2025年9月17日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 114

伊ジャズの至宝ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィが、サイドメンがマーク・ジョンソンのベースにポール・モチアンのドラムスという、時期は異なるがビル・エヴァンス・トリオのサイド・メンだったメンバーだった二人を従えてのピアノ・トリオの素晴らしいライヴ音源である。

Enrico Pieranunzi, Marc Johnson & Paul Motian『The Copenhagen Concert』(写真左)。1996年12月2日、コペンハーゲン・ジャズハウスでのライヴ録音。2022年のリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Marc Johnson (b), Paul Motian (ds)。

冒頭、モチアン作の「Abacus」から、濃密なインタープレイが始まる。ビル・エヴァンス・トリオのサイド・メンだったメンバーだったベースとドラムスでのトリオのインタープレイ。どこか、エンリコのピアノは、ビル・エヴァンスのプレイを彷彿とさせるが、聞き進めていくと、フレーズの組み立て、音の重ね方、音の響き、それらは全く違う。

エンリコの旋律の響きは「欧州的」。クラシックに根ざした、硬質で端正なユニゾン&ハーモニーが実に欧州的。耽美的ではあるが、決して、抒情的に流されない、端正で破綻の無い、キッチリかっちりしたインプロビゼーションがピエンリコのピアノの一番の個性。
 

Enrico-pieranunzi-marc-johnson-paul-moti

 
耽美的でリリカルでメロディアスなところは「エヴァンス派」。しかし、硬質で端正なユニゾン&ハーモニーが実に欧州的ところがエンリコのオリジナル。

このライヴ・パフォーマンス、トリオのメンバー3名とも絶好調。特にエンリコ絶好調。絶妙なテンポ・チェンジ、美旋律の極みの白熱のソロ、リリカルで耽美的なフレーズの連発、鋭い即興、エンリコの個性全開、オリジナリティー全開である。スタンダード曲の解釈も個性的で素晴らしい。

サイドメンも絶好調。伸び伸びとした鋼の様なベースを展開するジョンソンが凄く魅力的。さすが、ビル・エバンスの最後のベーシスト。エバンス派エンリコとの相性は抜群。柔軟なソロを展開するジョンソンが躍動する。

そして、ポール・モチアンのドラムが最高。さすが、レギュラーなビル・エバンス・トリオ最初のドラマー。微妙な間を意識したモダンで粋なドラミングは、ポール・モチアンならではのもの。唯一無二なドラミングは聴きこたえ抜群。

エバンス派のエンリコの面目躍如。欧州的な硬質で端正なユニゾン&ハーモニーで、耽美的にリリカルに、バップなピアノを弾きまくる。そして、エヴァンスのパートナーであった、マーク・ジョンソンとポール・モチアンと最高のインタープレイを展開する。21世紀のピアノ・トリオの傑作の一枚である。
 
 

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2025年5月14日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 113

バリー・ハリス(Barry Harris)。米国のジャズ・ピアニスト。1929年12月15日、米国ミシガン州デトロイト生まれ。2021年12月8日逝去(享年91歳)。COVID-19パンデミックの中、ウイルスの合併症で逝去。

バリー・ハリスは「パウエル派」。バリー・ハリスは、バド・パウエルのスタイルを完璧に踏襲しつつ、パウエルの様に攻撃的では無く、ブルージーで優雅で優しいフレーズが特徴。パウエルより、フレーズは整っていて典雅。端正な弾き回しは爽快感抜群。

そんなフレーズをベースに「優れた総合力そのもの」を個性とするピアニスト。スタイルは「バップ」。ビ・バップの演奏マナーをハードバップに転化した弾きっぷりで、テクニック溢れる流麗な指捌きと簡潔なアドリブ・フレーズが特徴。

Barry Harris『Preminado』(写真左)。1960年12月21日と1961年1月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Barry Harris (p), Joe Benjamin (b), Elvin Jones (ds)。3曲目の「I Should Care」だけ、バリー・ハリスのソロ・ピアノ演奏。その他は、バリー・ハリスのバップ・ピアノをメインとした、オーソドックスなピアノ・トリオ編成。

バップ・ピアニスト、バリー・ハリスのピアノの良いところがギッシリ詰まったトリオ盤である。とにかく、バリー・ハリスの弾きっぷりが見事。
 

Barry-harrispreminado  

 
「パウエル派」のマナーに則りながら、端正で整った、ブルージーで優雅で優しい、それでいて粒だちの良い弾き回しは「優れた総合力そのもの」を個性とするピアニストの面目躍如。明快なタッチは爽快感抜群。

「優れた総合力そのもの」を個性とするピアノで弾き回すスタンダート曲は極上の響き。冒頭の「My Heart Stood Still」、4曲目の「There's No One But You」、6曲目「"It's the Talk of the Town」そして、ラストの「What Is This Thing Called Love?」。スタンダード曲を弾くバリー・ハリスのピアノは切れ味と爽快感抜群。これぞ「バップ・ピアノ」という歯切れの良い弾き回しで、よく唄っている。

バックのリズム隊。ベースのジョー・ベンジャミンは、スタジオ・ベーシストであるが、その弾き回しは堅実で重厚。特に、ベンジャミンのウォーキング・ベースはソリッドで粘りがあって良好。そして、ドラムはエルヴィン・ジョーンズ。鋼のように力強く粘りのある、ハードバップなドラミングを叩きまくる。それでいて、決して耳につかず、効果的に、バリー・ハリスのピアノを引き立て、強力に鼓舞しプッシュする。

優秀なピアノ・トリオ演奏は、フロント&バック両方をしっかり弾きまくるピアノはもちろんのこと、リズム&ビートを支える、ベースとドラムの力量と優れたサポートが必須なのだが、このバリー・ハリスの『Preminado』は、それらを全てを備えている。謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」の一枚として取り上げたい。
 
 

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2025年5月 3日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 112

ミシェル・ルグランは、仏映画音楽界の巨匠。「シェルブールの雨傘」「華麗なる賭け」「おもいでの夏」など、手掛けた有名曲は多数。そして、優秀なジャズ・ピアニスト兼アレンジャーでもあった。本場米国のジャズマンや批評家からも高く評価されていたというから立派なものだ。

Michel Legrand『At Shelly's Manne-Hole』(写真左)。1968年9月5日、ハリウッドの「Shelly's Manne-Hole」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Michel Legrand (p), Ray Brown (b), Shelly Manne (ds)。ミシェル・ルグランが映画音楽の仕事でハリウッドに滞在していた時期に実現した「Shelly's Manne-Hole」でのライヴ録音。

ミシェル・ルグランのピアニストとして、卓越した才能を最大限に発揮したトリオ盤である。冒頭のトリオの3人の名前を冠した「The Grand Brown Man」でのルグランのピアノが凄い。アップテンポでダイナミック、シングルトーンからブロックコードまで、ルグランの持つピアノのテクニックを総動員した、挨拶代わりのパフォーマンスに思わず度肝を抜かれる。
 

Michel-legrandat-shellys-mannehole

 
アップテンポ&ダイナミックでガンガン飛ばすかと思いきや、ルグランのオリジナル曲「A Time for Love」と「Watch What Happens」では、オリジナルのメロディーを愛しむように弾き進める、流麗で耽美的なルグランのピアノで、不意を突かれる。超スタンダード曲「My Funny Valentine」では、ルグランのスキャットまで飛び出す始末。歌心満点のルグランのピアノが素晴らしい。

そして、このピアノ・トリオ、バックのリズム隊の二人、ベースのレイ・ブラウン、ドラムのシェリー・マン、このウエストコースト・ジャズにおける、代表的名手の存在が大きい。丁々発止とルグランのピアノを受け止め、極上のテクニックでルグランのピアノを引き立て、鼓舞する。有名スタンダード曲「Willow Weep for Me」での、レイ・ブラウンのベースとルグランのピアノとの掛け合いは見事。

名手二人と繰り広げるトリオ編成による、極上のパフォーマンス。ミシェル・ルグランのピアニストとしての真価を存分に披露した、ピアノ・トリオの名盤である。ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の特集には、なかなか、このアルバム・タイトルが上がることは無いが、我がバーチャル音楽喫茶「松和」では、謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」の一枚に認定させて頂きたい。
 
 

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2025年4月26日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 111

迫力満点のモーダル・ピアノのレジェンド、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)は、一度確立したスタイルや奏法は滅多に変えないタイプ。コルトレーンの下で確立したスタイル、ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手。タイナーは生涯、このスタイルと奏法を変えることは無かったように思う。

しかし、コルトレーン・ジャズの精神性を踏襲し継承したモード・ジャズは1970年代まで。1980年代は、コルトレーン・ジャズの影響下から離れ、タイナーのピアノのスタイルと奏法はそのままに、タイナー・オリジナルの志向で、モード・ジャズを展開している。

McCoy Tyner『Bon Voyage』(写真左)。1987年7月9日の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Avery Sharpe (el-b track 1, ac-b other track), Louis Hayes (ds)。タイムレス・レーベルからリリース。力強いタイナーのピアノ・トリオ演奏を満喫できるアルバムである。
 

Mccoy-tynerbon-voyage

 
ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手。タイナーのスタイル・奏法が心ゆくまで堪能できるトリオ演奏である。モーダルな展開が基本ではあるが、タイナーのピアノの底には、しっかりと「バップ・ピアノ」があることが確認出来る。爽快感抜群のタイナー十八番の「ガーン、ゴーンなハンマー奏法」での、1980年代のタイナー流のモード・ピアノ。

レパートリーは至ってシンプルで、5曲の古き良きスタンダード曲を挟み、魅力的なラテン調のタイトル曲「Bon Voyage」と「Blues For Max」が収録されている。そして、その中間に「Jazz Walk」というオリジナル曲がある。どの曲でも、余裕あるエネルギッシュな弾き回しは、聴いていて爽快である。

バップ・ピアノ志向のタイナー・オリジナルのモード・ピアノ。もうコルトレーン・ジャズの面影は全く無い。タイナーも自らの志向をベースに、ガーン、ゴーンとダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手で、のびのび、気持ちよく、タイナー・オリジナルなモード・ピアノを弾きまくる。地味な存在ではあるが「ピアノ・トリオの代表的名盤」としても良い内容の濃さ。好リーダー作です。
 
 

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2025年4月16日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 110

レッド・ガーランド(Red Garland)のピアノは、心無いジャズ者の方々から、ラウンジ・ピアノとか、イージーリスニング・ピアノと揶揄されることがある。確かに、シンプルで聴きやすいピアノではある。しかも、その演奏スタイルは、メジャー・デビュー以降、全く同じスタイルで演奏される。「金太郎飴ピアノ」とも揶揄されるくらいである。

しかし、同じスタイルでブレることなく弾き続けているが、多くの彼のリーダー作を聴き通しても、飽きが来ることはない。演奏する曲想に従って、弾き方やニュアンスを効果的に変えているのだ。逆に、弾き方やニュアンスを変えても、ガーランドのピアノの個性の大本は変わらない様に工夫している。目立たないが、これぞ「職人芸」である。

Red Garland Trio『Red Garland at the Prelude』(写真左)。1959年10月2日、NYの「The Prelude Club」でのライヴ録音。プレスティッジ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Jimmy Rowser (b), Charles "Specs" Wright (ds)。シンプルな燻銀ピアニスト、レッド・ガーランドの唯一のライヴ盤。

このライヴ盤のガーランドのピアノを聴けば、ラウンジ・ピアノとか、イージーリスニング・ピアノという印象はすっ飛んでしまうだろう。このライヴ盤を聴くと判るが、ガーランドのピアノは、筋金入りの「バップ・ピアノ」である。ブロックコードを駆使して、強烈なドライブ感とスイング感を醸し出し、シングルトーンな右手は、テクニックよろしくバップなフレーズを振り撒いている。
 

Red-garland-triored-garland-at-the-prelu

 
そして、ライヴなので、様々なイメージの曲、例えば、ブルース、歌もの、スタンダード、バラード、バップ。ガーランドはそれぞれの曲のイメージによって、演奏のニュアンスをしっかりと変えている。ブロックコードとシングルトーンを駆使するところは変わらないので、聴き逃しがちなのだが、ガーランドは、曲のイメージによって、緩急自在、変幻自在、硬軟自在に弾き分けている。

