2025年11月 6日 (木曜日)

ジャス喫茶で流したい・305

僕が本格的にジャズを聴き始めたのが1978年。そして、その翌年、このアルバムを聴いた時、その時点での、その時代での日本のジャズは、世界のジャズに比肩するレベルにあることを初めて確信した。我が国の音楽は、西洋、欧州や米国の後塵を拝してきたイメージがあったが、ジャズは違う。そう感じさせてくれたアルバムがこれだった。

富樫雅彦 & 鈴木勲『陽光』(写真左)。1979年2月1-3日、東京での録音。ちなみにパーソネルは、富樫雅彦 (ds, perc, synth, solina), 鈴木勲( b, piccolo-b, cello, p, solina)。我が国の純ジャズ系ドラマーの鬼才レジェンド、富樫雅彦と、我が国のジャズ・ベーシストのレジェンド、鈴木勲とのデュオ盤。

富樫雅彦は本職はドラム、鈴木勲は本職はベース。ドラムとベースのデュオか。ちょっと地味な感じがして、聴いていて飽きなければ良いが、と思いつつ、レコードの針を落としたら、ほど無くピアノの音が滑り込んできたので、あれ、ドラムとベースのデュオじゃなかったか、とパーソネルを見ると、富樫がシンセサイザーを、鈴木がピアノとシンセサイザーを弾いていて、の多重録音。
 

Photo_20251106222001   

 
演奏の基本は、フリー〜スピリチュアル・ジャズ。フリーの部分は、米国東海岸の様な、激情に身を預けて、心の赴くまま、無勝手流に弾き散らすのでは無く、現代音楽のエッセンスを融合した、広がりと間を活かした即興演奏をベースとした、独特のフリー・ジャズ。演奏全体の透明度と間の静謐度の濃い演奏は、欧州のECMレコードに通じる、レベルの高いものだった。

理路整然としたフリーな演奏、その透明度の高さ、間の静謐度の高さは、和ジャズ独特の「侘び寂び」を基本とした、スピリチュアル・ジャズを表現している。リズム&ビートは即興をベースとしていて、この辺りは、ECMレコードの「ニュー・ジャズ」を展開を踏襲している様に感じるが、音の暖かさとカラフルさは、和ジャズ独特の「ニュー・ジャズ」である。

冒頭の「A Day Of The Sun」。シンセとピアノのイントロからサンバ・ビートに展開するスピリチュアル・ナンバー。このタイトル曲に代表される様に、この盤には、我が国独特のフリー〜スピリチュアル・ジャズが詰まっている。1979年度・スイング・ジャーナル誌ジャズ・ディスク大賞受賞作品。この大賞受賞は納得。世界のジャズに比肩する、アーティスティックな、ニュー・ジャズ志向のフリー〜スピリチュアル・ジャズでした。和ジャズの名盤の1枚でしょう。
 
 

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2025年10月25日 (土曜日)

BNのスピリチュアル盤の秀作

4200番台も終盤にきて、いよいよ、売上最優先、大衆に訴求するイージーリスニング・ジャズに手を染め出したブルーノート。

大手のリバティーに買収され、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンも引退し、いよいよ、ジャズの歴史の、ジャズのトレンドの番人の様な存在だったブルーノートも終わりかな、と思っていたら、こんな硬派な純ジャズ志向のアルバムを出したりするから、隅に置けない。

『Eddie Gale's Ghetto Music』(写真左)。ブルーノートの4294番。1968年9月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Gale (tp, kalimba, steel drum, bird whistle), Russell Lyle (ts, fl), Jo Ann Gale Stevens (g, vo), James "Tokio" Reid, Judah Samuel (b), Richard Hackett, Thomas Holman (ds)。ここに、11声の合唱団が加わる。

米国のトランペット奏者、エディ・ゲイルのデビュー作になる。エディ・ゲイルは、セシル・テイラーとの共演、サン・ラ・オーケストラでのフリージャズでの活動で知られたトランペット奏者。ゲイルの基本的な演奏スタイルは、フリー&スピリチュアル。

