2025年12月 9日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 119

ふと、ジョージ・ケイブルスが聴きたくなった。ジョージ・ケイブルス(George Cables)。1944年11月生まれ。今年で81歳になるベテラン・ピアニスト。ブレイキーやロリンズ、デックスなどのサイドメンを務める。僕は、復帰後のアート・ペッパーとの共演で、彼の名とプレイを知った。

George Cables『Icons & Influences』(写真左)。2013年9月16日の録音。ちなみにパーソネルは、George Cables (p), Dezron Douglas (b), Victor Lewis (ds)。深化する醸熟ブルージーなピアニスト、ジョージ・ケイブルス、79歳でのパフォーマンス。デズロン・ダグラスのベース、ビクター・ルイスのドラムをバックのリズム隊に擁した、ピアノ・トリオ編成。

彼のピアノは、しなやかな硬質さを持ったタッチ、適度に多弁なインプロビゼーション。聴いていて、実に端正であり、実に「雅」であり「粋」である。とにかく、聴いていて楽しい、「メインストリーム・ジャズ」をバッチリ感じさせてくれるピアノである。この盤でも、そんなケイブルスの個性的なピアノがてんこ盛り。

良く唄うピアノである。スタンダード曲はもとより、ミュージシャンズ・チューン、そして自作曲と、テーマの旋律が流麗な曲を選んでいるのか、ケイブルスの良く唄うピアノが、更に映えに映える。
 

George-cablesicons-influences

 
しなやかな硬質さを持ったタッチが軽快に、爽快感を撒き散らしながら、シーツ・オブ・サウンド風の速くてモーダルなアドリブを展開する。ほんの少しだけ、指がもつれるところはあるが、全く気にならない。

ブルージーな展開がとりわけ絶品。適度に多弁だが、端正で典雅で粋な弾きっぷりで、決して俗っぽくならず、上質の「聴かせる」ブルース志向のピアノ・インプロビゼーションに仕立て上げられていて見事。ケイブルス流のモーダルな展開が、これまた唄うが如くの雅さで、とてもお洒落でクール。当時、79歳とは思えない溌剌さと明快さ。

そして、ケイブルスの「ケイブルス流」のモーダルな展開は「古くない」。過去の”どこかで聴いた様な」モーダルなフレーズはどこにも聴かれない。ケイブルスの79歳になっても、さらに深化する、ケイブルスのモード解釈が実に頼もしく響く。この盤は、ハードバップの焼き直しでもなければ、20世紀のモード奏法へのオマージュでも無い。

この盤のトリオ演奏は、現代の「ネオ・ハードバップ&ネオ・モード」。現代の若手中堅の「ネオ・ハードバップ&ネオ・モード」なイマージネーションに比肩する、ケイブルス流のモード・パフォーマンス。そして、ブルージーで適度に多弁なところが、ケイブルス独特の響きを醸し出して、現代のジャズ・シーンにおいても、唯一無二の個性を保持していて立派。この盤も謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」の1枚とさせていただきたい。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年12月 8日 (月曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 118

ジャズの好盤は、なにも、ジャズの歴史に名を残した、一流ジャズマンだけが創り出したのでは無い。意外と無名に近いジャズマンが、ある日突然、一瞬の輝きの様に、素晴らしい好盤を残すことがある。その好盤がジャズ評論家の誰かが見出して、その当時は好盤として評価されるが、時が経つにつれ、その評価の印象が、忘却の彼方に埋もれてしまった好盤は沢山ある。

Albert Dailey Trio『That Old Feeling』(写真左)。1978年7月13日の録音。スティープルチェイス・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Albert Dailey (p), Buster Williams (b), Billy Hart (ds)。優れたピアニストでありながら、生涯を通して完全に無視され評価されることの無かった不遇のピアニストの1人、アルバート・デイリーのトリオ盤。

アルバート・デイリーは1939年、ボルチモア生まれ。1968年から1969年にかけてはアート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズにも断続的に参加、1970年代、デイリーはソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツ、エルヴィン・ジョーンズ、アーチー・シェップらと共演。しかし、特に注目されることも無く、1984年、45歳で死去してしまう。リーダー作はたった5枚。しかも、今でもサブスク等で聴くことの出来るリーダー作は、1970年代の3枚のみ。

