キューンの熱く激しいECM盤
ECM Recordsのカタログ番号1101〜1199(1100番台)。キース・ジャレット、パット・メセニー、チック・コリアといったスターたちの歴史的名盤を生み出し、レーベルの代名詞である「静寂の次に美しい音楽」という世界観を完璧に決定づけたシリーズであるが、わが国では、そんなスター達のアルバムだけがリリースされ、他のアルバムはなかなかリリースされなかった。よって意外と当時は知らなかった隠れ好盤がずらずら。
Steve Kuhn『Non-Fiction』(写真左)。1978年4月、旧西ドイツの「Tonstudio」での録音。ECMの1124番。ちなみにパーソネルは、Steve Kuhn (p, perc), Steve Slagle (ss, as, fl, percu), Harvie Swartz (b), Bob Moses (ds)。米国出身のピアニスト、スティーヴ・キューンのECMレーベルでの4枚目のリーダー作。スティーブ・スレイグルのサックスがフロント1管のカルテット編成。
美しいメロディ、変拍子を交えた緊迫感のあるポリリズム、そしてECMらしい透明感と空間の広がりが融合した音世界が特徴。ECMという欧州ジャズの老舗レーベルでの制作とはいいながら、米国ジャズの伝統とアヴァンギャルドな実験精神が飛び交う、しかしながら、音の響きは欧州ジャズという、ECMレーベルならではの、米国と欧州のジャズが融合した、独特の音世界が広がっている。
リーダーのキューンのピアノは「尖っている」。叙情的なメロディを紡ぎながらも、予測不能でエッジの効いたコード展開を行うスタイルは、ECMジャズの中でも、メンストリームな純ジャズ路線を踏襲する音。ニュー・ジャズ系の耽美的でリリカルな「広がる様な透明感」とは、また違った、硬質でクリスタルな「切れ味の良い透明感」がこのアルバムに広がっている。
この盤では「即興演奏の爆発力とドライブ感」を徹底追求している。スレイグルのフルートとスワルツのベースが美しく絡み合う「The Fruit Fly」や、ファンキーなロック調のビートから4ビートのジャズへとスリリングに展開する11分超の大作「Alias Dash Grapey」など、バラエティに富んだアンサンブルやインタープレイを聴くことが出来る。
本作の直後、キューンは歌手のシーラ・ジョーダンを迎えたバンド活動へとシフトしたため、この「インストゥルメンタル・カルテットによる純粋な熱量」を捉えた録音としては、この盤のパフォーマンスがピークだと思う。シンプルで判り易いが、かなり高度で複雑なメインストリーム系純ジャズを展開している。キューンのピアノを語る上で、この盤は外せないだろう。
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