ジョージの考えるAOR・第1弾
『Extra Texture(Read All About It)』、邦題は、なんと『ジョージ・ハリソン帝国』(写真左)。凄い途方も無い邦題である。この途方も無い邦題のお陰で、当時、高校2年生だった僕は、このアルバムを「駄作」と決めつけ、このアルバムを聴いたのは、それから4年後、大学2回生になってからである。なんと罪作りな邦題であることか(笑)。
さて、この『ジョージ・ハリソン帝国』、米国では1975年9月22日にリリース。日本では10月20日に東芝EMIからリリースされた。当時は米国で発売されてから、1〜2ヶ月遅れて、日本でリリースされていた。日米同時リリースとなるのは、もっと後のこと。
このアルバムは、先の理由により、リリース当時、リアルタイムでは聴いていない。まあ、この邦題と、このよく見れば凝ってはいるが、ぱっと見、地味なデザインのジャケットからすると、触手が伸びないのは仕方の無いこと。僕が初めてこのアルバムを聴いたのは、1979年の秋である。
当時、米国ポップス界は「AORブーム」。日本では「アダルト・オリエンテッド・ロック」と解釈され、いわゆる「大人の粋でお洒落なロック」として、やはり大ブームとなっていた。そんな「AORブーム」の最中に、この『ジョージ・ハリソン帝国』である。これがまあ、違和感が無いというか、しっくり来るというか、初めて聴いた時の感想が、「このジョージのアルバムって、AORやん」。
しかし、この『ジョージ・ハリソン帝国』のリリースは1975年。AORの先取りしていたことになる。これは、前作『Dark Horse』に比べて、アレンジが格段に重厚になったことによる。特にシンセの導入が良い効果を醸し出しており、このシンセやキーボードを駆使していたのが、後に、AORの敏腕プロデューサーとなる、デヴィッド・フォスター。彼の参加が、このアルバムにとってはラッキーだった。
しかし、AORフレイバーが好影響を与えているとは言え、冒頭の「You」以降、アルバム全体を覆う雰囲気は、かなり内省的。というか、ちょっと重苦しく暗い。バラード調の曲やミッドテンポでじっくりと歌い込む曲が殆どなので、このアルバム全体を覆う雰囲気は、実に惜しい。
とにかく、このアルバムに収録されたジョージの曲は全て出来が良い。しかも、AORな雰囲気にしっくりくる。セルフ・プロデュースでは無く、他の敏腕プロデューサーに託したら、もっと聴き応えのあるアルバムに仕上がっていたと確信できるだけに実に惜しい。名盤になり損ねた、実に惜しいアルバムである。
でも、アルバム全体の出来は、前作『Dark Horse』を遙かに凌ぐ出来で、聴き応えは十分にある。ジョージの考えるAOR盤として、僕は重宝している。
ちなみに、アルバムの原題「Extra Texture(Read All About It)」は、新聞の号外(extra)を配る際の決まり文句(Extra! Extra! Read All About It)のもじりとのこと。
加えて、ジョージが、EMI・アップルに残した最後の作品で、オリジナル盤のレーベルには、芯だけになったリンゴの絵が描かれていた(写真右)とのこと。う〜ん、ジョージってシニカルやなあ。
しかも、このアルバムの邦題『ジョージ・ハリソン帝国』は、相当に趣味が悪く、酷い邦題だと思うんですが、収録されたそれぞれの曲にも、相当に趣味が悪く、酷い邦題が付けられていて閉口します。まあ、一度、ネットで確認してみて下さい。
大震災から2年2ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
最近のコメント