2025年11月 8日 (土曜日)

ベツレヘムの異色”ビッグバンド”

カタログを眺めていると、あれっ、と思うんだが、他のジャズ・レーベルに比べて、ボーカルものが多い。なんと、カタログ全体の4分の1がボ-カル盤。つまりは、ベツレヘム・レーベルは「ジャズ・ボーカルの宝庫」。しかし、ビッグバンド・サウンドにも手を出しているのにはビックリした。ベツレヘムのビッグサウンドとはどんなものなのか。興味津々である。

『Art Blakey Big Band』(写真左)。1957年12月、NYでの録音。ベツレヘム・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Ray Copeland, Bill Hardman, Idrees Sulieman, Donald Byrd (tp), Frank Rehak, Jimmy Cleveland, Melba Liston (tb), Bill Graham, Sahib Shihab (as), Al Cohn, John Coltrane (ts), Bill Slapin (bs), Walter Bishop, Jr. (p), Wendell Marshall (b)。

端正な、お手本の様なビッグバンド・サウンド。パーソネルを見渡すと、ビッグネームがズラリ。リーダーでドラムのアート・ブレイキー。そして、トランペットにドナルド・バード、トロンボーンのジミー・クリーブランド、アルト・サックスにサヒブ・シハブ、テナーには、アル・コーンとジョン・コルトレーン、ピアノに、ウォルター・ビショップ・ジュニア、ベースにウエンデル・マーシャル。
 

Art-blakey-big-band

 
ビッグバンド・サウンドとして、この盤の面白いところは、「Tippin」と「Pristine」では、アート・ブレイキー率いるクインテット( Art Blakey (ds), feature a quintet of Donald Byrd (tp),, John Coltrane (ts), Walter Bishop Jr.(p), Wendell Marshall (b)) のパフォーマンスがフィーチャーされるアレンジで演奏されていること。これ、聴いていて意外と面白い。

急造のビッグバンドなので、パーマネントなビッグバンドの様な、突出した個性や特色があるという訳では無いが、ビッグネームのソロ・パフォーマンスについては、それぞれの個性をしっかり出して吹きまくるので、それはそれで楽しめる。ブレイキーのドラミングだって、メッセンジャーズでの「ナイアガラ・ロール」よろしく、ブレイキー独特の個性で叩きまくる。これが、また良い。

これだけ、ビッグネームが集まってのビッグバンド演奏である。もちろん、パーマネントなビッグバンドでは無い。このレコーディングの為に集められた急造ビッグバンドである。まとまらなくて当たり前なのだが、これがまあ、端正で迫力満点、テクニック極上のビッグバンド・サウンドに仕上がっているのだから、大したものである。プロデューサーのリー・クラフトと、リーダーのアート・ブレイキーの大手柄だろう。
 
 

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2025年11月 6日 (木曜日)

ジャス喫茶で流したい・305

僕が本格的にジャズを聴き始めたのが1978年。そして、その翌年、このアルバムを聴いた時、その時点での、その時代での日本のジャズは、世界のジャズに比肩するレベルにあることを初めて確信した。我が国の音楽は、西洋、欧州や米国の後塵を拝してきたイメージがあったが、ジャズは違う。そう感じさせてくれたアルバムがこれだった。

富樫雅彦 & 鈴木勲『陽光』(写真左)。1979年2月1-3日、東京での録音。ちなみにパーソネルは、富樫雅彦 (ds, perc, synth, solina), 鈴木勲( b, piccolo-b, cello, p, solina)。我が国の純ジャズ系ドラマーの鬼才レジェンド、富樫雅彦と、我が国のジャズ・ベーシストのレジェンド、鈴木勲とのデュオ盤。

富樫雅彦は本職はドラム、鈴木勲は本職はベース。ドラムとベースのデュオか。ちょっと地味な感じがして、聴いていて飽きなければ良いが、と思いつつ、レコードの針を落としたら、ほど無くピアノの音が滑り込んできたので、あれ、ドラムとベースのデュオじゃなかったか、とパーソネルを見ると、富樫がシンセサイザーを、鈴木がピアノとシンセサイザーを弾いていて、の多重録音。
 

Photo_20251106222001   

 
演奏の基本は、フリー〜スピリチュアル・ジャズ。フリーの部分は、米国東海岸の様な、激情に身を預けて、心の赴くまま、無勝手流に弾き散らすのでは無く、現代音楽のエッセンスを融合した、広がりと間を活かした即興演奏をベースとした、独特のフリー・ジャズ。演奏全体の透明度と間の静謐度の濃い演奏は、欧州のECMレコードに通じる、レベルの高いものだった。

理路整然としたフリーな演奏、その透明度の高さ、間の静謐度の高さは、和ジャズ独特の「侘び寂び」を基本とした、スピリチュアル・ジャズを表現している。リズム&ビートは即興をベースとしていて、この辺りは、ECMレコードの「ニュー・ジャズ」を展開を踏襲している様に感じるが、音の暖かさとカラフルさは、和ジャズ独特の「ニュー・ジャズ」である。

冒頭の「A Day Of The Sun」。シンセとピアノのイントロからサンバ・ビートに展開するスピリチュアル・ナンバー。このタイトル曲に代表される様に、この盤には、我が国独特のフリー〜スピリチュアル・ジャズが詰まっている。1979年度・スイング・ジャーナル誌ジャズ・ディスク大賞受賞作品。この大賞受賞は納得。世界のジャズに比肩する、アーティスティックな、ニュー・ジャズ志向のフリー〜スピリチュアル・ジャズでした。和ジャズの名盤の1枚でしょう。
 
 

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2025年11月 5日 (水曜日)

ハレルの現代の ”ポストバップ”

不思議な雰囲気のコンテンポラリーなネオ・ハードバップな作品。ハードバップ時代の流麗なテーマに、エレクトリックピアノで活気づけられたより現代的なグルーヴが融合した、ジャズの伝統と現代性を見事に融合した現代のコンテンポラリー・ジャズの秀作である。

Tom Harrell『Alternate Summer』(写真左)。2022年11月28日、12月27日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Tom Harrell (tp), Dayna Stephens (ts), Mark Turner (ts), Charles Altura (ac-g, el-g), Luis Perdomo (p, rhodes), Ugonna Okegwo (b), Adam Cruz (ds)。

リーダーはトランペットのトム・ハレル。デイナ・スティーブンス、マーク・ターナーのテナー、チャールズ・アルトゥラのギター、ベネズエラ生まれのルイス・ペルドモのピアノ、ローズ、ドイツ系ナイジェリア人のウゴナ・オケグウォのベース、アダム・クルーズのドラム のセプテット編成。

アルバムの中、トム・ハレルのトランペットは、いつもながら、素晴らしい表現力と深みのある音色で、楽曲全体のサウンドを統一し、一本の筋をグッと通している。
 今回のハレルは、伝統的なバップ・トランペットに終始しているが、出てくるその柔軟でどこか哀愁感漂う、耽美的でリリカルなトランペットは懐古趣味のそれではない。現代のネオ・ハードバップど真ん中の、現代のバップ・トランペットの音色であり、パフォーマンスである。
 

Tom-harrellalternate-summer

 
冒頭「Miramar」は、スタッカートを基調としたメロディーと、独創的な即興演奏を彩るブルージーでグルーヴィーなフレーズがユニーク。ハレルのトランペットの洗練された表現が見事、サックス奏者のターナーとキーボード奏者のペルドモが豊かでメロディアスな旋律を紡ぎ上げる。

2曲目の「Peanut」は、ファンクネスを心地良く漂わせるポスト・バップなチューン。3曲目のタイトル曲「Alternate Summer」は、温かみのあるさわやかなバラード。

以降、「Intermetzo」は、オケグウォの素晴らしいベースソロと官能的な響きが彩る、上品な3/4拍子の楽曲。「UV」は、アルトゥラのしなやかなエレギが飛翔する変則ブルース。「Chalcedon」は、魅惑的なメロディとペルドモのグルーヴ感溢れるキーボード・ワークが光るポストバップの秀曲。

そして、「Plateau」は、脈打つリズムのベースが大活躍。「Wind」は、躍動感あふれるインタープレイが見事、そして、陶酔感あふれる「Radius」で大団円。

ウォームな各楽器の音色、各楽器のバランスの良さ、録音も良く、聴いていて気持ちが良い。現代のネオ・ハードバップど真ん中、現代のコンテンポラリーなポストバップな音世界は、温故知新な音に満ちていて、飽きが来ない。良いアルバム、トム・ハレルの秀作です。
 
 

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2025年11月 4日 (火曜日)

野田ユカ『カリブの夢』を聴く

和フュージョンは、米国とは全く異なる、独特の深化を遂げていく。リズム&ビートは、ファンクネス希薄なロック寄りのオフビート。楽器はシンセサイザーを始めとする鍵盤楽器が活躍する。米国では、フュージョンはスムースへと進化するが、我が国では、フュージョンは、ばりばり硬派な正統派フュージョンを突き進むか、イージーリスニング&ヒーリング志向のライトでポップなフュージョンに枝分かれするか、のどちらかだった。

野田ユカ『カリブの夢』(写真左)。1989年の作品。ちなみにパーソネルは、野田ユカ (key), 塚山エリコ (produce, key), 土岐英史 (sax), 萩谷清 (g), 加瀬達 (b), 渡辺直樹 (b), 市原康 (ds), 岡本郭男 (ds), 鳴島英治 (perc), 木村 "キムチ" 誠 (perc)。副題が「ライト・フュージョン・ファンタジー」の、和フュージョン志向のインスト盤。

リーダーの野田ユカは、現在はピアニスト・鍵盤ハーモニカ奏者。しかし、彼女は、エレクトーンフェスティバル'81全日本大会入賞の実績を持つ。このアルバムは、野田ユカが、ヤマハ音楽振興会のエレクトーンプレイヤーだった89年に発表したソロアルバム。副題からも判る様に、あっけらかんと明るい、ファンタジーな、イージーリスニング&ヒーリング志向のライトでポップな和フュージョン。
 

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和フュージョンの深化の特徴として、鍵盤楽器の積極的活用がある。この盤でも、当然、主役はエレクトーンからシンセサイザーをはじめとする鍵盤楽器が大活躍。ギターとサックスは、その鍵盤楽器が活躍する中での「口直し」というか「耳直し」的な役割を果たしている。このイージーリスニング&ヒーリング志向のライトでポップなフュージョンのメインは「鍵盤楽器」。テクニックは極上、歌心もあって、演奏のレベルは高い。舐めてはいけない。

ベタな潮騒の音から始まる、ライトでポップなフュージョン・チューン、タイトル曲の「カリブの夢」。隠し味に、カリビアンなリズム&ビートが見え隠れするところが、良いアクセントになっている。キャッチーなエレクトーンの調べがキュートで印象的な「Manhattan Blue」。チャイニーズ&テクノポップなアレンジが和フュージョンらしい「Clip My Heart」。全体的にカリビアン、ラテン、テクノの音要素を融合しつつ、海辺のアーバンな雰囲気を醸し出したソフト&メロウな音作り。

とにかく、あっけらかんとして、翳りのない、海の香りがする、アーバンな、イージーリスニング&ヒーリング志向のライトでポップな和フュージョン。じっくりとスピーカーに対峙して聴き込む系の硬派なフュージョンでは無いが、ながら聴きとして、イージーリスニングとして、BGMとして、リラックスして聴くには最適な和フュージョン盤。硬派なフュージョン者の方々からすると「ありえない」盤かもしれないが、イージーリスニング&ヒーリング志向の和フュージョンとしては良い内容の盤だと思います。
 
 

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2025年11月 3日 (月曜日)

”ヴァンガードのロリンズ” の再発

未だに、ハードバップ時代のリイシューがあるのには驚く。もう、品切れだと思うんだが、レコード会社というのは商魂たくましい。手を変え、品を変え、リイシューし、ジャズ者ベテランを中心に「搾取」を繰り返している(笑)。しかし、リイシューにも、確かに、これは価値があるな、と思われる、素敵なリイシューも存在する。

Sonny Rollins『A Night at The Village Vanguard (The Complete Masters)』(写真左)。1957年11月3日の録音。ブルーノートの1581番。ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts), AFTERNOON SET: Donald Bailey (b) Pete LaRoca (ds), EVENING SET: Wilbur Ware (b) Elvin Jones (ds)。エンジニア、ケヴィン・グレイによる最新リマスターを採用した、音質向上のコンプリート盤のリイシュー。

新たに発見された未使用のオリジナル7.5ipsマスターテープからケヴィン・グレイがリマスタリング。これが最大の「ウリ」。確かに音が良い。ロリンズのテナー・サックスは、骨太でブラスの低音が心地良く響いて、音の太さが耳に心地良い。ヴィレッジ・ヴァンガードの客席のど真ん中に座って、聴いているんじゃないか、と錯覚する位の生々しいテナー・サックスの音。未使用のオリジナル・マスターって、こんなに威力があるのだなあ、と感心した。
 

Sonny-rollinsa-night-at-the-village-vang

 
何故、未使用のオリジナル7.5ipsマスターテープが存在したのか。録音技師のルディ・ヴァン・ゲルダーは、自らのスタジオではアンペックス社製の15ipsのテープレコーダーを使用していた。が、これは重い。「ヴァンガード」には、かわりに7.5ips(1秒間に7.5インチ)のデッキを使った。そして、その7.5ipsマスターテープの素材を、自らのスタジオの15ipsのテープにダビングし、マスタリングしている。このダビングの過程で音の劣化が起きた。そして、オリジナル7.5ipsマスターテープが、マスタリングに未使用のまま残った。それが真相らしい。

なので、この『A Night at The Village Vanguard (The Complete Masters)』は、ルディ・ヴァン・ゲルダーのマスタリングの成果では無い。名匠ケヴィン・グレイのマスタリングである。それでは、この『A Night at The Village Vanguard』は、オリジナルとは別物か、といえば、そうじゃ無い。録音されたロリンス・トリオのパフォーマンス音源は同じなのだ。しかも、ケヴィン・グレイのマスタリングは、できる限り、ルディ・ヴァン・ゲルダーのマスタリングのイメージに近づけているみたいなのだ。

よって、この素晴らしい音の『A Night at The Village Vanguard (The Complete Masters)』がリイシューされた。そのライヴ音源の素晴らしさは、「最高の 『A Night At The Village Vanguard」(2014年11月19日の記事)にまとめてあります。とにかく、このライヴ盤でのロリンズは素晴らしい。ロリンズのインプロヴァイザーとしての最高の姿を、このライヴ盤はしっかりと捉え、記録している。しかし、ロリンズがこんなにステージ上でおしゃべりとは思わなかった(笑)。
 
 

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2025年11月 2日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・304

プリズム(PRISM)は、和田アキラ(ギター)と渡辺建(ベース)を中心に1975年に結成された、クロスオーバー&フュージョン・バンド。今となっては、マイナーな存在に甘んじているが、結成当時は人気のバンド。インスト重視、高い演奏レベル、ロックをベースに、ジャズ、エスニカン・ミュージック、プログレッシブ・ロックなどを取り込んだ、ロックからアプローチしたクロスオーバー&フュージョン志向の音世界は、唯一無二な個性だった。

PRISM『SURPRISE』(写真左)。1980年の作品。ちなみにパーソネルは、和田アキラ (g), 佐山雅弘(p, key), 渡辺建 (b), 青山純(ds)。プリズムの、ライヴ盤含めて、デビュー以来、4枚目のアルバム。このアルバムから、ピアノ、キーボードに佐山雅弘、ドラムに青山純が参加している。プリズムの音がダイレクトに伝わってくる、プリズムのキャリア上、最高傑作の誉れ高い秀作である。

プリズムの音が特徴的。リズム&ビートの雰囲気を聴くとクロスオーバー&フュージョン・テイストなんだが、フロントのエレギの音はロック・テイスト。バックの演奏の雰囲気がイニシアチヴを取ると演奏全体の雰囲気はクロスオーバー&フュージョン志向になるが、フロントの和田のエレギがイニシアチヴを取り出すと、途端に演奏全体の雰囲気はロック志向になる。
 

Prismsurprise

 
そして、リズム&ビートが、確実に「和クロスオーバー&フュージョン」仕様。ロックからアプローチした、クロスオーバー&フュージョン・ジャズでありながら、米国のクロスオーバー&フュージョン・ジャズに特徴的な「ファンクネス」が感じられないスンナリ&スッキリした、乾いたオフ・ビートが特徴的。明らかに、プリズムは、日本仕様のクロスオーバー&フュージョン・ジャズ・バンドの代表的存在のひとつなのだ。

そんなリズム&ビートが醸し出す独特のグルーヴ感が堪らない。そんな独特のグルーヴに乗って、和田アキラのバカテク・ギターが疾走する、佐山雅弘のキーボードが飛翔する。和田のギターは当初通りロック・テイスト優先なんだが、佐山雅弘のキーボードはジャジーで、この佐山のジャズ志向のフレーズが、プリズムのクロスオーバー&フュージョン志向を色濃くしている。ロック志向の和田のギター、ジャズ志向の佐山のキーボード。この二者のインタープレイが、このアルバムの音世界を決定付けている。

このプリズムの圧倒的な演奏テクニックと整然としたバンド・アンサンブルは、明らかに日本のフュージョン・バンドの個性。このロックからアプローチしたクロスオーバー&フュージョン志向の音世界は、プリズム独特の音世界。ロック・インストの良いところと、クロスオーバー&フュージョン・インストの良いところを併せ持った音世界は、和ジャズの真骨頂。良いアルバムです。
 
 

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2025年11月 1日 (土曜日)

ルーさんのモータウンへの挑戦

本作は、1968年にトランペッターのブルー・ミッチェル、オルガン奏者のチャールズ・アーランド、ギタリストのジミー・ポンダーと録音した作品だが、冒頭の「Say It Loud – I'm Black and I'm Proud」を聴けば、たちどころに判る。この盤は、ルーさんの「R&B志向、モータウン志向のソウル・ジャズ&ジャズ・ファンク」である。

Lou Donaldson『Say It Loud』(写真左)。1968年11月6日の録音。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as, vo), Blue Mitchell (tp), Charles Earland (org), Jimmy Ponder (g), Leo Morris (ds)。JB(James Brown)に共感して、カヴァSay It Loud (I'm Black and I'm Proud)ーしてタイトルに冠したと思われ、R&B志向、モータウン志向を協力に押し出した、ルーさんのソウル・ジャズ。

リズム&ビートが「とーん・と−ん・とんとんとんとん」といった、モータウン独特のリズム&ビートに乗って、ルーさん流のソウル・ジャズが展開される。結構、ネットでは酷評されているんだが、爆発的なグルーヴが無い、作られたファンク・ミュージックとか散々に揶揄されているんだが、これはこれで正解なんだけど。

この盤でも、ルーさんは、モータウン志向に走ってはいるけれど、演奏の根っこは「モダン・ジャズ」。モータウンにどっぷり填まれば、体の良いジャズ・ファンクのリズム&ビートを拝借した「イージーリスニング音楽」になってしまう、ことを危惧した結果だと思っている。そう、この盤の根底に流れているのは、ソウル・ジャズであり、ジャズ・ファンク、あくまで「ジャズ」なのだ。

だから、モータウン風の曲のカヴァー演奏になると、腰が動くほどのファンクネスは無いし、グルーヴ感も無い。この盤の根底に流れているのは「ジャズ」であり、爆発的なグルーヴが無い、作られたファンク・ミュージックと言われても仕方が無い内容。
 

Lou-donaldsonsay-it-loud

 
でも、ジャズとして、ハードバップとして捉えると、モータウンって、こうなるのか、というプロトタイプ的内容。演奏内容、演奏レベルに問題があるのでは無い。モータウンをジャズでカヴァるって、いう行為が無茶だということ、無理がある行為だということを、このアルバムは教えてくれる。

冒頭の「Say It Loud (I'm Black and I'm Proud)」のカヴァー演奏が、モータウンのジャズ化の限界だろう。これ以上に、グルーヴを爆発させ、ファンクネスを濃くしたら、モータウンの「イージーリスニング音楽」になってしまう。

ルーさんはジャズマン。このカヴァー演奏でも、しっかり、ジャズに軸足を置いたまま、モータウンのジャズ化にチャレンジしたのではないか、と睨んでいる。

とにかく、有名スタンダード曲、ハードバップとモード・ジャズにこそ、ピッタリと合致した「Summertime」や「Caravan」を、モータウン志向のソウル・ジャズで解釈するのは、あまりに無謀であった。

これは、明らかにプロデュースの誤り。もしかしたら、ルーさんがやりたい、ときかなかったかもしれないが、これがフランシス・ウルフの限界だったのだろう。

この盤は、ルーさんがいかに「純ジャズ」畑のジャズマンだったかを再認識させてくれる。どんなアレンジの演奏にだって、ルーさんは、ジャズに軸足を残したまま、いろいろなアレンジにチャレンジした。ルーさんの純ジャズ志向のジャズマンとしての矜持を感じさせてくれる盤である。
 
 

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2025年10月31日 (金曜日)

BNのイージーリスニング盤です

硬派な老舗ジャズ・レーベルのブルーノート。4200番台も後半になると、大衆受けする「売れる」盤だけを狙った、イージーリスニング志向のジャズ盤を制作する様になる。とにかく「聴き心地」優先、ジャズのアーティスティックな面を封印し、ポップ度を高める為に、ジャジーなリズム&ビートを活用し、ストリングスをオーバーダビングする。ほとんど、イージーリスニングなアルバムも制作していた。

Stanley Turrentine『Always Something There』(写真左)。1968年10月の録音。ブルーノートの4298番。ちなみにパーソネルは以下の通り。フレンチ・ホルン入り小ビッグバンド編成。ここに、ストリングスをオーバーダビングしている。ただし、波ー祖ネルを見渡すと、ジェローム・リチャードソン、サド&ハンク・ジョーンズ、ケニー・バレル、ハービー・ハンコック、メル・ルイス、ミッキー・ローカーなど、当時のメインストリーム系の一流ジャズマンが多く参加している。

Stanley Turrentine (ts), Burt Collins (flh), Jimmy Cleveland (tb), Jerry Dodgion (as, fl, cl), Jerome Richardson (ts, fl cl), Thad Jones (tp, arr), Kenny Burrell (g), Barry Galbraith (g, tracks 2, 10), Hank Jones (p, tracks 2, 3, 5-8, 10), Herbie Hancock (p, tracks 1, 4, 9), Bob Cranshaw (b), Mel Lewis (ds, tracks 1, 2, 4, 9 & 10), Mickey Roker (ds, tracks 3, 5-8), Dick Berg, Jim Buffington, Brooks Tillotson (French horn)。
 

Stanley-turrentinealways-something-there

 
しかし、冒頭の「(There's) Always Something There to Remind Me」から、あ〜遂に、ブルーノート・レーベルも、ここまで俗っぽくなってしまったか、と苦笑いする。軽快なブラスのユニゾン&ハーモニー、小洒落たポップなビッグバンド・サウンド、途中、ストリングスがオーバーダビングされて、もう、これは、ジャズなリズム&ビートをベースにした「イージーリスニング音楽」。

演奏自体は、当時のメインストリーム系の一流ジャズマンが多く参加しているんで、カッチリとまとまっているし、楽器の響きも良い。でも、いかんせんアレンジがポップで俗っぽい。アレンジは誰か、と確認したら、サド・ジョーンズ。意外。サドもこんな俗っぽいポップでライトなビッグバンド・アレンジをするんだ、と変に感心する。

レノン&マッカートニーの「Hey Jude」「The Fool on the Hill」、ドアーズの「Light My Fire」など、ロックのヒット曲のカヴァーが入っていたり、フィフス・ディメンションの「Stoned Soul Picnic」が入っていたり、とにかく、一般大衆の訴求する、大衆受け狙いのイージーリスニング盤である。ただし、オーバーダビングされたストリングス以外のジャズマンの演奏はしっかりしているので、聴き心地は良い。ながら聴きのジャズ盤としては良い内容かもしれない。
 
 

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2025年10月30日 (木曜日)

管入りスミスの置き土産音源

ブルーノートのお抱えオルガニストだったジミー・スミス。1962年、さらなる好条件を提示した大手レーベル・ヴァーヴに移籍する。自分が育てたジャズマンが条件の良い大手レーベルに移籍していくことを、ライオンは一切止めることは無く、喜んで送り出したくらいだそう。スミスはその恩義を忘れず、かなりの数の優れた内容の録音を残していった。この盤は、その「置き土産」音源のひとつ。

Jimmy Smith『Plain Talk』(写真左)。1960年3月22日の録音。ブルーノートの4296番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Blue Mitchell (tp), Jackie McLean (as), Ike Quebec (ts), Quentin Warren (g). Donald Bailey (ds)。ブルーノートの4269番『Open House』と同一日録音で、リリースは1968年4月。ジミー・スミスの「ブルーノートへの置き土産」音源のひとつ。

この盤は、『Open House』と同じ編成で、スミスのギター・トリオ(スミスのオルガンに、ウォーレンのギター、ベイリーのドラム)に、ミッチェルのトランペット、マクリーンのアルト・サックス、ケベックのテナー・サックスの管楽器が入ったセクステット編成。演奏の内容は、『Open House』と同様で、スミスのオルガンは、ダイナミズムを封印した、流麗でシンプルで優しい弾き回し。
 

Jimmy-smithplain-talk

 
フロントを引き立て、鼓舞しつつ、自らも素晴らしいバッキングを聴かせる、裏方に徹したジミー・スミスのオルガンは、実に印象的。優れたソリストは、優れた伴奏者でもある。モダン・ジャズでの定説だが、この盤でのジミー・スミスのオルガンは、その例に漏れない優れたバッキング。

フロント管を引き立てつつ、自らのアピールも忘れないのが、オルガンの神様、ジミー・スミスの真骨頂。しかし、この盤では、ダイナミックなグイグイ前に出る、アグレッシヴな弾き回しを封印し、流麗でシンプルで優しい弾き回し。それに呼応するように、ブルー・ミッチェルのトランペット、ジャッキー・マクリーンのアルト・サックス、アイク・ケベックのテナー・サックスが順番にソロを取るのだが、これがまた流麗でシンプルで優しいソロ・パフォーマンスを聴かせてくれるのだ。

このジミー・スミスの「ブルーノートへの置き土産」音源は、ヴァーヴに移籍したずっと後の6年後、ブルーノートがリヴァティ社に買収され、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンが引退した後にリリースされているが、この盤のプロデュースは、アルフレッド・ライオン。往年のブルーノートらしい音、ブルーノートらしい録音で、安心して聴くことが出来る。内容的にも申し分無い。好盤です。
 
 

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2025年10月29日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・303

スコット・ハミルトン(Scott Hamilton)。1954年9月12日生まれ。今年で71歳。米国ロードアイランド州出身。1976年にニューヨークに移り、1977年に初リーダー作『Scott Hamilton Is a Good Wind Who Is Blowing Us No Ill』(Concord Jazz)でメジャー・デビュー。ジャズ・サックスが、皆「コルトレーン」スタイルを踏襲する中、オーソドックスな吹奏スタイルを守り通し、現在では、オールド・スタイル・テナーのレジェンド。

Scott Hamilton『Looking Back』(写真左)。2024年1月14 -16日、スウェーデンでの録音。ちなみにパーソネルは、Scott Hamilton (ts), Jan Lundgren (p), Hans Backenroth (b), Kristian Leth (ds)。『Danish Ballads & More』『Classic』に続く、モダンジャズ全盛期にもかかわらずオーソドックスなスタイルを守り通す、硬派なテナー奏者、スコット・ハミルトンが、ヤン・ラングレン率いる「北欧ピアノ・トリオ」をバックにした好盤。

ヤン・ラングレン (スウェーデン), ハンス・バッケンルート (スウェーデン), クリスチャン・レト (デンマーク) の北欧のピアノ・トリオ、ヤン・ラングレン・トリオをバックに、スコット・ハミルトンが、朗々と悠然とテナー・サックスを吹き上げていく。これがまあ「絶品」なのだ。透明度の高い、耽美的でリリカルな、北欧ジャズのピアノ・トリオの音世界に、ハミルトンのテナーがバッチリ合う。
 

Scott-hamiltonlooking-back

 
ゆったりとした、朗々と吹き上げていくテナーだが、これ自体がテクニックの塊。フレーズの音に変な揺らぎが無く、ピッチがずれることはない。ロングトーンにも音の揺らぎが無い。これ、凄いテクニック。このテクニックに裏打ちされているからこそ、ハミルトンのバラード・プレイは映えに映えるのだ。加えて、音が心地良い塩梅に「太い」。マイルドだが芯の入った音は、歌心と説得力・訴求力抜群。加えて、スイング感、ドライブ感も抜群なのだから、申し分無い。

冒頭、あの有名ミュージカル映画・マイ・フェア・レディの挿入曲「I’ve Grown Accustomed to Her Face」から始まり、マイルスの演奏でも知られるレオ・ドリーブの歌曲「The Maids of Cadiz」続く、トミー・フラナガン作の隠れ名曲「Beyond the Bluebird」、スコット・ハミルトンの自作の佳曲「Big Tate」、そして、ホーギー・カーマイケルの名曲「Rockin’ Chair」と、ここまで聴き続けると、もう、ハミルトンのオールド・スタイル・テナーの魅力にどっぷりと填まっている。

今年71歳のハミルトン。オールド・スタイルのテナーは健在。というか、オールド・スタイルのテナーの魅力が増幅されている。選曲も良い、アレンジも良いのだろうが、バックに北欧の強力なピアノ・トリオを配した、というのも、ハミルトンのオールド・スタイルなテナーが映えに映える、大きな理由だろう。聴けば聴くほど、味わいが深くなる、現代のネオ・ハードバップの秀作である。
 
 

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