ジャズ喫茶で流したい・275
ジャズマンの力量を図るには、スタジオ録音よりもライヴ録音の方が良い。スタジオ録音が何回でも録り直しができるが、ライヴは撮り直しはできない。即興演奏を最大の個性とするジャズについては、この即興演奏のパフォーマンスが重要になる。即興演奏は「一発勝負」が基本。そういう意味では、ジャズマンの力量を推し量る指標の一つ「即興演奏」については、ライヴ録音を聴く方が、その力量のほどが良く判る。
Herbie Hancock, Michael Brecker & Roy Hargrove『Directions in Music: Live at Massey Hall』(写真左)。2001年10月25日、トロントのマッセイホールでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock (p), Michael Brecker (ts), Roy Hargrove (tp, flh), John Patitucci (b), Brian Blade (ds)。
大御所ピアニストのハービー・ハンコック、早逝の天才テナー・マンのマイケル・ブレッカー、こちらの早逝の天才トランペッター、ロイ・ハーグローヴ、ネオ・ハードバップ系の中堅ベーシストのジョン・パティトゥッチ、メジャーデビューした頃の初々しい、新しい響きのドラミングが良好のブライアン・ブレイド。今から振り返ってみれば、錚々たるメンバーが顔を揃えたクインテット編成。
メンバーそれぞれのパフォーマンスが半端ない。まずは、テナーのマイケル・ブレッカー。このマイケルのテナーが凄い。アンサンブルもアドリブも、そのパフォーマンスは絶品。スケールが大きくテクニカル。ストレートで流麗で少しウォーム。過去のどのテナーマンとも違う、マイケルならではテナーの音で、バリバリ吹きまくっている。ソロにおける、迫力満点なブロウも繊細な吹き回しも、圧倒的なアピール力を持って迫ってくる。
そして、ロイ・ハーグローヴのトランペット。このハーグローヴのトランペットも凄い。テナーのマイケルと対等に渡り合う、切れ味良く、高度なテクニックによるブリリアントでど迫力のブロウ。繊細な表現もクールで優しい。このライヴ盤のハーグローヴのパフォーマンスを聴いていると、マイルスの後を継ぐものはハーグローヴではなかったのか、と思ってしまう。それくらいに素晴らしいハーグローヴのトランペット。ソロも絶品。
フロントの二人がとにかく凄いが、バックのリズム・セクションも負けてはいない。フロントの二人に刺激されたのか、いつになくハンコックがバリバリとピアノを弾いている。これだけ溌剌とバリバリとピアノを弾くハンコックは、この時期にしては珍しい。まだまだいける、まだまだ第一線、という感じのハンコックのピアノが良い。
ベースのパティトゥッチとドラムのブレイドは、当時、ウェイン・ショーターのグループに参加しており、リズム隊としての息はピッタリ。強烈なフロントの二人に絡むように、鼓舞するように、強靭で柔軟なリズム&ビートを供給する。新しい、ネオ・ハードバップなリズム隊のリズム&ビートが心地よく耳に響く。
ストイックでモーダルな展開のジャズだが、その内容と響きは新しさに満ちている。決して後ろを振り返らない。前を見据えて、先に行こうとする推進力を感じる、極上のネオ・ハードバップな響き。このライヴ盤は、21世紀に入っての「ネオ・ハードバップ」の名盤として良いかと思う。
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