2025年6月15日 (日曜日)

アフリカン・ルーツ志向のジャズ

フォーキーでワールド・ミュージック的な響きを持つ、アーシーでゴスペルチックなジャズ・ピアノを全面的に押し出して、そのまんまのジャズ・ピアノをずっとイチ押しで弾き続けているピアニストがいる。Abdullah Ibrahim(アブドゥーラ・イブラヒム)、昔の名前は、Dollar Brand(ダラー・ブランド)である。ここでは、今の名前、Abdullah Ibrahim(アブドゥーラ・イブラヒム)で統一する。

アブドゥーラ・イブラヒムは、1934年10月、南アフリカ連邦のケープタウン生まれ。63年にチューリッヒで、デューク・エリントンの目にとまる。65年に米国に渡り、68年にはイスラム教に改宗。セロニアス・モンクやエリントンの影響を受けつつ、独特な音世界を確立。フォーキーでワールド・ミュージック的な響きを持つ、アーシーでゴスペルチックなジャズ・ピアノは聴いていて、ジャズの音の原風景を彷彿とさせてくれる。

Abdullah Ibrahim『Live at Montreux』(写真左)。Live 18 July 1980年7月18日、モントルー・ジャズ・フェスでのライヴ録音。エンヤ・レーベルのENJA3079番。ちなみにパーソネルは、Abdullah Ibrahim (p), Carlos Ward (as. fl), Craig Harris (tb), Alonzo Gardener (el-b), André Strobert (ds)。1980年モントルー・ジャズ・フェスティバルのメインステージで繰り広げられた、白熱のライブ・パフォーマンスの記録。
 

Abdullah-ibrahimlive-at-montreux

 
デューク・エリントンとセロニアス・モンクという二人のレジェンドに影響を受けているイブラヒム。このライヴ盤では、エリントン風の組曲ライクな演奏曲と、モンク志向のモーダルなピアノ、その二つを「フォーキーでワールドミュージック的な響きを持つ、アーシーでゴスペルチック」なパフォーマンスを繰り広げている。

フォーキーなイブラヒムの音の個性の根っ子は「アメリカン・ルーツ音楽」ではなく、「アフリカン・ルーツ音楽」。アメリカン・ルーツなゴスペル、ファンキー、フォーキーでは無く、アフリカンなワールド・ミュージック志向の、アフリカン・ネイティヴな音世界。この音世界が目眩く音絵巻の様な組曲風な楽曲にしっかりと反映されている。

この「アフリカン・ルーツ音楽」をベースに、アフリカンなワールド・ミュージック志向の、アフリカン・ネイティヴな音世界を展開しているのは、意外とこの「アブドゥーラ・イブラヒム」しか見当たらない。そのせいか、意外と「キワモノ」扱いされ、異端扱いされ、意外と評価が低い傾向にある。が、これも立派な「ジャズ」であり、ジャズの多様化の「一つの立派な成果」である。アフリカンなワールド・ミュージック志向の響きが芳しい。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年6月14日 (土曜日)

梅雨時に耳当たりの良いジャズ

今年も、一昨日、関東地方は梅雨に入った。梅雨入り宣言があった翌日から、薄日が差して湿度が落ち着いて雨が降らないのは、最近の「お約束」。それでも、気圧は微妙に乱高下していて、偏頭痛に悩まされたり、お腹の調子が不調になったり、体調不芳な日々が続く様になる。

そうなると、限りなく自由度の高いモード・ジャズや、フリー&アバンギャルド・ジャズは以ての外。暫くは耳当たりの良いジャズが聴きたくなる。

Manhattan Jazz Quintet『Caraban』(写真左)。1988年12月9,10日の録音。ちなみにパーソネルは、 David Matthews (p), Lew Soloff (tp), George Young (ts), John Patitucci (b), Dave Weckl (ds)。

ベースがジョン・パティトゥッチに、ドラムがデイヴ・ウェックルに、なんだか、当時のチック・コリア・アコースティック・バンドのリズム隊をそのまま持って来たような布陣。リズム&ビートがリフレッシュされた様な印象。

相変わらず、有名スタンダード曲が収録曲に鎮座ましましているのだが、今回は収録曲全7曲中4曲。しかし、この有名スタンダード曲「Caravan」「Five Spot After Dark」「A Night In Tunisia」「You And The Night And The Music」と、手垢がべったり付いた、「ど」スタンダード曲なんだが、この有名スタンダード曲に対するマシューズのアレンジが秀逸。
 

Manhattan-jazz-quintetcaraban  

 
聴いていて、アレンジが新鮮で、「ど」スタンダード曲でありながら、手慣れた感は無いし、マンネリ感も無い。マンハッタン・ジャズ・クインテットは、この有名スタンダード曲への優れたアレンジと、演奏メンバーによる、当時として「新しい」解釈が「ウリ」のバンドだった、と言うことを再認識する。

アップテンポを基本に変幻自在なパフォーマンスが魅力の「Caravan」、渋いアレンジが良好な「Five Spot After Dark」、超有名な曲を新しいイメージの盛り上げが楽しめる「A Night In Tunisia」、8分の6拍子のアレンジと演奏半ばのアップテンポなアドリブが格好良い「You And The Night And The Music」といい感じの有名スタンダード曲の新しい響きのパフォーマンスが良い。

録曲全7曲中3曲のオリジナル曲も良い感じ。リズム隊が、パティトゥッチのベース、ウェックルのドラムに代わった効果が、このオリジナル曲のパフォーマンスに好影響を与えている。モーダルな展開に、変幻自在、硬軟自在、緩急自在な「モーダル仕様」のリズム&ビートをズバリと持ってきていて、現代の「ネオ・ハードバップ」に通じる、新しい響き、新しいグルーヴのモーダルな演奏展開になってて、聴いていてとても興味深い。

ネットでググってみても、相変わらず人気のないマンハッタン・ジャズ・クインテットだが、この『Caraban』というアルバムも出来はとても良い。マシューズのアレンジが全曲に渡って、バッチリ決まっていて、それまでのハードバップとは一線を画した、当時として「新しい響き」のハードバップを展開しているのには感心した。

1980年台の「純ジャズ復古」の潮流に乗って、新しい響きのハードバップを獲得した、マンハッタン・ジャズ・クインテットの良好なパフォーマンスがこの盤に記録されている。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年6月13日 (金曜日)

ヒルの考える ”アバンギャルド”

レココレ誌の執筆陣が選んだ、ブルーノート盤の「ベスト100」。まずは、このレココレ誌が選んだ「ベスト100」のアルバムの中で、当ブログで扱ったことが無いアルバムをピックアップして聴き直していくことにしている。と、ベスト100の中で、10枚ほどが、当ブログで扱ったことが無いアルバムとして残っているが、全部、フリー、スピリチュアル、アバンギャルドなジャズのアルバムだけが残った。

Andrew Hill『Compulsion!!!!!』(写真左)。1965年10月8日の録音。ブルーノートの4217番。ちなみにパーソネルは、Andrew Hill (p), Freddie Hubbard (tp, flh), John Gilmore (ts, b-cl), Cecil McBee (b), Joe Chambers (ds), Renaud Simmons (conga, perc), Nadi Qamar (perc, African drums, thumb piano), Richard Davis (b, track 3)。基本、セプテット編成。

リーダーのアンドリュー・ヒルは、モンクの如く幾何学的にスイングするモーダルなピアニスト。「判り易い平易で明るいモンクの様な幾何学的にスイングし音飛びするピアノ」という個性をしっかり表現している。基本はモーダルなピアノ。時々、アブストラクトにブレイクダウンする。

そんなヒルが、フリー、スピリチュアル、アバンギャルドなジャズにチャレンジする。パーソネルを見渡すと、バンド・サウンドを形成するメンバーは、皆、フリー、スピリチュアル、アバンギャルドなジャズを得意とする面子がズラリ。テナーのジョン・ギルモアとか、ベースのセシル・マクビーとか、そして、アフリカンなパーカッションが二人、入っている。
 

Andrew-hillcompulsion

 
演奏全体の雰囲気は「オーネット・コールマン」のフォロワー的アバンギャルド・ジャズ。オーネットのアバンギャルド・ジャズな必要最低限の決め事に則り、ヒル独特の理路整然としたアバンギャルド・ジャズが繰り広げられる。アバンギャルド・ジャズ、時々フリー・ジャズ、時々スピリチュアル・ジャズ、といった展開。よくリハーサルされたであろうことが良く判る、整然とした、規律溢れる、オーネット志向のアバンギャルド・ジャズ。

