳休め」にピッタリ。

今日のTangerine Dream(タンジェリン・ドリーム)は『Hyperborea(邦題: 流氷の詩)』(写真左)。1983年の作品。タンジェリン・ドリームのアルバムとしては第18作目。
 
通算5枚目のアルバムである『Rubycon(ルビコン)』からポップな世界に徐々に歩み寄っていったタンジェリン・ドリーム。この『Hyperborea(ヒューペルボリア)』では、とても聴き易い、印象的なフレーズ満載のプログレ的なインスト・アルバムに仕上がっている。
 

Tangerine_dream_perborea

 
邦題の「流氷の詩」にはドン引きしたが、元々のアルバム・タイトル『Hyperborea(ヒューペルボリア)』は、クトゥルフ神話に登場する架空の地名とのこと。北極海と北大西洋の間のグリーンランド近辺にあったとされる架空の大陸の名前。確かに、北の極寒の地の、透明度の高い、凛とした響きを感じる。

幻想的、かつ透明度が高く、マイナー調がベースの寂寞感溢れるシンセサイザーの旋律がキャッチャーで聴き易い。太くて凛としたタンジェリン・ドリーム独特のシンセの響きが実に良い。音の雰囲気は、音像クッキリ、高音が澄んでいて、音のエッジが少し立ち過ぎる位で、イメージとしては、デジタル録音チックなシンセサイザー・ミュージック。

アナログ録音の様な、ちょっと曖昧な高音の伸び(これが良いんだが)、塊の様な音像、音のエッジが丸みを帯びつつ切れ味はある、そんな印象の音とは正反対のデジタル・チックな音。デジタル・チックな分、音像が明るい。影の少ない明るさ。

ジャケットの印象そのものの音世界。Tangerine Dream独特の反復音を繰り返しながら展開し、高揚し発展していくシンセサイザー・ミュージック。Tangerine Dream独特の楽曲構成とメロディーがとても楽しい。

どっぷりと濃いTangerine Dreamの音世界では無いが、とても聴き易い、Tangerine Dream入門盤としてもお勧めのシンセサイザー・ミュージックである。ジャズを聴きまくっての「耳休め」の一時である。

 
 

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2014年5月16日 (金曜日)

俗っぽいタンジェリン・ドリーム

タンジェリン・ドリーム(Tangerine Dream)は、ドイツのロック・シンセサイザー音楽グループ。タンジェリン・ドリームは、メンバーを少しずつチェンジすることによって、その個性と音世界を少しずつ変化させていった。

Pinkレーベル時代の、ノイズまじりのシンセ音、幽玄で漂う様な音、イメージを音に投影するような作風から、音の旋律化、部分的にではあるがリズムの採用、そして、アナログ・シンセによる広大なスケールと躍動感と、音楽として聴き易い内容へと変化してきた。 

そして、1978年、タンジェリン・ドリームは11枚目のアルバム『Cyclone』(写真左)をリリースする。このアルバムについては、良く記憶している。このアルバムは、タンジェリン・ドリームが、初めてボーカルを採用したアルバムであり、歌詞を付けた歌唱は、それまでのタンジェリン・ドリームの音世界の印象を一変させた。

当然、賛否両論が渦巻いた。ボーカルの採用ばかりでなく、リズムも判り易いロック調なものになり、シンセの旋律はキャッチャーで叙情的なものに変化した。冒頭の「Bent Cold Sidewalk」を聴くと、思わず「これって、ピンク・フロイドか」と思ったりする。ちょうど、ディブ・ギルモアのギターをシンセに置き換えた様な、整然としたピンク・フロイドという感じの音世界が広がる。

そう、この『Cyclone』の音世界は、プログレッシブ・ロックそのものである。それも、タンジェリン・ドリームは、独のバンドでありながら、この『Cyclone』の音世界は、英国プログレッシブ・ロックの音世界である。ウエットで、黄昏時の光の輝きを感じる様な音世界。音が太く濡れていて叙情的。

ラスト(3曲目)の「Madrigal Meridian」などは20分を超える大作で、LP時代ではB面の全てを占めていた。冒頭の「Bent Cold Sidewalk」も13分を超える大作。そう「大作主義」であることも、このアルバムをプログレッシブ・ロックとする理由の一つである。
 

Cyclone

 
ヴォーカル、ベース、シンセの他に、フルート、ピッコロ、バスクラをこなすSteve Jollifeの存在がユニーク。特に、フルートやバスクラの音がクラシック音楽な雰囲気を醸し出して、プログレッシブ・ロックな音世界に拍車をかける。Klaus Krügerのドラムも、非常に判り易いリズム&ビートで、タンジェリン・ドリームの音世界をポップなものにしている。

