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2026年7月23日 (木曜日)

BN4400番台のエルヴィン

ブルーノートの4400番台は、BNLAシリーズへの移行前(1972年リリース)、4413番から4423番までの11枚と、Modern Jazz New 4400シリーズ(1984年〜1986年リリース)の、4424番から4435番の12枚。まず、ここで押さえるべきは、1972年リリースの4413番から4423番までの11枚。オールド・ブルーノートの最後の姿。ジャズ・ファンクとフュージョンの時代への適応です。

Elvin Jones『Merry-Go-Round』(写真左)。1971年2月12日と12月16日の録音。ブルーノートの4414番。ちなみにパーソネルは、下記の通り。ドラマーでリーダーのエルヴィン・ジョーンズが、当時の若手精鋭ミュージシャンを大挙、招聘して、ポスト・バップ〜初期フュージョン・サウンドを展開したアルバム。

Elvin Jones (ds), Joe Farrell (ss (2, 6, 8), ts (1), fl (4), piccolo (7)), Steve Grossman (ss (2, 7), ts (1, 6)), Dave Liebman (ts (1, 6, 8), ss (2, 6, 7)), Frank Foster (alto-cl (8)), Pepper Adams (bs (6, 7)), Chick Corea (p (4–6), el-p (5)), Jan Hammer (el-p (1, 5), p (2, 3), glockenspiel (7)), Yoshiaki Masuo (g (1, 4)), Gene Perla (b (2–5), el-b (1, 6, 7)), Don Alias (congas (1, 3, 5, 6), oriental bells (2))。
 

Elvin-jonesmerrygoround  
 

録音日は2日に渡っているが、1971年2月12日の録音は、8曲目の「Who's Afraid...」のみ。その他の演奏は、全て、1971年12月16日の録音になる。録音日毎に、ポスト・バップ志向と初期フュージョン志向と演奏が分かれている訳では無い。なので、アルバムの内容評価としては、主に、1971年12月16日録音の7曲に着目することになる。

アルバムの内容としては、ポスト・バップな演奏、2曲目「Brite Piece」3曲目「Lungs」8曲目「Who's Afraid」と、後のフュージョン・ジャズの音要素を含んだ、1曲目「Round Town」、4曲目「A Time for Love」、5曲目「Tergiversation」、6曲目「La Fiesta」、が混在した、ちょっと拡散した内容。そこに、音遊び風の7曲目「The Children's Merry-Go-Round March」が入るので、かなりエルヴィンの趣味性に偏った演奏集に感じる。

チック・コリアの大名曲「La Fiesta」の初録音、チック自身のバンド「リターン・トゥ・フォーエヴァー」の名盤(ECM)に吹き込まれる2か月前の演奏が入っていたり、渡米間もない増尾好秋の流麗なギターソロが大きくフィーチャーされていたり(「Round Town」)、リーブマンとグロスマンという、新進気鋭のテナーまんの競演があったり(「Brite Piece」)で、話題には事欠かない内容なので、好盤というよりは「人気盤」の位置づけのアルバムだろう。
 
 

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2026年7月14日 (火曜日)

デジョネットの”New Directions”

ECMレコード・カタログの1100番台(#1101-1199)の当ブログでの記事化のコンプリートを目指している。1000番台については、全くの現代音楽志向(ECMのアイヒャーはこれが好きみたい)の即興演奏のアルバムについては記事化を控えたが、その他のアルバムについては記事化が完了している。そして、次は1100番台。これが結構、記事化が進んでいない。

Jack DeJohnette『New Directions』(写真左)。1978年6月の録音。ECMの1128番。ちなみにパーソネルは、Jack DeJohnette (ds, p), John Abercrombie (g, el-mandolin), Lester Bowie (tp), Eddie Gómez (b)。屈指のポリリズミックなドラマー、ジャック・デジョネットがリーダー。基本はピアノレス、ギターとトランペットがフロントと変則カルテット編成。曲によって、デジョネットがピアノを弾いている。

