再びバップ・マイルス”Steamin’”
僕の「マイルス盤のランキング」の続き。レコード・コレクターズ・2026年7月号は「マイルス・デイヴィス・アルバム/名演ランキング」、1950年代のアコースティック期から、ファンクやロックに接近したエレクトリック期、そして、奇跡のカムバック後、晩年に至るまでの長い活動期間に残されたアルバムと名演の数々をランキング。これにならって、僕なりに、ってことで(笑)。
Miles Davis『Steamin'』(写真左)。1956年5月11日と10月26日の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。1950年代黄金のクインテット。煙草に火を付ける「横顔のマイルス」のジャケット。このジャケットから感じる通りの演奏が、この『Steamin'』の中で繰り広げられている。
冒頭の「Surrey with the Fringe on Top」、邦題「飾りのついた四輪馬車」が、このアルバム全体の雰囲気を決定付ける。マイルスならではハードバップの美学が溢れている。クールでアーティステックでリリカル。適度に抑制された「美しさ」と「ビート」をバックにマイルスのトランペットが映える。ミッドテンポの、悠然としたビートに乗って、マイルスならではのハードバップが展開されている。
バックのチェンバースのベース、フィリージョーのドラムのビートが良い。マイルスを如何に引き立てるか、を念頭に若きリズム・セクションの二人が技術の粋の全てを投入して、リズム&ビートを供給する。そのマイルス楽団ならではのリズム&ビートをベースに、マイルスが「美しく男気溢れる魅惑的な」ペット・ソロを展開し、そのマイルスのペットに相対する「ヒール役」として、野太く音量の大きいコルトレーンのテナーが展開される。
このアルバムは一言で言うと「マイルスならではハードバップの美学」。2曲目では、ビ・バップ時代の超有名曲である「Salt Peanuts」を、マイルスならではのハードバップで再構築する。この「Salt Peanuts」は、このマラソン・セッションでは珍しく、メンバーが皆、平等なグループサウンズを前提として、マイルスならではのハードバップを基にした、個性的な「Salt Peanuts」を展開してみせる。
ハードバップ・セッションの「予定調和的なグループ・サウンズ」を早々に見限り、個々の演奏を引きき立たせる為のアレンジと演奏。この『Steamin'』には、本来、アーティステックであるべき「ハードバップ」の真の「あるべき姿」が記録されている。マイルスに妥協は無い。マイルスに予定調和は無い。僕は、毎度毎度『Steamin'』を聴く度に、このマイルスならでは「ハードバップの美学」に感じ入ってしまう。
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