しかし、オーネットのアバンギャルド・ジャズの物真似では決して無い。しっかりとヒルの個性を反映して、ヒル独特のアバンギャルド・ジャズに昇華させている。ヒルの「判り易い平易で明るいモンクの様な幾何学的にスイングし音飛びするピアノ」の個性を、このアバンギャルド・ジャズにしっかり反映させている。

演奏全体の雰囲気は「オーネット志向」、そのサウンド、その音世界は、ヒル独自の「判り易い平易で明るい、幾何学的にスイングし音飛びする」展開。アバンギャルド・ジャズでありながら、難解な展開は極力回避しつつ、アフリカンなグルーヴを醸し出しつつ、モーダルなフレーズをメインとした、限りなく自由度の高い、理路整然としたアバンギャルド・ジャズが展開される。これがこの盤の「キモ」だと僕は感じている。

フリー、スピリチュアル、アバンギャルドなジャズを苦手とする向きにも、十分に訴求する「ヒルの考えるアバンギャルド・ジャズ」。限りなく自由度の高いモード・ジャズを聴き通せるスタミナのある「ジャズ耳」の持ち主であれば、この「ヒルの考えるアバンギャルド・ジャズ」は聴き通せると思う。そして「オーネット志向」の音の響きをしっかりと味わえると思う。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年6月12日 (木曜日)

Montgomeryland = Far Wes

ウエス・モンゴメリー(Wes Montgomery)のリーダー作については、現在、普通に音源入手出来るものについては、当ブログでほぼ記事にしたと思う。

で、ウエスのディスコグラフィーを見ていると、モンゴメリー・ブラザーズ(Montgomery Brothers)の諸作があるのに気がついた。モンゴメリー・ブラザーズとは、ギターのウェス、ピアノのバディ、ベースのモンクのモンゴメリー兄弟がグループを組んだユニット。

Montgomery Brothers『Montgomeryland』(写真左)。1958年4月18日、1959年10月1日の録音。ちなみにパーソネルは以下の通り。ギターのウェス、ピアノのバディ、ベースのモンクのモンゴメリー兄弟に、サックス1管、ドラムスが入ったクインテット編成。

1958年4月18日の録音は、Wes Montgomery (g), Harold Land (ts), Buddy Montgomery (p), Monk Montgomery (b), Tony Bazley (ds)。
1959年10月1日の録音は、Wes Montgomery (g), Pony Poindexter (as), Buddy Montgomery (p), Monk Montgomery (b), Louis Hayes
(ds)。
 

Montgomeryland_far-wes  

 
録音年は1958年から1959年。ハードバップ全盛期。このモンゴメリー・ブラザーズの音も、どこを切ってもハードバップ。ハロルド・ランドや、ポニー・ポインデクスターのサックスの存在が、そんなハードバップな雰囲気をさらに増幅する。

そんな中、やはり、ウエスのギターが大いに目立っている。太くてソリッドで力感溢れる音、速いフレーズは流麗に、バラードチックなフレーズは歌心豊かに、そして、ここぞという時に炸裂する「オクターブ奏法」。ウエスの完成された個性溢れるバップ・ギターが素晴らしい。

ピアノのバディ、ベースのモンクは堅実にリズム・セクションの一翼を担う。派手なところはないが、とにかく堅実。出てくる音は、典型的な「ハードバップ」な音。ドラムは2つのセッションでそれぞれ代わるが、モンゴメリー・ブラザーズの二人のお蔭か、リズム&ビートは実にしっかりしている。

しっかりしたリズム&ビートを得て、フロントの二人、ウエスのギター、そして、ランド&ポインデクスターのサックスは、気持ちよさそうに、ハードバップなフレーズを展開している。

ハードバップ時代の「ハードバップなウエス」の極上なパフォーマンスがこの盤に記録されている。ちなみにこの『Montgomeryland』は、1990年に、Wes Montgomery『Far Wes』(写真右)として、曲順を変え、曲を追加して、リイシューされている。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

 

2025年6月11日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・288

名アレンジャー、クラウス・オガーマンが全面参加。エレガントにセンス良く鳴るオガーマンの指揮するストリングスをバックに、ウェス・モンゴメリーが、オクターブ奏法をアクセントに、ギターを弾きまくる。ウエスの硬派なイージーリスニング・ジャズのシリーズの1枚。

Wes Montgomery『Tequila』(写真左)。1966年3月17–21日の録音。ヴァーヴ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Ron Carter (b), Grady Tate (ds), Ray Barretto (conga), George Devens (vib), バックにストリングス・オーケストラが入る。プロデューサーは、フュージョンの仕掛け人、クリード・テイラー。

オガーマンのアレンジするストリングスは控えめで奥ゆかしい。バックでひっそりとフロント楽器をしっかりと前面に浮き出させ、演奏全体の雰囲気をエレガントに染め上げる。そんな趣味の良いストリングスをバックに、ウエスがギターを弾きまくる。あくまで、ウエスのギターを前面に押し出し、ウエスのギターだけを愛でる、そんなプロデュース方針が見え隠れする。

ウエスは効果的に、必殺「オクターブ奏法」を駆使する。特に、楽曲のテーマのフレーズをくっきり浮き立たせる様に、オクターブ奏法を活用する様は、まさに言い得て妙。イージーリスニング志向のジャズの「要」となる様な、ウエスのオクターブ奏法。

これを上手く活用しているのが、このアルバムを聴いていて良く判る。オクターブ奏法を全編に渡って、ガンガンに弾きまくるのでは無く、効果的にオクターブ奏法を適用する。これが小粋でお洒落。
 

Wes-montgomerytequila

 
例えば、冒頭の「Tequila」、ラテン調のポップな楽曲のカヴァーなのだが、下手なアレンジの下で、趣味の悪いギターのパフォーマンスであれば、俗っぽく嫌らしく響くのであるが、この盤ではそうはならない。

オガーマンのストリングスが洒落ていて、ウエスのギターがダイナミック。「Tequilaという、ラテン調のポップな楽曲が、しっかりとしたコンテンポラリーなジャズに仕上がっていて、硬派なイージーリスニング志向のモダン・ジャズ然としているところが素晴らしい。

この盤は、オガーマンのアレンジとウエスのギターの個性とがばっちり相性が合って、アーバンでミッドナイトなムードが芳しい、極上のイージーリスニング・ジャズに仕上がっている。8曲目、アルバム・ラストのジョー・ザビヌル作「Midnight Mood」の演奏など、極上の最高のイージーリスニング・ジャズである。

とにかく、ウエスのギターの速弾き、オクターブ奏法、カッティングなど、ウエスのギター・テクのどれをとっても素晴らしいところがこの盤のウリ。そして、それを引き出しているのが、オガーマンのアレンジとクリード・テイラーのプロデュース。

意外と地味で、ジャズ盤紹介本などに上がることのないアルバムですが、内容はピカイチ。メインストリームなジャズとして、十分認知できる、硬派なイージーリスニング・ジャズ盤の傑作です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年6月10日 (火曜日)

「ネオ・ハードバップ」の先駆け

マンハッタン・ジャズ・クインテット(Manhattan Jazz Quintet. 以降「MJQ」と略す)は、日本のジャズ雑誌『スイングジャーナル』とキングレコードの発案によるプロジェクトで、ピアニスト&アレンジャーのデヴィッド・マシューズを中心に結成されたジャズ・バンド・1984年デビュー。

MJQは、マシューズの優れたアレンジと、バンドのメンバーの優れた演奏技術により、1980年代半ばからの「純ジャズ復古」に呼応した、後のネオ・ハードバップの先駆けとなる、当時として、新しいハードバップ志向のパフォーマンスを展開した。

Manhattan Jazz Quintet『The Sidewinder』(写真左)。1986年10月9. 10日、NYでの録音。1987年のリリース。ちなみにパーソネルは、David Matthews (p, arr), Lew Soloff (tp), George Young (sax), Eddie Gomez (b), Steve Gadd (ds)。ルー・ソロフのトランペットと、ジョージ・ヤングのサックスがフロント2管のクインテット編成。アレンジを一手にデヴィッド・マシューズが引き受けている。

MJQの通算5枚目のアルバム。オリジナル・メンバーより、ベースがエディ・ゴメスに代わってはいるが、演奏内容としては、いかにもMJQらしい、端正でダイナミックな、鉄壁のパフォーマンスである。ハードバップ志向のパフォーマンスかくあるべし、という感じの堂々たる演奏で、緩むところも破綻をきたすところも皆無。極上の「ネオ・ハードバップ」の先駆け的演奏が繰り広げられている。
 

