2024年11月11日 (月曜日)

実質の「マイルス盤」が第3位!

レココレ 2024年11月号」に掲載された「ブルーノート・ベスト100」。この「ブルーノート・ベスト100」は、創立以降、ジャズの潮流が変わりつつあった、1968年までにリリースされたアルバムから、レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」が掲載されている。この「ベスト100」のアルバムを1位から順に聴き直していこう、と思い立っての3日目。

Cannonball Adderley『Somethin' Else』(写真左)。1958年3月9日の録音。ブルーノート・レーベルの1595番。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Miles Davis (tp), Hank Jones (p), Sam Jones (b), Art Blakey (ds)。アルト・サックスの個性的な達人、キャノンボール・アダレイのブルーノートでの唯一のリーダー作である。

が、実質のリーダーは、ジャズの帝王「マイルス・デイヴィス」。この「実質のリーダー」の件には訳がある。

歴史を遡ること、1950年前後、マイルスは「ジャンキー」であった。マイルスは麻薬中毒の為、レコーディングもままならない状態に陥っていた。しかし、彼の才能を高く評価していたブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレット・ライオンは彼を懇切にサポート。1952年より1年ごとに、マイルスのリーダー作を録音することを約束。実際、1952年〜1954年の録音から、2枚のリーダー作をリリースしている。

しかし、1955年、麻薬中毒から立ち直ったマイルスは、大手のコロムビア・レコードと契約をした。契約金が半端なく高額だった。生活がかかっていたマイルスについては、このコロムビアとの契約は仕方のないところ。しかし、この契約により、ブルーノートへの録音は途切れることになる。
 

Somethinelse_1

 
が、マイルスは「ライオンの恩義」を忘れていない。自らがオファーして、このキャノンボールのリーダー作にサイドマンとして参加したのである。当然、ライオンは狂喜乱舞。当時の録音テープには「マイルス」の名前を記していたという。

この盤は、先にご紹介した、ブルーノートでの唯一盤『Blue Train』のコルトレーンと同じく、プロデュースはライオンだが、メンバー選びや選曲などはマイルスに一任されている。が、マイルスの対応は一味違う。マイルスは「ライオンの音の好み」を勘案して、メンバーを選んでいる。

他のレーベルとの専属契約があったので、ブルーノートでの録音は、したくても叶わなかったであろう、当時、新進気鋭のアルト・サックス奏者のキャノンボール・アダレイを選出。ピアノに流麗なバップ・ピアノの名手、ハンク・ジョーンズ。ベースに堅実骨太のサム・ジョーンズ。ドラムに名手アート・ブレイキー。このリズム・セクションの人選が渋い。

内容の素晴らしさについては、既に様々なところで語り尽くされているので、ここでは書かない。が、この盤は、恩人アルフレッド・ライオンに向けての、マイルス・ディヴィスがプロデュースの「ブルーノート盤」であることは確かである。

コーニー(俗っぽい)な曲を嫌い、コーニーな演奏を嫌うライオンに対して、マイルスは、冒頭、実に俗っぽい有名スタンダード曲「「枯葉(Autumn Leaves)」を持ってきている。しかし、この「枯葉」の演奏が絶品かつ、素晴らしくブルーノートっぽい演奏なのだ。ブルージーでファンキーで気品溢れる、アーティステックなアレンジと演奏。これには、恐らく、ライオンも感嘆したに違いない。この1曲だけでも、この盤は「ブルーノートらしい」。

この盤が「ブルーノート・ベスト100」の第3位である。キャノンボール・アダレイの唯一のブルーノートでのリーダー作だが、実質リーダーはマイルス・ディヴィスと言う「変化球」の様な超名盤。ブルーノートらしさは色濃いが、徹頭徹尾、ストレートにブルーノートらしいか、と問われれば、ちょっとひいてしまう。が、そこは、人情味溢れる、義理堅いマイルスに免じて、これは明確に「ブルーノートのアルバム」と言って良いだろう。
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 

2024年10月24日 (木曜日)

ラヴァの『Quotation Marks』

今月発売の「レコード・コレクターズ 11月号」の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが実に気に入って、掲載されているアルバムを順番に聴いている。

以前聴いたことがあって、今回聴き直しのアルバムもあれば、初めて聴くアルバムもある。どちらも「今の耳」で聴くので、意外と新鮮に感じるから面白い。

Enrico Rava『Quotation Marks』(写真左)。1973年12月、NYでの録音と1974年4月、ブエノスアイレスでの録音。JAPO 60010番。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (tp)は、NYとブエノスアイレス共通。以降は、録音地毎のパーソネルは以下の通り。

