『Undercurrent』を聴き直す。
最近、長年愛読している雑誌「レコード・コレクターズ(以降、レココレと略す)」の特集に、ジャズ/フュージョン関連の特集が載ることが多い様な気がする。最近では、ブルーノートの100枚とか、ECMレコードの45枚、とかの特集があって、意外と興味深く読んだりした。
そして、今月発売のレココレ2025年7月号の特集は「ジャズ/フュージョン・ギターの名演 洋楽編」。正確に言うと、モダン・ジャズ、クロスオーバー/フュージョン・ジャズの範疇の中の名盤・好盤の中で、ギターに特化して評価できるアルバムをピックアップして紹介している。
ついつい読み耽る中、これまでに当ブログで以前に記事にしたアルバムが懐かしく、ついつい、聴き直したくなった。今日のギタリストは「ジム・ホール」。
Bill Evans & Jim Hall『Undercurrent』(写真左)。1962年4月24日、5月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Jim Hall (g)。現代ジャズ・ピアノの源・ビル・エヴァンスと、プログレッシヴなギターの職人・ジム・ホールのデュオ盤である。モダン・ジャズの歴史上、最高のピアノとギターのデュオ盤である。
前にも書いたのだが、ピアノとギターは非常に良く似た楽器である。単音のみならず和音も出せる。アルペジオも出来る。弦を掻きむしることもできるし、和音を連続して弾くことで、リズム楽器としての機能を果たすことも出来る。音のスケールも似通っている。つまり、ピアノとギターはあまりに似通った楽器なので、デュオでコラボすると、音がぶつかったり、音が重なったりする。
このピアノとギターの「音がぶつかったり、音が重なったり」するのを、持ち前のハイ・テクニックで避けつつ、デュオとしてのインタープレイを展開し、上質のユニゾン&ハーモニーを醸し出さねばならない。これがかなり難度が高くて、ジャズの世界では、ピアノとギターのデュオはあまり無いのが実情。
しかし、エヴァンスとホールの二人は、そんな難度の高いシチュエーションをいとも容易くクリアする。その奇跡的な、驚異的な演奏は、冒頭の「My Funny Valentine」に聴くことが出来る。
この「My Funny Valentine」の演奏のテンポの速さは異常である。この異常なテンポの速さの中、エバンスとホールは、限りなくテンション高く、呆れかえるほどの高度なテクニックを駆使しつつ、「音がぶつかったり、音が重なったり」するのを回避し、高速なインタープレイを展開し、上質のユニゾン&ハーモニーを叩き出す。
2曲目以降は、スローテンポからミドルテンポの演奏に終始するが、お互いに「絶妙の間」を活かした、非常にスリリングでありながら、余裕のある、優しく荘厳な内容のデュオ演奏を繰り広げる。例えば、5曲目の「Skating In Central Park」なぞ、絶品中の絶品。絶妙の間、柔らかな絡み、そして心地良い響きのユニゾン&ハーモニー。
そして、今回聴き直して、改めて感じたのは、エヴァンスとホールのデュオは「オフェンシヴ」で「ポジティヴ」。バップ・ピアノが基本のエヴァンス、バップ・ギターが基本のホール。どちらも演奏志向は「オフェンシヴ」で「ポジティヴ」。ところどころ耽美的に傾くが、それは、二人の演奏志向である「オフェンシヴ」で「ポジティヴ」を引き立てるためにある。
二人のデュオの特徴は「耽美的」にはあらず。二人のデュオの特徴は、ハイ・テクニックを前提とした「オフェンシヴ」で「ポジティヴ」なバップのインタープレイにある。この類まれなインタープレイを前提に、類まれなデュオ・パフォーマンスを繰り広げる。ジャズ・デュオ演奏の名盤中の名盤である。
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