2026年5月 6日 (水曜日)

スピリチュアル+ブラジリアン

ブルーノートの4300番台のアルバムらしいアルバムである。ファンクネス漂うシンプルで、どこか趣味の良い「地味」なバップ・ピアニストだったデューク・ピアソンが、突如、ボサノヴァとコーラス・アンサンブルが融合を融合した、摩訶不思議な、ポップでスピリチュアルなリーダー作をリリースしている。

Duke Pearson『How Insensitive』(写真左)。1969年4月11,14日、5月5日の録音。ブルーノートの4344番。ちなみにパーソネルは以下の通り。ピアニストであり、プロデューサーとして後期ブルーノートを支えたピアソンが、スピリチュアル・ジャズとブラジリアン・ジャズへの傾倒を反映させた作品。

4月11,14日の録音 (tracks 1 & 3–5) は、 Duke Pearson (p, el-p, arr), Al Gafa (g), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds), Airto Moreira (perc), Andy Bey (lead vo), The New York Group Singers' Big Band。

5月5日の録音 (tracks 7, 9 & 10)は、Duke Pearson (p, el-p, arr), Bebeto Jose Souza (b), Dorio Ferreira (g, perc), Flora Purim (lead vo),

初リリース時、LP時代の収録曲は、収録曲は、A面がコーラスを主体としたスピリチュアル・ジャズ、B面がブラジリアン・ジャズという構成に分かれている。どういう意図でこういう収録形態になったのか、思わず首を捻ってしまう。

4月11,14日の録音 (tracks 1 & 3–5) では、17名の男女混声合唱団(ニューヨーク・グループ・シンガーズ・ビッグ・バンド)を起用し、幻想的で透明感のある、スピリチュアルなサウンドを作り上げている。
 

Duke-pearsonhow-insensitive  

 
冒頭の「Stella by Starlight」がその最たる例で、出だしは、ファンクネス漂うシンプルで、どこか趣味の良い「地味」なバップ・ピアノソロが、ハードップ時代の良き雰囲気を醸し出すが、いきなり17名の男女混声合唱団のコーラスが出てきて、はっきり言って「戸惑う」。バックのピアソンのバップ・ピアノがとても良いフレーズを叩き出しているので余計に、である。

この「17名の男女混声合唱団」のコーラスが、ファンキー&ソウルフルではあるが、コーラスの雰囲気は「ポップ」。上質でポップな混声合唱には、どこか敬虔な響きが漂って、ところどころゴスペルチックで、まるでポップな賛美歌を聴いている様な面持ち。しかし、この「17名の男女混声合唱団」のコーラスの必然性が全く理解できない。

ポップなゴスペルチックな男女混成合唱がメインなのか、リーダーのピアソンを始めとする純ジャズにポップなゴスペルチックな男女混成合唱が彩りを添えているのか、聴き方の力点の置き方が難しいアルバムになっている。賛美歌的な響き、ゴスペルチックな響きを前面のに押し出し、スピリチュアル・ジャズの側面を前面に押し出そうとしているのは理解出来るのだが。

5月5日の録音 (tracks 7, 9 & 10)では、7曲目の「Sandalia Dela」のコッテコテのボサノバ・ジャズには、更に「戸惑う」。フローラ・プリムのボサノバチックな歌唱が前面に押し出されている。8曲目「My Love Waits (O Meu Amor Espera)」以降「Tears (Razao De Viva)」「Lamento」もゴスペル・ジャズ。

ピアソンのファンクネス漂うシンプルで、どこか趣味の良い「地味」なバップ・ピアノをメインとするジャジーな演奏に、ポップでファンキーでゴスペルチックな「17名の男女混声合唱団」のコーラスが絡む、意外とスピリチュアル・ジャズ的側面は軽くてポップな、摩訶不思議な雰囲気のスピリチュアル&ボサノバ・ジャズとして良いのでは、と思う。ピアソンのピアノだけ取りあげれば、これはこれで申し分無いんだけどなあ。
 
 

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2025年8月29日 (金曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その43

しかし、酷暑が続く夏である。とうに立秋は過ぎて、もう8月も終わり。ここ千葉県北西部地方、もうちょっと涼しい風が吹いていても良いのだが、全くそんな気配は無い。明日、明後日などは、最高気温は35℃超えの予想。これだけ暑いと「熱いジャズ」は聴けない。とにかく、耳当たりの良いジャズに走ることになる。

Marcos Valle『Samba '68』(写真左)。1967年10-11月の録音。ちなみにパーソネルは、Marcos Valle (g, vo)., Anamaria Valle (vo), Claudio Slon (ds), Deodato (arr), Ray Gilbert (producer)。マルコス・ヴァーリの代表作だけでなく、1960年代のブラジリアン・ポップスを代表する一枚である。

ボサノヴァ・ブームの真っ只中、当時の米国滞在中に2枚の録音を残していが、この盤は、ボサノヴァ期の代表曲のほとんどを収めた総決算的なアルバム。夫婦でデュエットしているので息もピッタリ、ボーカルの質も高い。心地よくアレンジされたオーケストレーションをメインにした、ボサノヴァ・チックな伴奏に乗って、米国ナイズされたボサノヴァ・ジャズな要素が見え隠れするのが面白い。
 

Marcos-vallesamba-68

 
この盤では、全編英語で歌われている。明らかに米国マーケットをターゲットにしたプロデュースで、言語によるボサノヴァ色は薄まっている。が、ヴァーリのボーカルが巧みで、英語で歌いながら、ボサノヴァの雰囲気をしっかり残した歌いっぷりは素晴らしい限り。

そして、このアルバムを、1960年代のブラジリアン・ポップスを代表する一枚たらしめているのは、デオダートのアレンジ。ブラジリアン・ミュージックと米国ジャズとの融合を実現したデオダートのアレンジが秀逸。ボサノヴァの雰囲気を宿しつつ、米国人に馴染のあるジャジーな雰囲気とビートを供給する。米国ジャズにおける「ボサノヴァ・ジャズ」の指針となる様な、優れたアレンジには脱帽である。

ジャケットは「これはなんだ」という感じの、ちょっと怪しい感じですが、中身は一級品。甘くてコクのある歌声のマルコス・ヴァーリ、そして、透明感あるキュートな歌声の当時の妻のアナマリアとのデュエットは爽快感抜群で、この酷暑の毎日に癒やしを与えてくれる。
 
 

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2025年8月22日 (金曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その42

セルジオ・メンデス・ブラジル'65/66のオリジナル・ボーカリスト、ボサノヴァの妖精"と称されたブラジル人女性シンガー、ワンダ・ヂ・サーのソロ・アルバム。シナトラのプロデューサー、デヴィッド・キャヴァナーのプロデュース。ジャック・マーシャルのアレンジ。

Wanda De Sah『Softly』(写真左)。1965年の作品。キャピトル・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Wanda De Sah (vo), Sergio Mendes (p), Sebastiano Neto (b), Chico Batera (ds)。Rosinha de Valenca (g)等、といったBrasil'65のメンバーが務めている。バックが確実に「ブラジル」なので、ボサノヴァの雰囲気も「純正」かつ濃厚。

ワンダ・ヂ・サー(Wanda De Sah)は、1944年リオデジャネイロ、イパネマの生まれ。文字通り「イパネマの娘」である(笑)。実際に、当初は「本物のイパネマの娘」として宣伝されたワンダは、まさに、ボサノヴァ界に、センセーションを巻き起こした。ボサノヴァにおける「純正」女性ボーカリストの代表格である。
 

Wanda-de-sahsoftly

 
ボサノヴァらしく、美しく、リラックスした、健康的に少しエロティックで物憂げな、ワンダ・ヂ・サーの歌唱は実に魅力的。アントニオ・カルロス・ジョビン、バーデン・パウエル、ジョアン・ジルベルト、ルイス・ボンファなどの、当時最先端の若手ブラジル人作曲家たちの秀曲を集め、優れたバックの伴奏とワンダの美しい唄声が一体となって、極上のボサノバ・ミュージックが展開されている。

ストリングス・オーケストラをフィーチャーした「Aruanda」「So Danco Samba」、ギターの音色が素敵な「Tem Do」、米国の一般聴衆をターゲットとして意識した、ラウンジ・ミュージック志向な「Quiet Nights (Corcovado) 」等、リラックスしたボサノヴァ・ナンバーが、ワンダのウィスパー ヴォイスによって映えに映える。

ジャケ写真からして「ボサノヴァの妖精」と言うイメージがピッタリ。ブラジリアン・ウィスパリング・ヴォーカル NO.1の呼び声高く、可憐でちょっと素人っぽいイノセントな雰囲気が、ボサノヴァの音世界とピッタリ合って、とにかく聴いていて心地良い。「ヴァーヴ時代のアストラッドを大人っぽくしたような感じ」とは言い得て妙。
 
 

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2025年8月18日 (月曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その41

サンバの新しいスタイルとしての「ボサノヴァ」をただ歌いたかったジョアン。「ボサノヴァ」での米国での成功を夢見て、英語で「ボサノヴァ」を歌い、米国ジャズマンのサポートを得て、米国で「ボサノヴァ」を広めていったカルロス・ジョビン。

2人の「ボサノヴァの神様」の「ボサノヴァ」をポピュラーなものにしていく為の方向性の違いが、明確にあった訳だが、この盤は、ただ「ボサノヴァ」を歌いたかったジョアンの米国ジャズに接近した、ボサノヴァ・ジャズの名盤。

Joao Gilberto『Amoroso』(写真左)。1977年の作品。ちなみにパーソネルは、主なメンバーとして、João Gilberto (g, vo), Ralph Grierson (key), Milcho Leviev (syn), Bud Shank (fl), Grady Tate (ds), Paulinho Da Costa (perc), Claus Ogerman (arr, cond), バックにオーケストラが付く。

この盤に詰まっている音世界、ボサノヴァの雰囲気が全面的に押し出されていて、一聴すると、これ、ボサノヴァ・ミュージックか、と思うんだが、リズム&ビートの付け方、アドリブ展開の存在、ジャズっぽいバックの弦オーケストラ。純粋なボサノヴァ・ミュージックでは無いと感じる。そして、パーソネルを見て、ボサノヴァと米国ジャズとの効果的な融合の成果だということを理解する。
 

Joao-gilbertoamoroso

 
ジョアンのボサノヴァ・ギターの素晴らしさは言うまでも無く、ジョアンのボサノヴァ・ボーカルは殊の外、素晴らしい。「Tin Tin Por Tin Tin」を聴けばそれが良く判る。ジャズ・スタンダード曲「'S Wonderful」魅力的な「ソフト&メロウなボッサ」に変貌させた秀逸なアレンジも良好。「Wave」「Caminha Cruzados」「Triste」「Zingaro」の、カルロス・ジョビン名曲カヴァー4連発が出色の出来。

録音年は1977年。フュージョン・ジャズの全盛期で、この盤では「ボサノヴァ」が持つソフト&メロウな雰囲気が、フュージョン・ジャズと上手く合致して、この盤は、ボサノヴァなフュージョン・ジャズとしても十分、評価出来る内容である。ちなみにストリングスのアレンジは「クラウス・オガーマン」。プロデューサーは、トミー・リピョーマとヘレン・キーン。

サンバの新しいスタイルとしての「ボサノヴァ」をただ歌いたかったジョアンの意向が如実に反映されたボサノヴァ・ジャズ。米国ジャズの雰囲気やリズム&ビートを取り入れてはいるが、「ボサノヴァ」の基本の雰囲気やリズム&ビートは決して崩さず、しっかり残した上で、米国ジャズの雰囲気を取り込む、そんな雰囲気のボサノヴァ・ジャズが展開されている。ボサノヴァ・ジャズの名盤の1枚です。
 
 

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2025年8月17日 (日曜日)

ボッサ名盤「愛と微笑みと花」

ボサノヴァ・ジャズというか、このアルバムは、純粋なボサノヴァ・ミュージックのアルバムである。オリジナル収録曲だけだと収録時間は約20分と短いが、この盤の様な、本場のボサノヴァ・ミュージックを体感してから、ボサノヴァ・ジャズを聴いて欲しいと思っている。

Joao Gilberto『O Amor, O Sorriso E a Flor』(写真左)。1961年の作品。ちなみにパーソネルは、Joao Gilberto (g, vo)、unknown Strings Orchestra。邦題「愛と微笑みと花」(直訳である)。ボサノヴァの神様、ジョアン・ジルベルトのセカンド・アルバム。この盤には、ボサノヴァ・ミュージックの真髄がてんこ盛り。

この盤とかで、真のボサノヴァ・ミュージックをしっかりと体感することにより、ジャズによるボサノヴァの取り込みの塩梅とか、アレンジの上手さとかが理解出来る様になるかと思う。この盤のリリース年は1961年。ボサノヴァがまさに誕生した当時の雰囲気と、その当時のジョアンのボサノヴァな雰囲気溢れるボーカル、既に完成の域に達しているギターの奏法などが確認出来る。
 

Joao-gilbertoo-amor-o-sorriso-e-a-flor

 
サンバのギターや歌い方から、サンバのエッセンスやボッサなフィーリングを抽出した、新しいサンバのスタイルを創出したのが「ボサノヴァ・ミュージック」なのだが、このアルバムに入っているボサノヴァ・ミュージックを聴けば、サンバ・ミュージックとの違いも判るし、ジャズとの融合、ボサノヴァのジャズ化の場合、どういう雰囲気を前面に出せば、ボサノヴァ・ジャズとなるかが良く判る。

ジョアンの代表曲「オパト」「ドラリセ」をはじめ、ジョビンの名曲「ワンノートサンバ」「メディテーション」「コルコヴァード」等名曲揃い。アコースティック・ギターの奏でる「自然音」の如き、風や波を感じるリズム&ビートと、「息継ぎ」をも歌唱に変えるジョアンのボサノヴァ・チックなボーカル・テクニックが見事。

ボサノヴァの演奏とボーカルの基本がこの盤に詰まっている。ソフト&メロウで聴き心地を第一としたボサノヴァ・ミュージック。ハードバップが、とかく演奏テクニックやコード・チェンジとの戦いがメインとなり、一般大衆への訴求が疎かになり始めた時代に、ボサノヴァとジャズの融合を試みることは、ジャズの「音楽」としての福音となったに違い無い。
 
 

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2025年8月15日 (金曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その40

タイトルからすると、1962年の録音で、やや落ち目だったゲッツを第一線に押し上げ、ボサノヴァ・ブームを生み出す「きっかけ」ともなったボサノヴァ・ジャズの好盤、Stan Getz & Charlie Byrd 『Jazz Samba』の続編か、アウトテイク集と思ってしまうが、まず、パートナーとなったギタリストが「ルイス・ボンファ」に代わっている。『Jazz Samba』とは全く関係無い、新パーソネルによる、新録音のボサノヴァ・ジャズ盤である。

Stan Getz & Luiz Bonfá『Jazz Samba Encore!』(写真左)。1963年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Stan Getz (ts), Luiz Bonfá (g), Antônio Carlos Jobim (g), Maria Toledo (vo), Tommy Williams, George Duvivier, Don Payne (b), Paulo Ferreira (ds), Jose Carlos, Dave Bailey (ds, perc)。

『Big Band Bossa Nova with Gary McFarland』が、米国仕様のビッグバンドに「おんぶに抱っこ」のイメージだったスタン・ゲッツ。再び、ブラジルのボサノヴァ・ギタリストと組むことで「ゲッツ=ボサノヴァ・ジャズ」の図式を確固たるものにしたかったのかもしれない。ボサノヴァ・ブームを生み出す「きっかけ」ともなったボサノヴァ・ジャズの名盤『Jazz Samba』の夢よもう一度、という感じで「ルイス・ボンファ」と組むことで、その再現を試みている。
 

Stan-getz-luiz-bonfajazz-samba-encore

 
この「二匹目のドジョウ」を狙った『Jazz Samba Encore!』が、その狙い通りに、ボサノヴァ・ジャズの好盤として、まとまっているのだから、スタン・ゲッツは「ラッキー・マン」。「二匹目のドジョウ」狙いは大体が失敗に終わるのですが、この盤は、ブラジル系のミュージシャンを招聘、純正ボサノヴァのリズム&ビートの雰囲気を取り込んだ、イージーリスニング志向のボサノヴァ・ジャズに仕上がっている。

ジョビンのスタンダード曲とボンファのオリジナル曲が収録されていて、とりわけジョビンのスタンダード曲が良い。曲が良いし、ボサノヴァの雰囲気を色濃く反映している演奏もグッド。本場ブラジルのミュージシャンの招聘も好要素で、刺激を受けたのか、ゲッツのパフォーマンスが冴えている。結果、『Jazz Samba』と比肩する内容のボサノヴァ・ジャズの好盤に仕上がっている。

本作セッションの好結果が、ゲッツとヴァーヴ・レーベルの自信になったのだろう、本作セッションの僅か1ヶ月後、ジョアン・ジルベルト、アントニオ・カルロス・ジョビン、アストラッド・ジルベルト等を迎え、世界的にボサノヴァ・ブームを巻き起こした名盤『Getz/Gilberto』(1964年リリース)を録音することとなる。『Jazz Samba Encore!』は、ボサノヴァ・ジャズの大ブームの始まりを捉えた好盤だろう。
 
 

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2025年1月 9日 (木曜日)

CTI屈指のボサノバ・ジャズ盤

冬に聴く「ボサノバ・ジャズ」も意外と「オツなもの」である。エアコンで暖めた部屋で、ゆったりとした気分で、ボサノバ・ジャズを聴く。ボサノバ・ジャズの爽やかさと暖かさが、暖かい冬の部屋の雰囲気にフィットして具合が良い。特に、そんな部屋の中で作業をしながらの「ながら聴き」が、実に心地良い。

Tamba 4『Samba Blim』(写真)。1968年の作品。ちなみにパーソネルは、Luiz Eca (p), Bebeto (fl), Dorio (g, b), Ohara (ds, per)。ブラジルのジャズ・ボッサ・グループ「タンバ 4」の1968年作。全身のピアノ・トリオ(タンバ・トリオ)にフルートを加え、カルテットとなった「タンバ 4」のCTI第2弾。

有名な『We and the Sea(二人と海)』に次ぐ作品。『二人と海』では、ダイナミックなアンサンブルが特徴で、ちょっと仰々しさが玉に瑕だったが、この盤では、ブラジル・ミュージックの雰囲気が色濃い本来のスタイルに、米国のイージーリスニング・ジャズ志向のアレンジを適用して、ポップ度とイージーリスニング度を増強している。
 

Tamba-4samba-blim

 
とても聴きやすく、クセのない、洗練されたボサノバ・ジャズに仕上がっているところが評価ポイントで、フルート1本をフロント管とした「フルート・カルテット」が良い方向に作用している。フルートとピアノの絡みが実に印象的で、そのフルートとピアノの絶妙な絡みが、米国のイージーリスニング・ジャズ志向のアレンジの適用で更に映えている。

冒頭のタイトル曲「Samba Blim」は軽やかでちょっと小粋なサンバ曲。フルートがいい音出してます。2曲目は、ミシェル・ルグランの「Watch What Happens」。名画「シェルブールの雨傘」の挿入歌。ストリングス入りのとてもCTIのイージーリスニング・ジャズらしいアレンジが印象的。フルートとピアノの絡みが良い。

以降、サンバ・チューン、ボサノバ・チューンが、素敵な「フルート・カルテット」で印象的に紬あげられていく。バックのストリングスもTamba 4の演奏の引き立て役に徹したアレンジで好感が持てる。CTIレーベルでは、秀逸な内容のインスト物のボサノバ・ジャズ盤が結構あるが、そんな中で屈指の出来のボサノバ・ジャズ盤だと思う。
 
 

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2024年9月 5日 (木曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・26

ほんと、久しぶりにボサノバ・ジャズの元祖的アルバム『Getz / Gilberto』を、メインのステレオ装置で、しっかりとスピーカーに対峙して聴いた。僕なりのジャズ超名盤研究の第26回目である。

前にこの『Getz / Gilberto』を記事にしたのが、2006年7月。あれから、18年が経過した。それまでに、ボサノバ・ジャズのアルバムは、沢山、新規にリリースされたし、リイシューについても、今まで、ほとんど再発されなかった盤が、結構な数、リリースされた。そんなアルバムについては、標準以上のレベルのものが多く、ボサノバ&サンバ・ジャズは、ほぼ、ジャズの一ジャンルとして定着した感がある。

『Getz / Gilberto』(写真左)。1963年3月の録音。パーソネルは、Stan Getz (ts)、João Gilberto (g, vo)、Antonio Carlos Jobim (p)、Tommy Wiliams (b)、Milton Banana (ds)、Astrud Gilberto (vo)。今から振り返ると、なんとも言えない、このパーソネルで「ジャズ」をやったのか、と感心する。

ジョアン・ジルベルトは、ボサノヴァというジャンルを創成した功労者、生みの親。ジョアンを「ボサノバの神」などと呼ぶ人もいる位。この「ボサノヴァの神」がギターとボーカルを担当して、ジャズのリズム&ビートに乗って、ボサノバをやるのだ。かなり無理があったと思う。逆に、ジョアンの音楽性の柔軟度の高さに敬意を表したい。ジョアンの懐の深さがあったからこそ、このボサノバ・ジャズの元祖的アルバムが世に出たと僕は思う。
 

Getz-gilberto_1

 
アントニオ・カルロス・ジョビンは、ボサノバを代表するピアニスト。この人も、ボサノバでは「神」の様な存在であり、そんなジョビンが、よく、ボサノバ調のジャジーなリズム&ビートを捻り出しているなあ、と感心する。このジョビンのピアノが、以降のボサノバ・ジャズにおける良き「お手本」となっている。ボサノバ・ジャズのリズム&ビートは、ジョビンのピアノから派生したと言っても過言ではない。

アストラット・ジルベルトは、当時、ジョアンの妻君。ボーカリストとして全くの素人。ゲッツは、このアストラットの「英語による唄声」に大いなる魅力を感じて、大プッシュしたらしいが、ジョアンはかなり難色を示したらしい。それはそうで、ボサノバは英語では唄わない。しかし、英語で唄うボサノバ・ジャズのボーカルについては、このアストラットの「イパネマの娘」の素人ボーカルが「お手本」になったのは事実だろう。しかし、素人なので、やっぱり上手くはない。

ゲッツのテナーについては、ジョアンはうるさくてしかたがなかったらしいが、それもそのはず、ゲッツのテナーの音がやけに「大きい」。目立ちたい、前へ出たい、という意図が丸見え。これがジョアンの癇に障ったのだろう。確かに、ボサノバのアンニュイで気怠い雰囲気に合っていない。前に出たがらない、奥ゆかしい吹奏であれば、ボサノバ・ジャズにおける管楽器の「お手本」になったのだろうが、これだけ、テナーが大きい音で前へ出ているのは、どう聴いても、後の「お手本」なり損ねている。

いろいろ、良い点、課題点が山積した、初めての本場ボサノバと本場ジャズとの邂逅。初めての試みなので仕方がない。絶対的名盤とは言い難いが、後のボサノバ・ジャズの「基本・基準」となったことは確か。そんなボサノバ・ジャズの「超名盤」である。
 
 

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2024年8月25日 (日曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その38

しかし、お盆も過ぎて、もうあと1週間で8月もおわるというのに「暑い」。暑い、というより酷暑である。「命が危険な暑さ」が午前中からで、もう朝9時には「命を守る引き篭もり」をせざるを得ない。日差しは強烈で、外に出て日に当たろうものなら、数十秒で露出している皮膚が「ジリジリ」してくる。

「命を守る引き篭もり」が7月の終わりから続いているのだが、引き篭もりの間は、ジャズを聴くか、ブログを整理するか、読書をするか、のいずれか。もちろん、家事はしっかりやっている。

ジャズはエアコンが効いた静かな部屋の中なので、色々な種類のジャズが聴ける。それでも、ハードな内容のジャズを聴いて耳がちょっと疲れた時は、感覚のリフレッシュを兼ねて、夏は「ボサノバ・ジャズ」をかける。

Sérgio Mendes and Brasil '66『Equinox』(写真)。1966年11月8日、1967年2月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Sérgio Mendes (p, org, vo), John Pisano (g), Bob Matthews (b, sitar, vo, Tracks 2–10), William Plummer (b, sitar, vo, Track 1), José Soares (perc, vo), João Palma (ds), Lani Hall, Janis Hansen (vo)。

セルジオ・メンデスとブラジル'66の2枚目のアルバムで、1967年4月にリリースされている。ボーカリストにはラニ・ホールとジャニス・ハンセンが参加している。リーダーのセルジオ・メンデスはピアノと、意外とプログレッシブなオルガンを弾いている。
 

Sergio-mendesandbrasil-66equinox

 
内容的には「ボサノバ&サンバ・ジャズ」で、ボサノバ&サンバのリズム&ビートが優しく心地良い。1966年から1967年の録音なので、ソフトロックっぽい要素も入っていて、出てくる音は意外と新しい感覚に溢れている。全10曲中ブラジル人アーティストの作品が7曲、スタンダード・ナンバーが3曲と「ボサノバ&サンバ」色が濃い。

とにかく、従来からの手垢の付いた「ボサノバ&サンバ・ジャズ」の音ではない。それがこの盤の最大の個性。ブラジル側からの「ボサノバ&サンバ・ジャズ」なので、音志向の基本は「ボサノバ&サンバ」。やはり、優れた「ボサノバ&サンバ・ジャズ」は、アレンジが命であることを再認識する。

そして、女性ボーカルが印象的。「ボサノバ&サンバ・ジャズ」には、女性ボーカルがよく似合う。全編に渡って、女性ボーカルが効果的に入っていて、ちょっとコケティッシュに、ちょっとアンニュイに、気怠く唄う女性ボーカル。「ボサノバ&サンバ」の雰囲気を増強する。

当時のポピュラー作品のカヴァーでお茶を濁して、セールスを追求するのでは無く、ジョビンやジルベルトを始めとした、ブラジル人アーティストの作品で固めた、ブラジル側からの「ボサノバ&サンバ・ジャズ」の好盤です。
 
 

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2024年8月21日 (水曜日)

ボサノバ&サンバ・ジャズの好盤

セルジオ・メンデス(Sergio Mendes)。1941年2月、ブラジル生まれのピアニスト、今年で83歳。作曲家、編曲家、バンドマスター。ボサノバを語る上で、欠かせないレジェンド。

1950年代後半にはジャズで活躍、そしてアントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトの影響を受け、ボサノバに転身。ブラジル国内外でボサノバを演奏。1960年代の世界的なボサノバ・ブームの牽引役となった。

Sergio Mendes『The Swinger From Rio』(写真左)。1964年12月7–9日の録音。ちなみにパーソネルは、Sérgio Mendes (p), Art Farmer (flh), Phil Woods (as), Hubert Laws (fl), Antônio Carlos Jobim (g), Tiao Neto (b), Chico de Souza (ds)。米国ジャズのメンバーと、ブラジル・ミュージックのメンバーの混成編成。

米国ジャズから、アート・ファーマー、フィル・ウッズ、ヒューバート・ロウズが参加。メンデスのピアノ、ジョビンのギターを含めたリズム・セクションはブラジリアン・ミュージックからの参加。セルジオ・メンデス初期のボサノバ&サンバ・ジャズの名盤である。

セルジオ・メンデスは、1950年代はジャズ畑で活躍していたので、ジャズについては造詣が深い。そこに、ジョビンやジルベルトのボサノバ・ミュージックとの邂逅があって、メンデスは、ブラジル側からの、ボサノバ&サンバ・ジャズの担い手となった。
 

Sergio-mendesthe-swinger-from-rio

 
この『The Swinger From Rio』を聴いていて、ボサノバのリズム&ビート、フレーズをしっかりと踏まえながら、演奏全体の志向は「ジャズ」。メンデスのピアノだって、バップなピアノでボサノバ&サンバのフレーズを上手く弾いている。

メンデスのピアノは、ブラジル側からの米国ジャズに向けてのジャズ・ピアノなので、ボサノバ&サンバのリズム&ビートを踏まえて、ボサノバ&サンバなフレーズをジャジーに弾き進めるのに違和感がない。ボサノバ&サンバのリズム&ビート、フレーズをしっかりと踏まえながら、正統派でバップでジャジーな演奏を繰り広げている。

米国ジャズからの参加、アート・ファーマーのトランペット、フィル・ウッズのアルト・サックス、ヒューバート・ロウズのフルートが、あくまで米国ジャズ基調で、ボサノバ&サンバのフレーズを吹きまくる。これが、この盤の「ジャズ」の要素をより色濃いものにしている。

逆に、ブラジル・ミュージックからの参加、メンデスのピアノ、ジョビンのギターを含めたリズム・セクションのリズム&ビートの底に、ボサノバ&サンバの本場のニュアンスがしっかり横たわっていて、米国ジャズがやるボサノバ&サンバのリズム&ビートよりもブラジル色が濃い。この「濃さ」が、この盤を「ボサノバ&サンバを基調とした純ジャズ」に帰結させている。

米国ジャズとブラジリアン・ミュージックとの素敵な融合。ブラジル側から見た「ボサノバ&サンバ・ジャズ」がこの盤にある。ブラジリアンでありながらジャジー。そんな融合の音志向が、この盤の最大の個性である。
 
 

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