NY録音のパーソネル:Herb Bushler (b), Jack DeJohnette (ds), John Abercrombie (g), Warren Smith (marimba, perc), Ray Armando (perc), David Horowitz (p, syn), Jeanne Lee (vo)。

ブエノスアイレス録音のパーソネルは、Rodolfo Mederos (bandoneon), El Negro Gonzales (b), Nestor Astarita (ds), Ricardo Lew (g), El Chino Rossi (perc), Matias Pizarro (p), Finito Bingert, (ts, fl, perc)。

この盤の印象はズバリ「欧州系のモード・ジャズとアルゼンチンタンゴとの融合」。ラテン音楽との融合では表現が緩すぎる。雰囲気を正確に伝えるには「モード・ジャズとアルゼンチンタンゴとの融合」が一番ニュアンスが伝わりやすい。
 

Enrico-ravaquotation-marks

 
米国フュージョンで、ここまであからさまに「アルゼンチンタンゴ」との融合を図ったフュージョン・ジャズ盤は、このラヴァのアルバム以外は見当たらない。ラテン音楽という表現に逃げず、ズバリ「アルゼンチン・タンゴ」との融合にトライしたエンリコ・ラヴァは凄い。

しかも、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズ志向の音作りではなく、あくまで、ストイックで硬派なコンテンポラリー・ジャズ志向の音作りがメインなのは、ラヴァの矜持を感じる。

NY録音では女性ヴォーカルを起用し、ブエノスアイレス録音ではバンドネオンを起用。エキゾチックな雰囲気でラテン・サウンドど真ん中なアルゼンチンタンゴ。ジャンヌリーのスキャットが入る、モーダルなスピリチュアル・ジャズ、そして欧州風なリリカルでクールなジャズロック、アブストラクト&フリー・ジャズな展開まで、このすべてが効果的に融合されている。

ECMレコードの音志向とはちょっと異なる感じのEnrico Rava『Quotation Marks』。欧州モード・ミーツ・アルゼンチンタンゴな内容なので、ECMっぽくないなあ、と思っていたら、この盤、ECMの傍系レーベル「JAPO」(※) からのリリースでした。

※「JAPO」とは、アイヒャーがECMを興す以前に主催していたレーベル。制作ポリシーがECM以前なので、ECMとは雰囲気が全く異なる「こんなアルバムあったんや」レベルのアルバムも多々あります。このエンリコ盤は、JAPOでの録音なので、ECMとはちょっと音志向が異なる。JAPO時代の各タイトルはECMに引き継がれてリリーされている。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
  ★ AORの風に吹かれて 

   ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新
 
   ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
         エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

   ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 
東日本大震災から13年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 
 

2024年10月19日 (土曜日)

僕なりの超名盤研究・34

今日で「僕なりのジャズ超名盤研究」シリーズの三日連続の記事化。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』の超名盤を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、はや3年。やっと第1巻の終わりである。

ジャズを本格的に聴き始めたのが1978年の春。フュージョン・ジャズの名盤の何枚かと、純ジャズのアルバム、MJQ『Pylamid』、 Herbie Hancock『Maiden Voyage』を聴かせてもらって、フュージョン・ジャズのアルバムも良かったが、特に、純ジャズの2枚については、いたく感動したのを覚えている。

そして、友人の家からの帰り道、久保田高司「モダン・ジャズ・レコード・コレクション」を買い求めて、ジャズ盤コレクションの道に足を踏み入れた。ハービー・ハンコックについては、FMレコパルの記事でその名前は知っていたので、まずはハンコックのアルバムの収集を始めた。

そこで、まず最初に手にしたのが、Herbie Hancockの『V.S.O.P.』。アコ・ハンコックとエレ・ハンコックの2つの側面をLP1枚ずつにまとめた名盤なのだが、僕はこの「アコースティックな純ジャズ」の演奏が実に気に入った。

このアコ・ハンコックのユニットは「V.S.O.P.」=「Very Special Onetime Performance」と命名された。ニューポート・ジャズ・フェスティバルに出演の折、ハービー・ハンコックがマイルスの黄金クインテットを再現することで、マイルスのカムバックを促す予定が、直前で肝心のマイルスがドタキャン。仕方なく、フレディ・ハバードを迎えて結成したこのV.S.O.P.クインテット。本来一1回きりの結成のはずが、予想外の好評に継続して活動することになる。

