アキコ・グレースの「今」の原点
最近、久々に聴き直して「これは良いなあ」。Akiko Grace『東京』(写真左)。テーマは「和」。
女性ジャズ・ミュージシャンの人気者アキコ・グレース(Akiko Grace)の「フロム・ニューヨーク」「マンハッタン・ストーリー」「ニューヨーク・スタイル」のニューヨーク三部作を完成させたアキコ・グレースの新境地。メンバーも純国産ミュージシャンで固め、ベースは藤原清登、ドラムスは岩瀬立飛という布陣、曲によっては、藤原道山の尺八や中西俊博のヴァイオリンも加わる。
収録曲を眺めてみると、オリジナルが7曲、童謡あり、また、変わったところでは、矢野顕子の「春咲小紅」、The Boomの「島唄」をカバーしている。そんな中で、テーマは「和」としながら「Donna Lee」と「Giant Steps」が入っているのは不思議。レコード会社とミュージシャンの意向のせめぎ合いが見て取れるようだ。
オリジナルはどれも充実しており、演奏も申し分ない。やはり、興味は、ニューミュージックの名曲や童謡のカバーだろう。「春咲小紅」は、ジャズにしにくい旋律を持つ曲なのだが、ファンキー&ゴスペルなタッチでうまく聴かせる。「春咲小紅」を知らない人は、一風変わった旋律を持ったエキゾチックな曲だなあ、と思うだろう。そういう意味で「春咲小紅」を知らない人こそ、純粋に楽しめる演奏だ。
逆に「島唄」は、しっかりとジャズにはまっている。やはり、グレースは、ファンキー&ゴスペルなタッチで歌い上げていくが、この曲はジャズにピッタリ。沖縄民謡の旋律がジャズのフィーリングにマッチするのかもしれない。童謡のカバーは、やはり違和感がある。
「かごめかごめ」や「おぼろ月夜」は、幼少の頃より親しみすぎてるがゆえに、なんだか聴いていて、なんとなく「気恥ずかしさ」が先にたってしまう。童謡や文部省唱歌のカバーについては、有名な曲はキワモノっぽくて危険だ。隠れた童謡や文部省唱歌を再評価する的なアプローチでのカバーの方が、日本的な旋律をうまく活かせてアレンジしやすいし、聴きやすいのではないか。
でも、グレースのピアノは、女性ならではの特性を旨く活かす奏法に変わりつつあり、実に好ましい個性に進化しつつある、と感じる。力で劣る女性ミュージシャンが、男性同様の「ガコーン・ズカーン」的な、力強いダイナミックな奏法に追従して、男性ミュージシャンと張り合う必要はない。アキコ・グレースのリリカルなピアノに「Donna Lee」と「Giant Steps」は必要無い。
グレースもその辺の機微を心得つつある様で、今回のアルバムは実に楽しく聴ける。結局、このアルバムの後、グレースはこのアルバムの「女性ならではの特性を旨く活かす奏法」に路線を固定した。男性同様の「ガコーン・ズカーン」的な、力強いダイナミックな奏法に戻ることは無かった。それで良いと僕は思う。
最後になったが、アルバムジャケットはいただけないなあ(笑)。ちょっとやりすぎ。これがジャズのアルバムのジャケットとは、ちょっとねえ。レコード会社の売らんが為の変な意向が垣間見える。なんだか、アキコ・グレースが気の毒になった。
震災から3年9ヶ月。決して忘れない。まだ3年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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