その3枚の中でも、このスティープルチェイスから『That Old Feeling』は、ピアノ・トリオの演奏ということもあって、アルバート・デイリーのピアノの個性と、その優れた実力が、とても良く判る内容になっている。
 

Albert-dailey-triothat-old-feeling

 
というか、これ1枚だけがデイリーのジャズ・ピアニストとしての実力を推し量れる好盤と言える。バックのリズム隊のバスター・ウイリアムスのベース、ビリー・ハートのドラムが、そのデイリーの実力を前面に推し出している。

熱のこもったトリオ演奏。タイム感覚とハーモニー感覚、そして、フレーズ展開において、オリジナリティ溢れる多様性と独創性を発揮、バリバリ、モーダルに弾きまくるポスト・バップな展開。このデイリーのピアノの弾き回しは唯一無二。速いフレーズは疾走感に溢れ、左手のコードは演奏全体の推進力。そんな個性的なピアノが冒頭の「Music That Makes Me Dance」から全開。

続く「Lover Man」のバラード演奏での表現も個性的。繊細なタッチでバラードなフレーズを弾き始め、演奏が進むにつれ、硬質で美しいピアノの響きで、徐々にテンポが上がり、独特のハーモニーとタイム感覚で、この有名スタンダード曲「Lover Man」を、デイリー独特の解釈で弾き上げていく。見事という他ないパフォーマンス。

3曲目の有名スタンダード曲「Yesterdays」、4曲目のレノン=マッカートニーの「Michelle」そして、続く「That Old Feeling」「Body and Soul」「Night and Day」など、ハードバップ時代に「手垢の付いた」スタンダード曲でのテンポを上げた弾き回しも見事。デイリーの個性が満載。デイリーの唯一無二はフレーズの弾き回しがてんこ盛り。

聴き終えれば、スタンダード曲を中心に、デイリーの個性的なピアノが確認出来、堪能出来る。非常に優れたトリオ盤であることに気が付く。デイリーのトリオ演奏の秀作はこの盤だけだが、この盤も謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」の1枚とさせていただきたい。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年12月 7日 (日曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 117

ジョアン・ブラッキーン(Joanne Brackeen)。米国出身。「ジャズ・ピアノのピカソ」と呼ばれ、ビー・バップからラテン、アバンギャルドなど、あらゆるジャンルに適応した、バリエーション豊かなピアノが個性。一風、チック・コリアの通じるところがあると僕は睨んでいる。アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの「唯一の女性メンバー」としても有名。

Joanne Brackeen『Snooze』(写真左)。1975年の作品。ちなみにパーソネルは、Joanne Brackeen (p), Cecil McBee (b), Billy Hart (ds)。米国の女性ジャズ・ピアニスト、ジョアン・ブラッキーンの初リーダー作。セシル・マクビーノベース、ビリー・ハートのドラムと組んだ、ピアノ・トリオでのパフォーマンス。

冒頭のマイルス=ショーターの大名曲「Nefertiti」から度肝を抜かれる。もともと、この「Nefertiti」は、アドリブ部の無い、テーマのみを様々なニュアンスを演奏仕分けていく、違った意味での「フリー」な演奏なんだが、その大問題作に、アドリブ部を大胆につけ、モーダルで自由度の高い、自由自在、硬軟自在、変幻自在なトリオ・インタープレイを繰り広げる。この1曲のパフォーマンスだけでもこのアルバムは「買い」だ。
 

Joanne-brackeensnooze

 
続く、これまたマイルスの「Circles」では、今度は耽美的にリリカルに、ジョアン独特のモード奏法で弾き上げていく。タッチは明確、左手の低音は心地良く腹の底に響き、右手の速いフレーズは正確。その弾きっぷりはまるでピアノで唄うが如く、である。そこに、マクビーのベースが柔軟にしなやかに絡み、ハードのドラムが、トリオ演奏の要所要所でリズム&ビートをしっかりと引き締め、ジョアンとマクビーの自由度溢れるアドリブ・パフォーマンスをガッチリ支える。

3曲目のジョアンの自作曲「C-Sri」は、一転、高速モードな、疾走感溢れる演奏。ジョアンの右手は正確無比にアドリブ・フレーズを叩き出し、マクビーは高速ウォーキング・ベースで、ジョアンの疾走に追従する。そして、ハードの変幻自在でポリリズミックなドラミングが、ジョアンとマクビーのパフォーマンスを煽りに煽る。そして、ここでのマクビーとハートのアドリブ・ソロは絶品。当然、ジョアンのピアノのアドリブは「翔ぶ」が如くである。

冒頭の3曲だけでも、このジョアンの初リーダー作でのトリオ演奏は秀逸であることが判る。このトリオ・パフォーマンス、2025年の現代でも、なかなか聴くことの出来ないレベルの高いもの。メインストリーム系の純ジャズ・トリオのパフォーマンスとして、この盤は名盤の類だろう。知名度は低いが、この盤はピアノ・トリオ者には必須アイテム。謹んで、「ピアノ・トリオの代表的名盤」の1枚とさせていただきたい。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年11月29日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 116

当時、バリー・ハリスは65歳。円熟の境地、大ベテランの域に達した「バップ・ピアノの職人」の、成熟した味わい深いバップ・ピアノを聴くことが出来る。硬質でハッキリしたタッチの右手の弾き回しのリズム&ビートを、左手のコード弾きが押さえていく。左手のリズム&ビートに乗った、雄弁で流麗でバップな右手が唄いまくる。

『Barry Harris Live At "Dug"』(写真左)。1995年5月29日、東京新宿のバー「Dug」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Barry Harris (p), Kunimitsu Inaba (b), Fumio Watanabe (ds)。バップ・ピアノの職人、バリー・ハリスの、ベーシストの稲葉邦光とドラマーの渡辺文夫とのトリオでの東京におけるライヴ録音。

このライヴ盤では、硬質でハッキリしたタッチの右手の弾き回しが「心地良く丸くなった」。左手のコード弾きが「深遠な響きになった」。歳を取って衰えたわけでは無い。

バップ・ピアノとしての表現が「深くなった、深化した」と表現した方が適切だろう。指の弾き回しも衰えていない、リズム感は淀むことは皆無。バップ・ピアノの「正しく成熟した音」の好例の一つ。
 

Barry-harris-live-at-22dug22

 
収録曲は全10曲。2曲はバリー・ハリスの自作曲。残り8曲はスタンダード曲。有名どころから、渋い選曲まで、なかなか考えた選曲で、バリー・ハリスのバップ・ピアノが映える寸法。「Somebody Loves Me」「It Could Happen to You」「Cherokee」そして「On Green Dolphin Street」等々、絶品のスタンダード解釈とパフォーマンス。

バックを務めるリズム隊、ベーシストの稲葉邦光とドラマーの渡辺文夫も、バップなリズム隊を好演。出過ぎず、控えすぎず、バリー・ハリスの弾く曲想によって、自在にリズム&ビートをチェンジ・オブ・ペースし、適度にハリスのピアノの支え、鼓舞する。まるで、レギュラー・バンドの仲であるかのように。

『バリー・ハリス/ライヴ・アット・ダグ 完全版』(写真右)が、2014年6月にCD2枚組でリイシューされている。オリジナル盤とは当然曲順も違うので、聴いてみても、どうもしっくり来ない(笑)。僕はどうも、このオリジナル盤の方がしっくりくるみたい。

ハリスは、1993年に脳梗塞になり、復帰が危ぶまれたが、再起を果たした後の来日でのライヴ録音だったとか。そんなことを微塵も感じさせない、バリー・ハリスの快作である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年11月26日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 115

バリー・ハリスと言えば、スタイルは「バップ・ピアニスト」。ビ・バップの演奏マナーをハードバップに活かした演奏が個性で、テクニック溢れる流麗な指捌きと簡潔なアドリブ・フレーズが個性。硬質で木訥とした流麗でバップな弾き回しで、ダッド・ダメロンの名曲を弾き倒していく。バップ・ピアノの職人には、こう言った、気の利いたレコーディング企画が良く似合う。

Barry Harris『Barry Harris Plays Tadd Dameron』(写真)。1975年6月4日の録音。Xanaduレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Barry Harris (p), Gene Taylor (b), Leroy Williams (ds)。ピアニストのバリー・ハリスによる、タッド・ダメロン関連の楽曲を収録した企画盤。バップ・ピアノの職人、バリー・ハリスがリーダーのトリオ編成。フュージョン全盛前期の中、1975年の録音になる。

ダメロンの曲が良いので、バリー・ハリスの「バップ・ピアノ」が映えに映える。硬質でハッキリしたタッチの右手が、ダメロンの好曲の持つ「美しいフレーズ」をクッキリ浮き出させる。バップ・ピアノだからとバリバリ弾きまくるだけではない。良い感じで抑揚をつけ、強弱をつけ、歌心満点のアドリブ・フレーズを弾きまくる。
 

Barry-harrisbarry-harris-plays-tadd-dame

 
また、硬質でハッキリしたタッチの右手の弾き回しのリズム&ビートを、左手のコード弾きが押さえていく。左手のリズム&ビートに乗った、雄弁で流麗でバップな右手が唄いまくる。そんなハリスのバップ・ピアノが炸裂しまくる。バップ・ピアノはこうでなくっちゃ、と改めて思わせる様な、ハリスの見事な弾きっぷり。バウエル直系というが、唄うが如く、バップなフレーズを弾きこなしていく様は、バリー・ハリス独特の個性だろう。

バップ・ピアノ、パウエル直系のバップ・ピアノとはいえ、唄うが如くのバラード・プレイには、思わず耳をそばだたせる。「If You Could See Me Now」などは絶妙である。ばりばりバップなピアノで、流麗なバラードを唄い上げていく。そう、バラード曲で、ハリスの硬軟自在、緩急自在、変幻自在なプレイが聴ける。1950年代のバップ・ピアノとは一味違う、歌心を備えた、流麗なバップ・ピアノ。聴き心地満点である。

バップでリズム&ビートを刻み、堅実にキープするジーン・テイラーのベースとリロイ・ウィリアムスのドラムも良いパフォーマンスを繰り広げている。バップなピアノ・トリオって、実はリズム&ビートのキープに徹するベースとドラムの出来が重要なんだが、このトリオ演奏については「合格点」。1970年代の純ジャズなピアノ・トリオ盤として、名盤として良い内容ではないでしょうか。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年9月17日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 114

伊ジャズの至宝ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィが、サイドメンがマーク・ジョンソンのベースにポール・モチアンのドラムスという、時期は異なるがビル・エヴァンス・トリオのサイド・メンだったメンバーだった二人を従えてのピアノ・トリオの素晴らしいライヴ音源である。

Enrico Pieranunzi, Marc Johnson & Paul Motian『The Copenhagen Concert』(写真左)。1996年12月2日、コペンハーゲン・ジャズハウスでのライヴ録音。2022年のリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Marc Johnson (b), Paul Motian (ds)。

冒頭、モチアン作の「Abacus」から、濃密なインタープレイが始まる。ビル・エヴァンス・トリオのサイド・メンだったメンバーだったベースとドラムスでのトリオのインタープレイ。どこか、エンリコのピアノは、ビル・エヴァンスのプレイを彷彿とさせるが、聞き進めていくと、フレーズの組み立て、音の重ね方、音の響き、それらは全く違う。

エンリコの旋律の響きは「欧州的」。クラシックに根ざした、硬質で端正なユニゾン&ハーモニーが実に欧州的。耽美的ではあるが、決して、抒情的に流されない、端正で破綻の無い、キッチリかっちりしたインプロビゼーションがピエンリコのピアノの一番の個性。
 

Enrico-pieranunzi-marc-johnson-paul-moti

 
耽美的でリリカルでメロディアスなところは「エヴァンス派」。しかし、硬質で端正なユニゾン&ハーモニーが実に欧州的ところがエンリコのオリジナル。

このライヴ・パフォーマンス、トリオのメンバー3名とも絶好調。特にエンリコ絶好調。絶妙なテンポ・チェンジ、美旋律の極みの白熱のソロ、リリカルで耽美的なフレーズの連発、鋭い即興、エンリコの個性全開、オリジナリティー全開である。スタンダード曲の解釈も個性的で素晴らしい。

サイドメンも絶好調。伸び伸びとした鋼の様なベースを展開するジョンソンが凄く魅力的。さすが、ビル・エバンスの最後のベーシスト。エバンス派エンリコとの相性は抜群。柔軟なソロを展開するジョンソンが躍動する。

そして、ポール・モチアンのドラムが最高。さすが、レギュラーなビル・エバンス・トリオ最初のドラマー。微妙な間を意識したモダンで粋なドラミングは、ポール・モチアンならではのもの。唯一無二なドラミングは聴きこたえ抜群。

エバンス派のエンリコの面目躍如。欧州的な硬質で端正なユニゾン&ハーモニーで、耽美的にリリカルに、バップなピアノを弾きまくる。そして、エヴァンスのパートナーであった、マーク・ジョンソンとポール・モチアンと最高のインタープレイを展開する。21世紀のピアノ・トリオの傑作の一枚である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年5月14日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 113

バリー・ハリス(Barry Harris)。米国のジャズ・ピアニスト。1929年12月15日、米国ミシガン州デトロイト生まれ。2021年12月8日逝去(享年91歳)。COVID-19パンデミックの中、ウイルスの合併症で逝去。

バリー・ハリスは「パウエル派」。バリー・ハリスは、バド・パウエルのスタイルを完璧に踏襲しつつ、パウエルの様に攻撃的では無く、ブルージーで優雅で優しいフレーズが特徴。パウエルより、フレーズは整っていて典雅。端正な弾き回しは爽快感抜群。

そんなフレーズをベースに「優れた総合力そのもの」を個性とするピアニスト。スタイルは「バップ」。ビ・バップの演奏マナーをハードバップに転化した弾きっぷりで、テクニック溢れる流麗な指捌きと簡潔なアドリブ・フレーズが特徴。

Barry Harris『Preminado』(写真左)。1960年12月21日と1961年1月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Barry Harris (p), Joe Benjamin (b), Elvin Jones (ds)。3曲目の「I Should Care」だけ、バリー・ハリスのソロ・ピアノ演奏。その他は、バリー・ハリスのバップ・ピアノをメインとした、オーソドックスなピアノ・トリオ編成。

バップ・ピアニスト、バリー・ハリスのピアノの良いところがギッシリ詰まったトリオ盤である。とにかく、バリー・ハリスの弾きっぷりが見事。
 

Barry-harrispreminado  

 
「パウエル派」のマナーに則りながら、端正で整った、ブルージーで優雅で優しい、それでいて粒だちの良い弾き回しは「優れた総合力そのもの」を個性とするピアニストの面目躍如。明快なタッチは爽快感抜群。

「優れた総合力そのもの」を個性とするピアノで弾き回すスタンダート曲は極上の響き。冒頭の「My Heart Stood Still」、4曲目の「There's No One But You」、6曲目「"It's the Talk of the Town」そして、ラストの「What Is This Thing Called Love?」。スタンダード曲を弾くバリー・ハリスのピアノは切れ味と爽快感抜群。これぞ「バップ・ピアノ」という歯切れの良い弾き回しで、よく唄っている。

バックのリズム隊。ベースのジョー・ベンジャミンは、スタジオ・ベーシストであるが、その弾き回しは堅実で重厚。特に、ベンジャミンのウォーキング・ベースはソリッドで粘りがあって良好。そして、ドラムはエルヴィン・ジョーンズ。鋼のように力強く粘りのある、ハードバップなドラミングを叩きまくる。それでいて、決して耳につかず、効果的に、バリー・ハリスのピアノを引き立て、強力に鼓舞しプッシュする。

優秀なピアノ・トリオ演奏は、フロント&バック両方をしっかり弾きまくるピアノはもちろんのこと、リズム&ビートを支える、ベースとドラムの力量と優れたサポートが必須なのだが、このバリー・ハリスの『Preminado』は、それらを全てを備えている。謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」の一枚として取り上げたい。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました! 

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から14年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4

2025年5月 3日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 112

ミシェル・ルグランは、仏映画音楽界の巨匠。「シェルブールの雨傘」「華麗なる賭け」「おもいでの夏」など、手掛けた有名曲は多数。そして、優秀なジャズ・ピアニスト兼アレンジャーでもあった。本場米国のジャズマンや批評家からも高く評価されていたというから立派なものだ。

Michel Legrand『At Shelly's Manne-Hole』(写真左)。1968年9月5日、ハリウッドの「Shelly's Manne-Hole」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Michel Legrand (p), Ray Brown (b), Shelly Manne (ds)。ミシェル・ルグランが映画音楽の仕事でハリウッドに滞在していた時期に実現した「Shelly's Manne-Hole」でのライヴ録音。

ミシェル・ルグランのピアニストとして、卓越した才能を最大限に発揮したトリオ盤である。冒頭のトリオの3人の名前を冠した「The Grand Brown Man」でのルグランのピアノが凄い。アップテンポでダイナミック、シングルトーンからブロックコードまで、ルグランの持つピアノのテクニックを総動員した、挨拶代わりのパフォーマンスに思わず度肝を抜かれる。
 

Michel-legrandat-shellys-mannehole

 
アップテンポ&ダイナミックでガンガン飛ばすかと思いきや、ルグランのオリジナル曲「A Time for Love」と「Watch What Happens」では、オリジナルのメロディーを愛しむように弾き進める、流麗で耽美的なルグランのピアノで、不意を突かれる。超スタンダード曲「My Funny Valentine」では、ルグランのスキャットまで飛び出す始末。歌心満点のルグランのピアノが素晴らしい。

そして、このピアノ・トリオ、バックのリズム隊の二人、ベースのレイ・ブラウン、ドラムのシェリー・マン、このウエストコースト・ジャズにおける、代表的名手の存在が大きい。丁々発止とルグランのピアノを受け止め、極上のテクニックでルグランのピアノを引き立て、鼓舞する。有名スタンダード曲「Willow Weep for Me」での、レイ・ブラウンのベースとルグランのピアノとの掛け合いは見事。

名手二人と繰り広げるトリオ編成による、極上のパフォーマンス。ミシェル・ルグランのピアニストとしての真価を存分に披露した、ピアノ・トリオの名盤である。ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の特集には、なかなか、このアルバム・タイトルが上がることは無いが、我がバーチャル音楽喫茶「松和」では、謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」の一枚に認定させて頂きたい。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました! 

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から14年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4

2025年4月26日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 111

迫力満点のモーダル・ピアノのレジェンド、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)は、一度確立したスタイルや奏法は滅多に変えないタイプ。コルトレーンの下で確立したスタイル、ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手。タイナーは生涯、このスタイルと奏法を変えることは無かったように思う。

しかし、コルトレーン・ジャズの精神性を踏襲し継承したモード・ジャズは1970年代まで。1980年代は、コルトレーン・ジャズの影響下から離れ、タイナーのピアノのスタイルと奏法はそのままに、タイナー・オリジナルの志向で、モード・ジャズを展開している。

McCoy Tyner『Bon Voyage』(写真左)。1987年7月9日の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Avery Sharpe (el-b track 1, ac-b other track), Louis Hayes (ds)。タイムレス・レーベルからリリース。力強いタイナーのピアノ・トリオ演奏を満喫できるアルバムである。
 

Mccoy-tynerbon-voyage

 
ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手。タイナーのスタイル・奏法が心ゆくまで堪能できるトリオ演奏である。モーダルな展開が基本ではあるが、タイナーのピアノの底には、しっかりと「バップ・ピアノ」があることが確認出来る。爽快感抜群のタイナー十八番の「ガーン、ゴーンなハンマー奏法」での、1980年代のタイナー流のモード・ピアノ。

レパートリーは至ってシンプルで、5曲の古き良きスタンダード曲を挟み、魅力的なラテン調のタイトル曲「Bon Voyage」と「Blues For Max」が収録されている。そして、その中間に「Jazz Walk」というオリジナル曲がある。どの曲でも、余裕あるエネルギッシュな弾き回しは、聴いていて爽快である。

バップ・ピアノ志向のタイナー・オリジナルのモード・ピアノ。もうコルトレーン・ジャズの面影は全く無い。タイナーも自らの志向をベースに、ガーン、ゴーンとダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手で、のびのび、気持ちよく、タイナー・オリジナルなモード・ピアノを弾きまくる。地味な存在ではあるが「ピアノ・トリオの代表的名盤」としても良い内容の濃さ。好リーダー作です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました! 

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から14年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4

2025年4月16日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 110

レッド・ガーランド(Red Garland)のピアノは、心無いジャズ者の方々から、ラウンジ・ピアノとか、イージーリスニング・ピアノと揶揄されることがある。確かに、シンプルで聴きやすいピアノではある。しかも、その演奏スタイルは、メジャー・デビュー以降、全く同じスタイルで演奏される。「金太郎飴ピアノ」とも揶揄されるくらいである。

しかし、同じスタイルでブレることなく弾き続けているが、多くの彼のリーダー作を聴き通しても、飽きが来ることはない。演奏する曲想に従って、弾き方やニュアンスを効果的に変えているのだ。逆に、弾き方やニュアンスを変えても、ガーランドのピアノの個性の大本は変わらない様に工夫している。目立たないが、これぞ「職人芸」である。

Red Garland Trio『Red Garland at the Prelude』(写真左)。1959年10月2日、NYの「The Prelude Club」でのライヴ録音。プレスティッジ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Jimmy Rowser (b), Charles "Specs" Wright (ds)。シンプルな燻銀ピアニスト、レッド・ガーランドの唯一のライヴ盤。

このライヴ盤のガーランドのピアノを聴けば、ラウンジ・ピアノとか、イージーリスニング・ピアノという印象はすっ飛んでしまうだろう。このライヴ盤を聴くと判るが、ガーランドのピアノは、筋金入りの「バップ・ピアノ」である。ブロックコードを駆使して、強烈なドライブ感とスイング感を醸し出し、シングルトーンな右手は、テクニックよろしくバップなフレーズを振り撒いている。
 

Red-garland-triored-garland-at-the-prelu

 
そして、ライヴなので、様々なイメージの曲、例えば、ブルース、歌もの、スタンダード、バラード、バップ。ガーランドはそれぞれの曲のイメージによって、演奏のニュアンスをしっかりと変えている。ブロックコードとシングルトーンを駆使するところは変わらないので、聴き逃しがちなのだが、ガーランドは、曲のイメージによって、緩急自在、変幻自在、硬軟自在に弾き分けている。

ブロックコードとシングルトーンを駆使するところは全く変わらないのに、アルバムを通じて、全く飽きが来ないのが「その証拠」である。なんだか手品にかかったみたいなガードランドの「弾き分け」である。

ジミー・ロウサーのベース、スペックス・ライトのドラムによるリズム隊は、リズム・キープに徹していて、決して、インタープレイを仕掛けて、ガーランドに絡むことは無い。故に、このライヴ演奏では、ガーランドのピアノだけが映えに映える様にプロデュースされている。

アルバムのジャケットも、やっつけジャケットが多いプレスティッジだが、このアルバム・ジャケは、プレスティッジらしからぬ、趣味とセンスの良い良好なジャケ。ガーランドのNYの「The Prelude Club」でのライヴ演奏が聴こえてきそうな、優れもののジャケットを纏って、このライヴ盤はガーランドの代表作の筆頭として良いだろう。ピアノ・トリオの代表的名盤の一枚でもある。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました! 

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から14年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

_Blue Noteの100枚 _ECMのアルバム45選 _この盤のドラムを聴け! _この盤のピアノを聴け! _こんなアルバムあったんや _ながら聴きのジャズも良い _クリスマスにピッタリの盤 _コンテンポラリーな純ジャズ _ジャケ買い「海外女性編」 _ジャズ・ギターの名演 洋楽編 _ジャズ喫茶で流したい _トランペットの隠れ名盤 _ビッグバンド・ジャズは楽し _ビートルズのカヴァー集 _ピアノ・トリオの代表的名盤 _フェンダー・ローズを愛でる _フュージョン・ジャズの優秀盤 _僕なりの超名盤研究 _和ジャズの優れもの _和フュージョンの優秀盤 _夜の静寂にクールなジャズ _音楽喫茶『松和』の昼下がり A&Mレーベル AOR Argo & Cadetレーベル Atlanticレーベル Bethlehemレーベル Blue Note 4000番台 Blue Note 4100番台 Blue Note 4200番台 Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル DD・ブリッジウォーター ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル Jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 アイク・ケベック アキコ・グレース アジムス アストラッド・ジルベルト アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アントニオ・サンチェス アンドリュー・ヒル アンドレ・プレヴィン アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・ゴールドバーグ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イリアーヌ・イリアス イリノイ・ジャケー インパルス!レコード ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウォルフガング・ムースピール ウディ・ショウ ウラ名盤 エグベルト・ジスモンチ エスビョルン・スヴェンソン エスペランサ・スポルディング エディ・ハリス エメット・コーエン エリック・アレキサンダー エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルヴィン・ジョーンズ エロール・ガーナー エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オズ・ノイ オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリス・ポッター クリフォード・ブラウン クルセイダーズ クレア・フィッシャー クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニーG ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン ゴンサロ・ルバルカバ ゴーゴー・ペンギン サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド・ジョーンズ サム・ヤヘル サム・リヴァース サンタナ サン・ラ・アーケストラ ザ・バンド シェリー・マン シダー・ウォルトン シャイ・マエストロ シャカタク ジェイ & カイ ジェイ・ジェイ・ジョンソン ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジェリー・マリガン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジミー・ヒース ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・バリトン・サックス ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・ラージ ジョエル・ロス ジョシュア・レッドマン ジョナサン・ブレイク ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・コルトレーン on Atlantic ジョン・コルトレーン on Prestige ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン ジョー・ロヴァーノ ジーン・アモンズ スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン ステイシー・ケント ステップス・アヘッド スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・スティット ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャーリー・ヘイデン チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テッド・カーソン テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ドン・チェリー ナット・アダレイ ニルス・ラン・ドーキー ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハワード・マギー ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハービー・マン ハーブ・アルパート ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・シャンク バド・パウエル バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグ・ジョン・パットン ビリー・コブハム ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビル・ブルーフォード ビートルズ ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・アップチャーチ フィル・ウッズ フォープレイ フランク・ウエス フランク・シナトラ フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・アーヴィン ブッカー・リトル ブライアン・ブレイド ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザーズ プログレッシブ・ロックの名盤 ヘレン・メリル ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボビー・ハンフリー ボブ・ジェームス ボブ・ブルックマイヤー ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイク’・スターン マイケル・ブレッカー マイルス( ボックス盤) マイルス(その他) マイルス(アコ)改訂版 マイルス(アコ)旧版 マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マハヴィシュヌ・オーケストラ マルグリュー・ミラー マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・5 マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モンティ・アレキサンダー モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラムゼイ・ルイス ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラリー・ヤング ラルフ・タウナー ランディ・ブレッカー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レイ・ブラウン レジェンドなロック盤 レス・マッキャン レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロニー・リストン・スミス ロバート・グラスパー ロベン・フォード ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー ヴィンセント・ハーリング 上原ひろみ 北欧ジャズ 古澤良治郎 吉田拓郎 向井滋春 四人囃子 国府弘子 増尾好秋 大村憲司 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 松岡直也 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 阿川泰子 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー