ジャパン・ミーツ・ジャズの一枚
このアルバムの副題は「ジャパン・ミーツ・ジャズ」で、独のMPS(SABA)レコードの「ジャズ・ミーツ・ザ・ワールド」シリーズの一作である。いわゆる「和洋折衷ジャズ’の好盤。3人の琴奏者(白根きぬ子、野坂恵子、宮本幸子)を加え、日本の伝統楽器である「琴」を本格的にジャズへ取り入れた斬新な構成が特徴。
白木秀雄『Sakura, Sakura』(写真左)。1965年11月1日、ベルリンでの録音。MPS(SABA)レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Hideo Shiraki (ds), Terumasa Hino (tp), Takeru Muraoka (ts, fl), Yuzuru Sera (p), Hachiro Kurita (b), Keiko Nosaka (koto : A1, A3, B1, B3), Kinuko Shurane (koto ; 曲: A1, A3, B1, B3), Sachiko Miyamoto (b-koto : 曲: A1, B1, B3)。
英語表記では「Hideo Shiraki Quintet + 3 Koto Girls」とある。フロント2管に、日野皓正のトランペット、村岡 建のテナー&フルート、リズム隊に、世良譲のピアノ、栗田八郎のベース、白木秀雄のドラム。この白木がリーダーのクインテットに、琴奏者が3人入った、オクテット編成。「琴」が前面的に入った、わが国のジャズ独特の、和楽器「琴」と洋楽器の融合、メインストリーム志向のクロスオーバー・ジャズである。
琴を単なる「和の飾り」としてではなく、モダン・ジャズのアンサンブルに深く組み込んでいて、「琴」をジャズ楽器の一つとして扱ったアレンジは特筆に値する。: 琴の「間(ま)」を活かしつつ、4ビートの上で琴が即興演奏を繰り広げる展開は、当時のジャズ界でも類を見ない実験性を保っている。八城一夫による編曲が素晴らしい。良く書けている。フルートを尺八の代替として、似せた音色で吹くのもユニーク。
演奏の基本は「モード・ジャズ」。冒頭の「さくらさくら」を聴けば良く判る。琴のアルペジオから始まり、次第に熱を帯びるモーダルな展開。2曲目の「よさこい節」は、日本の土着的なリズムをジャズのグルーヴに上手く変換。4曲目の白木オリジナルの「祭りの幻想」は新アレンジ。日本の祭囃子のリズムとジャズの融合がユニーク。そして、5曲目「Alone, Alone and Alone」は日野のオリジナル曲。この曲では琴を省いた白木クインテットだけの演奏になる。
単なる和風ジャズの枠を超え、当時の世界のジャズシーンに対する「日本からの回答」とも言える歴史的一枚で、米国の日本贔屓のジャズ者には堪えられない内容ではないだろうか。和楽器を活用しているとはいえ、しっかりとジャズしているところは大いに評価しても良い。ただし、琴が参加する必然性については「疑問」に感じるのは否めない。そういう意味で、この盤は普遍的なジャズ盤では無く、企画盤であり実験作なんだろう。
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