V.S.O.P.『Tempest in the Colosseum』(写真)。邦題は『熱狂のコロシアム』。1977年7月23日、東京の田園コロシアムでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock (p), Wayne Shorter (ts, ss), Freddie Hubbard (tp), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。伝説の「V.S.O.P.」ユニットである。
 
Vsoptempest-in-the-colosseum  
 
V.S.O.P.名義のアルバムは、他に2枚、V.S.O.P.『The Quintet』(1977年7月録音)、V.S.O.P.『Live Under the Sky』(1979年7月26日、27日録音) があるが、この『Tempest in the Colosseum』の出来が一番良い。USAツアーの後の日本公演だけに、メンバーそれぞれの演奏もこなれて、十分なリハーサルを積んだ状態になっているようで、この日本公演のライヴ録音の内容は秀逸である。

ライヴアルバムとしての編集も良好で、この『Tempest in the Colosseum』が一番ライヴらしい、臨場感溢れる録音〜編集をしている。演奏自体も変に編集することなく、トニー・ウィリアムスの多彩なポリリズムが凄まじい長尺のドラムソロや、ロン・カーターのブヨンブヨンとしているが、高度なアプローチが素晴らしい長尺のベースソロも、しっかり余すことなく収録されているみたいで、ライヴそのものを追体験できる感じの内容が秀逸。

演奏自体も内容は非常に優れていて、この「V.S.O.P.」の演奏が、ノスタルジックな「昔の名前で出ています」風に、1960年代中盤〜後半の演奏をなぞった「懐メロ」な演奏になっていないところが良い。この演奏メンバー5人の強い矜持を感じる。当時として、モードの新しい響きがそこかしこに見え隠れし、この5人のメンバーは、マイルス後も鍛錬怠りなく、確実にモード・ジャズを深化させていたことを物語る。

収録されたどの曲も内容のある良い演奏だが、特にラストのハバード作「Red Clay」が格好良い。ジャズ・ロック風のテーマに対して、インプロビゼーション部になると、メンバー全員が「モード奏法」で襲いかかる。凄い迫力、凄いテンション、そして、印象あるフレーズの連発。

このライヴ盤は、1970年代後半の純ジャズが、どれだけ高度なレベルで維持されていたか、ということが如実に理解できる内容になっている。この「V.S.O.P.」ユニットが切っ掛けとなって、純ジャズが「復古」し始める。

この「V.S.O.P.」ユニットは、純ジャズ復古のムーブメントの「最初の第一歩」となった伝説にユニットである。このユニットの演奏には、現代につながる「新しい」モード・ジャズの要素が散りばめられている。名盤である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
  ★ AORの風に吹かれて 

   ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新
 
   ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
         エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

   ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 
東日本大震災から13年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 
 

2024年10月 6日 (日曜日)

ブラウニーのジャム・セッション

ブラウン~ローチ・クインテットの始動後、『Clifford Brown & Max Roach』と『Brown and Roach Incorporated』の直後、同一日、同一メンバーでのジャム・セッションの『Clifford Brown All Stars』と『Best Coast Jazz』は、ブラウニー(クリフォード・ブラウンの愛称)にとって、1954年8月のロスでの、怒涛の「名演の録音月間」の成果であった。

Clifford Brown『Jam Session』(写真)。1954年8月14日、ロスでのライヴ録音。1954年のリリース。ちなみにパーソネルは、Clifford Brown, Maynard Ferguson, Clark Terry (tp), Herb Geller (as, tracks 1, 3 & 4), Harold Land (ts), Junior Mance (p, tracks 1, 3 & 4), Richie Powell (p, track 2), Keter Betts, George Morrow (b), Max Roach (ds), Dinah Washington (vo, track 2) 。

ブラウニーの短い活動期間の中、この怒涛の「名演の録音月間」である1954年8月。『Best Coast Jazz』は、名演の録音月間」でのライヴ録音である。演奏形式は、トランペット3管、アルト・サックス1管、テナー・サックス1管、そして、ピアノ・トリオのリズム隊。ゲストに1曲だけ、女性ボーカルが入る「ジャム・セッション」形式。

ブラウニーはジャム・セッションに強い。相当なテクニックと音の大きさで相手を圧倒しようとするのでは無く、相手の音をしっかり聴きつつ、相手の音に呼応し、相手の優れたパフォーマンスを引き出す様な、リードする様なパフォーマンスを繰り広げる。
 

