2026年3月21日 (土曜日)

1966年のマクリーン・その2

録音年月日、録音場所を見ると、昨日、当ブログでご紹介した『Dr. Jackle』と同一日、同一場所のライヴ音源になる。記録を見てみると、『Dr. Jackle』の収録曲からの流れで、この『Tune Up』の収録曲になっているみたい。記録によると、1966年12月18日、米国ボルチモアのジャズ・ソシエティ「Left Bank」でのライヴ音源は全11曲。そのうち、前半5曲が『Dr. Jackle』に、後半6曲が『Tune Up』に収録されている。

Jackie McLean『Tune Up』(写真左)。1966年12月18日、米国ボルチモアのジャズ・ソシエティ「Left Bank」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、SteepleChase Recordsから1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), LaMont Johnson (p), Scotty Holt (b), Billy Higgins (ds)。

つまり、『Dr. Jackle』と、この『Tune Up』を併せて、1966年のジャキー・マクリーンのライヴ・パフォーマンスが体験出来るということ。こちらのパフォーマンスも、マクリーン流のモード・ジャズをガンガンに展開している。限りなくフリーに近いが、しっかりと秩序と統制がとれたモード。マクリーンの考える「限りなくフリーに近いモード」。マクリーンのオリジナルである。
 

Jackie-mcleantune-up

 
雰囲気的には、エリック・ドルフィーのパフォーマンスに類似性がある。ドルフィーは、フレーズが、セロニアス・モンクのピアノの様に「飛んだり跳ねたり」するが、マクリーンは流麗。しかし、二人とも、それぞれなりに「人が吹かないフレーズ」を吹きまくる。決して「フリー」ではない。あくまで、秩序があり、統制がとれた、クールで熱い吹奏である。

バックのリズム・セクションが、オーネットのバンド・メンバーというのも興味深い。オーネットのバンド・メンバーを借りてきているのであれば、オーネット流のフリーな吹奏を踏襲するのでは、と思いきや、マクリーンはそうなならない。あくまで、マクリーン流の「限りなくフリーに近いが、しっかりと秩序と統制がとれたモード」なフレーズを吹きまくる。

こういうところに、マクリーンの矜持を感じる。決して、人後に落ちない、あくまで、その時代その時代のジャズの演奏トレンドをいち早く押さえつつ、オリジナルな自分の個性的な吹奏を追求する。進化するアルト・サックス奏者、マクリーンの面目躍如的なライヴ・パフォーマンスがこの盤にも記録されている。録音が少し悪いが気にならない。マクリーンのパフォーマンスが圧倒的である。
 
 

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2026年3月20日 (金曜日)

1966年のマクリーンのライヴ盤

北欧の老舗ジャズ・レーベルである「スティープルチェイス・レコード」からのリリースなので、ホームグラウンドのコペンハーゲンの「カフェ・モンマルトル」のライヴ録音かとおもいきや、1966年、米国ボルチモアでのライヴ録音である。恐らく、ライヴ音源をスティープルチェイスが買い取って、録音から13年後の1979年にリリースしたものと思われる。

Jackie McLean『Dr. Jackle』(写真左)。1966年12月18日、米国ボルチモアのジャズ・ソシエティ「Left Bank」でのライヴ録音。SteepleChase Recordsから1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), LaMont Johnson (p), Scotty Holt (b), Billy Higgins (ds)。進化するアルト・サックスの雄、ジャキー・マクリーンがフロント1管のワンホーン・カルテットである。

つまり、このライヴ盤では、1960年代半ば辺りの、進化するアルト・サックス奏者、ジャキー・マクリーンのパフォーマンスが聴ける貴重なライヴ音源ではある。1960年代半ば辺りのマクリーンと言えば、ブルーノートでのスタジオ録音『Consequence』(1965年12月3日録音)、『New and Old Gospel』(1967年3月24日録音)の間、確かに、マクリーンのディスコグラフィーからすると、1966年の録音がごっそり抜けている。そういう意味で、このスティープルチェイスのリリースは意味があったことになる。
 

