2026年3月11日 (水曜日)

ジョンスコ&ホランドのデュオ

最近のジャズもちゃんと聴いている。ジャズの「今」もしっかり把握しておかないと、過去の名盤の現代に与える影響というのが判り難くなる、と感じている。

コロナ禍の折、どっと新盤のリリースが減少して、もう駄目か、なんて悲観したもんだが、コロナ禍が明けて、順調に新盤のリリース数もコロナ禍前に戻って、新人、旧人、それぞれ、内容のある新盤をリリースしてくれているのは心強い限りだ。

John Scofield & Dave Holland『Memories of Home』(写真左)。2024年8月の録音。ECM盤。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Dave Holland (b)。現代におけるジャズの巨匠的位置づけの二人、ギタリストのジョン・スコフィールドとベーシストのデイヴ・ホランドのデュオ演奏である。

まず、マイルス・バンド経験者の、革新的なプレイを信条としてきた二人が、しっぽり耽美的静的なデュオ演奏を、ECMレコードの下で録音しリリースする。しかも、ECMレコードお得意のニュー・ジャズな雰囲気は皆無。至極真っ当な、純ジャズ志向のデュオ演奏である。ECMレコードも懐が深くなったなあ、と感心する。
 

John-scofield-dave-hollandmemories-of-ho

 
さすが、現代におけるジャズの巨匠的位置づけの二人。デュオ演奏の「肝」である「ダイアローグ」「アドリブ」「余白と間」をバッチリ抑えた、味わい深く、耽美的でクール、静謐でセンシティヴな。極上のデュオ演奏が粛々と展開される。楽器の音も凄く良い音出している。ジョンスコのギター、ホランドのベース。極上である。

ジョンスコは、いつものジョンスコらしい音で、ジョンスコらしいフレーズを繰り出し、素晴らしい。ホランドもフレーズを自由に弾き回している様で、基本的に演奏のベースラインは、しっかり押さえているという神業を披露していて見事。長年の付き合いの中で、お互いがお互いの音を熟知しているからこそ出来る至芸。

二人のデュオは意外な感じだが、コロナ禍の頃、2020年に、もともとツアーを予定したが中止、2021年にやっとツアーを敢行、2024年には2度目のツアーを控えており、レコーディングのアイデアが生まれたそうだ。満を持してのデュオ演奏だったみたい。

2人のデュオは、ウォームで切れ味良く革新的で創造的。現時点ですでに「未来のデュオ名盤」のパフォーマンスに、ついつい繰り返し耳を傾ける。
 
 

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2026年2月28日 (土曜日)

ロンの”Yellow & Green”に思う

順調にCTIレーベルのカタログの記事化コンプリートに向けた、再聴き&初聴きを進めている。聴いていると感じるんだが、CTIレーベルって、クロスオーバー&フュージョンの老舗レーベル、フュージョンの権化レーベルとして、硬派なジャズ者の方々からは敬遠されているが、どうして、今の耳で聴くと、やっぱり「1970年代のジャズ」をしっかり記録した、優れたレーベルだと思うのだ。

Ron Carter『Yellow & Green』(写真左)。1976年5月の録音。CTIの6064番。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b, piccolo-b, cowbell, tambourine), Kenny Barron (p :track 1, 5 & 6), Don Grolnick (p, el-p :track 2 & 4), Hugh McCracken (g, harmonica :tracks 1, 2, 4 & 5), Billy Cobham (ds :tracks 1, 2, 4 & 5), Ben Riley (ds :track 6), Dom Um Romão (per :tracks 2 & 5)。ベースのレジェンド、ロン・カーターのリーダー作。

内容については、簡単に言うと、イージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョン盤。内容的に「ソフト&メロウ」というフュージョン・ジャズの雰囲気要素が入ってきている。ケニー・バロンが「アコースティック」鍵盤楽器担当、ドン・グロルニックは「エレクトリック」鍵盤楽器担当、どちらの演奏も、上質な1970年代半ばの、クロスオーバーからフュージョンへの移行期のしっかり記録されている。
 

Ron-carteryellow-green

 
特に、若きケニー・バロンがアコピを担当する楽曲は、1970年代の純ジャズ志向のコンテンポラリー・ジャズとして楽しむ事が出来る。ロンのベースとコブハムのドラムが醸し出す8ビートのジャジーなリズム&ビートに乗ったバロンのアコピは、意外と格別なジャジーな響きを宿している。ソフト&メロウなフュージョンの雰囲気を醸し出しているのは、グロルニックがエレピを担当している楽曲。グロルニックのエレピとマクラッケンのギターがソフト&メロウな響きを醸し出している。

このアコピとエレピのイージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョンな演奏の中で、ロンのアルコ弾き、旋律弾きがその雰囲気をちょっと壊している。ロンのベースの旋律弾きに耳がいくのは良いのだが、いかんせん、ベースの旋律弾きは単調で、かつ、この頃のロンのベースは少しピッチを外しているので、その単調さがより目立つ。即興パートでのベース・ソロはまだ我慢出来るんだが、曲のテーマ部のベースでの旋律弾きはちょっと疑問。

ジャズ者の間で、このロンの旋律弾きを問題視する向きが強くあって、この盤は評判は芳しく無い。アルバム全体の雰囲気は、ライトなイージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョンで、意外と良好なのだが、ロンの旋律弾きがはいってくると、明らかに聞く側のテンションが落ちる。アルバム全体の雰囲気は、ライトなイージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョンとして良好、ロンのベースの旋律弾きをどう聴くか、でこの盤の評価はぶれるだろう。良い雰囲気の盤なのになあ、惜しい。
 
 

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2026年2月22日 (日曜日)

ECMサウンドの典型のアルバム

ECM1100番台は、ドイツのジャズ・レーベル「ECM Records」が1970年代後半から1980年代にかけてリリースした、カタログ番号が1100〜1199のLPレコードシリーズ。透明感のあるサウンド、欧州的なリリカルな表現、洗練されたニュー・ジャズが多く含まれる時期の作品群である。

Eberhard Weber & Colours『Silent Feet』(写真左)。1977年11月の西ドイツの「Tonstudio」での録音。ECMの1107番。ちなみにパーソネルは、Charlie Mariano (ss, fl), Rainer Brüninghaus (p, syn), Eberhard Weber (b), John Marshall (ds)。ドイツのベース奏者エバーハルト・ウェーバー&カラーズによるアルバム。

1970年代後半から1980年代にかけて、ベーシストのエバーハルト・ウェーバーのサウンドは、ECMレーベル・サウンドの典型だったと思う。この盤では、ロングトーンを強調し、静寂と音の対比を巧みに操る、即興演奏中心、耽美的で印象的な、ECMレーベル独特のニュー・ジャズ・サウンドである。
 

Eberhard-weber-colourssilent-feet

 
音の傾向は「スピリチュアル」。演奏の展開は基本はモード。ファンクネスは皆無。どこかクラシックの要素が見え隠れする。典型的な欧州ジャズのサウンド。澄みきった空気感と繊細な音色。引っかかりの無い、滑らかで流麗なフレーズの連続。ロングトーンを多用しているので、キャッチーなサウンド要素が不足しているが故、音世界自体にかすかな浮遊感とネーチャー感がある。

アグレッシヴなドラム、規律溢れるベース。このリズム隊が演奏全体の雰囲気をコントロールしていく。ウェットなソプラノ・サックスの浮遊感が堪らない、冒頭1曲目の「Seriously Deep」、ブリューニングハウスの透明感豊かなピアノが芳しい2曲目「Silent Feet」。幽玄な空気から一転爽やかスピリチュアルに展開する3曲目「Eyes That Can See In The Dark」など長尺3曲の収録。

思索的で骨太なベースが、この盤の演奏の全てをしっかり支えている。リーダー・ベーシスト、エバーハルト・ウェーバーの面目躍如。そして、リズム隊のパートナー、ドラムのジョン・マーシャルが良い感じ。このリズム隊あっての、ウェーバー風のECMニュー・ジャズ。ロングトーンのフレーズを多用しているので、少し間延びがして賛否両論のアルバムではある。しかし、ECMレーベル独特のニュー・ジャズ・サウンドであることは間違い無い。
 
 

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2026年2月15日 (日曜日)

ロンのフュージョン初期盤です

このところ、ロン・カーターの1970年代のリーダー作を聴き直している。ロンは、1970年代に入って、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの仕掛け人の一人、プロデューサー「クリード・テイラー」と組んで、イージーリスニング志向のクロスオーバー・ジャズから、フュージョン・ジャズをリリースしている。これがまあ「賛否両論」で、評価が割れたまま、今日まできている。

