ストックホルムのオーネット
ブルーノートの、創立以降、ジャズの潮流が変わりつつあった1968年までにリリースされたアルバムから、レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」。ブルーノートらしい内容、音、響き。そんな三拍子揃ったブルーノート盤の「ベスト100」。今日はその「第6位」。
Ornette Coleman『At the "Golden Circle" Stockholm vol.1』(写真左)。1965年12月3–4日、スウェーデンのストックホルムでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ornette Coleman (as, tp, vin), David Izenzon (b), Charles Moffett (ds)。約3年ぶりに活動を再開した、オーネット・コールマンの欧州ツアーでの一コマ。
レココレ評者が選んだ、ブルーノート盤の「ベスト100」。今回は第6位だが、これまた難物なアルバムを選んだものだ。フリー・ジャズの祖とされるオーネット・コールマンであるが、僕はどう聴いても、オーネットの吹奏は「フリー・ジャズ」には聴こえない。
本人も語っているが、一応、本人が考案した「ハーモロディクス理論」というものに則った結果だというし、演奏を聴けば、必要最低限の「重要な何らかの決めごと」が演奏の底にあるのが判る。
つまり、フリー・ジャズではなく、ハードバップの弱点を克服し、ジャズの即興演奏の可能性を拡げ、発展させた「モード奏法」と同列の奏法、「ハーモロディクス理論」で、モード奏法と同じく、ハードバップの弱点を克服し、ジャズの即興演奏の可能性を拡げ、発展させたのが、オーネット・コールマンだと僕は解釈している。
ただ、困ったことに、モード奏法はその音楽理論が理路整然と確立されているが、「ハーモロディクス理論」については、オーネットの精神的な言葉は残っているが、具体的な記述を残していない。これが、オーネットの演奏する、自由度の高いユニークな即興演奏を解釈しにくくしているし、正確なフォロワーが現れ出でない、大きな理由だろう。
さて、このブルーノートに残したストックホルムでのライヴ音源、オーネットの奏でる自由度の高いユニークな即興演奏の全貌がとてもよくわかる、大変優れたライヴ録音になっている。
それまでの伝統的なジャズが、やらないこと、やったことがないこと、やってはいけないこと、を全部やっている、それまでの伝統的なジャズに対する「アンチテーゼ」の様な演奏がギッシリ詰め込んだ、オーネット独特な自由度の限りなく高い「ハードバップ」が、ライヴ演奏という、一期一会な、究極の即興演奏という形で記録されている。
演奏によっては、内容が混乱したり、冗長になったりすることがあるオーネットだが、このライヴ盤には、それが全く無い。オーネットの個性的な「ハーモロディクス理論」に基づく即興演奏が、整った形で鮮度の良いイメージで記録されている。この辺りは、さすが。ブルーノートといったところ。優れたライヴ録音をモノにするプロデュース能力と録音技術については見事という他ない。
オーネット・コールマンの「ハーモロディクス理論」に基づいた、自由度の高いユニークな即興演奏を体感し、理解するには格好のアルバムである。そういう意味では、ブルーノート・レーベルほど、当時のオーネット・コールマンを理解していたレーベルは無かった、と言える。
ベスト100の「第6位」が妥当かどうかについては異論はあるが、ジャズ・レーベルとして、当時の優れたジャズを的確に捉え記録する「ジャズに対する感覚の鋭さ」については、確かに、ブルーノートらしいアルバム、である。こういった、異端に近いジャズを的確に捉えるという点では、ブルーノートがピカイチだろう。
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