2014年12月12日 (金曜日)

アキコ・グレースの「今」の原点

最近、久々に聴き直して「これは良いなあ」。Akiko Grace『東京』(写真左)。テーマは「和」。

女性ジャズ・ミュージシャンの人気者アキコ・グレース(Akiko Grace)の「フロム・ニューヨーク」「マンハッタン・ストーリー」「ニューヨーク・スタイル」のニューヨーク三部作を完成させたアキコ・グレースの新境地。メンバーも純国産ミュージシャンで固め、ベースは藤原清登、ドラムスは岩瀬立飛という布陣、曲によっては、藤原道山の尺八や中西俊博のヴァイオリンも加わる。

収録曲を眺めてみると、オリジナルが7曲、童謡あり、また、変わったところでは、矢野顕子の「春咲小紅」、The Boomの「島唄」をカバーしている。そんな中で、テーマは「和」としながら「Donna Lee」と「Giant Steps」が入っているのは不思議。レコード会社とミュージシャンの意向のせめぎ合いが見て取れるようだ。

オリジナルはどれも充実しており、演奏も申し分ない。やはり、興味は、ニューミュージックの名曲や童謡のカバーだろう。「春咲小紅」は、ジャズにしにくい旋律を持つ曲なのだが、ファンキー&ゴスペルなタッチでうまく聴かせる。「春咲小紅」を知らない人は、一風変わった旋律を持ったエキゾチックな曲だなあ、と思うだろう。そういう意味で「春咲小紅」を知らない人こそ、純粋に楽しめる演奏だ。

逆に「島唄」は、しっかりとジャズにはまっている。やはり、グレースは、ファンキー&ゴスペルなタッチで歌い上げていくが、この曲はジャズにピッタリ。沖縄民謡の旋律がジャズのフィーリングにマッチするのかもしれない。童謡のカバーは、やはり違和感がある。
 

Akiko_grace_tokyo

 
「かごめかごめ」や「おぼろ月夜」は、幼少の頃より親しみすぎてるがゆえに、なんだか聴いていて、なんとなく「気恥ずかしさ」が先にたってしまう。童謡や文部省唱歌のカバーについては、有名な曲はキワモノっぽくて危険だ。隠れた童謡や文部省唱歌を再評価する的なアプローチでのカバーの方が、日本的な旋律をうまく活かせてアレンジしやすいし、聴きやすいのではないか。

でも、グレースのピアノは、女性ならではの特性を旨く活かす奏法に変わりつつあり、実に好ましい個性に進化しつつある、と感じる。力で劣る女性ミュージシャンが、男性同様の「ガコーン・ズカーン」的な、力強いダイナミックな奏法に追従して、男性ミュージシャンと張り合う必要はない。アキコ・グレースのリリカルなピアノに「Donna Lee」と「Giant Steps」は必要無い。

グレースもその辺の機微を心得つつある様で、今回のアルバムは実に楽しく聴ける。結局、このアルバムの後、グレースはこのアルバムの「女性ならではの特性を旨く活かす奏法」に路線を固定した。男性同様の「ガコーン・ズカーン」的な、力強いダイナミックな奏法に戻ることは無かった。それで良いと僕は思う。

最後になったが、アルバムジャケットはいただけないなあ(笑)。ちょっとやりすぎ。これがジャズのアルバムのジャケットとは、ちょっとねえ。レコード会社の売らんが為の変な意向が垣間見える。なんだか、アキコ・グレースが気の毒になった。

 
 

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2013年11月 5日 (火曜日)

アキコ・グレースの本当の個性

ジャズにしろ、ロックにしろ、Jポップにしろ、新人でデビューしてリーダーアルバムをリリースする時、ミュージシャンとしてやりたいこととレコード会社の意向が全く合わない時がある。

レコード会社はとにかく「売りたい」。売上を上げ、利益を上げたい。そうすると、その時の世の中の流行やトレンドを見て、それに合わそうとする。とにかく「売りたい」のだ。リーダーのミュージシャンの意向など無視することだってある。まあ、レコーディングだってコストがかかる。コスト投資をするのだから、それに見合った売上を、というのが普通のレコード会社の論理。

しかし、音楽ってものは、そんな通常の企業活動の定石の様には事が運ばない。やはり、優れたミュージシャンであれば、そのミュージシャンのやりたいようにやらせた方が良いアルバムが出来る。でも、良いアルバムが「売れる」とは限らない。しかし、レコード会社であれば、先ずは「良いアルバム」を制作し、リリースするのが先決だろう。音楽とは芸術なのだ。普通の商品の類では無い。

このアキコ・グレース(Akiko Grace)のデビューからのリーダー作の3作を順番に聴けば、そのミュージシャンとレコード会社の「葛藤」が何となく理解出来る。そして、アキコ・グレースがやりたかったことは、3作目の『New York Style』(写真左)を聴けば良く判る。

『From New York』(2013年8月7日のブログ参照・左をクリック)、『Manhattan Story』(2013年9月26日のブログ参照・左をクリック)と、すでにリリースされている2枚のアルバムと併せて、ニューヨーク録音3部作の完結編である。

2003年7月のリリースになる。そうか、もう既に10年も前になるのか。そして、ちなみにパーソネルは、Akiko Grace (p), Larry Grenadier (b), Bill Stewart (ds)。ベースとドラムとの相性については、このベースのラリーとドラムのビリーの二人との組合せにて、3作目にして、やっとベストなピアノ・トリオと相成った。
 

Newyork_style

 
冒頭の「Jump」、ヴァン・ヘイレンのあの超有名曲。乾いたファンクネス漂うアーシーなピアノ。最早、世の中の流行やトレンドに迎合した「ガーン、ゴーン」と弾きまくるピアノでは無い。右手はクリスタルに透明感を振り撒きながら、乾いたファンクネスを漂わせる。左手は意外と多弁にアーシーなリズム&ビートを供給する。実に格好良いアレンジ&アドリブ。

キース・ジャレットとデビット・ベノワとブラッド・メルドーを足して、3で割ったような音。でも、右手の透明感は明らかに個性的だし、左手のちょっと多弁なアーシーさは、これまたグレースとして個性的。ちょっと聴けば「どっかで聴いた様な音」なんだが、じっくり聴くと「明らかに個性的な音」。

そして、この右手の透明感は、自作曲でより個性的になる。8曲目の「Pray Song 〜 for Grand Zero」は、NY世界貿易センタービル跡地、グラウンド・ゼロへ捧げられた曲。右手の透明感と音の合間の静寂が、グレースのピアノの一音一音が「祈り」の世界を紡ぎ出していく。この右手の透明感と音の合間の静寂は、グレースの個性として成立している。

「Greensleeves」「Smile」「Caravan」のスタンダード曲でも、この右手の透明感が大活躍する。決して、過度にジャジーにならず、オーバー・ファンクにもならない。ライトな感覚でジャジーさを供給し、ファンクネスはあくまでも乾いている。米国にも欧州にも無い右手の透明感。良い感じだ。

アキコ・グレースは、この第三作目の『New York Style』で、やっとミュージシャンとしてやりたいことが出来たのでは無いか。一部、レコード会社の意向を汲んでいるところはあるにせよ、この第三作目は、アキコ・グレースの個性を十分に感じ取ることが出来る。

その時の世の中の流行やトレンドを追わず、レコード会社の売らんが為の意向に迎合せず、ビジュアル系から訣別し、ミュージシャンとしてやりたいことを中心にリーダー作を制作する。こんな当たり前の事が簡単に出来ない音楽業界って悩ましいもんやなあ、って思う。でも、これって、1960年代からずっとそうなんだよな。まあ、音楽業界の永遠の課題ですね。

 
 

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2013年9月26日 (木曜日)

アキコ・グレースのセカンド盤

しばらく聴かなかったピアノ・トリオ。今の耳で聴き直してみるシリーズ。デビュー当時、鳴り物入りで登場したアキコ・グレース。今でもしっかりと自分の音を奏でつつ、着実な活動を続けている。そんな彼女のセカンドアルバムを聴いてみる。

改めて、Akiko Grace『Manhattan Story』(写真左)。2002年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Akiko Grace (p), Larry Grenadier (b), Bill Stewart (ds)。

デビュー盤で、恐らくレコード会社の差し金だったのだろう、ベースに人気ベーシストRon Carterを起用したのだが、これがアキコ・グレースのピアノに全く合わなかった。よって、今回、Larry Grenadierにチェンジしたのは正解だろう。などとパーソネルを眺めて、聴く前に類推したりする。そして、CDプレイヤーの再生スイッチを入れる。

ん〜、良くなりましたね。2枚目のリーダーアルバムということでリラックスできたのか、それともベースが、かの巨匠ロン・カーターから替わって、若い同世代のラリー・グレナディアとの相性が良かったのか、ノビノビと演奏しているのが良く判る。なんせ、デビューアルバムは全編に渡って、少しぎこちなかったからね。

一言で言うと、アキコ・グレースのピアノの個性、きめ細やかさと大胆さ、激しさと優しさが旨く表現されている。現代ジャズを代表するパット・メセニーやブラッド・メルドーのサイドを務める実力世界最高峰のベーシスト&ドラマーをバックに従え、演奏される曲ごとに硬軟自在、豊かで様々な表現を見せてくれる。
 

Manhattan_story

 
このアルバムのリリース時点では、アキコ・グレースはまだまだ若手の部類なので、最上級とは言い難いが、オリジナル曲のほか、エリック・クラプトンの「Change the World」など興味深い選曲もあって、聴いていて楽しく、しっかりとしたアルバムとなっている。

1曲目からガツーンとやってくれる「Libido〜Mediterranean Sundance」。速いテンポと印象的なフレーズで、最初は違和感を感じるかもしれないが、これが結構、聴き込んで行くにつれ、だんだん、だんだん「クセ」になる。

3曲目の「Fly Me to the Moon」は、ジャスでは有名なスタンダードだが、これがシットリとしていて、落ち着いた、なかなかの演奏。若くしてスタンダードが旨いピアニストは先が楽しみだが、アキコ・グレースも例外では無い。
 
8曲目の「Over the Rainbow」は、映画「オズの魔法使い」のテーマソング。アキコ・グレースの抒情的な演奏が美しい。この浮遊感のある抒情的なタッチが、彼女のその後の「メインの個性」になっていく。

9曲目は、セロニアス・モンクの「Bemsha Swing」のテーマのユニークさとアキコ・グレースの硬派な演奏のギャップが楽しく、11曲目の「Song for Bilbao」は、人気ギタリスト、パット・メセニーの作曲。エネルギー溢れる演奏で、実に若々しい。

とにかく、デビューアルバムとは似ても似つかぬ、アキコ・グレースの個性を全面に出したアルバムといえる。このアルバムで、アキコ・グレースは、スタートラインに立った、そんな感じがするセカンド盤。なかなかの好盤である。

 
 

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2013年8月 7日 (水曜日)

アキコ・グレースのピアノの個性

しばらく聴かなかったピアノ・トリオ。今の耳で聴き直してみる。Akiko Grace『From New York』(写真左)。バークリー音楽大学時代では、学生代表で幾度か演奏をした位のエリート。2002年、デビュー当時は、久々の大型新人の登場と騒がれた。今でもしっかりと自分の音を奏でつつ、着実な活動を続けている。

さて、冒頭の「Never Let Me Go」はソロの小品。本格的なピアノは、2曲目のオリジナル「Delancey Street Blues 」から。ピアノタッチとその音を聴いてすぐにその個性が判る、確かに、当時、久々の大型新人の登場である。

デビュー作がピアノ・トリオと言うことで、アキコ・グレースのピアノをダイレクトに愛でることが出来る。サポートするバックも、ベースは、大ベテランのロン・カーター、ドラムは、職人ビル・スチュワートと全く申し分無い。

選曲もスタンダード、オリジナルを交えている点も、スタンダード一辺倒の売上至上主義とは一線を画していてなかなかの構成。選曲されたスタンダードは、なるほどなあ、と納得できる素晴 らしい曲ばかりで、アキコ・グレースは、その素晴らしい曲の特徴をうまく引き出し、アキコの個性というスパイスで味付けて、我々に聴かせてくれる。

オリジナル曲はどれも良くできており、新主流派から新伝承派という、ジャズのメインストリーム、いわゆる王道を行く曲作り。バックが超一流なので、アキコはオリジナルの曲で遺憾なく、その実力を発揮している。

が、ふーむ、なんと評価したらよいのか、アキコ・グレース。素晴らしい才能であることは確かだ。ピアノのタッチ、着想、展開、どの演奏を聴いても、すぐに優れた才能の一端が、はっきりと見える。とにかく、当時の「久しぶりの大型新人」という触れ込みは伊達ではない。が、アルバム全部聴き終えた後、なんとなく、吹っ切れた気持ちになれないのは何故だろう。
 

Akiko_grace_from_ny

 
デビューから今までのアキコ・グレースのアルバムをほぼ全部、聴いた経験があるから、なんとなく感じるのだが、アキコ・グレースのピアノは、米国ジャズ・ピアノの音では無く、どちらかと言えば、欧州ジャズ・ピアノのテイストが強い、と感じる。彼女のピアノのタッチと響きに、なんとなく、ECM時代のスティーブ・キューンな響きを感じるのだ。

欧州ジャズ・ピアノのテイストでありながら、バックに、米国ジャズの代表格である、ベースのロンとドラムのスチュワートを従えて、メインストリームな米国ジャズをやるのだから、ちょっと違和感が漂うのは当たり前。

欧州ジャズ・ピアノに、そこはかとなくファンクネスを乗っけて、ブルージーにスイングさせるのだから、なんとなく作られた様な、なんとなく窮屈な感じがするのは当然と思われる。

加えて「なんとなく作られた感じ」については、このアルバムの演奏が、全て「出来すぎている」ところにある。トリオの演奏からして、この場面ではベースはこう出るとか、ドラムはこんな感じでやるとか、伝統的なジャズ・トリオの中で、ピアノはこう振る舞うべし、みたいな、所謂「お約束」ごとが、このアルバムでは出来すぎているように感じる。

アルバムの音も、ちょっと出来過ぎ気味な、優秀すぎるほどの録音。 ミュージシャンの個性より、プロデュースと録音が勝ってしまったような、そんな感じのするデビュー・アルバムである。一言で言うと「オーバー・プロデュース」、そして、アキコ・グレースのピアノの個性とアルバム・コンセプトの「ミスマッチ」。

それでも、ビンビンとその個性は伝わってくるのだから、アキコ・グレース侮り難し。2作目以降、アキコ・グレースは着実に「オーバー・プロデュース」を排除し、このアキコ・グレースのピアノの個性とアルバム・コンセプトの「ミスマッチ」を,力強く払拭していくのだ。

 
 

大震災から2年4ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
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2009年2月26日 (木曜日)

Akiko Graceのピアノって

寒い一日。我が千葉県北西部地方は、2月の中旬は観測史上初の夏日も含めて暖かい日が多かったが、2月も終わりになって、鉛色の空と寒い日が続いている。まあ、2月下旬〜3月中旬の千葉県って、南岸低気圧の影響で、雪がふったり、寒い日が続いたりするので、慣れていると言えば慣れてはいるが...。

さて、ジャズの演奏では、カルテット(4人編成)やクインテット(5人編成)等々、数人で組んでのバンド演奏が主であるが、編成が少なければ少ないほど、そのアルバム・リーダーのミュージシャンとしての本質が露わになってくる傾向が強い。

究極の小編成が「ソロ」(一人だけ)で、これこそ、演奏するミュージシャンはひとりなので、一番にそのミュージシャンの本質が露わになるかと思いきや、なかなかそうならないところが音楽の面白いところで、他に影響する人がいないので、ソロのミュージシャンは、結構我が儘に振るまうことが出来る。つまり、ソロは、そのミュージシャンのグループサウンドを前提として本質が出てこないので、ちょいとバランスの悪い編成である。

では、ソロとしての本質とグループサウンドを前提としての本質の両方が現れ出て、そのミュージシャン本質を掴みやすい編成というのは「デュオ」(2人編成)若しくは「トリオ」(3人編成)だろう。

最近、レンタル落ちで、Akiko Grace(アキコ・グレース)の『WOWOW wave2 JAZZ Street ~The Duo+』(写真左)を手に入れた。アキコ・グレースが持っているラジオ番組から生まれた1枚で、タイトルをご覧頂ければ判るが、ラジオ番組のゲストとのデュオ曲集なのだ。
 

Akiko_grace_duo

 
ヴァイオリン、ギター、フルート、サックス、ベース。それぞれ、ラジオ番組のゲストとのコラボレーションなので、それぞれ、演奏の雰囲気から全体を覆う音のカラーが違っていて、実に楽しいアルバムである。加えて、デュオ編成の演奏ばかりが集められたアルバム故に、アキコ・グレースのピアノの本質が明快に出ていて、実に興味あるアルバムに仕上がっている。

アキコ・グレースのジャズ・ピアノは、意外に過去のジャズ・ピアニストの影響を受けていないように見受けられる。敢えて言うなら、ビル・エバンスの流れを汲むということになるのだろうが、タッチは硬質で、ジャズ独特の粘りが少ない。一聴するだけだと、クラシックのピアニストがジャズ・ピアノをやっている感じなのだ。

クラシックのピアニストがジャズをやる、というパターンで有名なピアニストに、アンドレ・プレビンがいるが、このプレビンに似ている。端正で硬質で粘らないタッチが特徴で、音の重ね方響きがクリア。それでいて、インプロビゼーションのノリは「ジャズ」のノリであるが、あからさまなノリでは無く、実に奥ゆかしいノリなのだ。この辺りが、アキコ・グレースのジャズ・ピアノの本質ではないかと、このデュオアルバムを聴いていて思った。

最近、新譜として『PIANORIUM』という四季折々のテーマが盛り込まれた書き下ろしの新曲を、スタインウェイのピアノで奏でるという、ソロ・ピアノ集をリリースした。このピアノのスタイルと響き、ノリがアキコ・グレースのソロとしての本質なんだろう。

『WOWOW wave2 JAZZ Street ~The Duo+』ではとグループサウンドを前提としての本質が良く判り、アキコ・グレースのピアノは、過去のジャズ・ピアニストの影響が少ない、新しいジャズ・ピアニストとしてのスタイルを持っていると思う。まだまだ時間はかかるとは思うが、先が楽しみなピアニストの一人であることは間違いない。

ガーン、ゴーンと弾きまくるだけがジャズ・ピアノでは無い。ジャズは、奥が深く、幅が広い、包容力のある音楽ジャンルの一つなんだから...。これはジャズではない、これはジャズである、と決めつける必要は無いと思いますね〜。アキコ・グレースのピアノの「これから」を見守って行きたいと思います。 
 
 
 
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