Jackie-mcleandr-jackle

 
ここでのマクリーンは、マクリーン流のモード・ジャズをガンガンに展開している。限りなくフリーに近いが、しっかりと秩序と統制がとれたモード。コルトレーンのようだ、という形容する人がいるが、これは違う。聴いていると、エリック・ドルフィーが浮かぶ。ドルフィーほど、飛んだり跳ねたりしない。マクリーンは流れる様な、人が吹かないフレーズを連発する。この人が吹かないフレーズを吹くところは、ドルフィーとよく似ている様に感じる。

バックのトリオはオーネットのバンド・メンバー。限りなくフリーに近いモーダルな展開にしっかり適応している様は見事。マクリーンのフレーズの個性をしっかり捉えて、マクリーンのフレーズ展開にしっかり追従するリズム&ビートはなかなかのもの。その適応力はレギュラー・バンドと言っても良い位である

マクリーンと言えば、初期はプレスティッジ、1959年からはブルーノートで、このプレスティッジ&ブルーノートーという印象が強いが、1970年代は、スティープルチェイスの時代。北欧コペンハーゲンの「モンマルトル」でのライヴ音源をはじめ、欧州ナイズされた「進化するマクリーン」が聴ける。このライヴ盤は、その前触れ的位置づけの米国録音のライブ音源である。ひたむきなマクリーンが恰好良い。
 
 

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2026年3月19日 (木曜日)

”マクリーンとジェンキンス” です

フレーズの作り方は「うり二つ」。マクリーンは、トレードマークの「ちょっとピッチがフラットした」伸びのある吹奏、ジェンキンスは、端正で明朗で伸びのある吹奏。「ぼうっと聴いているとどちらがどちらかわからなる」との声もあるが、マクリーンのアルト・サックスは、そんな「癖」があるので、暫く聴いていると、聴き分けることが出来る。

Jackie Mclean & John Jenkins『Alto Madness』(写真左)。1957年5月3日の録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean, John Jenkins (as), Wade Legge (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。当時の人気アルト・サックス奏者のジャキー・マクリーンと地味な存在に甘んじていたジョン・ジェンキンスの双頭リーダー&フロントの佳作である。

どちらにしても、素性確かなアルト・サックス奏者の2人である。この盤でのパフォーマンスは、ジャズの楽しさ、ハードバップの楽しさが蔓延している。冒頭のタイトル曲「Alto Madness」、マクリーンのソロから始まって、ジェンキンスが続く。そして、チェイスが繰り広げられ、和やかなエールの交換という感じだろうか。聴いていて楽しくなる。
 

Jackie-mclean-john-jenkinsalto-madness

 
4曲目「Easy Living」は、美しいスタンダード・バラード。マクリーン、ジェンキンスともに、それぞれのアルト・サックスの個性をしっかり踏まえて、吹き上げていく様は感動的。特に、マクリーンはバラードを吹かせたら味わい深い。「ちょっとピッチがフラットした」伸びのある吹奏が、どこか切ない哀愁感を醸し出して、ついつい、しみじみと聴き込んでしまう。

バックのリズム&ビートを司る、ウェイド・レッジのピアノ、ダグ・ワトキンスのベース、アート・テイラーのドラムのリズム・セクションが、フロント2管をしっかり支え、しっかり鼓舞している。特に、早逝してしまった、ワトキンスの野太いソリッドなベースラインには、思わずグッとくる。テイラーの職人芸的ドラミングも聞き物。

まるで兄弟の様なアルト・サックスの、マクリーンとジェンキンス。マクリーンは、この後、数年のうちに個性を増していった一方、ジェンキンスは完全に表舞台から姿を消した。マクリーンは「進化の人」で、ジャズのその時、その時の演奏トレンドに果敢に挑戦し、自家薬籠中のものとした。ジェンキンスはと言えば、その個性「端正で明朗で伸びのある吹奏」では、ジャズ界に生き残れなかった。なんだか、身につまされる想いに駆られる。
 
 

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2025年10月12日 (日曜日)

フリー・ジャズな”ソウル・ジャズ”『’Bout Soul』

とにかく、聴き始めてビックリ、椅子から転げ落ちる。オルガン・ジャズに代表されるノリの良いソウル・ジャズを想起していたら、絶対に怪我をします(笑)。確かに、マクリーンは正統派ハードバップから、モードに染まり、フリーにチャレンジする「挑戦し変化するジャズマン」でしたが、ここで、いきなり、フリー・ジャズを持ってくるとは。恐れ入りました。脱帽です。

Jackie McLean『’Bout Soul』(写真左)。1967年9月8日の録音。ブルーノートの4284番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Woody Shaw (tp), Grachan Moncur III (tb), Lamont Johnson (p), Scott Holt (b), Rashied Ali (ds), Barbara Simmons (recitation)。マクリーンのアルト・サックス、ショウのトランペット、モンカー3世のトロンボーンの3管フロントのセクステット編成。そして、なんと、そこに女性の朗読が付く。

タイトルが直訳すると「ソウルについて」なので、しかも、ジャケットの妙齢の黒人女性ときてるので、このアルバム、聴く前は、マクリーン流の直球勝負の硬派なソウル・ジャズかと思いきや、冒頭、ゴスペル的雰囲気で、女性の朗読「ソウルソウルソウル・・・」が出てきてビックリ。もしかして、ゴスペルチックな「ラップ」メインのジャズかと身構えたら、高速パルシヴ・ドラミングに乗って、ドバ〜っと、フリー・ジャズへなだれ込んでいく。

アルバムの内容としては、1960年代後半のジャズのスタイル(ソウル、アヴァンギャルド、フリー、モードなど)が混在した実験的な作品。
 

Jackie-mcleanbout-soul

 
特に、アルバムの冒頭には、バーバラ・シモンズによる「ソウル」の意味を語る詩の朗読が収録されているところが象徴的。つまり、ソウル・ジャズといえば「魂の叫び」、よって、メインは「フリー&アヴァンギャルド」ジャズで、スピリチュアルに攻めるのが筋だろう、という感じなんだろうな、と。

フリー&アヴァンギャルドがメインとくれば、フロント楽器の力量が問われる訳だが、フロントは、マクリーンのアルト・サックス、ショウのトランペット、モンカー3世のトロンボーン、と、フリー&アヴァンギャルドをやらせて一流、ハードバップ&モードをやらせても一流の申し分無いフロント3管なので、モードから入って、いきなりフリー&アヴァンギャルドに流れ込む展開も、安心して、彼らの音に身を任せることができる。リズム隊もラシッド・アリのパルシヴなドラミングが「肝」で安定感がある。

ソウル・ジャズみたいなタイトルだが、実は中身はフリー&アヴァンギャルドがメイン、という問題作で、ジャズ者の方々の間でも好き嫌いが分かれる思う。でも、不思議と聴き易いフリー&アヴァンギャルドで、これはフレーズのところどころにモーダルなフレーズやソウルフルなフレーズが見え隠れするからだろう。この辺りが、マクリーンのフリー&アヴァンギャルド・ジャズの面白いところ。

そう言えば、マクリーンのノリの良い、大衆に受けするソウル・ジャズなんて聴いたことがなかったなあ。ということで、この時代での、フリー&アヴァンギャルドがメインのソウル・ジャズ、というのはマクリーンの「必然」だったのだろう。
 
 

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2025年9月10日 (水曜日)

アヴァンギャルドなマクリーン『New And Old Gospel』

ジャキー・マクリーンとオーネット・コールマンの共演。ジャキー・マクリーンのメイン楽器は、アルト・サックス。オーネットのメイン楽器と被るので、この盤では、オーネットはトランペットを吹いている。テクニックはそれほどでもないけれど、オーネット流のアドリブ・フレーズを吹く分には、問題が無いのだろう。

Jackie McLean『New And Old Gospel』(写真左)。1967年3月24日の録音。ブルノートの4262番。ちなみにパーソネルは、Ornette Coleman (tp); Jackie McLean (as), Lamont Johnson (p), Scott Holt (b), Billy Higgins (ds)。オーネット・コールマンが客演してトランペットを吹く、ジャキー・マクリーン率いるクインテット編成。

冒頭の長尺、21分を越える大作メドレーは「Lifeline Medley: Offspring / Midway / Vernzone / The Inevitable End」。基本はオーネット流のフリー・ジャズに聞こえるが、マクリーンのアルト・サックスのフレーズにしろ、ラモント・ジョンソンのピアノにしろ、必要最低限の取り決めは守っているが、その展開は、マクリーンのアルト・サックスのフレーズはマクリーン流だし、ラモントのピアノも同様。フリーでアヴァンギャルドな展開は聴きものである。
 

Jackie-mcleannew-and-old-gospel

 
2曲目の「Old Gospel」は、タイトル通り、ゴスペル調のご機嫌なソウル・ジャズ。テーマ部はご機嫌なゴスペル調な演奏だが、アドリブに入ると、モードな吹き回しのアドリブ展開になり、オーネット流吹き回しのアドリブ展開になる。マクリーンのアルト・サックスは絶好調、血管ぶち切れ、アヴァンギャルドでフリーなアドリブを吹きまくるが、オーネットは自分の担当楽器でないトランペットを吹いている、とは聞こえが良いが、テクニック的にはあまり上手でないコールマンのトラペットである。

3曲目はまだコールマン流のフリー・ジャズに舞い戻るが、必要最低限の取り決めは守っているが、その展開は、マクリーンのアルト・サックスのフレーズはマクリーン流だし、ラモントのピアノも同様。音の作りは、あくまで、この盤を聴いていて、ちょっと耳を奪われるのが、ラモント・ジョンソンのピアノ。どこかマッコイ・タイナーの様ではあるが、重心的には軽めのビートで、タイナーのタッチより切れ味良く、躍動感がある。

この盤の内容は面白い。コールマン流フリー・ジャズとゴスペル風味のソウル・ジャズの2種類の、決して相容れることの無い、それぞれ異なるジャズを気持ち良くやる、という内容は、ユニークというか、何というか(笑)。そんな異質な編集の盤の中、マクリーンのアルト・サックスが、「マクリーンの考えるフリー&アヴァンギャルド」といった風情の「絶好調、血管ぶち切れ」の圧倒的なフレーズを吹きまくって、この盤に統一感を与えているのは立派である。
 
 

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2024年12月30日 (月曜日)

マクリーンのモードとのギャップ『Jacknife』

ジャキー・マクリーンは「進化するジャズマン」だった。ハードバップ時代前期にデビューして以来、人気が出ても、ハードバップ志向の音作りに安住することなく、ジャズの進化の過程での成果、モードだったり、フリーだったり、スプリチュアルだったり、それぞれの演奏トレンドに果敢にチャレンジし、マクリーン独自の演奏トレンドをものにしつつ、自らを進化させていた。

Jackie Mclean『Jacknife』(写真左)。1965年9月24日の録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Charles Tolliver (tp, #1, 3, 4), Lee Morgan (tp, #2, 3, 5) Larry Willis (p), Larry Ridley (b), Jack DeJohnette (ds)。

