僕なりのジャズ超名盤研究・29
ジャズを聴き始めの「ジャズ者初心者」の方々向けに、様々な入門盤紹介本や、初心者向けのジャズ盤紹介本が刊行されている。どれもがほぼ同じアルバムを言葉を変えて紹介しているので、どの紹介本を買ってもあまり変わりがない。
これって、差し障りのない、全方向のオールマイティーな盤を選択している訳で、ジャズを聴いてみたい、聴いてみようという向きには「隔靴掻痒」の感は否めない。
Oscar Peterson『We Get Requests』(写真左)。1964年10月19日、11月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Ed Thigpen (ds)。邦題『プリーズ・リクエスト』。ピーターソンの「黄金の“ザ・トリオ”」の名盤であり、長年所属したヴァーヴ・レコードでの最終作である。
あまりにテクニックが優秀で破綻がなく、テクニックをひけらかすことも無い。ドライブ感が相当に高く、スイング感が半端ない。歌心も趣味が良く、耽美的でリリカルなもの、バップばりばりの疾走感のあるもの、何でも弾きこなす才能の高さは唯一無二。
このジャズ・ピアニストとして「優等生」なピーターソンについて、20世紀の我が国のジャズ評論家筋では評判が良くない。どころか「スイングの権化」と揶揄する評論家が出てくる始末。この我が国での偏った評価が、ジャズ者の「聴くべきピアニスト」から除外されるケースを引き起こしているから厄介である。
ただし、この『プリーズ・リクエスト』を聴けば、それが偏った評価であることに気が付く。この盤でのピーターソンの「黄金の“ザ・トリオ”」は、ピアノ・トリオの最高峰の一つであり、ピアノ・トリオの目標となる優れたユニットである。
収録された全10曲中、ピーターソンのオリジナルは10曲目の「Goodbye J.D.」だけ。残りの9曲はジャズ・スタンダード曲。このジャズ・スタンダード曲が聴きもので、アレンジが絶妙。そのアレンジも、そんじょそこらのものでは無く、このピーターソンの「黄金の“ザ・トリオ”」だけが完璧に演奏出来る、かなり高度なアレンジである。
ジャズ・ピアノ・トリオが、メンバーを厳選して相性が合えば、相当な表現力と訴求力を発揮することが出来ることを、このピーターソンの「黄金の“ザ・トリオ”」の演奏が証明している。
優れた演奏とは、一聴すると「シンプル、単純」に聴こえて、ジャズ者初心者ほど「誰でも演奏できるレベルで聴く価値なし」と思ってしまうのだが、それは間違い。テクニックが優秀な演奏ほど、優れたアレンジに出会うと、耳当たりの爽快な、スイング感&ドライブ感抜群の「聴きやすい」演奏に昇華する。
その耳当たりの爽快な、スイング感&ドライブ感抜群の「聴きやすい」演奏こそが、ジャズを聴き始めの「ジャズ者初心者」の方々にピッタリの入門盤なのだ。この『プリーズ・リクエスト』は、ジャズ者初心者向けのジャズ・ピアノ・トリオ入門盤の最初の一枚、と僕は評価している。
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