Clifford-brownjam-session

 
よって、ブラウニーとジャム・セッションに勤しむフロント管は、皆、活き活きと優れたパフォーマンスを披露する。そんなブラウニーのジャム・セッションの「流儀」が脈々と感じ取れる、内容の濃いジャム・セッションの記録である。ちなみに、このライヴ盤の音源は、Dinah Washington『Dinah Jams』と、同一日、同一メンバーでのライヴ・セッション。

この盤では、ブラウニーのトランペットが絶好調なのはもちろん、トランペットのファーガソン、クラーク、そして、アルト・サックスのゲラー、テナー・サックスのランド、皆、ブラウニーの素晴らしいパフォーマンスに引きずられて、素晴らしいパフォーマンスを繰り広げている。

そして、このジャム・セッションは、米国ウエストコースと・ジャズのメンバーがメインでのジャム・セッションで、東海岸と比べると、どこかアレンジが整っていて、アドリブ展開のブロウ爽快感抜群なのが特徴。そんなどこか爽快なジャム・セッションの中で、ブラウニーは自由闊達にトランペットを吹きまくる。

ダイナ・ワシントンがボーカルを取る2曲目のスローバラード「Darn That Dream」も絶品。このライヴ盤は、ウエストコースト・ジャズ全盛期の、優れたジャム・セッションの記録。しかし、よくライヴ録音をし、よくアルバム・リリースしましたね。エマーシー・レコードのお手柄です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年10月 5日 (土曜日)

好盤 ”Clifford Brown All Stars”

関東地方はやっと涼しくなってきた。最高気温23〜25度の日もあれば、30度に届く日もあるが、連日35度前後という酷暑の毎日からすると、グッと涼しくなった。これだけ、涼しくなってきたら、連日、耳を傾けるジャズも、耳当りの良い爽やかなもの一辺倒から、熱気溢れるハードバップものに変わってくる。

『Clifford Brown All Stars』(写真)。1954年8月11日、ロスでの録音。ちなみにパーソネルは、Clifford Brown (tp), Herb Geller, Joe Maini (as), Walter Benton (ts), Kenny Drew (p), Curtis Counce (b), Max Roach (ds)。1954年の録音だが、ブラウニー(クリフォード・ブラウンの愛称)の急死後、1956年にEmArcyレーベルからリリースされた未発表音源。

ブラウン~ローチ・クインテットの始動後、『Clifford Brown & Max Roach』『Brown and Roach Incorporated』の直後、『Best Coast Jazz』と同一日、同一メンバーでのジャム・セッション。この後の『Best Coast Jazz』のライヴ録音を含め、1954年8月のロスでの、怒涛の「名演の録音月間」である。
 

Clifford-brown-all-stars

 
当然、ブラウニーのトランペットのパフォーマンスは素晴らしいの一言に尽きる。何かに取り憑かれたかの様に、高速フレーズをいとも容易く吹きまくるブラウニーは迫力満点。これだけ高速なフレーズを連発しつつも、余裕ある雰囲気が伝わってくる。どれだけテクニックに優れ、どれだけ強力な肺活量なんだろう。とにかく「凄い」の一言に尽きる。疾走する「Caravan」、歌心溢れる「Autumn in New York」。この2曲だけでも、聴いていて惚れ惚れする。

米国ウエストコースト・ジャズにおける一流どころが集っているので、フロントを分担するアルト&テナー・サックスのパフォーマンスも、最高とは言えないまでも、そこそこ充実したブロウを披露している。厳しい評価をする向きもあるが、ブラウニーのパフォーマンスと比較すること自体、ちょっと乱暴な気がする。アルト&テナー、意外と健闘しています。

リズム・セクションは「充実&安定」の一言。ブラウニーのかっ飛ぶトランペットをしっかり支え、しっかりとリズム&ビートを供給していて立派。当時の米国ウエストコースト・ジャズにおけるハードバップなジャム・セッションの記録として、しっかりとした内容の好盤だと思います。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年9月18日 (水曜日)

ナットのエレ・ジャズ・ファンク

9月も半ばを過ぎたというのに「暑い」毎日である。熱中症を警戒の「引き篭もり」の日々がまだ継続中。確実に運動不足になりつつあるのでが、これはこれで仕方がない。涼しくなったら、せっせとウォーキングをしてリカバリーする予定。

「引き篭もり」の部屋の中で聴くジャズ。硬派な純ジャズをメインに聴き続けてきたら、流石に「飽きてきた」。ふっと思い出したのが「CTIジャズ」。純ジャズの耳安めに、8月中は「ボサノバ・ジャズ」を聴いていたが、9月に入って、流石にボサノバでもないよな、ということで止めた。そう、9月の純ジャズの耳休めは「CTIジャズ」である。

Nat Adderley『You, Baby』(写真)。1968年3, 4月、Van Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Nat Adderley (cornet), Jerome Richardson (ss, fl), Joe Zawinul (el-p), Ron Carter (b), Grady Tate (ds) が演奏のメインのクインテット。ナットのトランペットとリチャードソンのソプラノ&フルートがフロント2管。

そこに、以下の伴奏隊がつく。Harvey Estrin, Romeo Penque, Joe Soldo (fl), George Marge (fl, oboe), Al Brown, Selwart Clarke, Bernard Zaslav (viola), Charles McCracken, George Ricci, Alan Shulman (cello), Bill Fischer (arr, cond)。フルートが大活躍、オーボエの独特な音色、弦はチェロとヴィオラだけのユニークな編成。

聴いてズバリ、CTIサウンドによる「エレクトリック・ジャズ・ファンク」である。イージーリスニング志向でありながら、甘いサウンドでは無い。意外と硬派でしっかりと趣味の良いビートの効いたソフト&メロウなジャズ・ファンクである。
 

Nat-adderleyyou-baby

 
そんなビートの効いたソフト&メロウなジャズ・ファンクな雰囲気の中で、ナットの繊細で流麗な電気コルネットが、ファンクネスを漂わせながら、ソウルフルなフレーズを奏でていく。バリバリと吹くのでは無い、繊細に流麗にリリカルに電気コルネットを吹き上げる。このナットのコルネットのプレイが印象的。

エレピを担当するのは、ジョー・ザヴィヌル。ナットとは、兄のキャノンボールのバンドで一緒だったが「犬猿の
仲」だったらしい。しかし、この盤では、ザヴィヌルの流麗で耽美的でファンキーなエレピが実に良い雰囲気を醸し出している。このザヴィヌルのエレピの音色とフレーズが、この盤の「趣味の良いビートの効いたソフト&メロウなジャズ・ファンク」の音作りを決定付けている。

収録されたどの曲も「趣味の良いビートの効いたソフト&メロウなジャズ・ファンク」として良い雰囲気を醸し出しているが、2曲目のカントリーのヒット曲「By the Time I Get to Phoenix」や、3曲目のナット作「Electric Eel」や、4曲目のザヴィヌル作の「Early Chanson」辺りは聴き応え十分。

8曲目の「New Orleans」は、ソウルフルな演奏が印象的。9曲目「Hang On In」は8ビートの流麗なバラード、そして、ラストの「Halftime」は、マーチングを融合させたジャズ・ファンクで大団円。

ナットの吹くセルマー社の電化コルネットが実に効果的に響く、CTIの「エレクトリック・ジャズ・ファンク」の佳作の一枚。内容的に硬派なジャズ・ファンクなので、「スピーカーに対峙してジックリ聴き込む」にも十分に耐える好盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年9月 7日 (土曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・28

今日で「僕なりのジャズ超名盤研究」シリーズの三日連続の記事化。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』の超名盤を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、はや2年。やっと第1巻の終わりに差し掛かってきた。

Lee Morgan『The Sidewinder』(写真左)。1963年12月21日の録音。ブルーノートの4157番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Joe Henderson (ts), Barry Harris (p), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds)。リリース当時、ビルボード・チャートで最高25位を記録し、ブルーノート・レーベル空前のヒット盤となった。ジャズ史上においても、屈指のヒット盤である。

この盤も、僕がジャズ者初心者の頃、よく聴いた。なんせ、冒頭のタイトル曲「The Sidewinder」が、8ビート・ジャズで格好良いのなんのって。この曲が、8ビートを取り入れた「ジャズロック」の走りで、「実はブルースなんだが、8ビートに乗っているので、スピード感溢れる切れの良いブルースに仕上がった」という逸話を知ったのは、ジャズを聴き始めて10年くらい経ってから。

ただ、この盤、冒頭の「The Sidewinder」が、8ビートのジャズロックなブルースだからといって、全編、ジャズロックのオンパレードかと思いきや、それが違うのだからややこしい。この盤の評論にも「この盤は、いち早くロックのリズムを取り入れ、それに成功したジャズ盤」と堂々と書いているものもあるが、これって、2局目以降の演奏を聴かずに書いたとしか思えない。
 

