2026年4月21日 (火曜日)

”Virtuoso” =名手, の再聴です

最近、音楽のサブスク・サイトでも、クラシック・ジャズ、特に、ハードバップの名盤・好盤のリマスターがどんどん出てきている。もうウハウハである(笑)。今も昔もリマスターされるアルバムは、いつの時代にも代表作とされる名盤・好盤が中心。絵に描いた名盤をリマスターというよりは、どこかマニアックで、ジャズ者の心の吟線に触れる様な好盤のリマスターが進んでいる。好ましい限りである。

Joe Pass『Virtuoso』(写真左)。1973年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Pass (g)のみ。ジャズ・ギタリストの重鎮、ジョー・パスのソロ・パフォーマンスを記録したアルバム。タイトルの「Virtuoso」=名手、の通り、ジョー・パスの超絶技巧なテクニックと、溢れんばかりの歌心、個性溢れるアドリブ・フレーズの数々を心ゆくまで楽しめる名盤である。

改めて、今回の「2023年リマスター」盤を聴いたのだが、もともと録音の良かった盤ではあるが、リマスターにより、ギターの音がさらに豊かになり、コード弾きの和音の倍音の拡がりが聴き取り易くなっている様に感じる。タイトルの「Virtuoso」=名手、が更に実感となって感じられる、そんなリマスター盤になっている。
 

Joe-passvirtuoso  

 
ギターのソロは、一番悩ましいのが、正確な揺るぎの無いリズム&ビートの維持。ピアノのソロの様に、左手でリズム&ビート、右手でフレーズを同時に弾くということはギターは出来ない。ストローク&コード弾きでリズム&ビート、そして、一本弾きもしくはオクターヴ奏法でフレーズ、と別々に弾くしかない。体内のリズム&ビートを感じながらの旋律弾きとなるんで、これはもう才能の域である。

冒頭の「Night And Day」は、この盤の魅力的な内容を誇るオープナーな1曲。パスの考えるギター・ソロパフォーマンスにおけるテクニック、表現方法の全てがこの曲に詰まっている、そんな感じの「パスのギターの全て」が凝縮された様な演奏。5曲目の「How High The Moon」の超絶技巧なテクニック、正確無比なタイム感覚、想像的なバップ・フレーズ。続く「Cherokee」も凄まじいテクニックの嵐。速い一本弾きのフレーズの弾き回しには胸の空く思い。

リマスター効果が良く出ている。音の鮮度が良くなった分、曲毎の演奏の展開、披露するテクニックについては、曲が進むにつれ「マンネリ化」することなく、十分な鮮度を保ったまま、ソロ・パスーマンスは粛々と進んでいく。ジャズが斜陽化しつつある時代に、このソロ・パフォーマンス。今一度、ジョー・パスを深掘りする必要がありそうだ。
 
 
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2026年4月11日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・320

フランク・シナトラとカウント・ベイシー楽団の共演ライヴ・アルバム。シナトラの歌唱力素晴らしさとカウントベイシーの演奏力の素晴らしさが、確実に「化学反応」を起こしている、見事な内容のジャズ・ボーカル盤である。シナトラにとって初のライブ・アルバムであり、その後、シナトラと最も強く結びつく楽曲の決定的な演奏が数多く収録されている。聴き応え抜群である。

Frank Sinatra『Sinatra At the Sands』(写真左)。1966年1月と2月、ラスベガスのザ・サンズ・ホテル&カジノのコパ・ルームでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Frank Sinatra (vo), Count Basie (p), Bill Miller (p), and The Count Basie Orchestra、そして、Quincy Jones (arr, cond)。

シナトラの歌唱が絶品。ダンディズム溢れる、魅力的でセクシーな中低音ボーカル。ポジティヴに語りかける様に、耳元で囁きかける様に、硬軟自在、緩急自在、変幻自在にシナトラはボーカルをコントロールする。そう、シナトラはボーカルを「支配」している。クールにジェントルにダイナミックに唄いまくる様は見事である。

冒頭「Come Fly with Me」から始まり「I've Got a Crush on You」「I've Got You Under My Skin」「The Shadow of Your Smile」「Street of Dreams」「One for My Baby」と続く熱唱に次ぐ熱唱。そして、7曲目「Fly Me to the Moon」。僕はこのシナトラの「Fly Me to the Moon」が大好き。何回何十回聴いても良い。シナトラのこの曲の歌唱が好きで、遂には曲自体までもが好きになってしまった。
 

Frank-sinatrasinatra-at-the-sands

 
バックを司るカウント・ベイシー楽団の演奏も素晴らしい。加えて、アレンジがクインシー・ジョーンズ(略して「Q」)。この「Q」のアレンジに乗って演奏するカウント・ベイシー楽団、アーバンで洒落て、良い意味でポップなビッグバンド・サウンドに変化していて、シナトラの歌唱を効果的にバッキングし、シナトラの歌唱の個性を映えに映えさせる。これだけ、フロントのボーカルにぴったりあったビッグバンドのバッキングも珍しい。

ライヴ録音としての臨場感も良い。聴き始めると、自宅のリスニング・ルームが、たちどころに、ラスベガスの「ザ・サンズ・ホテル&カジノのコパ・ルーム」に変わるような、そんな臨場感が心地良い。これぞ、ライヴ盤という雰囲気は、シナトラのボーカルとカウント・ベイシー楽団の演奏に思わず集中してしまうほどの臨場感。

シナトラのしゃべりをそのまま収録しているところが凄い。これがまた、長々しゃべってるんですが、シナトラはMCの名手で、観客は笑いっぱなし。シナトラは早口でペラペラまくしたてるんで、何を言っているか、ほとんど判らないんですが、観客の洒落た笑いと楽しそうな雰囲気がダイレクトに伝わってきて、思わず、こちらも口元を緩めながら聞いてしまう。

シナトラは、僕が小学五年生、親父のラジオをくすねて、NHK第一放送の『夜のしらべ』で、シナトラの歌唱を聴いて以来、ずっとお気に入りの男性ボーカルである。シナトラは、1998年5月に亡くなっているのだが、つまりは、僕は1970年代から亡くなるまで、シナトラをリアルタイムで聴いていたことになる。これは、実に光栄なことであった。この『Sinatra At the Sands』を聴く度に、そんなことをつらつらと思い出す。
 
 

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2026年3月29日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・319

ドニー・マッキャスリン。どっかで聞いたことがある名前だが、どこだっけ、と調べたら、デヴィッド・ボウイの遺作『★(ブラックスター)』で重要な役割(音楽監督だっと記憶している)を果たしたことで広く知られたテナー・マンだった。そうだそうだ、ということで、そんなマッキャスリンの新作である。

Donny McCaslin『Lullaby For The Lost』(写真左)。December , 2024年12月18,19日の録音。ちなみにパーソネルは、Donny McCaslin (ts), Ben Monder (g), Jason Lindner (key), Jonathan Maron (b), Zach Danziger, Nate Wood (ds)。ダブル・ドラムでリズム&ビートを増強した、変則セクステット編成。

どこか、後期エレクトリック・マイルスを彷彿とさせる、ロック畑では、ニール・ヤングやレディオヘッドを彷彿とさせる、タイトで切れ味の良い、パルシヴなリズム&ビートを効かし、重低音ベースが唸りを上げて、独特のグルーヴを生み出し、ダンサフルで疾走感溢れるリズム・セクションに乗って、マッキャスリンのテナーが飛翔する。

静的な叙情的な展開の部分は、ネーチャーでフォーキーな響きのテナーが叙情的に感傷的に優しく響く。この落差が堪らない。
 

Donny-mccaslinlullaby-for-the-lost

 
まるで、1970年代のプログレッシヴ・ロックを聴くようでもあり、ついつい、このマッキャスリンの音世界に引きずり込まれていく。どこか、スクラッチの響きも漂い、ここは1980年代のエレ・ハンコックを想起する。シンセ・ドラムを駆使したり、とにかく、音作りがユニークかつ斬新。

マッキャスリンのテナーは唄うが如くテナーを吹く。バックのリズム・セクションが紡ぎ出すユニークかつ斬新なビートとグルーヴに乗って、マッキャスリンのテナーが自由に多彩に吹きまくる。マッキャスリンのテナーの素性の良さとテクニックの高さ、唄う様に吹き上げる個性、それぞれがとても良く判る内容に、パフォーマンスになっていて聴き応え十分。

ギターのベン・モンダーも要所要所で良い仕事している。プログレっぽいエレギの響きはジャズに新しい響きを付加している。このファズの効いたエレギもこの盤での好要素だろう。

現代のニュー・ジャズ。コンテンポラリーなエレ・ジャズとして、この盤は良い出来。まさに、ユニークの極み。ジャズはまだまだ深化している。
 
 

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2026年3月24日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・318

ジュリアン・ラージ。数々の有望新人を発掘してきた、ヴァイブのゲイリー・バートンが新たに発掘した天才ギタリストである。音の志向は、現代のコンテンポラリーなジャズ・ギターで、過去のレジェンド級のコンテンポラリーなジャズ・ギタリストのスタイルを踏襲しつつ、他のジャンルのエレギの音も積極的に融合して、ワン・アンド・オンリーな個性を確立している。

Julian Lage『Scenes From Above』(写真左)。 2026年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、Julian Lage (g), John Medeski (p, Hammond B3 org), Jorge Roeder (b), Kenny Wollesen (ds, perc), Patrick Warren (p, Chamberlin, dulcitone, strings, bells, perc)。ブルーノートから5枚目のリーダー作になる。2年振りとなる待望の新作リリースである。

静的でクールでフォーキー、どこかアメリカン・ルーツ音楽を彷彿とさせるフレーズ。これぞ、ジュリアン・ラージという音。惚れ惚れする。そして、そのラージのギターを、メデスキのオルガンが更に魅力的に前面に浮き出させている。冒頭の「Opal」で、そんなラージの音世界が露わになる。2曲目「Red Elm」で、リズム&ビートが効き始め、動的で能動的なインタープレイが展開されるが、それでも、どこか、静的でクールでフォーキー。
 

Julian-lagescenes-from-above  

 
3曲目「Talking Drum」で、今回、初参入のメデスキのオルガンが大活躍。ラージのギターとメデスキのオルガンとのユニゾン&ハーモニー、チェイス、インタープレイが展開される。これが、印象的でアグレッシヴで情緒的な名演なのだ。ギターとオルガンの効果的過ぎる共演。オルガンの導入は大成功。どこかニュー・ジャズ的雰囲気名ラージの音世界に、どっぷりとジャジーな雰囲気を注入する。

パーカッションの活躍も聴きのがせない。続く4曲目の「Havens」は、パーカッションが大活躍。メデスキのオルガンと相まって、ラージーのギターに、ネオ・ハードバップな躍動感を植え付ける。しかも洒落ていて粋な、切れ味の良いパーカッションの音は実に効果的。

前半の4曲を聴くと、今回のラージの音世界が如何なるものかが良く判る。今回のオルガンの入った新カルテット編成は良好。5曲目の「Night Shade」などは、静的にクールに始まり、曲が進むにつれ高揚感が増しつつ、ゴスペルやブルースな、そして、フォーキーな音が交差し、カルテットのインタープレイは濃厚。どこか哀愁感が漂う音の拡がりもグッド。これは、もうヘビロテ盤になりそうだ。しみじみ聴き入ってしまう。
 
 

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2026年3月18日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・317

ライヴ盤としての前作『Footprints Live!』は、それまでのショーター・ミュージックの最終到達点であり、最高到達点であった。ショーターの自作曲の、ショーターのアレンジによる、ショーターを振り返る為のライヴ盤だった。

前作のスタジオ録音盤『Alegria』は、それまでのショーター・ミュージックの最終到達点であり、最高到達点を示した『Footprints Live!』の音世界に、ワールド・ミュージックの音要素を織り込んだ、コンテンポラリーな純ジャズ的内容になっていた。

Wayne Shorter『Beyond the Sound Barrier』(写真左)。北米、ヨーロッパ、アジアを巡るツアー中の、2002年11月から2004年4月にかけてのライヴ録音。2005年のリリース。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ss, ts,arr), Danilo Pérez (ac-p), John Patitucci (b), Brian Blade (ds)、以上が「Footprints Quartet」。ツアー中のライヴ録音なので、基本的にゲストは無い。「Footprints Quartet」の4人だけのガチのライヴ・パフォーマンスが記録されている。

で、この『Beyond the Sound Barrier』は、これからのショーター・ミュージックの志向を示唆している様な内容になっている様に感じる。それまで、時々、顔を出していた「深刻なフレーズ」や「宇宙人との交信フレーズ」が無い。このライヴではショーターは地球人ジャズ・ミュージシャンとのみ、交信している。変に捻れたところが無く、ポジティヴで健康的なショーターのフレーズの数々が印象深い。
 

Wayne-shorterbeyond-the-sound-barrier

 
今の耳で振り返ると、上質の、当時、最高峰レベルの、現代の「ネオ・ハードバップ」志向の音世界なのが判る、ネオ・モードをベースに、フリーに、アブストラクトに、スピリチュアルに、変化しまくるカルテットのサウンド。明らかに、サウンド全体をリードしているのは、ショーターのサックスなのだが、ショーターの指し示す方向に、クイックにサウンドを変化させる、バックの3人、リズム・セクションのトリオの演奏力が凄まじい。

ショーターがそれまで、音志向として採用してきた「深刻なフレーズ」や「宇宙人との交信フレーズ」、「ワールド・ミュージックの音要素」が無い。質実剛健なネオ・ハードバップな、ネオ・モードのサウンドが、真剣勝負なライヴ演奏として展開される。

強いて言えば、ウェザー・リポートのデビュー盤『Weather Report』、セカンド盤の『I Sing The Body Electric』、そして『Live in Japan』あたりの、「コンテンポラリーでモーダルなエレ・ジャズ」を、アコースティックに焼き直したような音世界に、フリー、アブストラクト、スピリチュアルな音要素を加えた「ネオ・ハードバップ」なサウンドである。

ただ、不思議なのは、このライヴ盤で、これからのショーター・ミュージックの志向を示唆している様な内容になっている様にも関わらず、この後、8年間、この「Footprints Quartet」は、スタジオ盤もライヴ盤もリリースしなかったこと。

2013年に突如「Footprints Quartet」のライヴ盤『Without a Net』をリリースして、我々を驚かせた。この8年間のブランクについては今のところ不明。この佳作盤『Beyond the Sound Barrier』の位置づけが曖昧になってしまったのは残念だった。
 
 

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2026年3月17日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・316

ウェイン・ショーターは、ジャズの歴史において非常に重要なサックス奏者・作曲家であるが、その活動期間の長さの割にリーダー・アルバムの発表ペースが比較的控えめであるため、「寡作」と評されることがしばしば。しかし、21世紀に入ってすぐ、フットプリンツ・カルテットの出現はセンセーショナルであり、ショーターはまだまだ現役、トップランナーだ、と再認識した記憶がある。

Wayne Shorter『Alegria』(写真左)。2003年の作品。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ss, ts,arr), Danilo Pérez (ac-p), John Patitucci (b), Brian Blade (ds)。以上が「Footprints Quartet」。ゲストとして、目立ったものとしては、Brad Mehldau (ac-p), Terri Lyne Carrington (ds), Alex Acuña (perc), Chris Potter (b-cl, ts) 等々。ショーター率いる、フットプリンツ・カルテットの2枚目のアルバムで、スタジオ録音盤。

「Orbits」on "Miles Smiles",「Capricorn 2」on "Water Babies ",「Angola」on "The Soothsayer” など、1960年代のショーターの有名曲の再演が聴きもの。「Orbits」などは、完全かつ準オーケストラ的に再解釈した演奏になっていて興味深い。他の曲も含めて、明らかに「深化」している。どう聴いたって「懐古趣味」の欠片もない。
 

Wayne-shorteralegria

 
「She Moves Through the Fair」は、アイルランド民謡の翻案。「Vendiendo Alegria」は、1930年代のフラメンコ曲。「12th Century Carol」は、中世のクリスマス・キャロル。軽快で優雅なリズム、複雑な対位法、そしてアフリカの力強いエネルギーに満ちた楽曲が随所に散りばめられている。

そう、このフットプリンツ・カルテットのスタジオ録音盤は、どこか「ワールド・ミュージック」の要素をところどころに織り込んできていて、前のライヴ盤「フットプリンツ・ライブ!」での、それまでのショーター・ミュージックの最終到達点であり、最高到達点を示した「音世界」に、ワールド・ミュージックの音要素を織り込んだ、コンテンポラリーな純ジャズ的内容になっている。

ショーターのサックスは見事の一言。その高いレベルのテクニック、創造的なアドリブ、速いフレーズも、ゆったりとしたフレーズも揺らぐこと無く、ふらつくこと無く、しっかとした吹奏で魅力的で個性的なフレーズを紡ぎ上げていく。力強くも無駄のないロペスのピアノ、印象的なリズム&ビートを叩き出すブレイドのドラム。力強い演奏の底を支えるパティトゥッチのベース。バックの演奏も一級品。21世紀の「深化した」ショーターのスタジオ録音盤として、傑作の一枚だろう。
 
 

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2026年3月12日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・315

ウェイン・ショーターが亡くなったのが 2023年3月2日。まだ3年しか経っていない。が、ショーターの亡くなった時点での喪失感は半端なかった。そんなショーターの音楽の変遷を俯瞰するのは楽しい。ショーター・ミュージックは「金太郎飴」とする向きもあるが、とんでもない。ショーター・ミュージックは「経年深化」していたと僕は思う。

Wayne Shorter『Footprints Live!』(写真左)。2001年7月14, 20, 24日の録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts, ss), Danilo Perez (p), John Patitucci (b), Brian Blade (ds)。ウェイン・ショーターが2002年にヴァーヴ・レコードからリリースしたライブ・アルバム。ショーターが自身の名義でリリースした初の公式ライブ・アルバムである。

録音日:2001年7月14日は、イタリアのペルージャで開催された ウンブリア・ジャズ・フェスティバルでのライヴ。録音日:2001年7月20日、スペイン、 ビトリア=ガステイス・ジャズ・フェスティバルでのライヴ。録音日:2001年7月24日、フランス、マルセイユの ジャルダン・パレ・ロンシャンでのライヴ。

収録曲を見渡せば、1960年代の代表曲をメインにピックアップした、ショーター自身の活動の足跡を振り返る様な内容。マイルスの『Bitches Brew』収録の「Sanctuary」のショーターの自演から始まる展開は、この「Sanctuary」は、マイルスの傑作アルバムの中の一曲だったが、実は、ショーター・ミュージックの真髄の一曲だったことを教えてくれる。
 

Wayne-shorterfootprints-live  

 
続く「Masquelero」では、ショーターと、ピアノのペレスの相性の良さが実に良く判る。ショーターのサックスの存在感は抜群なのだが、ショーターが吹けば、ペレスが応じる。演奏全体が、ペレスのピアノに導かれるように徐々に高まっていく激しさ。ショーター・ミュージックの「うねりと捻れ」が懐かしくも新しい。

「Valse Triste」は、1965年のアルバム「The Soothsayer」で初めて演奏したシベリウスの曲をアレンジした曲。軽妙なワルツ曲で、ショーターに追従するピアノ、オールド・スタイルな爽快ドラミング、演奏全体の底をガッチリ支えるベース。この「フットプリンツ・バンド」の優秀性が良く判る演奏。4人編成、カルテットの演奏なのに、出てくる音は分厚い。

と、冒頭3曲だけでも、このアルバムには、ショーター・ミュージックの優れどころが満載。1960年代の代表曲をメインにピックアップしているので、懐古趣味と取られ、ショーター・ミュージックの優れどころは1960年代とされると片腹痛い。アレンジ、奏法、アドリブ・フレーズ、どれをとっても、2001年の旬の「音」である。ショーター自作曲を選んでいるのは「素材」に過ぎないことが良く判る。

このライヴ盤は、それまでのショーター・ミュージックの最終到達点であり、最高到達点である。ショーターの自作曲の、ショーターのアレンジによる、ショーターを振り返る為の『Footprints Live!』。ショーター・ミュージックを体験する上で、このライヴ盤は外せない。 
 
 

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2026年2月25日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・314

この盤は、以前から有名盤で、LP時代から、廉価盤で再発されたり、CDの時代になってからも、CTI レーベル爺代のCDリイシューの時には、必ずと言って良いほど、そのタイトル名が挙がる名盤である。

Stanley Turrentine With Milt Jackson『Cherry』(写真左)。1972年5月17–18 & 24日の録音。CTI 6017番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Milt Jackson (vib), Bob James (sc-p, el-pi, arr), Cornell Dupree (g), Ron Carter (b), Billy Cobham (ds)。

スタンリー・タレンタイン、ミルト・ジャクソン(バグス)、コーネル・デュプリー、ビリー・コブハムという、ファンキー&ソウル・ジャズの強者に、クロスオーバー&フュージョンの仕掛け人、ボブ・ジェームス。今から見れば、レジェンド級の凄いメンバーが大集合である。

極上のクロスオーバー志向のファンキー&ソウル・ジャズである。ファンキー&ソウル・ジャズの強者ジャズマンに、仕掛け人キーボーダー&アレンジャー、当時として、無敵の組みあわせ、パーソネルである。フロントを張る2人、タレンタインとバグスのファンクネスが実にモダン。そこに、R&B思考のファンキー&ソウルフルなデュプリーンのエレギが絡むのだからたまらない。
 

Stanley-turrentine-with-milt-jacksoncher

 
しかも、ボブ・ジェームスのエレピ、ロン・カーターのアタッチメント付きベース、ビリー・コブハムのファンキー千手観音ドラムのトリオが叩き出すリズム&ビート、8ビートのジャズロックなビートが、それまでに無い疾走感を叩き出す。そして、チェンジ・オブ・ペースで、R&B志向のファンキーなビートや、エレクトリックなソウルフルなビートに心地良く変化する。

そんなホットでヒップなクロスオーバー・ビートに乗って、タレンタインが骨太でダンディズム溢れ、ファンクネスだだ漏れ、ソウルフルなテナーを吹きまくり、バグスは、転がる様な流麗ヴァイブを弾きまくり、硬質で透明感のあるファンクネスを撒き散らし、爽快感を醸し出す。

ファンキー&ソウルジャズを展開しているが、手垢の付いた感は皆無、ノスタルジーはどこ吹く風、この盤には、1970年代の上質な純ジャズ志向の、コンテンポラリーなファンキー&ソウルジャズが展開されている。
 
CTIレーベル盤だから、聴き心地優先のイージーリスニング志向のフュージョンでしょ、なんて「聴かず嫌い」はノーサンキュー。この盤の「1970年代の純ジャズ志向」は一聴に値する。1970年代のジャズの名盤の一枚だろう。
 
 

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2026年2月18日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・313

クロスオーバー&フュージョン・ジャズにおいては、CTIレーベルのカタログを追いかけているが、純ジャズにおいては、欧州系については、ECMレーベルのカタログを追いかけている。ちょっとチェックしてみたら、ECMのEM1001〜1099までの「ECM1000番台」については、明らかに現代音楽の「ジャズでは無い」アルバムを除けば、この一枚で、当ブログでの記事アップが完了することが判った。

Steve Kuhn『Motility』(写真左)。1977年1月、西ドイツの「トンスタジオ」での録音。ECMの1094番。ちなみにパーソネルは、Steve Kuhn (p), Steve Slagle (ss, as,fl), Harvie Swartz (b), Michael Smith (ds)。米国の耽美的情緒的なピアノニスト、スティーヴ・キューンのアルバム。

ECMレーベルお得意の「ポスト・バップ&ニューエイジ」なジャズのアルバム。チック・コリアとマッコイ・タイナーの中間に位置する、米国ジャズ界には珍しい耽美的情緒的なピアニストと形容されるスティーヴ・キューン。そんなキューンの個性的なピアノが、このアルバムに溢れている。
 

Steve-kuhnmotility

 
美しく流麗で耽美的なピアノが、時々、フリーにアブストラクトにアウトしながら、打ちつける様な激情溢れるタッチを見せながら、ポスト・バップな、情緒的なメロディを奏でつつ、展開していく。ひっかかる様に、つんのめる様にメロディーがアウトしていくところもあるが破綻は無い。しっかり「規律」された不協和音の美しさ。実に欧州的であり、ECM的である。

キューンのソロ・ピアノも良い。7曲目の「A Dance For One」のジャズロック的な雰囲気もなかなか。サックスとの共演での、バッキングに回ったキューンのピアノも良い。3曲目の「Catherine」では、明るめのバラードで、サックスのメロディーが浮き出てくる様は実に良い。切れ味良く、エッジの立ったピアノだが、音の雰囲気は、どこか「明るい」。

ジャケットも秀逸。とてもECMレーベルらしいジャケットで、この盤に詰まっている音世界を、ズバリ表現しているところが素晴らしい。このジャケットも欧州的。キューンは米国出身のピアニストながら、彼のピアノの個性は「欧州的な」ジャズでこそ活きる。そういう意味で、キューンのピアノにはECMレーベルが良く似合う。
 
 
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2026年2月 4日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・312

メロディーの断片、落ち着きなく変化する音階、濃密な多色和音、予測不能なリズム。自由度の限りなく高いモードからややフリー、ヒルの個性全開。なぜ、この音源が録音当時、お蔵入りしたのか、とんと見当が付かない。リーダーとしての録音順としては6枚目のアルバムになる。そんなヒルの独特の個性が、こなれてメロディアスになり、聴き易くなっている。なのにお蔵入りとは・・・。

Andrew Hill『Andrew!!!』(写真左)。1964年6月25日の録音。ブルーノートの4203番。ちなみにパーソネルは、Andrew Hill (p), John Gilmore (ts), Bobby Hutcherson (vib), Richard Davis (b), Joe Chambers (ds)。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンが見出した「最後の才能」、アンドリュー・ヒルの録音当時、お蔵入り盤である。リリースは4年後、1968年である。

確かに、アルフレッド・ライオンが言う様に、セロニアス・モンクの様に、音が予測不可能な様に飛ぶ。そして、間の取り方、チェンジ・オブ・ペースが定型ではない。つまりは、ジャズの最大の特徴である「即興演奏」の最たるものが、モンクの紡ぎ出すフレーズで、予測不可能な如く、音が飛び、間が複雑に入り、再現性はほぼ無い。即興演奏の究極形である。
 

Andrew-hillandrew

 
そんなモンクの様な予測不可能な「即興演奏」を、ヒルは踏襲しているが、モンクが角が立って、スクエアにカクカクとスイングするが、ヒルは、角が適度にラウンドしていて、意外とメロディアスにスイングする。音が適度に予測不可能名レベルで飛ぶのだが、その飛び方も、モンクに比べて穏やかで優しい。このアルバムを聴くと、ヒルはモンクの影響下から完全に抜け出て、独自のフレーズ作りを確立していることを強く感じる。

ヒルの個性的な音は、意外とメロディアスな面を持ち合わせている分、サイドマンはヒルの音を理解しやすく、ヒルの音に追従しやすくなる。そんなところに、モーダルでフリーでスピリチュアルな、ハッチャーソンのヴァイブと、ギルモアのテナーが絡んでくるのだから堪らない。ハッチャーソンもギルモアも、ヒルの音世界を十分理解して、良い音出しつつ、ヒルの個性的なフレーズに呼応し、絡み、対抗する。

このヒルの音世界一色の、バンド全体が一丸となったパフォーマンスは迫力満点。フロント楽器として、ハッチャーソンのヴァイブ、ギルモアのテナーが好調に「ヒル節」を叩き出す。そして、ヒルはそんなフロントのパフォーマンスを推進力として、さらに先の「ヒル節」を弾きまくる。ヒルの個性全開。良いアルバムです。
 
 

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