第2期 Jeff Beckグループ
日本のロック評論の中で「三大ロック・ギタリスト」というものがある。エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジの3人を指す。この「三大ロック・ギタリスト」という表現は海外では無いらしく、昔、米国でも英国でもロック者の連中に訊いてみたが、皆、一様に「そんなの知らない」とのこと(笑)。
さて、この三大ロック・ギタリストであるが、アルバム・セールスという面で比較すると、ジェフ・ベックが圧倒的に劣っている。一般的な人気という点でも、ジェフ・ベックが一番人気が無いのではないか。僕の高校時代、ジェフ・ベックが好きで、ジェフ・ベックのアルバムを多数所有しているロック者はいなかった。
しかし、である。ギター・テクニックという面で比較すると、ジェフ・ベックが抜きんでている。ギター・ソロの切れ味、フレーズの個性、アタッチメントの使いこなし、など、総合力でジェフ・ベックに軍配が上がる。つまり、ジェフ・ベックは「マニア好み」のギタリストという評価に落ち着く。
それでは、何故、アルバム・セールス、一般的な人気という面で、他の二人に劣るのか。この「第2期ジェフ・ベック・グループ」の2枚のアルバムを聴けば、その理由が良く判る。
この「ジェフ・ベック・グループ」とは、ジェフがヤードバーズ脱退後、結成したグループ。途中でメンバーが大きく入れ替わるので、第1期と第2期と分けて区別している。第1期の結成は1967年前半。今回語る「第2期ジェフ・ベック・グループ」の結成は1970年後半になる。メンバーは以下の通り。Jeff Beck (g), Bobby Tench (g,vo), Max Middleton (key), Clive Chaman (b), Cozy Powell (ds)。
まず『Rough and Ready』(写真左)を1971年にリリースする。続いて、翌年に『Jeff Beck Group』(写真右)をリリースして、この「第2期ジェフ・ベック・グループ」は解散する。実は、この2枚のオリジナル・アルバムの内容が実にユニークなのだ。
この「第2期ジェフ・ベック・グループ」は、ジャズやモータウンといったブラック・ミュージック、いわゆる「R&B」からの影響を大きく受けており、それまでのブルース路線とは全く異なる。しかしながら、ジェフ・ベックのギターはブルース路線を踏襲するもので、この「第2期ジェフ・ベック・グループ」では違和感溢れる、強烈なテクニックのギターソロを弾きまくる。
1970年代前半は英国ロックの繁栄期であるが、エレギのトレンドは全てが「ブルース路線」。そんな中での「R&B」的な雰囲気のロックな演奏である。しかも、ファンクネスが不足していながら、演奏の底に1960年代後半のサイケデリック・ロックな雰囲気も漂わせており、とにかく、その演奏のユニーク度合いは高い。逆に言うと「違和感満載」である(笑)。
しかも「R&B」的な雰囲気のロックな演奏でありながら、ボーカルが弱く、ボーカルにファンクネスが全く足らない。やはり、ロックなギター・バンドには優秀なボーカリストが必須である。ボーカリストの弱さは致命的である。
逆に、そんな「違和感満載」な雰囲気の中、主役のジェフ・ベックのエレギは思いっきり尖っている。切れ味鋭く、先行のように閃くアドリブ・フレーズは唯一無二なもの。エレギの音の響きは太くて硬質。とにかく「第2期ジェフ・ベック・グループ」の演奏の中で、ジェフのエレギだけが目立ちに目立つ。
しかし、R&B的なバックの演奏の中で、ブルース路線を引き摺ったエレギでR&B的なフレーズをひねり出すのだ。音の違和感、バラバラ感は、ジェフが弾けば弾くほど強くなる。ジェフのギターの凄さが発揮されれば発揮されるほど、このアルバムでの演奏の雰囲気は違和感が充満していく。
なるほどなあ。ジェフが本気を出して、凄さをみせればみせるほど、ギター・ソロの違和感が増し、キャッチャーなフレーズとはかけ離れていくのだ。音楽としての「聴き易さ」とは逆行していくのだ。逆に、ジェフのギタリストとしての凄さの度合いは増す。ギタリストとして凄みとアルバム・セールスが正比例しない。これが「ジェフ・ベック」なのだ。
震災から5年3ヶ月。決して忘れない。まだ5年3ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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