マクリーンのモードとのギャップ
ジャキー・マクリーンは「進化するジャズマン」だった。ハードバップ時代前期にデビューして以来、人気が出ても、ハードバップ志向の音作りに安住することなく、ジャズの進化の過程での成果、モードだったり、フリーだったり、スプリチュアルだったり、それぞれの演奏トレンドに果敢にチャレンジし、マクリーン独自の演奏トレンドをものにしつつ、自らを進化させていた。
Jackie Mclean『Jacknife』(写真左)。1965年9月24日の録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Charles Tolliver (tp, #1, 3, 4), Lee Morgan (tp, #2, 3, 5) Larry Willis (p), Larry Ridley (b), Jack DeJohnette (ds)。
元々は、この音源は、4223の番号が用意されていたのにも関わらず、ブルーノートお得意の「何故かお蔵入り」音源。1975年に、1966年4月18日の録音(トランペット抜き+ベース交代)の音源と併せて、2枚組みのカップリングでリリースされたLP(写真右)の前半部分のみをCDリイシューしたもの。フロント2管のクインテット編成になる。
時は1965年。モード・ジャズとフリー・ジャズが猛威を振るっていた頃、いわゆるハードバップ最後期。この盤には、そんなジャズの環境は我関せず、マクリーン独自のモード・ジャズの「飽く無き追求」の音が詰まっている。どこかジャズ・ロック風のリズム&ビートに展開したりもするが、基本は「モード」。マクリーンの考えるモードである。
そんなマクリーンの考えるモードに、トランペットの二人がちょっと「置いてきぼり」になっている感を感じる。モーガンはさすが中堅の域、マクリーンの考えるモードに適応しているが、モーガンにはモーガンの「考えるモード」があって、それを封印して、マクリーンの考えるモードに追従するが、時々、モーガン流のモードにすり替わる。
トリヴァーのトランペットは出来が良いのだが、あくまで、ハードバップ期のマナーの中に片足つ込んだまあ、モードを吹く。溌剌と吹きまくるのには好感が持てるのだが、基本的にマクリーンの考えるモードに適応し切っていなくて、ちょっと中途半端なモーダルなトランペットになっている。
かたや、ピアノのウィリスは、意外とマクリーンの考えるモードに適応していて良い感じ。ベースのリドリーは、ゴリゴリとジャズロック風のベース・ラインを醸し出す。これって、マクリーンの考えるモードの適応を考えると、ちょっと違和感があるといえばある。
デジョネットのドラミングが光る。マクリーンの考えるモードを理解し、マクリーンの考えるモードなりのドラミングを披露する。
興味深いのは、マクリーンの考えるモードに追従したドラミングの中に、しっかりと自らのドラミングの個性を混ぜ込んでいるところ。この盤では、このデジョネットのドラミングと進化するマクリーンを聴くべきアルバムだろう。
この当時のマクリーンの考えるモードと、従来のハードバップに片足を突っ込んだままの、他のメンバーの演奏するモードとの相違が気になる音源ではある。これは、この当時の他のマクリーンのリーダー作と比較すると、統一感にやや欠け、お蔵入りになったのも無理はないか、とも思う。
それでも、演奏内容のレベルは高い。とりわけ、マクリーン本人のアルト・サックスとでデジョネットのドラミングは、聴きものである。
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