2026年1月23日 (金曜日)

ソウル志向のシルヴァー・ジャズ

このジャケをみたら、ほとんどの人が「ビビる」だろう。どう見ても、ジャズのアルバムのジャケとは思えない(笑)。この奇妙な恰好をして写っているのは、ホレス・シルヴァー本人。「THE UNITED STATES OF MIND」という思想に入れ込んでいた時期のシルヴァー本人。内容的には、決して「危ない」「怪しい」類の音楽では無いのでご安心を。

Horace Silver Quintet『That Healin' Feelin'』(写真左)。1970年4月8日と6月18日の録音。ブルーノートの4352番。サブタイトルが「The United States of Mind Phase 1」。当時、シルヴァーが入れ込んでいた思想の名称がサブタイトルにあるので、スピリチュアルな側面もあるのか、と警戒するが、これが全く無い(笑)。

それでも、後に『The United States of Mind』としてCDにまとめられた3部作アルバムの最初のもの。ファンキー・ジャズ一本槍のホレス・シルヴァーが、ソウル・ミュージックに一番接近したアルバムの一枚である。

ちなみにパーソネルは、4月8日の録音が、Horace Silver (p, el-p), Randy Brecker (tp, flh), George Coleman (ts), Bob Cranshaw (el-b), Mickey Roker (ds), Andy Bey (vo, 2-5)。6月18日の録音が、Horace Silver (p, el-p), Randy Brecker (tp, flh), Houston Person (ts), Jimmy Lewis (el-b), Idris Muhammad (ds), Gail Nelson (vo, 6), Jackie Verdell (vo, 7–9)。
 

Horace-silver-quintetthat-healin-feelin

 
基本は、シルヴァー印のファンキー・ジャズ。しかし、この盤で「耳を引く」のが、シルヴァーのエレクトリック・ピアノ。シルヴァーの弾くエレピが凄く良い。シルヴァー印のファンキー・ジャズにピッタリのエレピの音、エレピの弾きっぷり。このシルヴァーの弾くエレピが、このアルバムの「キモ」になっている。

このアルバムでは、大々的にボーカルの導入に踏み切っている。3人のボーカリストが分担して、ボーカルを担当しているが、そうなると、このアルバムは「R&B」志向のソウル・ジャズになるのか、と思いきや、そうはならない。あくまで、ソウル・ミュージック志向の、シルヴァー印のファンキー・ジャズ。

大胆なボーカルの導入とエレピの導入で「ソウル・ミュージック志向」を実現している。演奏の基本は、その時その時のシルヴァー印のファンキー・ジャズ。それが証拠に、ソウル・ミュージック志向の割に、粘るファンクネスはライト。ライト仕様のソウル・ミュージック志向なのが、このアルバムの個性であり、シルヴァー印のファンキー・ジャズのバリエーションである。

へんちくりんな恰好をしてジャケに収まっているシルヴァーだが、このアルバムでの音は、ボーカルを抜けば、とても硬派でアーティスティックな、シルヴァー印のファンキー・ジャズである。モード・ジャズにも、ソウル・ジャズにも柔軟に適応し、自らのファンキー・ジャズに昇華させている。ジャケに惑わされずに手にすれば、1970年当時のシルヴァー印のファンキー・ジャズの最前線が体感できる。そんな好盤である。
 
 

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2025年12月19日 (金曜日)

クリスマス・ジャズの定盤・2

気がつけば、早、12月も半ばを過ぎ、なんと、クリスマスまで、あと一週間を切っていることに驚いている。いつの間に(笑)で、今年もあと2週間を切っているという事実にもビックリ。最近は、テレビやネットで、あんまり、クリスマス、クリスマスと騒がなくなった感がするので、あんまり気分として盛り上がらないのも原因なんだろうな。

Duke Pearson『Merry Ole Soul』(写真左)。1969年2月と8月の録音。ブルーノートの4323番。ちなみにパーソネルは、Duke Pearson (p, celeste) Bob Cranshaw (b) Mickey Roker (ds) 。シンプル・ピアノの達人、デューク・ピアソン率いる、お洒落なピアノ・トリオのXmas盤。ブルーノート・レーベル唯一の、LPフルサイズのXmas盤である。

このピアノ・トリオ演奏のXmas盤は内容が充実している。ジャズのXmas盤って、ややもすれば、ジャズ・フォーマットに乗っただけの「Xmasソングのイージーリスニング」盤になってしまうことが多いのだが、この盤は違う。

さすが、ジャズ老舗レーベルからのXmas盤、硬派に誠実にハードバップしているのに感心する。有名なテーマ部があって、そのコード進行を借用して、アドリブ展開をしっかりする。正統派純ジャズのXmas盤。
 

Duke_pearson_merry_ole_soul_1

 
シンプル&軽ファンキーが魅力のピアソンのピアノが、有名Xmasソングの印象的な旋律を紡ぎ上げていく。Xmasソングそれぞれの原曲の良さをしっかりと残しながら、しっかりと純ジャズする。それどころか恐らく、Xmasソングのジャズ化の中で、最高の部類に入る素晴らしいアレンジの数々。イージーリスニングの様に、軽音楽の様に甘きに易きに流れない、正統派で、ハードバップに軸足をしっかり降ろした名演の数々。

原曲を変にデフォルメせず、かといってベタにならず、洒落たアレンジでサラッと聴かせて、後はバリバリにインプロビゼーションへ、というドライブ感が最高。Xmasソングとして耳タコの4曲目「Jingle Bells」、5曲目の「Santa Claus Is Coming to Town」、そして8曲目の「Silent Night」。それぞれ、ピアノ・トリオものとして秀逸。

そして、ラストの2曲「O Little Town of Bethlehem」のリリカルで厳粛なピアノ・ソロから、ラストの「Old Fashioned Christmas」の落ち着いた雰囲気に、思わず厳粛な雰囲気に包まれ、至福の時を迎える。

この盤は、かれこれ、25年間、ずっとXmasシーズンに、我がバーチャル音楽喫茶「松和」でかけ続けている、ジャズのXmas盤として「定盤」の優れものアルバム。当然、録音は「ルディ・ヴァン・ゲルダー」。音の響きは明らかにブルーノート。ブルーノートらしいXmas盤。好盤です。
 
 

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2025年11月24日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・310

リーダーのパーランとタレンタイン兄弟は、米国ペンシルベニア州ピッツバーグ出身の同郷で、ピッツバーグにいた時から共演を重ねた気心知れた仲。このパーラン盤でも、リラックスして息の合った内容の濃い演奏を繰り広げている。そこに、タッカーのベースとヘアウッドのドラムが、演奏のリズム&ビートしっかり支える。非常にバランスの取れた、柔軟性の高いクインテットである。

Horace Parlan Quintet『Speakin' My Piece』(写真左)。1960年7月14日の録音。ブルーノートの4043番。 ちなみにパーソネルは、Horace Parlan (p), Tommy Turrentine (tp), Stanley Turrentine (ts), George Tucker (b), Al Harewood (ds)。フロント2管に「トミー&スタンリー」のタレンタイン兄弟を擁し、リズム・セクションに、パーラン・トリオを配したクインテット編成。

1960年、ハードバップが成熟した後期の録音。確かに、いかにもハードバップらしい、ハードバップの良いところを全部集めた、とにかく、音も響きもフレーズもなにもかもが、ハードバップらしい、ピアノのホレス・パーランがリーダーのクインテット盤。ホレス・パーランの規律あるピアノが、いかに「伴奏上手」に貢献しているかが良く判る内容になっている。
 

Horace-parlan-quintetspeakin-my-piece

 
まず、パーランの規律あるピアノのバッキングが耳に残る。パーランのピアノの個性「ロック・コード弾きでグイグイ押しまくる。短い連続フレーズを間を取りながら繋げる独特のアドリブ・フレーズ。右手のリズム・タッチのドライヴ感」が、フロント管を擁する編成でのバッキングに、好要素として反応するからだろう。パーランのピアノの個性は、フロント管のバッキングに最適なのだ。

そんなパーラン率いるピアノ・トリオのバッキングのもと、トミー・タレンタインのトランペット、スタンリー・タレンタインのテナーが躍動感溢れる、ファンキーなフレーズを吹きまくる吹きまくる。ユニゾン&ハーモニーは魅惑的な響きを撒き散らし、それぞれのソロは切れ味良く、溌剌として、ファンクネスを撒き散らす。どちらも、ソロに入るときの「ぶわーっ」という音圧が、いかにもハードバップという感じで「アガる」。

パーランの規律あるピアノの見事なバッキングと、異常なほど振り切れてるタレンタイン兄弟のフロント・パフォーマンス、そして、それを支えるタッカーとヘアウッドのリズム隊。聴きどころ満載のハードバップ盤。この盤にはジャジーな「黒さと煙」が漂って周りの風景が霞んでいるような、そんなファンクネス溢れるハードバップが詰まっている。ハードバップな名盤の1枚でしょう。
 
 

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2025年11月16日 (日曜日)

発展途上的”深化”を捉える好盤

GoGo Penguin(ゴーゴー・ペンギン)。 2009年、英国のマンチェスターで結成された新世代ピアノ・トリオ。「踊れるジャズ」をアコースティック楽器でプレイするバンド・スタイルは「アコースティック・エレクトロニカ・トリオ」と評価されている。「新しいジャズのアンサンブル」を標榜しつつ、アコースティック楽器でのエレクトロニック・ミュージックを再現する、という実に面白いアプローチを採用している。

そして、ゴーゴー・ペンギンは深化する。初期の頃のゴーゴー・ペンギンの音世界は着実に、ポジティヴな方向に変化している。そして、テクニック最優先の演奏構成から、バンド全体のグルーヴとビートを重視する演奏構成に変化し、その分、シンプル感がアルバム全体を覆う。クラシック的な印象的なピアノにアグレッシブなベースとドラム。

GoGo Penguin『Necessary Fictions』(写真左)。2025年の作品。ちなみにパーソネルは、Chris Illingworth (p), Nick Blacka (b), Jon Scott (ds)。クラシック、プログレッシヴ・ロックをバックボーンに持ちつつ、最先端のエレクトロニック・ミュージック&ダンス・ミュージック志向を標榜する、マンチェスターのピアノ・トリオ、ゴーゴー・ペンギンの「融合」エレ・ジャズである。
 
Gogo-penguinnecessary-fictions  
 
重厚でヘヴィな音色のウッドベースの執拗な反復が生み出す独特のグルーヴが実に「妖しい」雰囲気。そこに、プリペアド・ピアノ(たぶん)が、同じく、ベースのただならぬグルーヴに乗って、反復を紡ぎ出す。そして、ベースのグルーヴに導かれるように、パルシヴな重低音ドラムのリズム&ビートが疾走する。しかし、この分厚いグルーヴのビート・サウンドが、トリオで創出されているとはちょっとした驚きだ。とにかく迫力満点。この「反復」のグルーヴは癖になる。

反復グルーヴは、1970年代の欧州プログレッシヴ・ロック、タンジェリン・ドリームやクラフト・ワークを想起する。そんな1970年代欧州のビート・プログレッシヴ・ロックを現代のグルーヴに置き換えて、ジャズの即興要素をベースにリコンパイルした様な、ゴーゴー・ペンギン、唯一無二の音世界。大胆なエフェクトの導入も耳に新しく響く。現代のエレクトリック・コンテンポラリー・ジャズの「独立峰」的音世界。

英国音楽の複数ジャンルの音世界の「融合」の取り扱いは伝統的。ジャズとプログレッシヴ・ロック、エレクトロニカ、現代音楽を効果的に「融合」した音世界。ボーダーレスな現代のエレクトリック・コンテンポラリー・ジャズ。コーゴー・ペンギンの発展途上的「深化」を捉えた好盤である。
 
 

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2025年11月 3日 (月曜日)

”ヴァンガードのロリンズ” の再発

未だに、ハードバップ時代のリイシューがあるのには驚く。もう、品切れだと思うんだが、レコード会社というのは商魂たくましい。手を変え、品を変え、リイシューし、ジャズ者ベテランを中心に「搾取」を繰り返している(笑)。しかし、リイシューにも、確かに、これは価値があるな、と思われる、素敵なリイシューも存在する。

Sonny Rollins『A Night at The Village Vanguard (The Complete Masters)』(写真左)。1957年11月3日の録音。ブルーノートの1581番。ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts), AFTERNOON SET: Donald Bailey (b) Pete LaRoca (ds), EVENING SET: Wilbur Ware (b) Elvin Jones (ds)。エンジニア、ケヴィン・グレイによる最新リマスターを採用した、音質向上のコンプリート盤のリイシュー。

新たに発見された未使用のオリジナル7.5ipsマスターテープからケヴィン・グレイがリマスタリング。これが最大の「ウリ」。確かに音が良い。ロリンズのテナー・サックスは、骨太でブラスの低音が心地良く響いて、音の太さが耳に心地良い。ヴィレッジ・ヴァンガードの客席のど真ん中に座って、聴いているんじゃないか、と錯覚する位の生々しいテナー・サックスの音。未使用のオリジナル・マスターって、こんなに威力があるのだなあ、と感心した。
 

