音楽のジャンルには意味が無い
ジャズとか、ロックとか、ニューミュージックとか、ソウルとか、クラシックとか、何かと人は音楽をジャンル分けしたがる。そういう僕も「音楽のジャンル分け」をし続けて来た。
ジャンル分けが全面的に悪いとは思わない。ジャンル分けの良いところもある。その盤がどういう傾向の音なのか、聴く前に類推することが出来る。しかし、自分の好みで無いジャンルの音楽については実際に音を聴いて感じて確かめることをしない、という、ジャンル分けの悪い面もある。
まあ、音楽の基本は「自分の耳で聴き感じること」なので、ジャンル分けには意味がないことなのかも知れない。それでも、21世紀になっても、CDショップ、ネットショップ、どこでも、音楽のジャンル分けは存在し続けている。
しかし、こういうアルバムの音世界を体験すると、やっぱり「音楽のジャンルには意味が無い」と思ってしまう。そのアルバムとは、フィービー・スノウのセルフタイトル盤『Phoebe Snow』(写真左)。邦題は『サンフランシスコ・ベイ・ブルース/ブルースの妖精フィービ・スノウ』。1974年のリリース。フィービー・スノウのデビュー盤である。
フィービー・スノウとは、ニューヨーク出身のシンガーソングライター。ジャズ、ブルース、ソウル、カントリー&ウエスタン、ゴスペルなどの米国ルーツ・ミュージックをベースとしたアーバンな音作りは彼女の個性。特に、ジャズ、ブルースを基調とした楽曲作りに秀でている。
参加ミュージシャンも実にユニーク。そのユニークなパーソネルを、例えばジャズ畑からピックアップすると、Ron Carter (b), Steve Gadd (ds), Chuck Israels (b), Bob James (org, key), Ralph MacDonald (perc), Zoot Sims (ts), Teddy Wilson (p)。ロック畑からは、Dave Mason (g) なんかも参加している。
しかし、このアルバムに詰まっている音は、決して、ジャズでもクロスオーバーでも無い。また、ロックでも無いし、ソウル・ミュージックでも無ければ、単純なポップスでも無い。あくまで、米国ルーツ・ミュージックをベースとしたアーバン・ポップな音であり、その音はとても個性的だ。
このフィービー・スノウのデビュー盤を聴くと、つくづく「音楽のジャンルには意味が無い」なあ、と思う。
この「音楽のジャンルには意味が無い」の論拠となる面白い現象として、1974年の米国ビルボードの北米ヒットチャートを振り返ると、このフィービー・スノウのセルフタイトル盤『Phoebe Snow』は、Black Albumsのジャンルで22位、Jazz Albumsのジャンルで17位、Pop Albumsのジャンルで4位となって、複数の音楽ジャンルに跨がって、評価されていたことが良く判る。
1曲目の「Good Times」から個性的。唯一無二、フィービー・スノウでしか出せない音であり、フィービー・スノウでしか歌えない、独特なジャジーでブルースな雰囲気。今の言葉で評するなら「クール」。日本語で評するなら「粋で渋い」。言い換えると、米国で無いとニューヨークで無いと生まれ得ない、米国ルーツ・ミュージックをベースとしたアーバンな音。
この音世界、やはり「自分の耳で聴いていただく」しか無いですね。「音楽のジャンルには意味が無い」と感じる盤って、やっぱり文字に表現するのは難しいですね。でも、良いですよ。永遠のエバーグリーン。クールで粋で渋い。ジャズ者の方々にも、十分、お勧め出来る内容です。
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