丁抹のクロスオーバー・ジャズ
さしずめ欧州の「ブルーノート」と言っても良い「欧州発ハードバップ」の宝庫である「SteepleChase」。このレーベル、当初は、米国から欧州に移住してきた、ハードバッパーな一流ジャズマンを中心に、1970年代の上質なハードバップを録音してきたのだが、しばらくして自信を付けたのか、独自の感覚で、レーベル独特のジャズマンをチョイスしてリーダー作を制作させている。
Coronarias Dans『Visitor』(写真左)。1973年7月と11月、コペンハーゲンの「Rosenberg Studio」での録音。Steeplechaseレーベルの SCS1032番。ちなみにパーソネルは、Peter Friis Nielsen (b), Ole Streenberg (ds), Claus Bøhling (g), Kenneth Knudsen (key)。Coronarias Dans(コロナリアス・ダン)とはグループ名である。
コロナリアス・ダンは、デンマークのジャズロック&クロスオーバー・ジャズのバンド。1969年のバンド設立で、もともとは、サイケデリック・ロックに近い音だったらしい。アルバムのリリースは、デビュー盤の『Breathe』と、今回ご紹介する『Visitor』の2枚のみ。音的には、ジャズロックというよりは、創造性を優先するアグレッシヴなアプローチが散見される、クロスオーバー・ジャズに近いテイストである。
冒頭の「Se Det」を聴けば、それが良く判る。フェンダー・ローズの使い方は、チックやキースの如く。但し、リズム&ビートにファンクネスは希薄。なるほど、デンマーク出身のバンドの音である。エレベのウォーキング・ベースがとってもスインギー。このバンドの音が「ジャズ」に立脚していることが理解出来る。
2曲目の「Morning」は、浮遊感漂う幽玄なエレピの音と、自由度の高いドラムの疾走。そこに切り裂くように入る、エフェクトをかけたエレピとエレギの旋律、おどろおどろしいベースの音の動き。これはエレクトリックなフリー・ジャズだ。印象的なベース・ソロあり、4曲目「Don't Know」では、攻撃的でクロスオーバーなエレギのソロが迫力をもって迫ってくる。
キーボードの音はチックの様であり、ザヴィヌルの様な響きもあり、エレギの音はマクラフリンの様でもあり、コリエルの様でもあり。先行するエレ・ジャズ、クロスオーバー・ジャズの要素をしっかり踏まえて、独自の音を創り出しつつあった、デンマーク発のジャズロック&クロスオーバー・ジャズがこの盤に詰まっている。個性的であるが故に、この盤でリリースが途絶えたのが残念である。
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