2024年8月 9日 (金曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その32

今年の夏は特別に「暑い」。いわゆる酷暑日が連日続く。朝の9時を過ぎると、朝の日差しが灼熱化して、もう外出するのが憚られる。というか、外出すると「危険」な暑さ。これだけ暑いと「シビアなジャズ」を聴く気力がなくなってくる。フリー・ジャズなんてもってのほか(笑)。ハードバップだって、なんだか暑苦しい。

ということで、やっぱり、夏はボサノバ・ジャズ、である。ここバーチャル音楽喫茶「松和」では、以前「夏はボサノバ・ジャズ」のシリーズ記事を継続していた。2020年8月20日の「その31」まで記事化してきたが、当時、そこでネタ切れで休止した。が、この4年で記事ネタも再収集を完了。この酷暑ゆえ、今年、復活します。

The Dave Brubeck Quartet『Bossa Nove USA』(写真左)。1962年1, 10月の録音。ちなみにパーソネルは、Dave Brubeck (p), Paul Desmond (sax), Eugene Wright (b), Joe Morello (ds)。名盤『Time Out』を産んだ、ブルーベックの「最強のカルテット」によるボサノバ・ジャズ集である。

ブルーベック・カルテットは「リズム&ビートに強い」。名盤『Time Out』で変則リズムにいとも容易く適応する「最強のカルテット」である。ボサノバのビートに対応するのもお手のもの。全く違和感無く「ブルーベック・カルテットらしい」ボサノバのリズム&ビートを、モレロの切れ味良いドラムとライトの堅実にスイングするベースが供給する。
 

The-dave-brubeck-quartetbossa-nove-usa

 
そして、ブルーベック・カルテットは「作曲&アレンジが秀逸」。ボサノバの名曲のアレンジ、ブルーベックによるボサノバ曲、どちらも聴き味良く、良質のボサノバ・ジャズを提供してくれる。アレンジについては、ボサノバ曲における、硬質でスクエアにスイングするブルーベックのピアノと、流麗でウォームだが、しっかり芯の入ったデスモンドのアルト・サックスの使い分けが絶妙。

ブルーベック・カルテットは、ボサノバ曲の雰囲気に安易に流されず、安易にコピーせず、カルテット独自のボサノバのリズム&ビートの解釈と、ボサノバ曲の要素を「ジャズ」に取り込み、カルテットならではのボサノバ・ジャズに、きっちりアレンジし切っているところが素晴らしい。

1960年代、米国ジャズの中で、大量のボサノバ・ジャズ盤が作成されリリースされたが、その内容的には、このブルーベック・カルテットの『Bossa Nove USA』は、屈指の出来、と言える。

我が国では、ブルーベックのボサノバ盤というだけで、スルーされる傾向にあるが、ボサノバを安易になぞるのではない、あくまで、ボサノバの要素を取り込んで、上質のジャズ化を実現している、この『Bossa Nove USA』は、優れた硬派なボサノバ・ジャズ盤だと僕は思う。
 
 

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2022年12月23日 (金曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・18

ジャズを本格的に聴き始めた頃、この盤の存在が不思議だった。ジャズの評論からすると、概ね、ディブ・ブルーベックというピアニストは「イモ」なピアニストという評価だった。やれスイングしないだの、やれ歌心が無いだの、そして、酷いなあと思ったのは「下手くそ」や「イモ」という評価。ジャズ者初心者として、これは下品やなあ、と思いつつ、ブルーベックの諸作については、なかなか手が伸びなかった。

しかし、である。ジャズ初心者向けのジャズ盤紹介には、必ずと言って良いほど、この盤のタイトルが上がる。ハワイ出身の S・ニール・フジタがデザインを手掛けた、前衛的な模様の絵をあしらったジャケットが印象的で、ジャズ初心者向けのジャズ盤ならば、とジャズを聴き初めて2年目位にゲットしている。