元々は、この音源は、4223の番号が用意されていたのにも関わらず、ブルーノートお得意の「何故かお蔵入り」音源。1975年に、1966年4月18日の録音(トランペット抜き+ベース交代)の音源と併せて、2枚組みのカップリングでリリースされたLP(写真右)の前半部分のみをCDリイシューしたもの。フロント2管のクインテット編成になる。

時は1965年。モード・ジャズとフリー・ジャズが猛威を振るっていた頃、いわゆるハードバップ最後期。この盤には、そんなジャズの環境は我関せず、マクリーン独自のモード・ジャズの「飽く無き追求」の音が詰まっている。どこかジャズ・ロック風のリズム&ビートに展開したりもするが、基本は「モード」。マクリーンの考えるモードである。

そんなマクリーンの考えるモードに、トランペットの二人がちょっと「置いてきぼり」になっている感を感じる。モーガンはさすが中堅の域、マクリーンの考えるモードに適応しているが、モーガンにはモーガンの「考えるモード」があって、それを封印して、マクリーンの考えるモードに追従するが、時々、モーガン流のモードにすり替わる。
 

Jackie-mcleanjacknife

 
トリヴァーのトランペットは出来が良いのだが、あくまで、ハードバップ期のマナーの中に片足つ込んだまあ、モードを吹く。溌剌と吹きまくるのには好感が持てるのだが、基本的にマクリーンの考えるモードに適応し切っていなくて、ちょっと中途半端なモーダルなトランペットになっている。

かたや、ピアノのウィリスは、意外とマクリーンの考えるモードに適応していて良い感じ。ベースのリドリーは、ゴリゴリとジャズロック風のベース・ラインを醸し出す。これって、マクリーンの考えるモードの適応を考えると、ちょっと違和感があるといえばある。

デジョネットのドラミングが光る。マクリーンの考えるモードを理解し、マクリーンの考えるモードなりのドラミングを披露する。

興味深いのは、マクリーンの考えるモードに追従したドラミングの中に、しっかりと自らのドラミングの個性を混ぜ込んでいるところ。この盤では、このデジョネットのドラミングと進化するマクリーンを聴くべきアルバムだろう。

この当時のマクリーンの考えるモードと、従来のハードバップに片足を突っ込んだままの、他のメンバーの演奏するモードとの相違が気になる音源ではある。これは、この当時の他のマクリーンのリーダー作と比較すると、統一感にやや欠け、お蔵入りになったのも無理はないか、とも思う。

それでも、演奏内容のレベルは高い。とりわけ、マクリーン本人のアルト・サックスとでデジョネットのドラミングは、聴きものである。
 
 

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2024年10月27日 (日曜日)

”暗黒時代の音” では無いですね

ホレス・シルヴァーと袂を分かって、ブレイキー単独となったメッセンジャーズ。ブルーノートに移籍してブレイクする前のアルバム群。以前のジャズ盤評論としては「ブレイク前のメッセンジャーズの暗黒時代」とされる時代のアルバム達。しかし、そうだろうか。僕はこのアルバムを実際に自分の耳で聴いて、この盤は決して「暗黒時代」の音では無い、と判断している。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Ritual』(写真)。1957年1月14日と2月11日、NYでの録音。Pacific Jazzからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Bill Hardiman (tp), Sam Dockery (p), Spanky DeBrest (b), Art Blakey (ds)。

ジャズ・メッセンジャーズに、若き日の「常に前進するアルト・サックス奏者、ジャキー・マクリーン」が参加している。フロントのトランペットにビル・ハードマン。ピアノとベースはマイナーな存在。クインテット編成なんだが、まず、このマイナーな存在のピアノとベースの存在が「暗黒時代」を想起させるのかもしれない。

しかし、実際の音を聴いてみると、意外とマイナーな存在のピアノとベースは健闘している。目を見張るようなテクニックを駆使してバリバリ弾きまくる訳ではないのだが、グループサウンド全体から見て、ピアノとベースの存在が邪魔になったり、耳障りになったりしている訳では無い。水準レベルのパフォーマンスで、リズム隊の必要最低限の仕事は堅実にやっている。少なくとも、ブレイキーのドラミングにちゃんと、ついていっている。
 

Art-blakey-the-jazz-messengersritual

 
ビル・ハードマンのトランペットがイマイチだ、なんて評価もあるが、イマイチで切り捨てるレベルでは無いと思う。このトランペットもしっかり水準レベルを維持していると思う。ブラウニーやモーガンの様に、ハイ・テクニックでバリバリ吹きまくるのでは無いが、出てくるトランペットの音は十分にブリリアントだし、少しヨレるところはあるが、ビ・バップなトランペットを水準レベルで吹き上げている。

逆に、この盤ではマクリーンが好調。マクリーンとブレイキーの相性がとても良い様で、ブレイキーのリズム&ビートの効果的なサポートと、マクリーンを鼓舞する様なドラミングが、マクリーンに響いて、マクリーンは独特なフレーズを紡ぎつつ、印象的なアルト・サックスを吹き上げる。

当然、ブレイキーのドラミングは良好。この盤を録音した時点で、既にブレイキーのドラミングの個性と特徴は確立されていて、ドラム・ソロなどを聴いていると、明らかに「これはブレイキー」と判るレベルに到達している。

まとめると、この盤はブレイキーとマクリーンを聴くべきアルバムである。が、残りの3人のパフォーマンスも水準レベルを維持していて、トータルとして、まずまずのハードバップなアルバムと僕は思う。何しか「メッセンジャーズの暗黒時代の演奏」と形容するのは、ちょっとこの演奏を担ったメンバーに対して、ちょっと失礼では無いかと思う。
 
 
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2024年9月25日 (水曜日)

次を見据えるマクリーン、である『Right Now!』

いきなり涼しくなった千葉県北西部地方。今日の最高気温なんざぁ、23℃。先週の水曜日の最高気温が36℃だったから、一週間で、一気に13℃下がったことになる。これだけ涼しくなると、ハードなジャズもOK。モードだろうが、フリーだろうが、これだけ涼しくなれば大丈夫。ということで、いきなり、純ジャズ、モード・ジャズに走る。

Jackie Mclean『Right Now!』(写真左)。1965年1月29日の録音。ブルーノートの4215番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Larry Willis (p), Bob Cranshaw (b), Clifford Jarvis (ds)。前作、前々作のメンバーを一新し、それでも、ピアノのウィリスは録音当時23歳、クランショウは録音当時32歳、ドラムのジャーヴィスは録音当時24歳。マクリーンが録音当時34歳で最年長。若手中心のメンバー構成は変わらない。

この盤では、マクリーン流のモード・ジャズを完全に自家薬籠中のものとしている。迷いや澱みは全く無い。マクリーン自ら確信を持って吹きまくる「マクリーン流モーダル・フレーズ」の数々。特にこの盤、マクリーンのワンホーン・カルテットなので、「マクリーン流モーダル・フレーズ」の個性がとてもよく判る。明らかに、コルトレーンの物真似でないことは明白。

冒頭の「Eco」が典型的なモード・ジャズ。この演奏で、マクリーンの目指した「マクリーンの考えるモード・ジャズ」の姿が良く判る。ハードバップのコードをベースとしたアドリブ・パフォーマンスそのままに、ベースをモードに変えたイメージの、ハードバップから聴いても違和感のない、モーダルなパフォーマンス。
 

Jackie-mcleanright-now

 
モードになって、イメージがガラッと変わるコルトレーンとは、この辺りがちょっと違う。どちらかといえば、マイルスのアプローチに近いが、マクリーンはマイルスに比べて、かなりエモーショナル。マイルスはあくまでクールでヒップ。激情にかられて、エモーショナルにトランペットを吹くことは無い。

2曲目の「Poor Eric」は、静的で淡く広がる様なモーダル・フレーズを駆使したスローな演奏。音が無限に広がっていく様なフレーズは、モードで無いと表現できない。この静的で淡く広がる様な音のイメージは、モードならでは、である。モード奏法を採用することで獲得出来た、新しい吹奏表現。ジャズの表現の幅がグッと広がったんやなあ、と実感する。

CDでのリイシューでは、4曲目の「Right Now」のAlternate Versionが追加されているが、この演奏が興味深い。バックは懸命にモーダルな演奏で、マクリーンをサポートするのだが、当のマクリーンは、半分、完璧フリーな吹奏でアドリブ・フレーズを展開する。一生懸命モードをやってるバック置き去りの「掟破り」(笑)。録音当時、未発表音源となったのが良く判る。が、マクリーンは、完全にフリーな吹奏にチャレンジしている。

マクリーンは進化するアルト・サックス奏者というが、この盤では、マクリーン流モード・ジャズを自家薬籠中のものにした、どころか、フリー・ジャズな吹奏にも、チャレンジし始めているところが垣間見える。進化するアルト・サックス奏者であるマクリーンが、既に次のステップを見据えていることを示唆する、興味深いアルバムである。
 
 

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2024年9月24日 (火曜日)

「進化する人」の面目躍如な盤『Action Action Action』

ジャキー・マクリーンは「進化の人」。一つのジャズの演奏トレンドで実績を上げたからと言って、その演奏トレンドに安住することは無かった。メンバーを厳選し、若手からも新しいアイデアを学び、自分のものとしつつ、ジャズの新しい演奏トレンドに挑戦し、自分の演奏スタイルに取り入れていく。1960年代のマクリーンは「モード・ジャズへ挑戦し、自家薬籠中のものとする」が目標。

Jackie Mclean『Action Action Action』(写真左)。1964年9月16日の録音。ブルーノートの4218番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Charles Tolliver (tp), Bobby Hutcherson (vib), Cecil McBee (b), Billy Higgins (ds)。

マクリーンのアルト・サックスと、当時、新進気鋭のチャールズ・トリヴァーのトランペットがフロント2管のクインテット編成。ハッチャーソンのヴァイブがいるので、モードからフリーをやるには、ピアノはフレーズがぶつかる可能性がある。だからピアノレス。

1970年代のメインストリーム・ジャズで活躍する、トランペットのチャールス・トリヴァー(録音当時22歳)と、ベースのセシル・マクビー(録音当時29歳)が参加している。ドラムのビリー・ヒギンスも録音当時28歳。ヴァイブのハッチャーソンだって、録音当時まだ23歳。リーダーのジャキー・マクリーンだって、録音当時33歳。実に若い、新進気鋭のクインテットである。

このメンバーの中で、年齢的に、ハードバップの洗礼をガッツリ受けているのは、マクリーンだけ。ヒギンスはかすっている程度。残りのトリヴァー、マクビー、ハッチャーソンについては、ハードバップは二十歳前で、その成果を聴いて学ぶ立場。ハードバップの流行の中で、実際にバリバリ演奏していた訳ではない。
 

Jackie-mcleanaction-action-action  

 
この盤の演奏は「モード・ジャズ」なんだが、新主流派のモード・ジャズとはちょっと異なる、完璧にモーダルな演奏なのだ。というのも、新主流派のモード・ジャズは、担い手は、ハードバップで活躍していた一流ジャズマン。

ハードバップに相対するモード・ジャズという表現がメインで、ハードバップとモード・ジャズが混在しつつ、そんな中でモード・ジャズの特質を全面に押し出す、という演奏傾向があると僕は感じる。モード・ジャズに相対するハードバップが必ず存在するのだ。

しかし、このマクリーン盤は、ハードバップの影が相当に薄い。テーマ部から、モーダルなフレーズを流しつつ、アドリブ部では純粋なモーダルな展開をベースに、純粋なアドリブ・フレーズを吹きまくる。それも、限りなく自由度の高いモーダルなフレーズを連発、時に、フリーに傾くこともある、当時としては、先進的なモード・ジャズがこの盤に詰まっている。

前作『Destination... Out!』で、「マクリーンの考えるモード・ジャズ」のほぼ完成を見た訳だが、この『Action Action Action』では、それをさらに一歩進めて、「マクリーンの考えるモード・ジャズ」を自家薬籠中のものとしている。「進化する人」の面目躍如。やはり、ジャキー・マクリーンは「進化の人」である。
 
 

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2024年7月28日 (日曜日)

マクリーン流ハードバップの完成

1961年のジャキー・マクリーンは、マクリーン流のハードバップを完成させた年。アルト・サックスの吹きっぷり、演奏のイメージとアレンジ、どれもがマクリーン流にこなれて、マクリーン独特のアルト・サックスの音色と相まって、一聴してすぐに判る「マクリーン流」ハードバップな演奏を確立している。

Jackie Mclean『A Fickle Sonance』(写真左)。1961年10月26日の録音。ブルーノートの4089番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Tommy Turrentine (tp), Sonny Clark (p), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds)。

マクリーンのアルト・サックスと、珍しく、トニー・タレンタインのトランペットがフロント2管、これまた珍しくソニー・クラークがピアノを担当、ベースのワーレンとドラムのヒギンスはこのところの、マクリーンのお気に入りリズム隊。

1961年の録音なので、マクリーンは、まだ、モードやフリーには傾倒してはいない。アルト・サックスの吹きっぷりは、コルトレーンのストレートな吹き方を踏襲、シーツ・オブ・サウンドにも似た高速アドリブ・フレーズも吹きまくる、先進的なハードバップ志向の演奏。演奏内容の傾向としては、前リーダー作の『Bluesnik』の内容を継承している。そう、この『A Fickle Sonance』は、前リーダー作の『Bluesnik』と併せて、兄弟盤の様な位置付けで、一気に聴き通した方が判り易いかもしれない。

『A Fickle Sonance』の演奏自体の雰囲気は「先進的」。マイルスやコルトレーンが提示した「先鋭的」なハードバップを自分なりに消化して、従来のハードバップの成果を踏襲することなく、精度の高い、内容充実の「先進的」なハードバップを展開していて立派。モードに展開する前に、しっかりと自分なりのスタイルを固めた、マクリーン流のハードバップを確立して様は見事である。
 

Ficklesonance_2

 
サイドマンの演奏も充実している。トニー・タレンタインのトランペットはブリリアントでリリカルで切れ味の良い力感溢れるトランペットを聴かせてくれる。

ピアノのソニー・クラークも、マクリーンの志向に応じて、新しい響きのハードバップなバッキング・フレーズをガンガン繰り出している。これが、マクリーンの「先進的」なハードバップ・フレーズと相まって、爽快感溢れる、躍動感抜群のパフォーマンスを演出する。

マクリーンのアルト・サックスと、タレンタインのトランペットとのユニゾン&ハーモニー、そして、チェイス、コール・アンド・レスポンス、どれをとっても極上の響き。ワーレンのベースとヒギンスのドラムも、通常のハードバップにはない、一癖も二癖もある、新しい響きを宿したリズム&ビートを供給していて「隅に置けない」。

マクリーン流の「先進的」ハードバップが詰まった名盤。マクリーンはこの盤を置き土産に、次作『Let Freedom Ring』で、モード&フリーに「挑戦」していく。マクリーンのハードバップの「マイルストーン的位置付け」の一枚。

実はこの『A Fickle Sonance』、2021年12月28日に鑑賞記事をアップしているのですが、今回、聴き直した折、印象がかなり違ったんで、今回、改めて鑑賞記事をアップし直しました。今回のこの鑑賞記事を最新としてお読みいただければ幸いです。
 
 

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