2025年6月 8日 (日曜日)

MJQの活動前期の名ライヴ盤

まず、最初に断言するが、このライヴ盤は、MJQの名ライヴ盤『The Last Concert』と比肩する、MJQの前期のパフォーマンスを代表する、最高のライヴ盤である。MJQの良いところの全てが、このライヴ盤に凝縮されている。とにかく、見事なカルテット演奏。アカデミックな香りが濃厚、ジャズの芸術性の部分がグッと前面に出た、モダン・ジャズの良いところがこの盤に詰まっている。

The Modern Jazz Quartet『European Concert』(写真左)。1960年4月11–13日、スウェーデンのストックホルムとヨーテボリでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), John Lewis (p), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)。MJQの「揺らぎの無い鉄壁のカルテット」。初出のLPでは2枚組でのリリースだった。

アレンジが素晴らしく、バグスのブルージーで、ファンクネス漂うヴァイブと、ルイスのクラシック風な、音を選んだ間を活かしたのピアノが、あまりに流麗で洒脱で小粋で気がつきにくいのだが、MJQのパフォーマンスは「バップ」が基本。クラシック志向のアレンジが先に印象として残るので忘れがちになるのだが、MJQの演奏は、とことん「ハードバップ」である。
 

The-modern-jazz-quarteteuropean-concert

 
欧州のクラシックの音志向&アレンジと、米国西海岸のバップ・ジャズとの融合音楽がMJQのサウンド、と僕は解釈している。バグスのヴァイブ、ルイスのピアノ、ヒースのベース、ケイのドラム。このカルテットの音は、どこから聴いても、どこから切っても、ハードバップしている。そして、演奏の底に漂うアーバンなファンクネスと、濃厚ジャジーな雰囲気が、MJQの演奏をどっぷりモダン・ジャズに仕立てている。

音の鮮度というか、音の響きが「切れ味良く」「ブリリアントで」「アクティヴ」。MJQの活動前期の総決算的位置付けのライヴ盤で、バグスのヴァイブ、ルイスのピアノ、ヒースのベース、ケイのドラム、それぞれの音が「若く」「活き活き」している。ライヴ演奏での「スピード感」も特筆に値する。

僕はルイス作の「Skating in Central Park」が大好きなのだが、このライヴ盤での演奏は絶品。以前、実際にNYのセントラルパークのスケート場を見に行ったことがあるのだが、その時の光景、スケートをする人達が、気持ち良く、笑顔で楽しく滑っている、そんなスケート場の情景が瞼に浮かぶようだ。この1曲だけでも、このライヴ盤、MJQの名盤である。
 
 

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2025年4月18日 (金曜日)

Argoレーベルのビッグバンド盤

こってこてファンクネス漂う、ソウル・ジャズ、ジャズロックを聴きたくなって選盤に迷ったら、アーゴ&カデットの諸作を選盤すれば良い。それほどまでに、アーゴ&カデットのアルバムの制作志向は「ファンキー・ソウル・ジャズロック」で統一されている。が、正統派な、純ジャズどまん中のアルバムもしっかりと出している。

Chubby Jackson『Chubby's Back』(写真左)。1957年3月31日の録音。Argoレーベルからのリリース。

ちなみにパーソネルは、Chubby Jackson’s Big Band = Chubby Jackson (b), Howard Davis, Sandy Mosse, Vito Price (reeds), Bill Calkins (bs), Bill Harris, Tommy Shepard (tb), Don Geraci, Don Jacoby, Joe Silria (tp), Cy Touff (b-tp), Remo Biondi (g), Marty Rubenstein (p), Don Lamond (ds)。

このビッグバンド・リーダーのチャビー・ジャクソンは、1918年10月、NY生まれのベーシスト。1930年代からルイ・アームストロング、ウディ・ハーマン、レイモンド・スコットらの下で、ベーシストとしてビッグバンドのベース・ラインを支え、スタジオ・ミュージシャンとしても活躍したベース職人である。実は僕はこのビッグバンド盤を聴くまで、数年前まで、チャビー・ジャクソンの名前を知らなかった。
 

Chubby-jacksonchubbys-back

 
このビッグバンド盤は、チャビーが39歳の時にレコーディングした、チャビーの初リーダー作。39歳の初リーダー作はちょっと遅めな感じがするが、チャビーはベーシストなのと、ビッグバンドに長年、所属していたこともあって、リーダー作の制作については、なかなかそのチャンスがなかったのだるう。

で、このビッグバンドのサウンドだが、洗練された素性の良いビッグバンド・サウンドで、テンポも良くスイング感抜群、リズム&ビートも溌剌としていて、アンサンブルは良好、ユニゾン&ハーモニーは心地良い。

ビッグバンドの様な教科書の様なサウンドである。ビッグバンドのパーソネルを見渡すと、知っている名前は、ほとんどいないのだが、それぞれの楽器の演奏のレベルは押し並べて高い。改めて調べてみたら、ハーマン楽団の旧知のメンバーを中心に名手を揃えている、とのこと。納得である。

モダン・ビッグ・バンドの醍醐味を満喫できる、好ビッグバンド盤だと思う。こんなに内容良好なビッグバンド盤が、アーゴ&カデット・レーベルからリリースされているとは。見つけた時は半信半疑だったのだが、実際に聴いてみて「目から鱗」。聴いて楽しいビッグバンド・サウンド。好盤です。
 
 

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2025年1月30日 (木曜日)

楽しいハードバップな好盤 ”Go”

ハードバップな好盤って、ごまんとある。それだけ、ハードバップの時代は、ジャズというジャンルのパフォーマンスが、歴史上、一番、充実していた時代だった証でもある。しかし、本当に沢山の好盤があって、ジャズ初心者向けの好盤でありながら、当ブログにてご紹介し損ねている盤もまだまだある。

Paul Chambers『Go』(写真左)。1959年2月2, 3日、シカゴでの録音。Vee-Jayレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Paul Chambers (b), Freddie Hubbard (tp), Cannonball Adderley (as), Wynton Kelly (p), Philly Joe Jones, Jimmy Cobb (ds)。当時のマイルス・バンドのリズム隊メンバーが集結した、素敵な内容のハードバップ盤。

バンド編成の基本は、ハバードのトランペット、キャノンボールのアルト・サックスの2管フロント。リズム隊に、ケリーのピアノ、ポルチェンのベース、そして、フィリージョーとコブが交代でドラムを担当するクインテット編成。ハバードのトランペットがコルトレーンに代われば、そのまま、マイルスのバックバンドになる。
 

Paul-chambersgo

 
ほぼ、マイルスのバックバンド的編成なのだが、これがまあ、モードの影の形もない、徹頭徹尾、コード・ベースのばりばりハードバップな演奏が統一している。モードの方が、アドリブの自由度は格段に上がるのだが、この盤のセッションでは、モードのアーティスティックな自由度よりも、コードのハードバップな演奏の楽しさを優先した、そんな感じのする、聴いて楽しい『Go』セッションの音である。

リーダーのポルチェンのベースも良い響きで、演奏全体の「底」をしっかりと支える。キャノンボールの饒舌で切れ味の良い疾走感溢れる吹き回し。テクニック溢れるハバードのペット。ケリーのハッピー・スイングなピアノ、そして、渋くキメるフィリジョー&コブのドラム。1950年代のハードバップ演奏の良いところがギッシリと詰まっている。

この『Go』のセッションって、アウトテイクが多くて、CDでのリイシュー時、オリジナルのLPの6曲に、なんと10曲ものボートラを追加して、CD2枚組としてリイシューしている。が、僕は、まずは、LP時代の6曲をしっかりと聴き込んでから、リイシューのボートラを聴いて欲しい、と思う。そうすると、オリジナル6曲の素晴らしさを実感する中で、ボートラの良さもしっかりと確認できると思うのだ。
 
 

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2025年1月11日 (土曜日)

70年代ロンの「CTI流な純ジャズ」

CTIレーベルは、1970年代に、クロスオーバー&フュージョン・ジャズのブームを牽引したレーベル。しかし、そんなクロスオーバー&フュージョン・ジャズがメインのカタログ・ラインアップの中で、優れた内容の「コンテンポラリーな純ジャズ」なアルバム、いわゆる「CTI流な純ジャズ」盤が意外と多く存在する。そして、これが意外と良くて病みつきになる。

Ron Carter『All Blues』(写真左)。1973年10月24日、Van Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b, piccolo-b), Joe Henderson (ts), Roland Hanna (p), Richard Tee (el-p), Billy Cobham (ds, perc)。ジョー・ヘンダーソンのテナー・サックスが1管フロントのカルテット編成。3曲目の「117 Special」だけ、ハナのピアノが、ティーのエレピに替わる。

