ジャズ演奏の重要要素=”編曲”
タッド・ダメロン(Tadd Dameron, 1917年2月21日 – 1965年3月8日没)は、ビ・バップの誕生と成熟を「洗練されたアレンジ(編曲)」という側面から支えたジャズマン。本作は全5曲すべてが、タッド・ダメロンによるオリジナル作品。このアルバムには、その卓越したアンサンブル・ライティングの才が遺憾なく発揮されている。
Tadd Dameron『Fontainebleu』(写真左)。1956年3月9日、Van Gelder Studio での録音。プレスティッジの7037番。ちなみにパーソネルは、Tadd Dameron (p), Kenny Dorham (tp), Henry Coker (tb), Cecil Payne (bs), Sahib Shihab (as), Joe Alexander (ts),, John Simmons (b), Shadow Wilson (ds)。モダン・ジャズの発展において重要な役割を果たした名ピアニスト兼編曲家、タッド・ダメロンのリーダー作。
タッド・ダメロンは、ビ・バップの「ロマンティシスト(叙情派)」と呼ばれ、力業的アクロバティックな即興演奏が主流だったビ・バップ時代において、オーケストレーション(編曲)の美しさを持ち込んだ先駆者とされる。本作は、1949年にマイルスらとパリのジャズ・フェスに参加したダメロンが、現地で訪れたフランスの「フォンテーヌブロー宮殿」の美しさに深い感銘を受け、その情景を音楽で表現したコンセプト・アルバムとなっている。
このアルバムのパーソネルを見渡せば、8人編成での演奏。しかし、まるでビッグバンドを聴いているかの様な「重厚かつ色彩豊かな響き」を実現、ジャズが「単なる娯楽音楽から芸術音楽へと進化する過程」を示す1枚として評価が高い。冒頭のタイトル曲「Fontainebleau」は、仏の宮殿に感銘を受けて書かれた、アルバムのコンセプトを象徴するこの曲を聴けば、その狙いが当時の「先をいくもの」という
冒頭の「Fontainebleau」アドリブ・ソロを一切含まない通作歌曲で、管楽器隊の響きが美しい。続く「Delirium」はスリリングで典型的なビ・バップなナンバー、管楽器隊の複雑なアンサンブル。3曲目『The Scene Is Clean』は、メロディアスで気品溢れるバラード。4曲目「Flossie Lou」の独自の洗練されたホーン・アレンジ、ラストの「Bula-Beige」は、ドラマチックな組曲風で、各ソリスト達の実力を存分に引き出す巧みな構成。
このアルバムは、ジャズ盤鑑賞の定石、ジャズマン毎のソロ演奏の素晴らしさとか、グループ全体の演奏の優秀性とか、で聴くべきアルバムではないだろう。オーケストレーション(編曲)の美しさに着目し、それを実現し、ジャズが「単なる娯楽音楽から芸術音楽へと進化する」ひとつの重要要素の成功例を提示した、そんな企画盤である。ジャズ演奏の重要要素に「編曲」がある、ということをこのアルバムは教えてくれる。
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