BNの「オーネットの不思議盤」
オーネットは、コンテンポラリー・レコードでの『Something Else!!!!』から始まり、アトランティック・レコードに移籍して『The Shape of Jazz to Come』をリリース、その後、5枚のリーダー作をリリースした後、突然、1966年に、コロンビア・レコードから『Chappaqua Suite』を突然リリース。そして、1966年から1971年にかけて、3枚のリーダー作をブルーノートからリリースしている。そんな3枚の中の一枚がこの盤。
Ornette Coleman『New York Is Now!』(写真左)。1968年4月29日、5月7日の録音。ブルーノートの4287番。ちなみにパーソネルは、Ornette Coleman (as, vln, tp), Mel Fuhrman (vo), Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds), Dewey Redman (ts)。
オーネットのブルーノートからの2枚目のリーダー作になるが、オーネットが、元コルトレーン・カルテットのリズム隊、ギャリソンのベース、エルヴィンのドラムと組んだ、「不思議で面白い内容」のモード&フリー・ジャズ盤。
プロデューサーが、設立者&総帥プロデューサーであったアルフレッド・ライオンでは無く、後を引き着いたフランシス・ウルフなのが象徴的。オーネットがどうやって、この音のコンセプトを提案したのか、若しくは了解したのかは判らないが、オーネットのリーダー作の中では、異質な、ちょっと不思議な盤である。
「あれをやっちゃ駄目、これをやっちゃ駄目は、ジャズの自由度を狭める。なんでもかんでもやってみよう」というのが、真のジャズである」というのがオーネットの考え方なんだろうが、前作では、当時10歳の息子デナード・コールマンをドラマーに採用するという「暴挙」でちょっとスベったので、このアルバムでは、リズム隊を完全強化している。なんと、元コルトレーン・カルテットのリズム隊を持って来て、そこで「オーネットの考えるフリー・ジャズ」を展開する、という寸法。
加えて、コルトレーン・フォロワーの第一人者の1人、デューイ・レッドマンのテナーを持って来て、老舗ジャズ・レーベルのブルーノートで、「オーネットの考えるフリー・ジャズ」をやろうとしたら、どこか、モーダルな響きのするフリー・ジャズというか、限りなくフリーに近いモード・ジャズ風の演奏に落ち着いてしまった、そんな偶然性を感じる、このアルバムの内容である。
このアルバムには、1950年代の「オーネットに対する新鮮な驚き」は無い。音は明らかにオーネットの音。冒頭の「The Garden of Souls」の最初の自由度の高いフレーズを聴いただけでオーネットと判る音世界なんだが、フリーな即興演奏を求めているにも関わらず、どこか理路整然とした、完全即興では無い、限りなく自由度の高い、オーネット流のモーダルなジャズが展開されている様なイメージ。
どう聴いても、オーネットの考えるフリー・ジャズは伝わってこなくて、レッドマン参加の影響も大きかったのか、この盤では「オーネットの考えるコルトレーンのフリー・ジャズ」を追求している様に感じる。逆に、そう解釈した方が判り易い、上質かつ真摯な「オーネットの考えるコルトレーンのフリー・ジャズ」を、オーネットは、やっているように聴こえる。
フリー・ジャズ系のサックス奏者としての成熟、円熟をみたオーネットのリーダー作。モード時々フリーなジャズで、フリーな部分はオーネット流のフリー・ジャズの響きはするが、演奏全体の雰囲気は限りなく自由度の高い、オーネット流モード・ジャズ風。そういう意味で、このオーネットのブルーノート第二弾は「不思議で面白い内容」のモード&フリー・ジャズ盤に仕上がっている。
つまりは、コルトレーン・フォロワーのレッドマン、ギャリソン、エルヴィンは、オーネットの考えるフリー・ジャズに染まらなかった、逆に、オーネットが、コルトレーンにはこういうフリー・ジャズをやって欲しかったという、レッドマン、ギャリソン、エルヴィンらの想いにオーネットが寄り添った、「オーネットの考えるコルトレーンのフリー・ジャズ」、そんな雰囲気がするのがこのアルバム。解釈が悩ましい異色盤です。
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