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2026年7月26日 (日曜日)

弦と鉄琴のポップ・ファンク

後期オールド・ブルーノートの看板アーティストの一人として、モーダルで前衛的なアプローチ、いわゆる新主流派ジャズを牽引してきたが、1970年代に入ると、コンテンポラリーなニュー・ジャズを模索、しっかりとした成果を上げたにも拘わらず、レーベル全体の商業的方針の転換もあり、よりキャッチーなソウル・ジャズやクロスオーバー路線への転身を図る。それの最初の成果がこのアルバムである。

Bobby Hutcherson『Natural Illusions』(写真左)。1972年3月2–3日の録音。ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib), Hank Jones (p), Gene Bertoncini (g), George Duvivier, Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds), Phil Bodner, Hubert Laws, Romeo Penque, Daniel Trimboli (fl), George Marge (oboe), John Leone (bassoon), Eugene Bianco (harp), Irving Spice, Aaron Rosand (vln), Julian Barber, Seymour Berman (viola), Seymour Barab (cello)。

今までの新主流派の最先端を行く、限りなくモーダルな自由度の高いジャズ、そして、それを発展させた、コンテンポラリーなニュー・ジャズを展開してきたボビー・ハッチャーソンが、いきなり、壮大でメロウなストリングスやフルートなどを大胆にフィーチャーした、ポップで聴きやすいイージー・リスニング〜ジャズ・ファンク路線へとシフトした異色作。音の雰囲気は、まるで当時の「CTIサウンド」である(笑)。
 

Bobby-hutchersonnatural-illusions

 
このアルバムの最大の特徴は、成功したかどうかは良く判らないが、ジャズ・ヴィブラフォンと豪華なストリングス(弦楽オーケストラ)、さらにはフルートやオーボエ、ファゴットといった木管楽器を大胆に融合させた点にある。サウンド的には、変則編成のオーケストラをバックにしたフュージョン(融合)・ジャズの趣きである。制作志向としては、当時のCTIレーベルのサウンドに酷似しているが、オーケストラのアレンジが旧来然としていて、垢抜けないフュージョン・ジャズに陥っているところが惜しい。

冒頭「When You're Near」は、耽美的なヴァイブとピアノが美しく響く、スローな純ジャズ志向な演奏なのだが、2曲目の「The Thrill Is Gone」から、ストリングスが優美に拡がり、流麗なヴィブラフォンのメロディが美しく響く、本作の方向性を決定づける演奏に度肝を抜かれる。しかし、4曲目「Rain Every Thursday」は、そのストリングスをバックに、ビートの効いたイージーリスニングなジャズ・ファンクが展開されてビックリする。しかし、直ぐにポップで聴きやすいイージー・リスニング志向に戻る。

当時のアルバム評としては、あまりに商業的、音楽はしばしばありきたりに聞こえる、と劣悪な評価が並ぶ。1980〜90年代以降のクラブ・ジャズやレア・グルーヴシーンにおいて再評価されはするが、純粋にモダン・ジャズのアルバム内容としては、あまり良い評価は下せない。演奏はハイレベルなのだが、いかんせん、アレンジとプロデュースが古すぎる。そこが、CTIレーベルとの差として現れた。このアルバム以降、ブルーノートは急速に勢いを失い、1970年代末に新規録音が途絶えて一時休眠状態となる。
 
 

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