Ron Carter『Anything Goes』(写真左)。1975年6〜7月の録音。Kudoレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは以下の通り。フュージョン・ジャズの担い手、強者ミューシャン大集合といった様相のメンバー構成。ファンキー・ジャズ志向フュージョン盤である。プロデュースは「クリード・テイラー」。アレンジャーは「デヴィット・マシューズ」。

Ron Carter (b, piccolo-b), Randy Brecker (tp), Alan Rubin (tp, flh), Barry Rogers (tb), Michael Brecker (ts), Phil Woods, David Sanborn (as), Hubert Laws (fl), Don Grolnick (el-p), Richard Tee (org), Eric Gale (el-g), Steve Gadd (ds, track 1), Jimmy Madison (ds,tracks 2–6), Ralph MacDonald (congas, perc), George Devens, Arthur Jenkins (perc), Patti Austin, Marilyn Jackson, Maeretha Stewart (vo, tracks 1,6), Dave Matthews (arr)。
 

Ron-carteranything-goes
 

ジャズ・ファンクとするまで、ファンクネスとビートの粘りは濃厚では無い。ライトで小粋な「ファンキー・ジャズ」志向のフュージョンである。旋律&アドリブの雰囲気は「ソフト&メロウ」、リズム&ビートは、ライトなR&B志向。特に、ドラムには、スティーヴ・ガッドとジミー・マディソンが、ベースはロン・カーター本人というリズム隊で、明らかに、フュージョン・ジャズ仕様のグルーヴが醸し出されている。

ロンはアコベ、エレベの両方を駆使しながら、旋律弾きソロに、バッキングなベースに大活躍。相変わらず背韻律弾きソロではピッチが少し外れてはいるが、短めのソロでまあまあ我慢しつつ、聴き通すことができる。これが、ピッチがバッチリ合っていたら、この盤、もっと評価は上がっていただろうに。アルバム全体の内容は、上質のダンサフルでソウルフルな、ファンキー・ジャズ志向フュージョン。聴き易さがあって良好。

フュージョン・ジャズ初期の好盤。LP時代の帯紙には「ベースの王者ロン・カーターが、話題のクロスオーバーに挑戦!!」とあり、確かにそんな内容のアルバムではある。ロンはエレベも弾き、ワウワウなどのエフェクトを使用して、時代に乗り遅れまいとしているところが健気というか、生真面目というか。この辺りが、1970年代のロンの評価が「賛否両論」に分かれるところなんだろう。流行を追うもの、超然と我がスタイルを行くもの、この時代のジャズマンは二手に分かれていた。
 
 

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2026年2月14日 (土曜日)

”ベースで旋律を弾く” 難しさ

ベースで旋律(メロディ)を弾くには、高音域(主に7フレット以降)を活用し、ハンマリング、スライド、チョーキングといった装飾技術を用いて、滑らかに「歌う」ように表現するのがコツとのことだが、ジャズにおいて、この「ベースで旋律を弾く」に長けたベーシストは数少ない。

Ron Carter『A Song for You』(写真左)。1978年6月の録音。マイルストーン・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b, piccolo-b, arr), Leon Pendarvis (p, track 1), Kenny Barron (p, tracks 2–6), Jay Berliner (g), Jack DeJohnette (ds), Ralph MacDonald (perc)。

ジャズ・ベーシストのレジェンド、ロン・カーターのリーダー作。この盤では、ロンの「ベースで旋律を弾く」テクニックが前面に押し出された、ロンのベースに焦点を合わせたリーダー作。先に言っておくが、この盤の評価、賛否両論だと思う。僕は、ベースで旋律を弾くのは「アリ」だと思っている。特に、ベースの革命児、ジャコ・パストリアスが出現してからは、別に違和感が無い。

しかし、この盤は、ジャコの出現前、ハードバップ時代からのレジェンド・ベーシストの「ベースで旋律を弾く」チャレンジである。というか、チャレンジ手前で止まっているように思う。それを踏まえてのアルバムの内容のご紹介になる。まず、米国のジャズ・ベーシストは、おしなべて「ベースで旋律を弾く」のは苦手。ロンも例外では無い。
 

Ron-cartera-song-for-you  

 
欧州系のベーシストは、クラシックのベース経験が少なからずあるんで、ピッチが合う、テンポが的確、と、ベースという「楽器」を弾く基本が出来ている。基本が出来ている上で「ベースで旋律を弾く」ので鑑賞に耐える。しかし、米国系のベーシストは、まず、ピッチが合っていないことが多く、テンポも遅れがちで雑になる。これが一番の問題点になる。

で、このロンのリーダー作であるが、当時のロンのベースの弱点である「ピッチが合っていない」が、まだ完全に改善されていない。少し、フラットしていて、このピッチが少し外れているのも「味」と、まとめているみたいだが、ちょっと聴いていて気持ちが悪い。テンポは辛うじてキープされているので、テクニック的には、ちょっと「惜しい」ロンの弾きっぷりである。

ただ、演奏自体のアレンジは良好。ベースが「旋律を弾く」ということを大前提としたアレンジは良い。特に、ベースで旋律を弾く、そのもののアレンジはとても良好で、さすがロン・カーターといったところ。タイトル曲のレオン・ラッセルの名曲、カーペンターズのカヴァーで有名な「A Song for You」などは実に良い感じでまとまっている。

ちょっと乱暴な希望なんだが、このロンのアレンジで、この盤のベースを、欧州系のベーシストでやって欲しいな、と。例えば、ペデルセンとか、ムラーツとか、でもどちらも逝去してしまっているので、彼らの後を継ぐ現役ベーシストでやって欲しいなあ、と。「ベースで旋律を弾く」の評価を大きく前進させる成果になる、と思っているんですが・・・。
 
 

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2026年2月13日 (金曜日)

ロンの技術を愛でるトリオ盤

Ron Carter『Third Plane』(写真)。1977年7月13日、米国サンフランシスコでの録音。マイルストーン・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b), Herbie Hancock (p), Tony Williams (ds)。1970年代後半、アコースティック・純ジャズへの回帰として人気を博したV.S.O.Pクインテットのリズム・セクション(ピアノ・トリオ)の好盤である。

この盤を見ると、聴く前は、大多数のジャズ者の方が「ハービー・ハンコック」のピアノに着目するのだが、もともと、ハービーはトリオ演奏が、あまり得意では無い。冒頭のタイトル曲「Third Plane」のテーマ部から、アドリブ部の前半までは、とにかくぎこちない弾きっぷり。もともと、カリプソっぽいポップな曲はハービーは馴染まないみたいで、ちょっとユーモラスでキャッチーなテーマ部はぎこちない。

それでも、曲の途中から調子を掴んだのか、少し滑らかにアドリブを展開し始めて、2曲目以降は、安定のモーダルなピアノを弾き続けていく。音の重ね方、フレーズの展開のパターンなどは、ハービーの個性がしっかりと出ていて良好。しかし、フロントに立ってのソロはちょっと地味かなあ。良いテクニック、良いフレーズを展開しているんですが、音の跳ね方、響き方がちょっと内向的なところで損をしている。
 

Ron-carterthird-plane

 
一方、リーダーのロンは、この頃のロンの最大の問題点だった「ピッチ」がまあまあ合っていて、安心して聴き進めることができる。電気的なアタッチメントは付けているみたいで、フレーズの伸びの部分が「ブヨーン、ブヨーン」とちょっと気持ち悪いが、ピッチがそこそこ合っているので、鑑賞には耐える。この盤では「ピチカート技法」が冴えていて、ロンはアコベを弾かせたら、屈指のベーシストだということを再認識させてくれる。

このトリオ盤でのトニーのドラムは温和しい。いつもはバンバン叩きまくってフロントを鼓舞しまくるのだが、この盤では神妙にモーダルなリズム&ビートを刻んでいる。意外と抑制されたトニーのドラミングの方が、静かな凄みがあって、僕は気に入っている。温和しめではあるが、要所要所では、しっかりとリズム&ビートを締めて、演奏全体に有効な推進力を供給する。

いわゆる、マイルスの1960年代黄金のクインテットのリズム・セクション、リーダーでベースのロン・カーター、ピアノのハービー・ハンコック、ドラムのトニー・ウィリアムスでのピアノ・トリオ演奏である。リーダーがロンであるがゆえ、このトリオ盤は、まずは、ピアノ・トリオにおけるロンのアコースティック・ベース(アコベ)の技術とセンスを堪能する盤である。
 
