ECMレーベルのエンリコ・ラヴァ
総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーが率いるECMレーベル。ドイツのミュンヘンの本社を構え、欧州ジャズの老舗レーベルとはいえ、どちらかといえば、北欧ジャズ中心の耽美的でリリカルな即興演奏を主体としたコンテンポラリー・ジャズがメインと誤解されることがしばしば。
しかしながら、欧州各国の純ジャズもしっかり網羅していて、時に米国ジャズマンも招聘して、多国籍な編成でのECMジャズも制作しているから、目が離せない。欧州ジャズの現在位置を確認するには、ECMレーベルのその時その時のアルバムを聴くのが、一番、手っ取り早い。
『Enrico Rava Quartet』(写真左)。1978年3月、西ドイツの「Tonstudio」での録音。ECMの1122番。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (tp), Roswell Rudd (tb), Jean-François Jenny-Clark (b), Aldo Romano (ds)。イタリアン・ジャズの至宝トランペッター、エンリコ・ラヴァのECMレーベルでのリーダー作である。
リーダーのエンリコ・ラヴァは伊出身のトランペッター。ロズウェル・ラッドロズウェル・ラッドは米国出身のフリー・ジャズ界の重鎮ロンボニスト。ジャン=フランソワ・ジェニー=クラークは仏出身のベーシスト。アルド・ロマーノは伊出身のドラマー。伊米仏の大陸を跨いだ多国籍なピアノレスの変則カルテット。
いかにもECMらしい取り合わせなんだが、総帥プロデューサーのアイヒャーの発想は理解し難い。しかし、出てくる音は、しっかりECMの響きを宿しているのだから感心する。出てくる音は、イタリアン・ジャズの哀愁と叙情的なメロディ、そしてフリー・ジャズの先鋭的なアプローチが絶妙に融合した音世界である。
ピアノレスのフロント2管(トランペット+トロンボーン)のカルテット演奏で、伝統的な純ジャズの硬派な雰囲気に、イタリアン・ジャズ独特の哀愁感漂う叙情的でリリカルなフレーズの展開、時々、アヴァンギャルドでスピリチュアルなフリー・ジャズへとブレイクダウンするスリリングな演奏が素晴らしい。
エンリコ・ラヴァの哀愁を帯びた抒情的なトランペットと、ロズウェル・ラッドの豪快でアーシー(泥臭い)なトロンボーンのフレーズが、互いに絡み合いながら見事なコントラストを描いていて、自由度の高いアンサンブルが繰り広げられている。これが、とても「欧州ジャズ」らしい響きと展開。イタリア・ジャズと米国ジャズの邂逅なんだが、しっかりと、欧州ジャズしていて、しっかりと、ECMジャズしている。
これぞ、アイヒャー・マジックなんだろう。このアルバムには、ECMレーベルの音と響きをしっかり反映した、1970年代後半のイタリアン・ジャズの最先端の音が展開されている。根底にはニューオーリンズ・ジャズのような伝統的なお祭り騒ぎ(祝祭感)や、イタリア独特の美しいメロディが漂っていて、実に興味深い内容に仕上がっている。意外とこの盤、イタリアン・ジャズの「隠れ名盤」である。
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