2026年3月 2日 (月曜日)

ピーターソンの真髄を捉えた名盤

MPSレコードの「ピーターソン盤」については、「Exclusively for My Friends」シリーズが、まず、真っ先に聴かれるべき、オスカー・ピーターソン率いるピアノ・トリオの名演が詰まっている。ピーターソンの弾き回しがダントツに映えまくる。ピーターソンのジャズ・ピアノの真髄を感じ取ることが出来る、圧巻のシリーズ。

Oscar Peterson『Girl Talk』(写真左)。1965年後半, 1966年11月, 1967年11月, 1968年4月の録音。ピーターソンの「Exclusively for My Friends」シリーズの第二弾。「E.f.m.f. 2」と並記されることもある。ちなみにパーソネルは、録音が4年に渡り、4回に分かれて録音されているので、ちょっと複雑。

まず、Oscar Peterson (p) は、リーダーでもあり、5つの曲全てを担当。Ray Brown (b) は、5曲目「Robbins' Nest」、Sam Jones (b) は、1曲目「On a Clear Day」, 2曲目「I'm in the Mood for Love」、3曲目「Girl Talk」を担当。Louis Hayes (ds) は、2曲目「I'm In The Mood For Love」と5曲目「Robbin's Nest」を、Bobby Durham (ds) は、1曲目「On a Clear Dayと, 3曲目「Girl Talk」を担当している。

① Oscar Peterson (p), Sam Jones (b), Bobby Durham (ds)
1曲目「On a Clear Day」と, 3曲目「Girl Talk」
② Oscar Peterson (p), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)
2曲目「I'm In The Mood For Love」
③ Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Louis Hayes (ds)
5曲目「Robbin's Nest」
 

Oscar-petersongirl-talk

 
以上、3つのセッション・メンバーの組みあわせ。ちなみに、4曲目の「Medley: "I Concentrate on You"〜"Moon River」は、Oscar Peterson (p) のソロ・パフォーマンス。このソロ・ピアノも極上。

アルバムに収録されている演奏は、「Exclusively for My Friends」シリーズの第一作目『Action』と同じ雰囲気だが、第一作目より、クールで落ち着いている。収録された5曲ともスタンダード曲。ホットな演奏も、バラード調の演奏も、ピーターソンのピアノは、かかることなく、上っ滑りすることなく、堅実に高速フレーズを弾きまくる。

1曲目「On a Clear Day」と、5曲目「Robbin's Nest」を比較すると判るが、Sam Jones (b), Bobby Durham (ds) のトリオ演奏の方が、ダイナミズムとフレーズのフレッシュさが勝る。以降、このピーターソン、ジョーンズ、ダーハムのトリオがパーマネント化していく。

「Exclusively for My Friends」シリーズ、そのいずれもが、ドイツのレーベルMPSのオーナーであるHans Georg Brunner-Schwer(ハンス・ゲオルク・ブルナーシュワー)の自宅スタジオでの録音。コマーシャルな側面を一切そぎ落とした、ピーターソンのピアノの真髄をアーティステックに捉えた名録音。ジャズ・ピアノの凄さの一面が体感出来る素晴らしいシリーズである。
 
 

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2026年3月 1日 (日曜日)

MPSオスカーの名刺代わり盤

ジャズ・ピアノは得意ジャンル。実際に若い頃、8年間、クラシック・ピアノを習ってたこともあって、ピアノのテクニックのこととか、歴史のこととか、人より判るところもあって、ジャズ・ピアノが一番、理解しやすい。そして、そのテクニックと歌心とスイング感について、一番バランスの取れたお気に入りのピアニストが、オスカー・ピーターソン。

Oscar Peterson『Action』(写真左)。1963年3月、1964年4月、西ドイツの「Hans Georg Brunner-Schwer Studio」での録音。MPSレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Ed Thigpen (ds)。ピーターソンの「Exclusively for My Friends」シリーズの第一弾。「E.f.m.f. 1」と並記されることもある。

凄まじいばかりの、目眩くオスカー・ピーターソン弾きまくりの世界である。即興ピアノの神様、アート・テイタムばりの高テクニック、高速フレーズも難なくこなす流麗かつダイナミックな右手。回る右手に推進力を与える、切れ味良く、スイング感抜群の力感溢れる左手。そして、バラード演奏に顕著な、洒脱に溢れんばかりの歌心。ピーターソンのピアノの個性と特徴の全てがこのアルバムに詰まっている。
 

Oscar-petersonaction  

 
ピーターソンのピアノの特徴のひとつに「クラシックからの影響が僅少」であるということ。いわゆる「ザ・ジャズ・ピアノ」という雰囲気で、ジャズ・ピアノ、ここに極まれり、という感じの、絶対的なパフォーマンスがこの盤に詰まっている。ただ、あまりに真剣にパフォーマンスしているので、ジャズ者初心者の方々には、ちょっと重いかもしれない。

トリオ演奏なのだが、この「E.f.m.f.」第一弾は、ベースはレイ・ブラウン、ドラムはエド・シグペンのヴァーヴ時代からの継承になっている。しかし、ヴァーヴ時代よりもダイナミックでメリハリがついていて、ピーターソンとガッチリ組んだインタープレイの嵐が心地良い。冒頭、コールポーターの「At Long Last Love」から、ラストの「Like Someone In Love」まで、スタンダード曲をメインに、珠玉のトリオ演奏が繰り広げられる。

MPSレコードの「ピーターソン盤」については、「Exclusively for My Friends」シリーズの一部がリイシューされなかったり、廃盤になったりして、全容がそろわなかったのだが、やっと昨年、サブスク中心にMPSレコードの「ピーターソン盤」が出揃った。今まで、後手後手に回っていた、MPSレコードの「ピーターソン盤」を一気に記事にしていく。そんなチャンス到来である。
 
 

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2026年1月26日 (月曜日)

オールド・スタイルなトリオ好盤

全曲、ジャズ・スタンダード曲で固められた、「オールド・スタイル」なピアノ・トリオで奏でられた、小粋なスタンダード曲集。全編、このピーターソン・オールド・スタイル・トリオでのダイナミックでスインギー、ハイテクニックで疾走感抜群なトリオ演奏。理路整然とした、ハードバップ’・スタイルの演奏で、聴いていて、安定感抜群。

Oscar Peterson『On the Town with the Oscar Peterson Trio』(写真左)。1958年7月1–5日、トロントのタウン・タバーンでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Herb Ellis (g), Ray Brown (b)。ドラムの代わりに、ハーブ・エリスのギターを入れた、当時、オスカー・ピーターソンお得意の「オールド・スタイル」なピアノ・トリオでのライヴ・パフォーマンス。

アレンジが良い。ピーターソンのそれぞれのジャズ・スタンダード曲の対する解釈が小粋で、スタンダード曲の持つ歌心を、ハイテクニックなオールド・スタイル・トリオが弾き進めていく。特に、ピーターソンのピアノが凄まじく、ライヴならではの所作なのだろう、もうオーヴァー・スイングといっても良い位、スイングしまくるピーターソンのピアノ。
 

Oscar-petersonon-the-town-with-the-oscar

 
このハイテクニックで、バリバリにスイングしまくるピアノに、堂々と相対するのが、エリスのギター。ピーターソンのピアノ捌きのスピードに応じて、緩急自在、硬軟自在、変幻自在にギターを弾きまくるエリス。このエリスのパフォーマンスも、このオールド・スタイル・トリオの聴きどころ。特に、ピーターソンのピアノとの絡みは、聴いていてゾクゾクする瞬間が沢山あって、楽しいことこの上無し。

そして、このピーターソンとエリスのパフォーマンスのリズム&ビートをしっかり支えるのが、レイ・ブラインのベース。ブラインのベースがあってこそ、ピーターソンとエリスのパフォーマンスが映えに映える、2人が安心して、カッ飛び演奏を繰り広げられる。音が大きく、ソリッドで、ブンブン胴鳴りするアコベは、このオールド・スタイル・トリオ演奏のベースをガッチリ支え鼓舞している。

この胸の空くような、オールド・スタイル・トリオのパフォーマンス。これまで、ほとんど陽の目を見ていないのが現状だろう。一般のジャズ者の方々でも、この盤の存在とその優れた内容を知る人は少ない。これは、ピーターソンにとっても不幸なことで、この盤、オールド・スタイル・トリオの好盤として、もっと評価されて然るべき盤だと僕は思う。とにかく、聴き終えた後、スカッと爽快感が心地良い好演である。
 
 

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2026年1月25日 (日曜日)

この ”My Fair Lady” 良しです

マイ・フェア・レディの楽曲のジャズ化としては、先行して、シェリー・マンのコンテンポラリー盤(ピアノは、アンドレ・プレヴィン)があって、この盤については、僕がジャズを本格的に聴き始めた、今を去ること、約50年前、ジャズ初心者向けの推薦盤だった。確かに、プレヴィンのアレンジが良く効いていて、ジャズ者初心者だった僕も、直ぐに入手して、しばらくの間、ヘビロテ盤だった記憶がある。

Oscar Peterson『Plays My Fair Lady』(写真左)。1958年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Gene Gammage (ds)。オスカー・ピーターソンがライフワークにしていた、ミュージカル曲集の第1弾。オスカー・ピーターソンならではのアレンジでブロードウェイ・ミュージカルの楽曲を上手くジャズ化している。

しかし、このオスカー・ピーターソンのマイ・フェア・レディの楽曲のジャズ化盤があるのを知ったのは、それから20余年後。21世紀に入ってからである。インターネット経由で、有名ジャズマンのディスコグラフィー一覧が入手しやすくなって、ピーターソンのディスコグラフィーを入手した時に、この盤の存在を知った。しかし、中古LPは見当たらず、CDリイシューもされてなく、聴きたくても聴けない状態が続いた。
 

Oscar-petersonplays-my-fair-lady

 
そして、いよいよCDリイシューされて、初めて聴いた訳だが、「あれ、シェリー・マン=プレヴィン盤より、内容が濃い」と思った。もともと、ジャズ・ピアノのヴァーチューゾのピーターソンである。ピーターソンのハイテクニックでドライブ感&スイング感抜群、歌心抜群のピアノを最大限に活かしたアレンジが素晴らしく、マイ・フェア・レディの楽曲を目眩くピーターソンのバリバリの弾きっぷりで、ハードバップ化していく。

ドライブ感&スイング感抜群なんで、ちょっと五月蠅く耳に付くかと思いきや、ピーターソンが弾き進めるフレーズが歌心抜群な分、全く気にならない、どころか、圧倒的なドライブ感&スイング感のお陰で、マイ・フェア・レディの楽曲の持つキュートさ、陽気さが全面に浮き出て、聴いていて、とても楽しく、そして、ピーターソンのピアノが映えに映えている。ジャズ・ピアノのトリオ盤としても、十分に優れた内容の演奏だと言える。

どうして、この盤、シェリー・マンのコンテンポラリー盤と同様、ジャズ初心者向けの推薦盤にならなかったのだろう。どうも、当時、我が国では、ピーターソンの人気はイマイチだったからなあ。でも、今の耳で聴いても、このピーターソンのマイ・フェア・レディ盤は優れている。シェリー・マンのコンテンポラリー盤と同等、若しくはそれ以上だろう。ちなみに、僕はどちらの盤も大好きだ。
 
 

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2026年1月22日 (木曜日)

”Night Train” 17年振りに記事化

レコード・コレクターズ2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」。日本の演奏家も含めて、ジャズ/フュージョンを代表するピアノの名演をまとめて紹介するというものだが、有名な名盤からちょっとマニアックな好盤から、ジャズ・ピアノの個性という切り口でチョイスし紹介している、好感の持てる企画記事である。

Oscar Peterson Trio『Night Train』(写真左)。1962年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p) Ray Brown (b) Ed Thigpen (ds) という、1959年以来の不動のメンバー。いわゆる、オスカー・ピーターソンの黄金の「ザ・トリオ」である。当ブログでは、2009年10月28日にて「ピアノ・トリオの代表的名盤・2」としてご紹介済み。

ピーターソンのピアノの凄いところは、アート・テイタムやバド・パウエルに匹敵するテクニックの持ち主だが、不必要にテクニックを前面に押し出さないところ。必要な時は、テイタムばりに、バドばりに、ガンガン弾きまくるが、アルバム・コンセプトとして不要な場合は、絶対に弾き過ぎない。非常に分別がある、理知的な、コントロールされたピアノが特徴。
 

Night_train 
 

冒頭のタイトル曲「Night Train」を聴くだけでそれが判る。とても素敵なブルース曲だが、ミッドテンポのゆったり悠然とした、余裕タップリの弾きっぷり。排気量の大きなスポーツカーが、般道路をゆっくりと悠然と走っているような感じ。指捌きを聴けば、ピーターソンのピアノ・テクニックの高さが直ぐに判る。

そして、テイタムやバドにはちょっと希薄な「スイング感」が、ピーターソンのピアノには「てんこ盛り」。ジャジーでブルージーでちょっとファンキーなスイング&ドライブ感が素晴らしい。歴代のジャズ・ピアニストの中で、最高にスイング&ドライブするピアノ、だと断言したい。特に、この盤では、実に趣味良くクールにスイングしている。

これは、テイタムやバドには無い、ピーターソン独特の個性である。ハイテクニックでスインギーにドライブするピーターソンのピアノ。テイタムは「エンターテインメント」、バドは「ストイック」、そして、ピターソンは「スインギーなドライブ感」。ジャズ・ピアノの「ハイテクニック3人衆」。ピーターソンのピアノには「成熟」を感じる。
 
 

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2026年1月19日 (月曜日)

MJQとピーターソン・トリオ

J.A.T.P.のステージから、MJQとピーターソン・トリオの演奏を収録したオペラハウスでの1957年ライヴ録音。ヴァーヴ・レーベルからスプリット・アルバムとしてリリースされ、LP時代、A面が「Modern Jazz Quartet」、B面が「Oscar Peterson Trio」。僕がジャズを聴き始めた頃は、このスプリット・アルバムというところが胡散臭くて、手を出すことは無かった。

Modern Jazz Quartet and Oscar Peterson Trio『At The Opera House』(写真左)。1957年10月19日、シカゴのオペラハウスでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), John Lewis (p), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)、以上【Modern Jazz Quartet (MJQ) 】、Oscar Peterson (p), Herb Ellis (g), Ray Brown (b)、以上【Oscar Peterson Trio】。

2018年、CDリイシューされた時に手にした。まず、MJQの演奏から始まる。冒頭の「D&E Blues」は録音状態が悪く、これは「スカ」盤を掴んだか、と思ったが、演奏が進むにつれ、録音状態は良くなっていく。1957年録音としては中程度。それでも、MJQの演奏の内容はしっかりと把握出来る。続く、ピーターソン・トリオの演奏については、録音状態はまずまず良好。ピーターソン・トリオの迫力ある演奏が記録されている。
 

Modern-jazz-quartetandoscar-peterson-tri  

 
MJQの演奏はたった3曲だが、MJQのライヴ演奏の優れたところがしっかりと把握出来る。冒頭「D&E Blues」は、ホットな演奏。ハイテクニックでスインギーな、MJQらしいスピード感のある演奏。続く「Now's the Time」は、パーカー作のホットなビ・バップ曲なんだが、MJQはクールで静的なバップ曲にリアレンジして演奏してみせる。静的だがビートはビ・バップ。3曲目の「Round About Midnight」は、他にない独特なアレンジで聴かせに聴かせる。

ピーターソン・トリオの演奏は全5曲。この頃のトリオは、ドラムの代わりにハーブ・エリスが入った「クラシック・ピアノ・トリオ」。このピアノ=ギター=ベースのトリオ演奏が迫力満点。スイングしまくるピーターソンのピアノに、エリスのギターがガッチリ絡む。オーバー・スイング気味にスイングしまくるピーターソンとエリス。そして、その演奏のベースラインをガッチリ押さえるレイ・ブラウンのベース。このトリオのベストに近いパフォーマンスが楽しめる。

ジャズ者初心者の方々に是非とも、という盤では無いが、ジャズを聴き始めて、ジャズというものがなんとなく判った、ジャズ者中堅、ジャズを本格的に聴き始めて10年位、MJQの名盤、ピーターソンの名盤を複数枚聴いたあとで、このライヴ盤を聴くと、やっぱりジャズはライヴを聴かないと、そのジャズマンの真の実力は判らないな、ということを再認識すると思う。曲数は少ないが、MJQとピーターソン・トリオのライヴの実力の高さが良く判る好ライヴ盤である。
 
 

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2025年12月21日 (日曜日)

クリスマス・ジャズの定盤・4

クリスマス・イヴまで、あと3日。今年もあと10日。知らないうちに今年も「暮れ」である。一週間前から、我がバーチャル音楽喫茶『松和』における「クリスマス・ジャズの定盤」をご紹介している。ここ『松和』では、イージーリスニング志向の、ラウンジ・ジャズ志向のクリスマス曲集は避けて、基本、純ジャズ志向、クロスオーバー&フュージョン志向の優れた「クリスマス・ジャズの定盤」を選んでいるつもり。今日はその4枚目。

Oscar Peterson『An Oscar Peterson Christmas』(写真左)。1995年1, 5, 6, 7月の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Dave Samuels (vib, trk: 3, 4, 7, 10, 12), Jack Schantz (flh, trk: 5, 6, 13), Lorne Lofsky (g), David Young (b), Jerry Fuller (ds), String orchestra conducted and arranged by Rick Wilkins。

ギター入りカルテットをメインに、要所要所、効果的にヴァイブとフリューゲルホーンが入る編成。そして、バックにストリングス・オーケストラが入るゴージャズな布陣。ただ、カルテットのメンバーはマイナーなメンバーばかり。リーダーのモダン・ジャズ・ピアノのレジェンド、ピーターソン以外は、あくまで、ピーターソンのピアノを前面に押し出し、映えさせる役割に徹している。
 

Oscar-petersonan-oscar-peterson-christma

 
端正で雄弁でスイング感抜群のピーターソンのピアノが、有名クリスマス・ソングをひとつひとつ、秀逸なアレンジの下、印象的に唄い上げていく。ここでのピーターソンは、弾き過ぎない、オーバースイングせず、適度な心地良いスイング感で、それぞれのクリスマス・ソングをカヴァーしていく。それでも、ピーターソン節は健在で、実に聴き応えのある、ピアノがメインのクリスマス・ジャズの名演である。

とにかく、アレンジが優秀。バックの伴奏は、ピーターソンのピアノを引き立てる。ストリングスのアレンジも控えめで良し。原曲のイメージをしっかり残しつつ、アドリブ部はしっかりとジャジーなハードバップな展開をしていて、このクリスマス曲のカヴァーは、しっかり純ジャズの範疇でのパフォーマンスで、モダン・ジャズとしての聴き応え十分である。

ジャズ・スタンダード曲集、イージーリスニング志向のラウンジ・ジャズ盤を制作したり、聴き心地優先のアルバムを作ってきた割に、これが、ピーターソン唯一のクリスマス曲集というのは意外だが、安易なクリスマス曲集を作りたくは無かったんだろう。これも、ピーターソンの矜持の表れといえるか、と。その矜持ゆえ、この唯一のクリスマス曲集、好盤です。
 
 

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2025年10月 7日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・301

現エストニアのタリンでのライヴ録音。タイトルは「イン・ロシア」だが、これは正確ではない。正確を期すなら「イン・USSR」もしくは「イン・エストニア」だろう。録音時は1974年。まだまだ冷戦真っ只中。どういう経緯で、当時のソヴィエトでのライヴ公演になったのだろうか。

Oscar Peterson Trio『Oscar Peterson In Russia』(写真左)。1974年11月17日、当時のソヴィエト連邦、現エストニアのタリンでのライヴ録音。パブロ・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Jake Hanna (ds)。

このライヴ盤を聴く限り、タリンの聴衆はモダン・ジャズをちゃんと理解して、有名スタンダード曲の時など、拍手が一層大きくなったり、ソロの展開の時もしっかりと聴き、ソロが終わると大きな拍手を送る。ソヴィエト占領下のタリンとはいえ、モダン・ジャズの理解は素晴らしいものがある。

ここでのピーターソンは、もともとのピーターソンの持つ実力を遺憾なく発揮している。この頃のピーターソンは、ベテランの域に達し、しかし米国のジャズは凋落の一途。ライヴによっては、独りよがりに、ハイ・テクニックの限りを尽くして、ピアノを勝手気ままに弾きまくって、顰蹙を買うこともしばしばだったが、ここでの、ソヴィエトでのピーターソンは違う。
 

Oscar-peterson-triooscar-peterson-in-rus

 
共産圏の聴衆に対して、アートとしてのモダン・ジャズを聴かせよう、と思ったのだろうか、このライヴ盤でのピーターソンは、実にアーティスティックで、実にジャジーで、弾き回しは、ダイナミズムはちょっと控えめに、適度に上品で端正、バリバリ勝手気ままに弾きまくること無く、「抑制の美」を身を持って示したような、上質でアーティステックなピーターソンのピアノがこのライヴ盤にてんこ盛り。

「抑制の美」を纏ったピーターソンは無敵である。気品漂う、小粋なフレーズを、ほど良く抑制、コントロールされたダイナミズムで、クラシックばりの途方もないテクニックで弾き回す。「これが、ジャズ・ピアノだ」と言わんばかりの上質でアーティスティックでジャジーな弾き回し。タリンの聴衆に対して、最高のジャズ・トリオのパフォーマンスのひとつを、誠実に格調高く弾き進めるピーターソン・トリオは立派だ。

選曲も共産圏の聴衆向けに、有名中の有名スタンダード曲や、ピアノ・トリオで映える小粋なスタンダード曲などが選曲されていて、聴いていて、とても楽しい。アレンジもいつになく優秀で、バックを司る、ペデルソンのぶんぶんアコベも良い音だして絶好調、ハナのドラミングもハードバップな堅実ドラミングで好調を維持。トリオ演奏として、水準以上を行く、1970年代のピーターソン・トリオの代表的演奏の一つがこのライヴ盤に記録されている。

面白いのはジャケット写真の「ピーターソンの服装」。定番の黒スーツではなく、カントリー調のデニム・ジャケットを纏ったラフな服装。クラシックではない、ジャズのピアノ演奏なんだと、デニム・ジャケットでアピールしたかったのだろうか。でも、意外と似合っている、と思っているのは僕だけだろうか。とにかく、このライヴ盤は好盤。ピーターソン者の方々は必聴でしょう。
 
 

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2025年1月13日 (月曜日)

小粋な『Reunion Blues』です

何も、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌のアルバム紹介に上がってくる「名盤」と呼ばれるものだけ、聴いていれば良い、というものでは無い。

ジャズ盤の裾野は広い。色々漁っては聴いていると、これは、という盤に出会う。僕はこれを「小粋なジャズ盤」と名付けて、「小粋なジャズ盤」のボックスを作って、このボックスに盤に入れて、時々、引っ張り出して、繰り返し聴き直している。

Oscar Peterson Trio with Milt Jackson『Reunion Blues』(写真左)。1971年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Milt Jackson (vib), Ray Brown (b), Louis Hayes (ds)。 MPSレーベルからのリリース。MPSらしい人選。小粋な組み合わせのカルテット編成。

バカテクでドライブ感&スイング感が半端ない、バリバリ迫力満点なピアノを弾きまくるオスカー・ピーターソン。ジャズ・ヴァイブの神様、ブルージー&ファンキーなヴァイブが素晴らしいミルト・ジャクソン。この二人をフィーチャーした、圧倒的な弾き回しが凄まじいカルテット演奏である。

まず、予想通り、ピーターソンのピアノが疾走する。圧倒的迫力のドライブ感&スイング感が半端ないピアノ。そして、そんなピーターソンに対峙する、これまた圧倒的迫力のブルージー&ファンキーな雰囲気が半端ないヴァイブ。
 

Oscar-peterson-trio-with-milt-jacksonreu  

 
これは、そんな二人のバトルが繰り広げられるのか、と思いきや、2曲目以降、極上のハードバップが展開されるのだから面白い。

歌心満点のミルトのヴァイブを、ピーターソンのピアノが絶妙にサポートする。実はピーターソンは伴奏上手。あの「バカテクでドライブ感&スイング感が半端ない、バリバリ迫力満点なピアノ」がバックに回って、抑制の美を漂わせながら、実に小粋なバッキングを施す。これが実に良い、これが実に「粋」なのだ。

そして、そんなピーターソンとミルトのフロントに、レイ・ブラウンのブンブン・ベースと、ルイス・ヘイズの小粋なバップ・ドラムのリズム隊が、これまた絶妙なリズム&ビートをフロントに供給する。このリズム隊の小粋な妙技がこの盤の「隠れた聴きどころ」である。

この盤は、バックに回った時のピーターソンの抑制の美を伴った、凄みのあるバッキングと、そんなバッキングに乗った、ファンクネスを増幅したブルージーな弾き回しのミルト、そして、ミルト&ピーターソンのリズム&ビートを支える、ブラウンとヘイズの小粋なリズム隊、を聴いて楽しむ「小粋なジャズ盤」である。
 
 

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2025年1月 4日 (土曜日)

ムーディーなピーターソンも良し

ジャズ盤を鑑賞する。有名盤や人気の名盤を聴き漁るのも良いが、あまり知られていない、内容充実の「小粋な」ジャズ盤を探して見つけて聴くのも良いものだ。聴いていて、ジャズの「粋」を感じ、ジャズの「心憎い」ところを感じる。そんな「小粋な」ジャズ盤を聴くのも、ジャズ盤鑑賞の醍醐味の一つである。

Oscar Peterson『Pastel Moods』(写真左)。1952年1月26日と1954年4月27日の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Irving Ashby (g), Herb Ellis (g), Ray Brown (b)ギターは2人のギタリストを使い分けていて、1952年1月26日の録音に Irving Ashby (g)、1954年4月27日の録音に Herb Ellis (g)。

超絶技巧、超スインギーなピアニスト、オスカー・ピーターソンのリーダー作。さぞかし、いつもの様にバリバリと超スインギーに弾きまくるんだろうなあ、と思いきや、タイトルとジャケを見ると、これって、ムーディーな雰囲気の内容なのかしらん、と訝しく思う。聴いてみると、あらら、ピーターソンがムーディーな、ラウンジ風のイージーリスニング志向のピアノを弾いているではないか。
 

Oscar-petersonpastel-moods

 
このラウンジ風のイージーリスニング志向のピーターソンのピアノが実に良い。もともと、とてつもなくテクニックに秀でたピアニストである。ムーディーにウォームに、しっかりとしたピアノを弾くのもお手のもの。この盤は、ピーターソンのピアニストとしての懐の深さ、引き出しの多さを強く感じる。

ドラムレス、代わりにギターが入る、ピアノ=ベース=ギターのオールド・スタイルのピアノ・トリオ。これが、この「ラウンジ風のイージーリスニング志向のピアノ」をさらに引き立てる。アシュリーもエリスも、これまたムーディーでウォームなギターで、ピーターソンのピアノに彩りを添える。硬質硬派なレイ・ブラウンのベースを、アクセントとアレンジに効果的に活かしている。

まるで、米国ウエストコースト・ジャズを聴く様な、と思いつつ、録音場所を見てみると、なるほど「ロサンゼルス」での録音である。ロスでの録音なので「ラウンジ風のイージーリスニング志向のピアノ」になったのではないだろうが、この盤では、ピーターソンのピアノは、「聴かせる、聴いて楽しむ」ウエストコースト・ジャズ志向のアレンジとプロデュースで、ムーディーでウォームなピアノに変身している。しかし、これもまた「乙なもの」である。
 
 

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