Thesidewinder_1

 
ジャズ者初心者にとって、この盤を全編8ビートの「ジャズロック」が満載だと勘違いすると、この盤は辛い。2局目以降は、2曲目以降、4ビートの曲もあるし、6拍子の曲もあって、様々なリズム・アプローチを試みたハードバップ盤の様相で、この盤は「様々なリズム・アプローチを試みたファンキー・ジャズ盤」と言える。

加えて、トランペットのモーガン、テナーのジョーヘン、共にアドリブ展開は「モード」を基本として、吹きまくっている。それぞれ、モーガンなりのモード展開、ジョーヘンなりのモード展開で、疾走感溢れるアドリブ・フレーズを吹きまくっていて、それまでのコードがメインのハードバップとは、音やフレーズの響きが全く異なる。当時としては、新鮮な響きを宿した、新しいハードバップとして捉えられていたのではなかろうか。

よって、この盤、キャッチャーでポップな、冒頭のジャズロック曲「The Sidewinder」に惑わされがちだが、ジャズ者初心者の入門盤としては、ちょっと難易度が高いと思う。

逆に、ジャズを聴き始めて、ジャズに興味が湧いて、様々なスタイルのジャズを聴いてみたいと思った時に、様々なビートに乗った、聴きやすい「モード・ジャズ」を体験するには最適の盤だと思う。特に、8ビートに乗った「モード・ジャズ」は、聴いていて「モード」をとても理解し易いと僕は思う。

ジャズロックを始めとした「様々なリズム・アプローチを試みたファンキー・ジャズ盤」として、この盤は内容充実であり、そういう切り口でこの盤は、ジャズの「超名盤」だと言える。ゆめゆめ、ジャズロック曲「The Sidewinder」が入っているから「超名盤」だとは解釈しないで欲しい。それだけ、この盤、ジャズロック曲「The Sidewinder」以外が充実しているのだ。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年7月31日 (水曜日)

ピアノ + ペット + ビッグバンド

ここ2〜3年、エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)が元気である。自らのリーダー作から、共演作含めて、「毎月、何かしらのアルバムをリリースしている」印象の多作ぶりである。

1949年12月5日、ローマでの生まれなので、 現在、年齢 74歳。もうベテランの域を超えて、レジェンドの域に達した、伊ジャズの至宝、欧州ジャズ・ピアニストの代表格なのだが、とにかく「多作」。しかも、その内容はどれもが水準以上。というか、優れた内容のものばかりで、ピエラヌンツィの力量・ポテンシャルや恐るべし、である。

Enrico Pieranunzi『Chet Remembered』(写真左)。2022年9月5-8日、"Hörfunkstudio il, Hessischer Rundfunk, Frankfurt am Main" での録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Bert Joris (tp), Frankfurt Radio Big Band。

伊ジャズ・ピアノの第一人者、エンリコ・ピエラヌンツィと、欧州最高峰とも形容されるベルギーの名トランぺッター、バート・ヨリスとの共演盤。2021年作品の『アフターグロウ』が二人の初共演盤だったので、今回のアルバムはヨリスとの再会セッションになる。

ピエラヌンツィは1979年にチェット・ベイカーと出会い、多くのコンサートやレコーディング・セッション実績を残している。今回のアルバムは、そんなウェストコースト・ジャズを代表するトランぺッター&ヴォーカリストの偉人チェット・ベイカーに対するトリビュート・プログラムを収録している。
 

Enrico-pieranunzichet-remembered

 
選曲は、ピエラヌンツィがチェットと共演した時期に、ピエラヌンツィが作曲した作品をメインに、今回、チェットのために新たに作曲した曲を含め、バート・ヨリスによる優れたビッグ・バンド・アレンジを基に録音されている。

このフランクフルト放送ビッグ・バンドの演奏がかなりの充実度の高さで、スイング感抜群、パンチ力十分に、ユニゾン&ハーモニー、チェイス、ソロ、高揚感溢れる豪快なパフォーマンスを展開する。一糸乱れぬ、呼吸がバッチリ合ったカラフルなホーン・アンサンブル、躍動感溢れソリッドでタイトなリズム・セクション。超一級のビッグバンド・サウンドが素晴らしい。

そんなビッグバンド・サウンドをバックに、ピエラヌンツィは気持ち良さそうに、躍動感溢れる、リリカルでバップなピアノを弾きまくる。ヨリスもエモーショナルでバイタル、切れ味の良いトランペットを吹きまくる。やはりヨリスのアレンジが優れているのだろう。ビッグ・バンド・サウンドをバックにしているが、ピエラヌンツィのピアノ、ヨリスのトランペットが、全面に出て映えに映える。

ピエラヌンツィのピアノ、ヨリスのトランペットの「良好なパフォーマンス」と、躍動感溢れる「ビッグバンドの醍醐味」と、上手くバランスをとった、良好な「ピアノ+トランペット」と超強力なビッグバンドとの傑作である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年6月26日 (水曜日)

良い雰囲気 ’The Heavy Hitters”

今年も、雑誌ジャズ批評の「オーディオ・ディスク大賞」にノミネートされたアルバムを聴く季節がやってきた。「オーディオ・ディスク大賞」は毎年、雑誌ジャズ批評の3月号に掲載されるもので、昨年度のジャズの新盤の振り返りになり、落穂拾いにもなる、ジャズ盤コレクターの我々にとって、とっても有難い記事である。

『The Heavy Hitters』(写真左)。2022年5月8, 9日、Rudy Van Gelderスタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、Eric Alexander (ts), Vincent Herring (as), Jeremy Pelt (tp), Mike LeDonne (p), Peter Washington (b), Kenny Washington (ds), Guest: Rale Misic (g)。「The Heavy Hitters」は、この演奏ユニットの名前らしい。

アレキサンダーのテナー・サックス、ハーリングのアルト・サックス、ペルトのトランペットが3管フロントのセクステット編成(1曲だけギターがゲストで入る)。テナーのエリック・アレキサンダーは1990年代後半、我が国でもレコード会社がプッシュしていた時期があったが、あまり人気が出ず、いつの間にか忘れ去られた存在になっているが、米国東海岸では、コンスタントにリーダー作をリリースしている中堅ジャズマンである。
 

The-heavy-hitters

 
この盤でも、アレキサンダーのテナーは良い音を出している。そしてのフロントの相棒の一人、ヴィンセント・ハーリングのアルトもとても良い音を出している。フロント管で一番年下のペルトのトランペットもガッチリ健闘している。演奏内容、雰囲気は「ネオ・ハードバップ」。1960年代のハードバップを振り返ること無く、現代の感覚でハードバップ・フォーマットの演奏を展開している。

フロント3管の基本は「バップ」。ジャズの伝統にしっかり軸足を据えた「バップな吹き回し」をベースに、ブルージー&ジャジーなユニゾン&ハーモニー、流麗で聴かせるアレンジ、粋で鯔背なアドリブ・フレーズを基本とした「ネオ・ハードバップ」を展開している。現代のストレート・アヘッドな、モーダルな純ジャズ。ワシントン兄弟を擁したリズム・セクションも、明確に「現代のネオ・ハードバップ」らしい、リズム&ビートを叩き出していて立派だ。

フロント3管なので、どこか1960年代の3管フロント時代のアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズを彷彿とさせる週間もあって(それでも出てくる「音」は新しい感覚なんだが)思わずニンマリ。良いメンバーが集ったのであろう、真摯で誠実な「ネオ・ハードバップ」な演奏が実に爽やか。耳にもたれない、正統派「ネオ・ハードバップ」な演奏集。好盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年6月18日 (火曜日)

日野皓正の名作『Daydream』

そろそろ、日野皓正の「渡米後」のフュージョン・ジャズからコンテンポラリー・ジャズについて、このブログでコメントせんとなあ、と最近、思い始めた。和フュージョン・ジャズを語る上では、日野皓正のフュージョン・ジャズ盤は避けて通れない。

日野皓正『Daydream』(写真左)。1980年の作品。ちなみにパーソネルは、日野皓正 (cor, flh), Dave Liebman (ts), John Tropea (g), Bob James (key), Anthony Jackson (b), Steve Gadd (ds), Nana Vasconcelos (perc), 菊地雅章 (key), Leon Pendarvis (key, arr) and more。日野皓正の渡米後、フュージョン・ジャズ盤の第二弾。

日本制作のNYフュージョンの名作とされる。が、和フュージョンとは、内容と雰囲気が異なる。この『Daydream』、前作の『City Connection』同様、どこから聴いても、米国東海岸フュージョン・ジャズの内容と雰囲気。「和」な雰囲気は無い。パーソネルも、米国東海岸フュージョンの人気ジャズマンが大集合。当然、出てくるリズム&ビートは「米国東海岸フュージョン」。
 

Daydream

 
演奏される曲は、どれもが前作の『City Connection』と同じ雰囲気の演奏とアレンジ。この『Daydream』は、前作『City Connection』と併せて、一気聴きした方が違和感がない。というか、この『Daydream』で、日野の「アーバンで洗練された」米国東海岸フュージョンは成熟している。

冒頭「Still Be Bop」はリズム隊の叩き出す、切れ味の良いバップなリズム&ビートが印象的。そして、続く「Late Summer」は、ミディアム・スローな、絶品のバラード曲。これ、雰囲気抜群。ボブ・ジェームスの印象的なアコピが実に良い。そして、サントリーのウィスキーのCM曲だった軽快なカリプソ・ナンバーは、5曲目「Antigua Boy(アンティーガ・ボーイ)」。

他の曲も出来は良く、米国東海岸フュージョン・ジャズの名作の一枚としても良いかと思う。完全に米国東海岸フュージョンに同化した日野皓正。次なるアルバムはどうするんだろう、と、当時、ちょっぴり不安になったことを思い出した。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

A&Mレーベル AOR Bethlehemレーベル Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteの100枚 Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル ECMのアルバム45選 ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル Jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 こんなアルバムあったんや ながら聴きのジャズも良い アイク・ケベック アキコ・グレース アジムス アストラッド・ジルベルト アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラウンド・マイルス アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アントニオ・サンチェス アンドリュー・ヒル アンドレ・プレヴィン アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イリアーヌ・イリアス インパルス!レコード ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウォルフガング・ムースピール ウディ・ショウ ウラ名盤 エグベルト・ジスモンチ エスビョルン・スヴェンソン エスペランサ・スポルディング エディ・ハリス エメット・コーエン エリック・アレキサンダー エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルヴィン・ジョーンズ エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリスマスにピッタリの盤 クリス・ポッター クリフォード・ブラウン クルセイダーズ クレア・フィッシャー クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニーG ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン コンテンポラリーな純ジャズ ゴンサロ・ルバルカバ ゴーゴー・ペンギン サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド・ジョーンズ サム・ヤヘル サム・リヴァース サンタナ ザ・バンド ジャケ買い「海外女性編」 シェリー・マン シダー・ウォルトン シャイ・マエストロ シャカタク ジェイ & カイ ジェイ・ジェイ・ジョンソン ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジェリー・マリガン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・バリトン・サックス ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャズ喫茶で流したい ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・ラージ ジョエル・ロス ジョシュア・レッドマン ジョナサン・ブレイク ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・コルトレーン on Atlantic ジョン・コルトレーン on Prestige ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン ジョー・ロヴァーノ スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン ステイシー・ケント ステップス・アヘッド スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テッド・カーソン テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トランペットの隠れ名盤 トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ナット・アダレイ ニルス・ラン・ドーキー ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハービー・マン ハーブ・アルパート ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・シャンク バド・パウエル バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグバンド・ジャズは楽し ビッグ・ジョン・パットン ビリー・コブハム ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビル・ブルーフォード ビートルズ ビートルズのカヴァー集 ピアノ・トリオの代表的名盤 ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・ウッズ フェンダー・ローズを愛でる フォープレイ フュージョン・ジャズの優秀盤 フランク・ウエス フランク・シナトラ フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・リトル ブライアン・ブレイド ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザーズ プログレッシブ・ロックの名盤 ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボビー・ハンフリー ボブ・ジェームス ボブ・ブルックマイヤー ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイケル・ブレッカー マイルス( ボックス盤) マイルス(その他) マイルス(アコ)改訂版 マイルス(アコ)旧版 マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マハヴィシュヌ・オーケストラ マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・5 マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モンティ・アレキサンダー モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラムゼイ・ルイス ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラルフ・タウナー ランディ・ブレッカー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レイ・ブラウン レジェンドなロック盤 レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロニー・リストン・スミス ロバート・グラスパー ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー ヴィンセント・ハーリング 上原ひろみ 僕なりの超名盤研究 北欧ジャズ 古澤良治郎 吉田拓郎 向井滋春 和ジャズの優れもの 和フュージョンの優秀盤 四人囃子 国府弘子 増尾好秋 夜の静寂にクールなジャズ 大村憲司 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 松岡直也 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 阿川泰子 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 音楽喫茶『松和』の昼下がり 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー