早すぎた精神的ジャズ・ファンク
ブルーノートの4300番台。ここまでくると、胸を張って「ジャズ」とは言いにくい。しかし、バックの演奏は上質のジャズ・ファンク。本作は、1970年代初頭、ホレス・シルヴァーが展開した三部作プロジェクト『The United States of Mind』の「Phase 2(第2章)」にあたる意欲作。ファンキー・ジャズの巨匠がソウルやファンク、ボーカル・ジャズへと大胆に接近した、レア・グルーヴ視点から、極めて評価の高い好盤として評価されている。
Horace Silver Quintet/Sextet With Vocals『Total Response』(写真左)。1970年11月15日 (#1, 2, 6, 9), 1971年1月29日 (#3–5, 7, 8) の録音。ブルーノートの4368番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (el-p), Cecil Bridgewater (tp, flh), Harold Vick (ts), Richie Resnicoff (g), Bob Cranshaw (el-b), Mickey Roker (ds), Salome Bey (vo, 1, 2, 5–7, 9), Andy Bey (vo, 3, 4, 8)。
それまでのハード・バップ〜ファンキー・ジャズ路線から一転、シルヴァーがエレクトリック・ピアノ(フェンダー・ローズ)を本格的に導入、アンディ・ベイとサロメ・ベイという実力派シンガーを起用、メッセージ性の強い歌詞を歌わせて、瞑想や精神の統一といった精神世界、そして当時の米国社会へのメッセージが融合した、コンセプチュアルで政治的な時期の作品である。
冒頭「Acid, Pot or Pills」は、ドラッグ依存への警告。2曲目「What Kind of Animal Am I?」は、人間の本質への問いかけ。3曲目「Won't You Open Up Your Senses」は、五感の解放。4曲目「I've Had a Little Talk」は、内省と自己との対話。5曲目「Soul Searchin'」は、自己探求。
6曲目「Big Business」は、巨大企業・資本主義への批判。7曲目「I'm Aware of the Animal Within Me」は、人間の野蛮性の自覚。8曲目「Old Mother Nature Counts Her Children」は、大自然への回帰。9曲目の「Total Response」は、精神と肉体の完全なる調和。
シルヴァーのフェンダー・ローズは、浮遊感とサイケデリックな響き。しかし、伝統のファンキー・リフは健在。コードのボイシングには独特のジャジーな緊張感があり、単なるポップスに流されないジャズマンとしての矜持が演奏に表れているところが、やはり、この盤は「コンテンポラリーなジャズ」である。楽器として機能するベイ兄妹の圧倒的な歌唱も、単に「メロディを歌う」だけでなく、「アンサンブルの一部」として完璧に機能している。
クランショウのエレベと、ローカーのドラムのファンク・グルーヴがこれまた良い。レスニコフのカッティングと彩りを与えるギターの系かな推進力。ブリッジウォーターのトランペットと、ヴィックのテナーの2管フロントは、1960年代の爆発するようなハード・バップのソロ回しとは異なる、「楽曲のメッセージ(歌詞)を支えるための知的なアンサンブル」に徹して、これもまた見事。
アルバムのサブタイトルにある『The United States of Mind(人心連合)』とは、「人間の精神(Mind)の中にある様々な要素が、アメリカ合衆国(United States)のように一つに団結・調和しなければならない」というシルバー独自の哲学。1970年代初頭の混沌とした米国社会(ベトナム戦争、ドラッグの蔓延、物質主義の台頭)に対し、シルバーは「精神性の回復」「心と身体の健康」「平和」を音楽で訴えようとした。その成果の一つがこのアルバムである。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて
★ まだまだロックキッズ 【New】 2024.01.07 更新
・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
記事をアップ。
★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新
・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
の記事をアップ。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から15年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。












最近のコメント