2026年6月 2日 (火曜日)

極上ソウル・ジャズ・パーティー

米国のジャズ・オルガン奏者ルーベン・ウィルソン(Reuben Wilson)の、ソウルフルでファンキーなジャズ・ファンク盤である。全体の音的には、ソウル・ジャズというよりも、軽くアーシーなリズム&ビートをメインにしたジャズ・ロック&ジャス・ファンクという雰囲気で、1960年代のソウル・ジャズとは、グルーヴが縦ノリなのが特徴。

Reuben Wilson『A Groovy Situation』(写真左)。1970年9月18 & 25日、Van Gelder Studioでの録音。ブルーノートの4365番。ちなみにパーソネルは、Reuben Wilson (org), Earl Turbinton (as), Eddie Diehl (g), Harold White (ds)。滑らかでファンキーなグルーヴを湛えた、楽しいクロスオーバー・ファンキーなアルバムである。

ルーベン・ウィルソン自身、前作『Blue Mode』(1969年)の硬派な路線から、本作では意図的にポップで親しみやすい「コマーシャル・ルート」へと舵を切った、ということだろう。ジャズ者(ジャズ・マニア)に対してだけでは無く、幅広いリスナー層にアプローチを試みた、キャッチーな作品として評価できる。
 

Reuben-wilsona-groovy-situation  

 
ポップス&ソウルのカバーが中心で、当時のヒット曲に対して、大胆にジャズ・ファンクなアレンジを充てている。乾いた明るい粘り気のあるソウルフルな、そしてR&Bな音色と、タイトなリズム・セクションが融合して、このアレンジに乗って、滑らかでファンキーなグルーヴを醸し出している。ジャズ者御用達の濃厚なグルーヴではない、軽快で明るい傾向のグルーヴである。

4曲目「A Groovy Situation」は、メル&ティムの有名なシカゴ・ソウル名曲をカバーしたタイトル曲。5曲目「Happy Together」は、ポップロックなバンド、ザ・タートルズの代表曲をソウルフルなジャズ・ファンクへ大胆カバー。6曲目「Signed, Sealed, Delivered I'm Yours」は、スティーヴィー・ワンダーの大ヒット曲をジャズ・ファンクにアレンジ。

レーベル全体がジャズ・ファンクやソウル・ジャズ、そして商業的でキャッチーな路線へシフトしていく過渡期を象徴する、ファンクやR&B、ロックの要素を取り入れたサウンドが全盛の中での、ブルーノートの「コマーシャル路線」への挑戦の音である。難しいことを考えずに、純粋に、滑らかでファンキーなグルーヴを楽しむ盤だろう。ながら聴きに最適な好盤である。
 
 

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2026年6月 1日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・324

1960年代終盤、大手レコード会社の傘下に入ったブルーノートは、いわゆる、売らんが為の「明らかに聴き手に迎合した、売れ筋を意識した、ライトで聴き易いジャズ」の制作に舵を切る。イージーリスニング志向の「ファンキー&ソウル・ジャズ」、そして「軽快で優しいジャズ・ファンク」なアルバムを制作する。そんな中で、時折、メインストリーム志向のポスト・バップなアルバムも作ったりしていたけど。

Bobby Hutcherson Featuring Harold Land『San Francisco』(写真左)。1970年7月15日、ロサンゼルスの「United Artists Studios」での録音。ブルーノートの4362番。ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib, marimba, perc), Harold Land (ts fl, oboe), Joe Sample (p, el-p), John Williams (b, el-b), Mickey Roker (ds)。

1970年代に入って、ブルーノートのアルバム制作の方向性が変わっていく。大衆向けの「売れ筋を意識したライトで聴き易いジャズ」は控えめに、当時の音楽のトレンドであった、サイケデリック、スペーシー、アーシーな、ジャズ・ロック&ジャズ・ファンクなアルバムの制作に方向転換する。このアルバムはその最初の一枚といっていいかもしれない。

サイケデリック、スペーシー、アーシーな音要素を取り入れたことにより、単なるジャズ・ファンクに留まらない、スピリチュアルな深みを獲得している。その深みの中で展開される、限りなく自由度の高いモーダルなインプロビゼーションが、純ジャズっぽく、メインストリーム志向に映えに映える。
 

