チック流の ”バド・トリビュート”
チック・コリアは、僕のお気に入りのピアニストの筆頭。長々とチックのリーダー作の評文を、ブログに書き進めてきたが、やっとカウントダウン状態、評文の未アップのリーダー作は10枚を切った。さあ、ラスト・スパート、今日の対象は、チック流の「バド・パウエル・トリビュート」の企画版である。
Chick Corea & Friends『Remembering Bud Powell』(写真左)。邦題「バド・パウエルへの追想」。1997年の作品。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Kenny Garrett (as), Joshua Redman (ts), Wallace Roney (tp), Christian Mcbride (b), Roy Haynes (ds)。ケニー・ギャレットのアルト・サックス、ジョシュア・レッドマンのテナー・サックス、ウォレス・ルーニーのトランペットがフロント3管のセクステット編成。
チック・コリアのピアノをメインとしてリズム・セクションには、ベースにクリスチャン・マクブライド、ドラムにロイ・ヘインズが参加している。このリズム・セクションがなかなかの優れもの。この優れもののリズム・セクションを主宰しつつ、チックは「バド・パウエル」の楽曲にアレンジの才を発揮しまくっている。
そう、この盤、チック流の「バド・パウエル・トリビュート」だが、チックはバド・パウエルの様に弾きまくるのではない。バド・パウエルの楽曲の個性と特徴をしっかり把握し、そのバドの楽曲の良さ、バドのその楽曲に対するアプローチを前面に押し出し、バドの音世界をチック流のアレンジによって再構築する。そんな、意外に難度の高いアプローチに、チックは果敢に挑戦している。
珍しくフロントに3管、当時の中堅バリバリの有名ジャズマンが集結しているので、この版では、チックはあくまで「裏方」に徹している。このバックに回った時のチックのフロント管に対するバッキングは、意外とエグいものがあって、さすが、1960年代終盤、マイルス・バンドに所属して、優れたテクニックで、マイルスのバッキングでブイブイ言わせていただけある。
ギャレットやジョシュア、ルーニーが、チックのバッキングに煽られて、いつになくホットなアドリブを展開している。微笑ましい光景である。チックの「バド・パウエルの楽曲の個性と特徴をしっかり把握し、そのバドの楽曲の良さ、バドのその楽曲に対するアプローチを前面に押し出し、バドの音世界をチック流のアレンジによって再構築する」という、このアルバムのコンセプトをしっかり理解して、とても印象深いパフォーマンスを繰り広げるフロント3管は、実に頼もしい。
今の耳で聴き直してみても、この盤はなかなかの優れもの。チック流の「バド・パウエル・トリビュート」がとことん楽しめる。決して熱くない。クールでヒップな「バド・パウエル・トリビュート」。このクールでヒップなところは、フロント管のバッキングに回ったマイルス・バンドの時代を彷彿とさせる。意外とマイルスの薫陶による「賜物」かもしれない。
一部で酷評を目にすることのある、ブレることなく、チックの流儀を貫き通した、チック流の「バド・パウエル・トリビュート」。良い内容の企画盤だと思います。酷評については、このチックの「バド・パウエル」の解釈の中で、ビ・バップが見えない点を突いている、とは思います。が、アドリブ展開の中に、ビ・バップっぽいアプローチが散見されるので、意外とチックはアレンジの中で、ビ・バップを意識しているんだと感じてます。そんなこんなで、この盤のチックのアレンジは秀逸。チックの隠れ優秀盤だと思います。
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