Sonny-rollinsa-night-at-the-village-vang

 
何故、未使用のオリジナル7.5ipsマスターテープが存在したのか。録音技師のルディ・ヴァン・ゲルダーは、自らのスタジオではアンペックス社製の15ipsのテープレコーダーを使用していた。が、これは重い。「ヴァンガード」には、かわりに7.5ips(1秒間に7.5インチ)のデッキを使った。そして、その7.5ipsマスターテープの素材を、自らのスタジオの15ipsのテープにダビングし、マスタリングしている。このダビングの過程で音の劣化が起きた。そして、オリジナル7.5ipsマスターテープが、マスタリングに未使用のまま残った。それが真相らしい。

なので、この『A Night at The Village Vanguard (The Complete Masters)』は、ルディ・ヴァン・ゲルダーのマスタリングの成果では無い。名匠ケヴィン・グレイのマスタリングである。それでは、この『A Night at The Village Vanguard』は、オリジナルとは別物か、といえば、そうじゃ無い。録音されたロリンス・トリオのパフォーマンス音源は同じなのだ。しかも、ケヴィン・グレイのマスタリングは、できる限り、ルディ・ヴァン・ゲルダーのマスタリングのイメージに近づけているみたいなのだ。

よって、この素晴らしい音の『A Night at The Village Vanguard (The Complete Masters)』がリイシューされた。そのライヴ音源の素晴らしさは、「最高の 『A Night At The Village Vanguard」(2014年11月19日の記事)にまとめてあります。とにかく、このライヴ盤でのロリンズは素晴らしい。ロリンズのインプロヴァイザーとしての最高の姿を、このライヴ盤はしっかりと捉え、記録している。しかし、ロリンズがこんなにステージ上でおしゃべりとは思わなかった(笑)。
 
 

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2025年11月 1日 (土曜日)

ルーさんのモータウンへの挑戦

本作は、1968年にトランペッターのブルー・ミッチェル、オルガン奏者のチャールズ・アーランド、ギタリストのジミー・ポンダーと録音した作品だが、冒頭の「Say It Loud – I'm Black and I'm Proud」を聴けば、たちどころに判る。この盤は、ルーさんの「R&B志向、モータウン志向のソウル・ジャズ&ジャズ・ファンク」である。

Lou Donaldson『Say It Loud』(写真左)。1968年11月6日の録音。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as, vo), Blue Mitchell (tp), Charles Earland (org), Jimmy Ponder (g), Leo Morris (ds)。JB(James Brown)に共感して、カヴァSay It Loud (I'm Black and I'm Proud)ーしてタイトルに冠したと思われ、R&B志向、モータウン志向を協力に押し出した、ルーさんのソウル・ジャズ。

リズム&ビートが「とーん・と−ん・とんとんとんとん」といった、モータウン独特のリズム&ビートに乗って、ルーさん流のソウル・ジャズが展開される。結構、ネットでは酷評されているんだが、爆発的なグルーヴが無い、作られたファンク・ミュージックとか散々に揶揄されているんだが、これはこれで正解なんだけど。

この盤でも、ルーさんは、モータウン志向に走ってはいるけれど、演奏の根っこは「モダン・ジャズ」。モータウンにどっぷり填まれば、体の良いジャズ・ファンクのリズム&ビートを拝借した「イージーリスニング音楽」になってしまう、ことを危惧した結果だと思っている。そう、この盤の根底に流れているのは、ソウル・ジャズであり、ジャズ・ファンク、あくまで「ジャズ」なのだ。

だから、モータウン風の曲のカヴァー演奏になると、腰が動くほどのファンクネスは無いし、グルーヴ感も無い。この盤の根底に流れているのは「ジャズ」であり、爆発的なグルーヴが無い、作られたファンク・ミュージックと言われても仕方が無い内容。
 

Lou-donaldsonsay-it-loud

 
でも、ジャズとして、ハードバップとして捉えると、モータウンって、こうなるのか、というプロトタイプ的内容。演奏内容、演奏レベルに問題があるのでは無い。モータウンをジャズでカヴァるって、いう行為が無茶だということ、無理がある行為だということを、このアルバムは教えてくれる。

冒頭の「Say It Loud (I'm Black and I'm Proud)」のカヴァー演奏が、モータウンのジャズ化の限界だろう。これ以上に、グルーヴを爆発させ、ファンクネスを濃くしたら、モータウンの「イージーリスニング音楽」になってしまう。

ルーさんはジャズマン。このカヴァー演奏でも、しっかり、ジャズに軸足を置いたまま、モータウンのジャズ化にチャレンジしたのではないか、と睨んでいる。

とにかく、有名スタンダード曲、ハードバップとモード・ジャズにこそ、ピッタリと合致した「Summertime」や「Caravan」を、モータウン志向のソウル・ジャズで解釈するのは、あまりに無謀であった。

これは、明らかにプロデュースの誤り。もしかしたら、ルーさんがやりたい、ときかなかったかもしれないが、これがフランシス・ウルフの限界だったのだろう。

この盤は、ルーさんがいかに「純ジャズ」畑のジャズマンだったかを再認識させてくれる。どんなアレンジの演奏にだって、ルーさんは、ジャズに軸足を残したまま、いろいろなアレンジにチャレンジした。ルーさんの純ジャズ志向のジャズマンとしての矜持を感じさせてくれる盤である。
 
 

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2025年10月31日 (金曜日)

BNのイージーリスニング盤です

硬派な老舗ジャズ・レーベルのブルーノート。4200番台も後半になると、大衆受けする「売れる」盤だけを狙った、イージーリスニング志向のジャズ盤を制作する様になる。とにかく「聴き心地」優先、ジャズのアーティスティックな面を封印し、ポップ度を高める為に、ジャジーなリズム&ビートを活用し、ストリングスをオーバーダビングする。ほとんど、イージーリスニングなアルバムも制作していた。

Stanley Turrentine『Always Something There』(写真左)。1968年10月の録音。ブルーノートの4298番。ちなみにパーソネルは以下の通り。フレンチ・ホルン入り小ビッグバンド編成。ここに、ストリングスをオーバーダビングしている。ただし、波ー祖ネルを見渡すと、ジェローム・リチャードソン、サド&ハンク・ジョーンズ、ケニー・バレル、ハービー・ハンコック、メル・ルイス、ミッキー・ローカーなど、当時のメインストリーム系の一流ジャズマンが多く参加している。

Stanley Turrentine (ts), Burt Collins (flh), Jimmy Cleveland (tb), Jerry Dodgion (as, fl, cl), Jerome Richardson (ts, fl cl), Thad Jones (tp, arr), Kenny Burrell (g), Barry Galbraith (g, tracks 2, 10), Hank Jones (p, tracks 2, 3, 5-8, 10), Herbie Hancock (p, tracks 1, 4, 9), Bob Cranshaw (b), Mel Lewis (ds, tracks 1, 2, 4, 9 & 10), Mickey Roker (ds, tracks 3, 5-8), Dick Berg, Jim Buffington, Brooks Tillotson (French horn)。
 

Stanley-turrentinealways-something-there

 
しかし、冒頭の「(There's) Always Something There to Remind Me」から、あ〜遂に、ブルーノート・レーベルも、ここまで俗っぽくなってしまったか、と苦笑いする。軽快なブラスのユニゾン&ハーモニー、小洒落たポップなビッグバンド・サウンド、途中、ストリングスがオーバーダビングされて、もう、これは、ジャズなリズム&ビートをベースにした「イージーリスニング音楽」。

演奏自体は、当時のメインストリーム系の一流ジャズマンが多く参加しているんで、カッチリとまとまっているし、楽器の響きも良い。でも、いかんせんアレンジがポップで俗っぽい。アレンジは誰か、と確認したら、サド・ジョーンズ。意外。サドもこんな俗っぽいポップでライトなビッグバンド・アレンジをするんだ、と変に感心する。

レノン&マッカートニーの「Hey Jude」「The Fool on the Hill」、ドアーズの「Light My Fire」など、ロックのヒット曲のカヴァーが入っていたり、フィフス・ディメンションの「Stoned Soul Picnic」が入っていたり、とにかく、一般大衆の訴求する、大衆受け狙いのイージーリスニング盤である。ただし、オーバーダビングされたストリングス以外のジャズマンの演奏はしっかりしているので、聴き心地は良い。ながら聴きのジャズ盤としては良い内容かもしれない。
 
 

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2025年10月30日 (木曜日)

管入りスミスの置き土産音源

ブルーノートのお抱えオルガニストだったジミー・スミス。1962年、さらなる好条件を提示した大手レーベル・ヴァーヴに移籍する。自分が育てたジャズマンが条件の良い大手レーベルに移籍していくことを、ライオンは一切止めることは無く、喜んで送り出したくらいだそう。スミスはその恩義を忘れず、かなりの数の優れた内容の録音を残していった。この盤は、その「置き土産」音源のひとつ。

Jimmy Smith『Plain Talk』(写真左)。1960年3月22日の録音。ブルーノートの4296番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Blue Mitchell (tp), Jackie McLean (as), Ike Quebec (ts), Quentin Warren (g). Donald Bailey (ds)。ブルーノートの4269番『Open House』と同一日録音で、リリースは1968年4月。ジミー・スミスの「ブルーノートへの置き土産」音源のひとつ。

この盤は、『Open House』と同じ編成で、スミスのギター・トリオ(スミスのオルガンに、ウォーレンのギター、ベイリーのドラム)に、ミッチェルのトランペット、マクリーンのアルト・サックス、ケベックのテナー・サックスの管楽器が入ったセクステット編成。演奏の内容は、『Open House』と同様で、スミスのオルガンは、ダイナミズムを封印した、流麗でシンプルで優しい弾き回し。
 

Jimmy-smithplain-talk

 
フロントを引き立て、鼓舞しつつ、自らも素晴らしいバッキングを聴かせる、裏方に徹したジミー・スミスのオルガンは、実に印象的。優れたソリストは、優れた伴奏者でもある。モダン・ジャズでの定説だが、この盤でのジミー・スミスのオルガンは、その例に漏れない優れたバッキング。

フロント管を引き立てつつ、自らのアピールも忘れないのが、オルガンの神様、ジミー・スミスの真骨頂。しかし、この盤では、ダイナミックなグイグイ前に出る、アグレッシヴな弾き回しを封印し、流麗でシンプルで優しい弾き回し。それに呼応するように、ブルー・ミッチェルのトランペット、ジャッキー・マクリーンのアルト・サックス、アイク・ケベックのテナー・サックスが順番にソロを取るのだが、これがまた流麗でシンプルで優しいソロ・パフォーマンスを聴かせてくれるのだ。

このジミー・スミスの「ブルーノートへの置き土産」音源は、ヴァーヴに移籍したずっと後の6年後、ブルーノートがリヴァティ社に買収され、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンが引退した後にリリースされているが、この盤のプロデュースは、アルフレッド・ライオン。往年のブルーノートらしい音、ブルーノートらしい録音で、安心して聴くことが出来る。内容的にも申し分無い。好盤です。
 
 

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2025年10月28日 (火曜日)

ソウルフルなジャズ・オルガン

ライトでポップで小洒落たソウル・ジャズである。こってこてジャジーな雰囲気は無く、どちらかと言えば、イージーリスニング志向、クロスオーバー・ジャズ志向の聴き易く、判り易いソウル・ジャズである。こってこてファンキーに、バンバン前へ出るオルガンでは無く、アンサンブルの中で、ソウル・ジャズ志向のオルガンをさり気なく響かせる様な、グループ・サウンズ重視のオルガンである。

Reuben Wilson『On Broadway』(写真左)。1968年10月4日の録音。ブルーノートの4295番。ちなみにパーソネルは、Reuben Wilson (org), Trevor Lawrence (ts), Malcolm Riddick (g), Tommy Derrick (ds)。1960年代のブルーノートが送り出した最後のオルガン奏者、ファンキー&ソウル・ジャズ志向のオルガン奏者、ルーベン・ウィルソンのデビュー盤。

ダンサブルかつファンキー&ソウルフルなプレイが身上のオルガンである。ジャズ色濃厚のテンション高く切れ味の良い純ジャズ志向なオルガンとは正反対の、ライトでポップで適度に緩く明るいオルガン。深刻感は全く無い。あっけらかんとした、小洒落たフレーズが心地良く、聴き流して心地良い、この時代特有の、一般聴衆にもしっかり訴求する判り易いオルガンである。
 

