2025年11月13日 (木曜日)

スピリチュアルな ”自画像” 盤

「ジャズ・ピアニスト、山下洋輔、年内で演奏活動一時休止 休養へ」のニュースが流れて、思わず「えっ」。最近、山下洋輔さんの話題を聞かないなあ、元気されてるのかなあ、とちょっと心配していたんだが、案の定である。報告文の最後に「長年にわたる山下洋輔へのご注目・応援、ありがとうございました」と書かれているのが気になるが。

ということで、我が国のフリー&スピリチュアル・ジャズを聴かねば、という想いに駆られ、昨日から、我が国のフリー&スピリチュアル・ジャズの名盤&好盤を選盤し、順番に聴き直している最中である。

鈴木勲『自画像』(写真左)。1980年の作品。Paddle Wheelからのリリース。ちなみにパーソネルは、鈴木勲(b, 他)。アルバムの宣伝文句を借りると「ウッドベース、ハモンドオルガン、ヴォコーダー、大正琴、二胡といった多種多様な楽器と自身のボーカルを、多重録音を駆使して重ね合わせ、たった一人の手で作り上げられた作品」。当時として、相当な「異色作、問題作」であろう。

特注のピッコロ・ベース、ウッド・ベース、ハモンド・オルガン、スピネット、ボコーダー、スキャット、大正琴、中国の二胡(胡弓)、風の音などを一人で多重録音した、フリー&スピリチュアル・ジャズな内容の秀作。多重録音として、実際の録音時には苦労しただろう、と思われる、多重録音でありながら、ジャズの「キモ」である、即興演奏な雰囲気を損なっていないところが凄い。
 
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20種類以上の楽器を繰って多重録音.歌までうたう、しかも、その内容は、当時として最先端の「フリー&スピリチュアル・ジャズ」。ジャズ者の間で賛否両論渦巻いたのは想像に難くない。当時の「ジャズの範疇」から大きく外れていたのだから仕方の無いことだが、今の耳で聴くと、意外と内容的に整った、創造性溢れる、コンテンポラリーな「スピリチュアル・ジャズ」に聴こえるから不思議だ。

当時のジャズの語法を全く無視した、官能的で感覚的で印象的な、多重録音による即興演奏。その響きはまさに「スピリチュアル」。フリーな展開もあるにはあるが、さすがに多重録音なので、完全フリーな展開は抑制されている。その分、ボコーダーやスキャット、そして、ハモンドオルガンを活用して、スピリチュアルな音要素を増強している。これが巧妙。これが、この異色作を「和スピリチュアル」な名盤たらしめている。

決して、アブストラクトでも、ストレンジでも無い。しっかりと、理路整然とフリー&スピリチュアル・ジャズしている。とにかく、様々な楽器の使い方が上手い。そして、その様々な楽器をしっかり統率し、一体とさせているのが、鈴木勲のベース。超弩級の重低音を鳴り響かせながら、スピリチュアルなリズム&ビートを弾き出している、

作曲、演奏のみならずジャケットアートワーク、ライナーノーツに至るまでを自身で手がけた、名実共に「自画像」な作品。ジャズというジャンルの中で、米国にも欧州にも無い、唯一無二な音世界。我が国のジャズ・シーン発信の、フリー&スピリチュアル・ジャズの名盤として良いと思う。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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2025年11月12日 (水曜日)

T-SQUARE ”TURN THE PAGE!”

T-SQUAREは、1976年11月に結成。1978年アルバム『Lucky Summer Lady』を発表し本格的に活動を開始。以降、一昨年リリースの「VENTO DE FELICIDADE 〜しあわせの風〜」までで50枚のアルバムをリリース。和クロスオーバー&フュージョン・バンドの草分けであり、代表格の一つであり、レジェンドでもある。ファーストアルバムのリリース以降、47年間、バンド・サウンドを都度、深化させているのは「見事」と言うほか無い。

T-SQUARE『TURN THE PAGE!』(写真左)。2025年の作品。ちなみにパーソネルは、伊東たけし (as, NuRAD), 亀山修哉 (g), 長谷川雄一 (p, key), 田中晋吾 (b), 坂東慧 (ds)。T-SQUAREの2年振り、51枚目のアルバム。 2025年6月4日にリリース。プロデューサーとして元キーボーディストの河野啓三が参加している。

タイトルの「TURN THE PAGE!」は「過去のことを整理して新たに始める」という意。この盤には、従来の「T-SQUARE」サウンドがてんこ盛り。冒頭の「君と歩こう」の出だしの数フレーズだけで、従来の「T-SQUARE」色の音と確信する。それほどまでに、個性的で、他が真似出来ない、真似しない、「T-SQUARE」固有の、唯一無二のサウンド。
 

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リズム&ビートのテンポも「T-SQUARE」らしい、ミッド・テンポが中心。音の傾向は、クロスオーバー&フュージョン。どちらかというと、ファンクネス皆無、ロック寄りのクロスオーバー&フュージョン。これも「T-SQUARE」らしい音傾向。特にキーボード・ワーク、そして、ベース&ドラムのリズム隊は「ロック志向のサウンド」がメイン。しかし、フロント楽器、サックス+ウィンド・シンセ、そして、エレギについては、クロスオーバー&フュージョン・ジャズ志向。これが、従来の「T-SQUARE」らしさ。

冒頭の「君と歩こう」は、新生T-SQUARE の、イントロで5人それぞれ登場という趣向の「名刺代わり」の1曲。2曲目の「Marmalade!」の爽快感はT-SQUAREならではのもの。3曲目の「琥珀色の時」は泣きのサックス大活躍のバラードだが、ファンクネスは皆無。5曲目の「Front Runner」は、明らかにロックからジャズへのアプローチ。ロック志向のクロスオーバー・サウンド。7曲目の「ULTRA」では、T-SQUARE のテクニックの高さを再認識等々、全曲、T-SQUAREらしさが満載。

メンバー編成については、本作から、ベースに田中晋吾、キーボードに長谷川雄一、ギターに亀山修哉が正式メンバーとして加入。バンド形態及び5人体制が復活。使用楽器については、伊藤たけしが、30年以上にわたってウィンド・シンセにEWIを使用していたが、このアルバムから、NuRAD(ニューラッド)を使用。バンドとしての「T-SQUARE」が、再び充実し始めている。目新しい何かがある訳では無いが、T-SQUARE の更なる深化がビンビンに感じられる秀作である。
 
 

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2025年11月 9日 (日曜日)

鈴木茂”White Heat”を久々に聴く

鈴木茂(すずき・しげる)。日本のギタリスト・レジェンドの1人。はっぴいえんど、ティン・パン・アレーなどのメンバーとしてギターを担当し、1975年には米国のミュージシャンを起用、ロスで録音した初ソロ盤『Band Wagon』dでソロ・デビュー。ソロ・デビュー当初から、ボーカル入り(これがあまり、でねえ・笑)のAOR志向の和フュージョンを追求していたが、1979年、このアルバムで、オール・インストルメンタルの「和フュージョン・ジャズ」なアルバムをリリースして、我々を驚かせた。

鈴木茂『White Heat』(写真左)。1979年の作品。ちなみにパーソネルは、鈴木茂 (g), 村岡建, 砂原俊三, Jake H.Concepcion (sax), 数原晋 (tp), 新井英治(tb), 坂本龍一, 佐藤準, 矢野顕子 (key), 小原礼, 後藤次利 (b), Robert Brill, 高橋幸宏 (ds), 浜口茂外也 (perc, fl), ペッカー (perc), ラリー寿永 (perc), Salita Escobar (vo)、バックに、The Ohno Strings (strings) が入る。ビクター期における、唯一のインストルメンタルを中心とした作品になる。

当時、自身でも「ギターのインストゥメンタルやってると煮詰まってくる」と語っていたのだが、この盤はインストルメンタルを中心とした作品。明らかに、大流行していて、フュージョン・ジャズの「ギター・フュージョン」をやって、一発当てようと思ったのか、どうなのか。とにかく、収録曲の質も良く、和フュージョン独特のアレンジも良好。鈴木茂のギターも大活躍とあって、このインストルメンタルを中心とした作品、なかなかの「和フュージョン」の秀作に仕上がっている。
 

White-heat 

 
冒頭「Hot Blooded」のギターの前奏から、このインストは米国系では無いと感じる。ファンクネス皆無な乾いたオフビート、独特なエコーとサスティーンが効いたギターの音色。米国にはない、フュージョン・テイストのインストで、しかも録音が良い。これは「和フュージョン」それも、1970年代後半から1980年代初頭の音作りと当たりを付ける。エレギの音色が独特で個性全開。これは鈴木茂、と確信する。

全体の音作りは、当時のソフト&メロウなフュージョン・サウンド。耳当たり、聴き心地の良い、上質のイージーリスニング志向のソフト&メロウなフュージョン・サウンド。フレーズがどこか米国フュージョンのイメージを借りてきている雰囲気なので、今の耳にはちょっと古さを感じるのが残念。それでも、鈴木茂のエレギは鳴りに鳴っているから、これだけでも、この盤は「買い」だろう。

バックのミュージシャンも、曲者優秀どころがズラリ。特に個性の強い、高橋幸宏のドラム、坂本龍一のキーボード、小原礼、後藤次利のベースは印象的に響く。1曲1曲の収録時間が4分前後、フェードアウトの多用が玉に瑕だが、それ以外は、水準以上の演奏で、和フュージョンの秀作の1枚、として問題無い、聴き甲斐のある、和フュージョンな1枚である。
 
 

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2025年11月 6日 (木曜日)

ジャス喫茶で流したい・305

僕が本格的にジャズを聴き始めたのが1978年。そして、その翌年、このアルバムを聴いた時、その時点での、その時代での日本のジャズは、世界のジャズに比肩するレベルにあることを初めて確信した。我が国の音楽は、西洋、欧州や米国の後塵を拝してきたイメージがあったが、ジャズは違う。そう感じさせてくれたアルバムがこれだった。

富樫雅彦 & 鈴木勲『陽光』(写真左)。1979年2月1-3日、東京での録音。ちなみにパーソネルは、富樫雅彦 (ds, perc, synth, solina), 鈴木勲( b, piccolo-b, cello, p, solina)。我が国の純ジャズ系ドラマーの鬼才レジェンド、富樫雅彦と、我が国のジャズ・ベーシストのレジェンド、鈴木勲とのデュオ盤。

富樫雅彦は本職はドラム、鈴木勲は本職はベース。ドラムとベースのデュオか。ちょっと地味な感じがして、聴いていて飽きなければ良いが、と思いつつ、レコードの針を落としたら、ほど無くピアノの音が滑り込んできたので、あれ、ドラムとベースのデュオじゃなかったか、とパーソネルを見ると、富樫がシンセサイザーを、鈴木がピアノとシンセサイザーを弾いていて、の多重録音。
 

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演奏の基本は、フリー〜スピリチュアル・ジャズ。フリーの部分は、米国東海岸の様な、激情に身を預けて、心の赴くまま、無勝手流に弾き散らすのでは無く、現代音楽のエッセンスを融合した、広がりと間を活かした即興演奏をベースとした、独特のフリー・ジャズ。演奏全体の透明度と間の静謐度の濃い演奏は、欧州のECMレコードに通じる、レベルの高いものだった。

理路整然としたフリーな演奏、その透明度の高さ、間の静謐度の高さは、和ジャズ独特の「侘び寂び」を基本とした、スピリチュアル・ジャズを表現している。リズム&ビートは即興をベースとしていて、この辺りは、ECMレコードの「ニュー・ジャズ」を展開を踏襲している様に感じるが、音の暖かさとカラフルさは、和ジャズ独特の「ニュー・ジャズ」である。

冒頭の「A Day Of The Sun」。シンセとピアノのイントロからサンバ・ビートに展開するスピリチュアル・ナンバー。このタイトル曲に代表される様に、この盤には、我が国独特のフリー〜スピリチュアル・ジャズが詰まっている。1979年度・スイング・ジャーナル誌ジャズ・ディスク大賞受賞作品。この大賞受賞は納得。世界のジャズに比肩する、アーティスティックな、ニュー・ジャズ志向のフリー〜スピリチュアル・ジャズでした。和ジャズの名盤の1枚でしょう。
 
 

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2025年11月 2日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・304

プリズム(PRISM)は、和田アキラ(ギター)と渡辺建(ベース)を中心に1975年に結成された、クロスオーバー&フュージョン・バンド。今となっては、マイナーな存在に甘んじているが、結成当時は人気のバンド。インスト重視、高い演奏レベル、ロックをベースに、ジャズ、エスニカン・ミュージック、プログレッシブ・ロックなどを取り込んだ、ロックからアプローチしたクロスオーバー&フュージョン志向の音世界は、唯一無二な個性だった。

PRISM『SURPRISE』(写真左)。1980年の作品。ちなみにパーソネルは、和田アキラ (g), 佐山雅弘(p, key), 渡辺建 (b), 青山純(ds)。プリズムの、ライヴ盤含めて、デビュー以来、4枚目のアルバム。このアルバムから、ピアノ、キーボードに佐山雅弘、ドラムに青山純が参加している。プリズムの音がダイレクトに伝わってくる、プリズムのキャリア上、最高傑作の誉れ高い秀作である。

プリズムの音が特徴的。リズム&ビートの雰囲気を聴くとクロスオーバー&フュージョン・テイストなんだが、フロントのエレギの音はロック・テイスト。バックの演奏の雰囲気がイニシアチヴを取ると演奏全体の雰囲気はクロスオーバー&フュージョン志向になるが、フロントの和田のエレギがイニシアチヴを取り出すと、途端に演奏全体の雰囲気はロック志向になる。
 

Prismsurprise

 
そして、リズム&ビートが、確実に「和クロスオーバー&フュージョン」仕様。ロックからアプローチした、クロスオーバー&フュージョン・ジャズでありながら、米国のクロスオーバー&フュージョン・ジャズに特徴的な「ファンクネス」が感じられないスンナリ&スッキリした、乾いたオフ・ビートが特徴的。明らかに、プリズムは、日本仕様のクロスオーバー&フュージョン・ジャズ・バンドの代表的存在のひとつなのだ。

そんなリズム&ビートが醸し出す独特のグルーヴ感が堪らない。そんな独特のグルーヴに乗って、和田アキラのバカテク・ギターが疾走する、佐山雅弘のキーボードが飛翔する。和田のギターは当初通りロック・テイスト優先なんだが、佐山雅弘のキーボードはジャジーで、この佐山のジャズ志向のフレーズが、プリズムのクロスオーバー&フュージョン志向を色濃くしている。ロック志向の和田のギター、ジャズ志向の佐山のキーボード。この二者のインタープレイが、このアルバムの音世界を決定付けている。

このプリズムの圧倒的な演奏テクニックと整然としたバンド・アンサンブルは、明らかに日本のフュージョン・バンドの個性。このロックからアプローチしたクロスオーバー&フュージョン志向の音世界は、プリズム独特の音世界。ロック・インストの良いところと、クロスオーバー&フュージョン・インストの良いところを併せ持った音世界は、和ジャズの真骨頂。良いアルバムです。
 
 

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2025年10月27日 (月曜日)

清水靖晃『案山子』を再聴する

1980年代の和フュージョンは聴いていて面白い。1970年代は、米国フュージョンのフォロー的音作りからスタートしたが、1980年を迎える頃には、米国フュージョンとは違う、明らかな、和フュージョン独特の個性を発揮し始める。シンセサイザーの多用、テクノ&ニューウェーヴとの融合、希薄なファンクネス。今一度、再聴に値する、個性的なアルバムが多くリリースされている。

清水靖晃『案山子』(写真左)。1982年10月の録音。ちなみにパーソネルは、清水靖晃 (sax, cl, ds, perc, vo), 笹路正徳 (key), 土方隆行 (g), 渡辺モリオ (b), 山木秀夫 (ds), 以上、マライア・メンバー。ゲストとして、スペクトラムの兼崎順一 (tp) 等が参加。1980年代、独特の深化を遂げた「和フュージョン」の傑作の一枚。

2ヶ月後に完成するマライアの傑作『うたたかの日々』(ここをクリック)のプロトタイプ的な内容。ジャズ、フュージョン、ハード・ロック、プログレッシブ・ロック、テクノ、ニューウェーヴといった要素を融合した、我が国独特の「和フュージョン・ジャズ」志向な傑作。マライアの音世界に比べて、ニューウェーヴ&テクノ志向が強く出ている。
 

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最初、聴いた時は、テクノ・ポップか、YMOか、と思った。聴き進めて行くと、高橋ユキヒロ的な音世界が広がり、続いて、細野晴臣流人力ループ風ミニマルな音世界が出てきて、即興演奏風のパートでは、欧州のニュー・ジャズ志向のスピリチュアルな音世界が広がる。縦ノリ均一ビートは、やはり、テクノの影響が大。

6曲目「夢では」の、ニュー・ジャズ風の縦ノリ均一ビートに乗った、スピリチュアルでフリーな展開はジャジー&エレクトロ。途中、ボーカルが入ってくると、たちまち、その音世界は「ジャジーなニューウェーヴ&テクノ志向」に変換していく。それでも、管楽器のユニゾン&ハーモニーはジャジー。テープ操作によるギミックも小気味良く、和フュージョンならではの「融合音楽」の成果がこの1曲に詰まっている。

全くもって、摩訶不思議な音世界である。恐らく、和フュージョンだけかもしれない。ジャズ、フュージョン、ハード・ロック、プログレッシブ・ロック、テクノ、ニューウェーヴといった要素を融合した音世界。和フュージョンならではの音楽成果。音楽ジャンルを全く気にせず、「良い音楽」として、再評価したい、清水靖晃『案山子』である。
 
 
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2025年10月26日 (日曜日)

野力奏一『Noriki』を再び聴く

日本のフュージョン・ジャズは、決して、米国のフュージョン・ジャズのフォローでは無かった。米国フュージョンのエッセンスを取り込みつつ、独自の深化を遂げている。ファンクネスの希薄さ、純ジャズ・テイストの折り込み、クロスオーバー・ジャズ志向の継承。AORとの融合。米国フュージョン・ジャズに無い、独特の個性で、日本のフュージョン・ジャズは深化し続けている。

野力奏一『Noriki』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、野力奏一 (key), 酒井春雄 (sax), 田附透,中井浩二 (el-g), 久末隆二 (el-b), 今泉正義 (ds)。ゲストミュージシャンとして、数原晋 (tp), 平内保夫 (tb), 斉藤ノブ (perc), イブ, 国分友里恵 (vo)。

本多俊之&バーニング・ウェイブ、山下達郎ツアーへの参加、阿川泰子、伊藤君子、チャリート等、数多くのアーティストのアルバムにピアニスト、アレンジャーとして参加で名を馳せた、野力奏一の初リーダー作。

明らかに、日本のフュージョン・ジャズらしい音世界。日本のフュージョン・ジャズの個性である「ファンクネスの希薄さ、純ジャズ・テイストの折り込み、クロスオーバー・ジャズ志向の継承、AORとの融合」がしっかりと反映されている。当然、演奏テクニックのレベルは高く、レベルの高い演奏は、カラッとした「爽快感」を醸し出している。
 

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収録されたどの曲も良い曲ばかり、そんな好曲に恵まれて、野力奏一の軽快なピアノが唄いまくっている。とにかく、歌心満点でテクニカル、爽快に疾走する野力のピアノは聴き応え抜群。

酒井のサックスも、そんな野力のピアノに触発されたのか、ブリリアントに唄いまくっている。久末&今泉のリズム隊も、タイトで堅実で爽やか。クロスオーバー・ジャズの志向を弾き継いで、AORなソフト&メロウを溶け込ませている。

冒頭の「You Need Me」は歌モノ、格好良いフュージョン・ソウル。3曲目「Black Duck」は、スラップ・ベースが炸裂するファンキー・ブギー。4曲目「Cozy's Melody」は極上のAOR志向のアーバンな雰囲気が芳しいインスト・ナンバー。そして、ラス前「Do What You Do」は、ソフト&メロウなフュージョン・ブギー、歌モノ「Do What You Do」。和フュージョン独特の雰囲気を宿したナンバーが目白押し。

この野力奏一『Noriki』は、日本のフュージョン、いわゆる「和フュージョン」の深化の完成形の一つを音にした、和フュージョンの秀作の一枚である。なかなかCDリイシューされなかったが、昨年11月、やっと、CDリイシューが実現、現在では、ストリーミング・サイトでも、気軽に聴くことが出来る様になった。良い時代になったものである。
 
 

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2025年10月22日 (水曜日)

三宅純の和フュージョン名盤

しかし、素晴らしいリイシューである。とにかく懐かしい。1983年の和フュージョンの名盤である。当時「ジャズ・トランペットの貴公子」ともてはやされた三宅純。日野皓正の一番弟子というだけあって、三宅のトランペットは日野皓正のフォロワーの音。師匠より、エッジが丸くて滑らかなところ、フレーズの作りがポップなところが、三宅のトランペットの個性。

Jun Miyake『June Night Love』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、三宅純 (tp, flh), 清水靖晃 (ts), 宮本大路 (ss, ts), 野力奏一(key), 内田浩誠(ac-p, el-p), 秋山一将, 北島健二, 是方博邦 (el-g), 高水健司(el-b), 河原秀夫(ac-b), 日野元彦, 村上秀一 (ds), イヴ (cho) 他。我が国の当時のフュージョン畑の強者が大集結。日野皓正の一番弟子、三宅純のデビュー盤である。

冒頭の「A thoughtful touch」から、タイトで硬派で和フュージョンらしい、極上のフュージョン・ジャズが展開される。1970年代の正統派フュージョンな音作り。決してブラコンに交わらず、決してダンサフルを追求しない。オフビートの8ビートがメインなのに、ファンクネスは限りなく希薄。テクニック優秀。テクニックだけ捉えれば、当時のウェザー・リポートや、チック・コリア・エレクトリック・バンドと引けを取らない。
 

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2曲目の「Could it be real?」などは、和フュージョンの特徴が良く判る演奏で、基本はジャズ・ファンクな演奏なんだが、粘りのあるファンク・ビートは皆無。乾いたファンク・ビートで、切れ味良くカラッとしていて、どちらかと言えば、デジタルチックなビート。テクニックは優秀、歌心もある。1970年代のフュージョン・ジャズの良いところをそのままキープして、和フュージョンの個性を織り込んだ、そんな演奏の数々。

そして、この盤の演奏の面白いところは、曲が進むにつれ、ソフト&メロウなフュージョン色がだんだん薄れていき、ストレート・アヘッドな、メインストリーム志向のコンテンポラリーなエレ・ジャズになっていくところ。ラスト3曲辺りは、エレクトリックでコンテンポラリーな純ジャズといったイメージになっていて、聴き応えがある。素姓確かな硬派なメインストリーム・ジャズ。和フュージョンの懐の深さが窺い知れる。

アンディ・ウォーホル出演のTV-CMに使用されたことで一世を風靡した「Could it be real?」を収録している(2曲目)。1983年から約1年間放送されていたTDKビデオテープのCM。三宅純が音楽を手がけたビデオ/カセットテープのCMは、今も名作として語り継がれている。しかし、当時の和フュージョンのレベル、相当に高い。今回、この盤、聴き直して、改めて感心した。
 
 

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2025年10月21日 (火曜日)

80年代和フュージョンの個性

我が国のフュージョン・ジャズ、いわゆる「和フュージョン」は、1980年代以降、独特な深化を遂げてきた。R&Bに接近し、ブラコンと融合して、ジャズから離れて行った米国フュージョンとも違う。ジャズロックとプログレの境界が曖昧で、ジャズロックが志向が強まるとフュージョン、その反対はプログレという英国フュージョンとも違う。1980年代の和フュージョンは、テクノとニューウェーヴ、そして、日本の土着音楽との融合が特徴的だった。

MARIAH『うたかたの日々』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、清水靖晃 (sax), 笹路正徳 (key), 土方隆行 (g), 渡辺モリオ (b), 山木秀夫 (ds), 村川ジミー聡 (vo) 以上、マライア。和フュージョン・バンド「マライア」のラスト・アルバムである。

MARIAH(マライア)とは。サックス奏者・清水靖晃を中心にスタジオ・ミュージシャンが集まり、1979年、マライア・プロジェクトとして始動。1980年、アルバム『YENトリックス』でデビュー。1983年のアルバム『うたかたの日々』を最後に解散した。ジャズ、フュージョン、ハード・ロック、プログレッシブ・ロック、テクノ、ニューウェーヴといった要素を融合した、フュージョン・ジャズ志向なバンド。
 

Mariah 
 

基本的にフュージョン(融合)志向の音作りだが、和フュージョンとして、他の国のフュージョン・ジャズに無い、独特の「特性」を保有している。まず、融合対象となる音楽ジャンルが、米国、英国とは全く異なる。フュージョン(融合)のメインは、テクノであり、ニューウェーヴであり、日本の土着音楽。YMO、そして、高橋ユキヒロの音世界をジャズロック風にリコンパイルした様なフレーズが度々出てきて、思わずニンマリする。

融合の礎に「ジャズ・ロック+プログレ」を置き、その上にテクノ・ミュージック、ニューウェーヴ、日本の土着音楽の音要素を、フュージョン・ジャズ志向なフレーズで展開する。米国フュージョンの様な、ファンクネス、いわゆるR&B志向、ブラコン志向な音が全く無い。そして、英国フュージョンの様な、プログレ色を前面に押し出すことも無い。ジャズロックとテクノとニューウェーヴの融合がメインという、我が国独特のフュージョン・ジャズの音世界。

当然、演奏力は高く無いとそれが出来ない。このマライアというバンドの演奏力は「半端ない」。色々と難しいことをやっているのだが、それを微塵も感じさせない。普通に普段通りに演奏を進めて行く。これが実にクール。リズム&ビートの根っこは「ジャズロック」なので、この音世界は、和フュージョン・ジャズ特有の音世界と解釈している。しかし、今の耳で聴いても、実にユニークで、実にクールで、実にエキサイティングである。
 
 

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2025年10月 5日 (日曜日)

ユッコとH ZETTRIOのコラボ

我が国の人気女性サックス奏者の一人、ユッコ・ミラーと、変幻自在の音楽性とステージングで、人気のピアノトリオバンド “H ZETTRIO(エイチ・ゼットリオ)”との完全コラボの企画盤。現代の和ジャズにおける、硬派でメインストリーム志向のコンテンポラリー・ジャズの最先端の音世界。和ジャズの「今」をビンビンに感じることの出来る好盤である。

ユッコ・ミラー feat. H ZETTRIO『LINK』(写真左)。2024年12月のリリース。ちなみにパーソネルは、ユッコ・ミラー (as), H ZETTRIO : H ZETT M (p, key), H ZETT NIRE (b), H ZETT KOU (ds)。

ユッコ・ミラーのアルト。サックスがフロント1管の「ワンホーン・カルテット」。ユッコ・ミラーが「H ZETTRIOと一緒にアルバムを作りたい」という熱い想いが実現した、実に興味深いコラボレーション企画。

H ZETTRIO=「エイチゼットリオ」と読む。純日本のジャズ・ピアノ・トリオ。「大人も子どもも“笑って踊れる”」をテーマに掲げるピアノトリオ・バンドである。メンバー3名は、鼻を青・赤・銀に着色。ちなみにパーソネルは、H ZETT M (p:青鼻), H ZETT NIRE (b:赤鼻), H ZETT KOU (ds:銀鼻)。リアルな姓名は伏せられている。

メロディー・ラインがキャッチャーで流麗。演奏の雰囲気はポップでジャジー。ダンサフルで明朗なサウンド・トーン。とにかく聴き易い。加えて、このピアノ・トリオ、演奏のポテンシャルが高い。テクニックのレベルが高い。聴いていて、アドリブ・フレーズなど「流麗」の一言。ではあるが、演奏のテンションは高い。アグレッシブである。ポップでジャジーではあるが「攻めるピアノ・トリオ」である。
 

Feat-h-zettriolink 

 
ユッコ・ミラーは、我が国の実力派サックス奏者。エリック・マリエンサル、川嶋哲郎、河田健に師事。19歳でプロデビュー。 2016年9月、キングレコードからファーストアルバム「YUCCO MILLER」を発表し、メジャーデビュー。10万人を超えるチャンネル登録者数が今なお増え続け、「サックスYouTuber」としても爆発的な人気を誇る。

彼女の奏でる音楽スタイルは、ファンク&フュージョン、そして、コンテンポラリー・ジャズ。意外と硬派な一面が垣間見えるところが頼もしい。流麗なサックスで聴き易くはあるが、決してイージーリスニング・ジャズには走らない。カラフルでド派手なルックスだけで、決して「キワモノ」と思うなかれ。流麗かつ力強さがあるレベルの高いブロウ。聴き応え充分である。

そんなユッコ・ミラーとH ZETTRIOとが、がっちりタッグを組んで、和ジャズにおける硬派でメインストリーム志向の、素晴らしいコンテンポラリー・ジャズを展開する。決して、ソフト&メロウなフュージョンやジャズ・ファンクを想起してはならない。メインストリーム志向のジャズに軸足を置いているところが実に潔い。

収録されている全10曲のうち、半分の5曲をユッコ・ミラーが、残りの5曲をH ZETT Mが作曲、アレンジは全曲H ZETTRIOが担当。しかし、それぞれの曲毎の統一感は半端なく、ユッコ・ミラー + H ZETTRIO の演奏力の高さとアレンジ力の ”賜もの” だろう。ユッコ・ミラーとH ZETTRIOとが創り上げる、個性的でエキサイティングなグルーヴは聴き応えがある。

次作が期待出来るなあ、次作はあるかなあ、と思っていたら、今年の9月17日に、コラボ第2章『Dazz On』がリリースされた。いろいろ、バタバタしていて、なかなか入手に至らなかったが、昨日、やっと入手。今度はどんな音世界が展開されているのか、楽しみである。
 
 

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