2026年6月 4日 (木曜日)

インプロバイザーなタウナーです

1977年から1981年にかけてのリリース。キース・ジャレット、パット・メセニー、チック・コリアといったスターたちの歴史的名盤を生み出し、レーベルの代名詞である「静寂の次に美しい音楽」という世界観を完璧に決定づけた、ECM Recordsのカタログ番号1101〜1199(1100番台)。今日はそのECM1121番。

Ralph Towner『Batik』(写真左)。1978年1月、オスロの「Talent Studios」での録音。ちなみにパーソネルは、Ralph Towner (12-string guitar, classical-g, p), Eddie Gómez (b), Jack DeJohnette (ds)。アコースティック・ギターの透明感あふれる響きとパフォーマンス、卓越したリズム隊による即興演奏とが融合した、「ECMのサウンド」を代表する好盤の一枚。

ECM御用達、ECMのハウスギタリストの一人、ラルフ・タウナーの繊細かつ耽美的なアコギとピアノに対し、ジャズ界屈指の実力派リズム・セクションの担い手、ベースのエディ・ゴメスと、ドラムのジャック・デジョネットを迎えた、変則的なピアノレス・トリオ(一部の曲でタウナーがピアノを演奏)で録音されている。特に、米国東海岸ジャズがメインのエディ・ゴメスの参加が目を引く。
 

Ralph-townerbatik

 
このアルバムの「静謐感とダイナミズム」は半端ない。ECM特有の「透明感のある美しい響き」をベースにしつつも、ディジョネットの躍動的でポリリズミックなドラミングと、ゴメスのゴリッとした強靭な骨太ベースが絡み合うことで、単なるヒーリング・ミュージック志向なニュー・ジャズに留まらない、欧州的で正統派硬派で、スリリングなジャズの即興性を生み出している。

タウナーの唯一無二の「12弦ギター」によるパーカッシブなアプローチが見事。ギター自体を打楽器のように激しく鳴らすことで、強靱なリズム隊と呼応して、トリオのグルーヴを先導している。そして、タウナーな優秀なピアニストでもある。この盤では、「ピアニスト」としてのタウナーの深化を感じることができる。タウナーの弾く叙情的なピアノと伝説的ベーシストのゴメスとが対話する瞬間は、贅沢な聴きどころである。

「Batik(バティック)」とはインドネシアなどの伝統的な「ろうけつ染め(更紗)」の意。その名の通り、音が幾重にも織り重なり、美しい模様を描き出すような芸術的な世界観が表現されている。そして、この盤には「ECM的アグレッシブさ」=ストレートなジャズの即興のスリルに溢れている。インプロバイザーとしてのタウナーをとことん楽しめる。
 
 

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2026年5月25日 (月曜日)

コナーズの奇跡的に美しい一瞬

ビル・コナーズ(Bill Connors)。1949年、米国ロス生まれで、今年で76歳、チック・コリアの第2期Return to Foreverの最初のギタリストというイメージが強い。『Hymn of the Seventh Galaxy』でのロック寄りの流麗でクロスオーバーなエレギが印象的だった。

だが、1975年、ECMから初リーダー作『Theme to the Gaurdian』をリリースした時には、全編アコースティック・ギターでの、内省的でリリカルで耽美的な、まさしく、ECMらしい内省的で空間美に溢れた「典型的なECMサウンド」を前提とした、フラメンコやクラシックの要素を孕んだダークかつ繊細なギタリストに変貌していた。

Bill Connors『Of Mist and Melting』(写真)。1977年12月、オスロの「Talent Studio」での録音。ECMの1120番。ちなみにパーソネルは、Bill Connors (g), Jan Garbarek (ts), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds)。そんな、米国出身のギタリスト兼作曲家ビル・コナーズの2枚目のリーダー作になる。

パーソネルが凄い。当時のECMレーベルを代表する「スーパーグループ」とも言える最高峰のカルテット構成で録音されている。北欧を代表するECMのハウス・サックス奏者、ヤン・ガルバレク、ベースのゲイリー・ピーコックと、ドラムのジャック・ディジョネットは、のちにキース・ジャレットの伝説的な「スタンダーズ・トリオ」を形成する最強のリズム隊である。
 

Bill-connorsof-mist-and-melting
 

リーダーのコナーズのフラメンコやクラシックの要素を孕んだダークかつ繊細なギターと、ガルバレクの透明感がありつつも情熱的なサックスのブローとが、美しいコントラスト。コナーズとガルバレクは、先日ご紹介した、ガルバレクの傑作『Places』にゲスト参加したことで意気投合して、このアルバムでの共演となったとのこと。

コナーズは「このECM時代はクラシック(ナイロン弦)ギターに異常なほど没頭していた」と回想している。完璧なフィンガー・ピッキングによる室内楽的なダイナミクスが特徴で、音楽的には、冷徹で理知的な北欧の「静寂(Cool)」と、フリージャズやフラメンコに近いアグレッシブな「情熱(Hot)」が絶妙にブレンドされている。

しかし、このアルバムにおいては、コナーズのリーダー作であるのも関わらず、ガルバレクのサックスの存在感が圧倒的。ガルバレクの独自のサックスの音色が非常に目立つ(笑)。最初、聴いた時は、このアルバムは「ガルバレクのリーダー作」と勘違いしたくらいだ。確かに、主役であるはずのコナーズのアコギや、ピーコックのベースの音が控えめで、ミキシングにちょっと問題を抱えていた様にも感じる。

それでも、このアルバムは、素晴らしい透明感と3次元的な空間表現、コナーズのアコギとガルバレクの、耽美的で躍動的なコントラスト、ピーコックとディジョネットの卓越したインタープレイを前提とした、内省的で空間美に溢れた「典型的なECMサウンド」を展開した好盤として評価されて良い。コナーズのアコギの「奇跡的に美しい一瞬を切り取った一枚」でもある。
 
 

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2026年5月17日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・322

テリエ・リピダルのパフォーマンスの個性濃厚な音世界が広がる。北欧の冷涼で霧がかった空気感を体現したような、独特のサスティーンの響きと浮遊感を持つクロスオーバー&フュージョン・ジャズ。ECMレーベルの音独特の深いエコーのかかったギターの響き。北欧流ポスト・エレ・マイルス的な内容。クロスオーバー&フュージョン志向のエレ・ジャズの名盤である。

Terje Rypdal『Waves』(写真左)。1977年9月、オスロの「Talent Studio」での録音。ECMの1110番。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (el-g, syn, RMI keyboard computer), Palle Mikkelborg (tp, tack piano, RMI keyboard computer, ring modulator), Sveinung Hovensjø (6&4 string el-b), Jon Christensen (ds, perc)。ECMレーベルから発表した通算7枚目のスタジオ・アルバムである。

リピダルの音の美学がこのアルバムに結実している。ボリューム・ペダルを駆使したエコーの効いたギター・サウンドが実に幻想的に響き渡る。トランペットをはじめ様々な楽器を操るパレ・ミッケルボルグが参加が、リピダルの音世界に素晴らしい彩りを添えている。
 

Terje-rypdalwaves

 
ミッケルボルグが操るシンセサイザーや管楽器が重厚かつ幻想的なレイヤーを作り上げている。リング・モジュレーターをはじめとするエフェクターを駆使したエレクトリックな管楽器サウンドが、リピダルのギター・サウンドと共鳴して、幻想的な音世界を濃厚なものにしている。その音世界のボトムを支える、スヴェイヌン・ホヴェンショのうねる変則ベースラインの存在もこの盤のユニーク性に拍車をかける。

当時としては先進的だったアナログなリズムボックス(リズムマシン)のチープで高速なパターンが導入されているのが特徴的。そこに、ヨン・クリステンセンの生々しく繊細なドラムが絡み合うという、極めてユニークなポリリズム的アプローチが試みられている。これが今までのジャズっぽく無いリズム&ビートの正体。これも、リピダル独特の音世界をより幻想的にしている。

シンセサイザーによるアンビエント&ニューエイジ的な静寂と、ロックのダイナミズムをシームレスに融合させる独自のスタイルを確立させている。音の雰囲気は、ECMレーベルにおける「欧州プログレッシヴ・ロック」とでも形容しようか。ECMレーベルにはちょっとばかし似使わないジャズ・ロック&エレ・ジャズな音世界ではある。ECMの総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーって、もしかしたら「プログレ・ファン」なのかもしれない(笑)。
 
 

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2026年5月 8日 (金曜日)

サンタナとアリスとのコラボ

この作品は、サンタナがインドの導師シュリ・チンモイに師事し「デヴァディップ(Devadip)」という霊名を受けた時期に制作されている。ジョン・コルトレーンの妻であり、自らも優れたピアニスト・ハープ奏者であるアリス(霊名トゥリヤ)との共演は、サンタナのキャリアにおいて最も瞑想的で、ジャズの即興演奏に深く踏み込んだものとなっている。

Carlos Santana,Alice Coltrane『Illuminations』(写真)。邦題「啓示」。1974年の作品。ちなみにパーソネルは、以下の通り。スピリチュアル・ロックの雄、カルロス・サンタナと、スピリチュアル・ジャズの歌姫、アリス・コルトレーンとのコラボレーション盤である。

Alice Coltrane (p, harp, Wurlitzer electric organ), Carlos Santana (el-g), Dave Holland, James Bond (b), Jack DeJohnette (ds, perc), Tom Coster (el-p, Hammond B-3 organ), Jules Broussard (ss, alto-fl), Phil Brown (tanpura), Armando Peraza (ds, congas), Phil Ford (tablas)。ここに、アリス・コルトレーンがアレンジ&指揮を担当するストリングス・セクションがバックに入る。

アリスによる壮大なストリングス・アレンジとハープ、サンタナの官能的なギターが溶け合い、東洋的な響きと宇宙的な広がりを持っている。アルバムは、シュリ・チンモイによる短いモノローグから始まり、瞑想的な前半から激しい即興演奏の後半へと展開する。そう、この冒頭の「Guru Sri Chinmoy Aphorism(スリ・チンモイの教え」の1分11秒に怯んではいけない(笑)。
 

Carlos-santanaalice-coltraneillumination

 
オーケストラによる「静」。前半の「Angel of Air」や「Angel of Water」では、アリスが編曲・指揮した壮大なストリングス・オーケストラが導入されている。サンタナのギターは音数が極めて少なく、フィードバック音やサステインを活かしたアンビエントな響きで、背景のハープや弦楽器と溶け合っている。

フリージャズの「動」。 中盤の「Angel of Sunlight」は約14分に及ぶ大作で、ジャック・ディジョネットの激しいドラミングとデイヴ・ホランドのベースが牽引する、ジョン・コルトレーン後期のスタイルに近いアグレッシブなフリージャズを展開されていて見事。

この瞑想的な「静」と、フリージャズ的な「動」の対比が鮮明なのが、この盤の個性だろう。ウーリッツァー・オルガンの音色も特徴的。アリス・コルトレーンがピアノやハープだけでなく、歪んだ音色のオルガンを弾くことで、宇宙的な広がりを加えている。サンタナのエレギは、「弾かない」勇気とロングサステイン、クリーンと歪みの使い分け、フィードバックを「楽器」として操り、スピリチュアルな「叫び」を表現する。

当時の商業的な成功には恵まれなかったが、現在では「スピリチュアル・ジャズの隠れた名盤」として高く評価されている。サンタナの2面性、ラテン・ロックとスピリチュアル・ロック、このスピリチュアル・ロックの個性が、アリス・コルトレーン独特のスピリチュアル・ジャズと融合して、唯一無二の、他に類を見ない、ロックとジャズが融合した「スピリチュアル・ジャズ」を生み出している。
 
 

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2026年5月 2日 (土曜日)

エリスとグリーンのギター共演

演奏の雰囲気・演奏のトレンドは「スイング」。スウィング・ジャズの真髄を楽しめる好盤。カウント・ベイシー楽団の象徴であるフレディ・グリーンが、楽団を離れてリーダー格として録音に参加、スインギーでブルージーな職人ギタリストのハーブ・エリスと共演、エリスとグリーンの2台のギタリストがフロントのクインテット編成。

Herb Ellis & Freddie Green 『Rhythm Willie』(写真左)。1975年1月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Herb Ellis (g), Freddie Green (g), Ross Tompkins (p), Ray Brown (b), Jake Hanna (ds)。ギタリストのハーブ・エリス(Herb Ellis)とフレディ・グリーン(Freddie Green)による共演アルバム。

とりわけ、カウントベイシー楽団のリズムギタリストとして活躍、生涯にわたってリズムマンに徹した、フレディ・グリーンの堅実でスウィング感溢れるバッキング(4つ刻みのリズムギター)が、ハーブ・エリスの流麗なソロを完璧にサポートしている展開には、うっとりと聴き惚れるほど。小粋でスインギーな二人の職人芸的ギターが堪らない。
 

Herb-ellis-freddie-green-rhythm-willie

 
とにかく、まずは、グリーンのリズム・ギターが素晴らしい。さすが、アルバム・リーダーの一翼を担ってるだけに、フレディ・グリーンのリズム・ギターの「聴きどころ」が満載。フロントに管が無い、ピアノがロング・ソロを取らないということから、グリーンリズム・ギターの詳細が確実に聴きとれるところが、とにかく堪らない。

もう一人のリーダー、ハーブ・エリスのギターも良い。ここでのエリスは、東海岸のアーバンな雰囲気とも、西海岸のシャープな雰囲気とも離れた、出身地のテキサスなイメージの、「中西部的」な素朴な味わいのフレーズを叩き出している。これが、カンザス・シティ・スタイルのグリーンのリズム・ギターにバッチリで、もう長年、パートナーとしてやっている様な、濃厚な親密感溢れるギターがこの盤の目玉だ。

グリーンが遺した数少ないベイシー楽団を離れてのセッションの一つ。フュージョン全盛期にあえてストレートなスウィング・ジャズを追求したセッション。コンコード・レコードには、こういった、フュージョン全盛期にリリースされた、優れた内容の純ジャズ盤が多々あるのだが、なぜか積極的に聴かれることが少ない。この『Rhythm Willie』は、今一度、再評価すべき、1970年代の純ジャズの隠れ好盤の一枚である。
 
 

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2026年4月29日 (水曜日)

”新局面を迎える” 浅利史花です

プロ活動10周年を迎える浅利史花が、伝統的なオルガン・ジャズの系譜を受け継ぎながら、新たなステージへと踏み出した意欲作。これまでのキャリアを土台にしつつ、タイトルには、次の10年に向けて「新しいフェーズ(段階)」へ踏み出すという決意が込められている、とのこと。「伝統への敬意と、自分らしい新境地の融合」がテーマ。

Fumika Asari『Enter A New Phase』(写真左)。2026年4月のリリース。ちなみにパーソネルは、浅利史花 (g), 長田信慶 (org), 柳沼佑育 (ds), ゲストに, 江澤茜 (as, : trk 4,6,8)。 日本のジャズギタリスト、浅利史花(あさり ふみか)のサード・アルバム。基本はギター・オルガン・ドラムの「OGDトリオ」スタイルで、一部楽曲にサックスが加わる。

今作の最大の特徴は、全編を通してオルガン・ジャズのスタイルを採用している点。伝統的で一番基本となる、ピアノ入りのギター・カルテットをメインにやってきたが、端正なバップスタイルの浅利のギターがあまりに綺麗過ぎて、伝統的なピアノ入りギター・カルテットでは、ジャズ・ギター独特のアーバンでジャジーでファンキーな雰囲気が立ち上がってこない。
 

Fumika-asarienter-a-new-phase  

 
そこで、このギター・オルガン・ドラムの「OGDトリオ」スタイルである。まず、オルガンが効いている。オルガンのファンキーでジャジーなグルーヴが、浅利のギターにファンクネスをふんわり塗して、浅利のギターがよりジャジーに響く。この「OGDトリオ」スタイルの採用が、浅利のギターに新たな魅力を付加した。そんな雰囲気がダイレクトに伝わる内容。

収録曲はスタンダード・カバー4曲+浅利オリシナル4曲の全8曲を収録。オリジナル曲は、当然、浅利のギターが映える曲で良い感じなんだが、やはり、スタンダード曲の「You Don't Know What Love Is」や「I'll Close My Eyes」の彼女独特の解釈とアレンジが現代的でグッド。決して、過去の成果に引き摺られていないところがグッド。

江澤茜のアルト・サックスのゲスト参加も効いている。演奏全体のファンキー度が上がって、浅利の端正で流麗なギターが浮き出てくる様な、不思議なアレンジ効果を生んでいる。オルガンとアルト・サックスの参加で、浅利のギターにファンクネスがふんわり被って、浅利のギターが正統派ジャジーなバップ・ギターにステップアップしている。3枚目のリーダー作。浅利のギターはその個性を確立した感がある。
 
 

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2026年4月23日 (木曜日)

再ミントンハウスのクリスチャン

チャーリー・クリスチャンは1916年生まれ。ジャズ・ギターの開祖とされるレジェンド。1939年、ベニー・グッドマン楽団のメンバーに起用される。楽団で演奏活動を行う一方、ニューヨークで、次世代のジャズを担うであろうキーマン的ジャズマン達、ディジー・ガレスピー、セロニアス・モンクらと出会い、ジャム・セッションを重ねる。

Charlie Christian & Dizzy Gillespie『Jazz Immortal: After Hours Monroe's Harlem Mintons - Live』(写真左)。1941年5月、ハーレムにあるミントンズ・プレイハウスでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charley Christian (g), Dizzy Gillespie, Joe Guy (tp), Don Byas (ts), Kenny Kersey, Thelonious Monk (p), Nick Finton (b), Kenny Clarke (ds)。

1941年5月、ハーレムにあるミントンズ・プレイハウスで行われた「ビ・バップ誕生前夜」の必殺ライヴ音源。そんな、次世代のジャズを担うであろうキーマン的ジャズマン達と、ジャズ・ギターの開祖とされるレジェンド、チャーリー・クリスチャンとのジャム・セッションの記録である。録音したのは、アマチュアのジェリー・ニューマン。ダイレクト・カッティング方式の機械を持ち込んで収録したらしい。

2000年のリマスター音源を聴いているのだが、これが意外に良い。チャーリー・クリスチャンのギター・ソロもクリアーに録れていて、ガレスピーのトランペットや、ドン・バイアスのテナーのソロなど、躍動感の感じられる音で、なかなかに楽しめる。以前は、いかんせん、録音が悪いなあ、とヘビロテ盤とまではいかなかなったが、この音質であれば、ながら聴きにも十分耐える。
 

Charlie-christian-dizzy-gillespiejazz-im

 
チャ-リー・クリスチャンが、ジャズ界に残した功績は、それまでコード弾きでリズム楽器、若しくは伴奏楽器として、バッキング・オンリーだったギターという楽器を、脅威の一本弾きで、管楽器同様、フロント楽器として、ソロがとれる楽器へと進化させたこと。

そのフロント楽器としてのソロ・パフォーマンスがこのライヴ盤にしっかりと記録されていて、今の耳にも十分に訴求するテクニックの素晴らしさ、フレーズのユニークさである。このライヴ盤でのチャーリー・クリスチャンのギターを、現代のジャズ・シーンに持ち込んでも十分に通用する内容とテクニックの高さ。電光石火なクリスチャンの「カッ飛び」ソロは聴き応え十分。

ちなみに、このライヴ盤は、チャーリー・クリスチャンとディジー・ガレスピーとの双頭リーダー扱いになっているが、そもそも、チャーリー・クリスチャンは生涯、リーダー作を出していない。

わが国では、邦題「ミントンハウスのチャーリー・クリスチャン」でリリースされているのでややこしいのだが、収録全9曲中、5曲までチャーリー・クリスチャン入りのジャム・セッションの記録になる。その5曲「Swing to Bop」「Stompin' at the Savoy」「Up on Teddy's Hill」「Guy's Got to Go」「Lips Flips」のパフォーマンスで、チャーリー・クリスチャンの弾くギターの特徴がはっきりと判る。

2000年のリマスター音源では、ジャズ者初心者の方々にもお勧め出来る音質になっていて、チャーリー・クリスチャンの「ジャズ・ギターの開祖」とされる所以が良く判る。今までは、ジャズ者中堅の方々からジャズ者ベテランの方々向け、としていたが、音質が改善された音源については、ジャズ者初心者の方々に是非、聴いて欲しいレベルのライヴ盤に昇格している。
 
 
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2026年4月21日 (火曜日)

”Virtuoso” =名手, の再聴です

最近、音楽のサブスク・サイトでも、クラシック・ジャズ、特に、ハードバップの名盤・好盤のリマスターがどんどん出てきている。もうウハウハである(笑)。今も昔もリマスターされるアルバムは、いつの時代にも代表作とされる名盤・好盤が中心。絵に描いた名盤をリマスターというよりは、どこかマニアックで、ジャズ者の心の吟線に触れる様な好盤のリマスターが進んでいる。好ましい限りである。

Joe Pass『Virtuoso』(写真左)。1973年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Pass (g)のみ。ジャズ・ギタリストの重鎮、ジョー・パスのソロ・パフォーマンスを記録したアルバム。タイトルの「Virtuoso」=名手、の通り、ジョー・パスの超絶技巧なテクニックと、溢れんばかりの歌心、個性溢れるアドリブ・フレーズの数々を心ゆくまで楽しめる名盤である。

改めて、今回の「2023年リマスター」盤を聴いたのだが、もともと録音の良かった盤ではあるが、リマスターにより、ギターの音がさらに豊かになり、コード弾きの和音の倍音の拡がりが聴き取り易くなっている様に感じる。タイトルの「Virtuoso」=名手、が更に実感となって感じられる、そんなリマスター盤になっている。
 

Joe-passvirtuoso  

 
ギターのソロは、一番悩ましいのが、正確な揺るぎの無いリズム&ビートの維持。ピアノのソロの様に、左手でリズム&ビート、右手でフレーズを同時に弾くということはギターは出来ない。ストローク&コード弾きでリズム&ビート、そして、一本弾きもしくはオクターヴ奏法でフレーズ、と別々に弾くしかない。体内のリズム&ビートを感じながらの旋律弾きとなるんで、これはもう才能の域である。

冒頭の「Night And Day」は、この盤の魅力的な内容を誇るオープナーな1曲。パスの考えるギター・ソロパフォーマンスにおけるテクニック、表現方法の全てがこの曲に詰まっている、そんな感じの「パスのギターの全て」が凝縮された様な演奏。5曲目の「How High The Moon」の超絶技巧なテクニック、正確無比なタイム感覚、想像的なバップ・フレーズ。続く「Cherokee」も凄まじいテクニックの嵐。速い一本弾きのフレーズの弾き回しには胸の空く思い。

リマスター効果が良く出ている。音の鮮度が良くなった分、曲毎の演奏の展開、披露するテクニックについては、曲が進むにつれ「マンネリ化」することなく、十分な鮮度を保ったまま、ソロ・パスーマンスは粛々と進んでいく。ジャズが斜陽化しつつある時代に、このソロ・パフォーマンス。今一度、ジョー・パスを深掘りする必要がありそうだ。
 
 
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2026年4月 1日 (水曜日)

ガボール・ザボのCTI第2弾

ガボール・ザボは、1936年生まれのハンガリー出身のギタリスト。ジプシー特有のフィーリングのプレイが特徴。不思議な響きと不思議なフレーズを持ったギター。

従来のスタンダードな、ジャズ・ギターの音色がしないし、展開やフレーズも、従来のジャズ・ギターの伝統を全く引き継いでいない。ちょっとマイナーな響きが特徴。このマイナーな哀愁たっぷりなギターを捉えて「ジプシー・ギター」と形容する人もいる。

Gabor Szabo『Rambler』(写真左)。1973年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Gábor Szabó (g), Bob James (p, org, syn), Mike Wofford (el-p), Wolfgang Melz (b), Bobby Morin (ds), Unknown (perc)。

タイトル邦題「放浪者」をテーマに、ストーリー性を持たせた内容の企画盤。ボブ・ジェームスが「音楽スーパーバイザー」を担った、クロスオーバー志向のエレ・ジャズ。CTIレーベルにおけるグルーヴィーでメロウな、クロスオーバー志向のソウル・ジャズと形容してもよい、ユニークな内容のCTI盤。

欧州の、東欧のローカルな響きが耳新しい、哀愁感を強く帯びた、テクニック優秀なジャズ・ギターが相変わらず炸裂している、CTIレーベルでの第2弾である。
 
Gabor-szaborambler  
 
アルバム全体の雰囲気は、ポップで流麗な、ちょっと、イージーリスニング志向を意識した音作りになっている。フュージョンの様な「ソフト&メロウ」まではいかないまでも、メロウな雰囲気の静かな曲は、フュージョンの先駆けと言えるのではないか。

それでも、ザボのギターは、個性的な、国籍不明、ジャンル不明な、硬質でロックっぽい、ちょっと「ヘタウマ」なギターのままで、ただ、弾き紡ぐフレーズは、判り易く、チャッチーで明るい哀愁感をまとった、ポップなフレーズに変化している。これは明らかに、CTIの総帥プロデューサーのクリード・テイラーの志向ではないだろうか。

タイトでグルーヴィーなリズムセクションとザボ節のギターが絡み合うジャズ・ファンクな、冒頭のタイトル曲「Rambler」、ジプシー・ギターの神様、ジャンゴ・ラインハルトに捧げた「Reinhardt」を中心に、メロウな曲を効果的に挟んだ、メリハリのある収録曲の構成が意外と填まっている。

ポップ化が進んだガボール・ザボのクロスオーバー・サウンド。ここでも、ボブ・ジェームスのアレンジと、音楽スーパーバイザーとしての役割が好要素として効いている。
 
 

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2026年3月31日 (火曜日)

Side-Eyeプロジェクト第2弾

パット・メセニーは、今年71歳。盟友ライル・メイズが2020年に亡くなって、パット・メセニー・グループの活動は停止した。ソロ活動のみに集中して現在に至る。2021年リリースの『Side-Eye NYC(V1.IV)』は、久しぶりに「PMGサウンドに通じるパット」らしい内容で、聴いていてワクワクした。

Pat Metheny『Side-Eye III+』(写真左)。2026年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (g, syn), Chris Fishman (p, key, org), Daryl Johns (b), Joe Dyson (ds) 以上が、パーマネント・グループ、そして、ゲストに、Brandee Younger (harp), Luis Conte (perc), Vincent Peirani (accordion)。気鋭の若手アーティストを迎えるSide-Eyeプロジェクト待望の第2弾。

良い感じだ。往年のパット・メセニー・グループ(以降PMGと略)のファンの僕としては、満足のSide-Eyeプロジェクトの第2弾である。スタジオ録音としては6年振り。第1弾の『Side-Eye NYC(V1.IV)』以降、アコースティック・ギターがメインの静的、耽美的な「趣味的作品」が続いたので、もう「PMG」サウンドは無いのか、やはり、メイズがいないと駄目なのか、と思っていたので、このアルバムのリリースは嬉しい限り。
 

Pat-methenysideeye-iii  

 
何度も書くが、「PMG」サウンドの復活である。第1弾の『Side-Eye NYC(V1.IV)』はライヴ録音だったので、躍動感が半端なかったが、今回はスタジオ録音。じっくり作り込まれた感がビンビンにする、「今」のPMGサウンドが、この盤に溢れている。やっぱり、メセニーのギター・シンセは良いなあ。このギター・シンセを聴くだけで、頭の中は多幸感で溢れます(笑)。

サウンド的には、往年のPMGサウンドよりも幅が広がっていてグッド。4曲目の「Urban and Western」では、オルガンが良い味を出していて、ゴスペルチックな雰囲気が充満する。2曲目の「Don't Look Down」では、パーカッションが大活躍。今まで無い激しいパーカッション。躍動感半端ない。

フォーキーでネーチャーな、従来のPMGサウンドに、ゴスペルなどのアメリカン・ルーツ、打楽器の多用によるアフリカン・ルーツ。パットの考える「PMG」サウンドは、ワールドワイド志向に拡がりを見せている様に感じる。まだまだ、深化していくのではないか。このアルバムには、PMGサウンドの「今」が詰まっている。
 
 

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