1968年のマイルスを聴き直す
このところ、ブルーノートの4300番台をカタログ順に聴き直していて、このブログにまだ記事にしていないアルバムを集中聴きしているのだが、どれもが、そんな時代だったのだろう、売らんが為のアレンジ、音作りになっていて、聴き進めるにつけ、食傷気味になってきた。
どのアルバムも、1968年から1971年の録音がメイン。ソウル・ジャズなアレンジ、R&B志向の音作り&ビート、聴き手に訴求するイージーリスニングな味付け。これはこれでジャズ、と認めてはいるが、ジャズの本質である「即興演奏」は二の次、丁々発止とした、手に汗握る様な「インタープレイ」は無い。とにかく「聴き心地」優先。ちょっと辛くなってきた。
MIles Davis『Miles in The Sky』(写真)。1968年1月16日、5月15–17日の録音。パーソネルは、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), George Benson (g), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。マイルスが初めて電気楽器を導入したアルバム。つまりは、エレ・マイルス発祥のアルバムである。
では、1968年の録音って、例えば、マイルスだったら、どのアルバムになるのか。ぱっと出てきたのが『Miles in The Sky』。エレ・マイルス発祥の記念すべきスタジオ録音盤なんだが、電気楽器の大々的導入でジャズの幅を広げたが、リズム&ビートの面でも、8ビートと変則拍子の標準採用という「スインギーな4ビートの訣別」によっても、ジャズの幅を大きく広げている。
演奏を聴く。フロントは、マイルスのトランペット、ショーターのテナー、ベンソンのエレギ。切れ味良くほど良く尖った「即興演奏&インタープレイ」が怒濤の様に耳に迫り、疾走する。実にアーティスティックな演奏で、ジャズが「音楽芸術」の1ジャンルであることを思い出させてくれる。我々は「正当なジャズを演奏している」という矜持をバリバリ感じる。
売らんが為のアレンジ、音作りなんて微塵も無い。ただただ自らが「メインストリームなジャズ」と信じるアレンジと音作り。ストイックでシビアな音作りなんだが、ジャズ者の我々の耳には、ガッツリと訴求する。イージーリスニング志向なんてどこにも無い。ゴツゴツとした手応えのある、ジャジーなパフォーマンスの応酬。
8ビートと変則拍子の標準採用したリズム・セクションもエグい。トニーが喜々として、8ビートと変則拍子を高速ポリリズミックに叩きまくる。フェンダー・ローズとガッチリ組み合い、ジャズ・ファンクなエレ・ビートを叩き出そうと苦闘するハンコック。8ビートと変則拍子のベースラインを難なく紡ぎ出すロン。このリズム・セクションだからこそ、純正な「エレ・マイルス」をスタートすることが出来た。
これが、1968年のマイルスの音世界。どこか安堵する自分がいる。電気楽器&8ビートと変則拍子の標準採用の中で、限りなく自由度の高い「即興演奏」が基本のモード・ジャズを展開する。これが、マイルスのジャズの可能性の広げ方。これは21世紀になった今でも、ジャズの世界では「基本中の基本」。フリーもスピリチュアルも、このマイルスの広げたジャズの中に収斂されていった。
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