 

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2026年1月14日 (水曜日)

フラナガンとミッチェルのデュオ

端正&典雅でブルージーでダンディズム溢れるバップ・ピアノが個性のフラナガンと、ウエストコースト・ジャズを代表する筋金入り硬派な職人ベーシストのミッチェルとのデュオ・セッションの記録。ピアノとベース、フロントとバックの役割分担がやり易いデュオの組みあわせで、この2人のデュオは、ナチュラルにアレンジに頼ること無く、フロント、バック、ほど良く分担した、絶妙のデュオ演奏が繰り広げられている。

Tommy Flanagan & Red Mitchel『You're Me』(写真左)。1980年2月24日の録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p), Red Mitchell (b)。燻し銀な筋金入りバップ・ピアニストのトミー・フラナガンと、西海岸の硬派な職人ベーシストのレッド・ミッチェルによる「デュオ」アルバムである。

デュオ演奏なので、2人ともが主役。まず、フラナガンは遠慮無く、端正なタッチ、気品あるダイナミズムとダンディズムを併せ持ったバップ・ピアノをガンガンに弾きまくる。基本、ミッド・テンポからバラードの演奏がメインで、ガンガン弾きまくるとは言っても、うるさくはない。ベースのミッチェルのベースラインをよく聴いた、絶妙なアドリブ・フレーズがニクい。
 

Tommy-flanagan-red-mitchelyoure-me

 
ミッチェルのベースは、胴鳴りは少しライトだが、ピッチが合っていて、小気味の良い弾く様なビートは、聴いていて爽快。さすが、ウエストコースト・ジャズでの第一人者ベーシストである。その小気味良い爽やかベースは、フラナガンのバップ・フレーズに心地良く絡んで、演奏全体のぶるーじーさ、ジャジーさ、を増幅する。テクニックもかなりのレベル。ピアノのデュオで、ピアノのフレーズに負けていない。

演奏に必要なリズム&ビートは、フラナガンのピアノとミッチェルのベースで、しっかりと分担対応している。フロントとしてのフレーズも、フラナガンはピアノなんで当然として、ミッチェルのベースがしっかりとフロントのフレーズも担当している。ピッチの合ったベースだからこそ、なせる技。ミッチェルのはじき出すフロントのフレーズが意外とクリエイティヴでエモーショナルで聴き応えがある。

ミッチェルのベースがしっかりとジャジーなリズム&ビートを積極的に供給しているので、フラナガンのピアノの個性と、ミッチェルのベースの個性との相乗効果、化学反応を堪能するには、ドラムは不要。このデュオ盤は、ピアノとベースのデュオとしては秀逸な出来。実は、僕は5年前まで、このデュオ盤を聴いたことが無かった。そして、聴いてビックリ。こんなに優れて、聴いていて楽しいデュオ盤があったとは。それ以来の愛聴デュオ盤の一枚になっている。
 
 
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2026年1月10日 (土曜日)

伴奏上手のケリーを聴き直す・1

ウィントン・ケリー(Wynton Kelly)は、リーダー作もさることながら、サイドマンで参加の盤もかなりの数がある。実は、ケリーは伴奏上手で有名で、彼のピアノの個性である「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」が、フロント管をサポートする上で、ボーカルをサポートする上で、効果的に響くのだろう。

Paul Chambers『Go』(写真左)。1959年2月2, 3日、シカゴでの録音。Vee-Jayレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Paul Chambers (b), Freddie Hubbard (tp), Cannonball Adderley (as), Wynton Kelly (p), Philly Joe Jones, Jimmy Cobb (ds)。当時のマイルス・バンドのリズム隊メンバーが集結した、素敵な内容のハードバップ盤。ベースのポール・チェンバースのリーダー作である。

この盤では、参加メンバー全員が好調。特に、アルト・サックスのマクリーンが絶好調というか、ほとんど「躁状態」で、マクリーン節をキュイキュイ吹きまくる。ハバードは、ハイテクニックで吹きまくるが、マクリーンの押されて、ちょっと温和しい。チェンバースのベースは、リーダーだけあって、ブンブン、良い音で鳴っている。フィリージョーのバップ・ドラミングは出力全開。皆、アッパラパーにハードバップをやりまくる。
 

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ここでは、ウィントン・ケリーのピアノのパフォーマンスに注目する。どの曲をとってみても、ケリーのピアノは絶好調。マクリーンの「躁状態」アルト・サックスに煽られたのか、ここでのケリーは、躁状態の「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」を弾きまくる。どの曲でも、端正に淀みなく、ジャジーにブルージーにファンキーにスイングしまくる。

自分のリーダー作より、サイドマンの方が気楽だったのかもしれない。この『Go』でのケリーは、本当に伸び伸びとリラックスして弾いている。恐らく、一番「躁状態」に振れたケリーのパフォーマンスだと思う。それでも、ケリーのピアノの個性であった「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ」のニュアンスを、躁状態の演奏でありながら、しっかりと忍ばせているのだから恐れ入る。やはり、ケリーは、ジャズ・ピアニストとして、超一流であり、プロフェッショナルだった。

ウィントン・ケリーの伴奏上手。サイドマンに回った時のケリーのパフォーマンスは、ケリーのピアノの個性である「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」が映えに映える。しかも、フロントのバックに回れば、フロント楽器、ボーカルを最高に引き立てる。ケリー・マジックとでも形容して良い、ケリーのピアノのバッキング。その一端を、この『Go』の数々の演奏の中でしっかりと聴き取ることが出来る。
 
 

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2026年1月 5日 (月曜日)

”Jazz At Massey Hall”を再聴

初心者向けのジャズ盤紹介の中で、この盤がなぜ、初心者向けの、ジャズ入門者向けのアルバムとして紹介されているのか、理解に苦しむアルバムが何枚かある。どう考えたって、そのアルバムの演奏内容って、ジャズ者中級者レベルでも、ちょっと難しいものが、初心者向けのジャズ盤紹介に上がったりしている。その代表格がこの盤、かな。

『The Quintet: Jazz At Massey Hall』(写真左)。1953年5月15日、カナダ・トロントの「マッセイ・ホール」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dizzy Gillespie (tp, vo), Charlie Parker (as), Bud Powell (p), Charles Mingus (b), Max Roach (ds)。 メンバーそれぞれが「ビ・バップ」の立役者、ビッグ・ネームばかり5人が集結したクインテット編成。

このライヴ録音では、ハプニング続きで、資料を見る限り、通常であれば、ライヴ・パフォーマンスをするような状態ではなかった。そもそも、このライヴが行われた時間帯に、ロッキー・マルシアーノとジャージー・ジョー・ウォルコットのボクシングの試合が同時開催されていたのが元凶で、コンサートを見に来る観客が激減。演奏メンバーへのギャラがまともに払え無い状態。

加えて、パーカーは、質屋に入れてしまった自分の楽器の代わりに、借りてきた白いプラステック製のアルト・サックスで演奏、加えて、契約の関係で、アルバムには「チャーリー・チャン」の変名でクレジットされている。ガレスピーは、ボクシングの試合が気になって、自分のソロが終わると、楽屋に引っ込んでテレビを見ていた。真面目実直なミンガスは、そんなガレスピーに切れて食ってかかったとか。とまあ、まともな演奏ができる状態では無い(笑)。
 

The-quintet-jazz-at-massey-hall
 

しかし、このライヴ音源を聴けば、それぞれが水準以上の演奏をくり広げているのだから、ジャズというのは「良く判らない」(笑)。ボクシングが見たくて、気もそぞろだったガレスピーは溌剌とトランペット・ソロをくり広げ、パーカーは、プラスチック製のアルト・サックスとは思えない、エモーショナルなバップ・フレーズを吹き上げる。問題児2人のフロントは、意外とまずまずのパフォーマンスをくり広げている。が、ベストに近いとは思えないけど。

パウエルのピアノは、彼として水準レベルの演奏に留まる。体調が優れなかったのだろう。覇気が不足している様に感じる。ドラムのマックス・ローチが一番安定していて、ビ・バップ時代で活躍していたと同じレベルのドラミングを披露していて立派。一番、実直真面目だったミンガスのベースは、実際の録音では、録音レベルが低すぎたので、後日、オーヴァーダビングしている。なので、ミンガスのベースのパフォーマンスは割り引いて聴くしかない。