Bobby-hutcherson-featuring-harold-landsa

 
冒頭「Goin' Down South」では、アーシーでファンキーな演奏が展開される。まるで、1970年代前半のキース・ジャレットの様な、ゲイリー・バートンの様な、アーシーでファンキーな音世界。この演奏に「売らんが為」のバイアスは感じ無い。ハッチャーソンのヴァイブ、ハロルド・ランドのテナーのアドリブ展開はモードそのもの。アーシーなリズム&ビートを敬遠してはならない。1970年代を台憑依する、純ジャズの音世界の一つである。

2曲目の「Prints Tie」では、がらっと変わって、サイケデリックで、妖艶で耽美的、そして、スペーシーな「ニュー・ジャズ」な演奏が展開される。まるで、1970年代のECMレーベルの様な音世界。現代音楽的要素も見え隠れし、リズム&ビートの取り方は、あきらかにニュー・ジャズ志向。とても米国ジャズの音世界とは思えない、絶妙な名演である。

この冒頭からの2曲が、このアルバムの全体の雰囲気を決定付けている。1970年代の新しいジャズの音世界がこの盤に展開されている。ジャズ・レーベルの老舗、ブルーノート・レーベルの面目躍如。クルセイダーズ(当時はジャズ・クルセイダーズ)のメンバーとして知られるジョー・サンプルのエレピと、フェンダー・エレベースの使い手、ジョン・ウィリアムスのエレベのグルーヴが明らかに「新しい」。

この「新しい」リズム&ビートのグルーヴに乗って、ハッチャーソンのヴァイブと、ランドのサックスが飛翔し疾走する。モーダルに、限りなく自由に、時にフリーに展開するインタープレイは見事という他は無い。1970年代ジャズの「隠れ名盤」である。
 
 

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2026年5月29日 (金曜日)

サイケなジャズ・ファンク盤です

マクダフが1969年から1971年にかけてブルーノートに残した4枚のアルバムのうち、最後の作品。ソウル・ジャズ、ジャズ・ファンク、そしてサイケデリック・ジャズな要素がほどよく融合した、実験的な演奏内容がユニーク。そして、更にユニークなのが、楽曲提供とアレンジを、ハードバップ時代の変わり種ジャズマンの一人、チューバ奏者のレイ・ドレイパーが担当している。

Brother Jack McDuff『Who Knows What Tomorrow's Gonna Bring』(写真左)。1970年12月1–3日、ブルーノートの4358番。ちなみにパーソネルは、Brother Jack McDuff (org), Randy Brecker, Olu Dara (tp), Dick Griffin, John Pierson (tb), Paul Griffin (p), Joe Beck (g), Tony Levin (el-b), Donald McDonald (ds), Mike Mainieri (perc), Ray Draper (perc, vo, tuba, arr)。

全編に渡って、ポップ色豊かな、ライトで明るいジャズ・ファンクが展開され、その中で、怪しげなサイケデリック・ジャズな要素が忍ばされていたり、オルガンの弾きっぷりは、ジャズというよりは、ロックな響きと乾いた音色が大半を占めていたり、一風変わったファンクネスを伴いながら、スペーシーなポップ・ロックな音世界がユニーク。
 

Brother-jack-mcduffwho-knows-what-tomorr
 
ジョー・ベックのエレギは、R&B志向+サイケデリック色なエレギで、ジャズ・ファンクというよりは、ファンク・ロック風の乾いたオフビートの粘らないファンクネスを前提としたエレギで、これはこれで、やっぱりユニーク。後にピーター・ガブリエル・バンドやキング・クリムゾン等で活動するトニー・レヴィンが、ジャズ・ファンクなベース・フレーズを弾きまくっているのもユニーク。

楽器の定位が浮遊するような不思議な音響ミックスがユニークで、従来のコッテコテなソウル・ジャズ(コテコテのオルガン+サックス+ギター)とは一線を画する。この浮遊感がサイケデリックな雰囲気に直結している。バックのサウンドには、サックスなどの木管楽器を一切排除し、トランペット、トロンボーン、チューバという金管楽器(ブラス)のみを配置して、アルバム全体に独特の「泥臭さ」と「重量感」を与えている。

なんか聴いていて、どこか「隅に置けない」好盤。従来のコッテコテなソウル・ジャズではない、サイケデリックな、ポップでロックで、どこか明るいジャズ・ファンクという雰囲気がとにかくユニーク。特にラストの「Wank's Thang」は、そんな雰囲気の代表的演奏だと感じていて、どこかディスコ調が漂う、マイルドでメロウなグルーヴが芳しい、マクダフのどこか哀愁あるオルガン・プレイが心地良い。
 
 

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2026年5月17日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・322

テリエ・リピダルのパフォーマンスの個性濃厚な音世界が広がる。北欧の冷涼で霧がかった空気感を体現したような、独特のサスティーンの響きと浮遊感を持つクロスオーバー&フュージョン・ジャズ。ECMレーベルの音独特の深いエコーのかかったギターの響き。北欧流ポスト・エレ・マイルス的な内容。クロスオーバー&フュージョン志向のエレ・ジャズの名盤である。

Terje Rypdal『Waves』(写真左)。1977年9月、オスロの「Talent Studio」での録音。ECMの1110番。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (el-g, syn, RMI keyboard computer), Palle Mikkelborg (tp, tack piano, RMI keyboard computer, ring modulator), Sveinung Hovensjø (6&4 string el-b), Jon Christensen (ds, perc)。ECMレーベルから発表した通算7枚目のスタジオ・アルバムである。

リピダルの音の美学がこのアルバムに結実している。ボリューム・ペダルを駆使したエコーの効いたギター・サウンドが実に幻想的に響き渡る。トランペットをはじめ様々な楽器を操るパレ・ミッケルボルグが参加が、リピダルの音世界に素晴らしい彩りを添えている。
 

Terje-rypdalwaves

 
ミッケルボルグが操るシンセサイザーや管楽器が重厚かつ幻想的なレイヤーを作り上げている。リング・モジュレーターをはじめとするエフェクターを駆使したエレクトリックな管楽器サウンドが、リピダルのギター・サウンドと共鳴して、幻想的な音世界を濃厚なものにしている。その音世界のボトムを支える、スヴェイヌン・ホヴェンショのうねる変則ベースラインの存在もこの盤のユニーク性に拍車をかける。

当時としては先進的だったアナログなリズムボックス(リズムマシン)のチープで高速なパターンが導入されているのが特徴的。そこに、ヨン・クリステンセンの生々しく繊細なドラムが絡み合うという、極めてユニークなポリリズム的アプローチが試みられている。これが今までのジャズっぽく無いリズム&ビートの正体。これも、リピダル独特の音世界をより幻想的にしている。

シンセサイザーによるアンビエント&ニューエイジ的な静寂と、ロックのダイナミズムをシームレスに融合させる独自のスタイルを確立させている。音の雰囲気は、ECMレーベルにおける「欧州プログレッシヴ・ロック」とでも形容しようか。ECMレーベルにはちょっとばかし似使わないジャズ・ロック&エレ・ジャズな音世界ではある。ECMの総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーって、もしかしたら「プログレ・ファン」なのかもしれない(笑)。
 
 

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2026年5月10日 (日曜日)

ジャズ・ファンクを走るファレル

CTIレーベルに来て、正統派クロスオーバー・ジャズなアルバムを制作してきたジョー・ファレル。よりファンキーな路線へと舵を切ったCTI第4作目が『Penny Arcade』。そして、CTI第5作目である。より骨太でロック色の強いフュージョン・サウンドへの傾倒が色濃い、ジャズ・ロック/ジャズ・ファンクの好盤である。

Joe Farrell『Upon This Rock』(写真左)。1973年10月, 1974年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farrell (ts, ss, fl), Joe Beck (g), Herb Bushler (b), Jimmy Madison (ds)。ゲストに、Steve Gadd (ds, on "I Won't Be Back"), Herbie Hancock (p, on "I Won't Be Back"), Don Alias (conga, on "I Won't Be Back")。全4曲で構成され、ジャズの即興性とロックのダイナミズムが高度に融合したクロスオーバー・ジャズである。

1作目"Penny Arcade" 、2作目 "Upon This Rock" 、3作目 "Canned Funk" の三作品は、ギターにジョー・ベックを入れてかなりファンク色の強い演奏をしている。その2作目である。この作品の実質的な「共同リーダー」とも称されるギタリスト、ジョー・ベックの存在感が非常に大きいのが特徴。ジョー・ベックのファンキー・エレギを抜きにして、この盤は語れない。
 

Joe-farrellupon-this-rock

 
1曲目「Weathervane」は、挨拶代わりの1曲。ファレルとジョー・ベックによる高速のユニゾン・フレーズが印象的な、マハヴィシュヌ・オーケストラを彷彿とさせる緊張感あふれるジャズ・ロック。3曲目のタイトル曲「Upon This Rock」が、強烈な、このアルバムのハイライト。強靱なドラム・ブレイクで幕が開き、ファレルの力強いテナー・サックスとジョー・ベックの歪んだギターのユニゾン&インタープレイが凄まじい。

2曲目の「I Won't Be Back」だけが、他の3曲と雰囲気、音が違う。それもそのはず、この曲については、前作『Penny Arcade』と同じセッションで録音された曲。ハービー・ハンコックとスティーヴ・ガッドが参加しており、ラテン調の軽快なリズムに乗せた優雅なファレルのフルート・ソロが楽しめる。後のフュージョン・サウンドを先取りした様な、アーバンでメロウでファンキーなサウンドは意外と癖になる。

ラストの「Seven Seas」は、ジャズ・ファンク・チューン。ファレルのテナーもベックのエレギも、どっぷりジャズ・ファンク。ファンキーな路線へと舵を切ったファレルの最終到達点の様な演奏。全4曲を聴いて、ファレルの目指したもの、それは、ジャズとロックの融合によるクロスーオーバーなジャズ・ファンク。これはこれで、ちゃんとした成果を上げていると僕は思う。
 
 

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2026年5月 9日 (土曜日)

ジャズ・ファンクのファレルです

チック・コリア率いる第1期リターン・トゥ・フォーエヴァーのメンバーとしても知られるサックス&フルート奏者のジョー・ファレル。それまで、CTIレーベルに来て、正統派クロスオーバー・ジャズなアルバムを制作してきたが、この盤は、よりファンキーな路線へと舵を切ったCTI第4作目。

Joe Farrell『Penny Arcade』(写真左)。1973年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farrell (ts, ss, fl, piccolo), Joe Beck (g), Herbie Hancock (p), Herb Bushler (b), Steve Gadd (ds), Don Alias (conga)。ジョー・ファレルが伝統的なジャズからジャズ・ファンク〜ジャズ・ロックへと転換した、エポックメイキングな作品。

冒頭のタイトル曲「Penny Arcade」から、ジャズ・ファンク全開。ジョー・ベックのギターリフが完璧にジャズ・ファンクしていて、演奏全体にファンクネス蔓延。続くスティーヴィー・ワンダーのカバー曲「Too High」は、もともと曲自体が、R&Bの名曲なんで、冒頭から、どっぷりジャズ・ファンク。
 

Joe-farrellpenny-arcade

 
13分を超える白熱のジャム。ファレルはソプラノ・サックスで、複雑なメロディを自在に吹きこなし、とてもエモーショナルな吹き回し。そのファレルのソプラノ・サックスに、ハービー・ハンコックが、原曲のクラビネットをエレピ(フェンダー・ローズ)に置き換え、うねるようなソロで絡みに絡む。このスティーヴィー曲のカバーでのハンコックのエレピのソロは絶品である。

続く「Hurricane Jane」では、7/4拍子という変拍子ながら、スティーヴ・ガッドの強烈なドラミングがエグい。そこに、ハンコックのエレピが、ジャズ・ファンクよろしく、どっぷりファンキーに絡んで、その上でファレルがファンクにモーダルにサックスを吹きまくる。この雰囲気って、どこか、ハンコックのジャズ・ファンクの歴史的名盤『Head Hunters』を想起する。

ラス前の「Cloud Cream」と。ラストの「Geo Blue」は、アーバンでメロウな雰囲気のムーディーな演奏で、ジャズ・ファンクというよりは、これこそフュージョン・ジャズである。最後の2曲が、それまでの圧倒的な「ジャズ・ファンク大会」な雰囲気をクールダウンさせているところで、ちょっと損をしている。それでも、この盤、当時のジャズ・ファンクの好盤としてお勧めである。
 
 

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2026年4月 2日 (木曜日)

英国録音のジャック・マクダフ

ブルノートの4300番台のアルバムを聴き直している。ブルーノートの4300番台は、録音年月として、1968年9月から1972年1月まで。ジャズがロックの台頭に押されて、大衆音楽の枠から追い出され始めた時代。

あくまで、メインストリームなジャズを守るところと、大衆音楽として聴衆に迎合した、ポップなクロスオーバー・ジャズが入り交じっている、聴いていて興味深いカタログである。まだ、当ブログで記事化していないアルバムも結構あるみたいで、組織的に粛々と聴き直している最中。

Brother Jack McDuff『To Seek A New Home』(写真左)。1970年3月23日、ロンドンでの録音。ブルーノートの4348番。ちなみにパーソネルは、以下の通り。ジャック・マクダフのオルガンがリーダー、ブラス・セクションにハープ入りという、大所帯の編成。動機は分からぬが、この盤はロンドン録音。英国のミュージシャンが中心になって、バックを務めている。

Brother Jack McDuff (org, p), Martin Drover, Terry Noonan, Bud Parks (tp), John Bennett, Adrian Drover (tb), David Statham, Willie Watson (French horn), Norman Leppard, Dick Morrissey, Jack Whitford, Dave Willis (reeds), Typhena Partridge (harp), J.J. Jackson (p, perc), Chris Parren (el-p), Terry Smith (g), Peter Chapman, Larry Steele (el-b), Trevor Armstrong, Phil Leaford (ds), Debrah Long, Jerry Long (vo)。
 

Brother-jack-mcduffto-seek-a-new-home

 
米国のジャズ・オルガン奏者であるジャック・マクダフが英国に渡り、ロンドンで現地のミュージシャンたちと共に録音した異色作。従来のソウル・ジャズの範疇を外れ、クロスオーバー志向のジャズ・ロックなサウンドをメインに、サイケデリックな要素や重厚なファンク・グルーヴを融合した、当時としては意外と挑戦的でポップなサウンド。

全体的な雰囲気は、ポップなジャズ・ファンク&ジャズ・ロック盤。英国録音ということもあるんだろうか、どこか「プログレッシヴ・ロック」な音の響きも混ざっている、不思議な雰囲気のオルガン・ジャズ盤である。マクダフのオルガンも、ジャズ・オルガン独特のファンクネスを薄めながら、ファンク&ロック・ビートに乗った、ポップなオルガンを弾きまくっている。

定番のドラム・ブレイク入り、ディック・モリシーのフルートが格好良い、強力なジャズ・ファンク・クラシックの「Hunk O' Funk」がやはり聴きもの。グルーヴ感満載で、テンション・マックスな演奏が格好良い「Yellow Wednesday」も良い感じ。タイトルの通り「神秘的な」、どこか静的サイケデリックな、独特の雰囲気を持った「Mystic John」も興味を引く内容。

この盤、CD化やリイシューが途絶えていて、なかなか聴くことが出来なかったが、最近、ネットで検索すると、LPから起こした音源でフルアルバムを聴くことが出来るみたい。便利な世の中になったものだ。
 
 

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2026年2月25日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・314

この盤は、以前から有名盤で、LP時代から、廉価盤で再発されたり、CDの時代になってからも、CTI レーベル爺代のCDリイシューの時には、必ずと言って良いほど、そのタイトル名が挙がる名盤である。

Stanley Turrentine With Milt Jackson『Cherry』(写真左)。1972年5月17–18 & 24日の録音。CTI 6017番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Milt Jackson (vib), Bob James (sc-p, el-pi, arr), Cornell Dupree (g), Ron Carter (b), Billy Cobham (ds)。

スタンリー・タレンタイン、ミルト・ジャクソン(バグス)、コーネル・デュプリー、ビリー・コブハムという、ファンキー&ソウル・ジャズの強者に、クロスオーバー&フュージョンの仕掛け人、ボブ・ジェームス。今から見れば、レジェンド級の凄いメンバーが大集合である。

極上のクロスオーバー志向のファンキー&ソウル・ジャズである。ファンキー&ソウル・ジャズの強者ジャズマンに、仕掛け人キーボーダー&アレンジャー、当時として、無敵の組みあわせ、パーソネルである。フロントを張る2人、タレンタインとバグスのファンクネスが実にモダン。そこに、R&B思考のファンキー&ソウルフルなデュプリーンのエレギが絡むのだからたまらない。
 

Stanley-turrentine-with-milt-jacksoncher

 
しかも、ボブ・ジェームスのエレピ、ロン・カーターのアタッチメント付きベース、ビリー・コブハムのファンキー千手観音ドラムのトリオが叩き出すリズム&ビート、8ビートのジャズロックなビートが、それまでに無い疾走感を叩き出す。そして、チェンジ・オブ・ペースで、R&B志向のファンキーなビートや、エレクトリックなソウルフルなビートに心地良く変化する。

そんなホットでヒップなクロスオーバー・ビートに乗って、タレンタインが骨太でダンディズム溢れ、ファンクネスだだ漏れ、ソウルフルなテナーを吹きまくり、バグスは、転がる様な流麗ヴァイブを弾きまくり、硬質で透明感のあるファンクネスを撒き散らし、爽快感を醸し出す。

ファンキー&ソウルジャズを展開しているが、手垢の付いた感は皆無、ノスタルジーはどこ吹く風、この盤には、1970年代の上質な純ジャズ志向の、コンテンポラリーなファンキー&ソウルジャズが展開されている。
 
CTIレーベル盤だから、聴き心地優先のイージーリスニング志向のフュージョンでしょ、なんて「聴かず嫌い」はノーサンキュー。この盤の「1970年代の純ジャズ志向」は一聴に値する。1970年代のジャズの名盤の一枚だろう。
 
 

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2026年2月17日 (火曜日)

CTIレーベルの第一弾アルバム

CTIレーベルのアルバム群が、本格的にリイシューされてからというもの、今まで聴いたことが無い盤も出てきて、それはそれは楽しい毎日。クロスオーバー&フュージョン・ジャズもしっかりと守備範囲に入っている、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、現在、CTIレーベルのカタログを基に、CTIレーベルのアルバムの記事のコンプリート化を進めている最中。

『Kathy McCord』(写真左)。邦題「キャシー・マッコード 〜虹のかけ橋」or「レインボー・ライド」。1969年11月18–20 & 24日、12月2日の録音。1970年のリリース。ちなみにパーソネルは、Kathy McCord (vo), Hubert Laws (fl), Paul Harris (p, org), John Hall (g), Harvey Brooks (b), Willis Kelly (ds), Ed Shaughnessy (ds, tabla), Don Sebesky (string and brass arr)。クリード・テイラーが1969年に設立し、クロスオーバー&フュージョン・ジャズで名声を確立するCTIレーベルの第一弾作品である。

米国のシンガー・ソング・ライター、キャシー・マッコードのデビュー盤である。といっても、彼女のリーダー作は2作のみ。女性シンガー・ソング・ライターのアルバムが、CTIレーベルを通じてリリースされたことはとても珍しい。この盤は、クロスオーバー・ジャズにおけるボーカル・アルバムの「珍盤」の一枚だろう。実際、僕はつい最近まで、カタログ上ではその存在は知っていたが、実際に聴いたことが無かった。
 

Kathy-mccord  

 
クリード・テイラーの「経歴に惑わされず音をじっくり聴いて欲しい」との意向で異色のバイオグラフィー無しでのデビューとなったらしい。アルバムの構成は、全10曲中、オリジナルが9曲、カヴァーが1曲。そのカヴァーが、レノン&マッカートニーの「I'm Leaving Home」。アルバム全体を通じて言えることは、この盤、地味ではあるが内容は濃い。CTIサウンドに彩られたジャズロックなバッキングを得て、キャシー・マッコードは魅力的なクールでウォームな歌声で自作曲を唄い上げていく。

冒頭の「Rainbow Ride」など、CTI色豊かなクロスオーバーな穏やかな伴奏をバックにキャシーが唄い上げ、バックバンドのアドリブ部に入ると、エモーショナルなジャズロックに変貌。ジョン・ホールが弾きまくるジャズロック的な展開にビックリ。硬派でダイナミックな展開に思わず聴き惚れてしまう。続くビートルズのカヴァー「I'm Leaving Home」では、アコギの伴奏をメインとしながら、ストリングスやコーラスが幻想的で哀愁感漂うバッキングが良い雰囲気。

キャシーの自作曲は、内省的でメランコリック。どれも良い出来なのだが、いかんせん「地味」。それでも、バックのイージーリスニング志向のクロスオーバー&ジャズロックな演奏がキリッと締まっていて、内容も良く、合わせ技で「聴き心地&聴き甲斐」のある楽曲にまとまっている。このアルバムが、CTIレーベル第一弾。これがCTIレーベルの音作りと言われれば納得。意外と良い内容のアルバムです。
 
 

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2026年1月30日 (金曜日)

ブルフォード融合音楽のライヴ

1960年代〜70年代、ロックはライヴ盤が苦手だった様な印象がある。スタジオ録音は、スタジオ機材とスタジオワークの粋を尽くして、内容&テクニックの整ったアルバムを制作していたが、それをライヴで再現するのは、かなり難度が高かった様で、一部のバンドを除いて、基本的には、ライヴ盤の演奏は、スタジオ録音盤の演奏に比べて「ショぼい」印象が強かった。

しかし、1970年に差し掛かり、英国でプログレッシヴ・ロック(プログレ)の潮流が沸き起こり、キング・クリムゾン、イエス、ピンク・フロイドとライヴ演奏力の確かさを備えたバンドが出てきた。それでも、クロスオーバー・ジャズのハイテクニックと即興演奏力の凄まじさを、なかなか凌駕することは出来なかった様に思う。

Bruford『Rock Goes To College』(写真左)。1979年3月7日、Oxford Polytechnicでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Bill Bruford (ds, perc), Allan Holdsworth (g), Dave Stewart (key), Jeff Berlin (b), Annette Peacock (vo)。英国の BBC放送局による、番組向けのライヴ録音のアルバム化。

Rock Goes To College (RGTC) とは、英国BBCが、1978年9月22日から 1981年3月19日まで全45回放映されていたプログラムのタイトル名称。大学や工科大学の小さなホール(数千人程度を収容)にて行われた 40〜50分程度のライヴを収録・放映していたそうである。当ライヴ盤は、1979年3月7日英国オックスフォードのオックスフォード工科大学にて行われた「ブルーフォード」のライヴ・パフォーマンスを収録している。
 

Brufordrock-goes-to-college

 
しかし、このブルフォードのライヴ盤を聴いて、このバンドの演奏テクニックの凄さ、即興演奏力の高さには驚愕した。このブルフォードの演奏こそは、クロスオーバー・ジャズのハイテクニックと即興演奏力に比肩する、そう確信した。それもそのはず、このブルフォードの音は「インテリジェンス溢れる、クロスーバー・ジャズとプログレとの融合音楽」で、演奏のベースは、明らかに、クロスオーバー・ジャズ+エレ・ジャズ志向なのだ。

ビル・ブルフォードのドラミングが、ライヴにおいて、更に凄まじさを増している。変拍子+ポリリズム、流麗な8ビートのクロスオーバーなフレーズに、最適なリズム&ビートを供給。存在感抜群。このライヴ盤の全編に渡って、この凄まじき「変拍子+ポリリズム」が、メロディアスで自由奔放に響き渡る。

そして、エレギのアラン・ホールズワースがこれまた凄まじい。クロスオーバー・ジャズギタリストの雄、ジョン・マクラフリンの比肩するテクニックの高さと歌心のある高速アドリブ・フレーズ。そして、ディヴ・スチュワートのキーボード・ワークのセンスの良さ。どう聴いても「ジャズ志向」。そしてそして、ベースのジェフ・ベルリンの重低音なプログレ志向ベースがユニーク。このバンドメンバーだからこその、演奏能力と演奏内容の高さ。

このブルフォードのライヴ・パフォーマンスを聴くにつけ、リーダーのビル・ブルフォードの音楽性の底には、確実に「ジャズ」があったんだなあ、と感じる。彼の「変拍子+ポリリズム+流麗な8ビートのクロスオーバーなグルーヴ」は、エレ・ジャズに最適だったと思われる。そして、かれは生涯、自らのドラミングが活きる「インテリジェンス溢れる、クロスーバー・ジャズとプログレとの融合音楽」を主宰し続けるのだ。
 
 

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