Dave Brubeck Quartet『Time Out』(写真左)。1959年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as) Dave Brubeck (p) Gene Wright (b) Joe Morello (ds)。変則拍子ジャズの定盤中の定盤。ジャズで定番のビート、4ビートと2ビート以外を「Time Out(変拍子)」と呼んでいる訳だが、この盤は、その「変拍子の演奏ばかりを集めたアルバム」である。

1曲目の「Blue Rondo A La Turk(トルコ風ブルーロンド)」は「9分の8拍子」。スイングしないピアノとして、一部で忌み嫌われるブルーベックのピアノが印象的な旋律を奏でる。2+2+2+3拍子という刻み。これでは横揺れのスイングは出来ない。ちなみに、ブルーベック・カルテットでは、ブルーベック十八番の「スクエアなスイング」で、この「9分の8拍子の曲」をノリの良い演奏に仕上げている。
 

Time_out_1

 
3曲目のタイトル曲が、かの有名な「Take Five」。「5分の4拍子」の変拍子ジャズで、3+2拍子という刻み。これも横揺れスイングは無理。この「5分の4拍子」の曲も、ブルーベック・カルテットは「スクエアなスイング」で乗り切っている。ジョー・モレロのドラミングの巧みさ。それを支えるブルーベックのピアノのコンピング。

「変拍子の演奏ばかりを集めたアルバム」とは良く言ったもので、前述の1曲目が「9分の8拍子」、3曲目が「5分の4拍子」で完璧な変拍子。他の曲は「3分の4拍子」や「12分の8拍子」といった「3拍子」が主体の曲。5曲目の「Kathy's Waltz」は、6分の8拍子をインテンポで4分の4拍子に強引に被せている様で、これもある意味「変拍子」。

但し、「変拍子の演奏ばかりを集めたアルバム」だと難解になりがちなんだが、ブルーベック・カルテットはそうならない。ブルーベック・カルテットの演奏はどのアルバムも、どの演奏も「判り易い」。この「判り易さ」がブルーベック・カルテットの特徴であり、最大の長所。この『Time Out』がジャズ初心者向けのジャズ盤紹介に上がるのも、この「判り易さ」があるからだろう。

まず優れたアレンジがベースにあって、カルテットのメンバーの演奏能力とテクニックが高いこと。そこに、ブルーベックの理知的でスクエアなノリのピアノが演奏全体を統率し、ウォームで丸く力強いデスモントのアルト・サックスがフロントを担い、破綻の無い抑制の効いた、クールなインプロを展開する。これが「判り易さ」に繋がっている。ジャズにとって「判り易さ」は大切な要素。

しかし、「判り易い」からと言って、この変則拍子の「Take Five」が、1987年、アリナミンVのCMのバックで流れた時には驚きました。「ジャズはお洒落」なんていう、バブル期の産物なんでしょうが、よくこんな変則拍子のジャズ曲をCMに採用したもんです。今でも感心します。
 
 

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2022年12月19日 (月曜日)

「ブルーベック4」初期の傑作盤

Dave Brubeck(ディブ・ブルーベック)のリーダー作の「落ち穂拾い」をしている。

もともと、ブルーベックのピアノが好きなので、当ブログでは、ブルーベックのリーダー作はかなりの数、記事にしてアップしている。が、ブルーベックはキャリア上、リーダー作については「多作の人」。ブルーベックを語る上で、重要と思われる盤もスポッと抜けていたりして、もう少し、充実させる必要があるなあ、と感じた次第。

Dave Brubeck Quartet『Jazz At Oberlin』(写真左)。1953年3月2日、米国オハイオ州のOberlin Collegeでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dave Brubeck (p), Paul Desmond (as), Lloyd Davis (ds), Ron Crotty (b)。ブルーベック=デスモンドの「大学巡回ライヴ」の中の「とりわけ優れた」1枚である。

収録曲は全て「有名な」スタンダード曲。しかし、全曲、ブルーベックのアレンジが秀逸で、他の同一曲の演奏とは異なる、オリジナリティ溢れる「ブルーベック=デスモンド」ならではの個性的な演奏に仕上がっている。