デジョネットの「一見交わりそうにない、強力で異なる個性を持ったキャラクターを一堂に会する」というアイデアのもと、集められたメンバーらしい。デジョネットのドラム、ゴメスのベースという、メインストリーム志向の純ジャズなリズム隊に、アート・アンサンブル・オブ・シカゴから、トランペットのレスター・ボウイ、欧州ジャズ志向のソリッドでストレートで、プログレッシヴなギターのジョン・アバークロンビーと、確かに一見どころか、こんなチャンスでもないと未来永劫交わることの無いメンバーである。
 

Jack-dejohnettenew-directions  

 
ディジョネットの空間的かつシャープなポリリズミックなドラミング、ジョン・アバークロンビーの浮遊感溢れる捻れギター、そしてエディ・ゴメスの堅実なベース。この3人が創り出すECMらしい透明感のあるサウンドがベースとなって、そこにフリー・ジャズ界の奇才レスター・ボウイが加わる。独特の緊張感と実験精神の下、そしてスピリチュアルでモーダルな即興演奏が展開されている。そして、時折、静寂とカオスが織りなす緊張感が顔を出す。

アバークロンビーのアタック感を消した、浮遊感のあるギター&エレクトリック・マンドリンが、アルバム全体にスピリチュアルなトーンを与え、アヴァンギャルドなボウイのトランペットが、ハーフバルブを駆使した歪んだ音、うなり声のようなグロウ・トーン、叫び声のようなハイノートなどを多用して、そのスピリチュアルなトーンを増幅する。そして、デジョネットとゴメスの変幻自在、硬軟自在、緩急自在なリズム&ビートが、フロントの二人をがっちりサポートしている。

ECMの洗練された欧州的なニュー・ジャズの音世界と、米国ブラック・ジャズの生々しいダイナミズムとの完璧な融合がここにある。緻密な4ビートや美しいモーダル・ジャズ(伝統)、フリー・インプロビゼーション(前衛)、そしてエレクトリック・ギターやマンドリンを取り入れたクロスオーバーなアプローチ(フュージョン)が、1枚のアルバムの中に違和感なく同居している。1970年代ジャズの名盤の一枚。
 
 

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2026年6月12日 (金曜日)

ECMの音世界の完璧な具現化

これは傑作だろう。北欧の冷涼で幻想的なサウンドと、創造的で圧倒的な即興演奏が融合した、初期ECMを代表する傑作。モダン・ジャズの枠組みを飛び越え、裾野を広げ、アンビエント・ミュージック(環境音楽)や現代音楽、プログレッシブ・ロックの要素までをも内包した、緊張感溢れ、切れ味鋭い、底知れぬ深みを持つ独自の静謐な音世界を構築している。

『Terje Rypdal / Miroslav Vitous / Jack DeJohnette』(写真左)。1978年6月、オスロの「Talent Studio」での録音。ECMの1125番。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (g, g-syn, org), Miroslav Vitouš (b, el-p), Jack DeJohnette (ds)。トリオ3人による、ECMの標榜する音世界「沈黙の次に美しい音」を具現化した、完全な即興演奏の記録。

ジャック・デジョネットの鋭く変幻自在なシンバルワークと、アグレッシブでポリリズミックなドラミング。ミロスラフ・ヴィトウスのソリッドでモーダルな自由度の高いベースライン、アルコを使った幻想的なベースプレイ。ノルウェー出身のギタリスト、テリエ・リピダルの独自のディレイやボリュームペダル、ギターシンセを駆使した、クリスタルで冷涼な空間的な美音を飛翔させるギタープレイ。この3人によるインタープレイが尋常では無い。
 

Terje-rypdal-miroslav-vitous-ja_20260612214101  

 
ヴィトウスの哀愁を帯びたベースライン、リピダルのドライブ感あるギター、デジョネットのポリリズミックな緩急自在・変幻自在・硬軟自在なドラミング。そして、単なる「ギター・ベース・ドラム」のトリオにとどまらず、メンバーが複数の楽器やエフェクターを駆使してオーケストラのような空間的な広がりを作っている。この3人の「三位一体」となったインプロビゼーションの圧倒的な空気感、即興演奏の緊張感、豊かな音の色彩感は、筆舌に尽くしがたい。

冒頭の「Sunrise」からして、既にただならぬ雰囲気の音世界。デジョネットの緊張感溢れる切れ味抜群のシンバルワークから始まり、エレキピアノでベースラインを表現する独創的なアプローチが重なり、そこにリピダルの魂を揺さぶるエレキギターが飛翔し浮遊し、切れ込む。この冒頭の1曲が、このアルバム全体の音世界を代表している。

