2024年10月30日 (水曜日)

お蔵入りに「成熟」を聴くJM

ショーターが、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ(以降、JMと略)の「新・音楽監督」として残したショーター流モード・ジャズは、モーガンのトラペット、ショーターのテナーの「2管フロント」時代と、トロンボーンのフラーを追加した「3管フロント」時代と、2つの時代に分けることが出来る。今回は「2管フロント」時代のお蔵入り盤のレビューである。

Art Blakey and The Jazz Messengers『The Witch Doctor』(写真左)。1961年3月14日の録音。1967年のリリース。ブルーノートの4258番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp, flh), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。モーガンのトラペット、ショーターのテナーが2管フロントのクインテット編成。

この1961年3月14日のセッションは、録音後、丸々、お蔵入りになっている。もともと1961年のJMはブルーノートを中心にかなりの量の録音を残している。お蔵入りになったのは、あまりの乱発になるのを防ぐ為だったのだろう。しかし、内容は一級品揃いで充実しているものばかり。お蔵入りにしっぱなしでは惜しいので、徐々に蔵出しイシューしていった。その一枚がこの盤である。
 

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まだ3管フロントになる直前(約3ヶ月後に3管フロントになる)、2管フロントのショーター流モード・ジャズなJMである。内容はかなり充実していて、一言で言うと「2管フロントのショーター流モード・ジャズ」の成熟を聴くことが出来る好盤である。スタジオ録音後、即アルバム化された『A Night in Tunisia』が、1960年8月の録音なので、それより、7ヶ月も後なので、『A Night in Tunisia』と比較すると、やはり、「2管フロントのショーター流モード・ジャズ」は更に成熟度を増している。

特に、新・音楽監督でもあるショーターのテナーの迫力が凄い。分厚い切れ味の良いラウドな音で、本家本元のショーター流モード・ジャズのモーダル・フレーズを吹きまくっている。このショーターのテナーの吹きまくりが凄い。ショーターのテナーは意外に冷静沈着な風情のモーダル・ブロウが印象的なんだが、この盤ではエネルギッシュでバイタルでモーダルな吹きまくりが凄い。

ショーター流モード・ジャズに完全適応しているモーガンのトランペットももちろん素晴らしいパフォーマンスなのだが、それを凌駕するショーターのテナーがグイグイ前へ出てくる。クインテットのグループ・サウンズという面では、ちょっとショーターが前面に出過ぎたきらいがあるので、それがお蔵入りになった理由かもしれない。
 
 

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2024年10月29日 (火曜日)

インパルスのモーダルな「JM」

ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズ(JM)のそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。

『Art Blakey and the Jazz Messengers(1961 album, Impulse!)』(写真左)。1961年6月13, 14日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。モーガン、フラー、ショーターの3管フロントのセクステット編成。

1960年3月6日録音の『The Big Beat』から参加したウェイン・ショーター。ベニー・ゴルソンに代わる「新・音楽監督」として、辣腕を振るう。『Moanin'』で一世を風靡した、ファンキー・ジャズの旗手的存在だったジャズ・メッセンジャーズに、当時、ジャズ奏法の最先端だった「モード・ジャズ」を徐々に導入して行った。
 

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バリバリのファンキー・ジャズをやっていたJMが、いきなりモード・ジャズに転身する。ショーターは音楽監督として、徐々にモード・ジャズに対応する作戦に出る。まず、真っ先に、リーダーのブレイキーのドラムがモードに適応、ほどなく、トランペットのモーガンが適応し、フラーがそれに続く。そして、ベースのメリットが何とかモードに対応。しかし、ピアノのティモンズは時間がかかった。

しかし、『The Big Beat』から1年3ヶ月。ティモンズもしっかりモードに対応している。しかも、ブロック・コードを織り交ぜた、独特のモード奏法で、実に個性的なモーダルなパフォーマンスを展開している。この盤は、JMがモードに完全適応した姿を記録していて、演奏全体の雰囲気は、端正で整然として内容の濃い、JMならではのモード・ジャズを展開している。

この盤のセッションで、新・音楽監督のウェイン・ショーターが推進してきた、JM流のモード・ジャズは完成したイメージである。それぞれのメンバーの演奏は充実、完全にモードに適応。ただ、ティモンズのピアノだけが、ショーターのモードではなく、ティモンズ独自のモードで展開しているところが気になると言えば気になる。が、アルバム全体の印象は良好。
 
 

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2024年10月28日 (月曜日)

叙情的ジャズ・メッセンジャーズ

ジャズを本格的に聴き始めた頃から「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」はお気に入り。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズのアルバムを聴き通すだけで、ジャズの演奏トレンド、演奏志向の歴史が判る。

ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズのそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。

逆に、それぞれの時代での「音楽監督」が表現するジャズの演奏トレンド、演奏志向に、ドラマーとして、ことごとく適応していった。ブレイキーのドラマーとして能力の高さを如実に表しているエピソードである。

Art Blakey and the Jazz Messengers『Like Someone in Love』(写真左)。1960年8月7日 (#3, 4, 6) と、8月14日(#1, 2, 5)の録音。リリースは1967年。ブルーノートの4245番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp, flh), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。LP時代は全5曲。6曲目はCDリイシュー時のボートラ。

ブルーノートの名盤、4049番『A Night In Tunisia』と、同日セッションの音源で構成されたアルバム。1960年に録音され『A Night In Tunisia』は、1961年5月に、ほぼリアルタイムでリリースされている。が、この盤は録音から7年経ってのリリース。裏『A Night In Tunisia』とも呼ばれるアルバムである。よって、アルバム評も『A Night In Tunisia』との比較がメインとなる。
 

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4049番『A Night In Tunisia』は、演奏全体の雰囲気が躍動的でバップ志向、それを前提にモーダルな演奏が展開される。4245番『Like Someone in Love』は、演奏全体の雰囲気が叙情的でリリカル、それを前提にモーダルな演奏が展開される。どちらもモード・ジャズの良好盤であるが、敢えて言うなら、『A Night In Tunisia』は「動」、『Like Someone in Love』は「静」。

新「音楽監督」のショーターが腕をふるう、叙情的なモーダルな演奏が実に心地良い。叙情的な、ゆったりしたテンポの演奏では、意外とモードは難物なんだが、この時代のジャズ・メッセンジャーズはこともなげに、粛々と、ミッドテンポ中心の叙情的でリリカルなモーダルな演奏を徹頭徹尾、繰り広げている。

タイトル曲の冒頭「Like Someone in Love」がこのアルバムの雰囲気を代表している。美しくドラマティックな展開のアレンジが秀逸。叙情的でリリカルなモード・ジャズが、意外とジャズ・メッセンジャーズの「別の側面」を聴いてりう様で実に良い。

熱くエネルギッシュでバップな演奏ばかりでは無い。こういった叙情的でリリカルなモード・ジャズもこともなげに、上質に演奏に仕立て上げるところは、この時代のジャズ・メッセンジャーズのポテンシャルの高さを物語る。

この『A Night In Tunisia』は、4049番『A Night In Tunisia』と併せて聴いて、その魅力は倍増する。「動」な演奏と「静」な演奏との対比も美しいし、「ショーターの考えるモード・ジャズ」が完成の域に達していることを確認できるのも、この盤のメリットだろう。
 
 

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2024年10月27日 (日曜日)

”暗黒時代の音” では無いですね

ホレス・シルヴァーと袂を分かって、ブレイキー単独となったメッセンジャーズ。ブルーノートに移籍してブレイクする前のアルバム群。以前のジャズ盤評論としては「ブレイク前のメッセンジャーズの暗黒時代」とされる時代のアルバム達。しかし、そうだろうか。僕はこのアルバムを実際に自分の耳で聴いて、この盤は決して「暗黒時代」の音では無い、と判断している。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Ritual』(写真)。1957年1月14日と2月11日、NYでの録音。Pacific Jazzからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Bill Hardiman (tp), Sam Dockery (p), Spanky DeBrest (b), Art Blakey (ds)。

ジャズ・メッセンジャーズに、若き日の「常に前進するアルト・サックス奏者、ジャキー・マクリーン」が参加している。フロントのトランペットにビル・ハードマン。ピアノとベースはマイナーな存在。クインテット編成なんだが、まず、このマイナーな存在のピアノとベースの存在が「暗黒時代」を想起させるのかもしれない。

しかし、実際の音を聴いてみると、意外とマイナーな存在のピアノとベースは健闘している。目を見張るようなテクニックを駆使してバリバリ弾きまくる訳ではないのだが、グループサウンド全体から見て、ピアノとベースの存在が邪魔になったり、耳障りになったりしている訳では無い。水準レベルのパフォーマンスで、リズム隊の必要最低限の仕事は堅実にやっている。少なくとも、ブレイキーのドラミングにちゃんと、ついていっている。
 

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ビル・ハードマンのトランペットがイマイチだ、なんて評価もあるが、イマイチで切り捨てるレベルでは無いと思う。このトランペットもしっかり水準レベルを維持していると思う。ブラウニーやモーガンの様に、ハイ・テクニックでバリバリ吹きまくるのでは無いが、出てくるトランペットの音は十分にブリリアントだし、少しヨレるところはあるが、ビ・バップなトランペットを水準レベルで吹き上げている。

逆に、この盤ではマクリーンが好調。マクリーンとブレイキーの相性がとても良い様で、ブレイキーのリズム&ビートの効果的なサポートと、マクリーンを鼓舞する様なドラミングが、マクリーンに響いて、マクリーンは独特なフレーズを紡ぎつつ、印象的なアルト・サックスを吹き上げる。

当然、ブレイキーのドラミングは良好。この盤を録音した時点で、既にブレイキーのドラミングの個性と特徴は確立されていて、ドラム・ソロなどを聴いていると、明らかに「これはブレイキー」と判るレベルに到達している。

まとめると、この盤はブレイキーとマクリーンを聴くべきアルバムである。が、残りの3人のパフォーマンスも水準レベルを維持していて、トータルとして、まずまずのハードバップなアルバムと僕は思う。何しか「メッセンジャーズの暗黒時代の演奏」と形容するのは、ちょっとこの演奏を担ったメンバーに対して、ちょっと失礼では無いかと思う。
 
 
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2023年8月24日 (木曜日)

モード充実のメッセンジャーズ

一流ジャズマンの「登竜門的ジャズ・バンド」、一流ジャズマンに向けて鍛錬する「ジャズ道場」。そんな位置付けのバンド、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ。1954年に結成、ホレス・シルヴァーから名前を引き継いで、アート・ブレイキーの単独リーダーで、1990年10月にブレイキーが亡くなるまで、36年の長きに渡って、モダン・ジャズの第一線で活躍した。

リーダーのブレイキーは若手の将来有望なジャズマンのスカウトに長けていて、このジャズ・メッセンジャーズ、歴代のバンド・メンバーの中で、一流になっていったジャズマンは数知れず。ウェイン・ショーター、リー・モーガン、ウィントン・マルサリス、フレディ・ハバード、テレンス・ブランチャード、ゲイリー・バーツ、ボビー・ワトソン、ビル・ピアース、ボビー・ティモンズ、シダー・ウォルトン、異色なところで、キース・ジャレット(!)などなど....。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Indestructible』(写真左)。1964年4月24日と5月15日の録音。ブルーノートの4193番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b)。モーガンのトランペットとフラーのトロンボーン、ショーターのテナーが3管フロントのセクステット編成。
 

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ウェイン・ショーターが音楽監督の時代、この3管フロント+ウォルトンのピアノのブレイキーのリズム隊の編成が、歴代のジャズ・メッセンジャーズの中で、一番、内容充実の時代では無かったかと思う。ジャズ・メッセンジャーズ流のモード・ジャズを完全に自分達のものとし、その音志向に則った作曲もアレンジも素晴らしい。

当然、演奏もハイレベルで、特にこの3管フロントのユニゾン&ハーモニー、そして、アドリブ展開、リズム隊の繰り出す変幻自在でモーダルなリズム&ビート、バンド全体で繰り広げられるテンション高いインタープレイ。とにかく緩んだところが全く無い、淀んだところが全く無い、切れ味抜群、疾走感溢れるジャズ・メッセンジャーズ流のモード・ジャズが見事。もはや、この演奏は「アート」ですらある。

こんな充実した内容の音源だが、リリースは1966年。録音から2年の「お蔵入り」。ブルーノートお得意の「理由の判らないお蔵入り」音源なのだが日の目をみて良かった。当時としては、手垢の付いたジャズ・メッセンジャーズ流のモード・ジャズで、ちょっとマンネリと捉えられたのかもしれない。しかし、今の耳で振り返ると、とても内容充実のオリジナリティー溢れるモード・ジャズで、訴求力抜群。モード・ジャズの優秀盤の1枚です。
 
 

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2023年7月10日 (月曜日)

モーダルな伝説の3管フロント。

1950年代後半、マイルスとビル・エヴァンスが始めたとされる「モード・ジャズ」。マイルスのバンドから派生したのは確実なようで、ここから、コルトレーンが、コルトレーンなりのモード・ジャズを始めた。それからは、マイルスとコルトレーンが中心になって、モード・ジャズが拡大する。

そして、このハードバップの老舗バンド、若手の登竜門「アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ」にも、モードの波がやってきた。その「モードの波」を持ち込んだのが、テナー奏者のウェイン・ショーター。ショーターは、マイルスとコルトレーンのモード・ジャズを参考にしつつ、ショーターなりのモード・ジャズを編み出している。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Free For All』(写真左)。1964年2月10日の録音。ブルーノートの4170番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Freddie Hubbard (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b)。ハバードのトランペット、フラーのトロンボーン、ショーターのテナーが3管フロントのセクステット編成。ピアノはシダー・ウォルトン。

1961年10月の録音、Art Blakey & The Jazz Messengers『Mosaic』から始まった「ハバード〜フラー〜ショーターの「伝説の3管フロント」。この盤では3年以上が経過し、バンド・サウンドとしてもしっかりまとまって、円熟の極みのモード・ジャズがギッシリ詰まっている。

この「伝説の3管フロント」を擁したメッセンジャーズ。音楽監督はテナーのウェイン・ショーター。このショーターの生み出すモード・ジャズが、「アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ」のモード・ジャズとして定着した。
 

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極端に例えると、コルトレーンのシーツ・オブ・サウンドをベースとした音の「連鎖と早弾き」を活かしたモード・ジャズとマイルスの音の「拡がりと間」を活かしたモード・ジャズの良いところをハイブリッドした感じのモード・ジャズがショーターのモード・ジャズ。但し、ユニゾン&ハーモニーの音の重ね方や、アドリブ・フレーズの「コズミック」な響きはショーター独特のもので、決して、コルトレーンとマイルスの物真似では無い。

そんなショーター流のモード・ジャズがこの盤でも炸裂している。特に、円熟味を増した「伝説のフロント3管」のユニゾン&ハーモニーは単純に「格好良い」。特に、フラーのモーダルなトロンボーンには驚く。あの速いフレーズや音の上げ下げが苦手な楽器で、いとも容易くショーターのモード・ジャズに適応している。

ブレイキー御大のドラミングをベースにしたリズム・セクションもショーターのモード・ジャズをしっかり理解し、しっかりモーダルなリズム&ビートを供給していて立派。特に、ウォルトンのピアノが良い。モーダルなピアノを自家薬籠中のものとしていて、この盤でははっきりと「ウォルトンなりのモーダルなピアノ」を聴き取ることが出来る。

そして、凄いなあ〜、と感心するのが、ブレイキー御大のドラミング。ショーターのモード・ジャズにしっかり適応し、「伝説の3管フロント」に追従するどころか、リードし鼓舞し、しっかりと支えるドラミングは見事の一言。そうそう、ワークマンのモーダルなベースも良いです。ショーターのモード・ジャズ独特の速いフレーズや音の上げ下げにしっかりと適応しています。

僕は、この時代の「アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ」が大のお気に入り。今でも、この盤の冒頭のタイトル曲「Free for All」の前奏の「伝説の3管フロント」のユニゾン&ハーモニーを聴く度に、ショーターのコズミックなモーダル・テナーを聴く度に、ワクワクしっぱなし、です。良いアルバムです。
 
 

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2023年5月29日 (月曜日)

4100番台のブレイキー盤は ....

ブルーノートの4100番台は、1961年後半から1965年前半の録音がメイン。ブルーノートは、成熟したハードバップを基に、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなど、聴き手に訴求するジャズの様々なニーズに応えていた。が、例外もある。

Art Blakey & The Jazz Messengers『The Freedom Rider』(写真左)。1961年2月12, 18日と5月27日の録音。ブルーノートの4156番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。ウェイン・ショーターが音楽監督を務めた時代の録音。録音当時お蔵入りだった音源の、録音3年後、1964年2月のリリース。

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズについては、1960年の録音でお蔵入りになったアルバム4枚、1961年の録音でお蔵入りになったアルバム1枚、1964年でお蔵入りになったアルバム1枚が、4100番台で五月雨式に、後年にリリースされている。特に1961年録音のお蔵入り盤は、4枚のアルバム共に内容は良好で、未だに、録音して直ぐにアルバム・リリースしなかったのかがよく判らない。
 

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この録音後、遅れてリリースに至ったアルバムは、全て、ショーターが音楽監督を務めた時代の、こってこてモーダルなファンキー・ジャズを展開した時代。モード・ジャズをメインとしていたからといって、難解なところは全く無く、ファンキー・ジャズ志向のアレンジが効いていて、とても判り易く、取っ付き易い、加えて、ジャズ・メッセンジャーズの個性溢れる、優れた内容になっている。

この『The Freedom Rider』についても、ショーターが音楽監督になって、しっかりとショーターのモード・ジャズ志向が根付いて、とても良好なアレンジ、加えて、明らかにジャズ・メッセンジャーズと判る音の響きで、モーダルなファンキー・ジャズを展開している。選曲も、ショーター、モーガン、ブレイキーの曲で占められており、ジャズ・メッセンジャーズ・オリジナルな雰囲気が満載。

4100番台のブルーノート盤の中で、ジャズ・メッセンジャーズだけが、録音ストックの中から五月雨式に、アルバムが遅れてリリースされているのが特徴的。ジャズ・メッセンジャーズの音志向は、あまり、ジャズの演奏トレンドや演奏方式に左右されない、普遍的な音志向なので、ジャズ・メッセンジャーズの音源については、ジャズ・メッセンジャーズのファンに向けてリリースし続けていたのかも知れない。
 
 

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2023年2月10日 (金曜日)

ベツレヘムのブレイキー好盤

ベツレヘム・レーベルのアルバムを聴き直している。ベツレヘムにはボーカルのアルバムが多いのだが、ハードバップ系のアルバムにも優れた内容のアルバムが多くある。ベツレヘムのアルバムについては、あまりジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の特集記事に上がることが無いので、いわゆる「隠れ名盤」化しているものがほとんど。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Hard Drive』(写真左)。1957年10月 9,11日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Bill Hardman (tp), Johnny Griffin (ts), Junior Mance (p), Sam Dockery (p, track 3のみ), Spanky DeBrest (b)。

1950年代のジャズ・メッセンジャーズの「停滞の時代」のアルバムである。翌年、ブルーノート・レーベルに移って、大名盤『Moanin'』で再起〜躍進を遂げるわけだが、それまでは、ホレス・シルバーと袂を分かって以降、既存のジャズマンでメンバーを編成し、メンバーも流動的で、決定打に欠ける時代が続いた。

しかし、内容的にはそんなに悪い訳では無かった。既存のジャズマンのチョイスがまずまずで、ハードバップとして、意外と整った内容のアルバムを量産している。ただ、何かが足りない。決定打に欠ける。そんな「停滞の時代」だった。
 

Art-blakey-the-jazz-messengershard-drive

 
この『Hard Drive』もそんなアルバムの1枚。内容的には意外と充実している。まず、テナーのグリフィンが良い。バリバリ吹きまくっている。全編に渡って溌剌としたグリフィンが実に良い。トランペットのハードマンも健闘はしている。グリフィンに煽られているが、何とか、バリバリ吹きまくっている。

ジュニア・マンスがピアノを担当している。ファンキー・ピアノのマンスのドライブ感溢れる弾き回しが、この盤の「ハードバップらしさ」を増幅している。ファンクネスを湛えつつ跳ねるようなタッチでバリバリ弾きまくる。マンスのピアノが意外と良い雰囲気を醸し出している。

当然、ブレイキー御大もバッシバッシ叩きまくる。ブレイキー独特のアクセントで叩きまくるファンキー・ドラム。ただ、代名詞の「ナイアガラ・ロール」や、カカカカカッという個性的なリムショットは、まだ表舞台に出てきていない。そんなところが「何かが足りない」と感じる所以だろう。

2曲目の「Right Down Front」などは、ゴスペル風のファンキー・チューンで、翌年以降、流行となる「ファンキー・ジャズ」の先駆け的な演奏が素敵だ。他のハードバップ・チューンも粒が揃っていて、なかなかのもの。だけど、どこか、決定打に欠ける雰囲気が漂う。それでも、内容的には「ハードバップな優秀盤」で、これはこれで聴き応えは十分ある。ベツレヘムのジャズ・メッセンジャーズは聴く価値あり、だ。
 
 

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2023年1月12日 (木曜日)

明るくライトなメッセンジャーズ

昨日「柔道着のブレイキー(Art Blakey & The Jazz Messengers『Golden Boy』)」について語ったついでに、Art Blakey and The Jazz Messengers(ジャズ・メッセンジャーズ)盤の落ち穂拾いを再開。

ブレイキーはジャズ・メッセンジャーズも含めて、とにかく多作のジャズ・レジェンド。しかも、凡作駄作の類は殆ど無い。全てのリーダー作を聴いて、その感想を記事にするにはかなりの労力と時間がかかる。故に、まだまだ全てのリーダー作を網羅するには至っていない。

ブレイキーは、ブルーノート・レーベルのお抱えドラマー的ポジションにいたので、ブルーノートにリーダー作が集中している。が、他のジャズ・レーベル、それも傍系のマイナーなレーベルにもリーダー作を残していたりして、全リーダー作の音源を押さえるのに骨が折れる。

Art Blakey and The Jazz Messengers『Soul Finger』(写真左)。1965年5月12, 13日、NYでの録音。Limelightレーベル(Mercury Records傘下の傍系レーベル)からのリリース。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Freddie Hubbard, Lee Morgan (tp), Gary Bartz (as), Lucky Thompson (ss), John Hicks (p), Victor Sproles (b)。いやはや、曲者揃いのパーソネル。

パーソネルだけ見ると、どんな音が出てくるのか、想像するのが困難。まず、トランペットが2本、それも、ハバードとモーガンである。前へ出すぎるハバードに頭にきて喧嘩しないのだろうか、心配になる(笑)。
 

Soul-finger

 
ベテランの曲者リード奏者トンプソンがソプラノを吹き、新進気鋭のゲイリー・バーツがアルト・サックスを吹く。新旧まぜこぜになって、ユニゾン&ハーモニーは大丈夫なんだろうか。ベースのスプロールズは1950年代半ばから1960年代まで活動したマイナーなベーシスト。リズム・セクションは大丈夫なのか。

で、出てくる音を聴くと、この盤も例の「柔道着のブレイキー(Art Blakey & The Jazz Messengers『Golden Boy』」と同傾向の音の志向で、当時の3管フロントのジャズ・メッセンジャーズの音の雰囲気を踏襲した、ファンキーで小粋で、この盤ではとてもリラックスした展開が印象的。全体的な音のトーンは「明るくライトでポップ」。

ソフト&メロウなユニゾン&ハーモニー、流麗で優しいアドリブ展開。曲者揃いのパーソネルなのに、これだけソフト&メロウなファンキー・ジャズに仕上がってのが不思議。さすが、ブレイキー御大のリーダーシップの成せる技だろう。曲者揃いのパーソネルでありながら、キッチリと「ジャズ・メッセンジャーズの音」に仕上げている。

バンド演奏全体で、リフ、ユニゾン&ハーモニーをビシッと決めて、ブレイキーならではのドラム・ロールが、ソフト&メロウなファンキー・ジャズをビシッと締める。参加メンバーが大きく代わっても、ジャズ・メッセンジャーズの音志向は変わらない。
 
 

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2023年1月11日 (水曜日)

柔道着を着たブレイキー御大

ブルーノート・レーベルやECMレーベル、スティープルチェイス・レーベルのお陰か、ジャズ盤のジャケット・デザインは優れている、とされる向きがある。が、よくよく見直してみると、優れたデザインが約半分、残りの半分の3割がどっちつかずの平凡なデザイン、そして、後の2割はどうしてこうなるのか理解に苦しむ、どうみても「トホホ」なデザインである。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Golden Boy』(写真左)。1963年の録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Freddie Hubbard, Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), Charles Davis (bs), Wayne Shorter (ts), James Spaulding (as), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b), Julius Watkins (French horn), Bill Barber (tuba)。フロント6管+リズム・セクションの9人編成(ノネット)がメイン。

パーソネルを見渡すと、この11人編成の大所帯が面白い楽器構成になっている。フロント管がトランペット2本、トロンボーン1本、バリトン、テナー、アルトのサックスで計3本、ジャズ・メッセンジャーズとしては珍しいのだが、ここにフレンチホルンとチューバが加わる。誰のアイデアだったのだろうか。

リズム・セクションは、ブレイキー御大のドラムに、ピアノ、ベースのオーソドックスなもの。アレンジに、テナーのショーター、トロンボーンのフラー、ピアノのウォルトンの3人がそれぞれ分担して腕を振るっている。
 

Art-blakey-the-jazz-messengersgolden-boy

 
ブロードウェイのミュージカル『Golden Boy』での楽曲を元に、Colpixというレーベルからリリースされた企画盤。ミュージカルからの楽曲のジャズ化なので、曲の粒は揃っていてアルバム全体の構成は充実している。フロント6管+リズム・セクションの9人編成+リズム・セクションにフレンチ・ホルン、チューバが加わるので、しっかりとしたアレンジが施されている様子が良く判る。

フロント管のユニゾン&ハーモニーは、当時の3管フロントのジャズ・メッセンジャーズの音の雰囲気を踏襲した、ファンキーで小粋で迫力と覇気溢れるもの。3管フロントにトランペット、アルト・サックス、バリトン・サックスをそれぞれ1本、さらにフレンチ・ホルンとチューバを加えているので、音の彩りが華やかになり、迫力と音圧が増していて、豊かで豪華な音作りが良い感じ。

加えて、ハバード、モーガン、フラー、スポルディングのソロイストのパフォーマンスが好調で聴き応えがある。リズム・セクションも優れたバッキングでフロント管を支えている。我が国では馴染みのないミュージカルからの楽曲のジャズ化なので、馴染みが全く無いが、アルバム全体、当時の3管フロントのジャズ・メッセンジャーズの音志向をしっかり引き継いでいて、内容的に充実している。

ただし、である。このジャケットはなあ(笑)。柔道着を着こなしたブレイキー御大が腕組みをして仁王立ちのアップ。これだけ見たら、このアルバム、ジャズのアルバムとは思わないでしょうねえ(笑)。でも内容は良い感じのファンキー・ジャズであり、当時充実の3管フロントのジャズ・メッセンジャーズの音が堪らない好盤。このジャケに怯むこと無く聴いて欲しい好盤です。
 
 

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