このアルバムに詰まっているジャズは、1960年代の新しいジャズとゴスペル、ソウル、ブルースをシームレスに融合、フリー・ジャズ、R&B、ワールド・ミュージック的要素が混在する驚異のスピリチュアル・ジャズ。しかし、非常に聴きやすい作品で、旋律、メロディー、ハーモニーはしっかりと保たれている。
 

Eddie-gales-ghetto-music

 
フロント管の相方にラッセル・ライルのサックス&フルートを従えた2管フロント。加えて、ダブル・ベースにダブル・ドラム、そして11声のバックコーラスを配した、迫力のスピリチュアル・ジャズである。

無勝手流の、自由気ままに吹きまくるフリーな吹奏は無く、洗練されたポリリズムと分厚いコーラスをバックに、現代音楽的なフリーな響きとスピリチュアルな響きが全体を支配する。

「Fulton Street」では、アフリカの民族音楽とラテンジャズの美しい旋律が見え隠れ、「A Walk with Thee」は行進曲のテンポで書かれたスピリチュアル・ジャズ。リズム&ビートは互いに対位法で叩きまくり、フロントラインは東洋的なハーモニー感覚を通して伸びやかなメロディーラインを奏でる。

最後の「The Coming of Gwilu」は、ジャマイカンなカリン場の音色、アーケストラ風の高揚するボーカル、ポリリズミックなリズム&ビートで、新しいスピリチュアル・ジャズの響きを表現している。

米国の都市部でアフリカン・アメリカンの貧困層が形成する「ゲットー(Ghetto)社会」をテーマとしている「政治的意図」を明確にしたアルバムだが、小難しいところは微塵も無い。

そんな「Ghetto Music」をコンセプトにブラック・パワーを表現している異色盤である。しかし、ブルーノートのカタログの中でも最も知られていないアルバムの一つでもある。ただし、内容は良い。1960年代後半のスピリチュアル・ジャズの秀作の一枚だろう。
 
 

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2025年10月20日 (月曜日)

BNの「オーネットの不思議盤」

オーネットは、コンテンポラリー・レコードでの『Something Else!!!!』から始まり、アトランティック・レコードに移籍して『The Shape of Jazz to Come』をリリース、その後、5枚のリーダー作をリリースした後、突然、1966年に、コロンビア・レコードから『Chappaqua Suite』を突然リリース。そして、1966年から1971年にかけて、3枚のリーダー作をブルーノートからリリースしている。そんな3枚の中の一枚がこの盤。

Ornette Coleman『New York Is Now!』(写真左)。1968年4月29日、5月7日の録音。ブルーノートの4287番。ちなみにパーソネルは、Ornette Coleman (as, vln, tp), Mel Fuhrman (vo), Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds), Dewey Redman (ts)。

オーネットのブルーノートからの2枚目のリーダー作になるが、オーネットが、元コルトレーン・カルテットのリズム隊、ギャリソンのベース、エルヴィンのドラムと組んだ、「不思議で面白い内容」のモード&フリー・ジャズ盤。

プロデューサーが、設立者&総帥プロデューサーであったアルフレッド・ライオンでは無く、後を引き着いたフランシス・ウルフなのが象徴的。オーネットがどうやって、この音のコンセプトを提案したのか、若しくは了解したのかは判らないが、オーネットのリーダー作の中では、異質な、ちょっと不思議な盤である。

「あれをやっちゃ駄目、これをやっちゃ駄目は、ジャズの自由度を狭める。なんでもかんでもやってみよう」というのが、真のジャズである」というのがオーネットの考え方なんだろうが、前作では、当時10歳の息子デナード・コールマンをドラマーに採用するという「暴挙」でちょっとスベったので、このアルバムでは、リズム隊を完全強化している。なんと、元コルトレーン・カルテットのリズム隊を持って来て、そこで「オーネットの考えるフリー・ジャズ」を展開する、という寸法。
 

Ornette-colemannew-york-is-now

 
加えて、コルトレーン・フォロワーの第一人者の1人、デューイ・レッドマンのテナーを持って来て、老舗ジャズ・レーベルのブルーノートで、「オーネットの考えるフリー・ジャズ」をやろうとしたら、どこか、モーダルな響きのするフリー・ジャズというか、限りなくフリーに近いモード・ジャズ風の演奏に落ち着いてしまった、そんな偶然性を感じる、このアルバムの内容である。

このアルバムには、1950年代の「オーネットに対する新鮮な驚き」は無い。音は明らかにオーネットの音。冒頭の「The Garden of Souls」の最初の自由度の高いフレーズを聴いただけでオーネットと判る音世界なんだが、フリーな即興演奏を求めているにも関わらず、どこか理路整然とした、完全即興では無い、限りなく自由度の高い、オーネット流のモーダルなジャズが展開されている様なイメージ。

どう聴いても、オーネットの考えるフリー・ジャズは伝わってこなくて、レッドマン参加の影響も大きかったのか、この盤では「オーネットの考えるコルトレーンのフリー・ジャズ」を追求している様に感じる。逆に、そう解釈した方が判り易い、上質かつ真摯な「オーネットの考えるコルトレーンのフリー・ジャズ」を、オーネットは、やっているように聴こえる。

フリー・ジャズ系のサックス奏者としての成熟、円熟をみたオーネットのリーダー作。モード時々フリーなジャズで、フリーな部分はオーネット流のフリー・ジャズの響きはするが、演奏全体の雰囲気は限りなく自由度の高い、オーネット流モード・ジャズ風。そういう意味で、このオーネットのブルーノート第二弾は「不思議で面白い内容」のモード&フリー・ジャズ盤に仕上がっている。

つまりは、コルトレーン・フォロワーのレッドマン、ギャリソン、エルヴィンは、オーネットの考えるフリー・ジャズに染まらなかった、逆に、オーネットが、コルトレーンにはこういうフリー・ジャズをやって欲しかったという、レッドマン、ギャリソン、エルヴィンらの想いにオーネットが寄り添った、「オーネットの考えるコルトレーンのフリー・ジャズ」、そんな雰囲気がするのがこのアルバム。解釈が悩ましい異色盤です。
 
 

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2025年10月12日 (日曜日)

フリー・ジャズな”ソウル・ジャズ”

とにかく、聴き始めてビックリ、椅子から転げ落ちる。オルガン・ジャズに代表されるノリの良いソウル・ジャズを想起していたら、絶対に怪我をします(笑)。確かに、マクリーンは正統派ハードバップから、モードに染まり、フリーにチャレンジする「挑戦し変化するジャズマン」でしたが、ここで、いきなり、フリー・ジャズを持ってくるとは。恐れ入りました。脱帽です。

Jackie McLean『’Bout Soul』(写真左)。1967年9月8日の録音。ブルーノートの4284番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Woody Shaw (tp), Grachan Moncur III (tb), Lamont Johnson (p), Scott Holt (b), Rashied Ali (ds), Barbara Simmons (recitation)。マクリーンのアルト・サックス、ショウのトランペット、モンカー3世のトロンボーンの3管フロントのセクステット編成。そして、なんと、そこに女性の朗読が付く。

タイトルが直訳すると「ソウルについて」なので、しかも、ジャケットの妙齢の黒人女性ときてるので、このアルバム、聴く前は、マクリーン流の直球勝負の硬派なソウル・ジャズかと思いきや、冒頭、ゴスペル的雰囲気で、女性の朗読「ソウルソウルソウル・・・」が出てきてビックリ。もしかして、ゴスペルチックな「ラップ」メインのジャズかと身構えたら、高速パルシヴ・ドラミングに乗って、ドバ〜っと、フリー・ジャズへなだれ込んでいく。

アルバムの内容としては、1960年代後半のジャズのスタイル(ソウル、アヴァンギャルド、フリー、モードなど)が混在した実験的な作品。
 

Jackie-mcleanbout-soul

 
特に、アルバムの冒頭には、バーバラ・シモンズによる「ソウル」の意味を語る詩の朗読が収録されているところが象徴的。つまり、ソウル・ジャズといえば「魂の叫び」、よって、メインは「フリー&アヴァンギャルド」ジャズで、スピリチュアルに攻めるのが筋だろう、という感じなんだろうな、と。

フリー&アヴァンギャルドがメインとくれば、フロント楽器の力量が問われる訳だが、フロントは、マクリーンのアルト・サックス、ショウのトランペット、モンカー3世のトロンボーン、と、フリー&アヴァンギャルドをやらせて一流、ハードバップ&モードをやらせても一流の申し分無いフロント3管なので、モードから入って、いきなりフリー&アヴァンギャルドに流れ込む展開も、安心して、彼らの音に身を任せることができる。リズム隊もラシッド・アリのパルシヴなドラミングが「肝」で安定感がある。

ソウル・ジャズみたいなタイトルだが、実は中身はフリー&アヴァンギャルドがメイン、という問題作で、ジャズ者の方々の間でも好き嫌いが分かれる思う。でも、不思議と聴き易いフリー&アヴァンギャルドで、これはフレーズのところどころにモーダルなフレーズやソウルフルなフレーズが見え隠れするからだろう。この辺りが、マクリーンのフリー&アヴァンギャルド・ジャズの面白いところ。

そう言えば、マクリーンのノリの良い、大衆に受けするソウル・ジャズなんて聴いたことがなかったなあ。ということで、この時代での、フリー&アヴァンギャルドがメインのソウル・ジャズ、というのはマクリーンの「必然」だったのだろう。
 
 

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2025年9月14日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・296

1966年、アルフレッド・ライオンはブルーノートを米リバティー社に売却し、経営から退く。しかし、プロデュースは継続。大手リバティーの傘下に入り、純ジャズ度、モダン・ジャズ度を落とすこと無く、大衆受けする「売れる」ジャズ盤をリリースする傍ら、大衆受けしない、アーティスティック志向の硬派なモード・ジャズやフリー・ジャズの優れた内容のアルバムもリリースし続けた。このアルバムを聴けば、その一端、ブルーノートの矜持が良く判る。

Larry Young『Contrasts』(写真左)。1967年9月18日の録音。ブルーノートの4266番。ちなみにパーソネルは、Larry Young (org), Hank White (flh), Herbert Morgan, Tyrone Washington (ts), Eddie Wright (g), Eddie Gladden (ds), Stacey Edwards (congas), Althea Young (vo)。

リーダーのラリー・ヤングのオルガン、フロント管が、ホワイトのフリューゲルホーン、モーガン、ワシントンのテナー・サックス、そして、グラッデンのドラム、エドワードのコンガのセクステット編成。ボーカルが1曲だけ入る。これまでのリーダー作には無かった、大編成コンボが本作の特徴。
 

Larry-youngcontrasts

 
特に、コンガが入った3曲が特にユニーク。演奏全体がリズミックなビートで覆われる「Majestic Soul」、モード&フリー・ジャズ志向のボサノバ・グルーヴが印象的な「Evening」、フリーな演奏の中にスピリチュアルな響きのする「Means Happiness」。これは、後世に継がれる、先進的なオルガンがメインのモード&フリー・ジャズ。この真髄は、1990年代以降、純ジャズ復古以降、次の世代のジャズ・オルガニストに弾き継がれていく。

コンガ抜きの3曲も、ヤング・オリジナルのオルガン・モード&フリー・ジャズで、聴き応え十分、様々な音の展開に聴いていてワクワクする。オルガンとドラムの攻撃的なデュオ「Major Affair」、ヤングの妻アルテアのボーカルが素敵なバラード曲「Wild Is the Wind」、そして、軽快なバンド・アンサンブルが楽しいTender Feelings」。ラリー・ヤングのモード&フリー・ジャズの懐の深さと応用力の高さが窺い知れる、グッドな演奏ばかり。