米国のジャズとは一線を画す、1970年代以降の「欧州ジャズ」のアイデンティティを決定づけた、歴史的一枚である。非現実的で、痛烈な美しさを持つ音響空間、ジャズの枠を超越したスピリチュアルな音楽といった、ECMが追求する「沈黙の次に美しい音」を完璧に具現化した一枚である。
 
 

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2026年6月11日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・325

コルトレーン時代のような4ビートのアヴァンギャルド・ジャズにとどまらず、ジーン・パーラが一部でエレクトリック・ベースを導入、ボサノヴァ調のリズムとファンキーなベースラインが融合し、後のスピリチュアルなジャズ・ファンクの先駆けとも言えるキャッチーなサウンドが興味深い。

Elvin Jones『Genesis』(写真左)。1971年2月12日、Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ での録音。ブルーノートの4369番。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Joe Farrell, Dave Liebman (ts, ss), Frank Foster (ts, fl, cl), Gene Perla (b)。エルヴィンの1970年代前半のマルチ・リード編成の幕開けを告げた、記念碑的なアルバム。

このところの十八番である「ピアノレス・クインテット」。ピアノ(コード楽器)を排除し、3人の強力なサックス奏者とベース、ドラムという編成を採用。これにより、独自の「空間的な広がり」と自由度の高いインプロが展開されている。ここにきて、マルチ・リードのフロント編成に落ち着いた模様。マルチ・リードのフロント管によって、コルトレーン色が一掃されるのだから、ジャズにおいて、演奏の編成も重要な要素なのが良く判る。
 

Elvin-jonesgenesis  

 
ハード・バップの力強さを残しつつ、70年代特有のスピリチュアル・ジャズやジャズ・ファンクの要素も内包した、当時として先駆的な「ポスト・バップ」な音世界。エルヴィンの複雑に絡み合うポリリズム(多重リズム)と激しいドラムロールが、バンド・パフォーマンスを極限までドライヴさせているのが印象的。ジーン・パーラのファンキーなベースワークも聴きどころ満載。

フランク・フォスター、デイヴ・リーブマン、ジョー・ファレルの3本テナーが基本の、重厚な3管フロントのブロウが強力だが、フォスターが持ち替えるアルト・フルート、アルト・クラリネット、ファレルとリーブマンのソプラノ・サックスが、色彩豊かなアンサンブルを生み出しているところも注目である。

この『Genesis』で「マルチ・リードによるピアノレス・クインテット」という独自のフォーマットを確立したエルヴィン。ここにきて、「コルトレーン・クァルテットの影」からの完全な自立を果たしたように感じる。エルヴィン印のポスト・バップの方向性の大本がこのアルバムにある。ここから、エルヴィンのポスト・バップの快進撃が始まる。
 
 

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2026年5月31日 (日曜日)

1970年の骨太なポスト・バップ

ジョン・コルトレーンの黄金のカルテットを支えたエルヴィン・ジョーンズが、1970年代の幕開けに提示したポリリズミックで豪快なポスト・バップの佳作。編成を見ると、当時の流行を感じるが、ピアニストをあえて入れず、フランク・フォスターとジョージ・コールマンの強力なサックス2本をフロント2管として、フロント管のインプロの自由度を広げている。

Elvin Jones『Coalition』(写真左)。1970年7月17日「Van Gelder, Englewood Cliffs, NJ」での録音。ブルーノートの4361番。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), George Coleman (ts), Frank Foster (ts, b-cl), Wilbur Little (b), Candido Camero (conga, tambourine)。

ピアノの和音に縛られないため、自由でスピリチュアルなインプロが展開される、とされた、当時のポスト・バップの演奏における「編成のトレンド」を感じて、思わず苦笑い。ピアノレスであれば良い、ということではないんだけどなあ(笑)。

エルヴィンは特定の固定バンドを模索している過渡期で、この盤は、チャレンジ、若しくは実験の雰囲気がある。タイトルの「Coalition(連携・合同)」による化学反応を期待したのかもしれない。カウント・ベイシー楽団などで活躍した、当時、ベテランのフランク・フォスターと、マイルス・デイヴィス・クインテット出身の若手中堅のジョージ・コールマン、二人の世代の違うサックス奏者をコラボさせている。
 

Elvin-jonescoalition

 
エルヴィンの「アンビデクストラス(両利き)」な超絶ドラミングに徹している。右手でシンバルのキープをしながら、左手・左足(ハイハットやタム)で全く別の複雑な3連符のアクセントを叩き出す、コルトレーン時代に培ったポリリズムが完全に独立・進化している。

ここにキャンディド・カメロのコンガが加わり、エルヴィンをリズムをキープする役目から解放する。エルヴィンは「ドラムセット全体を使って対話(メロディを叩く)する」ような、より自由で凄まじい手数を繰り出して、第3のフロント楽器として、フロント2管のフォスターとコールマンのテナーに絡みまくる。

このドラムがフロントの一部となって、他のフロント楽器と絡むところがユニーク。エルヴィンの超絶技巧なテクニックだからこそ、これが出来る。

そして、絡まれた2管フロントであるが、ジョージ・コールマンの「正確無比なテクニックと、都会的でキレのあるハードバップ・スタイル」と、フランク・フォスター:の「太くブルース感あふれるトーンで、アーシー(大地っぽさ)やスピリチュアルなアプローチ」との音のコントラスト、時に美しくハモり、時に激しくバトルする姿は興味深い。

が、ポスト・バップとしての、限りなく自由度の高いモード時々フリーという演奏内容としては、今一歩ということろか。エルヴィンの自由度の高いドラミングが参入しての、3つのフロント楽器の、限りなくフリーに近いモーダルなインタープレイについては、発展途上というところか。今一歩の成熟を期待する、チャレンジブルな内容であることは事実。1970年の骨太なポスト・バップの一枚。
 
 

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2026年5月28日 (木曜日)

レア・グルーヴなキャンディド

キューバのジャズパーカッショニスト、カンディド・カメロのリーダー作。“千の指を持つ男(Thousand Finger Man)”と称された彼が、アフロ・キューバンの強烈なリズムと、当時のアメリカのソウル・ジャズ、ファンクの要素をスタイリッシュに融合させたレア・グルーヴの、後のフュージョン・ファンクを先取りした名盤である。

Candido『Beautiful』(写真左)。1970年10月20 & 27日の録音。ブルーノートの4357番。ちなみにパーソネルは、Candido Camero (conga, bongos), Bernie Glow, Pat Russo (tp), Alan Raph (tb), Joe Grimm (ss, bs), Frank Anderson (p, org), David Spinozza (g), Jerry Jemmott, Richard Davis (el-b), Herbie Lovelle (ds), Joe Cain (arr)。

ファンク系のフュージョン・ジャズの音作りと同傾向の「ジャズの即興演奏よりもダンスやグルーヴに重きを置く」音作りで、ファンキーなオルガン、エレキベース、そしてキャンディドの躍動感あふれるコンガが絡み合うソウル・ジャズ志向、ラテン・ファンク志向のエレ・ジャズ。後のフュージョン・ジャズの要素満載である。

キャンディドのパーカッションは勿論のこと、アフロ・キューバン・リズムの重鎮であるキャンディドを支える、ニューヨークのトップクラスのスタジオ・ミュージシャンたちによるタイトでハイレベルな演奏が素晴らしい。ファンキーなカッティングギター、うねるエレベのグルーヴなライン、パーカッションと完璧にシンクロする重厚なドラムが、キャンディドのパーカッションを逆に映えに映えさせている。
 

Candidobeautiful  

 
ジョー・ケインのプロデュース&アレンジが抜群。ソウル・ジャズ志向、ラテン・ファンク志向のフュージョン・ファンクな音作りを小粋にお洒落にグルーヴにやっている。オリジナル曲だけでなく当時流行していたポップスやR&Bのカバーも含まれていて、このアレンジも優秀。

2曲目「Tic Tac Toe」は、Booker T. & the M.G.'sの名曲をカバーした、タイトなリズムのファンキーナンバー。初めて聴くと、この演奏は、1970年代後半のフュージョン全盛時代の優れたフュージョン・ファンクな演奏と錯覚するくらいの充実した、グルーヴィーなジャズ・ファンク・チューン。

3曲目の「Hey, Western Union Man」は、ジェリー・バトラーのR&Bヒット曲のカバー。洗練されたフィラデルフィア・ソウルと、アフロ・キューバンの熱いダイナミズムが見事にクロスオーバーした、アルバム随一のファンキー・トラック。分厚いホーン・アンサンブルとコンガの掛け合い、スピノザのカッティングギター、ジェモットによる重厚な「イカした低音」のエレベ。

キャンディドが主役でありながら、ソロで目立つのでは無く、「強力なニューヨークのバックバンドのキーマン」として、アンサンブルのグルーヴを、パーカッションで増幅させる役割に徹している。これが、このアルバムを「レア・グルーヴの名盤」化しているのだ。
 
 

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2026年5月19日 (火曜日)

4300番台の純ジャズ志向な盤

リーダーはドラム担当のエルヴィン・ジョーンズ。ジョージ・コールマンとジョー・ファレル、ペッパー・アダムスがフロント3管のピアノレス、パーカッション入りセクステット編成。どちらかと言えば、ハードバップ寄りのメンバー編成だが、出てくる音は「ポスト・バップ」。典型的なモード・ジャズである。エルヴィンが敬愛するコルトレーンにやって欲しかったであろう、理路整然としたモード・ジャズである。

Elvin Jones『Poly-Currents』(写真左)。 September 26, 1969年9月26日、Van Gelder, Englewood Cliffs, NJでの録音。ブルーノートの4331番。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Fred Tompkins (fl :5), George Coleman (ts :1–4), Joe Farrell (ts, English horn, fl), Pepper Adams (bs :1–3), Wilbur Little (b), Candido Camero (congas :1–3)。

理路整然としたモード・ジャズではあるが、エルヴィンのリーダー作がゆえ、エルヴィンのポリリズミックな超人的ドラミングが基本、フィーチャーされている。演奏全体の雰囲気は明らかに「ポスト・バップ」。ただ、エルヴィンのドラミングをフィーチャーしているので、フロント3管のパフォーマンスは二の次、の様な、ちょっと未成熟で、ちょっととりとめのないアレンジなのが惜しい。
 

Elvin-jonespolycurrents

 
キューバ出身のパーカッション奏者キャンディド・カメロが参加。ドラムとコンガが激しく絡み合うことで、アルバムのタイトル(Poly-Currents=多層的な流れ)通りの、アフロ・カリビアン的な躍動感のあるグルーヴを生み出している。このドラムとパーカッションが絡む独特のグルーヴを損なわない為にピアノレスなんだろう。ここに、ピアノが打楽器として参加したら、折角の個性的なグルーヴが損なわれる。

冒頭「Agenda」は、アルバムの方向性を決定づける14分に及ぶ大作。冒頭からエルヴィンの重厚なドラムとキャンディドのコンガが火花を散らす様は見事。3曲目の「Mr. Jones」は、ケイコ・ジョーンズ(エルヴィンの妻でありマネージャー)の作曲。ポスト・バップの力強いグルーヴを持った、ストレート・アヘッドな名演。この曲でのフロント3管のパフォーマンスは、モーダルの響き芳しいパフォーマンスで聴き甲斐がある。

大手レコード会社の傘下に入って、売らんが為の「商業主義」に走った様なアレンジのアルバムが多い、ブルーノート4300番台の中で、このアルバムは、硬派でストレート・アヘッドで純ジャズ志向のアルバムとして、従来のブルーノートの矜持を反映した好盤だとは思う。アレンジがもう少し煮詰まっておれば、もっと凄いアルバムになっていただろうと、ちょっとだけ惜しい気持ちにさせる好盤である。
 
 

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2026年5月 1日 (金曜日)

ジャパン・ミーツ・ジャズの一枚

このアルバムの副題は「ジャパン・ミーツ・ジャズ」で、独のMPS(SABA)レコードの「ジャズ・ミーツ・ザ・ワールド」シリーズの一作である。いわゆる「和洋折衷ジャズ’の好盤。3人の琴奏者(白根きぬ子、野坂恵子、宮本幸子)を加え、日本の伝統楽器である「琴」を本格的にジャズへ取り入れた斬新な構成が特徴。

白木秀雄『Sakura, Sakura』(写真左)。1965年11月1日、ベルリンでの録音。MPS(SABA)レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Hideo Shiraki (ds), Terumasa Hino (tp), Takeru Muraoka (ts, fl), Yuzuru Sera (p), Hachiro Kurita (b), Keiko Nosaka (koto : A1, A3, B1, B3), Kinuko Shurane (koto ; 曲: A1, A3, B1, B3), Sachiko Miyamoto (b-koto : 曲: A1, B1, B3)。

英語表記では「Hideo Shiraki Quintet + 3 Koto Girls」とある。フロント2管に、日野皓正のトランペット、村岡 建のテナー&フルート、リズム隊に、世良譲のピアノ、栗田八郎のベース、白木秀雄のドラム。この白木がリーダーのクインテットに、琴奏者が3人入った、オクテット編成。「琴」が前面的に入った、わが国のジャズ独特の、和楽器「琴」と洋楽器の融合、メインストリーム志向のクロスオーバー・ジャズである。
 

Sakura-sakura

 
琴を単なる「和の飾り」としてではなく、モダン・ジャズのアンサンブルに深く組み込んでいて、「琴」をジャズ楽器の一つとして扱ったアレンジは特筆に値する。: 琴の「間(ま)」を活かしつつ、4ビートの上で琴が即興演奏を繰り広げる展開は、当時のジャズ界でも類を見ない実験性を保っている。八城一夫による編曲が素晴らしい。良く書けている。フルートを尺八の代替として、似せた音色で吹くのもユニーク。

演奏の基本は「モード・ジャズ」。冒頭の「さくらさくら」を聴けば良く判る。琴のアルペジオから始まり、次第に熱を帯びるモーダルな展開。2曲目の「よさこい節」は、日本の土着的なリズムをジャズのグルーヴに上手く変換。4曲目の白木オリジナルの「祭りの幻想」は新アレンジ。日本の祭囃子のリズムとジャズの融合がユニーク。そして、5曲目「Alone, Alone and Alone」は日野のオリジナル曲。この曲では琴を省いた白木クインテットだけの演奏になる。

単なる和風ジャズの枠を超え、当時の世界のジャズシーンに対する「日本からの回答」とも言える歴史的一枚で、米国の日本贔屓のジャズ者には堪えられない内容ではないだろうか。和楽器を活用しているとはいえ、しっかりとジャズしているところは大いに評価しても良い。ただし、琴が参加する必然性については「疑問」に感じるのは否めない。そういう意味で、この盤は普遍的なジャズ盤では無く、企画盤であり実験作なんだろう。
 
 

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2026年4月14日 (火曜日)

ECMらしいテナー・トリオの記録

やっと春らしくなった、というか、今年の春は暖かい、というか、暑い(笑)。でも、部屋の中の雰囲気は、明らかに「春」で、少し窓を開けて、春風を入れながら聴くジャズは格別なものがある。そして、そんな「春」の昼下がりの雰囲気に合うジャズのひとつに「ECMジャズ」がある。そのECMジャズをカタログ番号順に記事にしてきて、今、「ECM Records Discography 1101-1199番」を走っている。

Paul Motian Trio『Dance』(写真左)。1977年9月の録音。ECMの1108)番。ちなみにパーソネルは、Charles Brackeen (ss, ts), David Izenzon (b), Paul Motian (ds, perc)。ECMの録音とはいえ、トリオの3人は米国出身。このトリオについては、ピアノレスのテナー、ベース、ドラムスのトリオ編成。リーダーはドラマーのポール・モチアンという異色作。

ハードバップ時代からの職人芸ドラマーのポール・モチアンがリーダー、サックス奏者のチャールズ・ブラッキーンとベーシストのデヴィッド・アイゼンゾンが参加してした、ピアノレス・トリオの演奏である。加えて、サックスのブラッキーンとベースのアイゼンゾンは、米国出身のジャズマンではあるが、マイナーな存在。そんな一種危うい編成のトリオ演奏なのだが、さすがはECM、なかなか内容の整った演奏内容に感心する。
 

Paul-motian-triodance

 
内容的には、限りなくフリーに近いモーダルな演奏がメインで時々フリー。メロディー・フレーズは、フロント管のチャールズ・ブラッキーンのサックスに依存するしか無いのだが、これがまずまず健闘している。凄まじくモーダルに展開する訳ではないのだが、欧州ジャズ的なクールな熱の入った、まずまずモーダルなサックスは合格点。そこに、アイゼンゾンのベースが、やはりモーダルに絡み、モチアンのドラムが演奏全体のトーンと展開をコントロールしている。

ピアノレスのテナー・トリオなんだが、ダレたり単調になったりするところが無いのは立派。3者3様のパフォーマンスを基に、適度なテンションを張ったインタープレイを展開しているところが、即興演奏をジャズとしている、ECMレーベルの音。モーダルなアイゼンゾンのベースは意外と良い。モーダル時々フリーな演奏を見事にコントロールするモチアンのドラムはさすがである。

僕がこのピアノレス・テナー・トリオの演奏を知ったのは数年前。トリオの3人とも米国出身なのに、出てくる音は欧州のECMジャズの音。ECMレーベルの録音についての音作りの個性、限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音と、ECMの総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーの強烈なプロデュース力を再認識する。ECMらしい、ピアノレス・テナー・トリオの演奏の記録である。
 
 

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2026年3月30日 (月曜日)

ブラジルとクロスーバーの融合

アイアート・モレイラは、ブラジル出身のドラマ−&パーカッション奏者。1941年8月5日生まれ。未だ現役である。ャズシンガーのフローラ・プリムと結婚しており、娘のダイアナ・モレイラも歌手。

1960年代後半にブラジルのアンサンブル、クアルテート・ノヴォのメンバーとして名を馳せる。その後、米国に移住し、マイルス・デイヴィス、リターン・トゥ・フォーエヴァー、ウェザー・リポート、サンタナらと、クロスオーバー&フュージョン・ジャズのシーンで活躍した。

Airto Moreira『Fingers』(写真左)。1973年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Airto Moreira (ds, perc, vo), Hugo Fattoruso (key, harmonica, vo), David Amaro (ac-g, el-g), Ringo Thielmann (b, vo), Jorge Osvaldo Fattoruso (ds, vo), Flora Purim (perc, vo)。CTIレーベルでのデビュー盤『Free』(1972年)に続く、CTIレーベルでの第2弾リーダー作になる。

内容的には、ブラジリアン・クロスオーバー・ジャズ。アルバムを覆う、躍動的でテンションの高い「サンバ・グルーヴ」が特徴的。「純ジャズ命」の硬派なジャズ者の方々からすると、全く認めたくない内容のブラジリアン・クロスオーバー。とても、ブラジル&南米色の強い、いかにもアイアートの音志向らしいアルバムである。人気のサンバ曲「Tombo In 7/4」のオリジナルの収録盤としてお馴染みの1枚である。
 

Airto-moreirafingers

 
キーボード、ベース、ドラム&パーカッションといった、リズム・セクションは、ウルグアイのフュージョン・グループOPAのメンバーを連れてきている。米国ジャズマンが演奏するブラジリアン・ミュージックより、違和感無く、自然に溶け込んでいる様に思わず納得する。サンバのリズムやフレーズの適合がとてもスムーズで違和感が無い。

当然、リズム&ビートは、リーダーのアイアート・モレイラがリードしていて、特にアイアートのドラミングは特徴的。ブラジル・ミュージック的ドラミングとでも形容しようか。じっくりと聴き耳を立てて聴いてみると、その個性とユニークさが良く判る。このアイアートのドラミングが、アルバム全体のブラジリアン・クロスーバーな雰囲気を牽引している。

ギターのデヴィッド・アマロは、米国カリフォルニア州出身のギタリストだが、まるでブラジル生まれのようにギターを演奏する希有な存在。ジャズ、ロック、ブラジル音楽を融合させたサウンドとスタイルを確立したギタリストの1人であり、この盤でも、アマロのギターが要所要所で効いている。

3曲目の「メリー・ゴーランド」とか5曲目の「パラナ」などは、ブラジリアン・クロスオーバー・ジャズの名演。ブラジリアン・ミュージックと、クロスオーバー・ジャズが良い方向で融合していて、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの好盤として、その内容は聴きどころ満載。とても、CTIレーベルらしいアルバムでもある。
 
 

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