2024年9月 2日 (月曜日)

バグスのサボイ・レーベル最終盤

ジャズを聴き始めた頃から、ミルト・ジャクソン、愛称「バグス」のヴァイブがお気に入りで、ずっとバグスのリーダー作を追いかけてきた。が、バグスの初期のリーダー作の多くが、サボイ・レーベルからリリースされていた、なんて情報は、ジャズ雑誌やジャズ盤紹介本には全く無くて、『Opus de Jazz』だけが唯一だと思っていた時期が長く続いた。

Milt Jackson『Jackson's Ville』(写真左)。1956年1月23日の録音。サボイ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Lucky Thompson (ts), Hank Jones (p), Wendell Marshall (ds), Kenny Clarke (ds)。バグス初期のリーダー作のうち、サボイ・レーベルに残した最後のアルバムになる。

1956年1月23日のセッションは、先行の『The Jazz Skyline』と、この『Jackson's Ville』に分けてリリースされている。内容的に充実したセッションだったらしく、リーダーのバグスのヴァイブは絶好調、フロント・パートナーのトンプソンのテナーも好調。ピアノのハンク・ジョーンズ率いるリズム・セクションも、味のあるハードバップど真ん中のリズム&ビートを叩き出して好調。
 

Milt-jacksonjacksons-ville  

 
ビ・バップ時代からの生き残りがメンバーのハードバップなので、完成度は高いが、演奏内容や出てくるフレーズに耳新しさは無い。ほぼ成熟した感の強いハードバップ演奏が繰り広げられている。トンプソンにしろ、ハンクにしろ、出てくるフレーズは、ビ・バップの延長線上にあって、手慣れた感が見え隠れるするパーフォーマンス。故に、逆に取れば、絵に描いた様なハードバップな演奏で、安心安定感溢れる、水準レベルの演奏が聴き心地満点。

そんな中、バグスのヴァイブのフレーズは、ちょっと深化した深みのあるフレーズで唄いまくる。恐らく、MJQ(Modern Jazz Quartet)への参加が、いい刺激になり、いい経験になっているのだろう。MJQへの参加はバグスにとっては「損な選択」という評論もあったが、僕は逆だと思っている。単独リーダー作でのソロは、他のビ・バップ時代からの生き残りのジャズマンと比較して、明らかに創造的で新鮮でマンネリ感は全くない。

この『Jackson's Ville』でも、そんな創造的で新鮮なフレーズを弾きまくるバグスの超絶技巧なヴァイブ・プレイを楽しむことが出来る。アレンジもなかなかで、冒頭のビ・バップの名曲「Now's the Time」や、エリントンの名曲「In a Sentimental Mood」や「Mood Indigo」「Azure」が、ミッドテンポの、小粋で洒落た曲想にアレンジされていて、聴き応え十分。バグスのキャリア初期のハードバップな好盤である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年9月 1日 (日曜日)

バグスの多彩な才能の記録です

ジャズ・ヴァイブの神様、ミルト・ジャクソン(愛称「バグス」)のキャリア初期のリーダー作は、概ね、サボイ・レーベル(Savoy Label)からのリリースになる。ブルーノートの『Milt jackson』、プレスティッジの『Milt Jackson Quartet』は、どちらも該当レーベルからの単発。サボイからの最終作『Jackson's Ville』までのリーダー作9作中の6作までがサボイからのリリース。改めて「へ〜っ」と思ってしまう。

Milt jackson『Meet Milt Jackson』(写真左)1949年12月23日、1954年11月1日、1955年2月7日、1956年1月5日の4セッションからの寄せ集め収録。1956年のリリース。当然、パーソネルは複雑で、整理すると、

1949年12月23日(tracks 6–9)は、Milt Jackson (vib), Bill Massey (tp), Julius Watkins (French horn), Billy Mitchell (ts), Walter Bishop Jr. (p), Nelson Boyd (b), Roy Haynes (ds)。珍しいフレンチ・ホルンが入ったセプテット編成。

1954年11月1日(track 5)は、Milt Jackson (vib, p, vo), Frank Morgan (as), Walter Benton (ts), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。バグスが唄い、ピアノを弾く、変則クインテット編成。

1955年2月7日(track 4)は、Milt Jackson (vib, p), Frank Wess (ts, fl), Charlie Fowlkes (bs), Eddie Jones (b), Kenny Clarke (ds)。バグスがピアノを弾く、変則クインテット編成。