スタンダード曲の持つ流麗なテーマ部は、はっきりとそれと判る、判り易いフレーズで印象付け。アドリブ展開では、ブルーベック独特のスクエアにスイングする、現代音楽の様な硬質タッチのピアノと、流麗に優しく語りかける様に、ソフト&メロウな、デスモンドのアルト・サックスとが対比する様な、独特な雰囲気を醸し出すインタープレイが見事。
 

Dave-brubeck-quartetjazz-at-oberlin

 
以降の「ブルーベック=デスモンド」のカルテット演奏の個性は、この時点で完全に確立されている。

横揺れにスイングすることは無く、ファンクネスは皆無。それでも、このカルテット演奏は「ノリ」が良い。そして、出てくるフレーズがキャッチャーで流麗。ブルーベックの硬質タッチのピアノのフレーズは実に捉えやすく、流麗で柔らかなデスモンドのアルト・サックスは聴いていて、とても心地良い。その2人のパフォーマンスを支えるリズム隊は堅実で破綻が無い。

つまりは「ブルーベック=デスモンド」のカルテット演奏は判り易く、親しみ易いのだ。聴き手にしっかり訴求する「ブルーベック=デスモンド」のジャズ。聴衆もそれをしっかり感じて、ノリノリで演奏を楽しんでいる様子が良く判る。

僕がジャズを聴き始めた1970年代後半、我が国におけるブルーベックの評価は甚だ悪かった。やれスイングしないだの、やれ歌心が無いだの、そして、酷いなあと思ったのは「下手くそ」という評価。

しかし、僕は「秘密の喫茶店」で、この「大学巡回ライヴ」の中の「とりわけ優れた」1枚を聴かせてもらって、ブルーベックのピアノのファンになった。ジャズを本格的に聴き始めた良い時期に、ブルーベックの「真の演奏」を聴くことが出来、ブルーベックのピアノを「聴き誤らなかった」のは幸いだった。やっぱり、ジャズは自分の耳で聴いて、自分の耳で判断するのが一番だ。
 
 

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2022年12月13日 (火曜日)

ブルーベックとデスモンドの融合

ジャズの楽器の中ではピアノが一番好きである。もともと、子供の頃、中学生まで、クラシック・ピアノを習っていたこともあって、ジャズ・ピアノは「聴く」ばかりでなく、及ばずながら「弾く」側の気持ちやテクニックを慮って、鑑賞することが出来る。

ジャズ・ピアニストはあまたあれど、お気に入りのピアニストは数十名。その中に「デイブ・ブルーベック」がいる。ブルーベックと言えば、僕がジャズを本格的に聴き始めた頃、評論家筋を中心に「スイングしないピアニスト」だの「ファンクネスが無い」だの「白人だからジャズじゃない」だのケチョンケチョンに書くものだから、本当に我が国では人気がイマイチだった。

しかし、21世紀、ネットの時代になって、我が国のジャズ者の方々の中にも、ブルーベックのピアノがお気に入り、という意見もちらほら見る様になった。米国ではデビュー当時から、人気のピアニストである。魅力が無ければ人気は出ない。やっと我が国でも、ブルーベックのピアノの本質を、個性を直接感じて評価するジャズ者の方々が出てきたということ。頼もしい限りである。

Dave Brubeck Quartet『Jazz at the College of the Pacific』(写真左)。1953年12月14日、カリフォルニア州ストックトン「College of the Pacific」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dave Brubeck (p), Paul Desmond (as), Ron Crotty (b), Joe Dodge (ds)。ブルーベック・カルテットの「大学巡回ライヴ」の音源のひとつ。

ブルーベックの「大学巡回ライヴ」には、『Jazz at Oberlin』をはじめとして名盤揃い。この「College of the Pacific」でのライヴも、ちょっと音質に難があるが、同様に内容は充実している。ブルーベックの硬質のスクエアにスイングするピアノ、暖かくてクールなアルト・サックスの個性は、この1953年のライヴで完成しているのが判る。
 