2002年にジャズファクトリーレーベルからリリースされた『 Complete Jazz at Massey Hall』(写真右)には、オーヴァーダビングなしのコンサート全曲が収録されている。これは「ジャズの歴史の記録」としては有用だが、ミンガスのベースが聴き取り難く、ライヴ音源としては、明らかにレベルは落ちる。

メンバーそれぞれが「ビ・バップ」の立役者、ビッグ・ネームばかり5人が集結したライヴ音源なので、ジャズ初心者の方々が「ビ・バップ」時代のビッグネームの演奏を、まとめて手軽に聴けるお徳用盤、という評価もあるが、それは逆だろう。ビッグネームそれぞれのベスト・パフォーマンスを体験・理解してから、このユニークなライヴ盤を聴くべきで、ビ・バップを理解しているからこそ、エピソードも含めて楽しめる、ユニークなライヴ盤である、と僕は解釈している。
 
 

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2025年12月14日 (日曜日)

クリスマス・ジャズの定盤・1

今年もあと10日でクリスマス・イヴ。しかし、コロナ禍の影響か、コロナが流行した2020年のクリスマスから、テレビとかでクリスマス、クリスマスと騒がないようになって、コロナ禍が明けた後も、例えば今年もテレビやネットで、あまりクリスマス、クリスマスと言わなくなった様な気がしている。まあ、我が国は、基本的に仏教の国。クリスマスを祝うのはキリスト教。今の状態が相応しい、と言えば相応しい、かな(笑)。

Ray Brown Trio 『Christmas Songs With the Ray Brown Trio』(写真左)。1997年12月15-17日、1998年4月27-29日の録音。1999年のリリース。ちなみにパーソネルは、パーソネルは、Ray Brown (b), Geoff Keezer (p), Gregory Hutchinson (ds), ゲストに、Russell Malone (g, track: 4, 6), Ralph Moore (ts, track: 7, 11)。当時のレイ・ブラウン・トリオが伴奏に回ったクリスマス・ソング集。ギターのラッセル・マローン、テナー・サックスのラルフ・ムーアがゲスト参加している。

久々に聴いたんだが良いねえ〜。このクリスマス・ソング集は、僕の大のお気に入りで、購入したのが1999年。以降、クリスマス・シーズンには欠かさず聴いている「クリスマス好盤」。とにかく、レイ・ブラウンのトリオが大活躍。このピアノ・トリオの演奏、伴奏が絶品。そんなピアノ・トリオをバックに、ジャズ・ボーカルの実力者がズラリ、クリスマス・ソングを唄い上げていく。とても、ゴージャズなクリスマス・ソング集。
 
Ray_brown_christmas_songs_2  
 
ディー・ディー・ブリッジウォーターによるシンコペーションとゴスペル調の「Away in a Manger」から始まり、続く、ダイアナ・クラールは「Santa Claus Is Coming to Town」でブルースを奏で、4曲目、エタ・ジョーンズは「It Came Upon a Midnight Clear」をダウンホーム風にアレンジし、そして、6曲目、ケヴィン・マホガニーによる温かくクラシックな「The Christmas Song」を唄い上げる。

ジャズ・ベースのレジェンド、レイ・ブラウンのベースワークが素晴らしいのは当たり前として、とりわけ、ピアノのジェフ・キーザーが素晴らしい。ドラムのグレゴリー・ハッチンソンも確実で柔軟でとても良いドラム。実はこのトリオだけでの演奏もあるのだが、これがまた絶品につぐ絶品揃い。3曲目「God Rest Ye Merry, Gentlemen」、5曲目「Little Drummer Boy」、9曲目「We Wish You A Merry Christmas」、10曲目「O Tannenbaum」の4曲だが、どれも甲乙付けがたい名演の数々。

ラストは、ドラムのハッチンソンがボーカルを担当したラップ・ジャズ「The Christmas Rap」。この盤を初めて聴いた時は、このラップ・ジャズ、ふざけているんとちゃうか、これは蛇足、なんて感じたものだが、今の耳で聴くと、意外と面白くて、これはこれで「ご愛嬌」として楽しく聴ける。歳を取ったのだろうか、音に対する許容量が増えたのだろうか(笑)。これはこれでアリかな(笑)。
 
 

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