2024年12月 7日 (土曜日)

この盤聴いて ”ケンジ・ショック”

少し、メインストリームなジャズから外れて、1970年代後半から80年代前半の「日本のフュージョン」の話をしようと思う。人気の高かったフュージョン盤ではなく、ちょっとマニアックな玄人好みのアルバムに目を向けてみる。

大村憲司『Kenji Shock』(写真左)。1978年作品。LA録音。ちなみにパーソネルは、大村 憲司 (g), Steve Lukather (g), Greg Mathieson, David Paich (key), Mike Porcaro, Alphonso Johnson (b), Jeff Porcaro (ds) etc.。伝説の「和クロスオーバー&フュージョン・ギタリスト」大村憲司の2nd.アルバム。

プロデュースはハービー・メイソン(Harvey Mason)。大村憲司の1st.アルバム『First Step』のリリースを待たずに、急遽、LAで録音。その為、全8曲中、1st.アルバム『First Step』と重なる曲が3曲、それ以外でも深町純のアルバムで演奏したものが2曲収録されている。純粋にこの2nd.アルバムの為に用意されたのは残りの3曲のみ。

急造感は否めないが、演奏メンバーは異なるので、演奏のテイストも当然異なる。流石にこちらは「LAフュージョン寄り」といった雰囲気で、これはこれで名演。

演奏メンバーについては、パーソネルを見渡すと、クロスオーバー&フュージョン+AOR畑の名うてのミュージシャンがズラリと名を連ねている。名を連ねているだけでなく、相当ハイテクでエグい演奏を繰り広げていて、聴いていて思わず「仰け反る」箇所がいくつもある。
 

Kenji-shock  

 
そんな中、大村憲司のギターは突出して絶品で個性的。演奏自体は、クロスオーバー&フュージョンのテイストだが、LAで録音しているにも関わらず、米国西海岸フュージョンの雰囲気に染まらず、あくまで、ファンクネス希薄、テクニックに頼らない流麗でキャッチャーなフレーズ、マイナーに偏らずポップでポジティヴな弾き回し。いわゆる、和クロスオーバー&フュージョンなギターの音がたまらなく良い。

そして、プロデューサーは、さすがの「ハービー・メイソン」。米国西海岸フュージョン風にアルバムをアレンジするのは容易かったのだろうが、大村憲司の、和クロスオーバー&フュージョンなギターの音を活かすべく、和クロスオーバー&フュージョンな音作りに舵を切っている。そして、それにバッチリ応えるバックバンドの名うてのミュージシャン達。全8曲、全て、素晴らしい演奏、和クロスオーバー&フュージョンなグルーヴで埋め尽くされている。

実は僕は「大村憲司」というギタリストの名前を、FMを通じて、この盤で知った。聴いてビックリ、タイトル通り「ケンジ・ショック」である(笑)。

最初は、米国西海岸フュージョンに新しいギタリストが出現したと思った。しかし、音のテイストが違う。ファンクネス希薄、テクニックに頼らない流麗でキャッチャーなフレーズ、マイナーに偏らずポップでポジティヴな弾き回し。そして、FMでギタリストの名前を聞いて二度ビックリ「知らん名前や」(笑)。

かなりマイナーな存在で、以前は音源入手が非常に困難な時期がありました、が、今では、音楽のサブスクサイトからダウンロードして聴くことのできる環境になりました。大袈裟ではなく、このアルバムは、日本のクロスオーバー&フュージョンの名盤の一枚でしょう。
 
 

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2024年11月28日 (木曜日)

「CTIサウンド」のワンダレイ

今年はジャズ・レーベル毎の名盤・好盤を聴きなおすことをしているのだが、昨日から、その流れで「A&M, CTIレーベル」の名盤・好盤の聴き直しを進めている。A&Mレーベルから、CTIレーベル、いわゆる「クリード・テイラー」印のクロスオーバー&フュージョン・ジャズ盤には、今の耳で聴くと、意外と聴きもののアルバムが多くある。

Walter Wanderley『Moondreams』(写真左)。March 11, 12 & 13, 1969年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Walter Wanderley (org, el-harpsichord), Bernie Glow (tp, flh), Marvin Stamm (flh), Danny Bank, Hubert Laws, Romeo Penque, Jerome Richardson, Joe Soldo (fl), Jose Marino, Richard Davis, George Duvivier (b), João Palma (ds), Lulu Ferreira, Airto Moreira (perc), Flora Purim, Linda November, Stella Stevens, Susan Manchester (vo), Eumir Deodato (arr)。

ボサノヴァ・オルガンの第一人者、ワルター・ワンダレイの、『When It Was Done』(1968年) に続く、CTIレーベルでのリーダー作の第2弾。この盤でも、ワンダレイのボサノヴァ・オルガンが炸裂。CTIレーベルとして、ジャズ・オルガンをイージーリスニング・ジャズに応用して、聴き応えのある、ジャジーなラウンジ・サウンドをものにしている。

ワンダレイは、オルガンに加え、ハープシコードも駆使しながら、極上のボサノヴァ・オルガンを繰り広げる。ワンダレイのオルガンの音は「正統派」の音。イージーリスニング・ジャズ志向だからと言って、聴きやすく甘い音色で俗っぽい音にはならず、正統なハードバップ基調のオルガンで弾きまくっているところがこの「CTIのワンダレイ」の良さ。
 

Walter-wanderleymoondreams

 
ワンダレイのバックには、当時のクロスオーバー&フュージョン・ジャズ畑の優れたメンバーが大集合して、極上のクロスオーバー&フュージョンなパフォーマンスでワンダレイの演奏を支えている。ストリングスとフルートを上手く使って、ソフト&メロウな雰囲気を醸し出し、従来のクロスオーバー系のエレ・ジャズとは異なる、いわゆる「聴かせるエレ・ジャズ」を演出している。

アレンジはあの「デオダート」。ワンダレイのボサノヴァ・オルガンによるクロスオーバー&フュージョン・ジャズを、ラウンジ音楽に陥りそうなギリギリのところで、ジャズに軸足を留めている。

意外と以前より指摘されていないが、この盤でのデオダートのアレンジは、クリード・テイラーの標榜する「CTIサウンド」を、具体的に忠実に音にした一例だと感じている。いわゆる「CTIサウンド」の源の一つと言って良いだろう。録音は、あの伝説のレコーディング エンジニア、ルディ・ヴァン・ゲルダーの手によるもの。ソフト&メロウなイージーリスニング・ジャズでありながら、意外と骨太な音、適度で趣味の良いエコー。いわゆる、これも「CTIサウンド」の重要な一要素である。

イージーリスニング・ジャズを認めたくないと言う、ジャズ者の方々には決してお勧めしないが、このワンダレイ盤、イージーリスニング・ジャズ盤としては内容もしっかりした、極上のものである。「CTIサウンド」がお気に入りのジャズ者の方には一聴をお勧めしている。
 
 

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2024年11月27日 (水曜日)

ホールの「哀愁のマタドール」

結構、ハードなモダン・ジャズをシビアに聴き続けたらしく、耳がちょっと疲れた。と言うことで「耳休め」に、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの好盤を聴くことにする。今年はジャズ・レーベル毎の名盤・好盤を聴きなおすことをしているのだが、今日はその流れで「A&Mレーベル」の名盤・好盤の聴き直しを進めることにした。

Jim Hall『Commitment』(写真左)。邦題「哀愁のマタドール」。1976年6, 7月の録音。A&Mレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jim Hall (g), Art Farmer (flh), Tommy Flanagan (p), Don Thompson (p, track 2 only), Ron Carter (b), Allan Ganley (ds), Terry Clarke (ds, track 7 only), Eroll Bennett (perc, track 3 only), Jane Hall (vo, track 5), Joan La Barbara (vo, track 3) Don Sebesky (arr, tracks 1, 3 & 8)。

ジム・ホールのギターは、繊細で透明感溢れる、しかし、力感もしっかりあって、奏でるフレーズがくっきり浮かび上がる、従来のジャズ・ギターの奏法を一歩二歩進めた、プログレッシヴなバップ・ギターである。そんなジム・ホールのギターに、アート・ファーマーの柔らかで流麗な、それでいて、しっかり芯の入ったフリューゲルホーンが良く合う。よほど相性が良いのだろう、ジム・ホールのギターとファーマーのフリューゲルホーンのユニゾン&ハーモニーは絶品である。
 

Jim-hallcommitment  

 
このアルバムは、この前年の発表された『Concierto(アランフェス協奏曲)』の大ヒットの後のアルバム。前作の代表的名演「アランフェス協奏曲」の雰囲気をそのまま踏襲した、3曲目の「Lament For A Fallen Matador(哀愁のマタドール)」が聴きもの。ジム・ホールのギターは意外に硬派なので、甘きに流れない。力感溢れるプログレッシヴなバップ・ギターが、こういった耽美的なメロディーを持つクラシックのカヴァーに向いている。「哀愁のマタドール」以外に「When I Fall In Love」「My One And Only Love」等のスタンダード曲もいい感じ。

ジム・ホール自身のお気に入りなミュージシャンを起用しての豪華なアルバムだが、この盤では、特にロン・カーターのベースが良い。当時のロンとしては珍しいことに、ピッチが合っていて、弦を弾くピチカート奏法もブンブン胴鳴りして、切れ味の良いジャジーなグルーヴを撒き散らしている。加えて、1曲目「Walk Soft」、3曲目「Lament For A Fallen Matador」、8曲目の「Indian Summer」におけるセベスキーのアレンジも良好。

A&Mレーベルのクロスオーバー&フュージョン・ジャズの名盤の一枚。イージーリスニング・ジャズ志向な演奏内容ではあるが、ジム・ホールの硬派でプログレッシヴなバップ・ギターや、アート・ファーマーのジェントルで流麗だが、意外とバップなフリューゲルホーンは、ハードバップ時代からの「純ジャズ」なパフォーマンスをしっかり維持していて、聴き応え十分。この盤、硬派でメインストリームな内容のクロスオーバー&フュージョン盤。意外と聴き応えがあって、長年の愛聴盤になってます。
 
 

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2024年10月13日 (日曜日)

野呂一生のファースト・ソロ盤

我が国を代表するクロスオーバー&フュージョン・バンドである「カシオペア」。意外と超ストイックなバンドで、結成時(1976年)から1989年までの野呂一生・櫻井哲夫・向谷実・神保彰によるメンバーでの第1期の活動の中で、10年以上、常にカシオペアはグループとしての活動を優先、ソロ活動は一切御法度という厳しい規律の上でバンド運営されていた。

1985年〜1986年、当初から期間を厳格に定めてソロ活動を容認したが、そのソロ活動も各自のソロアルバムを制作するだけに留める厳しいもの。しかし、その最初のソロ活動の中で、当時の我が国のフュージョン事情をよく反映させた、優れたソロ・アルバムが各メンバーからリリースされたのだから「さあ大変」(笑)。

野呂一生『Sweet Sphere』(写真左)。1985年5月のリリース。カシオペアのギタリスト野呂一生のファースト・ソロ・アルバム。パトリース・ラッシェンをはじめ、ネイザン・イースト、ジョン・ロビンソン、ポウリーニョ・ダ・コスタ、シーウインド・ホーンズといった一流ミュージシャンが参加したLA録音作。

1985年3月、野呂はロスの「スタジオ・サウンド」でレコーディングを開始。コーディネーターとして松居和が全面協力。またエンジニアは『EYES OF THE MIND』(1980年)でエンジニアを務めたピーター・チェイキンが担当。アルバムの音全体の「キメ」については、野呂とチェイキンのコラボでバッチリ決まっている。
 
Sweet-sphere
 
レコーディング方式としては、野呂が独りで作ってきた多重録音のデモ・テープとスコア譜を基に、演奏については、参加ミュージシャンの技量に任せる方法をとっている。これが正解だったみたいで、アルバム全体の雰囲気が、ハリのある爽快感溢れる西海岸フュージョン志向の「和フュージョン」なサウンドに仕上がっている。これが実に心地良い。

「和フュージョン」と言っても、野呂が所属するカシオペア・サウンドを前提としているのでは無く、あくまで、野呂オリジナルの「少しラフで、スムースで、爽快感&疾走感溢れる」L.A.テイストな「和フュージョン」なのが良い。それでないと、わざわざ、LAまで出向いて、ソロ・アルバムを制作する意味が無い。

演奏全体の雰囲気は、カシオペアの時の様に、アドリブ・ソロを弾きまくる展開はかなり少なく、バンド演奏全体のアンサンブル重視なのも、ソロ・アルバムならではの面白い変化。米国フュージョンっぽい、ボーカル入り曲や女性コーラスをあしらった曲もあって、1980年代前半の米国フュージョン・シーンの音をダイレクトに反映している。

アルバムの内容は、極上の「1980年代前半のフュージョン・ジャズ」。ファンクネスが希薄で乾いているところが、いかにも「和フュージョン」のテイストで、このアルバムを通して聴くと、1980年代前半の米国フュージョン盤そのものとは思えない。しっかりと、野呂オリジナルの「和フュージョン」のテイストが織り込まれていて、これが実に効いている。1980年代の「和フュージョン」の傑作の一枚でしょう。好盤です。
 
 
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2024年8月29日 (木曜日)

浪花エクスプレス ”No Fuse”

和フュージョン、いわゆる「日本のフュージョン・ジャズ」は、米国のフュージョン・ジャズとは距離を置いて、独自の進化・独自の深化を遂げた、と感じている。リズム&ビートはファンクネス皆無、フレーズの展開はロック志向、ソフト&メロウな雰囲気は希薄で、爽快感&疾走感が優先。和フュージョンは、世界の中で独特のポジションを獲得している。

日本の中での和ジャズは、かなり地域特性があった。東京の和ジャズだけがレコード会社に取り上げられ、メジャーな存在になっていったが、ジャズはそれぞれの地方で、独自の深化を遂げていったと思っている。地方に行けば、かなり地味な存在ではあるが、その地域ならではの「ジャズ・スポット」が必ずある。

浪花エクスプレス『No Fuse』(写真左)。1982年の作品。ちなみにパーソネルは、青柳誠 (ts, Rhodes), 岩見和彦 (g), 中村建治 (key), 清水興 (b), 東原力哉 (ds, perc)。ゲストに、マリーン (vo), 塩村修 (tb), 渕野繁男, 荒川達彦 (sax), 平山国次, 菅野真吾, 平山修三 (perc)。

上方フュージョンの牽引役として、浪花のファンの熱狂的な支持を受けて、大阪からデビューした、カシオペアやスクエアに並ぶ和フュージョンの代表的グループ「浪花エクスプレス」のファースト・アルバム。
 

No-fuse

 
この浪花エクスプレスのデビュー盤の出来は、カシオペアやスクエアのデビュー盤の出来を凌ぐ。繰り出されてくるフレーズが、実に滑らかで耳に馴染む。非常に鍛錬され洗練された音。流麗とはちょっとニュアンスが違う、しっかり芯の入った、力感溢れるロックなフレーズ。それでいて、和フュージョン独特の乾いたグルーヴ感がジャジーに響く。

今の耳で聴くと、「浪花エクスプレス」の音は、和の「クロスオーバー&ジャズ・ロック」。ガッツリ根性の入った、鍛錬&洗練された、浪花エクスプレス独特の展開は、東京フュージョンには無い、唯一無二なもの。

収録されたどの曲も良い出来だが、やはり1曲目の「Believin」が印象深い。浪花エクスプレスの代表曲であり、浪花エクスプレスの個性がガッツリ反映された名曲&名演である。

1982年という、ジャズ界ではフュージョン・ブームが下降線を辿っていた時期でのデビューだったので、カシオペアやスクエアに比べて、かなり損をしている。明らかにメジャーになり損ねた、人気バンドになり損ねた感が強い。

逆にだからこそ、今の耳で聴いて、このデビュー盤の『No Fuse』は、和フュージョン・ジャズの名盤の一枚として、大いに評価できるのだ。この『No Fuse』は和フュージョンの名盤の一枚。フュージョン者にとっては、避けられないマストアイテムです。
 
 

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2024年8月28日 (水曜日)