Dave-brubeck-quartetjazz-at-the-college-

 
ブルーベックのピアノを聴いていると、もともとブルーベックのピアノはスイングしようとはしていない。そもそもオフビートでは無い、ブルージーなキーを多く使わない、クラシックのテクニックをアレンジに反映する。

なるほど、これでは、スイング・ジャズ時代から培われた「横揺れスイング」をしようにも出来ない。しかし、ビートにはしっかり乗っている。リズムはスクエアに乗っている。「スクエアなグルーヴ感」。「スクエアにスイングする」のがブルーベックのピアノであり、ブルーベックの専売特許なのだ。

そんな硬質でスクエアのスイングするピアノに、全く正反対の個性で相対するのが、デスモンドのアルト・サックス。デスモンドのアルト・サックスは「丸い」。暖かく「丸い」。そして、よくよく聴くと、ブルーベックの「スクエアにスイングする」ピアノに乗って、デスモンドのアルト・サックスは「丸くスクエアにスイング」している。

このブルーベックのピアノとデスモンドのアルト・サックスの「正反対の個性の融合」こそが、このカルテットの「肝」。その「正反対の個性の融合」が、このライブ盤にしっかりと記録されている。

聴衆もノリノリ。このブルーベック初期の時代に既に人気は高かったことが窺い知れる。「スクエアなスイング感」が不思議と心地良い。なにも「横揺れスイング」だけが全てでは無い。
 
 

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2022年8月13日 (土曜日)

『Time Out』のアウトテイク集

僕がジャズを聴き始めた頃、今から50年以上になるが、デイブ・ブルーベックというジャズ・ピアニストは、米国本国では人気のピアニストなんだが、我が国では人気がイマイチだった。

当時のジャズ評論家の方々がこぞって「スイングしないピアニスト」だの「ファンクネスが無い」だの「白人だからジャズじゃない」だのケチョンケチョンに書くものだから、本当に我が国では人気がイマイチだった。気の毒なことであった。

不思議なのは、デイブ・ブルーベック・カルテットの『Time Out』というアルバムだけが、一般のジャズ者の方々から人気があって、それは、このアルバムに収録されている「Take Five」という「4分の5拍子」という珍しい変則拍子で構成された曲の人気が抜群だからだろう。この『Time Out』というアルバムは、変則拍子を採用した楽曲中心に構成された名盤なのだ。

Dave Brubeck Quartet『Time Outtakes』(写真左)。2021年12月のリリース。ちなみにパーソネルは、Dave Brubeck (p), Paul Desmond (as), Eugene Wright (b), Joe Morello (ds)。変則拍子の名盤『Time Out』と同一メンバー。

昨年、デイヴ・ブルーベックの生誕100年を記念して、この『Time Out』のアウトテイク集がリリースされた。非常に唐突なリリースなのだが、その触れ込みが、名曲「Take Five」の初期テイクを収録、とある。僕にとっては、デイブ・ブルーベックがお気に入りピアニストの1人なので、これはゲットしなければ、である。

1曲目の「Blue Rondo à la Turk」から、「Strange Meadow Lark」「Take Five」「Three to Get Ready」「Kathy's Waltz」の5曲が、正式盤『Time Out』の同一曲のテイク違い。これが実に興味深い。特に、有名な変則拍子の楽曲の別テイクは聴いていて面白いことこの上無い。
 

Dave-brubeck-quartettime-outtakes

 
触れ込みどおり、有名曲「Take Five」の初期テイクが一番、興味深い。この変則拍子の名曲のリズムの鍵を握っているのが、ジョー・モレロのドラミングなんだが、この初期テイクでのモレロのドラミングが凄い。出だしは「手探り」状態で、恐る恐るビートを刻むが、ブルーベックのピアノが入って来る頃には、キッチリと「4分の5拍子」を叩き出している。