このプログレッシブ・ロック、つまり商業音楽としてのキャッチャーで判り易い音世界は、当時の硬派なタンジェリン・ドリーム者の人達の顰蹙を買った。俗っぽい音に変わったタンジェリン・ドリームが許せなかったのだろう。当時、この『Cyclone』は、タンジェリン・ドリームのファン、いわゆるタンジェリン・ドリーム者の人達の間で物議を醸し出した。

確かに、この『Cyclone』の音世界はプログレッシブ・ロック。判り易くてキャッチャーで俗っぽい。シンセを駆使した、幽玄で幻想的でミステリアスな雰囲気は希薄になった。でも、この『Cyclone』の音世界って、聴き易いが故に、意外と良い感じなんですね。きっぱりと「プログレッシブ・ロック」と割り切って聴けば、なかなかの内容のアルバムだと思います。

まあ、リリース当時は、タンジェリン・ドリームも商業音楽に魂を売ったのか、とチラッと思ったりもしたんですがね。リリースから35年も経った今、そんなことなど過去のこと、意外とこの『Cyclone』を結構聴いていて、特にこのアルバムの中で、一番の小作(それでも5分ある)「Rising Runner Missed By Endless Sender」の爽快感がたまらなかったりして・・・(笑)。

時の流れは、人間の音に対する感覚と感じ方について、許容範囲を広げる方向に大きくダイナミックに変えていく。

 
 

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2014年4月 3日 (木曜日)

春雨に良く似合うプログレです。

今日は一日雨の千葉県北西部地方。しとしとと春の雨である。空はどんより鉛色。外は雨で霞む乳白色。そんな窓からの光景を見ながら聴くのは「プログレッシブ・ロック(略してプログレ)」。

久し振りにドイツ・プログレ。ドイツのプログレと言えば、タンジェリン・ドリーム(Tangerine Dream)。春雨で霞む乳白色の街に、タンジェリン・ドリームの音は良く似合う。

タンジェリン・ドリームの音世界は、一言で言うと「シンセサイザー・ミュージック」。シンセサイザーを中心とした、シンセの音を積み重ねた音世界。シンセとは言っても、1970年代はアナログ・シンセが中心なので、どこかアナログっぽくて、音が太くて、どこか暖かみのある音世界。

今日のアルバムは『Stratosfear』(写真左)。タンジェリン・ドリーム8枚目のオリジナル・アルバム。1976年のリリースになる。アルバム・ジャケットが魅力的。明快に「プログレ」って感じ。「Stratosfear」とはドイツ語で「成層圏」を意味する。

 
私はこのアルバムでより人間的な音を追及しようと試みた。
(エドガー・フローゼ談)
『Stratosfear』は特に気に入っている。開放的な感じが良い。
(クリストファー・フランケ談)
 

Stratosfear

 
このアルバムを制作した時のメンバー二人の談話を見ても、このアルバムは、タンジェリン・ドリームの自信作と言って良いだろう。確かに、良く出来たアルバムである。
 
初期の頃のタンジェリン・ドリームは、シンセを駆使するが、音的には電子音楽的な前衛指向なものから始まり、音を浮遊させる様な、水墨画の様な淡い音の濃淡が特徴の音世界だったのだが、ここにきて、シーケンサーを活用し、リズム&ビートをハッキリさせた音世界に大きく変貌している。

そして、アルバム全体の曲の展開も、リズム&ビートがダイナミックな展開と、リズム&ビートを抑制した繊細な展開とのメリハリのある、1曲の収録時間も長い、プログレ独特の大がかりな展開が特徴の音世界となっている。前作の『Ricochet』と合わせて、タンジェリン・ドリームのアルバムの中で、実にプログレらしい内容に仕上がっている。

使用する楽器も多岐に渡っている。アナログ・シンセは勿論のこと、12弦ギターからエレギを活用。当時のプログレ御用達のメロトロン、そして、フェンダー・ローズ、リズム&ビートはシーケンサーが担当、ところどころパーカッションを使用している。

音の展開は、アナログ・シンセの情緒的な音に流されず、しっかりとした理詰めの展開に終始し、破綻したり緩んだりしないところは、如何にもドイツのプログレらしいところ。
 
このガッチリと硬派に理詰めの展開が、タンジェリン・ドリームの個性であり、タンジェリン・ドリームを唯一無二の存在とさせている所以である。

タンジェリン・ドリームの音世界は、春の雨に良く似合う。そして、その音世界にどっぷり浸かりつつ、うつらうつらと知らぬ間に微睡んだりする。これも「また良し」である。

 
 

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2013年11月10日 (日曜日)

シンセ・プログレの傑作ライブ

ジャーマン・プログレッシブ・ロックの雄、タンジェリン・ドリーム(Tangerine Dream)。シンセ・ミュージックの老舗であり、シンセを活用したメロディアスなフレーズとシーケンサーを活用したリズム&ビートを展開。拡がりのある幽玄なメロディーとリズミックなビートを基本とした、シンセ・ミュージック中心の音世界が、タンジェリン・ドリームの個性である。

このタンジェリン・ドリームの音世界はライブでも再現される。シンセとシーケンサーを活用した演奏なので、スタジオ録音の音をライブで再現することは難しいと思っていた。時代は1970年代中盤から後半。機材だって録音技術だって、まだまだ発展途上の時代である。

そこで、大学に入って紹介されたタンジェリン・ドリームのアルバムが、Verginレーベル移籍第3作目の『Ricochet(リコシェ)』(写真左)。ジャケット・デザインが実に印象的で、まず、このジャケット・デザインだけで、このアルバムに詰まった音の素晴らしさが想像出来る。思わず、即試聴である。

出だしのLPのA面全面を占める「Ricochet Part One」は、今までの幽玄な音世界に、リズミックなビートが加わって、かなり勇壮な感じが実に良い。ゆったりとした序盤からヒートアップしていく展開はまさに「ドラマチック」。どうも、シンセサイザー・ドラムでは無い、リアルなドラムを導入した様で、このチャレンジが効果的で、演奏全編に渡り、キレのある、ドラマチックな展開を実現しています。
 

Ricochet

 
これ凄いなあ、と思って聴いていたら、このアルバムはライブ盤だと聴いてビックリ。この音ってライブの音か、と耳を疑いました。本当にライブ盤、と言いながら、LPの録音に関するコメントを読んだら、確かにライブ盤のようだ(コメントは独語だったが、僕は大学時代、独語が第二外国語だったのでなんとか読めた)。これがライブの音なのか。僕はタンジェリン・ドリームを再評価。

LPのB面を占める「Ricochet Part Two」は、絶望的な雰囲気のピアノ・ソロから徐々に展開し、読経の大合唱で一旦覚め、印象的なリズムパターンを重ねていく展開。この「プログレッシブ・ロックとはかくあるべし」という展開には惚れ惚れする。

演奏全体にしっかりとメリハリが付いていて、決して単調にならず、バランスが良い、見事なまとまりを持ったライブ盤です。シンセとシーケンサーを活用した演奏なので、スタジオ録音よりも内容的に荒っぽい内容になってしまいがちなのですが、このライブ盤についてはまったくそんな印象はありません。素晴らしいライブ盤です。

この『Ricochet(リコシェ)』は、タンジェリン・ドリームの中でも、突出してヘビロテ盤の一枚で、今でも時々、聴きたくなっては、CD棚から引きずり出します。Verginレーベル移籍後の『Phaedra(フェードラ)』『Rubycon(ルビコン)』と併せて、Verginレーベル初期三部作と勝手に名付けて、未だに愛聴しています。

 
 

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2013年10月20日 (日曜日)

『Rubycon』という傑作盤

ドイツ・プログレの雄、シンセ・ミュージックの老舗、タンジェリン・ドリーム。1974年、メジャーのVerginレーベルに移籍して以降、メロディアスなフレーズと、シーケンサーを活用したリズム&ビートを導入。グループ結成当初の現代音楽風な幽玄でフリーキーな音世界から、シンセサイザーを最大限に活用、拡がりのある幽玄なメロディーと展開を基本とした、プログレッシブ・ロック風の音世界を獲得した。

その最初の成果が、Verginレーベルに移籍第2作目、通算5枚目のアルバムである『Rubycon(ルビコン)』(写真左)。1975年のリリースになる。この『Rubycon』に収録された楽曲は、僕はFMでリアルタイムに聴いた経験がある。

当時は、このタンジェリン・ドリームの音世界は、プログレッシブ・ロックというよりも、単純にシンセサイザー・ミュージックとして捉えて聴いていた様に思う。

とにかく、ロック・バンドに必需品であるギター、ドラム、ベースが無い。シンセサイザーとシーケンサーをベースとした音楽である。1975年当時の、ロックを聴き始めて2年目の僕には、このタンジェリン・ドリームの音世界を的確に表現する知識を持ち合わせてはいなかった(笑)。
 

Rubycon

 
『Rubycon』の音世界は、じっくり聴き耳を立ててみると、最初は「歌のないピンク・フロイド」に感じる。確かに、フレーズのところどころに、ピンク・フロイドで聴いたことのある展開が顔を出す。思わずニンマリしてしまう。つまり、それだけ、タンジェリン・ドリームの音世界がメロディアスになって、聴き易くなったということである。

『Rubycon』は、1. Rubycon (Part One) と、2. Rubycon (Part Two) の2曲のみで構成される。LP時代は、A面に「Part One」を、B面に「Part Two」を配していた。この1曲17分程度の「長い曲」、そして、シンセサイザーを活用していること、観念的でスペーシーな拡がりと展開という特徴から、この音世界はプログレッシブ・ロックと評して良いと思う。

しかし、この長い曲を、タンジェリン・ドリームは、一気に退屈させずに聴かせてしまう。このアルバムの展開と構成、演奏テクニックは凄い。シンセサイザーのみの音世界は、無限の音とイメージの拡がりを感じさせ、幽玄な雰囲気を醸し出す。シーケンサーを活用したリズム&ビートは、ある種の心地良い緊張感を醸し出す。タンジェリン・ドリームのみが出すことの出来る、個性的な音世界。

タンジェリン・ドリームは、彼らのバンドの歴史の中で、幾度か、音世界のスタイルが変化していくんだが、僕達が真っ先にイメージする「タンジェリン・ドリームらしさ」が色濃いのはこの頃の作品でしょう。タンジェリン・ドリームの音世界の原点の一つを体感できる、素晴らしい作品だと思います。

 
 

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2013年10月19日 (土曜日)

タンジェリン・ドリームの傑作

タンジェリン・ドリーム(Tangerine Dream)は、ドイツのロック・シンセサイザー音楽グループ。最近、タンジェリン・ドリームのアルバムの聴き直しをし始めた。

タンジェリン・ドリームと初めて出会ったのは高校時代。確か、1975年、NHKーFMでオンエアされたタンジェリン・ドリームを聴いたのが初めてだと記憶している。どのアルバムの曲を聴いたのかは定かでは無い。しかし、スピーカーから流れてくるシンセのみで構築された、幽玄かつ浮遊感のある、かつ、ハイテクニックで構成力のある演奏に耳を奪われた。

しかし、当時、近くのレコード屋に行っても、当時、まだまだマイナーで遠いドイツのプログレのアルバムなど、置いている筈も無い。タンジェリン・ドリームのアルバムを手にしたのは、大学に入ってから、1978年のことになる。

初めて手にしたアルバムは『Phaedra(フェードラ)』(写真左)。1974年、Pinkレーベルから、メジャーのVirginレーベルに移籍後初のオリジナル・アルバムである。ドラムやベース、ギターなど、ロック・バンドに必須な楽器は全く無し。ボーカルも無し。シンセなどのキーボードを中心に、当時、開発されたばかりのシーケンサーを活用した音作りが独特の個性。

Pinkレーベル時代の、ノイズまじりのシンセ音、幽玄で漂う様な音、イメージを音に投影するような作風から、このメジャーレーベルに移籍した4thアルバムは、音の旋律化、部分的にではあるがリズムの採用で、演奏内容として、アナログ・シンセによる広大なスケールと躍動感が加味され、音楽として聴き易い内容に仕上がっています。
 

Phaedra

 
現代音楽の影響を受けているタンジェリン・ドリームですから、Pinkレーベル時代の3作は、いずれも現代音楽的で難解、かつ晦渋な作品で(実はこれはこれで素晴らしい内容なんですが)、ジャズで例えれば「フリー・ジャズ」。ちょっと、とっつき難いところが難点でしたが、この『Phaedra(フェードラ)』は、現代音楽風の尖った印象を残しつつ、そのとっつき難さを上手く緩和しています。

但し、幽玄で漂う様な音が中心なので、LPレコード時代は、スクラッチ・ノイズは大敵でした。ジックリと音に聴き入っていると、そこに「ブチッ」とか「チリチリ」とかスクラッチ・ノイズが入る。せっかく、ジックリと音に聴き入っていたのに、気分は台無し(笑)。そういう難点は、CD化されてから解消しました。今では、心ゆくまでアンプのボリュームを上げることが出来ます。

リズム&ビートは必要最低限に絞って適用され、ビートの聴いたロックなアルバムとして聴くと、肩すかしを食らいます。印象派的な幽玄かつ濃淡豊かな音世界を愛でるのに相応しいアルバムです。

僕がロックの演奏において、シーケンサーというものの存在をハッキリと認識した、記念すべきアルバムでもあります。シンセ好きにはこたえられない、観念的な印象派的なプログレッシブ・ロックの佳作です。

 
 

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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

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