ブロックコードとシングルトーンを駆使するところは全く変わらないのに、アルバムを通じて、全く飽きが来ないのが「その証拠」である。なんだか手品にかかったみたいなガードランドの「弾き分け」である。

ジミー・ロウサーのベース、スペックス・ライトのドラムによるリズム隊は、リズム・キープに徹していて、決して、インタープレイを仕掛けて、ガーランドに絡むことは無い。故に、このライヴ演奏では、ガーランドのピアノだけが映えに映える様にプロデュースされている。

アルバムのジャケットも、やっつけジャケットが多いプレスティッジだが、このアルバム・ジャケは、プレスティッジらしからぬ、趣味とセンスの良い良好なジャケ。ガーランドのNYの「The Prelude Club」でのライヴ演奏が聴こえてきそうな、優れもののジャケットを纏って、このライヴ盤はガーランドの代表作の筆頭として良いだろう。ピアノ・トリオの代表的名盤の一枚でもある。
 
 

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2025年4月 5日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 109

ジョージ・ケイブルス(George Cables)。1944年11月生まれ。今年で81歳になるベテラン・ピアニスト。ブレイキーやロリンズ、デックスなどのサイドメンを務める。僕は、復帰後のアート・ペッパーとの共演で、彼の名とプレイを知った。

彼のピアノは、適度に硬質のタッチで、適度に多弁なインプロビゼーションが特徴。適度に硬質ではあるが、マッコイ・タイナーの様にガーンゴーンと叩く様な硬質さでは無い。「しなやかな硬質さ」と表現したら良いだろうか。そして、シーツ・オブ・サウンドほど多弁では無いが、モーダル・ジャズほど間を活かすことは無い。

マイルスとコルトレーンが創り上げたジャズのスタイルを、適度に聴き易く、適度にスローダウンした個性。しなやかな硬質さを持ったタッチで、適度に多弁なインプロビゼーションは、聴いていて、実に端正であり、実に「雅」であり「粋」である。とにかく、聴いていて楽しい、「メインストリーム・ジャズ」をバッチリ感じさせてくれるピアノである。

ふと、ジョージ・ケイブルスが聴きたくなった、と、今までにアップした「ケイブルス評」を再掲した訳だが、とにかく、ケイブルスのピアノは絶品。ちょうどそこに、昨年11月にリリースされた、ケイブルスのリーダー作があることに気がついた。

George Cables『I Hear Echoes』(写真左)。2024年1月30日と5月2日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、George Cables (p), Essiet Essiet (b), Jerome Jennings (da)。ケイブルスのピアノを愛でるに最適なトリオ編成。ケイブルスのピアノの個性と特徴が手に取るように判る内容になっている。

まず、第一印象は「若い」。今年81歳になるケイブルスだが、冒頭の自作曲「Echo of a Scream」からして、ケイブルスのタッチは若く瑞々しく躍動的。とても80歳のピアノとは思えない。
 

George-cablesi-hear-echoes_20250405201401

 
先に再掲した「適度に硬質ではあるが、マッコイ・タイナーの様にガーンゴーンと叩く様な硬質さでは無い。「しなやかな硬質さ」と表現したら良いだろうか。そして、シーツ・オブ・サウンドほど多弁では無い」というケイブルスの個性が、とても良く判るパフォーマンスになっている。

3曲目の、これもケイブルスの自作曲「Morning Song」ケイブルスでは、緩急自在、変幻自在、困難自在な、実にフレキシブルな弾き回しに惚れ惚れする。基本はバップ・ピアノだが、ケイブルスはバップにも、モードにも対応する柔軟性を持っている。この曲では、「シーツ・オブ・サウンドほど多弁では無いが、モーダル・ジャズほど間を活かすことは無い」独特の密度を持ったケイブルスの弾き回しの個性を感じることが出来る。

4曲目の有名スタンダード曲「Prelude to a Kiss」でのバラードな弾き回しは絶品。端正であり、実に「雅」であり「粋」なバラードな弾き回しには、思わず、じっくりと耳を傾けてしまう。タッチは明確で硬質なんだが、フレーズにロマンティシズム溢れ、流麗で印象的なアドリブ・フレーズの弾き回しは「さすが」と唸ってしまう。

他のどの曲もケイブルスのピアノの個性と特徴に溢れている。バックのリズム隊、エシエット・エシエットのソリッドで堅実なベースと、ジェローム・ジェニングスのポリリズミックで、変幻自在でありながら、堅実にリズム&ビートを叩き出し供給するドラムが、そんなケイブルスを絶妙にサポートし、絶妙に寄り添い、絶妙に鼓舞する。あまり、耳にしたことのないリズム隊の二人だが、二人のサポートはこれまた絶品。

いやはや、80歳のバップ・ピアノとは思えない、80歳のモーダルなイマジネーションとは思えない、ケイブルスの決して「古くない」、「今」のケイブルスの新鮮なフレーズと、躍動感溢れる弾き回しが、とても印象的。今年81歳を迎えてなお「新しい」、今なお深化するケイブルスが素敵である。この盤、謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」にアップさせていただきたい。好盤です。
 
 

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2025年3月17日 (月曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 108

ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1950年代は「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。1960年代の終わり〜1970年代の作品は、アーシーで豪快なメリハリのあるサウンドに変化。

Ahmad Jamal『Emerald City Nights: Live at The Penthouse 1963-1964』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Richard Evans (b), Chuck Lampkin (ds)。1963年-1964年のシアトル「ペントハウス・ジャズ・クラブ」で収録された未発表音源がCD2枚組でリリース。

1960年代前半のジャマルのピアノが堪能出来る。「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選したシンプルな弾き回しから、シンプルな弾き回しつつ、メリハリを強くつけた奏法に変化しつつあるジャマルをしっかりと捉えている。1950年代のラウンジ・ピアノっぽい雰囲気から、ダイナミックでファンキーなジャズ・ピアノに変化している。

そんなダイナミックでファンキーなシンプルな弾き回しの中で、巧妙に「間」を活かして「タメ」を作った、独特のフレーズが印象的。ゆったりしたフレーズも、速いフレーズも、巧妙な「間」と「タメ」が特徴のフレーズで、ジャマルはガンガン、バップなピアノを弾き回す。
 

Ahmad-jamal-emerald-city-nights 
加えて、選曲とアレンジが秀逸。ジャマルの巧妙な「間」と「タメ」が特徴のバップ・ピアノは、自由の高いモードに展開することが無いので、演奏が進むにつれ、マンネリに陥り易いのだが、そうはならない。これって、よく聴いてみると、まずはマンネリ防止の「考え抜かれた」な選曲。

そして、その曲を活かしつつ、ジャマルのピアノの弾き回しを映えさせるアレンジが秀逸。意外と気付かないのだが、意識して聴くと、その巧妙さに舌を巻く。このトリオのライヴ演奏、全10曲で、1時間30分に及ぶのだが、全く空きがこない。というか、聞き始めるとあっという間に時間が過ぎる。

また、これらの録音はバランスが良く、粒たちの良い、ライヴ感溢れる音。ジャマルのピアノがどのように機能するかが明瞭に判別でき、バックのリズム隊の効果的サポートとジャマルを盛り立てるリズム&ビートもクッキリ活き活きと耳に飛び込んでくる。テンポが速くても「耳障り」な雰囲気は感じられず、バラード演奏は染み入る様な「音の伸び」。

このライヴ音源は、1963年から1968年までジム・ウィルクがホストを務める KING-FMの番組に生放送された一連の音源の中から発見されたもの。他にも色々とありそうで、現在、情報収集中。もっと聴きたい、もっと感じたい、そんな気にさせる、秀逸なジャマル・トリオのライヴ音源です。
 
 

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2025年3月 9日 (日曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 107

「いつの時代も、我が国と米国で、大きく評価が異なるミュージシャンって結構存在する。特に、我が国でジャズが一般的になりつつあった、1960年代後半から1970年代にかけて、我が国では不当な評価に甘んじたジャズマンが結構いた(もちろん、その逆もあったのだが・・・)」と書いたが、今回、ご紹介するピアニストも、そんな「一流と目されるジャズ・ピアニストの中で、我が国と米国で、その評価が大きく異なるピアニスト」の一人である。