そして、途中出てくるモレロのソロが絶品。「Take Five」のマスター・テイクとは全く違うが、マスター・テイクのソロの上を行く内容には驚いた。この初期テイクのモレロのドラミングがあまりに鋭いので、マスター・テイクでは「デグレード」した様だ。

それもそのはず、初期テイクでは、この「4分の5拍子」に、デスモンドのアルトはかなり苦戦している。逆に、ユージン・ライトのベースは、変則拍子に十分適用している。変則拍子のベースラインを弾くのに、あまり苦にはならないようだ。

リーダーのブルーベックのピアノはさすがで、苦も無く「4分の5拍子」を叩き出している。アドリブも「4分の5拍子」にしっかりと乗っていて、ブルーベックのテクニックの確かさと柔軟さがここに現れている。そして、彼の名誉の為に、改めて言いたいが、ブルーベックのピアノは「4分の5拍子」に乗って、魅力的にスイングしている。

他のアウトテイクについても、モレロの変則拍子ドラミングの鋭さが突出している。次いで、ブルーベックの変則拍子に乗った、スインギーなピアノ。そして、変則拍子に揺るがず、堅実なベースラインを刻むライト。逆にデスモンドのアルトは変則拍子に大苦戦。変則拍子のアドリブはかなり勝手が違うようだ。

そんな『Time Out』の収録曲の初期テイクを聴くと、あの変則拍子の名盤『Time Out』が一朝一夕に出来たものでは無い、ということが良く判る。ブルーベックのフォロワーであれば、絶対に聴くべきアウトテイク集である。また、名盤『Time Out』を知らなくても、単体でも十分に楽しめる、内容充実のアウトテイク集である。
 
 

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2022年5月26日 (木曜日)

60年代「ブルーベック3」の快作

ジャズには多くの「発掘音源」や「未発表音源」がある。これはもう1970年代辺りから、有名盤のLPリイシュー時に「テイク違い」で収録されたり、CDでのリイシュー時には「ボーナス・トラック」として収録されたり、はたまた、未発表音源を1つのアルバムとしてリリースしたり、とにかく沢山の「発掘音源」や「未発表音源」が出回っている。

ただ、未発表音源を1つのアルバムとしてリリースする場合は、そのリーダーのジャズマンの「人気」が重要みたいで(つまり売れるかどうか、やね)、とにかく良く出るのは、ジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンス、そして、マイルス・デイヴィス。この3人については、正式なレーベルからのリリースである「正式盤」として、未発表音源が良く出てきた。

『Dave Brubeck Trio : Live from Vienna 1967』(写真左)。1967年11月12日、ウィーンでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dave Brubeck (p), Gene Wright (b), Joe Morello (ds)。

「スクエアに揺れる」変則スイング・ピアニスト、ディヴ・ブルーベックの正式な「発掘音源」。ブルーベックの正式な「発掘音源」は珍しい。が、米国、欧州では今でも人気があるピアニストなので、需要はあるのだろう。

1967年のこの時期のブルーベックは、今回のトリオに、アルト・サックスのポール・デスモントを加えた「最高のカルテット」で安定したパフォーマンスを発揮していた時期。資料によれば、参加予定だったポール・デズモンドが飛行機に乗り遅れるというアクシデントにより急遽、ピアノ・トリオ編成で公演することになったらしい。
 

Live-from-vienna-1967_dave-brubeck

 
ブルーベックのカルテットは、流麗でリリカルなデスモントのアルト・サックスがあるから評価出来る、なんていう暴論がある。今まで、デスモント抜きのトリオ編成での音源がほとんど出てこなかったので、何とも言えなかったが、このトリオ演奏を聴くと、このトリオの演奏レベルの高さ、トリオの個性の強烈さが浮き出てきて、このトリオだけでも成立する、素晴らしいトリオ演奏である。

加えて、ブルーベックはスイングしない、と評価の低い我が国のジャズ・シーンであるが、どうして、このライヴ盤を聴けば、ブルーベックは十分にスイングしている。独特の「間」と「スクエアに揺れる」スイングである。現代音楽の様な、硬質でエッジの立ったタッチが紡ぎ出すフレーズは、プログレッシヴであり、エモーショナル。ブルーベックは、オフ・ビートに乗って、スクエアに硬質にスイングする。

ジーン・ライトのベース、ジョー・モレロのドラムのリズム隊も、オフ・ビートに乗って、スクエアに硬質にスイングするブルーベックを好サポートする。時に独特の「間」に対応し、時に変則拍子を繰り出して、ブルーベックのピアノを鼓舞し、サポートする。

独特の「間」を活かしつつ、スクエアに硬質にスイングするブルーベックは、変則拍子に柔軟に対応する。現代音楽、現代クラシックに通じる様なピアノの弾きっぷり。この前衛性、この強烈な個性が、米国や欧州のジャズ・シーンで受ける所以だろう。

しかし、デズモンドが飛行機に乗り遅れるというアクシデントによって、ブルーベック、モレロ、ライトのトリオ演奏の素晴らしさが確認できたのだから、何が幸いするか判らない。とにかく個性溢れる、素晴らしいトリオ演奏である。こういう「発掘音源」は大歓迎である。
 
 

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2021年2月21日 (日曜日)

ブルーベック者、溜飲を下げる

ディブ・ブルーベック(Dave Brubeck)は、ジャズ史上にその名が残るジャズ・ピアノのレジェンドの1人である。しかし、僕がジャズを聴き始めた1970年代後半、我が国におけるブルーベックの評価は甚だ悪かった。やれスイングしないだの、やれ歌心が無いだの、そして、酷いなあと思ったのは「下手くそ」という評論。これはあまりに失礼ではないか。

そんな酷い評論がまかり通った1970年代、そして1980年代、純ジャズ復古がなって、メインストリーム・ジャズが、ジャズの真ん中に戻ってきたのだが、ブルーベックの評価は以前のまま。再評価されることなく、現在に至っている。ちなみに米国ジャズでのブルーベックの評価は高く、亡くなった後も、不世出の音楽家の1人としてリスペクトされている。

Dave Brubeck『Lullabies』 (写真左)。2011年の録音。ちなみにパーソネルは、Dave Brubeck (p)。ブルーベックがソロ・ピアノで孫のために収録した、ブルーベックの生涯最後のスタジオ録音とのこと。パッキパキ、前衛的にスクエアにスイングするブルーベックが「子守唄」集をソロ・ピアノでやるとは。興味津々のアルバムである。
 
 
Lullabies_dave-brubeck    
 
 
昨年の2020年は、ブルーベックの生誕100年の記念の年。2012年12月、ブルーベックが亡くなってから8年が経過した2020年12月にリリースされたのが、生涯最後のレコ―ディングとなったという、このソロ・ピアノ盤である。当時、孫への贈り物として録音されたこの盤。数々の子守唄を題材に、ブルーベックの特徴的な即興演奏てんこ盛り。

ジャズ・スタンダードはもちろん、クラシック、ディズニー、トラッド、そしてオリジナル曲まで様々な楽曲を取り上げ、アレンジはシンプルの一言、パッキパキ、前衛的にスクエアにスイングする、味のあるソロ・ピアノで、数々の子守唄を唄い上げていく。テクニックも上々、歌心溢れ、彼の独特の個性である「スクエアなスイング」が耳に心地良い。

1曲目の「ブラームスの子守唄」の優しい心安らぐフレーズ、その雰囲気そのままに、全15曲のショートピースが続く。奇をてらわない真摯で誠実な、創造力溢れる弾きっぷり。このソロ・ピアノを聴いていて、我が国でのブルーベックのピアノに対する厳しい批評がいかに的外れであったかが良く判る。ブルーベック者として溜飲の下がるソロ・ピアノ盤である。
 
 
 

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2017年12月24日 (日曜日)