Reuben-wilsonon-broadway

 
パーソネルを見渡しても、それまでのハードバップからジャズの多様化まで、いわゆる1950年代から1960年代前半までのハードバップ時代に活躍したメンバーの名前は無い。メンバーそれぞれ、ソウル・ジャズ志向、それもR&Bの音の色づけに長けたメンバーで構成されているみたいで、例えば、サックスのトレヴァー・ローレンスはマーヴィン・ゲイとの共演などで、ソウル・ミュージックの世界ではお馴染みのサックス奏者である。

タイトル曲「On Broadway」は、ドゥーワップ・グループ、ドリフターズの大ヒット曲で、後にジョージ・ベンソンがリバイバル・ヒットさせたソウルフルな名曲。この名曲を、ライトにポップに、聴き易く判り易いアレンジで、ソウルフルに演奏していく。さりげなくソウルフルに響く、ウィルソンの軽快なオルガンが良い感じで鳴っている。

ルーベン・ウィルソンは、ソウル・ジャズ志向が色濃いオルガン奏者。米国オクラホマ州で1935年4月に生まれる・2023年5月、ニューヨークで肺癌のため88歳で逝去している。リーダー作は生涯で20枚以上、活動時期は、1968年から2011年まで、43年と長かった。しかし、我が国ではマイナーな存在に甘んじている。しかし、この初リーダー作は、小粋で良く出来たソウルフルなオルガン・ジャズ盤。良いアルバムだと思います。
 
 

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2025年10月25日 (土曜日)

BNのスピリチュアル盤の秀作

4200番台も終盤にきて、いよいよ、売上最優先、大衆に訴求するイージーリスニング・ジャズに手を染め出したブルーノート。

大手のリバティーに買収され、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンも引退し、いよいよ、ジャズの歴史の、ジャズのトレンドの番人の様な存在だったブルーノートも終わりかな、と思っていたら、こんな硬派な純ジャズ志向のアルバムを出したりするから、隅に置けない。

『Eddie Gale's Ghetto Music』(写真左)。ブルーノートの4294番。1968年9月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Gale (tp, kalimba, steel drum, bird whistle), Russell Lyle (ts, fl), Jo Ann Gale Stevens (g, vo), James "Tokio" Reid, Judah Samuel (b), Richard Hackett, Thomas Holman (ds)。ここに、11声の合唱団が加わる。

米国のトランペット奏者、エディ・ゲイルのデビュー作になる。エディ・ゲイルは、セシル・テイラーとの共演、サン・ラ・オーケストラでのフリージャズでの活動で知られたトランペット奏者。ゲイルの基本的な演奏スタイルは、フリー&スピリチュアル。

このアルバムに詰まっているジャズは、1960年代の新しいジャズとゴスペル、ソウル、ブルースをシームレスに融合、フリー・ジャズ、R&B、ワールド・ミュージック的要素が混在する驚異のスピリチュアル・ジャズ。しかし、非常に聴きやすい作品で、旋律、メロディー、ハーモニーはしっかりと保たれている。
 

Eddie-gales-ghetto-music

 
フロント管の相方にラッセル・ライルのサックス&フルートを従えた2管フロント。加えて、ダブル・ベースにダブル・ドラム、そして11声のバックコーラスを配した、迫力のスピリチュアル・ジャズである。

無勝手流の、自由気ままに吹きまくるフリーな吹奏は無く、洗練されたポリリズムと分厚いコーラスをバックに、現代音楽的なフリーな響きとスピリチュアルな響きが全体を支配する。

「Fulton Street」では、アフリカの民族音楽とラテンジャズの美しい旋律が見え隠れ、「A Walk with Thee」は行進曲のテンポで書かれたスピリチュアル・ジャズ。リズム&ビートは互いに対位法で叩きまくり、フロントラインは東洋的なハーモニー感覚を通して伸びやかなメロディーラインを奏でる。

最後の「The Coming of Gwilu」は、ジャマイカンなカリン場の音色、アーケストラ風の高揚するボーカル、ポリリズミックなリズム&ビートで、新しいスピリチュアル・ジャズの響きを表現している。

米国の都市部でアフリカン・アメリカンの貧困層が形成する「ゲットー(Ghetto)社会」をテーマとしている「政治的意図」を明確にしたアルバムだが、小難しいところは微塵も無い。

そんな「Ghetto Music」をコンセプトにブラック・パワーを表現している異色盤である。しかし、ブルーノートのカタログの中でも最も知られていないアルバムの一つでもある。ただし、内容は良い。1960年代後半のスピリチュアル・ジャズの秀作の一枚だろう。
 
 

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