Les McCann『Les McCann Ltd. in San Francisco』(写真左)。1960年12月のライヴ録音。1961年、パシフィック・ジャズ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Les McCann (p), Herbie Lewis (b), Ron Jefferson (ds)。屈指のソウルフル・ジャズ・ピアニスト、レス・マッキャンのサンフランシスコ・ジャズ ワークショップでのライヴ録音。

レス・マッキャン初期の作品。3枚目のリーダー作。初期の作品なので、マッキャンはアコピだけを弾いている。アコピだけのシンプルなトリオ演奏なので、マッキャンのピアノの個性の根本が良く判る。基本はソウル・ジャズ。ファンキー・ジャズよりも、コッテコテ黒くて、グルーヴ感濃厚。ゴスペル・フィーリングに根ざしたソウルフルでジャジーなフレーズが個性的。
 

Les-mccann-ltd-in-san-francisco

 
マッキャンはうなり声を上げながらノリノリの演奏。基本的な内容は、短いソウル・ジャズなピアノ・ナンバーがメインで、演奏を彩るグルーヴには教会(ゴスペル)の要素がタップリ注入されている。「Come On & Get That Church」「We'll See Yaw'll After While, Ya Heah」「I Am In Love」「Big Jim」「Oh Them Golden Gates」など、好曲、好演が目白押し。

ベーシストのハービー・ルイス、ドラマーのロン・ジェファーソンのリズム隊も、マッキャンのゴスペル・フィーリングに根ざしたソウルフルでジャジーなピアノを効果的にサポートし、ソウルフルなリズム&ビートで、マッキャンのソウル。ジャズ・ピアノを鼓舞する。このリズム隊も意外と聴きもの。

マッキャンとルイス+ジェファーソンのリズム隊が、ブルース、ゴスペル、ポップスを同等に効果的に取り込み、初期のハード・バップとソウル・ジャズのスタイルに、如何にシームレスに織り込んでいるか、がとても良く判る、ソウル・ジャズなピアノ・トリオの最高のパフォーマンスの一つがこのライヴ盤に記録されている。ソウルフルなピアノ・トリオの代表的名盤の一枚として、取り上げたいと思う。
 
 

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2025年3月 6日 (木曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 106

ジャズ・ピアニストには、その個性的なスタイルや奏法を「ウリ」にするピアニストと、演奏全体の総合力を「ウリ」にするピアニストの2種類に分かれると感じている。

前者は、聴けば「あ〜あの人や」と判る位の強烈な個性で、例えば、バド・パウエルやビル・エヴァンス、マッコイ・タイナーなど、1950年代のレジェンド級のピアニストは皆、強烈な個性の持ち主である。

後者は古くはハードバップ後期、1950年代の終わりからポツポツ出始めて、最近ではこの手のピアニストが結構いる。一聴すれば直ぐ判る様な強烈な個性が無い分、ピアニスト個人の判別は難しい。しかし、テクニック、歌心、バッキングなど、ピアニストの総合力で勝負するタイプなので、安心してその演奏に身を委ねることができる。

『The Piano of Roland Hanna: Easy to Love』(写真左)。1959年9月25日の録音。ちなみにパーソネルは、Roland Hanna (p), Ben Tucker (b), Roy Burnes (ds)。「Sir」の称号を持つ、総合力で勝負するバップ・ピアニストの草分け、ローランド・ハナのトリオ盤である。
 

The-piano-of-roland-hanna-easy-to-love

 
ローランド・ハナのピアノは、テクニック、歌心、バッキングなど、ジャズ・ピアニストとしては、その能力は申し分無い「総合力で勝負する」タイプのバップ・ピアニストである。しかし、他の「総合力で勝負する」タイプのバップ・ピアニストと比較すると、弾き回しは流麗だが、タッチが重厚でクッキリ。フレーズもダイナミックでスケールの大きい展開が身上。

そんなハナのピアノが、ジャズ・スタンダード曲を弾きまくる、そんな企画盤。流麗だが重厚なタッチで、ダイナミックな展開がメインのアレンジで、ハナはバップなピアノをガンガンに弾きまくる。タッチが明確な分、耳に新しいアレンジを施していても、そのジャズ・スタンダード曲の持つテーマがはっきり判る。

テクニックに優れ、弾き回しが流麗、そして、歌心満点とくれば、「総合力で勝負する」タイプのバップ・ピアニストとして申し分無い。そんなはハナを、ベン・タッカーのベース、ロイ・ブルネスのドラムが堅実にサポートする。このリズム隊には、自由度の高いインタープレイは無いが、とにかく堅実で安定感をあるリズム&ビートを叩き出しているところは好感度高。

聴き応え抜群の「バップ・ピアノ」なトリオ演奏です。ピアノ・トリオの代表的名盤の一枚として、取り上げたいと思います。
 
 

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2025年2月27日 (木曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 105

いつの時代も、我が国と米国で、大きく評価が異なるミュージシャンって結構存在する。特に、我が国でジャズが一般的になりつつあった、1960年代後半から1970年代にかけて、我が国では不当な評価に甘んじたジャズマンが結構いた(もちろん、その逆もあったのだが・・・)。

ビリー・テイラーというピアニスト。この人は、恐らく、一流と目されるジャズ・ピアニストの中で、我が国と米国で、その評価が大きく異なるピアニストの筆頭だろう。その大きく評価が異なる理由がこの盤にしっかり反映されている。

Billy Taylor『One for Fun』(写真左)。1959年6月24日、NYでの録音。アトランティック・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Billy Taylor (p), Earl May (b), Kenny Dennis (ds)。

ビリー・テイラー(Billy Taylor)は、知的で端正な黒人ピアニストである。その個性は、インテリジェンス溢れ、破綻のない、整った弾き回しにある。クラシック・ピアノの様に端正な弾き回しの底に、そこはかとなく上品なファンクネスが漂う。

冒頭の「Summertime」を聴けば「知的で端正な」そして「インテリジェンス溢れ、破綻のない、整った」弾き回し、が容易に理解出来るだろう。この超有名なジャズ・スタンダード曲を、「知的で端正な」アレンジで、「インテリジェンス溢れ、破綻のない、整ったタッチで、流麗に弾き回す。

そして、2曲目のタイトル曲「One for Fun」から、3曲目「That's for Sure」、4曲目「A Little Southside Soul」と、知的で端正で、心地良く力強く、そこはかとなく「上品なファンクネスが漂う」バップなピアノを弾き回す。6曲目の「Makin' Whoopee」などは、小粋でバップな、スインギーで唄う様な引き回しに惚れ惚れする。
 

Billy-taylorone-for-fun

 
バックのアーリー・メイのベース、ケニー・デニスのドラムのリズム隊は、堅実で端正でスクエアなグルーヴ感を湛えつつ、的確なリズム&ビートを供給し続ける。

地味で我が国では無名のリズム隊だが、さすが、ビリー・テイラーのバックを受け持つリズム隊である。彼らの供給するバップなリズム&ビートのレベルは高い。ベースなソリッドな響きも、ドラムのタイトで堅実なビートも、どれもが実に心地良い。

どうも、このビリー・テイラーのピアノの、「知的で端正な」「インテリジェンス溢れ、破綻のない、整った」「上品なファンクネスが漂う」といった部分が、当時の我が国のジャズ者の方々から敬遠された理由だろうと推察する。逆に、米国では、この部分が大いに評価されて、人気ピアニストとして、多くのリーダー作をリリースしている。

我が国では、当時、ジャズマンといえば、天才的ミュージシャンによくある「崩れた魅力」「破天荒なイメージ」「突出した才能の煌めき」などが「よしとされた」時代で、ビリー・テイラーの「知的で端正な」「インテリジェンス溢れ、破綻のない、整った」「上品なファンクネスが漂う」といった部分が敬遠されたのだと感じている。

しかし、21世紀に入って、そんな我が国のジャズマンに対するイメージも大きく変わりました。録音音源もレコード会社経由からだけの時代から、ダウンロードで世界各所からダイレクトに入手できる時代に変わりました。

自分の耳で、ダイレクトにそのジャズマンの音が聴けて、その音を自ら評価できる。そんな時代の中で、ビリー・テイラーのピアノは正当な評価を得つつある、そんなことを実感する、この『One for Fun』というトリオ盤の内容です。
 
 

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