Manhattan-jazz-quintetthe-sidewinder

 
全6曲中、有名スタンダード曲が4曲、マシューズのオリジナル曲が2曲と、有名スタンダード曲がメインの収録だが、この有名スタンダード曲のアレンジが絶品なのと、その優れたアレンジに対するリズム隊の、ゴメスのベース、ガッドのドラムの、スピード感溢れる解釈が素晴らしい。まず、このゴメスのベース、ガッドのドラムのパフォーマンスこそが、MJQサウンドの推進役であることが良く判る。ハードバップなリズム&ビートが実に「新しい」。

マシューズのシンプルで間を活かしたピアノも極上の響き。フロント2管のフレーズの「間」を効果的に埋めつつ、シンプルなモーダルなフレーズで、フロント2管のアドリブ・イマージネーションを刺激する。このマシューズのピアノの存在も、MJQサウンドの推進役であることが良く判る。

そんなリズム・セクションのバッキングを得て、ソロフのトランペットと、ヤングのサックスのフロント2管が、悠然と自由にハードバップでモーダルなフレーズを吹きまくる。このフロント2管のフレーズは、それまでのハードバップには無い、新しい響きを忍ばせた、後の「ネオ・ハードバップ」に通じる、新鮮なパフォーマンス。

流麗すぎる、華麗すぎる、破綻が無い、作られた感が強いなど、まったくお門違いの評価がまかり通るMJQだが、ちゃんと聴いてみると、現代の「ネオ・ハードバップ」に直結する、優れた演奏力、優れたアレンジ、優れたイマージネーションを基とする、温故知新を地で行く、新しい響きの優れたハードバップであることが良く判る。この『The Sidewinder』は、その好例の1枚である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年6月 9日 (月曜日)

傑作・Gong『Gazeuse!』である

1960年代終わりから1970年代後半にかけて、ロック界を席巻した「プログレッシヴ・ロック(以降「プログレ」と略)」。クラシック音楽やジャズ、現代音楽などの他ジャンルの要素を取り入れ、複雑なサウンド構成や変拍子の積極採用、長尺な楽曲が多い、などが特徴。高度な演奏技術や実験的な音楽性を追求し、それまでのロックとは異なる「進歩的=プログレッシヴ」な音楽性を目指したロック。

プログレは英国で隆盛を極めたが、何もプログレは英国だけのものでは無い。欧州では、イタリア、フランス、オランダへと飛び火し、それぞれの国で、幾つかの代表的なバンドが生まれ出でている。「ゴング(Gong)」もその1つで、ゴングは、フランスを代表するプログレッシヴ・ロックバンド。元「ソフト・マシーン」のデヴィッド・アレンを主宰に結成。サイケデリック・ロックを原点に様々なスタイルに変化。時期によってメンバー、音楽性が変わり、派生グループも多い。

Gong『Gazeuse!』(写真左)。1976年の作品。ちなみにパーソネルは、Pierre Moerlen (ds, vib, marimba, timpani, glockenspiel), Didier Malherbe (ts, fl), Allan Holdsworth (g, vln, pedal steel), Mireille Bauer (vib, marimba, glockenspiel, toms), Benoît Moerlen (vib), Francis Moze (b, p, gong), Mino Cinelu (perc)。

1976年、バンドは残留したドラマーのピエール・ムーランを中心に再編成。この時代のバンドは「ピエール・ムーランズ・ゴング」と分類される。脱退したデヴィッド・アレン時代の「サイケデリック色」を一掃、ニューエイジやアンビエントなどの要素を取り入れたジャズ・ロック&ュージョン・バンドとして音志向をチェンジする。その最初の成果がこの『Gazeuse!』である。

ここでも、英国同様、プログレッシヴ・ロックと、ジャズ・ロック&クロスオーバー/フュージョン・ジャズとの曖昧な境界線が存在する。
 

Gonggazeuse

 
この『Gazeuse!』は、明らかに、ジャズ・ロック&クロスオーバー/フュージョン・ジャズの範疇にバンドである、ということを証明する様な内容。上質のジャズ・ロック&クロスオーバー/フュージョン・ジャズの音世界が展開されているから驚きである。

ギターに「アラン・ホールズワース」の名前がある。ジャズ・ロック&クロスオーバー/フュージョン畑の良い意味での「変態ギター」の代表格。まず、ホールズワースのギターが大活躍。バンド・サウンドのメインフレーズを「ジャズ・ロック&クロスオーバー/フュージョン」色に染め上げている。

加えて、このバンド・サウンドの特徴が「打楽器」の活躍。ドラム言うに及ばず、マリンバ、ティンパニの活用で、リズム&ビートが前面に出て、アーシーでジャジーな雰囲気を濃厚にしている。言い換えると、打楽器の積極活用が、前のバンド・サウンドのイメージ「サイケデリック色」の一掃を実現している。

演奏的には、英国プログレッシヴ・ロックの「ジャズ・ロック&クロスオーバー/フュージョン」なサウンドと同様。英国のサウンドよりも流麗で色彩豊か。フレーズを担うギター、サックスの音色は「定石」として、このアルバムでは、ヴァイブ、グロッケンシュピールといった鍵盤打楽器を活用して、他の「ジャズ・ロック&クロスオーバー/フュージョン」のフレーズ・サウンドとの差別化を、「ピエール・ムーランズ・ゴング」の音の個性の確立を後押ししている。

アルバム全体を通じて、メロディックで流麗なフレーズ展開、複雑なポリリズミックなリズム&ビート。テクニック優秀、リーダーのピエール・ムーランのドラミングが、バンド・サウンドを推進し統率する。フランスのプログレ・グループが奏でる「ジャズ・ロック&クロスオーバー/フュージョン」なサウンド。傑作である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年6月 8日 (日曜日)

MJQの活動前期の名ライヴ盤

まず、最初に断言するが、このライヴ盤は、MJQの名ライヴ盤『The Last Concert』と比肩する、MJQの前期のパフォーマンスを代表する、最高のライヴ盤である。MJQの良いところの全てが、このライヴ盤に凝縮されている。とにかく、見事なカルテット演奏。アカデミックな香りが濃厚、ジャズの芸術性の部分がグッと前面に出た、モダン・ジャズの良いところがこの盤に詰まっている。

The Modern Jazz Quartet『European Concert』(写真左)。1960年4月11–13日、スウェーデンのストックホルムとヨーテボリでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), John Lewis (p), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)。MJQの「揺らぎの無い鉄壁のカルテット」。初出のLPでは2枚組でのリリースだった。

アレンジが素晴らしく、バグスのブルージーで、ファンクネス漂うヴァイブと、ルイスのクラシック風な、音を選んだ間を活かしたのピアノが、あまりに流麗で洒脱で小粋で気がつきにくいのだが、MJQのパフォーマンスは「バップ」が基本。クラシック志向のアレンジが先に印象として残るので忘れがちになるのだが、MJQの演奏は、とことん「ハードバップ」である。
 

The-modern-jazz-quarteteuropean-concert

 
欧州のクラシックの音志向&アレンジと、米国西海岸のバップ・ジャズとの融合音楽がMJQのサウンド、と僕は解釈している。バグスのヴァイブ、ルイスのピアノ、ヒースのベース、ケイのドラム。このカルテットの音は、どこから聴いても、どこから切っても、ハードバップしている。そして、演奏の底に漂うアーバンなファンクネスと、濃厚ジャジーな雰囲気が、MJQの演奏をどっぷりモダン・ジャズに仕立てている。

音の鮮度というか、音の響きが「切れ味良く」「ブリリアントで」「アクティヴ」。MJQの活動前期の総決算的位置付けのライヴ盤で、バグスのヴァイブ、ルイスのピアノ、ヒースのベース、ケイのドラム、それぞれの音が「若く」「活き活き」している。ライヴ演奏での「スピード感」も特筆に値する。

僕はルイス作の「Skating in Central Park」が大好きなのだが、このライヴ盤での演奏は絶品。以前、実際にNYのセントラルパークのスケート場を見に行ったことがあるのだが、その時の光景、スケートをする人達が、気持ち良く、笑顔で楽しく滑っている、そんなスケート場の情景が瞼に浮かぶようだ。この1曲だけでも、このライヴ盤、MJQの名盤である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年6月 7日 (土曜日)

ブルーノートのヴォーカル盤・2

レココレ誌の執筆陣が選んだ、ブルーノート盤の「ベスト100」。まずは、このレココレ誌が選んだ「ベスト100」のアルバムの中で、当ブログで扱ったことが無いアルバムをピックアップして聴き直していくことにしている。

Dodo Greene『My Hour of Need』(写真左)。1962年4月2, 17日の録音。ブルーノートの9001番。ドド・グリーンのボーカル盤である。ブルーノート9000番台に録音された2枚のヴォーカル作品の中の1枚。ちなみにパーソネルは以下の通り。

1962年4月2日の録音は、Dodo Greene (vo), Ike Quebec (ts), Grant Green (g), Sir Charles Thompson (org, tracks 1-10), Milt Hinton (b, tracks 2, 7, 9 & 10), Herbie Lewis (b, tracks 1, 3-6 & 8), Al Harewood (ds, tracks 2, 7, 9 & 10), Billy Higgins (ds, tracks 1, 3-6 & 8)。

1962年4月17日の録音は、Dodo Greene (vo), Ike Quebec (ts), Grant Green (g), Eddie Chamblee (ts, tracks 11-14), Edwin Swanston (org, tracks 11-14), John Acea (p, tracks 15-16), Wendell Marshall (b, tracks 11-16), Jual Curtis (ds, tracks 11-16)。

このアルバム、初出のLPでは全10曲(1962年4月2日の録音)。1996年のCDリイシュー時のボーナス・トラックの追加が6曲(1962年4月17日の録音)。
 

Dodo-greenemy-hour-of-need

 
11曲目から16曲目までのボートラは、続編アルバムの為に録音された未発表曲。この辺がCDリイシュー時のボートラ追加の「いらぬお節介」なところ。ここでは、初出LPでの全10曲を中心に書かせていただく。

もともとは、1962年4月2日、アイク・ケベック・クインテットの伴奏で演奏したアルバム。ドド・グリーンのヴォーカルは、R&Bとソウルフルなブルースを融合させた小粋なジャズ・ヴォーカルが個性。ヴォーカリストとしての実力は折り紙付き。ポップでブルース寄りの歌唱は、ファンクネスを漂わせつつ、アーシーでゴスペルチックな感じで、僕は大好きだ。

軽快なR&B風のリズム&ッビートに乗り、アイク・ケベックのソウルフルなテナーが全編でドド・グリーンのヴォーカルを盛り上げる。ヴォーカリストが主役のアルバムなので、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなグラント・グリーンのギターはちょっと控えめ。それでも、そこはかとなくファンクネスを振り撒いて、アルバムのソウルフルな雰囲気をより濃いものにしている。

オルガンの音も効果的に響いて、このボーカル盤の雰囲気は「ポップでブルース寄りなソウル・ジャズ」。サウンド全体からブルーノート臭さがプンプン漂って、確かにこのヴォーカル盤は、ブルーノートにしか作れない、ブルーノート謹製の女性ボーカル盤である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年6月 6日 (金曜日)

ブルーノートのヴォーカル盤・1

レココレ誌の執筆陣が選んだ、ブルーノート盤の「ベスト100」。まずは、このレココレ誌が選んだ「ベスト100」のアルバムの中で、当ブログで扱ったことが無いアルバムをピックアップして聴き直していくことにしている。

Sheila Jordan『Portrait of Sheila』(写真左)。1962年9月19日、10月12日の録音。ブルーノートの9002番。ちなみにパーソネルは、Sheila Jordan (vo), Barry Galbraith (g), Steve Swallow (b), Denzil Best (ds)。ギター・トリオのリズム隊を従えた、シーラ・ジョーダンのボーカル盤である。ブルーノート9000番台に録音された2枚のヴォーカル作品の中の1枚。

総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオン率いる当時のブルーノートは「ボーカル盤制作には手を出さない」方針だったのだが、何故か1962年、突如、ブルーノート9000番台(Vocal 9000 series)なるボーカル盤シリーズをスタートする。

が、なんとこの9000番台、2枚で打ち止め。よほど、ライオンはボーカル盤制作に魅力を感じなかったとみえる。しかし、さすがはブルーノート。2枚しかないボーカル盤だが、どちらも内容はピカイチ。

さて、順番は逆になるが、今日は9002番のシーラ・ジョーダン盤。シーラ・ジョーダン(Sheila Jordan)は、1928年、ミシガン州デトロイト生まれの女性ジャズ・シンガー。
 

Sheila-jordanportrait-of-sheila

 
ピアノレス、バリー・ガルブレイス擁するギター・トリオのリズム隊を従え、シーラ・ジョーダンが唄いまくる。旧来のジャズ・ボーカルとは一線を画する、しっとりした、キュートでスイートな歌唱は魅力十分。

派手さは全くないが、バリー・ガルブレイスのジェントル&ウォームなギター,スティーブ・スワローのクールだが強靱で推進力のあるベース,デンジル・ベストの繊細なブラッシュ・ワーク、の堅実なバッキングが清々しく、シーラのプリティなヴォーカルを際立せる。

シーラは、声を楽器のように扱う独特な歌唱が個性を活かして、スタンダード「Falling In Love With Love」「Dat Dere」「Willow Weep For Me」など趣味の良いジャズ・ナンバーをクールに歌う。

そう、ブルーノートのボーカル盤の1枚、このシーラのボーカル盤は、シーラの声を、楽器のように扱う感じのプロデュースを施している様に感じる。まさか、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンは、ボーカルを楽器の様に扱うことで、取り扱い禁止だったボーカル盤を制作することを思いついたのだろうか。

確かに他のレーベルのジャズ・ボーカル盤とは一線を画する、ブルーノート独特の女性ボーカル盤。一聴の価値あり、である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

A&Mレーベル AOR Argo & Cadetレーベル Bethlehemレーベル Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteの100枚 Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル DD・ブリッジウォーター ECMのアルバム45選 ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル Jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 この曲のドラムを聴け! こんなアルバムあったんや ながら聴きのジャズも良い アイク・ケベック アキコ・グレース アジムス アストラッド・ジルベルト アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アントニオ・サンチェス アンドリュー・ヒル アンドレ・プレヴィン アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イリアーヌ・イリアス イリノイ・ジャケー インパルス!レコード ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウォルフガング・ムースピール ウディ・ショウ ウラ名盤 エグベルト・ジスモンチ エスビョルン・スヴェンソン エスペランサ・スポルディング エディ・ハリス エメット・コーエン エリック・アレキサンダー エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルヴィン・ジョーンズ エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オズ・ノイ オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリスマスにピッタリの盤 クリス・ポッター クリフォード・ブラウン クルセイダーズ クレア・フィッシャー クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニーG ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン コンテンポラリーな純ジャズ ゴンサロ・ルバルカバ ゴーゴー・ペンギン サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド・ジョーンズ サム・ヤヘル サム・リヴァース サンタナ サン・ラ・アーケストラ ザ・バンド ジャケ買い「海外女性編」 シェリー・マン シダー・ウォルトン シャイ・マエストロ シャカタク ジェイ & カイ ジェイ・ジェイ・ジョンソン ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジェリー・マリガン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジミー・ヒース ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・バリトン・サックス ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャズ喫茶で流したい ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・ラージ ジョエル・ロス ジョシュア・レッドマン ジョナサン・ブレイク ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・コルトレーン on Atlantic ジョン・コルトレーン on Prestige ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン ジョー・ロヴァーノ ジーン・アモンズ スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン ステイシー・ケント ステップス・アヘッド スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・スティット ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テッド・カーソン テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トランペットの隠れ名盤 トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ナット・アダレイ ニルス・ラン・ドーキー ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハービー・マン ハーブ・アルパート ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・シャンク バド・パウエル バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグバンド・ジャズは楽し ビッグ・ジョン・パットン ビリー・コブハム ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビル・ブルーフォード ビートルズ ビートルズのカヴァー集 ピアノ・トリオの代表的名盤 ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・アップチャーチ フィル・ウッズ フェンダー・ローズを愛でる フォープレイ フュージョン・ジャズの優秀盤 フランク・ウエス フランク・シナトラ フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・アーヴィン ブッカー・リトル ブライアン・ブレイド ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザーズ プログレッシブ・ロックの名盤 ヘレン・メリル ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボビー・ハンフリー ボブ・ジェームス ボブ・ブルックマイヤー ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイケル・ブレッカー マイルス( ボックス盤) マイルス(その他) マイルス(アコ)改訂版 マイルス(アコ)旧版 マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マハヴィシュヌ・オーケストラ マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・5 マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モンティ・アレキサンダー モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラムゼイ・ルイス ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラリー・ヤング ラルフ・タウナー ランディ・ブレッカー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レイ・ブラウン レジェンドなロック盤 レス・マッキャン レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロニー・リストン・スミス ロバート・グラスパー ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー ヴィンセント・ハーリング 上原ひろみ 僕なりの超名盤研究 北欧ジャズ 古澤良治郎 吉田拓郎 向井滋春 和ジャズの優れもの 和フュージョンの優秀盤 四人囃子 国府弘子 増尾好秋 夜の静寂にクールなジャズ 大村憲司 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 松岡直也 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 阿川泰子 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 音楽喫茶『松和』の昼下がり 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー