2024年9月 5日 (木曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・26

ほんと、久しぶりにボサノバ・ジャズの元祖的アルバム『Getz / Gilberto』を、メインのステレオ装置で、しっかりとスピーカーに対峙して聴いた。僕なりのジャズ超名盤研究の第26回目である。

前にこの『Getz / Gilberto』を記事にしたのが、2006年7月。あれから、18年が経過した。それまでに、ボサノバ・ジャズのアルバムは、沢山、新規にリリースされたし、リイシューについても、今まで、ほとんど再発されなかった盤が、結構な数、リリースされた。そんなアルバムについては、標準以上のレベルのものが多く、ボサノバ&サンバ・ジャズは、ほぼ、ジャズの一ジャンルとして定着した感がある。

『Getz / Gilberto』(写真左)。1963年3月の録音。パーソネルは、Stan Getz (ts)、João Gilberto (g, vo)、Antonio Carlos Jobim (p)、Tommy Wiliams (b)、Milton Banana (ds)、Astrud Gilberto (vo)。今から振り返ると、なんとも言えない、このパーソネルで「ジャズ」をやったのか、と感心する。

ジョアン・ジルベルトは、ボサノヴァというジャンルを創成した功労者、生みの親。ジョアンを「ボサノバの神」などと呼ぶ人もいる位。この「ボサノヴァの神」がギターとボーカルを担当して、ジャズのリズム&ビートに乗って、ボサノバをやるのだ。かなり無理があったと思う。逆に、ジョアンの音楽性の柔軟度の高さに敬意を表したい。ジョアンの懐の深さがあったからこそ、このボサノバ・ジャズの元祖的アルバムが世に出たと僕は思う。
 

Getz-gilberto_1

 
アントニオ・カルロス・ジョビンは、ボサノバを代表するピアニスト。この人も、ボサノバでは「神」の様な存在であり、そんなジョビンが、よく、ボサノバ調のジャジーなリズム&ビートを捻り出しているなあ、と感心する。このジョビンのピアノが、以降のボサノバ・ジャズにおける良き「お手本」となっている。ボサノバ・ジャズのリズム&ビートは、ジョビンのピアノから派生したと言っても過言ではない。

アストラット・ジルベルトは、当時、ジョアンの妻君。ボーカリストとして全くの素人。ゲッツは、このアストラットの「英語による唄声」に大いなる魅力を感じて、大プッシュしたらしいが、ジョアンはかなり難色を示したらしい。それはそうで、ボサノバは英語では唄わない。しかし、英語で唄うボサノバ・ジャズのボーカルについては、このアストラットの「イパネマの娘」の素人ボーカルが「お手本」になったのは事実だろう。しかし、素人なので、やっぱり上手くはない。

ゲッツのテナーについては、ジョアンはうるさくてしかたがなかったらしいが、それもそのはず、ゲッツのテナーの音がやけに「大きい」。目立ちたい、前へ出たい、という意図が丸見え。これがジョアンの癇に障ったのだろう。確かに、ボサノバのアンニュイで気怠い雰囲気に合っていない。前に出たがらない、奥ゆかしい吹奏であれば、ボサノバ・ジャズにおける管楽器の「お手本」になったのだろうが、これだけ、テナーが大きい音で前へ出ているのは、どう聴いても、後の「お手本」なり損ねている。

いろいろ、良い点、課題点が山積した、初めての本場ボサノバと本場ジャズとの邂逅。初めての試みなので仕方がない。絶対的名盤とは言い難いが、後のボサノバ・ジャズの「基本・基準」となったことは確か。そんなボサノバ・ジャズの「超名盤」である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年8月25日 (日曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その38

しかし、お盆も過ぎて、もうあと1週間で8月もおわるというのに「暑い」。暑い、というより酷暑である。「命が危険な暑さ」が午前中からで、もう朝9時には「命を守る引き篭もり」をせざるを得ない。日差しは強烈で、外に出て日に当たろうものなら、数十秒で露出している皮膚が「ジリジリ」してくる。

「命を守る引き篭もり」が7月の終わりから続いているのだが、引き篭もりの間は、ジャズを聴くか、ブログを整理するか、読書をするか、のいずれか。もちろん、家事はしっかりやっている。

ジャズはエアコンが効いた静かな部屋の中なので、色々な種類のジャズが聴ける。それでも、ハードな内容のジャズを聴いて耳がちょっと疲れた時は、感覚のリフレッシュを兼ねて、夏は「ボサノバ・ジャズ」をかける。

Sérgio Mendes and Brasil '66『Equinox』(写真)。1966年11月8日、1967年2月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Sérgio Mendes (p, org, vo), John Pisano (g), Bob Matthews (b, sitar, vo, Tracks 2–10), William Plummer (b, sitar, vo, Track 1), José Soares (perc, vo), João Palma (ds), Lani Hall, Janis Hansen (vo)。

セルジオ・メンデスとブラジル'66の2枚目のアルバムで、1967年4月にリリースされている。ボーカリストにはラニ・ホールとジャニス・ハンセンが参加している。リーダーのセルジオ・メンデスはピアノと、意外とプログレッシブなオルガンを弾いている。
 

Sergio-mendesandbrasil-66equinox

 
内容的には「ボサノバ&サンバ・ジャズ」で、ボサノバ&サンバのリズム&ビートが優しく心地良い。1966年から1967年の録音なので、ソフトロックっぽい要素も入っていて、出てくる音は意外と新しい感覚に溢れている。全10曲中ブラジル人アーティストの作品が7曲、スタンダード・ナンバーが3曲と「ボサノバ&サンバ」色が濃い。

とにかく、従来からの手垢の付いた「ボサノバ&サンバ・ジャズ」の音ではない。それがこの盤の最大の個性。ブラジル側からの「ボサノバ&サンバ・ジャズ」なので、音志向の基本は「ボサノバ&サンバ」。やはり、優れた「ボサノバ&サンバ・ジャズ」は、アレンジが命であることを再認識する。

そして、女性ボーカルが印象的。「ボサノバ&サンバ・ジャズ」には、女性ボーカルがよく似合う。全編に渡って、女性ボーカルが効果的に入っていて、ちょっとコケティッシュに、ちょっとアンニュイに、気怠く唄う女性ボーカル。「ボサノバ&サンバ」の雰囲気を増強する。

当時のポピュラー作品のカヴァーでお茶を濁して、セールスを追求するのでは無く、ジョビンやジルベルトを始めとした、ブラジル人アーティストの作品で固めた、ブラジル側からの「ボサノバ&サンバ・ジャズ」の好盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年8月21日 (水曜日)

ボサノバ&サンバ・ジャズの好盤

セルジオ・メンデス(Sergio Mendes)。1941年2月、ブラジル生まれのピアニスト、今年で83歳。作曲家、編曲家、バンドマスター。ボサノバを語る上で、欠かせないレジェンド。

1950年代後半にはジャズで活躍、そしてアントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトの影響を受け、ボサノバに転身。ブラジル国内外でボサノバを演奏。1960年代の世界的なボサノバ・ブームの牽引役となった。

Sergio Mendes『The Swinger From Rio』(写真左)。1964年12月7–9日の録音。ちなみにパーソネルは、Sérgio Mendes (p), Art Farmer (flh), Phil Woods (as), Hubert Laws (fl), Antônio Carlos Jobim (g), Tiao Neto (b), Chico de Souza (ds)。米国ジャズのメンバーと、ブラジル・ミュージックのメンバーの混成編成。

米国ジャズから、アート・ファーマー、フィル・ウッズ、ヒューバート・ロウズが参加。メンデスのピアノ、ジョビンのギターを含めたリズム・セクションはブラジリアン・ミュージックからの参加。セルジオ・メンデス初期のボサノバ&サンバ・ジャズの名盤である。

セルジオ・メンデスは、1950年代はジャズ畑で活躍していたので、ジャズについては造詣が深い。そこに、ジョビンやジルベルトのボサノバ・ミュージックとの邂逅があって、メンデスは、ブラジル側からの、ボサノバ&サンバ・ジャズの担い手となった。
 

Sergio-mendesthe-swinger-from-rio

 
この『The Swinger From Rio』を聴いていて、ボサノバのリズム&ビート、フレーズをしっかりと踏まえながら、演奏全体の志向は「ジャズ」。メンデスのピアノだって、バップなピアノでボサノバ&サンバのフレーズを上手く弾いている。

メンデスのピアノは、ブラジル側からの米国ジャズに向けてのジャズ・ピアノなので、ボサノバ&サンバのリズム&ビートを踏まえて、ボサノバ&サンバなフレーズをジャジーに弾き進めるのに違和感がない。ボサノバ&サンバのリズム&ビート、フレーズをしっかりと踏まえながら、正統派でバップでジャジーな演奏を繰り広げている。

米国ジャズからの参加、アート・ファーマーのトランペット、フィル・ウッズのアルト・サックス、ヒューバート・ロウズのフルートが、あくまで米国ジャズ基調で、ボサノバ&サンバのフレーズを吹きまくる。これが、この盤の「ジャズ」の要素をより色濃いものにしている。

逆に、ブラジル・ミュージックからの参加、メンデスのピアノ、ジョビンのギターを含めたリズム・セクションのリズム&ビートの底に、ボサノバ&サンバの本場のニュアンスがしっかり横たわっていて、米国ジャズがやるボサノバ&サンバのリズム&ビートよりもブラジル色が濃い。この「濃さ」が、この盤を「ボサノバ&サンバを基調とした純ジャズ」に帰結させている。

米国ジャズとブラジリアン・ミュージックとの素敵な融合。ブラジル側から見た「ボサノバ&サンバ・ジャズ」がこの盤にある。ブラジリアンでありながらジャジー。そんな融合の音志向が、この盤の最大の個性である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年8月20日 (火曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その37

ボサノバ・ジャズとは、ボサノバの要素を取り込んだ「ジャズ」。リズム&ビートはボサノバのリズム&ビートをジャジーに仕立て直した「ボサノバ・ジャズ」のリズム&ビート。旋律はボサノバの旋律をそのまま取り込み、即興演奏は、ボサノバの持つ個性的なコード進行を取り込んで、ボサノバの響きを宿したアドリブ展開を繰り広げる。

ボサノバ・ジャズは「ジャズ」で、ボサノバでは無い。正統なボサノバを聴きたければ、ボサノバ・ミュージックの名盤を聴くことをお勧めする。

Lee Konitz & The Brazilian Band『Brazilian Serenade』(写真左)。1996年3月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Lee Konitz (as), Tom Harrell (tp), Romero Lubambo (g), David Kikoski (p), David Finck (b), Duduka Dafonseca (ds), Waltinho Anastacio (perc)。

リーダーはアルト・サックスの即興演奏の求道者、リー・コニッツと、現代のバップなトランペッター、トム・ハレルがフロント2管、ボサノバに欠かせないアコギ、そして、キコスキーのピアノがメインのトリオがバックに控える、7人編成でのセッション。

1曲目「Favela」、2曲目「Once I Loved」、5曲目「Dindi」、6曲目「Wave」、7曲目「Meditation」が、アントニオ・カルロス・ジョビン作のブラジリアン・ミュージックの名曲。3曲目に、ボサノバ・ジャズの名曲「Recado Bossa Nova」。残り2曲、4曲目「September」はハレル作、、8曲目の「Brazilian Serenade」はコニッツ作。
 

Lee-konitz-the-brazilian-bandbrazilian-s

 
ジョビンの名曲、ボサノバ・ジャズの名曲、録音メンバーの自作曲、それぞれ、なかなか小粋な曲をしっかりと選んでいる。そして、それぞれの曲に対するアレンジも実に良い。アレンジの方針は「ホサノバ・ジャズ」。ボサノバの持つ雰囲気をしっかり踏襲しつつ、ボサノバに迎合することなく、しっかりとした純ジャズなアレンジがなかなか秀逸。

即興演奏の求道者コニッツのアルト・サックスは切れ味の良いブリリアントな音色で、決して甘くない、純ジャズ志向の堅実硬派なボサノバ・フレーズを吹きまくる。

トランペットのトム・ハレルも同様。正統派なバップ・トランペットで、バップなボサノバ・フレーズを吹き上げる。コニッツもハレルも、ボサノバ・ジャズ志向の吹奏が見事である。

キコスキーのピアノをメインとしたリズム・セクションも良い音を出している。このリズム隊の供給するリズム&ビートは、ボサノバのリズム&ビートをジャジーに仕立て直した「ボサノバ・ジャズ」のリズム&ビートそのもの。上手いなあ。

ホメロ・ルバンボのアコギも地味ながら良い味を出している。やはり、ボサノバ・ジャズにはアコギは必須やなあ。

21世紀を見据えた、ブラジリアンな、ボサノバ基調の夜曲集(セレナーデ)。1962年から、1960年代、1970年代、1980年代と弾き継がれてきた、コンテンポラリーな「ボサノバ・ジャズ」の好例がこの盤に詰まっている。

ヴィーナス・レコードだからと避けて通ってはならない。日本のレーベルが好プロデュースしたボサノバ・ジャズ盤の好盤がここにある。 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年8月19日 (月曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その36

チャーリー・バード(Charlie Byrd)は、ブラジリアン・ミュージックに傾倒した米国ギタリスト。 1925年9月16日、米国バージニア州サフォークにて生まれ、1999年12月2日に74歳で鬼籍に入っている。ゲッツと組んでリリースしたボサノバ・ジャズの名盤『Jazz Samba』はつとに有名。

Charlie Byrd『Brazilian Byrd』(写真左)。1964年12月, 1965年1,2月、NYにての録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Byrd (g, arr), Tom Newsom (arr), Joe Grimm (sax), 演奏者不明だが、弦楽器+木管楽器+管楽器のオーケストラに、ピアノ、マリンバが加わる。プロデューサーはテオ・マセロが担当。

チャーリー・バードの、1964-65年の録音のアントニオ・カルロス・ジョビン特集。バードはラテン音楽やブラジル音楽、特にボサノバに精通していて、チャーリー・バードのリーダー作では、ボサノバ・ジャズでの好盤が多い。この『Brazilian Byrd』は、そんなチャーリー・バードの、優れたボサノバ・ジャズ盤の中の一枚。
 

Charlie-byrdbrazilian-byrd

 
ボサノバ・ジャズは「アレンジが命」と常々思っているが、この盤では、チャーリー・バード自身とトム・ニューサムによるアレンジが効いている。全体に格調高く流麗な、イージーリスニング志向のボサノバ・ジャズが印象的。良好な「ボサノバ・ジャズ」なアレンジに乗って、チャーリー・バードは、耽美的で切れ味の良いギターを弾きまくっている。

「Corcovado」「Jazz 'n' Samba (So Danco Samba)」「The Girl From Ipanema」「Dindi」等々、ジョビンお馴染みのナンバーを、ジャジーで素敵なアレンジとジャジーで印象的なリズム&ビートに乗って、チャーリー・バードが唄う様にギターを弾き進める。特に、オーケストレーションをバックにした、ロマンティックなギターは聴きもの。

ボサノバ・ジャズにはギターの音色がよく似合う。ボサノバ曲の旋律を奏でる時も、ボサノバ風のジャジーなリズム&ビートを刻む時も、チャーリー・バードのギターは、ボサノバの特質と個性をよく理解して、印象的に流麗に弾き進める。イージーリスニング志向のボサノバ・ジャズの名盤の一枚。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年8月17日 (土曜日)

ケントン流のボサノバ・ジャズ

1962年以来、米国ジャズ界は暫くの間、ボサノバ・ブームに湧いた訳だが、とにかく、猫も杓子も、あらゆる一流ジャズマンはこぞって、ボサノバを取り込んだ「ボサノバ・ジャズ」に手を染めた。なんせ、あのマイルスだって、ギル・エヴァンスと組んで、ボサノバ・ジャズ志向のリーダー作『Quiet Nights』をリリースしているくらいだ(まあ、マイルスはこの盤を認めていないみたいだが・笑)。

猫も杓子もボサノバ・ジャズだが、内容のある、しっかりした「ボサノバ・ジャズ」もあれば、どう聴いてもイージーリスニングで、内容の乏しい「ボサノバ・ジャズ」もあって、玉石混交としている。ボサノバ・ジャズを聴く上では、その辺のところをしっかりと吟味する必要がある。

押し並べて言えることは、優れた「ボサノバ・ジャズ」は、その演奏に対する「アレンジ」が優れている。ボサノバのリズム&ビート、フレーズをしっかりと踏まえながら、演奏全体の志向は「ジャズ」。そういった、優れたアレンジを施されたものが、優れた「ボサノバ・ジャズ」盤として、後世に残っている。

Stan Kenton and His Orchestra『Artistry in Bossa Nova』(写真左)。1963年4月16日~17日、ハリウッドでの録音。ちなみにパーソネルは、Stan Kenton (p, arr, cond), と、スタン・ケントンのオーケストラ。当時、先鋭的なビッグバンド・サウンドを追求していた、スタン・ケントン楽団がボサノバに取り組んだ異色作。リーダーのスタン・ケントンがアレンジと指揮を担当している。

さすがはケントン。このボサノバ・ジャズ盤は、ボサノバ自体に迎合すること無く、ボサノバのリズム&ビート、フレーズをしっかりと踏まえながら、ケントンのジャズに、ケントン楽団のジャズに仕立て上げている。
 

Stan-kenton-and-his-orchestraartistry-in

 
まず、ケントンのアレンジが秀逸。ケントン楽団の個性をしっかり引き出しつつ、ボサノバの雰囲気を上手く取り込んで、ビッグバンド仕立ての「ボサノバ・ジャズ」の好例をこの盤で提示している。ボサノバのリズム&ビートをジャズにリコンパイルして、切れ味の良い、ジャジーなグルーヴの効いた、ジャズのリズム&ビートが良い。

そのケントン流のボサノバ・ジャズのリズム&ビートに乗って、様々なフレーズが展開される。どんな志向のフレーズが乗っかっても、その演奏は、ケントン流のジャジーな「ボサノバ・ジャズ」になる。そんなケントン流の「ボサノバ・ジャズ」を具現化するビッグバンドの演奏も整っていて、ブルージーで、とても良い雰囲気。

前奏のパーカッションがラテンな雰囲気を煽り、グルーヴィーかつダンサフル、かつジャジーに演奏される「Artistry in Rhythm」や、ブラジリアン・ジャズ・サンバな雰囲気が素敵で、ケントンの硬質なピアノがラテンチックに乱舞する「Brasilia」など、ケントン流のボサノバ・ジャズのリズム&ビートに乗って、ブラジリアン・ミュージックがジャジーに演奏される。

単純にケントン流のボサノバ・ジャズを楽しめる一枚。リズムはかろうじて「ボサノバ」だが、旋律や和声は全く違う。これはボサノバではない、という向きもあるが、それは当たり前。この盤は、ケントン流のジャジーな「ボサノバ・ジャズ」を楽しむべきアルバムで、この盤の音はあくまで「ジャズ」である。

真の「ボサノバ・ミュージック」を聴きたければ、本場のボサノバ盤を聴けば良い。ここでは、あくまで「ジャズ」、優れた内容の「ボサノバ・ジャズ」を愛でている。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年8月15日 (木曜日)

ボサノバ曲の米国西海岸ジャズ化

明日は台風7号が関東地方に再接近する予報。ここ千葉県北西部地方から見ると、東の太平洋上を北上するらしいので、吹き込みの強い暴風は避けられると思うので、ちょっと安心。逆に台風の強雨域が台風の西側に広がっていて、これがこの辺りにもかかってくる可能性があるので、大雨だけは細心の注意を払う必要はある。

ということで、明日は一日、台風通過の一日となるので、自宅に引き篭もりである。まあ、今年は猛暑日続きで、外出は控え気味なので、今さら引き篭もりも特別では無いのだが、エアコンをしっかり付けて、ジャズ盤鑑賞の一日になるだろうな。

Bud Shank and Clare Fischer『Bossa Nova Jazz Samba』(写真)。1962年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Bud Shank (as, fl), Clare Fischer (p), Larry Bunker (vib), Ralph Pena (b), Larry Bunker, Frank Guerrero, Milt Holland, Bob Neel (perc)。

このところの「引き篭もり」状態の日々の中で、よく聴くジャズが「ボサノバ・ジャズ」。ということで、今回の選盤は、米国西海岸ジャズの名アルト・サックス奏者であるバド・シャンクと、ピアニスト兼アレンジャーのクレア・フィッシャーによるボサノバ・ジャズ盤。いかにも米国西海岸ジャズらしい、ボサノバ・ジャズが展開されていて興味深い。

恐らく、クリア・フィッシャーのアレンジだと思うのだが、パーカッションを充実させて、ボサノバのリズムを産み出しつつ、演奏全体をボサノバ・ジャズらしい音作りに仕立て上げるというアレンジが成功している。
 

Bud-shank-and-clare-fischerbossa-nova-ja

 
楽器の選択を見ても、軽快で爽やかなフルートやヴァイブの音が良いアクセントになって、ボサノバな雰囲気を増幅している。

聴き手にしっかり訴求するアレンジ重視の「聴かせるジャズ」という、西海岸独特のジャズの音世界の中で、ボサノバ曲を取り込み、演奏するという、いかにも西海岸ジャズらしいボサノバ・ジャズが展開されている。

と言って、米国西海岸ジャズのメインとなっていたジャズマン達が、ボサノバ・ミュージックに迎合するということは全く無く、ボサノバ曲を選曲することで、ボサノバ独特のフレーズ展開を自家薬籠中のものとし、リズム&ビートはボサノバ志向ではあるが、根っこと響きは、あくまでジャズのリズム&ビート。

シャンクのアルト・サックスは、ボサノバ曲だからと言って、ゲッツの様に、何か特別な吹き回しをすること無く、通常の西海岸ジャズにおけるシャンクの吹き回しそのものでボサノバ曲を吹きまくっている。

クレア・フィッシャーのピアノは、硬質でスクエアにスイングする。どう聴いても、ボサノバに迎合しているとは思えない(笑)。

ボサノバ曲を題材にした米国西海岸ジャズ。そういう捉え方が、この盤に相応しい。演奏の内容、雰囲気を聴いていると、米国西海岸ジャズとボサノバ・ミュージックは相性が良いと感じる。西海岸ジャズの特徴である、聴き手にしっかり訴求するアレンジが、ボサノバ曲を上手く取り込んで、上手く西海岸ジャズ化している。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年8月12日 (月曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その35

夏はボサノバ・ジャズが良い。特に今年の様な猛暑日の連続だと、まず「熱いジャズ」は絶対に避けたい。フリーやスピリチュアルな「激しいジャズ」も避けたい。そうすると、ほとんどの純ジャズ、メインストリーム系ジャズは避けたくなる。そこで活躍するのが「ボサノバ・ジャズ」。

Astrud Gilberto『Shadow Of Your Smile』(写真左)。邦題『いそしぎ』。1964年10月から、1965年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Astrud Gilberto (vo), Joao Donato, Claus Ogerman, Don Sebesky (arr) with Jazz Orchestra。

「ボサノバの歌姫」アストラッド・ジルベルトが、ジョアン・ドナート、クラウス・オガーマン、ドン・セベスキーの名編曲家たちの素晴らしいアレンジとジャズオケをバックに唄い上げた、セカンド・リーダー作。

収録された曲は、有名なジャズ・スタンダード曲とボサノバ曲。アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルで唄うジャズ・スタンダード曲は、それまでに無い、独特の魅力を振り撒く。ボサノバ曲は言うまでも無い。アストラッドのボーカルの個性全開の秀作である。
 

Astrud-gilbertoshadow-of-your-smile

 
リズム&ビートが全ての曲において、ボサノバ・ジャズのリズム&ビートを踏襲していて、演奏の基本は「ジャズ」。しかし、演奏全体の雰囲気は「ボサノバ」。切れ味の良い、爽快なボサノバ・ジャズのリズム&ビートがしっかりと効いていて、アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルとの対比が「粋」。

しかも、このボサノバ・ジャズのリズム&ビートの全面採用によって、選曲が有名なジャズ・スタンダード曲とボサノバ曲の混合でありながら、アルバム全体に統一感がある。

アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルを際立たせるのに、ボサノバ・ジャズ基調のアレンジが良い。ドナート、オガーマン、セベスキーのアレンジ、三者三様のアレンジではあるが、共通しているのは、アストラッドのボーカルの個性を際立たせること。アストラッドの個性を際立たせるボサノバ・ジャズなアレンジが実に見事。

冒頭の「The Shadow of Your Smile」や、4曲目の「Fly Me to the Moon」の様な有名スタンダード曲における「ボサノバ・ジャズなアレンジ」が素晴らしい。間に、ボサノバ曲「Manhã de Carnaval」が入ってきても、全く違和感を感じない。この盤は、アストラッドの個性を際立たせる、ボサノバ・ジャズ基調のアレンジの勝利である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年8月11日 (日曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その34

ボサノバ・ジャズの「歌姫」は、アストラッド・ジルベルト(Astrud Gilberto)。アストラッドは、1940年3月生まれ。つい昨年、2023年6月に83歳で亡くなった。1959年にジョアン・ジルベルトと結婚、ブラジル国内での情勢不安、軍事政権による圧力などもあって、1963年にアメリカ合衆国に移住。

アルバム『ゲッツ/ジルベルト』に参加し、アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルで唄う「イパネマの娘」はヒットし、グラミー賞の最優秀レコード賞と最優秀女性ボーカル賞ノミネートを獲得している。1964年にジョアン・ジルベルトと別居、1965年に『The Astrud Gilberto Album』でソロ・デビュー。以降、米国での「ボサノバ歌手」としての地位を確立している。

『The Astrud Gilberto Album』。1965年の作品。ちなみにパーソネルは、Astrud Gilberto (vo), Antônio Carlos Jobim (g, vo), Joe Mondragon (b), Bud Shank (as, fl), João Donato (p), Stu Williamson (tp), Milt Bernhart (tb), with Guildhall String Ensemble。ボサノバ分野と米西海岸のジャズマンがメインの編成。西海岸ジャズの優れた編曲者、マーティ・ぺイチによるアレンジ。
 

The-astrud-gilberto-album

 
ストリングス・アンサンブルの入った、ドラムレスのボサノバ・ジャズ向けのバックバンド。そんなイージーリスニング志向のボサノバ・ジャズ向けアレンジをバックに、アストラッドが唄う。このバックバンドの編成とアレンジが、アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルにバッチリ合っていて、アストラッドのボーカルが映えに映える。

アルバムの内容としては、ジョビンなどのボサノバ系ミュージシャンの伴奏が効いていて、英語の歌詞ではあるが、本格的なボサノバ曲集になっている。もちろん、バックのリズム&ビートは「ジャズ」志向で、本格的なボサノバ演奏では無い。あくまで、ボサノバ・ジャズの範疇での優秀盤である。実際聴いてみると判るが、本格的なボサノバは、リズム&ビートがもっと「ボサノバ独特」なものになっている。

癒し系のボサノバ・ジャズ・ボーカル盤。これがジャズか、と訝しく思われるジャズ者の方々もおられるだろう。が、フュージョンやスムースが「ジャズ」として成立していること、そして、この盤のバックバンドのリズム&ビートは「ジャズ」であること。そういう観点から、このアストラッドの初ソロ・アルバムは「ボサノバ・ジャズ」の範疇と解釈して差し支えないだろう。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年8月10日 (土曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その33

1962年、ボサノバ・ジャズのブレイクの年である。ズート・シムズの『ニュー・ビート・ボサノヴァ Vol.1』や、スタン・ゲッツの『ジャズ・サンバ』、クインシー・ジョーンズの『ビッグバンド・ボサノヴァ』など、ジャズとボサノヴァが融合した好盤がリリースされた。当然、セールスは好調だったようで、この1962年からしばらくの間、ジャズ界は「猫も杓子も」ボサノバ・ジャズに走った。

Gene Ammons『Bad! Bossa Nova』(写真左)。1962年9月9日の録音。Prestigeレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gene Ammons (ts), Kenny Burrell, Bucky Pizzarelli (g), Hank Jones (p), Norman Edge (b), Oliver Jackson (ds), Al Hayes (bongos)。アモンズのテナー、バレルとピザレリのギター、ハンク・ジョーンズのピアノがメインのボンゴ入りリズム隊、総勢7人のセプテット編成。

オールド・スタイルのテナーマン、ジーン・アモンズが流行に乗って、ボサノバ・ジャズに手を染めたアルバム。と思うが、聴いてみると、様子がちょっと違う。全編、ボサノバ・ジャズで溢れているかと思いきや、「Ca' Purange (Jungle Soul)」や「Cae, Cae」は、ボサノバ曲、いわゆるブラジリアン・チューンなんだが、他は渋めのスタンダード曲とアモンズの自作曲。ボサノバどっぷりのジャズ盤では無い。
 

Gene-ammonsbad-bossa-nova

 
しかし、である。リズム&ビートの雰囲気は、明らかにボサノバ&サンバのリズム&ビートをジャズ向けに借用していて、ボサノバ曲のみならず、渋めのスタンダード曲にも、アモンズの自作曲にも、そんなジャズ向けに借用した、ボサノバ&サンバのリズム&ビートを適用している。アルバム全体にはボサノバ・ジャズ的雰囲気での「統一感」があって、ボサノバ・ジャズ志向のトータル・アルバムとして、しっかりと訴求する。

そして、そんなジャズ向けに借用した、ボサノバ&サンバのリズム&ビートに乗った、アモンズのテナーがとっても良い音を出している。暖かいトーンの吹奏で、明るく切れ味良く歌心満点。アルバム全体を覆うブラジリアン・ミュージックの雰囲気に乗って、そんなアモンズのテナーが大らかに鳴り響く。ほんといい音な、オールド・スタイルのテナーが、ボサノバ&サンバのリズム&ビートにばっちりフィットしている。これが、このアモンズのボサノバ・ジャズ盤の一番の聴きどころ。

アモンズのディスコグラフィーの中でも、特に重要な位置付けのリーダー作ではないんですが、とても良い雰囲気の「アモンズ流のボサノバ・ジャズ盤」として捉えて良いかと思います。とにかく聴き心地が良い。バックの演奏も良好で、凡百なボサノバ・ジャズ盤にありがちな、チープで俗っぽいところは無い。ボサノバの雰囲気を漂わせつつ、ファンキーな要素も忍ばせたアモンズ節が心地良い、隠れ好盤だと思います。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

A&Mレーベル AOR Bethlehemレーベル Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteの100枚 Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル ECMのアルバム45選 ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル Jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 こんなアルバムあったんや ながら聴きのジャズも良い アイク・ケベック アキコ・グレース アジムス アストラッド・ジルベルト アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラウンド・マイルス アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アントニオ・サンチェス アンドリュー・ヒル アンドレ・プレヴィン アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イリアーヌ・イリアス インパルス!レコード ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウォルフガング・ムースピール ウディ・ショウ ウラ名盤 エグベルト・ジスモンチ エスビョルン・スヴェンソン エスペランサ・スポルディング エディ・ハリス エメット・コーエン エリック・アレキサンダー エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルヴィン・ジョーンズ エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリスマスにピッタリの盤 クリス・ポッター クリフォード・ブラウン クルセイダーズ クレア・フィッシャー クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニーG ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン コンテンポラリーな純ジャズ ゴンサロ・ルバルカバ ゴーゴー・ペンギン サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド・ジョーンズ サム・ヤヘル サム・リヴァース サンタナ ザ・バンド ジャケ買い「海外女性編」 シェリー・マン シダー・ウォルトン シャイ・マエストロ シャカタク ジェイ & カイ ジェイ・ジェイ・ジョンソン ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジェリー・マリガン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・バリトン・サックス ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャズ喫茶で流したい ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・ラージ ジョエル・ロス ジョシュア・レッドマン ジョナサン・ブレイク ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・コルトレーン on Atlantic ジョン・コルトレーン on Prestige ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン ジョー・ロヴァーノ スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン ステイシー・ケント ステップス・アヘッド スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トランペットの隠れ名盤 トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ナット・アダレイ ニルス・ラン・ドーキー ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハービー・マン ハーブ・アルパート ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・シャンク バド・パウエル バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグバンド・ジャズは楽し ビッグ・ジョン・パットン ビリー・コブハム ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビル・ブルーフォード ビートルズ ビートルズのカヴァー集 ピアノ・トリオの代表的名盤 ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・ウッズ フェンダー・ローズを愛でる フォープレイ フュージョン・ジャズの優秀盤 フランク・ウエス フランク・シナトラ フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・リトル ブライアン・ブレイド ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザーズ プログレッシブ・ロックの名盤 ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボビー・ハンフリー ボブ・ジェームス ボブ・ブルックマイヤー ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイケル・ブレッカー マイルス( ボックス盤) マイルス(その他) マイルス(アコ)改訂版 マイルス(アコ)旧版 マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マハヴィシュヌ・オーケストラ マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・5 マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モンティ・アレキサンダー モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラムゼイ・ルイス ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラルフ・タウナー ランディ・ブレッカー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レイ・ブラウン レジェンドなロック盤 レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロニー・リストン・スミス ロバート・グラスパー ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー ヴィンセント・ハーリング 上原ひろみ 僕なりの超名盤研究 北欧ジャズ 古澤良治郎 吉田拓郎 向井滋春 和ジャズの優れもの 和フュージョンの優秀盤 四人囃子 国府弘子 増尾好秋 夜の静寂にクールなジャズ 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 松岡直也 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 阿川泰子 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 音楽喫茶『松和』の昼下がり 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー