スピリチュアル+ブラジリアン
ブルーノートの4300番台のアルバムらしいアルバムである。ファンクネス漂うシンプルで、どこか趣味の良い「地味」なバップ・ピアニストだったデューク・ピアソンが、突如、ボサノヴァとコーラス・アンサンブルが融合を融合した、摩訶不思議な、ポップでスピリチュアルなリーダー作をリリースしている。
Duke Pearson『How Insensitive』(写真左)。1969年4月11,14日、5月5日の録音。ブルーノートの4344番。ちなみにパーソネルは以下の通り。ピアニストであり、プロデューサーとして後期ブルーノートを支えたピアソンが、スピリチュアル・ジャズとブラジリアン・ジャズへの傾倒を反映させた作品。
4月11,14日の録音 (tracks 1 & 3–5) は、 Duke Pearson (p, el-p, arr), Al Gafa (g), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds), Airto Moreira (perc), Andy Bey (lead vo), The New York Group Singers' Big Band。
5月5日の録音 (tracks 7, 9 & 10)は、Duke Pearson (p, el-p, arr), Bebeto Jose Souza (b), Dorio Ferreira (g, perc), Flora Purim (lead vo),
初リリース時、LP時代の収録曲は、収録曲は、A面がコーラスを主体としたスピリチュアル・ジャズ、B面がブラジリアン・ジャズという構成に分かれている。どういう意図でこういう収録形態になったのか、思わず首を捻ってしまう。
4月11,14日の録音 (tracks 1 & 3–5) では、17名の男女混声合唱団(ニューヨーク・グループ・シンガーズ・ビッグ・バンド)を起用し、幻想的で透明感のある、スピリチュアルなサウンドを作り上げている。
冒頭の「Stella by Starlight」がその最たる例で、出だしは、ファンクネス漂うシンプルで、どこか趣味の良い「地味」なバップ・ピアノソロが、ハードップ時代の良き雰囲気を醸し出すが、いきなり17名の男女混声合唱団のコーラスが出てきて、はっきり言って「戸惑う」。バックのピアソンのバップ・ピアノがとても良いフレーズを叩き出しているので余計に、である。
この「17名の男女混声合唱団」のコーラスが、ファンキー&ソウルフルではあるが、コーラスの雰囲気は「ポップ」。上質でポップな混声合唱には、どこか敬虔な響きが漂って、ところどころゴスペルチックで、まるでポップな賛美歌を聴いている様な面持ち。しかし、この「17名の男女混声合唱団」のコーラスの必然性が全く理解できない。
ポップなゴスペルチックな男女混成合唱がメインなのか、リーダーのピアソンを始めとする純ジャズにポップなゴスペルチックな男女混成合唱が彩りを添えているのか、聴き方の力点の置き方が難しいアルバムになっている。賛美歌的な響き、ゴスペルチックな響きを前面のに押し出し、スピリチュアル・ジャズの側面を前面に押し出そうとしているのは理解出来るのだが。
5月5日の録音 (tracks 7, 9 & 10)では、7曲目の「Sandalia Dela」のコッテコテのボサノバ・ジャズには、更に「戸惑う」。フローラ・プリムのボサノバチックな歌唱が前面に押し出されている。8曲目「My Love Waits (O Meu Amor Espera)」以降「Tears (Razao De Viva)」「Lamento」もゴスペル・ジャズ。
ピアソンのファンクネス漂うシンプルで、どこか趣味の良い「地味」なバップ・ピアノをメインとするジャジーな演奏に、ポップでファンキーでゴスペルチックな「17名の男女混声合唱団」のコーラスが絡む、意外とスピリチュアル・ジャズ的側面は軽くてポップな、摩訶不思議な雰囲気のスピリチュアル&ボサノバ・ジャズとして良いのでは、と思う。ピアソンのピアノだけ取りあげれば、これはこれで申し分無いんだけどなあ。
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