ビル・エヴァンズの異色盤・3
ビル・エヴァンスのリーダー作の記事のコンプリートを目指しているのだが、いよいよ、ビル・エヴァンスのディスコグラフィーの中で、異色盤と呼ばれるものの記事に手を染めている。今日は3作目。ビル・エヴァンスの異色盤では最後の一枚になる。今回は、ジャズ・オーケストラとのコラボ。しかも、エレピ入りのジャズ・ロック志向盤。
Bill Evans『Living Time』(写真左)。1972年5月12–14日、NYでの録音。コロンビア・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、以下の通り。
Bill Evans (p, Fender Rhodes), Snooky Young, Ernie Royal, Richard Williams (tp, flh), Stanton Davis (p), Howard Johnson –(flh, tuba, b-cl), John Clark (french horn), Dave Bargeron (tuba), Jimmy Giuffre (ts, fl), Joe Henderson (ts), Sam Rivers (ts, fl, oboe), Sam Brown (b-g, el-g), Ted Saunders (el-p, clavinet), Webster Lewis (org, el-p), Eddie Gómez (ac-b), Ron Carter (el-b on 5,7), Stanley Clarke (el-b on 1,2,3), Herb Bushler (el-b on 4,6,8), Tony Williams, Marty Morell (ds), Marc Belair (perc),George Russell (arr, cond),。
ビル・エヴァンスのアコピとフェンダー・ローズが、フロントのソリストとして、そして、パーソネルを見渡せば、そうそうたるメンバーが集結したジャズ・オーケストラがバックに控える。そして、よくよく見れば、エレクトリック楽器の導入が目に付く。エレギ、エレベ、ローズ、エレピなど。そして、このバックのジャズ・オーケストラの演奏志向は「ジャズ・ロック」。
最初に断っておくが、このアルバムのリーダーは「ビル・エヴァンス」。しかし、この盤のパフォーマンスとしては、ジョージ・ラッセルがアレンジ&指揮の「ジャズ・ロック」なジャズ・オーケストラの演奏に、ビル・エヴァンスのアコピとローズがそれに合わせている、という感じのパフォーマンスで、ビル・エヴァンスのパフォーマンスとしては、彼の個性は封印して、ジャズ・ロックのフロント楽器として、判り易く聴き易い、シンプルな演奏に終始している。
逆に、ラッセルのアレンジ&指揮のジャズ・ロック志向のジャズ・オーケストラのパフォーマンスが目立ちに目立つ。ダイナミックで壮大な8ビートなジャズ・ロックが、大人数のジャズ・オーケストラで演奏される。しかも、メンバーそれぞれが、力量確かな一流どころが顔を揃えているのだ、とにかく、シャープでダイナミックで迫力あるジャズ・ロック名オーケストラ・サウンドが展開される。
この盤のピアノは、なにも、ビル・エヴァンスで無くても成立するレベル。プロデューサーのヘレン・キーンが問題なのだろう。ビル・エヴァンスのリーダー作にしては、このアルバムの狙い、コンセプトが明瞭で無い。この盤、ビル・エヴァンスが、ビル・エヴァンスらしく、ピアノを弾いていないところが問題なんだろう。
ビル・エヴァンスのピアノの個性を楽しむには、ちょっと不足。ジャズ・オーケストラのジャズ・ロック志向の演奏としては、及第点の出来。作曲に課題が残る(全曲、ジョージ・ラッセルが作曲)。印象に残る曲が無い。演奏はそこそこ優れているが、曲自体がキャッチーではないところが惜しい。どうにも「隔靴掻痒」感の残る異色盤である。
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