オルガンがメインの、硬派で先進的な、モード・ジャズ、そして、フリー・ジャズ。大編成コンボでのモード&フリー・ジャズは、当時のコルトレーン・ジャズを彷彿とさせるが、コルトレーン・ジャズとは一線を画する、ラリー・ヤングのオリジナルのモード&フリー・ジャズ。オルガン・ジャズの革命児、ラリー・ヤングの面目躍如である。
 
 

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2025年9月10日 (水曜日)

アヴァンギャルドなマクリーン

ジャキー・マクリーンとオーネット・コールマンの共演。ジャキー・マクリーンのメイン楽器は、アルト・サックス。オーネットのメイン楽器と被るので、この盤では、オーネットはトランペットを吹いている。テクニックはそれほどでもないけれど、オーネット流のアドリブ・フレーズを吹く分には、問題が無いのだろう。

Jackie McLean『New And Old Gospel』(写真左)。1967年3月24日の録音。ブルノートの4262番。ちなみにパーソネルは、Ornette Coleman (tp); Jackie McLean (as), Lamont Johnson (p), Scott Holt (b), Billy Higgins (ds)。オーネット・コールマンが客演してトランペットを吹く、ジャキー・マクリーン率いるクインテット編成。

冒頭の長尺、21分を越える大作メドレーは「Lifeline Medley: Offspring / Midway / Vernzone / The Inevitable End」。基本はオーネット流のフリー・ジャズに聞こえるが、マクリーンのアルト・サックスのフレーズにしろ、ラモント・ジョンソンのピアノにしろ、必要最低限の取り決めは守っているが、その展開は、マクリーンのアルト・サックスのフレーズはマクリーン流だし、ラモントのピアノも同様。フリーでアヴァンギャルドな展開は聴きものである。
 

Jackie-mcleannew-and-old-gospel

 
2曲目の「Old Gospel」は、タイトル通り、ゴスペル調のご機嫌なソウル・ジャズ。テーマ部はご機嫌なゴスペル調な演奏だが、アドリブに入ると、モードな吹き回しのアドリブ展開になり、オーネット流吹き回しのアドリブ展開になる。マクリーンのアルト・サックスは絶好調、血管ぶち切れ、アヴァンギャルドでフリーなアドリブを吹きまくるが、オーネットは自分の担当楽器でないトランペットを吹いている、とは聞こえが良いが、テクニック的にはあまり上手でないコールマンのトラペットである。

3曲目はまだコールマン流のフリー・ジャズに舞い戻るが、必要最低限の取り決めは守っているが、その展開は、マクリーンのアルト・サックスのフレーズはマクリーン流だし、ラモントのピアノも同様。音の作りは、あくまで、この盤を聴いていて、ちょっと耳を奪われるのが、ラモント・ジョンソンのピアノ。どこかマッコイ・タイナーの様ではあるが、重心的には軽めのビートで、タイナーのタッチより切れ味良く、躍動感がある。

この盤の内容は面白い。コールマン流フリー・ジャズとゴスペル風味のソウル・ジャズの2種類の、決して相容れることの無い、それぞれ異なるジャズを気持ち良くやる、という内容は、ユニークというか、何というか(笑)。そんな異質な編集の盤の中、マクリーンのアルト・サックスが、「マクリーンの考えるフリー&アヴァンギャルド」といった風情の「絶好調、血管ぶち切れ」の圧倒的なフレーズを吹きまくって、この盤に統一感を与えているのは立派である。
 
 

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2025年9月 9日 (火曜日)

サム・リヴァースのお蔵入り盤

1966年、ブルーノートはリバティ・レコードに買収されたが、大手レコード会社のリバティ・レコードの意向で、大衆受けする、聴き手のニーズに合わせたポップなジャズ盤をリリースする一方、ブルーノート設立当初からの「これは、と感じた、その時その時のジャズのトレンド、ジャズのスタイルを分け隔て無く記録に残す。そして、ジャズマンの演奏志向を良く理解し、それを最優先に録音する」姿勢は変えなかった。

Sam Rivers『Dimensions & Extensions』(写真左)。1967年3月17日の録音。ブルーノートの4261番。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts, ss, fl), Donald Byrd (tp), Julian Priester (tb), James Spaulding (as, fl), Cecil McBee (b), Steve Ellington (ds)。サム・リバースのサックス&フルート、ドナルド・バードのトランペット、ジュリアン・プリースターのトロンボーン、ジェームス・スポルディングのアルト・サックス&フルートの4管フロントのピアノレスのセクステット編成。

ブルーノートお得意の内容は優れているのに、なぜか録音当時は「お蔵入り」盤である。録音は1967年だが、リリースは1986年。オリジナルのカタログ番号と予定されていたカバーアートワークで発売されている。もともと1967年に発売が予定されていたが、1975年に発売が延期。アンドリュー・ヒルの指揮下で録音されたトラックと組み合わせた2枚組LPセット『インボリューション』(1976年、BN-LA 453-H2)に収録されているが、単独でのリリースは1986年。
 

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内容的には、サム・リヴァースの得意とする「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズがメイン。それも、理路整然とした、カッチリまとまった「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズで、アブストラクトなところや、現代音楽的な無調な展開は全く無い。勿論、フレーズ的にもテクニック的にも「破綻」が無い。「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズの成熟形を聴く思いがする。それほどまでに、理路整然とした、カッチリまとまった内容に惚れ惚れする。

パーソネルを見渡すと、皆、「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズを得意とするメンバーだが、ハードバップ初期から第一線で活躍したベテランのドナルド・バードがトランペットで頑張っているのが、意外と言えば意外。それでも、聴いていると、キッチリとリヴァースの考える「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズに適応しているのだから立派である。

「コールマン流」から明らかに外れた音色と気質が、サム・リヴァースの「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズの個性。この録音がなぜ約10年もの間、お蔵入りになったのか、理解に苦しむのだが、大手リバティ・レコード傘下のブルーノートでは、売上に貢献しそうにない「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズは敬遠されたのかも知れない。しかし、内容は一級品。1960年代の「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズの代表盤として、いつまでも聴き継がれていくべき逸品である。
 
 

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2025年8月11日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・293

ブルーノート・レーベルは懐の深い、硬派なレーベルである。必要最低限しか商業主義に走らない、これは、と感じた、その時その時のジャズのトレンド、ジャズのスタイルを分け隔て無く記録に残す。そして、ジャズマンの演奏志向を良く理解し、それを最優先に録音する。だからこそ、ブルーノートは今でも尊敬され、一目置かれるレーベルとして君臨しているのだ。

Rivers『A New Conception』(写真左)。1966年10月11日の録音。ブルーノートの4249番。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts, ss, fl), Hal Galper (p), Herbie Lewis (b), Steve Ellington (ds)。サム・リヴァースの3枚目のリーダー作。サム・リヴァースによる7曲のジャズ・スタンダード曲の解釈が収録されている異色盤。

新主流派、そして、フリー&スピリチュアル・ジャズの雄、サム・リヴァースが、スタンダード曲に挑んだ、ブルーノートの異色盤。しかし、ただの「スタンダード曲」への挑戦では無い。当時、サム・リヴァースが持っている、サックス&フルート吹奏のテクニックの全てを総動員して、スタンダード曲を解釈している。つまり「リヴァースが考えるスタンダード演奏」な内容なのだ。

冒頭の「When I Fall in Love」から、ラストの「"Secret Love」までを聴けば、それが良く判る。初めのテーマを吹奏するところは、ハードバップ、若しくは、イージーリスニング・ジャズ志向の、流麗でテーマに忠実な吹奏。これが、確かなテクニックで吹かれるので、テーマの魅力がダイレクトに伝わる。リヴァースの吹奏の歌心がビンビンに伝わる。
 

Riversa-new-conception

 
そして、アドリブ部に入ると、モードに展開する。リヴァース十八番の、成熟したモーダルな展開。自由度は高いが、吹き回しが流麗なので、とても耳に優しい。そして、時々、フリーにアブストラクトに展開する。バラード曲では、スピリチュアルな響きがとても魅力的、フリー&スピリチュアル・ジャズの雄、サム・リヴァースの面目躍如。

ハードバップで入って、モードに展開し、時々、フリーにアブストラクトに効果的に展開し、スローな曲調では、スピリチュアルな雰囲気全開。そして、どのスタイルで吹いても、底に流れる「歌心」。これが「リヴァースが考えるスタンダード演奏」である。

今の耳で聴いても、新しい響き。今の耳で聴いても、全く違和感は無い。今の、現代のジャズのスタンダード解釈は、この1966年のサム・リヴァースのリヴァースが考えるスタンダード演奏」と変わりが無い。リヴァースは自分の演奏志向と聴き手とのバランスを、しっかりと考えることの出来るジャズマンだったのだろう。

このリーダー作では、聴き手の立場に立って、スタンダード曲を解釈するリヴァースが透けて見える。そして、このリヴァースの企画にゴーサインを出した、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの慧眼。ブルーノート4249番、ブルーノート4200番台の名盤の1枚である。
 
 

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2025年8月 8日 (金曜日)

オーネットの考える ”フリー”

オーネットのフリー・ジャズについては、僕は「それまでのジャズで、やってはいけないこと」を演奏に反映する、そして「ジャズはそもそも即興演奏を旨とする音楽だから、どんな演奏方式でも、どんな奏法でも、どんなリズム&ビートでもいいじゃないか」という演奏志向を、「フリー」というキーワードで追求している、と解釈しているんだが、このアルバムでは「どんなリズム&ビートでもいいじゃないか」をメインに追求している様に聴こえる。

Ornette Coleman『The Empty Foxhole』(写真左)。1966年9月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Ornette Coleman (as :tracks 1, 5, 6, tp :tracks 2, 4), vln :tracks 3), Charlie Haden (b), Denardo Coleman (ds)。フリー・ジャズの奇才、オーネット・コールマンのピアノレス・トリオ。オーネットがマルチ演奏者となって、アルト・サックスに加えて、トランペットとヴァイオリンも演奏している。

オーネットのブルーノート・レーベルの第2作目。このアルバムは、名ライヴ盤『At the "Golden Circle" Stockholm』に続く、ブルーノート・レーベルでの初のスタジオ録音になる。

つまりは「あれをやっちゃ駄目、これをやっちゃ駄目は、ジャズの自由度を狭める。なんでもかんでもやってみよう、というのが、真のジャズである」というのがオーネットの考え方なんだろうが、この番では、なんと、当時10歳の息子デナード・コールマンをドラマーに採用するという「暴挙=自由(フリー)」に出ている。

どう考えたって、弱冠10歳のドラマーが、感動を呼ぶ、まともなリズム&ビートを供給出来るとは思えない。しかし、オーネットは考えている。この盤での、リズム&ビートはジャズベースの哲人、チャーリー・ヘイデンに全面的に委ねている。ヘイデンの奏でるリズム&ビートを拠りどころに、オーネットは「今まで通りのパフォーマンス」を現出している。
 

Ornette-colemanthe-empty-foxhole

 
どうして、当時10歳の素人の息子デナード・コールマンをドラマーに採用したのか。オーネットの心の中が全く判らない。音楽として、聴き手の人達にちょっと失礼であろう。「それまでのジャズで、やってはいけないこと」の1つとして、ドラマーを素人から採用したのであれば、これはちょっとジョークが過ぎるのではないだろうか。

聴いていて明らかにドラミングに違和感がある。明らかに素人が自由気ままにドラムを叩いている。多少は勉強し練習したんだろうが、どう聴いても、プロのドラミングとは言い難い。オーネットは、ドラムのリズム&ビートは、実は素人が自由に叩いた方が、真の「フリー・ジャズ」に近づく、と考えたのだろうか。

しかし、名ライヴ盤『At the "Golden Circle" Stockholm』での、盟友レギュラー・ベーシストのデヴィッド・アイゼンソンはこれに賛同せず、セッション・メンバーから降りている。

もちろん、オーネットの吹奏は申し分無い。しかし、ヴァイオリンの「スクラッチのようなやり方」での弾き方は、どうにもワンパターンで飽きる。これも、素人が自由に弾いた方が、真の「フリー・ジャズ」に近づく、と考えたのだろうか。

この盤は、オーネットの吹奏とヘイデンの類い希なタイム感覚を有した「哲人ベース」によって、辛うじて及第点を獲得したアルバムだと思う。しかし、ブルーノートの総帥プロデューサーのライオンが、よくこの演奏を許したものだ、と思ったら、この盤のプロデュースは、ライオン引退後の「フランシス・ウルフ」だった。ウルフのプロデュース感覚を疑ってしまった。

このオーネットの「自分の息子はまだ音楽のルールやクリシェに縛られておらず、ピュアでフリーな演奏ができると考えた」のであれば、セッションのメンバー全員が素人でやれば、真の「フリー・ジャズ」に近づく、ということになる。これはどうなんだろう。僕は音楽家としてのオーネットをこの盤を聴いて、初めてその感覚を疑ってしまった。
 
 

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2025年8月 6日 (水曜日)

ヤングの個性の ”正しい表出”

ラリー・ヤング(Larry Young)。ラリー・ヤングは、1940年10月生まれなんだが、1978年3月、37歳で鬼籍に入っている。今から、もう40年も前のことになる。それでも、プレスティッジとブルーノートを中心に、十数枚のリーダー作を残してくれているので、彼のユニークなオルガンを追体験することが出来る。

ラリー・ヤングのオルガンは「オルガン界のコルトレーン」と形容される。ソロ・パートに入ると、コルトレーンばりの「シーツ・オブ・サウンド」で弾きまくる。そして、このアルバムは、「オルガン界のコルトレーン」の形容を更に強固なものとしてくれる。

Larry Young『Of Love and Peace』(写真左)。1966年7月28日の録音。ちなみにパーソネルは、Larry Young (org), Eddie Gale (tp), James Spaulding (as track:1, 3, 4, fl), Herbert Morgan (ts), Wilson Moorman III, Jerry Thomas (ds)。
 
この盤は、オルガンがメインの「自由度を最大限に高めたジャズ」である。モードとフリーを適材適所に織り交ぜ、素晴らしくフリー&スピリチュアルなオルガン・ジャズがここにある。

まず、編成がユニーク。ダブルドラム、3管フロントにラリーのオルガンが加わる。ベースはもちろんギターもおらず,パーカッションもいない。自由度を最大限に追求することの出来る、変則セクステット。この編成は誰が考案したんだろう。
 

Larry-youngof-love-and-peace
 

ゲイルのトランペットとスポルディングのアルト・サックスが「スピリチュアル」な雰囲気を醸し出す。モーガンのテナー・サックスが、3管フロントの音の厚みに貢献する。ダブルドラムが、フリーな展開に、リズム&ビートな明確な指針を叩き出す。

ラリー・ヤングのオルガンが、モードに展開し、フリーに展開し、スピリチュアルに展開する。自由度を最大限に高めた即興演奏を現出する為の、八面六臂のオルガンの弾き回し。そして、これが正しく機能して、当時としては珍しい、オルガンがメインのフリー&スピリチュアル・ジャズが展開されている。

といって、自由に弾きまくる、吹きまくるフリー&スピリチュアルでは無い。メインはモード・ジャズ。しっかりと規律を保った、限りなく自由度を高めたモード・ジャズ。

そんなモード・ジャズ本流の中に、フリーな展開、スピリチュアルな展開が織り交ぜられる。規律の中のフリー、規律の中のスピリチュアル。パワーと理性のバランスが取れた、オルガンがメインの「自由度を最大限に高めたジャズ」。

商業ジャズで無い。ジャズの本来の「芸術性」を追求した様な、ストイックで硬派な内容にワクワクする。ラリー・ヤングの「オルガン界のコルトレーン」と形容される個性がストレートに出た好盤。腰を据えて、じっくりと耳を傾けたい。
 
 

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