クリスマス企画のジャズを流す

今年もクリスマス・イヴである。我が家では毎年、クリスマスについては、過度な反応はしない。せいぜい、小さなブッシュドノエルと出来の良いシュトレンを手に入れて、ちびちび食するくらいである。音楽もあまりクリスマスを意識はしない。それでも、クリスマスの1週間前からは、ちょっとだけ、クリスマス企画のジャズを流して楽しんだりする。

今年の選盤の中で、これは良いなあ、と感心したのがこのアルバム。『A Dave Brubeck Christmas』(写真左)。変則拍子の名曲「テイク・ファイブ」の作者として演者として有名なジャズピアニスト、デイヴ・ブルーベックが1996年、当時76才の時に発表したソロ・ピアノによるクリスマス曲集である。

我が国では長年、ブルーベックは「スイングしない凡なピアニスト」とされてきた。しかし、である。僕は学生時代、今を去ること30余年前から、デイブ・ブルーベックを聴いてきたが、スイングしないなんてとんでもない。ブルーベックは横にスイングしない。ブルーベックはスクエアにスイングする。それを感じることが出来ないと、ブルーベックのピアノを楽しむ事は出来ない。
 

A_dave_brubeck_christmas

 
このソロ・ピアノ集は、ブルーベックのピアノが、前へ前へ出ること無く、自己主張が希薄で厳かなプレイに終始しているので、強く感じることは無いが、やっぱりスクエアにスイングしている。ウトウトしながら聴いていても、明らかにブルーベックな雰囲気が漂ったピアノ・ソロである。

加えて、クリスマス・ソングに相応しい、落ち着いた荘厳さを底にしっかりと偲ばせた、ちょっと小粋なアレンジを施されていて、聴き心地が良く、飽きが来ない。ジングルベルをテーマにした1曲目「"Homecoming" Jingle Bells」とラス前の「"Farewell" Jingle Bells」では、クリスマス休暇で故郷へ帰る「ワクワクとした気持ち」と、休暇が終わって故郷を後にする時の「心寂しい気持ち」を表現しており、そんなアレンジのセンスも抜群である。

クラシック・ピアノの経験を持つブルーベックならではの、クラシック風のテーマ提示と、最大の個性であるスクエアなスイング感溢れる、厳かな雰囲気を湛えたアドリブ部の対比が素敵な演奏の数々。今年のクリスマス・シーズンは、このブルーベックのソロ・ピアノがヘビー・ローテーション。それでは皆さん、メリー・クリスマス (^_^)v。

 
 

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2017年8月 6日 (日曜日)

意外とこのライブ盤が好きです

台風が近づいている。台風5号は、宮崎から、明日夕方には近畿直撃の予想。進路に当たる地域の方々は気をつけて下さいね。今回、関東地方、特にここ千葉県北西部地方からは台風の予想進路は離れているが、この辺りは台風の進路によく当たる地域で、台風の威力の怖さは身を持って知っている。ゆめゆめ甘くみることなかれ、である。

さて、今日の一枚は、ディブ・ブルーベックものをもう一枚。1950年代ハードバップ期のライブ盤。『Dave Brubeck and Jay and Kai : Live at the Newport Jazz Festival 1956』(写真)。1956年7月6日、ニューポート・ジャズフェスでのライブ録音。ブルーベック・カルテットの演奏と、ジェイ&カイの演奏とのカップリング。ブルーベック・カルテットの演奏は前半の4曲。

ブルーベック・カルテットのパーソネルは、Dave Brubeck (p), Paul Desmond (as), Norman Bates (b), Joe Dodge (ds)。盟友アルトのデスモンド迎えて、カルテットを立ち上げたのが1951年。それから、約5年が経過して、人気バンドとなったブルーベック・カルテットのライブ演奏が聴ける。
 

Dave_brubeck_and_jay_and_kai_live_a

 
あまり我が国のジャズ盤紹介本に挙がらないライブ盤なんだが、ブルーベック・カルテット初期の意外と硬派なハードバップ演奏が聴ける。ブルーベック・カルテットの演奏というと、デスモンドの流麗で優しいアルトの音がメインの流麗な演奏のイメージがあるが、もともとブルーベックのピアノがスクエアにスイングする骨太なものなんで、意外とアブストラクトで硬派な純ジャズ風に展開する。

特に、後半のジェイ&カイの演奏が、トロンボーンがメインの、明らかに流麗で優しいフレーズ満載のハードバップな演奏なんで、このジェイ&カイの演奏の対比からしても、このライブ盤でのブルーベック・カルテットは、当時のジャズとしては意外とアブストラクトで硬派な純ジャズ風。そんなイメージが強調されて、ブルーベック・カルテットの本質を理解するのに丁度良い塩梅なのだ。

1954年から始まったニューポート・ジャズフェス。それから2年後のまだ始まったばかりのジャズフェスでのライブ録音。聴衆の雰囲気も良好で、当時の良きジャズの環境と演奏をダイレクトに感じることが出来る。いわゆる「聴いて楽しむ為の鑑賞としてのジャズ」の良きサンプルがこのライブ盤に詰まっている。僕、意外とこのライブ盤が好きです。

 
 

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2017年8月 5日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・109

昨日の夕方から空気が入れ替わったのか、夜の間に降った雨が湿気をしっかり残して、朝から思いっきり蒸し暑い千葉県北西部地方。これだけ蒸し暑いと身体に堪える。というか、今の身体は以前の様な耐性が無く、気温の変化や湿度の高さについては「かなり辛い」。ちょっと伏せりながら、気を紛らしたくてジャズを聴いたりしている。

Dave Brubeck Quartet『Paper Moon』(写真左)。1981年9月の録音。ちなみにパーソナルは、Dave Brubeck (p), Jerry Bergonzi (ts), Chris Brubeck (b), Randy Jones (ds)。ディブ・ブルーベック・カルテットというと、アルトのポール・デスモンドが定番なんだが、ここでは、テナーにジェリー・バーガンジを迎えたカルテットで吹き込んだアルバムになる。

アルトのデスモンドは、柔らかで優しい音色の流麗なフレーズが個性のアルトなので、ブルーベックのスクエアに跳ねるようにカクカクとスイングするピアノとの対比が独特で素敵な雰囲気を醸し出していた。が、ここでのテナーのバーガンジはコルトレーン・スタイル(フリー・ジャズに走る前の)のテナーで、硬派で実直なフレーズが特徴。これって、ブルーベックのピアノにあうんかいな、とちょっと不安になる。
 

Paper_moon

 
冒頭の「Music, Maestro, Please!」を聴けば、そんな不安は杞憂だったことが判る。コルトレーン・スタイルの硬派で実直なテナーが、ブルーベックのスクエアに跳ねるようにカクカクとスイングするピアノに違和感無く、スッポリと収まる。デスモンドのアルトとは「正反対の対比の妙」だったが、バーガンジのテナーとは「融合と協調の妙」である。雰囲気の似通ったピアノとテナーの競演が見事である。

こうやって聴いていると、我が国でのブルーベックに対する酷評、スイングしないピアニストだとか、そもそもジャズ・ピアノじゃない、とか結構酷いこと言われてるんだけど、それらが如何に「お門違い」の評価なのかが良く判る。ブルーベックは伴奏上手だし、ブルーベックのピアノは、彼独特のスイング感があって、やはり素敵だ。スクエアに跳ねるようにカクカクするスイング感。

この盤、選曲がふるっていて、なかなか小粋なスタンダード曲が選曲されていて、これが実に良い。ブルーベックについては、何時の時代にも言えることなんだが、アレンジがとても良好。コンコード・レーベルからのリリースで、独特の録音の雰囲気とも相まって、このカルテットの醸し出す心地良いテンションと共に、聴き応えのあるスタンダード集になっています。好盤です。

 
 

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