CTIレーベルの盤である。このパーソネルを眺めると、どんな音が出てくるのか、凄く不安になる。これだけ、ハードバップ全盛期から、メインを走ってきた一流ジャズマンばかりである。まさか、この面子で、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズをやるんや無いやろうな、と心の中で慄きながら、レコードの針を盤に落としたのを覚えている。

これが、である。不思議なことに、コンテンポラリーな純ジャズが展開されているのだ。演奏全体の雰囲気が「ライトでソフトでスインギーな」コンテンポラリーな純ジャズ。1970年代の、独特のライト感、独特のポップ感を底に漂わせたコンテンポラリーな純ジャズ。

面白いのは、曲を追うごとに、この「純ジャズ」度合いが増えていくこと。曲が進むにつれ、硬派でライトな純ジャズ度合いが増強されていく。4曲目の「Rufus」などは、もうこれは純ジャズ。5曲目「All Blues」などは、イージーリスニング志向の純ジャズ風に始まるが、途中出てくるジョーヘンのテナーのモーダルなソロなどは、もはや完全な「純ジャズ」である。
 

Ron-carterall-blues  

 
バックで演奏のベースラインを司るロンのベースも、この盤では健闘している。もともと優れたベーシストなんだが、この時代では、ベースのピッチが合ってなかったり、ベース音をアンプで増幅した「ブヨンブヨン」とした音に違和感を感じたりして、ロンのベースは評判は良くなかった。

ただ、この盤ではピッチはまずまず合っていて、アンプ増幅の「ブヨンブヨン」といった音はかなり控えめで、ロンのベースの「本当」を、この盤では確認することが出来る。ソロも創造性溢れるものであり、速弾きのピチカートも見事である。ラストの「Will You Still Be Mine」でのロンのベース・ソロは、テクニックを駆使して鬼気迫るものがあって迫力十分。

3曲目だけが、ソフト&メロウを追求したクロスオーバー・ジャズな演奏になっているが、この曲では、若き日のリチャード・ティーのエレピがファンキーでメロウで印象に残る。このティーのエレピをバックに、ロンが骨太でテクニック抜群のベース・ソロで、メインの旋律を唄うように引き進めていく。圧巻である。

この盤を聴くと、ロンもやればできるやん、という気にさせてくれる。とはいえ、暫くは、ピッチが合ってなかったり、ブヨンブヨンとアンプ増幅されたベース音が耐えられなかったり、が時々あって、聴く方からすると思わず「眉をひそめたり」するのだが、1990年代には、その欠点が克服され、コンスタントに秀作をリリースするようになる。

そんな1990年代以降の秀作な内容を、この盤ではしっかりと展開している。ロンのポテンシャルの高さを改めて思い知る好盤です。
 
 

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2024年12月18日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・275

ジャズマンの力量を図るには、スタジオ録音よりもライヴ録音の方が良い。スタジオ録音が何回でも録り直しができるが、ライヴは撮り直しはできない。即興演奏を最大の個性とするジャズについては、この即興演奏のパフォーマンスが重要になる。即興演奏は「一発勝負」が基本。そういう意味では、ジャズマンの力量を推し量る指標の一つ「即興演奏」については、ライヴ録音を聴く方が、その力量のほどが良く判る。

Herbie Hancock, Michael Brecker & Roy Hargrove『Directions in Music: Live at Massey Hall』(写真左)。2001年10月25日、トロントのマッセイホールでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock (p), Michael Brecker (ts), Roy Hargrove (tp, flh), John Patitucci (b), Brian Blade (ds)。

大御所ピアニストのハービー・ハンコック、早逝の天才テナー・マンのマイケル・ブレッカー、こちらの早逝の天才トランペッター、ロイ・ハーグローヴ、ネオ・ハードバップ系の中堅ベーシストのジョン・パティトゥッチ、メジャーデビューした頃の初々しい、新しい響きのドラミングが良好のブライアン・ブレイド。今から振り返ってみれば、錚々たるメンバーが顔を揃えたクインテット編成。

メンバーそれぞれのパフォーマンスが半端ない。まずは、テナーのマイケル・ブレッカー。このマイケルのテナーが凄い。アンサンブルもアドリブも、そのパフォーマンスは絶品。スケールが大きくテクニカル。ストレートで流麗で少しウォーム。過去のどのテナーマンとも違う、マイケルならではテナーの音で、バリバリ吹きまくっている。ソロにおける、迫力満点なブロウも繊細な吹き回しも、圧倒的なアピール力を持って迫ってくる。
 

Directions-in-music-live-at-massey-hall

 
そして、ロイ・ハーグローヴのトランペット。このハーグローヴのトランペットも凄い。テナーのマイケルと対等に渡り合う、切れ味良く、高度なテクニックによるブリリアントでど迫力のブロウ。繊細な表現もクールで優しい。このライヴ盤のハーグローヴのパフォーマンスを聴いていると、マイルスの後を継ぐものはハーグローヴではなかったのか、と思ってしまう。それくらいに素晴らしいハーグローヴのトランペット。ソロも絶品。

フロントの二人がとにかく凄いが、バックのリズム・セクションも負けてはいない。フロントの二人に刺激されたのか、いつになくハンコックがバリバリとピアノを弾いている。これだけ溌剌とバリバリとピアノを弾くハンコックは、この時期にしては珍しい。まだまだいける、まだまだ第一線、という感じのハンコックのピアノが良い。

ベースのパティトゥッチとドラムのブレイドは、当時、ウェイン・ショーターのグループに参加しており、リズム隊としての息はピッタリ。強烈なフロントの二人に絡むように、鼓舞するように、強靭で柔軟なリズム&ビートを供給する。新しい、ネオ・ハードバップなリズム隊のリズム&ビートが心地よく耳に響く。

ストイックでモーダルな展開のジャズだが、その内容と響きは新しさに満ちている。決して後ろを振り返らない。前を見据えて、先に行こうとする推進力を感じる、極上のネオ・ハードバップな響き。このライヴ盤は、21世紀に入っての「ネオ・ハードバップ」の名盤として良いかと思う。
 
 

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2024年12月 6日 (金曜日)

ダニエルソンの変則トリオの秀作

晩秋から初冬にかけて、徐々に気温は下がり、北の地方から雪の便りがやってくる。いよいよ、北欧ジャズの鑑賞に一番適した季節がやってくる。晩秋から冬の終わりまで、暖かくした部屋の中、外の「紅葉の景色から冬の景色」を眺めながら聴く、北欧ジャズは絶品である。今年も先日から、この季節から冬の終わりまでに聴きたい「北欧ジャズ」のアルバムを物色している。

Lars Danielsson『Palmer Edition II: Trio』(写真左)。2024年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、Lars Danielsson (b), Verneri Pohjola (tp), John Parricelli (g)。フランス有数のワイナリーで録音されたACTレコードからの新作。美しい「音の色彩感覚」に満ちたトリオ演奏。トリオとはいえ、このトリオにはドラムとピアノがいない。ベース、トランペット、ギターの変則トリオ。

スタジオではなく、ボルドーワイン地方の人里離れた一角にある木製パネルのサロンで録音されたアルバム。スウェーデンのベーシストのラーシュ・ダニエルソン(Lars Danielsson)、イギリスのギタリストのジョン・パリチェッリ(John Parricelli)、そしてフィンランドのトランペッターのヴェルネリ・ポホヨラ(Verneri Pohjola)の変則トリオ。録音された音の「残響音」が印象的で、それぞれの音の間に「温かい静寂」を感じる。
 

Lars-danielssonpalmer-edition-ii-trio

 
トリオ3人並列リーダーとして名を連ねているが、実質のリーダーはベーシストのラーシュ・ダニエルソン。ラーシュはスウェーデン出身なので、この盤の音の基本は「北欧ジャズ」。トランペットのポホヨラもフィンランド出身なので、北欧ジャズ独特のフレーズ、音の響きが「金太郎飴の様に」出できそうなものなのだが、この盤にはそれが希薄。フレーズの流れは北欧ジャズ風でフォーキーなものだが、印象的な北欧独特のフレーズは控えめ。

それでも、繊細で抒情的で耽美的でフォーキーなサウンドは印象的で、どう聴いてもこれは欧州ジャズであり、北欧ジャズである。演奏の展開、フレーズの作りは「シンプル」。難解なことは全くしていない。それでいて、変則トリオによるインタープレイは高度なもので、この変則トリオのレベルの高さが窺い知れる。そして、それぞれの楽器の音が素晴らしく良い。テクニックの高さ、楽器の音の素晴らしさ、この二つが、このアルバムの演奏の「躍動感」につながっている。

我が国では、なかなか話題に上がらない北欧ジャズだが、1950年代から着実に「進化〜深化」し、現代においても、まだまだ勢いは衰えず、意気盛ん。このダニエルソンのトリオ盤も、従来からの北欧ジャズのパターンから脱して、新しい北欧ジャズの音を創造している様に感じる。但し、北欧ジャズの「コア」はしっかりと保持され、北欧ジャズの良心である「繊細で抒情的で耽美的でフォーキーなサウンド」は健在。この変則トリオ盤は、2024年の北欧ジャズの秀作の一枚だろう。
 
 

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2024年12月 4日 (水曜日)

アヴィシャイの新作 ”Brightlight”

2024年もあと残すところ一ヶ月。2024年はコロナ禍も下火になって、ジャズについても、新規アルバムのリリースも順調になり、ライヴ演奏の頻度も回復基調になった。演奏の編成も、コロナ禍での少人数の演奏(ソロ&デュオ)から、トリオ以上のグループ・サウンドに回復し、コロナ禍以前の「深化」と「裾野の広がり」度合いに戻ったイメージがある。

Avishai Cohen『Brightlight』(写真左)。2024年11月のリリース。スウェーデンとテルアビブでの録音。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (b, vo), Guy Moskovich, Eden Giat (p), Roni Kaspi, Noam David (ds), Yuval Drabkin (sax), Lars Nilsson (tp), Hilel Salem (flh), Jakob Sollerman (tb), Yosi Ben Tovim (g), Ilan Salem (fl), Jenny Nilsson (vo)。

イスラエルを代表する当代最高のベーシスト、アヴィシャイ・コーエンの新作。クラシック〜ジャズにおける伝統の音世界に、イスラエルに根付いている個性的なメロディ、リズム&ビートが融合、21世紀の現代のジャズのトレンドである、ネオ・ハードバップ、ネオ・モードな、コンテンポラリー・ジャズをさらに「深化」させた、コーエンが考える「イスラエル・ジャズ」がこの盤の中に溢れている。
 

Avishai-cohenbrightlight

 
リーダーのアヴィシャイ・コーエンはベーシスト。当然、アヴィシャイのアコベが要所要所でフィーチャーされる。これがまた絶品なベースのパフォーマンス。躍動感溢れるソリッドで骨太なアコベの響きが官能的。時にストレートに旋律を奏で、時にフロントをリード&鼓舞し、時に演奏全体のリズム&ビートをコントロールする。この盤でのアヴィシャイのベースは、アルバム全体を掌握しコントロールする「リーダーのベース」である。

アヴィシャイの周りを固めるサイドマン達も素晴らしいパフォーマンス。ロニ・カスピのドラミングは躍動的で迫力満点、ポリリズミックで変拍子を交えたドラミングは個性抜群。ガイ・モスコビッチとエデン・ギアットのピアノは、ハーモニー・センス抜群、きめ細やかなタッチ、高いテクニックは聴き応え十分。アヴィシャイの「リーダーのベース」と合わせて、「現代のリズム・セクション」の最高レベルのバッキング・パフォーマンスを聴かせてくれる。

リズム・セクションのパフォーマンスだけでも十分に楽しめるが、そんな最高レベルのリズム・セクションをバックに、フロントのトランペット、サックス、ギター、トロンボーン、フルートが、クールに端正に静的スピリチュアルにモーダルに吹きまくるのだから、このフロント管入りのトータルなグループ・サウンドも魅力満載。2024年のメインストリームな純ジャズの優秀盤だと思います。
 
 

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2024年11月18日 (月曜日)

ジャズ・ベース2本のデュオ名盤

技巧派ジャズ・ベーシストがよくやる裏技に「ボウイング」がある。「ボウイング」とは、弦楽器で弓を弦に当てて上げ下げして音を出す演奏技法。旋律楽器として、旋律を取りにくいベースという楽器で、滑らかな旋律を取る方法の一つ「ボウイング」。

しかし、この「ボウイング」が曲者で、かなり高度なテクニックと音感を要する。つまり、技巧派ジャズ・ベーシストのボウイングについては、押し並べて「良くない」。クラシックのチェロやコントラバスのボウイングの旋律は、ピッチが合っていて、ボウイングのテンポが合っている。これが「ボウイング」なのだが、ジャズ・ベーシストのボウイングは、ピッチが合っていなくて、ボウイングのテンポが外れている。

それなのに、技巧派ジャズ・ベーシストは「ボウイング」をやりたがる。思いついただけでも、ポール・チェンバース、ロン・カーター、この二人のボウイングは酷い。レイ・ブラウンについては可もなく不可もなく。ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセン、ジョージ・ムラーツなど、欧州系のジャズ・ベーシストは、クラシックの影響もあるのだろう、ボウイングはまずまず良好。

とはいえ、総じて、ジャズ・ベーシストのボウイング、どう聴いても、クラシックのそれと比べて、あまりにも見劣りがする。

Christian McBride & Edgar Meyer『But Who's Gonna Play The Melody?』(写真左)。2024年の作品。ちなみにパーソネルは、Christian Mcbride, Edgar Meyer (b, p)。クリスチャン・マクブライドとエドガー・メイヤー、2 人のグラミー受賞ベーシストによる、ベーシストだけのジャズ演奏。

タイトルが良い。「But Who's Gonna Play The Melody?」=「だれがメロディを弾くんだい?」。ベーシスト2人だけのデュオ・パフォーマンス。ベーシスト二人、それぞれがピアノを弾くが、それも全15曲中、それぞれ2曲だけ。残り11曲は、純粋にベース2本だけのパフォーマンス。
 

Christian-mcbride-edgar-meyerbut-whos-go
 

ベース2本だけのパフォーマンスとしては、Niels-Henning Ørsted Pedersen & Sam Jones『Double Bass』(2012年7月11日のブログ記事・左をクリック)が浮かぶが、かなり珍しいデュオ・フォーマットであることは間違いない。

しかし、である。これが絶品なのだ。恐らく、ジャズ・ベーシストがメインのパフォーマンスの極上のもの。タイトル「But Who's Gonna Play The Melody?」=「だれがメロディを弾くんだい?」の問いに応える様に、マクブライドとメイヤーの2人が、ピッチ奏法でリズム&ビートを弾き出し、アルコ奏法(ボウイング)で旋律を奏でる。

二人とも、とりわけ優れたベーシストであり、ピッチ奏法は極上なのは当たり前。しかし、この盤で素晴らしいのは、二人のベーシストのボウイング。ピッチはバッチリ合っていて、ボウイングのテンポもバッチリ合っている。その上、弾き出されるリズム&ビートは躍動感溢れ、グイグイと推進力抜群。そして、ボウイングの旋律は歌心溢れ流麗至極。クラシックのボウイングと比べても全く遜色無い。

これだけ、優れた内容のジャズ・ベースのボウイングは聴いたことが無い。今回のこのアルバムが、ジャズ・ベーシストのパフォーマンスの中で、ピカイチの内容のボウイングだろう。いわんや、ピチカートによる旋律のつまびきについても絶品極まりない。バックに回ったウォーキング・ベースも素晴らしい推進力。

いやはや、素晴らしいベース2本のデュオ。両者ともテクニック、歌心、イマージネーション、いずれをとっても遜色ない。現代のジャズ・ベースのバーチュオーゾ二人の極上のパフォーマンス。ジャズ・ベースがリーダーの名盤として、上位にランクしても良い傑作だと思う。

タイトルの問い「But Who's Gonna Play The Melody?」=「だれがメロディを弾くんだい?」。その答えは、このデュオ盤そのものの中にある。
 
 

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2024年11月14日 (木曜日)

ECMサウンドのモード・ジャズ

月刊誌レココレの2024年11月号の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この特集のアルバム・セレクトが興味深く、掲載されているアルバムを順番に聴き直し&初聴きをしている。どの盤にも新しい発見があって、実に楽しい。今回のアルバムは初めて聴く「初聴き」盤。

Arild Andersen『Shimri』(写真左)。1976年10月、オスロの「Talent Studios」での録音。ECMの1082番。ちなみにパーソネルは、Arild Andersen (b), Juhani Aaltonen (ts, ss, fl, perc), Lars Jansson (p), Pål Thowsen (ds)。ノルウェーのジャズ・ベーシスト兼作曲家アリルド・アンダーセンの2枚目のアルバムである。

典型的なECMサウンド。耽美的でリリカル、静的スピリチュアルな展開、力強くブリリアントな管の響き、切れ味良く透明度の高いリズム隊のリズム&ビート。リーダーのアンダーセンがノルウェー出身、サックス担当のアールトネンはフィンランド出身、ピアノ担当のヤンソンはスウェーデン出身、ドラム担当のトーセンはノルウェー出身。カルテットのメンバー全員が北欧出身だが、北欧ジャズ独特の響きとフレーズは希薄。
 

Arild-andersenshimri

 
ゆったりとしたミッド・テンポの演奏がメイン。演奏される展開はモーダル。演奏の雰囲気、響きはECM流のヨーロピアンな純ジャズ。そう、この盤の演奏は「欧州的なモーダルな純ジャズ」。ピアノのヤンソンのモーダルなアドリブ・フレーズは、どこか米国的。しかし、音の響きは「欧州的」。この盤の音世界は、米国的なモーダルな純ジャズを、ECMレーベルというフィルダーを通して、ECMサウンドを纏った「欧州的な響きのするモーダルな純ジャズ」に変換したが如くの音世界。

アンダーセンのベースは力感溢れる、しっかり「胴鳴り」のする、骨太なアコースティック・ベース。モーダルな演奏のベース・ラインをしっかりと押さえ、フロント楽器がアドリブ・フレーズを奏でる時は、しっかりと展開の底を支え、時に自らが前面に出て、印象的で骨太なアドリブ・ソロを聴かせる。ピッチもしっかりあって破綻が無い、いかにも「欧州ジャズ」的なアコベの音。聴き味抜群なベース音。

ECMレーベルのアルバムについては、即興演奏をメインとした、伝統的なジャズとはかけ離れた「ニュー・ジャズ」なアルバムが多数あるが、この盤は違う。この盤は、典型的なECMサウンドの中での欧州的なモード・ジャズ。静的でリリカルでクールで透明度溢れるモード・ジャズ。この盤では、ECMレーベルの中では、ちょっと異質な、伝統的なジャズが展開されている。とても興味深く、ECMとしてユニークな盤だと僕は思う。
 
 

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2024年10月25日 (金曜日)

ECM流クロスオーバーの名盤

レコード・コレクターズ 2024年11月号の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが気に入って、掲載されているアルバムを順番に聴き直し&初聴きしている。今回のアルバムは、実は初めて聴く「初聴き」盤である。

Barre Phillips『Three Day Moon』(写真左)。1978年3月の録音。ECM 1123番。ちなみにパーソネルは、Barre Phillips (b), Terje Rypdal (g, g-syn), Dieter Feichtner (syn), Trilok Gurtu (tabla, perc)。米国のジャズベーシスト、バレ・フィリップスがECMに録音した、ECM+JAPOで、通算4枚目のリーダー・アルバム。

このアルバムの印象はズバリ「プログレッシヴ・ロック(プログレ)とモード+フリー+スピリチュアル・ジャズとの融合」。リズム&ビートがはっきりしている演奏部分は「プログレ」。ボ〜っと聴いていたら「あれ、このプログレ、誰だっけ」と思ってしまうほど、プログレの要素が入っている。タブラの音が効果的、バイオリンの音の様なギター・シンセが、プログレ的な雰囲気を増幅する。
 

Barre-phillipsthree-day-moon  

 
リズム&ビートの供給が途絶えた途端、今度は、フリー・ジャズ志向、スピリチュアル・ジャズ志向に展開する。この展開は、ギターを担当するテリエ・リピダルの真骨頂で、リピダルのエレギ、ギター・シンセは、縦横無尽、変幻自在に浮遊し、突進し、拡散する。パーカッションのフリーな打ち込みがスピリチュアルな雰囲気を増幅する。

そして、フィリップスのベース音がフリーでスピリチュアルな展開を規律あるものに仕立て上げているのは立派だ。プログレ的な展開も、フリーでスピリチュアルな展開も、チェンジ・オブ・ペースを促したり、ブレイクを誘ったり、調性と無調のチェンジを指し示したり、さすがリーダー、フィリップスのベースが要所要所で「いい仕事」をしている。

タイトルが「Three Day Moon」=三日月。なんかどこか、ピンク・フロイドの名盤「Dark Side of The Moon」を想起したりして、これって、ECMレコード流のクロスオーバー・ジャズなのかしら、と直感的に感じてしまう。昔々、プログレ小僧だった僕としては、この盤の内容は全く違和感なく聴くことが出来ました。ECM流クロスオーバーの名盤だと思います。
 
 

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