2024年9月17日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・29

ジャズを聴き始めの「ジャズ者初心者」の方々向けに、様々な入門盤紹介本や、初心者向けのジャズ盤紹介本が刊行されている。どれもがほぼ同じアルバムを言葉を変えて紹介しているので、どの紹介本を買ってもあまり変わりがない。

これって、差し障りのない、全方向のオールマイティーな盤を選択している訳で、ジャズを聴いてみたい、聴いてみようという向きには「隔靴掻痒」の感は否めない。

Oscar Peterson『We Get Requests』(写真左)。1964年10月19日、11月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Ed Thigpen (ds)。邦題『プリーズ・リクエスト』。ピーターソンの「黄金の“ザ・トリオ”」の名盤であり、長年所属したヴァーヴ・レコードでの最終作である。

あまりにテクニックが優秀で破綻がなく、テクニックをひけらかすことも無い。ドライブ感が相当に高く、スイング感が半端ない。歌心も趣味が良く、耽美的でリリカルなもの、バップばりばりの疾走感のあるもの、何でも弾きこなす才能の高さは唯一無二。

このジャズ・ピアニストとして「優等生」なピーターソンについて、20世紀の我が国のジャズ評論家筋では評判が良くない。どころか「スイングの権化」と揶揄する評論家が出てくる始末。この我が国での偏った評価が、ジャズ者の「聴くべきピアニスト」から除外されるケースを引き起こしているから厄介である。
 

Oscar-petersonwe-get-requests  

 
ただし、この『プリーズ・リクエスト』を聴けば、それが偏った評価であることに気が付く。この盤でのピーターソンの「黄金の“ザ・トリオ”」は、ピアノ・トリオの最高峰の一つであり、ピアノ・トリオの目標となる優れたユニットである。

収録された全10曲中、ピーターソンのオリジナルは10曲目の「Goodbye J.D.」だけ。残りの9曲はジャズ・スタンダード曲。このジャズ・スタンダード曲が聴きもので、アレンジが絶妙。そのアレンジも、そんじょそこらのものでは無く、このピーターソンの「黄金の“ザ・トリオ”」だけが完璧に演奏出来る、かなり高度なアレンジである。

ジャズ・ピアノ・トリオが、メンバーを厳選して相性が合えば、相当な表現力と訴求力を発揮することが出来ることを、このピーターソンの「黄金の“ザ・トリオ”」の演奏が証明している。

優れた演奏とは、一聴すると「シンプル、単純」に聴こえて、ジャズ者初心者ほど「誰でも演奏できるレベルで聴く価値なし」と思ってしまうのだが、それは間違い。テクニックが優秀な演奏ほど、優れたアレンジに出会うと、耳当たりの爽快な、スイング感&ドライブ感抜群の「聴きやすい」演奏に昇華する。

その耳当たりの爽快な、スイング感&ドライブ感抜群の「聴きやすい」演奏こそが、ジャズを聴き始めの「ジャズ者初心者」の方々にピッタリの入門盤なのだ。この『プリーズ・リクエスト』は、ジャズ者初心者向けのジャズ・ピアノ・トリオ入門盤の最初の一枚、と僕は評価している。
 
 

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2024年4月13日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・270

オスカー・ピーターソンは、ジャズを本格的に聴き始めた頃からの「お気に入りピアニスト」。「鍵盤の皇帝」と呼ばれるほどの超絶技巧とスイング感。高速フレーズをバリバリ弾きまくる。ドライブ感&グルーヴ感抜群。歌心溢れるバラード表現も秀逸。

『Con Alma: The Oscar Peterson Trio – Live in Lugano, 1964』(写真左)。1964年5月26日のライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Ed Thigpen (ds)。スイス南部にある都市ルガーノの「Teatro Apollo」で行ったコンサートの模様を収録した未発表音源。

「The Trio」=「黄金のトリオ」と表現された、ピーターソン=ブラウン=シグペンのピアノ・トリオ。この「黄金のトリオ」は、1959年から1965年まで行動を共にした訳ですが、この未発表のライヴ音源は、そのトリオの最終期、1964年のライヴ音源。トリオとして脂の乗り切った、円熟の極みにあったトリオの極上のパフォーマンスが記録されている。
 

Con-alma-the-oscar-peterson-trio-live-in

 
収録曲がなかなかで、冒頭の「Waltz for Debby」はビル・エヴァンスの十八番、4曲目の「Con Alma」はレイ・ブライアントの十八番なんだが、このライヴでは、ピーターソンならではのアレンジと弾き回しで、まるで弾き慣れたピーターソンの十八番の様に聴こえるから面白い。ベースのブラウンもドラムのシグペンも嬉々としてピーターソンのパフォーマンスをサポートする。

この頃のピーターソンの弾き回しは、ダイナミックでワイド・レンジで硬質タッチで超絶技巧な弾き回し。そんな弾き回しで、歌心溢れるバラードを展開し、小粋なスタンダード曲をキャッチーに、より魅力的に聴かせる。素晴らしいテクニック。恐らく、歴代のジャズ・ピアニストの中で、テクニックに関して、この時期のピーターソンがピカイチだろう。

上手すぎて面白くない、とか、バリバリ弾きまくる様を捉えて「侘び寂びがない」とか、スインギーなピアノを捉えて「スイングの権化」とか、なにかと「揶揄される」ピーターソンであるが、どうして、ピーターソンのピアノは、ジャズ・ピアノの歴史の中で、頂点に君臨する一人である。このライヴ音源を聴いて、改めてそう思う。
 
 

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2023年2月23日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・258 『On A Clear Day - Live in Zurich, 1971』

お待たせしました。やっとこさ、ブログを再開しました。よろしくお願いします。

さて、ジャズ・ライフ誌の「Disc Grand Prix 年間グランプリ」には、2022年度にリリースされた新盤の中に、過去の未発表音源が入っていたりするから、チェックは念入りに怠り無く、である。以前は「コルトレーンもの」や「マイルスもの」が多かったが、最近は、そのレジェンド級ジャズマンについてもバラエティーに富んできて、探索するのが楽しい。                                       

The Oscar Peterson Trio『On A Clear Day - Live in Zurich, 1971』(写真左)。1971年11月24日、スイスのチューリッヒ、Kongresshausでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Louis Hayes (ds)。ラジオ・チューリッヒの放送用の未発表ライヴ音源の初アルバム化である。

ジャケットがいかにもブートらしくて、初めて、このジャケットを見た時は触手が伸びなかった。しかし、ネット情報でトリオのメンバー名を確認して、即ゲットを決意。史上最高のジャズピアノ・マイスターのピーターソン、そして、デンマークの至宝ベーシストのペデルセン、堅実実直なレジェンド級ドラム職人のヘイズ。このトリオ編成は素晴らしい。

というか、僕は「ピーターソン者」。ピーターソンがお気に入りピアニストの1人で、好きなランクの上位に位置する。しかし、このピーターソン、ペデルセン、ヘイズのトリオ編成って、聞いたことが無かった。で、ネットで調査してたら、この今回のライヴ音源が唯一だったらしい。でしょうね。でも、ピーターソンのピアノにペデルセンのベースって、絶対良いよな。そこに、ヘイズの堅実実直なドラムがビートの底を支えるのだ。絶対、内容は良いに決まっている。
 

The-oscar-peterson-trioon-a-clear-day-li

 
で、聴いてみると、やっぱり良いですね。ドライブ感抜群・スイング感抜群・歌心満載のピーターソンのピアノに対等に相対出来るベーシストはなかなか見当たらないのだが、テクニック最高・高速ライン弾き・唄う様なピッツィカートのペデルソンのベースがバッチリ合う。

どちらも高速フレーズを弾きこなすのだが、この2人は決して「うるさくならない」。相手の音を良く聴いて、音がぶつからない様に、相手をしっかりサポートする様に弾きこなしている。素晴らしい。

ヘイズのドラミングも実に良い。ピーターソンとペデルセンが高速フレーズを弾きまくるバックで、演奏全体のリズム&ビートをしっかりと支え、しっかりとリードしている。この堅実実直なヘイズのドラミングがあってこそ、ピーターソンもペデルセンもバリバリ弾きこなせるというもの。

全編、熱演につぐ熱演で、その熱気は聴衆の熱気と共に、様々な音でしっかりと伝わってくる。特に聴衆の盛り上がりは相当なもので、1971年とは言え、さすが欧州。流行に流されず、メインストーリム指向の純ジャズの優れた演奏に正しく反応する感性は素晴らしい。

良いライヴ音源です。こういう未発表音源が、しかも、オスカー・ピーターソンの一期一会トリオの音源が、ラジオの放送音源から作成されたことはとても素晴らしい出来事だったと思います。聴き応えのあるピアノ・トリオの演奏。実際のライヴで聴きたかったですね。

 
 
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2022年12月 9日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・256『At The Concertgebouw』

小粋なジャズ盤を探索していると、好きなジャズマンのリーダー作なのに、何故か疎遠になって、かなりの長期間、聴くことの無かったアルバムに、不意に出会うことがある。ジャケ写を見て「あっこれは知ってる、好きな盤」とは思うのだが、直ぐに「あれっ、この盤、前に聴いたのって何時だっけ」ということになる(笑)。

The Oscar Peterson Trio『At The Concertgebouw』(写真左)。1957年9月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Herb Ellis (g)。ジャズ・ピアノのレジェンド&ヴァーチュオーゾ、オスカー・ピーターソンの「オールド・トリオ」(「ピアノ+ベーズ+ギター」のトリオ)のライヴ録音である。

この盤、懐かしい。僕がジャズを聴き始めて2年位経った時に、LPの廉価盤で見つけたゲットした記憶がある。ジャズ・ピアノの達人、ピーターソンのトリオ盤なので、内容には間違いは無いだろうと軽い気持ちで購入した。というのも、ジャケットに引かれた。これはどう見ても「オランダの風車」。「コンセルトヘボウ」という変な場所の名前はオランダにあるものだと確信した。欧州での録音かぁ。子供の頃から欧州には限りない憧れがあって、そういう経緯もあって、迷わずゲットした訳でる。

しかし、この盤、曰く付きで、コンセルトヘボウは、オランダ・アムステルダムにあるコンサートホールなんだが、この盤、実は、シカゴの「シヴィック・オペラ・ハウス」でのライヴ録音、ということが後に判明している。どうして、こんなことになったのかは判らぬが、オスカー・ピーターソンのトリオのライヴ録音ということは間違い無い。

僕がジャズを聴き始めて2年目の頃、ピアノ・トリオは、ピアノ・トリオが出現した時からずっと「ピアノ+ベース+ドラム」の編成しか無い、と思っていた。が、それは違うのに気がついたのが、この盤を聴いてから。
 

At-the-concertgebouw

 
もともと、ピアノ・トリオって「ピアノ+ベーズ+ギター」の編成が発祥とのこと。ビ・バップ時代に、バド・パウエルが「ピアノ+ベース+ドラム」の編成を採用して以降、ピアノ+ベース+ドラム」がピアノ・トリオのスタンダードの編成になったことをこの盤で知った。

というのも、このピーターソン・トリオのライヴ盤、トリオの編成が「ピアノ+ベーズ+ギター」なのだ。初めて聴いた時、これにはビックリした。が、ギターってリズム楽器としてジャズに登場しているので、直ぐに納得した。ギターとドラムの違いは、ギターはリズム楽器と旋律楽器の両方に対応、ドラムはリズム楽器オンリー、なところ。

このライヴ盤では、このハーブ・エリスのギターが大活躍。ギターって繊細な音色という先入観があって、時に、ハーブ・エリスのギターは音の線が細くて繊細なリズム&ビート、という印象があったのだが、このライヴ盤でのエリスのギターは「スピーディー&雄弁」。アドリブ・ソロは弾きまくり、リズム&ビートのコード弾きの音が、何時になく「大きい」。こんなエリスのアグレッシヴでスピーディーで弾きまくりのギターって、あまり聴いたことが無い。

ハーブ・エリスのギターがアグレッシヴで弾きまくりな分、ピーターソンのピアノが安心してバリバリ弾きまくり、レイ・ブラウンの重低音ベースがブンブンブンブン、高らかに鳴り響く。このライヴ盤、当時のピーターソン・トリオのパフォーマンスの中で、一番、アグレッシヴでダイナミックでスピード感溢れたものになっている。オールド・スタイルのピアノ・トリオの代表的名演のひとつとしても良いだろう。

タイトルは「オランダのコンセルトヘボウ」のライヴ録音なのだが、実は「シカゴのシヴィック・オペラ・ハウス」でのライヴ録音だった、なんて変なライヴ盤ではあるのだが、演奏内容は一級品。聴き応え十分の、オスカー・ピーターソンの「オールド・トリオ」です。しかし、オランダの風車の油絵のジャケット、好きなんだけどなあ。
 
 

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2022年7月16日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・243 『Tour De Force』

先々週の土曜日より、梅雨が戻った様な、イマイチの天気がずっと続いている千葉県北西部地方。一昨日からは定期的にゲリラ豪雨に見舞われて、ゴーッという雨の音にビックリしたりする。天気が悪いのに加えて、湿度が異常に高い。少し、家事で動いたら、汗が噴き出てくる。こういう時、気持ちがスカッとするジャズを聴きたくなる。

Roy Eldridge, Dizzy Gillespie, Harry Edison『Tour De Force』(写真左)。1955年11月2日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Roy Eldridge (tp), Dizzy Gillespie (tp), Harry 'Sweets' Edison (tp), Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Herb Ellis (g), Buddy Rich (ds)。録音当時の人気トランペッター3人が共演した、ノーマン・グランツ監修の、Verveお得意のジャム・セッション盤。

フロント3管が全てトランペット。ロイ・エルドリッジはサッチモの演奏手法を継承、スイング時代に活躍したスター・プレイヤー。ハリー・エディソンはベイシー楽団の人気トランペッターで、「Sweets」の愛称の通り、甘い音色と分かり易いフレーズが身上。そして、ディジー・ガレスピーは、魅力的なハイノート・ヒッターであり、流麗で歌心溢れる豊かな表現力が魅力のビ・バップを創成したイノベーター。
 

Tour-de-force_1

 
バックのリズム・セクションは、ギター+ピアノ・トリオ。フロントのトランペットは3人共に、当時の人気トランペッターがズラリ、バックのリズム・セクションは、録音当時のピーターソン・トリオにドラムのバディ・リッチを加えた、豪華かつハイレベルなもの。

当然、演奏のレベルは高い。どのジャズマンのソロ・パフォーマンスであれ、聴いていて「おっ」と聴き耳を立ててしまうくらい、その演奏テクニックと歌心は充実している。特に、主役のトランペッター3人が好調で、次々とバトン・タッチされていくソロ・パフォーマンスと、丁々発止とやりあうアドリブ合戦は聴き応え満点。時に速いテンポの演奏については、聴いた後、スカッと爽快感を感じる。

当時のノーマン・グランツ・プロデュースお得意のバラード・メドレーが、これまた出来が良くて、参加メンバーそれぞれの高いレベルの歌心満載なソロ演奏を楽しむ事が出来る。とてもモダンなジャム・セッションで、単純にモダン・ジャズをあっけらかんと楽しむ事が出来る。録音も良くて、難しいことを考える事無く、リラックスして聴ける、聴いて気持ちがスカッとなるジャズ盤である。
 
 

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2022年5月 5日 (木曜日)

『Oscar Peterson Plays George Gershwin』

オスカー・ピーターソンは、ジャズ・ピアニストの代表格。その卓越したテクニック、スイング感、ダイナミズム、そして歌心。恐らく、他のピアニストに比して、テクニックはアート・テイタムと同等、スイング感は筆頭、ダイナミズムはバド・パウエルと同等、歌心はビル・エヴァンスに比肩する。それ故、彼についたニックネームが「鍵盤の皇帝」。

あまりに上手すぎて、あまりにスイングして、あまりにダイナミックな弾きっぷりが完璧すぎて一部で「嫌われる」、不世出なピアニストである。しかし、完璧すぎて嫌われ、スイングして「スイングの権化」と揶揄され、いやはや、我が国では、ちょっと可哀相なピアニストである。が、僕は、ピーターソンのピアノ、概ね好きですね〜。

『Oscar Peterson Plays George Gershwin』(写真左)。1952年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Barney Kessel (g)。ソングブック・シリーズの第2作目。ジャズの愛されたクラシック&ポップスの作曲家、ジョージ・ガーシュウィンとアイラ・ガーシュウィンが書いた人気曲をカヴァーした楽曲集。

後に1985年にリイシューされた『OscarPeterson The George Gershwin Songbook』(写真右)の原盤になる。演奏はトリオ形式。ドラムレスの「ピアノ・ベース・ギター」のオールドスタイルのピアノ・トリオでの演奏になる。これが、意外と洒落ていて、ガーシュインの小粋な楽曲を演奏するには最適の演奏フォーマットではないか、と思ってしまう位である。
 

Oscar-peterson-plays-george-gershwin_1

 
加えて、アレンジが良い。どの曲にも、こうくるだろう、という予想を覆す、嬉しい「小粋なアレンジ」が施されていて、聴いていてとても楽しい。この小粋なアレンジ、ガーシュインの持つ楽曲の可愛さ、美しさを引き立たせる様で、歌心溢れるピーターソンのピアノと相まって、どの曲も楽しく美しいトリオ演奏になっていて、聴き応えがある。

リズム隊も良い感じ。後に長年のパートナーを務める、レイ・ブラウンのベースが演奏のベースラインをしっかり捉えて、安定したビートを維持する。バーニー・ケッセルのギターは、リズム・キープの役割をしっかり果たしつつ、時に、ピアノと小粋なユニゾン&ハーモニーを奏でて、とっても良い感じの、歌心溢れるフレーズを展開する。

ジャズにおいて、ガーシュインのソングブックって、かなりの種類のアルバムが出ているが、このピーターソンのソングブックはアレンジが唯一無二と言って良い位、ユニークで優れたアレンジを施している。このアレンジがこの盤の最大の「ウリ」。ピーターソンのピアノの優秀性を横に置いても、ピーターソンのピアノの「歌心」が突出する、傾聴に値する「ガーシュイン楽曲集」である。
 
オスカー・ピーターソンのリーダー作と構えること無く、気軽に聴いて欲しいですね。この「ガーシュイン楽曲集」のピアノはとにかく「イケて」ます。
 
  
 

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2022年1月21日 (金曜日)

ピーターソンの未発表ライヴ音源 『Live In Helsinki 1987』

オスカー・ピーターソン(Oscar Peterson)は、ジャズ・ピアニストのレジェンド中のレジェンド。今から14年前、2007年12月に逝去しているので、ジャズ者の間でも忘れ去られた存在になりつつあるのが残念なんだが、ピーターソンは、ジャズ・ピアニストの中でも最高のテクニシャン。ドライブ感溢れ、スイングしまくり、バリバリ弾くピアノには圧倒される。

それでいて歌心もしっかり備えているので、とにかく聴き応えのあるピアニストであった。奏法の基本はハードバップ。しかも「聴かせるピアノ」が身上。自らのアドリブの幅を拡げる「モード」や「フリー」には一切、手を染めず、コマーシャルな「ファンキー」や「ソウル」にも手を出さない、あくまで硬派なバップ・ピアノのスタイルを変えなかった。

『Time For Love : The Oscar Peterson Quartet - Live In Helsinki 1987』(写真左)。1987年、フィンランドのヘルシンキでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Joe Pass (g), Dave Young (b), Martin Drew (ds)。リーダーのピアニスト、オスカー・ピーターソンは62歳。大ベテランの域に入ったバーチュオーゾなピアノをメインに、これまた大ベテランのギタリスト、ジョー・パスをゲストに迎えたカルテット編成。
 

Time-for-love

 
こんなライヴ音源が残っていたとは。1987 年秋ヨーロッパ・ツアー最終公演ヘルシンキ、クルトゥリタロで行ったライヴ音源。音も良く、ピーターソンの「ドライブ感溢れ、スイングしまくり、バリバリ弾く」ピアノが鮮度良く捉えられていて良い感じだ。パスのギター、ヤングのベース、ドリューのドラムも躍動感溢れるもので、とても良いライヴ盤である。

緻密で華麗なテクニック、そして目の覚めるようなスウィング感を伴って、「Waltz For Debby」や「When You Wish Upon A Star」等の、ポップなスタンダードの名曲を演奏しているピーターソンが耳新しい。以前では想像出来なかったですね〜。そして、「Love Ballade」「 Cakewalk」等のオリジナル曲については、流麗な弾き回しに、更に磨きがかかって、聴き応え抜群。

1987年の録音、しかも北欧のヘルシンキでのライヴなので、「昔の名前で出ています」的な、ちょっと懐メロ的になっていないか、聴く前は心配だったが、どうして、新しいイメージのピーターソンがバリバリに弾きまくっている。1960〜70年代の弾きっぷりよりも、しっかりとした余裕が感じられて、ピーターソンも良い歳の取り方をしていたんだなあ、と感心した。ほんと、良いライヴ盤です。
 
 
 
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  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

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  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

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2021年8月27日 (金曜日)

バリバリ弾きまくるトリオ盤 『The Trio』

パブロ・レーベルのアルバムを、カタログを追って聴き直している。パブロ・レーベルは、1973年、ノーマン・グランツによって設立されたジャズ・レーベルである。リリースするアルバムは全て「純ジャズ」。演奏するメンバーは、レジェンド級のジャズメンがメイン。従来のハードバップな演奏がメインで、当時は「古いジャズ」と揶揄され、パブロ・レーベルって、我が国ではあまり人気が無かった記憶がある。

Peterson, Pass, Pedersen『The Trio』(写真左)。1973年5月16-19日、米国シカゴの「ロンドン・ハウス」でのライヴ録音。パブロ・レーベルの栄えある第1弾(701番)。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Joe Pass (g), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b)。ドラムレス、代わりにギターが入った、オールドスタイルの「ピアノ・トリオ」編成での演奏になる。

レジェンド中のレジェンド、圧倒的テクニックとスイング感を誇る「鍵盤の皇帝」ピーターソンのピアノ、燻し銀ヴァーチュオーゾなパスのギター、そして、驚異的テクニックと骨太でソリッドな音色で圧倒するペデルセンのベース、このレジェンド級一流ジャズメン3人で固めたトリオ演奏。ドラムが無い分、3者3様のメロディアスなアドリブ・フレーズを聴き込むことが出来る。
 

The-trio-petersonpass-pedersen

 
冒頭の「Blues Etude」の演奏が始まると同時にビックリする。超高速フレーズの嵐。圧倒的テクニックを誇るピーターソンが、そのテクニックを最大レベルに上げて、超高速フレーズをバリバリに弾きまくる。ギターのパスは速弾きフレーズと高速カッティングで応戦、そして、一番ビックリするのはペデルセンのベース。超高速ピアノ、ギターを向こうに回して、超高速ウィーキング・ベースで対応する。

これって、1970年代における「ビ・バップ」な演奏である。1960年代後半、聴き手に迎合して「聴き易さ」という大衆性に重きを置いたが故に、純ジャズは聴き込む楽しみが半減した。ジャズマンの演奏テクニックや機微、つまり「芸術性」を楽しむ面が半減した訳だが、この盤では冒頭の1曲目でこのジャズの「芸術性」を楽しむ、ビ・バップな演奏が展開される。聴衆のそのテクニックを存分に楽しんでいる様子が良く判る。

三者三様の速弾きだけで無い、ゆったり寛ぐブルース演奏もあり、さすがハードバップ期の先頭集団を走ってきた強者達、じっくりと純ジャズな演奏も楽しませてくれる。縦横無尽、硬軟自在、緩急自在にスイングする様は見事。やっぱり純ジャズって良いなあ、という想いを思い出させてくれる。今の耳で聴くパブロ・レーベル、なかなかのものである。
 
 
 
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2020年9月23日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・135 『Oscar Peterson and Roy Eldridge』

台風が来るぞ来るぞ、というので、朝からベランダの植木などを台風対策で寄せたりして、一汗かいた。で、天気予報を見たら、一応、直撃〜上陸は避けられる予報に大きく変化。一汗かいたのが、どうも無駄になるようだ。まあ、それそれで良いことだが・・・。

さて、一昨日、ピーターソン=ブラウン=シグペンの、いわゆるピーターソンの「The Trio」の旗揚げ盤のご紹介したのだが、今日は、オスカー・ピーターソンの「変わり種」盤についてご紹介したい。

『Oscar Peterson and Roy Eldridge』(写真)。1974年12月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Roy Eldridge (tp), Oscar Peterson (p)。Pabloレーベルからのリリース。Pabloレーベルは、当時(1970年代)、レジェンド〜ベテラン級のリーダー作やジャム・セッション盤をリリースして、純ジャズ者の方々からは、結構、御用達だったレーベルである。たまに「凡盤」があるのはご愛嬌。

しかし、このデュオ盤、つい最近まで、その存在を知らなかった。Pabloレーベルのアルバムは、なかなかリイシューされない盤が結構ある。やっと、このところ、音楽のダウンロード・サイトが、ジャズ盤についても結構音源を集めていて、Pabloレーベルの音源も知らないうちにアップされつつあるみたいなのだ。
 
 
Oscar-peterson-and-roy-eldridge
 
 
デュオの片割れ、ロイ・エルドリッジは、スイング時代から活躍する、レジェンド級の大ベテラン。愛称「リトル・ジャズ」。ビバップの先駆者でもある。そんなレジェンド級のトランペッター、1970年に脳卒中で後遺症を負った。が、奇跡的に復帰を果たし、このデュオ盤ではしっかりとしたトランペットを聴かせている。

さて、もう一人のデュオの片割れ、オスカー・ピーターソンはピアノのヴァーチュオーゾ。ダイナミックかつスインギーな弾き回しは見事。そんなピーターソン、絶対にピアノしか弾かない、と思っていたら、この盤ではなんとハモンド・オルガンも弾いている。

オルガンもピアノも鍵盤楽器ではあるが、オルガンはオルガンなりの弾き方のノウハウがあって、ピアノが弾けるからといって、オルガンも同じ様に弾けるとは限らない。が、ピーターソンは、ピアノと同じレベルで、かなり優秀なオルガンを弾きこなしている。これにはビックリした。

ピアノ+オルガンとトランペットのデュオ、という組合せも珍しい。それでも、ピーターソンの奏でるリズム&ビートに乗って、エルトリッジが気持ちよさそうに、小粋なトランペットを吹き進めて行く。録音当時、エルトリッジは63歳、ピーターソンは49歳。レジェンド〜ベテラン級の優れた二人が気持ちよさそうに奏でるデュオ演奏。これはもはや、スイングでもハードバップでもない。ただただ「ジャズ」である。
 
 
 
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2020年9月21日 (月曜日)

「The Trio」の旗揚げ 『A Jazz Portrait of Frank Sinatra』

やっとのことで涼しくなった。もう明日は秋分の日。暑さ寒さも彼岸まで、というが、今年はとにかく9月に入っても酷暑が続いて、連日の熱中症注意報や警報が出まくる状態。そういう時は、熱いジャズ、気合いの入ったジャズ、バリバリ弾いたり吹いたりするジャズはどうしても敬遠したくなる。耳当たりの良い、爽やかで聴き易いジャズばかりを選択したりする。

Oscar Peterson『A Jazz Portrait of Frank Sinatra』(写真)。1959年5月18日の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Ed Thigpen (ds)。ピーターソン=ブラウン=シグペンの、いわゆるピーターソンの「The Trio」のメンバーであるが、この盤がこの3人のトリオ演奏の「旗揚げ」録音らしい。

ピーターソンのピアノが僕は大好き。ダイナミックでハイ・テクニックでスイング感抜群。いかなる難曲も弾きこなすであろう、高い技術力を武器に、とにかくバリバリに弾きまくる。「スイングの権化」と昔のジャズ評論家から揶揄されたくらいの「オーバー・スイング」な、正確無比でかつダンディズム溢れる弾き回し。欠点が見当たらない。よって、当時のジャズ者方々から「面白く無い」とも言われた(笑)。
 
 
A-jazz-portrait-of-frank-sinatra
 
 
ピアノ、ギター、ベースのトリオで活動を続けていたピーターソンが、ギターをドラムスに入れ替えたのである。ダイナミズムには拍車がかかり、スイング感もオーバー・スイング気味。それでもテクニックが超優秀なので、シナトラにまつわる名曲の数々を、ピーターソンは唄うが如く、ピアノを弾きまくる。そう、ピーターソンはピアノで唄っている。

バックのリズム隊も優秀。まず、ブラウンのベースがこれまた凄い。まあ、あのダイナミックでハイ・テクニックでスイング感抜群なピーターソンのピアノのベースラインをガッチリ受け止めるのだ。ヤワなベースでは破綻する。ブラウンくらいのハイ・テクニックな重低音ベースでないと受け切れないだろう。それは、ドラムのシグペンにも同じことが言える。

ピーターソン=ブラウン=シグペンの「The Trio」の、この3人のトリオ演奏の「旗揚げ」録音である。まだまだしっくりいかない所もあるし、打てば響く様なインタープレイはまだまだ発展途上。それでも、当時の他のピアノ・トリオの演奏と比べると、この駆け出しの時期にもかかわらず、この「The Trio」の演奏の方が、一歩抜きんでてるのだがら恐れ入る。意外と地味な位置づけの盤だが、内容的には一聴に値する。
 
 
 

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