増尾好秋 ”Sailing Wonder”

増尾好秋。 1946年10月12日生まれ。今年で78歳。我が国の和フュージョンの代表的ギタリストの一人。渡辺貞夫に認められ、1968年から1971年まで、渡辺貞夫のグループに在籍。1971年に渡米。1973年から1976年までソニー・ロリンズのバンドに在籍したのは有名。

1980年代なかばから2008年まで、ニューヨークのソーホー地区に本格的なレコーディングスタジオ The Studio を所有し、プロデューサーとしても活躍。2008年より演奏活動に完全復帰。2012年6月より、日本での本格的なバンド活動を再開している。

増尾好秋『Sailing Wonder』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、増尾好秋 (g, synth, perc),Eric Gale (g), Dave Grusin (synth), Richard Tee(p, org, key), Mike Nock (synth), Gordon Edwards (b), T.M. Stevens (b), Steve Gadd (ds), Howard King (ds), Al Mack (ds), Bachiri (perc), Warren Smith (perc), Shirley Masuo (vo), Judy Anton (vo)。

先に3枚のリーダー作をリリースしているが、この盤は実質上の増尾の初リーダー作と捉えても差し支えないだろう。キングレコード傘下のフュージョン・レーベル、エレクトリック・バードの第一弾アーティストとして契約しての、エレクトリック・バードとしての第1作。

当時、NYに在住していたこともあって、いやはや、錚々たるパーソネル。NYのクロスオーバー&フュージョン・ジャズの「名うて」のミュージシャン達が大集合といった風情である。これだけの「一国一城」的な一流ミュージシャンを集めると、意外とそれぞれ「我が出る」のだが、そうなっていないところが素晴らしい。
 

Sailing_wonder1

 
タイトルやジャケから想起される様に、「海」をテーマにコンセプト・アルバムである。が、それを意識させないくらい、収録された個々の演奏が素晴らしい。曲調もさまざまな増尾のオリジナル曲がメインで、増尾の作曲能力の高さとアレンジのアイデアの豊かさが感じ取れる。

クロスオーバー&フュージョン志向のエレ・ジャズだが、1曲目のタイトル曲「Sailing Wonder」だけ、フュージョンっぽい演奏だが、2局目以降は、どちらかといえば、クロスオーバー・ジャズな音志向が強い。クロスオーバー&ジャズロックとして良いかもしれない。

バンド全体、完成度の高い演奏で、聴いていて、とても清々しい気分になれる。躍動感と爽快感が半端ない。伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」からもメンバー参加もあって、アルバム全体に、そこはかとないファンキーなグルーヴ感が漂うところもグッド。フュージョン者の我々からすると「たまらない」。

増尾好秋のギター・テクそのもの、作曲&アレンジの才能など、増尾好秋が持つ「個性と才能」の全てが感じ取れる、「増尾好秋のショーケース」の翼な優れた内容。増尾好秋の代表作の一枚です。

2015年6月23日のブログ記事「増尾好秋のフュージョン名盤」を全面的に改稿しました。
 
 

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2024年7月30日 (火曜日)

ディメオラの新境地開拓な盤

1982年に、それまでの活動を総括したライヴ盤『Tour De Force』を出したアル・ディ・メオラ(以降「ディメオラ」と略)。内容的には、それまでに聴いたことのあるディメオラてんこ盛りで、ディメオラ者には実に楽しめる、ディメオラ乳門盤の様な内容だった。しかし、その音世界には「マンネリ」の雰囲気が漂っていたのは否めない。

Al Di Meola『Scenario』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola (g, g-syn, mandocello, tom tom, Hawaiian chordophone, Fairlight CMI, ds), Jan Hammer (key, Fairlight CMI, Roland drum machine, Moog bass, ac-p), Will Alexander (Fairlight CMI programming), Tony Levin (stick bass, on track:8), Phil Collins (ds, on track: 3), Bill Bruford (Simmons electronic drums, on track: 8)。

動機は判らないが、突如、ディメオラがコンピュータによる打ち込みサウンドを完全に前面に押し出した企画盤。それまでの「速弾きギターソロ」や「リズム隊の強烈なリズム&ビート」はほとんど聴かれないが、打ち込みによるクールで無機質なリズム&ビートに乗った、ディメオラとヤン・ハマーの不思議なコラボの音世界が広がる。

ディメオラの繰り出すフレーズはエスニック。それまでのキャッチフレーズだった「スパニッシュ」なフレーズを飛び越して、エスニックな香り濃厚なフレーズをガンガンに繰り出す。その妖しく幽玄な不思議なマイナーフレーズが、打ち込みによるクールで無機質なリズム&ビートに乗って映えに映える。
 

Al-di-meolascenario

 
ヤン・ハマーのフェアライトCMI中心の、ちょっと捻れた、妖しくも幽玄なエスニック・フレーズがこの盤の全体の雰囲気を支配している。打ち込みによるリズム&ビートは、当時の英国のプログレッシヴ・ロック志向で、純粋なフュージョン・ジャズとは、全くテイストの異なった、唯一無二なもの。そこかしこに英国プログレッシヴ・ロックのテイストを感じる。

そんなヤン・ハマーの妖しくも幽玄なエスニック・フレーズと打ち込みリズム&ビートに乗って、ディメオラが、ギター・シンセを駆使して、エスニックなフレーズを弾きまくる。ギター・シンセを活用しているので、その楽器の性格上、従来のディメオラの高速速弾きは叶わないが、ギター・シンセの音の特性を活かした、魅惑的で妖艶なエスニック・フレーズを振り撒いている。ここでのディメオラの弾き回しはさすがで、説得力と聴き応えのあるギターをしっかりと聴かせてくれる。

テクノ・フュージョン・ジャズとでも形容したら、ちょっとシックリくる音世界。ディメオラのギター・シンセは、あくまでジャズに軸足があり、今回のパートナーである、ヤン・ハマーのフェアライトCMIは、英国のプログレッシヴ・ロック志向で、テクノなジャズロックなフレーズが実にユニーク。

テクノ・ミュージックと、英国プログレと、フュージョン・ジャズの融合。基本のフレーズは「エスニック」。ディメオラが考える「スムース・ジャズ」として捉えても面白い内容。優れた一人の音楽家としてのディメオラの矜持を感じる、ディメオラにしか創り得ない、ディメオラ独自の音世界。意外とこの企画盤、聴き応えがあります。
 
 

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    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
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2024年7月23日 (火曜日)

アジムス初期のライヴ音源です

酷暑の日が続く。ここまで暑いと「爽やかなフュージョン」が聴きたくなる。ブラジリアン・フュージョンの代表的バンド「アジムス」を選択。ソフト&メロウなフレーズに、軽快なファンクネスをベースに、スペーシーな音の広がりとサイケデリックなブレイクダウン、しなやかでソリッドにうねるようなグルーヴが、涼しいエアコンが効いた部屋の中で聴くのにピッタリ。

Azymuth『Live at the Copacabana Palace』(写真左)。1979年3月、リオデジャネイロの「Copacabana Palace Hotel」での録音。オリジナルは1985年にフランスのSBAからリリースされている。ちなみにパーソネルは、José Roberto Bertrami (key), Alesandre Malheiros (b), Ivan Conte "Mamao" (ds), Aleuda (perc)。ベルトラミ、ママォン、マリェイロスに加え、アレウーダがパーカッションで参加した4人編成。

ブラジリアン・フュージョン・グループ代表格、アジムスが1979年にコパカバーナ・パレス・ホテルで行った、とされるライヴ録音。アジムス初期のキレキレの演奏が聴ける。爽快感、軽快感溢れる、ブラジリアンな8ビートのグルーヴ感が独特の感覚。このアジムス独特のグルーヴ感を、このライヴ音源でもしっかりと感じることが出来る。
 

Azymuthlive-at-the-copacabana-palace

 
アブストラクトな音の空間を演出がアジムスらしい「Light As A Feather」、ブラジリアン・フュージョンの古典的ダンスフロア・ミュージックな「Jazz Carnival」、NHK-FMのクロスオーヴァー・イレブンのオープニングで懐かしい「Voo Sobre O Horizonte」など、アジムスの個性的で代表的なフュージョン・ミュージック曲の数々を聴くことが出来る。

アジムスのフュージョン・ミュージックは、米国のそれとは全く違う、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズ独特の音作りが基本なんだが、スペーシーな音の広がり、ライトなファンクネスを忍ばせつつ、しなやかでソリッドにうねるようなグルーヴ、シンセのギミックな使い方は、米国のフュージョン・ジャズには聴かれない、アジムス独特のもの。

スタジオ録音に歓声を被せるなど小細工しただけの「疑似ライヴ盤」という評価もあるみたいだが、演奏の内容、演奏の精度については、スタジオ録音と比較して劣ることはない。真偽のほどはよくわからないが、スタジオ録音の初期の名盤『Light As A Feather』と合わせて、じっくりと味わいたいアジムスのライヴ音源です。
 
 

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2024年6月30日 (日曜日)

リトナーの1980年代の代表作

去る6月21日に、やっと梅雨入りした関東甲信地方。梅雨入り当初は、ドカ雨、梅雨の中休みの晴れ、が交互に来て、梅雨らしくないなあ、と思っていたら、この6月最終週半ばあたりから、とにかく湿度が高く、天気は愚図つく曇り空。そして、雨が降る時は「まとまって」降る。体調的にも堪える天候にへばっている。

こういう「へばった」状態になると、ハードなジャズはしんどくなる。フリーやスピリチュアルなんてもっての外。速いテンポもちょっとしんどいし、トランペットのハイノートなんて辛抱できない。よって、耳あたりの良い、ゆったりとしたテンポのジャズ盤を選びたくなる。そうなると、フュージョン&スムース・ジャズの好盤にも手が伸びたりする。

Lee Ritenour『Festival』(写真左)。1988年の作品。GRPレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、主だったところでは、Lee Ritenour (g), Robbie Kondor (syn), Dave Grusin, Bob James (key), Joao Bosco (g, vo), Marcus Miller, Anthony Jackson (b), Omar Hakim (ds), Paulinho da Costa (perc), Ernie Watts (ts), etc.。
 
この盤のテーマは「ブラジリアン・フュージョン」。パーソネルには、フュージョン畑とブラジル音楽畑のミュージシャンが大集合。エリア的には、ニューヨーク、ロサンゼルス、ブラジルのミュージシャンによるコラボレーション。

1960年代のボサノヴァ・ブームの折にも、こういったコラボ・セッションはあったが、意外と綺麗に融合せずに、どちらかの音楽性が勝ったりしていた。が、この盤の録音年は1988年。フュージョンの大ブームを経て、フュージョン&スムース・ジャズは進化〜成熟した。
 

Lee-ritenourfestival

 
この盤での「ブラジリアン・フュージョン」は、米国フュージョン・ジャズとブラジル音楽が何の違和感もなく、綺麗に融合し、「ブラジリアン・フュージョン」と呼べる、一つの演奏トレンドを確立している。

リトナーは、米国フュージョン・ジャズとブラジル音楽の融合に、ナイロン弦アコギで攻める。これが良い音してるんだよな。ブラジル音楽特有の「爽快感・清涼感」をリトナーのアコギが的確に表現している。

1970年代のデビュー当時と比較すると、リトナーのギターは進化している。アコギはニュアンスの表現が微妙に難しい楽器だが、リトナーはこの難物のアコギをバッチリ弾きこなしている。余裕あるフレーズの弾き回し。痺れる。

面白いのは「ブラジリアン・フュージョン」の音世界の中、リズム&ビートを司るリズム隊は、マーカス・ミラー、アンソニー・ジャクソン&オマー・ハキムの米国隊がメイン。そこに、ブラジル出身のパウリーニョ・ダ・コスタがパーカッションでサポートに入っている。米国隊がメインの「ブラジリアン・フュージョン」のリズム&ビート、これがまた違和感が全く無いから立派。

とにかくリトナーのアコギの弾き回しが凄く良い。ブラジル音楽の雰囲気を様々なニュアンスで表現し、しっかりとフュージョン&スムース・ジャズにアダプトしている。バックを司るメンバーも皆、良い音出していて、1980年代後半、その時代の最新の「フュージョンとブラジル音楽」の融合の成果がこの盤に記録されている。1980年代のリー・リトナーの代表作でしょう。良いアルバムです。
 
 

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2024年6月22日 (土曜日)

ワシントンJr.の『Mister Magic』

フュージョン・ジャズとか、スムース・ジャズについて語ると、どうもウケが悪い。でも、ウケ狙いでブログ記事をアップしている訳では無いのだが、フュージョン・ジャズにも、スムース・ジャズにも「良い音楽」という類の好盤が沢山ある。我がヴァーチャル音楽喫茶『松和』では、フュージョン・ジャズ、スムース・ジャズも、きっちり「守備範囲内」なので、適宜、好盤をご紹介している。

グローヴァー・ワシントンJr.(Grover Washington Jr.、以下「ワシントンJr.」と略)。スムース・ジャズの父、フュージョン・ジャズにおけるサックスの帝王。ソフト&メロウなフュージョンの代表盤『Winelight』が大ヒットしたことから、軟弱ジャズ、商業主義ジャズと揶揄されることが多々あった ワシントンJr. だが、生前に残したリーダー作については、「良い音楽」の類の、水準以上の優れた内容のものばかり。

Grover Washington Jr.『Mister Magic』(写真左)。1974年の作品。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr. (sax), Bob James (ac-p, Fender Rhodes, arr, cond), Eric Gale (g), Phil Upchurch (b, track:1), Gary King (b, track:2-4), Harvey Mason (ds), Ralph MacDonald (perc)。プロデューサーは Creed Taylor。 収録曲全4曲。トータル33分弱と収録時間は短いが、内容は濃い。

この『Mister Magic』は、クロスオーバー&フュージョン・ジャズ志向なワシントンJr. を捉えたものだが、クロスオーバー&フュージョン・ジャズ志向の「源」は、ボブ・ジェームスのアレンジと、バックバンドの演奏内容にある。それほど、この盤での、ボブ・ジェームスのアレンジは秀逸。メインストリーム志向のコンテンポラリー・ジャズとしても良い、軟弱ジャズや商業主義ジャズの欠片も無い、硬派で真摯で実直なアレンジはアーティステックですらある。
 

Grover-washington-jrmister-magic

 
ワシントンJr. のサックスは正統派なもの。スムース・ジャズの父、フュージョン・ジャズにおけるサックスの帝王なんてニックネームがあるので、「ワシントンJr. のサックスって、純ジャズの名手達と比べるに値しないんだろう」と思うジャズ者の方々も多いかと思うが、どうして、ワシントンJr. のサックスは正統派で確かなもの。テクニックに優れ、歌心満載、特に流麗で爽快感のあるアルト・サックスは個性的でクセになる。

ボブ・ジェームスの独特のフレーズと音の重ね方を伴ったローズが、そこはかとなく趣味の良いファンクネスを漂わせ、ゲイルのソウルフルで歌心溢れるフレーズとカッティングが、フュージョン・ジャズな雰囲気を増幅させる。メイソンの端正で余裕溢れるドラミングとマクドナルドのパーカッションが洒脱でアーバンな雰囲気を醸し出し、アップチャーチとキングのベースが、ソリッドでファンキーなビートを供給する。

アルバム全体の内容は「ジャズ・ファンク」の一言では括れない。スピリチュアル・ジャズな要素、R&Bな要素、ジャズ・ファンク&ジャズ・ロックな要素、ニュー・ジャズっぽいプログッシヴな響きを、効果的に交わり融合させた、クロスオーバー&フュージョン・ジャズ。当時として、新しい響き溢れる、メインストリーム志向のコンテンポラリー・ジャズである。

ちょっと趣味の悪い、ワシントンJr. のアップのジャケットで損をしているアルバムだが、ビルボード200で10位、R&Bとジャズのチャートででそれぞれ1位を獲得した、実績ある超人気盤。しかし、よくこのジャケットでこれだけ売れたなあ、と改めて思う(笑)。ジャケには我慢が必要だが、その他は文句無しのワシントンJr. 初期の名盤です。
 
 

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