2024年12月 3日 (火曜日)

シナトラのクリスマス名盤です

今日、昼ごはんを買いに近くのコンビニに寄ったのだが、店内で流れているBGMは「クリスマス・ソング」。そうか、もう12月。クリスマス・シーズンなんだ、と認識を新たにする。そして、このコンビニの店内に流れる「クリスマス・ソング」のBGMはジャジー。イージーリスニング・ジャズ志向のクリスマス・ソングで、さあ、今年もクリスマス・ジャズ盤を聴く季節が来た、とワクワクする。

Frank Sinatra『A Jolly Christmas from Frank Sinatra』(写真左)。1957年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Frank Sinatra (lead vo), The Ralph Brewster Singers (back vo), Gordon Jenkins (arr, cond)。「20世紀を代表する偉大な歌声」という意味で、「ザ・ヴォイス」というニックネームで称賛される、アメリカのエンターテインメント界の伝説の至宝、フランク・シナトラの最初のクリスマス・アルバムである。

男性ジャズ・ボーカルとして、僕はフランク・シナトラが大のお気に入り。小学生高学年の頃から、シナトラの歌声に親しんできた訳だが、ほんと、シナトラの声が良い、シナトラの声が大好きなのだ。そんな魅惑的な男性ボーカルが、親しみのあるフレーズを湛えたクリスマス・ソングを唄いまくるのだ。悪い訳がない。諸手を挙げて、このクリスマス・ソング盤は名盤だ。
 

Frank-sinatraa-jolly-christmas-from-fran

 
収録曲は、王道とも言うべき「クリスマス・スタンダード曲」が選ばれている。どの曲も馴染みのある曲ばかりだが、その「クリスマス・スタンダード曲」の持つ流麗な旋律を、シナトラの魅惑的なダンディズム溢れるボーカルで、しっとりと唄い上げていく。そう、全曲「しっとり」と唄い上げていく。あのアップ・テンポの「ジングル・ベル」ですら「しっとり」と唄い上げる。この「しっとり」感が、クリスマスの厳かな雰囲気を想起させてくれる。

バックのラルフ・ブリュースター・シンガーズとゴードン・ジェンキンス指揮のオーケストラも良い感じ。クリスマス・ソングは、バックのオケのアレンジやサウンド、コーラスのアレンジや出来、それぞれが平凡だと、俗っぽいイージーリスニングな、ちょっと陳腐な演奏に陥ってしまうのだが、この盤ではそれについて、全く心配が無い。コーラス、オケ共々、アレンジ優秀、パフォーマンス優秀、シナトラの「しっとり」歌唱をガッチリサポートし引き立てる。

とても優れた内容の「クリスマス・ジャズ」盤。シナトラの歌唱も優秀。バックのコーラス&オケも優秀。シナトラの、シナトラによる、シナトラらしい、クリスマス・ソングの歌唱。敬虔で品格あるクリスマス・アルバム。クリスマス・ジャズ盤の名盤の一枚です。
 
 

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2024年10月14日 (月曜日)

阿川の ”フュージョン・ボーカル”

フュージョン・ジャズの時代、インスト中心のアルバム作りが主流で、ボーカルがメインのアルバムは少なかった。ボーカル入りのアルバムはあったが、どちらかと言えば、ファンクネスな要素の彩りが欲しい時の「ソウル、R&B志向のボーカル」で、フュージョン・ジャズとして、「ボーカリストの歌を聴かせる」盤は希少だった。

阿川泰子『Lady September』(写真左)。1985年6~7月、東京での録音。ちなみにパーソネルは、バック・バンドとして、当時の阿川泰子のレギュラーバンドだった「松木恒秀グループ」、ブラジルから迎えたグループ「カメラータ・カリオカ」、吉田和雄率いる「スピック&スパン」が分担して担当している。

ボーカルはもちろん、阿川泰子。アレンジは野力奏一、吉田和雄、小林修が担当。このアルバムのメイン・コンセプトは「ノスタルジックなボサノバ」をメインとした、ブラジリアン・フュージョン。

バック・バンドの演奏は、フュージョン・ジャズど真ん中な演奏で、完璧フュージョンなバック・バンドのサポートを得て、阿川泰子が気持ちよさそうに、ボサノバ曲を唄い上げていく。

耽美的で流麗なシンセの前奏が、いかにも1980年代半ばの「フュージョン・ジャズ」という雰囲気がとても良い、アコギやベースを従えての、冒頭のイヴァン・リンスの「Velas(September)」が、このアルバム全体の雰囲気を代表している。
 

Lady-september

 
2曲目「When You Smiled At Me」は、8ビートな爽快感溢れるボサノバ&サンバなグルーヴが心地良いアップ系だが、ファンクネスはほとんど感じられない、それでいて、小気味の良いオフビートが、演奏全体の疾走感をさらに増幅させる。典型的な「和フュージョン」な音作りで耳に馴染む。

3曲目の「Voo Doo」は、どこかディスコ・フュージョンっぽいアレンジがユニーク。4曲目「If You Never Come To Me」は、スローなボサノバ曲で、アコギの伴奏が。アコギのソロが沁みる。8曲目の「I’m Waiting」でも、松木恒秀の印象的なアコギ・ソロが聴ける。この盤の伴奏、アコギの音色が実に印象的。

フュージョンど真ん中のバック・バンドの演奏だが、テクニックに優れ、内容は濃い。伴奏だけに耳を傾けても、十分にその伴奏テクニックを堪能できる優れもの。そこに、ライトな正統派ボーカルの阿川泰子がしっとりと力強く唄い上げていく。聴き応え良好。収録されたどの曲でも、阿川のボーカルが映えに映える。アレンジ担当の面々の面目躍如であろう。

阿川のライトなジャズ・ボーカルの質、バックバンドの演奏の質、そして、その二つを効果的に結びつけるアレンジの質。この「3つの質」がバッチリ揃った、フュージョン志向の「ボーカリストの歌を聴かせる」盤として、優秀なアルバムだと僕は評価してます。

バブル全盛時代にリリースされた、美人シンガーの「フュージョン・ボーカル」盤なので、何かと「色眼鏡」で見られるが、内容はしっかりとしている。ながらジャズに最適かな。いやいや、対峙してジックリ聴いても、聴き応えのある好盤です。
 
 

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2024年9月28日 (土曜日)

仲村裕美『’Swonderful』を再聴

1970年代後半から1980年代前半の、フュージョン・ブームの10年間の「和フュージョン」の好盤を発掘しては聴き直している。

「発掘」とは言っても、未発表音源を探し当てて聴くなんていう「マイケル・カスクーナ」ばりの、未発表音源発掘のインディー・ジョーンズでは無く、1970年代後半から、1980年代前半の当時、聴き親しんでいたアルバムで、しばらくの間、忘れ去っていた盤を、所有のライブラリーから再度、引き摺り出して聴き直す、という、「温故知新」的な作業である。

Hiromi Nakamura(仲村裕美)『'S Wonderful』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

Masanori Sasaji (key, syn), Naoki Kitajima, (key, p), Hirotaka Izumi, Masao Nakajima (key), Kazumasa Akiyama, Masahiro Ando, Kiyotsugu Amano (g), Mike Dunn, Romy Kinoshita, Tatsuhiko Hizawa, Toyoyuki Tanaka (b), Tohru Hasebe, Masaki Hiyama, Kenji Kishida (ds), Takeshi Ito, Kazuo Suzuki (sax), Kenji Nakazawa (tp), Michio Kagiwada (tb), Yasushi Kozuka (vln)。

それぞれの楽器で複数のミュージシャンが分担して、セッションに臨んでいる。パーソネルの名前を見渡してみて、馴染みのある名前があまり見当たらない。当時のテクニック優秀のスタジオ・ミュージシャン大集合といった雰囲気である。

じっくり見ると、マライアの笹路正徳がキーボードで、初期SHOGUNメンバーでパラシュートのマイク・ダンがベースで参加しているのが判る。他の多くは馴染みの無いメンバーだが、演奏内容は水準以上。なかなか充実したフュージョン・ジャズなサウンドを供給していて立派。
 

Hiromi-nakamuras-wonderful

 
美人ジャズシンガーの誉高い「仲村裕美」の1983年のセカンド盤。収録された曲を見渡せば、この盤は、フュージョン・ジャズなテイストの「ジャズ・スタンダード曲集」。なかなか良い選曲で、仲村裕美が、またまた素性の良いストレートな歌唱で、フュージョンなノリのジャズ・スタンダード曲を唄い上げていく。今回、聴き直してみて、彼女のボーカルってなかなかのもので、ついつい引き込まれてしまった。

1曲目のタイトル曲「'S Wonderful」は有名スタンダード曲。しかし、アレンジが優秀で、「どこかで聴いたことがある」感が無い。結構、新鮮なアレンジが施されていて、なかなか粋な「'S Wonderful」に仕上がっている。仲村裕美のボーカルの素性の良さがダイレクトに伝わってくる。

3曲目の「On The Sunny Side Of The Street」も有名スタンダード曲。4ビートのスインギーな名曲を、8ビートのフュージョン・ジャズにアレンジして、ポップなボーカルで、仲村裕美が明るくポジティヴに唄う。こんな「On The Sunny Side Of The Street」も良い感じだ。

6曲目の「Laughter In The Rain」は、二ール・セダカの「雨に微笑んで」のカバー。やはり、フュージョン風のアレンジがバッチリ効いている。

続く7曲目の「Unchained melody」は、ライチャス・ブラザーズのヴァージョンが、1990年に公開された映画「ゴースト/ニューヨークの幻」で起用された馴染みの曲。やはり、アレンジが良い。原曲のイメージを損なわず、原曲の甘さに流されない、意外と硬派なフュージョン・ジャズに仕立て上げている。

このLP盤の帯紙のキャッチが「太陽の匂いがするジャズ・ギャル、ナウなスタンダー集セカンド・アルバム」。思わず「赤面」もののキャッチに思わず苦笑い。まだ、そんな表現がまかり通る時代だったんですね。「ギャル」「ナウな」など、ほとんど死語ですが、このアルバムの内容は、今の耳にも十分に鑑賞に耐える、上質のフュージョン・ボーカル盤です。意外と「掘り出し物」でした。
 
 

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2024年8月23日 (金曜日)

ステーシーの酷暑の夏向き好盤

酷暑の8月。毎日の様に「熱中症警戒アラート」時々「熱中症特別警戒アラート」が出まくり、それも朝からのアラート発報なので、朝から終日「命を守るための引き篭もり」をせざるを得ない日々が続く。

エアコンをつけた部屋で、ブログを更新したり、天体写真の画像処理をしたり、録画を見たり、本を読んだりしているのだが、バックに流れる音楽は、やはり「ジャズ」。エアコンをつけていても、なんとなく、外からの熱気は感じるので、爽やかなイメージの「ボサノバ&サンバ・ジャズ」や「女性ボーカル」、「フュージョン・インスト」のアルバムを選ぶことが多い。

Stacey Kent『Summer Me, Winter Me』(写真左)。2019年5月6日(英国)、8月2日(NY)、12月12日(NY)の3セッションからの収録。ちなみにパーソネルは、Stacey Kent (vo), Jim Tomlinson (ts, fl, cl, g, perc, key), Art Hirahara,Graham Harvey (p), Tom Hubbard,Jeremy Brown (b), Anthony Pinciotti, Joshua Morrison (ds) に「弦楽四重奏」がバックに入っている。

米国出身、英国在住の「現代ジャズの歌姫」ステイシー・ケントの、コンサートで唄った「どのアルバムにも収録されていない曲」をピックアップして収録した企画盤。「その曲はどのアルバムに載っていますか?」という、コンサートの後に、よく訊かれる質問がきっかけとなって企画されたアルバムとのこと。なるほど、ファンからの「リクエスト」に応えた、ファン・サービス的な企画盤なのね。
 

Stacey-kentsummer-me-winter-me

 
選曲傾向がちょっとバラバラやなあ、と感じた理由は良く判った。それでも、ステイシー・ケントのキュートで少しコケティッシュなボーカルと、夫君のジム・トムリンソンのテナーに、音志向に一貫性があって、アルバムとしての統一感はしっかり担保されているところはさすが。

確かに、コンサートで聴いて、あの曲って、どのアルバムに入っていたのか、「もう一度聴きたい」と思わせる様な、曲が、ステイシー・ケントの歌唱が選曲されている。

ミッシェル・ルグランが作曲した映画 「 おもいでの夏 」 のテーマ曲 「Summer Song」 に、アラン&マリリン・バーグマン夫妻が後付けの歌詞を書いた、タイトル曲「Summer Me, Winter Me」、トム・ジョビンのボサノバ名曲 「Corcovado」 、映画「マイ・フェア・レディー」の印象的な挿入歌「Show Me」をはじめとして、全11曲、良い曲ばかりがズラリと並ぶ。

ジャズ界のおしどり夫婦、ステーシー・ケントとジム・トムリンソンの好盤。特にステーシー・ケントのキュートでチャーミングで、少しコケティッシュなボーカルがとても印象的。トムリンソンのテナーも伴奏上手。酷暑の夏に清涼感を呼び込む、好ボーカル盤です。
 
 

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2024年8月14日 (水曜日)

純ジャズ・ボーカルのベンソン

2ヶ月ほど前になるだろうか。ネットのジャズの新盤情報を覗いていて、こんな文章が目に飛び込んできた。

「ジャズ・ギタリストそしてシンガーのジョージ・ベンソンが全盛期に録音していながら、長きにわたり発表されてこなっかた幻のアルバムが遂に35年の時を経て現代の技術でリマスターを施した公式作品となって登場!」

ジョージ・ベンソンは「唄って弾きまくる」ギタリスト兼ボーカリストの、いわゆる「ジャズ二刀流」のレジェンド・ジャズマン。ギタリストの側面は、ウエス直系、ウエス後継の壮絶技巧なギターの弾き回しが特徴。ボーカリストの側面は、ブラコン志向のソウルフルな、クロスオーバー&フュージョン志向のボーカルが特徴。

常々、ベンソンの「ブラコン志向のソウルフルな、クロスオーバー&フュージョン志向のボーカル」も良いが、正統派な純ジャズ志向のボーカルを披露してくれないかなあ、と思っていた。

純ジャズ志向の正統派なボーカルは絶対にベンソンに合う。そして、歴代の純ジャズ志向ボーカリストのレジェンド達、フランク・シナトラやメル・トーメ、果てはナット・キング・コールらと肩を並べるだけの力量がベンソンに備わっていると睨んでいたからだ。

George Benson『Dreams Do Come True: When George Benson Meets Robert Farnon feat. The Robert Farnon Orchestra』(写真左)。1989年の制作。「唄って弾きまくるギタリスト兼ボーカリスト」のレジェンド、ジョージ・ベンソンとロバート・ファーノンが率いるオーケストラとのコラボレート。しかし、なぜか「お蔵入り」になって、長きにわたり未発表だった「発掘音源」。
 

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内容は、20世紀のポップ・スタンダードを取り上げたアルバム。有名スタンダード曲の「Autumn Leaves」「At Last」「My Romance」など、いわゆる、アメリカン・スタンダードな楽曲、そして、ビートルズの「Yesterday」やレオン・ラッセルの「A Song For You」、ポール・モーリア楽団の「Love Is Blue(恋はみずいろ)」といったポップ・クラシックを選曲している。

これらの楽曲が、ロバート・ファーノンのアレンジと、ファーノンと彼が率いるオーケストラの演奏によって、見事な「コンテンポラリーなジャズ・ボーカル曲」として、華麗な変身をとげている。

そして、ベンソンがこれらの楽曲を、ポップでジャジーな「正統派ボーカル」で、見事に唄い上げている。特に、ポップ・クラシックのリメイクが良い。しっかりとコンテンポラリーな純ジャズな雰囲気をしていて、ポップ・クラシックのスタンダード化に成功している。

ジャジーな雰囲気をさらに盛り上げてくれるのが、ベンソンのギター・ワーク。短いものではあるが、ベンソンのジャズ・ギターの弾きまくりが実に良いアクセントになっている。

オーケストラだけだと、どうしても甘さが前面に出て、耳にもたれるケースが多々あるのだが、このベンソンの正統派ジャズ・ギターの弾き回しが、そんなオーケストラの甘さを排除し、見事にジャジーな雰囲気をアルバム全体に振り撒いている。

「最近になってベンソンのアーカイヴで発見されるまで、長らく行方不明となってしまっていた音源がレコーディングから35年の時を経て、ついに正式にリリース」なのだが、どうして、行方不明のまま放置されたのかなあ。

しかし、発掘リリースされて良かった。この盤は、ベンソンのジャズ・ボーカルの名盤として評価して良い。素直に発掘リリースされたこと喜びたい。
 
 

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2024年8月12日 (月曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その35

夏はボサノバ・ジャズが良い。特に今年の様な猛暑日の連続だと、まず「熱いジャズ」は絶対に避けたい。フリーやスピリチュアルな「激しいジャズ」も避けたい。そうすると、ほとんどの純ジャズ、メインストリーム系ジャズは避けたくなる。そこで活躍するのが「ボサノバ・ジャズ」。

Astrud Gilberto『Shadow Of Your Smile』(写真左)。邦題『いそしぎ』。1964年10月から、1965年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Astrud Gilberto (vo), Joao Donato, Claus Ogerman, Don Sebesky (arr) with Jazz Orchestra。

「ボサノバの歌姫」アストラッド・ジルベルトが、ジョアン・ドナート、クラウス・オガーマン、ドン・セベスキーの名編曲家たちの素晴らしいアレンジとジャズオケをバックに唄い上げた、セカンド・リーダー作。

収録された曲は、有名なジャズ・スタンダード曲とボサノバ曲。アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルで唄うジャズ・スタンダード曲は、それまでに無い、独特の魅力を振り撒く。ボサノバ曲は言うまでも無い。アストラッドのボーカルの個性全開の秀作である。
 

Astrud-gilbertoshadow-of-your-smile

 
リズム&ビートが全ての曲において、ボサノバ・ジャズのリズム&ビートを踏襲していて、演奏の基本は「ジャズ」。しかし、演奏全体の雰囲気は「ボサノバ」。切れ味の良い、爽快なボサノバ・ジャズのリズム&ビートがしっかりと効いていて、アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルとの対比が「粋」。

しかも、このボサノバ・ジャズのリズム&ビートの全面採用によって、選曲が有名なジャズ・スタンダード曲とボサノバ曲の混合でありながら、アルバム全体に統一感がある。

アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルを際立たせるのに、ボサノバ・ジャズ基調のアレンジが良い。ドナート、オガーマン、セベスキーのアレンジ、三者三様のアレンジではあるが、共通しているのは、アストラッドのボーカルの個性を際立たせること。アストラッドの個性を際立たせるボサノバ・ジャズなアレンジが実に見事。

冒頭の「The Shadow of Your Smile」や、4曲目の「Fly Me to the Moon」の様な有名スタンダード曲における「ボサノバ・ジャズなアレンジ」が素晴らしい。間に、ボサノバ曲「Manhã de Carnaval」が入ってきても、全く違和感を感じない。この盤は、アストラッドの個性を際立たせる、ボサノバ・ジャズ基調のアレンジの勝利である。
 
 

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夏はボサノバ・ジャズ・その34

ボサノバ・ジャズの「歌姫」は、アストラッド・ジルベルト(Astrud Gilberto)。アストラッドは、1940年3月生まれ。つい昨年、2023年6月に83歳で亡くなった。1959年にジョアン・ジルベルトと結婚、ブラジル国内での情勢不安、軍事政権による圧力などもあって、1963年にアメリカ合衆国に移住。

アルバム『ゲッツ/ジルベルト』に参加し、アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルで唄う「イパネマの娘」はヒットし、グラミー賞の最優秀レコード賞と最優秀女性ボーカル賞ノミネートを獲得している。1964年にジョアン・ジルベルトと別居、1965年に『The Astrud Gilberto Album』でソロ・デビュー。以降、米国での「ボサノバ歌手」としての地位を確立している。

『The Astrud Gilberto Album』。1965年の作品。ちなみにパーソネルは、Astrud Gilberto (vo), Antônio Carlos Jobim (g, vo), Joe Mondragon (b), Bud Shank (as, fl), João Donato (p), Stu Williamson (tp), Milt Bernhart (tb), with Guildhall String Ensemble。ボサノバ分野と米西海岸のジャズマンがメインの編成。西海岸ジャズの優れた編曲者、マーティ・ぺイチによるアレンジ。
 

The-astrud-gilberto-album

 
ストリングス・アンサンブルの入った、ドラムレスのボサノバ・ジャズ向けのバックバンド。そんなイージーリスニング志向のボサノバ・ジャズ向けアレンジをバックに、アストラッドが唄う。このバックバンドの編成とアレンジが、アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルにバッチリ合っていて、アストラッドのボーカルが映えに映える。

アルバムの内容としては、ジョビンなどのボサノバ系ミュージシャンの伴奏が効いていて、英語の歌詞ではあるが、本格的なボサノバ曲集になっている。もちろん、バックのリズム&ビートは「ジャズ」志向で、本格的なボサノバ演奏では無い。あくまで、ボサノバ・ジャズの範疇での優秀盤である。実際聴いてみると判るが、本格的なボサノバは、リズム&ビートがもっと「ボサノバ独特」なものになっている。

癒し系のボサノバ・ジャズ・ボーカル盤。これがジャズか、と訝しく思われるジャズ者の方々もおられるだろう。が、フュージョンやスムースが「ジャズ」として成立していること、そして、この盤のバックバンドのリズム&ビートは「ジャズ」であること。そういう観点から、このアストラッドの初ソロ・アルバムは「ボサノバ・ジャズ」の範疇と解釈して差し支えないだろう。
 
 

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2024年7月17日 (水曜日)

邦題通り「アメリカン・ポップ」

『エクステンションズ』『モダン・パラダイス(邦題)』とジェイ・グレイドン・プロデュースの優れた内容の作品が2作。ジャズ名曲あり、ポップあり、アカペラあり、とアルバムの完成度が非常に高く、ともにグラミー賞受賞した。さて、その次はどの様な展開になるのか、興味津々の1983年。マントラは「ポップ志向」の色濃い、R&Bをも取り込んだ傑作をリリースしてきた。

The Manhattan Transfer『Bodies And Souls』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、The Manhattan Transfer = Tim Hauser, Cheryl Bentyne, Alan Paul, Janis Siegel。マンハッタン・トランスファーの7枚目のスタジオ録音アルバム。邦題は『アメリカン・ポップ』。

このアルバムは、マントラのアルバムとして、R&Bチャートにランクインしている。スティーヴィー・ワンダーによる個性的なハーモニカ・ソロがフィーチャーされた「Spice of Life」は、R&Bチャートで32位、ポップ・チャートで40位とスマッシュ・ヒットとなった。
 

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アニタ・ベイカーが後にカヴァーした事でも有名な「Mystery」、当時サントリーのTVCMでマントラ自身も登場した「American Pop」、グラミー賞で、 Best Jazz Vocal Performance賞をとった「Why Not !」、1982年に亡くなったピアニスト、セロニアス・モンクへのトリビュート「The Night That Monk Returned To Heaven(邦題:モンクに捧ぐ夜)」と佳曲揃い。

マントラのボーカル技術は凄みすら感じる。ハーモニーも素晴らしい。ポップスからジャズ、R&Bまで、幅広く完璧に対応する。このアルバムでのマントラの唄いっぷりは、ピークに達していたのではないか。完成度の高いボーカル・コーラスだからこそ、「ポップ志向」の色濃い、R&Bをも取り込んだボーカルを気軽にリラックスして聴くことができるのだろう。

録音がデジタル黎明期のものなので、音のエッジが立ちすぎて、キンキンしているのが玉に瑕。このマントラ盤はCDよりは、LPで聴いた方がしっくりする様な気がする。マントラが一番ポップに振れた内容で、純粋なジャズ・コーラスとして聴くにはポップ色が強いかもしれないが、フュージョンなジャズ・コーラスとして聴くには絶対に「アリ」。マントラの名盤の一枚でしょう。
 
 

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2024年6月27日 (木曜日)

スポルディングとハーシュの邂逅

「2023年度 Jazz Life グランプリ」も貴重な情報源。この月刊誌 Jazz Life のグランプリ記事も、雑誌ジャズ批評の「オーディオ・ディスク大賞」と並んで、昨年度のジャズの新盤の振り返りになり、落穂拾いにもなる。Jazz Life のグランプリも、ジャズ批評のディスク大賞も、コマーシャルな裏の事情など関係なく、評論家の方々やショップの店員さんが、忌憚ないところでアルバムを選出しているようなので、本当に参考になる。

Fred Hersch & Esperanza Spalding 『Alive at the Village Vanguard』(写真左)。2018年10月19–21日、NYの老舗ライヴハウス「Village Vanguard」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Fred Hersch (p), Esperanza Spalding (vo)。

その独特の奏法と創造のアイデアのユニークさで「ピアノの詩人」などと評され、1980年代以降のピアニストの中で、最もエヴァンスイズムを受け継いだと言われる。耽美的でリリカルなピアノの最右翼の一人「フレッド・ハーシュ」と、稀有な、唯一無二な若手女性ベーシスト&ボーカリストの「エスペランザ・スポルディング」のデュオ演奏。

ハーシュにとってビレバガでのライヴ録音は今回で6度目らしい。そして、ベーシスト&ボーカリストのスポルディングは、潔くヴォーカルのみの参加。女性ベーシストとして、かなりユニークな個性の持ち主なので、スポルディングのベースが聞けないのは残念だが、ボーカルに専念出来る分、このデュオ・ライブ盤でのスポルディングのボーカルは、さらに迫力と捻じ曲がり度合いが増しており、現代の新しい、最新の女性ボーカルというか、ジャズ・ボーカルの新しい響きが実に芳しい。
 

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スポルディングのボーカルはこれまでに無かったユニークなもの。その雰囲気は「枠に囚われない」「野趣溢れる」「アフリカン・ネイティヴな」ワールド・ミュージック志向のボーカル。その表現の自由度は高く、伝統的な女性ボーカルをこよなく愛する方々からすると、これは「由々しき」女性ボーカルなんやろうな、なんて思ったりする。とにかく「自由」、そして、時折、織り交ぜられる「小粋なワード」が、スポルディングのエンタテインメント性を引き立てる。

そんなスポルディングのボーカルに、寄り添うが如く、絡むが如く、ハーシュのピアノが疾走する。現代のジャズ・ピアニストの中でも「耽美的でリリカルなピアノの最右翼」とされるハーシュのピアノであるが、耽美的どころか、アグレッシヴで躍動感溢れるバップなピアノで、スポルディングのボーカルの伴奏をガンガンやっている。恐らく、スポルディングの自由闊達なボーカルに合わせた、ハーシュの職人肌的パフォーマンスなんだろう。

しかし、スポルディングのボーカルとハーシュのピアノが、こんなに相性が良いと思わなかった。最初は「水と油」かなあ、と思ったのだが、聴いてみて、あらビックリ。スポルディングのボーカルは従来からの個性的なものなんだが、その伴奏に回ったハーシュのピアノが半端ない。抒情的にしっとり展開したりするところあるが、基本的にはアグレッシヴで躍動感溢れるバップなピアノ。ハーシュの今までとは違った側面を聴くこと出来て、感心することしきり、である。

スポルディングの唯一無二の「今までにない」新しいボーカルと、ハーシュの「新しい引き出し」を聴くかの如き、スインギーでアグレッシヴなバップな弾き回し。一期一会の、奇跡のようなデュオのライヴ音源。現代の、今のジャズのトピック的アルバムの成果として、高く評価されるべき好盤である。
 
 

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2024年6月 6日 (木曜日)

マントラの隠れ名盤『Pastiche』

1973年の再結成後、順調に内容のあるアルバムを2枚、リリースしてきた、マンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)。そろそろ「マントラの音志向」を確立するタイミングでもあった。

The Manhattan Transfer『Pastiche』(写真左)。1976年12月から1977年9月の録音。1978年のリリース。ちなみにパーソネルは、Tim Hauser, Laurel Massé, Alan Paul, Janis Siegel (vo) 以上が「The Manhattan Transfer」。

前作、前々作同様、バックのバンドには、当時のクロスオーバー&フュージョン畑の有名ジャズマンから、ハイテクニックなスタジオ・ミュージシャンまで、多数の面子が参加して、マントラのコーラスをバックアップしている。特に、この盤では、ジャジーな音志向を強化していて、バックに豪華なビッグバンドが控えている。

ビッグバンドをバックにした、ジャジーな4人組コーラス。マントラ独特のコーラス・ワークを引き立たせるビッグバンド・アレンジが見事。ややもすれば、コーラス・ワークの邪魔になりそうな、ビッグバンドの重厚なユニゾン&ハーモニーなんだが、この盤でのビッグバンドのユニゾン&ハーモニーは重厚かつダイナミックだが、ユニゾンは効果的に抑制を効かせ、ハーモニーはコーラスの邪魔にならない、逆にコーラスを引き立たせる様な音の重ね方が上手い。
 

The-manhattan-transferpastiche

 
このアルバムを聴いていて、マントラの音作りって、往年の「ウエストコースト・ジャズ」がベースにあるのかな、と感じた。いわゆる、小粋なアレンジを施し、ハイテクニックだがお洒落に抑制を効かせて、じっくり「聴かせるジャズ」。マントラのアルバムの根底には、この「聴かせる」というキーワードがしっかりと「ある」。

まず、どの曲でも、マントラのコーラス・ワークのアレンジが見事。マントラならではのユニゾン&ハーモニーの個性を外さすに、原曲のニュアンスをしっかりと踏襲し、時に上回る。どこから聴いても「マントラ」を感じるコーラス・アレンジは見事という他ない。

選曲も良い。後にマントラの代表曲になる、ジミー・ジェフリー作の「Four Brothers」、エリントン作「In a Mellow Tone」、ヴィッド・バトー作「Walk in Love」。ルパート・ホルムズ作の「Who, What, When, Where, Why」。個人的には、ゴフィン=ゴールドバーグの「It's Not the Spotlight」。どの曲もアレンジが秀逸で、マントラのコーラス・ワークが映える。というか、アレンジが秀逸であれば、マントラのコーラス・ワークが映える曲を選んでいる様に見える。

この盤もマントラの数あるアルバムの中で、そのタイトルが特別に上がるアルバムでは無い。しかし、このジャズ・スタンダード曲からポップスの佳曲までを、ジャジーでライトなフュージョン・ジャズ風のアレンジでカヴァーした内容は、マントラのコーラス・アレンジの優秀さと演奏全体のアレンジの見事さを再認識させてくれる。

マントラの音志向が確立された感のある「マントラの隠れ名盤」だと僕は思う。
 
 

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