1956年1月5日(tracks 1–3)は、Milt Jackson (vib), Lucky Thompson (ts), Wade Legge (p), Wendell Marshall (b), Kenny Clarke (ds)。スタンダードなクインテット編成。
 

Milt-jacksonmeet-milt-jackson

 
既出の4セッションから未収録だった演奏を寄せ集めているのだが、当盤のリリースが1956年なので、冒頭「They Can't Take That Away from Me」から、3曲目の「Flamingo」までが、当時、一番ホットな「1956年1月5日」の演奏で、収録曲が進むにつれ、録音年月日が過去に遡っていくという、ちょっと面白い曲の収録順となっている。

当然、後半6曲目「Hearing Bells」から、ラストの「Bubu」は、1949年12月23日の録音なので、1956年1月5日の録音と比べると、演奏自体、まだまだ、こなれていない、ちょっと硬くてギクシャクした演奏になっているが、これは仕方がない。

初期のバグスのサボイにおけるリーダー作は、内容的に優れたものが多いが、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌のジャズ盤紹介などで無視されている。ネット上でも、取り上げる人は僅少。

しかし、この盤を聴いてみると、バグスの多彩な才能が聴いて取れる。本業のヴァイブはもとより、ピアノの腕前もなかなかのもの、加えて、この盤ではボーカルまで披露していて、これもなかなかのもの。

4セッションからの寄せ集め収録の盤ではあるが、バグスのヴァイブについては、既に、1949年12月23日において、テクニック、歌心、フレーズの個性、いづれも、ほぼ完成の域に達しているので、4つのセッションを横断するバグスのヴァイブについては一貫性があって、アルバム全体に統一感がある。グループサウンズ自体は、その時代の標準レベルなので、古い演奏ほど、内容が伴わないのは致し方ない。

このアルバムの副題に「Vibist, Pianist. Vocalist」とあるのは「言い得て妙」。この盤は若き日のバグスの多彩な才能の記録である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年8月31日 (土曜日)

若き日のバグスの成熟度合い

ミルト・ジャクソン(Milt jackson)。ジャズ・ヴァイブの神様。愛称は「バグス」。このバグスのリーダー作を棚卸しがてら、聴き直しているのだが、バグスの初期のリーダー作って、どんなんだっけ、と思い当たった。

ブルーノートの『Milt jackson』、プレスティッジの『Milt Jackson Quartet』はしっかり聴いているが、その他は意外と怪しい。バグスのディスコグラフフィーを再確認して、該当する幾枚かの盤について語ってみたい。

Milt Jackson『Roll 'Em Bags』(写真左)。1949年1月25日と1956年1月5日の録音。Savoyレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、以下の通り。バグスは1923年1月生まれなので、1949年の録音時は26歳の時の録音になる。

1949年1月25日の録音(tracks 1-6)は、Milt Jackson (vib, p), Kenny Dorham (tp), Billy Mitchell (ts), Julius Watkins (French horn), Curly Russell (b), Kenny Clarke (ds), Joe Harris (timbales)。フレンチ・ホルンの参加が珍しいセプテット(7人編成)。

1956年1月5日の録音(tracks 7-9)は、Milt Jackson (vib, p), Lucky Thompson (ts) Wendell Marshall (b), Kenny Clarke (ds)。バグスのヴァイブと、トンプソンのテナーがフロントのピアノレスのカルテット(4人編成)。

バグス以前は、ジャズ・ヴァイブ奏者として有名な存在は、ライオネル・ハンプトンとレッド・ノーヴォの2人だけ。ハンプトンの演奏スタイルは「スイング」、ノーヴォの演奏スタイルは「ビ・バップ」。
 

Milt-jacksonroll-em-bags  

 
バグスは1945年、ディジー・ガレスピーの楽団に入って、プロとしてのキャリアをスタートさせていて、演奏スタイルは「ビ・バップ」。程なく、ハードバップのトレンドが押し寄せ、バグスはいち早くハードバップに適応し、ジャズ・ヴァイブの第一人者としての地位を確立している。

そんな「ビ・バップ」のバグスと、「ハードバップ」のバグス、両方のバグスのヴァイブが確認できるアルバムのこの『Roll 'Em Bags』である。1949年1月25日のセッションにて「ビ・バップ」のバグス、1956年1月5日の録音にて「ハードバップ」のバグスのヴァイブが確認できる内容となっていて、とても興味深い。

1949年1月25日の録音の、アルバム冒頭の「Conglomeration」のバグスのヴァイブは「ビ・バップ」だが、流麗かつファンキー&ブルージーな雰囲気濃厚なヴァイブは、ほぼ完成の域にあって、明らかに、ハンプトンやノーヴォのヴァイブとは一線を画する。テクニック面でも一段違う、高度でテクニカルで歌心溢れるヴァイブで、バグスの唄うようにヴァイブを弾き進める様は、他の楽器の演奏と比較しても、一段抜きん出ている。

1956年1月5日の録音では、バグスのヴァイブは「ハードバップ」。ジャズ・ヴァイブの第一人者として、ハードバップに完全適応した、流麗かつファンキー&ブルージーな雰囲気濃厚なヴァイブは完成されている。1949年1月25日のヴァイブと比較して、余裕度の高い、流麗度合いが増した、爽やかで軽やかなファンキー&ブルージーな雰囲気濃厚。

ジャズ・ヴァイブの神様「バグス」のジャズ・ヴァイブは、1949年の時点で、ほぼ完成の域に達していることが良く判る。これは、ブルーノートの『Milt jackson』、プレスティッジの『Milt Jackson Quartet』と同様。サボイにも若き日のバグスの成熟度合いが確認できる、重要な内容の盤があった、ということ。バグスのジャズ・ヴァイブの完成を確認する上で、このサボイの『Roll 'Em Bags』もマスト・アイテムな盤であることが良く判る。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年8月30日 (金曜日)

Milt Jackson名盤 ”Bags’ Opus”

ミルト・ジャクソンはジャズ・ヴァイブの神様。愛称は「バグス」。このバグスのリーダー作を棚卸しがてら、聴き直しているのだが、バグスのリーダー作の中での名盤・好盤の類について、当ブログでまだまだ記事化されていないものがある。これはいかん、ということで、バグスのリーダー作の記事化のコンプリートを目指して、せっせとアルバムを聴き直している。

Milt Jackson『Bags' Opus』(写真左)。1958年12月28–29日の録音。United Artists レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), Art Farmer (tp), Benny Golson (ts), Tommy Flanagan (p), Paul Chambers (b), Connie Kay (ds)。バグスのヴァイブ、ファーマーのトランペット、ゴルソンのテナーがフロントの、バックには、トミフラのピアノ、ポルチェンのベース、ケイのドラムという、燻銀ピアノ・トリオがリズム隊として控えている。

このパーソネルを見て感じるのは、ハードバップ・ジャズのそれぞれの楽器の人気ジャズマンがズラリと顔を並べていて、これはもう、内容充実のハードバップ盤だということ。冒頭の「Ill Wind」で、この曲は、ファーマーのトランペットとゴルソンのテナー抜きの、バグスがメインのカルテットで、しみじみと始まるのが実に良い。バグスのヴァイブの流麗でブルージーで唄うような、染み渡るようなフレーズが映えに映える。
 

Milt-jacksonbags-opus

 
この盤には、ベニー・ゴルソンがいる。ハードバップのアレンジの最高峰の一つ「ゴルソン・ハーモニー」の創始者で、この盤でも、ゴルソン本人の作編曲で、「I Remember Clifford」と「Whisper Not」の2大名曲を、バグスのヴァイブがフロントで聴くことが出来る。これがまあ、名演中の名演で、他の演奏と印象が全く異なる。「I Remember Clifford」と「Whisper Not」って、ヴァイブの音が合うんですねえ。ファンクネス漂い、哀愁感タップリ、歌心満載。改めて感心。

ジョン・ルイス作の「Afternoon In Paris」も、曲の持ち味をしっかり踏まえて、アドリブをかます、バグスのヴァイブは見事だし、バラード曲「Thinking Of You」をやらせれば、バグスの面目躍如、自家薬籠中のもの、情感溢れ、耽美的でリリカル、それでいて、ファンクネスが実に芳しい、バグスならではの優れたバラード演奏を聴くことが出来る。ソロを取っても、バックに回っても、バグスのヴァイブは素晴らしいパフォーマンス。

タイトルの「Opus」から、バグスの名盤のひとつ『Opus De Jazz』を想起して、この『Bags' Opus』って、『Opus De Jazz』の二番煎じかと思ったら、全く違った。思い違いも甚だしい。『Opus De Jazz』が1955年10月の録音なので、この3年間で、バグスは確実に進化していた、ということ。バグスのパフォーマンスについては、この『Bags' Opus』の方が、『Opus De Jazz』の名演に比べて、演奏の深みが増している。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年1月 5日 (金曜日)

『バグス & トレーン』の再聴。

アトランティック・レコード時代のコルトレーンは、シーツ・オブ・サウンドを吹きまくったり、モード・ジャズやソプラノ・サックスにチャレンジするリーダー作は評価が高いが、それ以外のリーダー作については評価がイマイチ。20世紀の時代では、我が国でその傾向は顕著で、我が国のコルトレーン盤の紹介本では、評価は「けちょんけちょん」である。

今となっては、どうして、そんな評価になるのか、その真意はよくわからないが、どうも、コルトレーンは「シーツ・オブ・サウンド」か「モード・ジャズ」か「フリー&スピリチュアル・ジャズ」をやらないといけないらしく、それもワン・ホーンで、コルトレーンのみを愛でることが出来る盤でないと駄目みたいなのだ。しかし、それは余りに偏った評価で、現代においては参考程度に留めておいた方が良いだろう。

Milt Jackson and John Coltrane『Bags & Trane』(写真左)。1959年1月15日の録音。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), John Coltrane (ts), Hank Jones (p), Paul Chambers (b), Connie Kay (ds)。ミルト・ジャクソンのヴァイブとコルトレーンのサックスがフロントのクインテット編成。

クールでファンキーなミルトのヴァイブと、豪放でバップなコルトレーンのテナー、その個性が正反対のミルト(愛称・バグス)とコルトレーン(愛称・トレーン)の競演の「妙」が楽しめる。よってアルバム・タイトルが「バグス&トレーン」。この正反対の個性の共演、これはとんでもない「ミスマッチ」とするのが、20世紀の我が国のジャズ評論の評価。
 

Milt-jackson-and-john-coltrane_bags-tran

 
しかし、自分の耳で聴くと、ミスマッチどころか、バグスとトレーン、それぞれの個性が、双方の個性を引き立て合っているように聴こえる。正反対の個性なので、ユニゾン&ハーモニーを取るのはちょっと難しい。それでも、ソロ・パフォーマンスの受け渡しでは、クールでファンキーなミルトのヴァイブと、豪放でバップなコルトレーンのテナーの対比がとても印象に残る。

冒頭1曲目の「Stairway to the Stars」、この曲を聴くだけで「それ」が判る。ミルトの美しく響く、ブルージーなヴィブラフォンの調べ、そして、その後に入ってくるコルトレーンの豪快で真っ直ぐなテナー。正反対の個性、好対照な個性の共演。メリハリがあって陰影が深い。それでいて、底はブルースで一体となっている。申し分ないパフォーマンスである。

4曲目の「Be-Bop」は高速バップな演奏。当然、コルトレーンは「シーツ・オブ・サウンド」風の高速フレーズを吹きまくる。すると、ミルトは2本マレットで、これまたブルージーでファンキーな高速フレーズで応戦する。正反対の個性、好対照な個性の高速フレーズの共演。これも「聴きもの」、良好なハードバップなパフォーマンス。

バックのリズム・セクションも無難なハードバップ基調のバッキングをしていて、フロントの二人のパフォーマンスを損なうことは無い。そう、このミルトとコルトレーンの共演盤は「ハードバップ」。成熟したハードバップのアルバムとして聴けば、ミルトのヴァイブもコルトレーンのテナーも全く違和感は無い。

ミルトもコルトレーンものびのび、リラックスして演奏している。これだけ、のびのび、リラックスして演奏しているのだ。演奏している当の本人たちは「ミスマッチ」などとは全く感じていなかっただろう。そもそも、ミスマッチで出来が悪いセッションであれば「お蔵入り」だろう。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2024.01.04 更新

    ・米国西海岸ロックの代表的バンドのひとつ イーグルスの記事を移行中。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

 

2022年4月16日 (土曜日)

日だまりのようなジャズです 『SunFlower』

ミルト・ジャクソン(Milt Jackson)は、メインストリーム志向のジャズ・ヴィブラフォン(ヴァイブ)の第一人者。伝説のカルテット、Modern Jazz Quartet(MJQ)のメンバー。しかし、1974年、ミルトが退団したいと申し出たのが発端で解散。理由は22年間、MJQで地道に音楽活動を続け、それなりの評価を得て来たにも拘わらず、新進のロック・ミュージシャンに較べ報酬が少ないことが不満だったから、とか。

が、解散後、ミルト・ジャクソンはロック・ミュージシャンに転身した訳ではない。逆に、純ジャズ志向のミルト・ジャクソンは、クリード・テイラーが設立したクロスオーバー&フュージョン・ジャズがメインのジャズ・レーベルの下で、解散前の1970年代前半に4枚のリーダー盤をリリースしている。その最初の一枚がこの盤。

Milt Jackson『SunFlower』(写真左)。1972年12月12, 13日の録音。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), Freddie Hubbard (tp, flh), Herbie Hancock (p), Jay Berliner (g), Ron Carter (b), Billy Cobham (ds), Ralph MacDonald (perc)。このパーソネルに、ストリングス・オーケストラが加わる。アレンジは Don Sebesky (arr, cond)。

錚々たる面子による、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズだが、ミルト・ジャクソンのヴァイブが全面的にフィーチャーされている。ミルト・ジャクソンのヴァイブの個性がしっかり押し出されている。マイルドで優しいヴァイブの音色。途方も無く素晴らしい演奏テクニック。ブルージー&ジャジーな、そして、グルーヴ感溢れるパフォーマンス。
 

Sunflower_milt-jackson

 
そんなミルト・ジャクソンのパフォーマンスを聴いていて、「日だまりのようなジャズ」をイメージした。ホンワカして柔らかで、それでいて、芯がしっかり通っていて優しくて心地良い。ストリングス・オーケストラとエレピで優しく包んだ、どこか切なくなるような柔らかいミルトのヴァイブ。

そんな「日だまりのようなジャズ」は、1970年代、クロスオーバー&フュージョン・ジャズを牽引し、後のスムース・ジャズの源を作った、CTIレーベルのアルバムに多く聴くことが出来る。1950年代のハード・バップの様に熱くは無い。1960年代のファンキー・ジャズの様にノリノリでは無い。フリー・ジャズやアヴァンギャルド・ジャズの様に激しくない。聴いていて柔らかく心地良い、ソフト&メロウなモダン・ジャズ。

バックは決して甘きに流れない、一本芯の入った、玄人好みのバッキング。超一流のバックの面々。彼らの演奏テクニックが、甘きに流れてしまいそうな、イージーリスニングに陥りそうなソフト&メロウなジャズを、しっかりと、メインストリーム志向のモダン・ジャズに留めている。

聴き入っていると、ついつい、まどろんでしまいそうな儚さ。ほんわかして柔らかで、それでいて、芯がしっかり通っていて、優しくて心地良い、甘美で官能的な響き。1970年代ジャズの成果である、フュージョン・ジャズの音世界のひとつがここにある。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4
 

2022年3月19日 (土曜日)

ベイシーのジャム・セッション盤

何故だか判らないのだが、パブロ・レーベルのカタログを見渡していると、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのライヴ音源が結構あって、それも、1975年と1977年に集中している。何かモントルー・ジャズ・フェスとパブロ・レーベルの間に、ライヴ・レコーディングの専属契約でもあったのだろうか。どのライヴ盤も充実した内容で、録音状態もとても良いばかりである。

このライヴ盤を聴かない手は無い。それぞれのライヴ盤の内容を見ても、パーソネルはそれぞれ、ベテラン〜中堅の一流ジャズマンで固められ、モントルー・ジャズ・フェスという伝統的な、由緒正しきジャズ・フェスでのライブ演奏なので、内容的にも、伝統的なスイング〜ハードバップな演奏がメインで、それぞれが充実したものばかり。

『Count Basie Jam Session At the Montreux Jazz Festival 1975』(写真)。1975年7月19日、スイスはモントルーのジャズ・フェスティヴァルでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Count Basie (p), Roy Eldridge (tp), Johnny Griffin (ts), Milt Jackson (vib), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Louis Bellson (ds)。伝説のジャズバンドの総帥、カウント・ベイシーがピアノを担当、エルトリッジのトランペットとグリフィンのテナー、ミルトのヴァイブがフロントを張るセクステット編成(6重奏団)。
 

Count-basie-jam-session-at-the-montreux-

 
1975年時点での、このパーソネルを見れば、このライヴ演奏には絶対に触手が伸びる。ベイシーがビッグバンドを離れて「ピアニスト」として参加、スイング時代からの人気トランペットである、エルトリッジがフロントを担当、同じくスイング時代からの人気ドラマー、ルイ・ベルソンがドラムを担当していること、そして、このスイング時代からの人気ベテラン・ジャズメン達が、ハードバップの中核を担うメンバーと合流して、思いっ切りハードバップなジャム・セッションを繰り広げているのだ。

メンバー全員ノリノリのジャムセッションが繰り広げられる。収録曲はパーカー作の「Billie's Bounce」、メンバー全員の即席ナンバー「Festival Blues」、そして、レスター・ヤング作の「Lester Leaps In」の、たった3曲だが、どの曲も10分以上の長い収録時間の演奏で、メンバーそれぞれの長尺のアドリブ演奏心ゆくまで堪能できる。

破綻が全く無く、テクニックにも優れた「ハードバップなジャム・セッション」が繰り広げられていて、爽快ですらある。ミルト・ジャクソンのヴァイブがこれほどまで、ジャム・セッションに適応するとは思わなかったし、ベイシーのピアノがハードバップ演奏のリズム・セクションの一端を担うなんてことも思いもしなかった。しかし、メンバー6人とも好調な演奏で、ハードバップなジャム・セッションを心から楽しんでいる雰囲気がビンビンに伝わってくる。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2022年3月18日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・232

パブロ・レコード(Pablo Records)は1973年にノーマン・グランツによって設立されたジャズ・レコード・レーベル。ビ・バップ期以降のレジェンド〜ベテラン級のジャズマンをメインにセッションをセットアップし、1970年代、フュージョン・ジャズ全盛期にありながら、純ジャズに特化したアルバムを多数リリースしたレーベルである。

このパブロ・レーベルのカタログの特色の1つが「モントルー・ジャズ・フェスティヴァル」のライヴ録音盤が多くあるということ。しかも、フェスティヴァルの催し物の中でも「目玉」のひとつである「ジャム・セッション」のライヴ盤が多数出ている。

レジェンド〜ベテラン級のジャズマン達のジャム・セッションがメインという先入観があって、口の悪いジャズ者の方々は、聴く前から「予定調和で定型的な、旧来のハードバップっぽい、お決まり展開のジャム・セッションなんでしょ」と散々なのだが、これが聴いてみると意外と「イケる」のだ。フェスティヴァルのジャム・セッションの記録なので「臨場感」も半端ないところも「イケる」のだ。

The Dizzy Gillespie Big 7『At the Montreux Jazz Festival 1975』(写真)。1975年7月16日、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dizzy Gillespie (tp), Eddie "Lockjaw" Davis, Johnny Griffin (ts), Milt Jackson (vib), Tommy Flanagan (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Mickey Roker (ds)。フロント3管+ヴァイブ+リズム隊の「セプテット(七重奏団)」編成。
 

The-dizzy-gillespie-big-7at-the-montreux

 
パーソネルを見渡すと、このセプテットって「昔の名前で出ています的なロートル・ジャズマン」の集まりでは無い。暫定リーダーのガレスピーですら当時58歳。ロックジョーで53歳。この2人がメンバーの中で最古参と思われるが、この年齢だとすると「ベテラン」の域を出ていない。残りの5人は、当時の純ジャズの中核メンバーばかり。このメンバーで「予定調和な定型的なジャム・セッション」は無いだろう。

フロント3管が好調。ガレスピー、ロックジョーはバップなトランペットを鳴り響かせ、グリフィンのハードバップなテナーは、モダンで骨太でブルージー。ミルトのヴァイブは流麗かつ躍動的。トミフラのピアノが率いる、ペデルセンのベース、ロッカーのリズム隊は、すこぶるハードバップで切れ味の良い、力感溢れ、そこはかとなくファンクネス漂う、上質のリズム&ビートを供給する。

収録曲はジャム・セッションの記録(括弧内は収録時間)なので、LP時代は以下の2曲のみ「Lover, Come Back to Me」(16:43), 「I'll Remember April」(16:02)。 CDリイシュー時、ボートラとして以下の2曲「What's New?」(12:13), 「Cherokee」(11:01) が追加されて、全4曲構成となっている。

この追加されたボートラの内容もかなり充実していて、LP時代の2曲だけではちょっと聴き足りない気分になるだが、追加の2曲が加わって、このジャム・セッションが如何に充実していたか、をしっかり体感出来る様になっている。このボートラの追加は「正解」である。このジャム・セッションの記録の価値がさらに上がった、と言える。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年7月26日 (月曜日)

パブロ・レーベルらしい優秀盤

パブロ・レコード(Pablo Records)は1973年にノーマン・グランツによって設立されたジャズ・レコード・レーベル。ビ・バップ期以降のレジェンド〜ベテラン級のジャズマンをメインにセッションをセットアップし、1970年代、フュージョン・ジャズ全盛時にありながら、純ジャズに特化したアルバムを多数リリースした。

Milt Jackson『The Big 3』(写真)。1975年8月25日の録音。パブロ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), Joe Pass (g), Ray Brown (b)。ジャズ・ヴァイブの神様、ミルト・ジャクソンが筆頭リーダーのドラムレス・トリオ。管は全く無し。

ジャケットについては2種類あって、カラー版とモノクロ版。私たち、オールドなジャズ者からすると、LP時代のモノクロ版のジャケットに親近感がある。

フロント楽器の役割は、ミルトのヴァイブとパスのギターが担い、リズム&ビートは、パスのギターとブラウンのベースが担う。このヴァイブ+ギター+ベースのドラムレス・トリオの場合、3人の演奏テクニックについて、相当な力量が必要になる。特に、ギターとベースは大変忙しい。
 

The-big-3_1

 
まず、ミルトのヴァイブが絶好調。奇をてらうこと無く、ハードバップ期の好調時のミルトのヴァイブが帰ってきている。目新しさは全く無いが、品の良いファンクネスを偲ばせた、スインギーでジャジーな、成熟したヴァイブを聴かせてくれる。これが良い。「これぞ、極上のモダン・ジャズ」と思わず感じ入る。

他の2人に目を向けると、旋律楽器とリズム楽器の両方の役割を担うパスのギターは大変で、これをいとも容易い風に弾きこなしていくパスのギターについては「凄いなあ」の一言。レイ・ブラウンのベースも凄い。骨太でソリッドなベースでリズム&ビートをキープするのは当然、ソロ・パフォーマンスもハイ・テクニックを駆使して、唄うが如く、素晴らしい旋律弾きを披露している。

私がジャズを聴き始めたのが1970年代後半。この頃の我が国のパブロ・レーベルの評価は「過去のジャズメンを集めて、懐メロよろしく、旧来のハードバップをやらせてアルバムを量産する、商業ジャズ・レーベル」と揶揄されていた。が、そんなことは全く無い。たまに凡盤はあるが、概ね、良好なハードバップなジャズが記録されている。

パブロ・レーベルのアルバムを初めて聴いて以来40年。そんなパブロ・レーベルを再評価したい、と思っている。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》

 
 ★ AORの風に吹かれて        
【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・Santana『Inner Secrets』1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・イエスの原点となるアルバム

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年7月 6日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・211

最近、サヴォイ・レーベルの優秀盤を聴き直している。こうやって聴き直してみると、サヴォイ・レーベルもブルーノート・レーベルと同様に、音の響きとアルバム制作の基本ポリシーの個性がハッキリしていて、聴いていて気持ちが良い。

特に、1950年代半ば、オジー・カディナがプロデューサーとして迎えられ、このカディナのプロデュースの下,1954年から1959年にかけて制作されたアルバムは内容の優れたもの、内容の濃いものが多い。

Milt Jackson『Opus De Jazz』(写真左)。1955年10月28日、NJのVan Gelder Studio での録音。プロデューサーはオジー・カディナ。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), Frank Wess (fl, ts), Hank Jones (p), Eddie Jones (b), Kenny Clarke (ds)。ハードバップ初期の秀作。ミルト・ジャクソンのヴァイブ、フランク・ウエスのフルートがフロントのクインテット編成。

タイトルの「オパス(Opus)」とは、ラテン語で「作品」の意味で、直訳すると「ジャズの作品」という意味になる。ちなみに、冒頭の「Opus de Funk」は「ファンクの曲」。「Opus Pocus」は「呪文の曲」になる。この盤にはハードバップのお手本の様な演奏が詰まっている。
 

Opas-de-jazz

 
ミルトのヴァイブとウエスのフルートが実に良く効いている。サヴォイ・レーベルお得意の音「リラックスした正統でハードバップな演奏」が、このヴァイブとフルートの音色で明快に表現されている。しかも、このヴァイブとフルートのフレーズは明らかに「ファンキー」。マイナー調でブルージーなアドリブ・フレーズは、聴いていてドップリと浸り切ってしまいたい位の心地良さ。

全編に渡って、このヴァイブの音とフルートの音が思いっ切り印象に残る盤である。このヴァイブとフルートの持つ音の響きが、マイナー調でブルージーな雰囲気を増幅させ、「ファンキー」を具体的な音として僕達に聴かせてくれる。この盤でこの音で、僕はヴァイブの音の虜となって、その最初のアイドルが「ミルト・ジャクソン」だったことを思い出した。

リズム隊も実に良い感じ。フロントのヴァイブとフルートのお陰で、どっぷりと「ジャジーでブルージーでファンキー」な音世界なんだが、その音の雰囲気に「典雅さ」を加味して、小粋でファンキーなハンク・ジョーンズのピアノが要所要所でアクセントを付け、チェンジ・オブ・ペースを促す。ケニー・クラークのドラムは切れ味良く硬軟自在。エディー・ジョーンズのベースは堅実だ。

サヴォイ・レーベルの代表的なヒット作の一枚。ジャケットもサヴォイ・レーベルらしいもの。音はルディ・ヴァン・ゲルダーの手になるもので、音の良さは「折り紙付き」。初めて聴いて良し、聴き直して良しと、ジャズ者全ての方にお勧め。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》

 
 ★ AORの風に吹かれて        
【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・Santana『Inner Secrets』1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・イエスの原点となるアルバム

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

A&Mレーベル AOR Bethlehemレーベル Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteの100枚 Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル ECMのアルバム45選 ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル Jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 こんなアルバムあったんや ながら聴きのジャズも良い アイク・ケベック アキコ・グレース アジムス アストラッド・ジルベルト アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラウンド・マイルス アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アントニオ・サンチェス アンドリュー・ヒル アンドレ・プレヴィン アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イリアーヌ・イリアス インパルス!レコード ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウォルフガング・ムースピール ウディ・ショウ ウラ名盤 エグベルト・ジスモンチ エスビョルン・スヴェンソン エスペランサ・スポルディング エディ・ハリス エメット・コーエン エリック・アレキサンダー エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルヴィン・ジョーンズ エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリスマスにピッタリの盤 クリス・ポッター クリフォード・ブラウン クルセイダーズ クレア・フィッシャー クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニーG ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン コンテンポラリーな純ジャズ ゴンサロ・ルバルカバ ゴーゴー・ペンギン サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド・ジョーンズ サム・ヤヘル サム・リヴァース サンタナ ザ・バンド ジャケ買い「海外女性編」 シェリー・マン シダー・ウォルトン シャイ・マエストロ シャカタク ジェイ & カイ ジェイ・ジェイ・ジョンソン ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジェリー・マリガン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・バリトン・サックス ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャズ喫茶で流したい ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・ラージ ジョエル・ロス ジョシュア・レッドマン ジョナサン・ブレイク ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・コルトレーン on Atlantic ジョン・コルトレーン on Prestige ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン ジョー・ロヴァーノ スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン ステイシー・ケント ステップス・アヘッド スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テッド・カーソン テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トランペットの隠れ名盤 トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ナット・アダレイ ニルス・ラン・ドーキー ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハービー・マン ハーブ・アルパート ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・シャンク バド・パウエル バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグバンド・ジャズは楽し ビッグ・ジョン・パットン ビリー・コブハム ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビル・ブルーフォード ビートルズ ビートルズのカヴァー集 ピアノ・トリオの代表的名盤 ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・ウッズ フェンダー・ローズを愛でる フォープレイ フュージョン・ジャズの優秀盤 フランク・ウエス フランク・シナトラ フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・リトル ブライアン・ブレイド ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザーズ プログレッシブ・ロックの名盤 ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボビー・ハンフリー ボブ・ジェームス ボブ・ブルックマイヤー ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイケル・ブレッカー マイルス( ボックス盤) マイルス(その他) マイルス(アコ)改訂版 マイルス(アコ)旧版 マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マハヴィシュヌ・オーケストラ マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・5 マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モンティ・アレキサンダー モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラムゼイ・ルイス ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラルフ・タウナー ランディ・ブレッカー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レイ・ブラウン レジェンドなロック盤 レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロニー・リストン・スミス ロバート・グラスパー ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー ヴィンセント・ハーリング 上原ひろみ 僕なりの超名盤研究 北欧ジャズ 古澤良治郎 吉田拓郎 向井滋春 和ジャズの優れもの 和フュージョンの優秀盤 四人囃子 国府弘子 増尾好秋 夜の静寂にクールなジャズ 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 松岡直也 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 阿川泰子 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 音楽喫茶『松和』の昼下がり 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー