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2026年7月の記事

2026年7月31日 (金曜日)

ティモンズの”動”と”静”の対比

リヴァーサイド・レコードのカタログを見ながら、このブログでの記事にした盤、していない盤の仕分けをしている。リヴァーサイド・レコードと言えば、1953年にオリン・キープニュースとビル・グラウアーによって、NY'に設立されたジャズ・レコード・レーベル。ブルーノート、プレスティッジに次ぐ、中堅ジャズ・レーベルとして、その名を馳せている。

Bobby Timmons『This Here Is Bobby Timmons』(写真左)。1960年1月13, 14日の録音。リヴァーサイドの”RLP 12-317”。ちなみにパーソネルは、Bobby Timmons (p), Sam Jones (b), Jimmy Cobb (ds)。ファンキー・ピアノの第一人者ボビー・ティモンズの初リーダーアルバムである。編成はシンプルなトリオ編成。ファンキー・ジャズの全盛期を牽引したティモンズの代表作であろう。2026年リマスターが出たみたいなので、聴き直しである。

冒頭からの2曲「This Here」「Moanin'」はどちらもティモンズの作曲。This Here」は、キャノンボール・アダレイ・クインテットで、「Moanin'」は、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズで大ヒット。まず、この冒頭の2曲でのティモンズのピアノが、極上のファンキー・ピアノ。ティモンズは、ジャズ・ピアニストの中で一番「こてこて」ファンキーなフレーズを紡ぎ出す名手だと思っているのだが、この2曲のファンキー・ピアノは極上。
 

Bobby-timmonsthis-here-is-bobby-timmons  

 
タッチは明快、破綻無く端正、ファンクネスをしっかりと忍ばせたパウエル・ライクな、ビ・バップなピアノで弾き進めるスタンダード曲も良い。「Lush Life」や「My Funny Valentine」といったバラードやスタンダード・ナンバーを、明快でファンクネス漂う、独特のタッチで叙情的に表現しているところがとっても魅力的。テクニックは確か、そんな確かなテクニックの中で、パウエルとは似つかぬ「ファンキーさ」を忍ばせて、スタンダード曲を弾き進める。

渋い職人芸的ドラマーのコブと、安定感抜群の骨太ベーシスト、ジョーンズの、息の合った骨太でスウィンギーな、強力リズム隊が、ティモンズの黒っぽくブルージーなピアノをガッチリと支える。今回のリマスターで、ジョーンズの骨太ベースがソリッドでブンブン唸る様がしっかり捉えられ、コブのドラミングが切れ味良く躍動感溢れる音で捉えられており、ティモンズのファンキー・ピアノと相まって、極上のトリオ・サウンドにグレードアップされている。

そうそう、キャノンボール・アダレイ・クインテットで大ヒットしたDat Dere」もティモンズの作だった。しかしながら、自作曲のファンキーなノリだけでなく、「Lush Life」や「My Funny Valentine」といったバラードやスタンダード・ナンバーの弾き回しも見事なのには感心することしきり。この盤でのティモンズのピアノの「動」と「静」のコントラストが印象的。ピアノ・トリオの代表的名盤の一枚、ファンキー・ジャズでのピアノ・トリオ演奏の名盤である。
 
 

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2026年7月30日 (木曜日)

4管フロントのユニークな好盤

よくまあ、こんな4管フロントのセプテットを考えついたものだと思う。4管フロントなので、4管のユニゾン&ハーモニーやテーマ部のアレンジや、アドリブ・ソロの順番など、単純に即興演奏がメインのインタープレイとは全く違う悩ましさがある。特に、4管フロントのアンサンブルのアレンジが絶対に鍵を握る。でないと聴けたもんじゃ無い。

Jon Eardley『The Jon Eardley Seven』(写真左)。1956年1月13日の録音。プレスティッジの7033番。ちなみにパーソネルは、Jon Eardley (tp), Milt Gold (tb), Phil Woods (as), Zoot Sims (ts), George Syran (p), Teddy Kotick (b), Nick Stabulas (ds)。珍しいフロント4管のセプテット編成(7人編成)。

リズム隊のメンバーは上に他では見かけない名前ばかり。しかし、個性は薄いが上手くて、このアルバムのフロント4管のバックで、良好なリズム&ビートを供給して、リズム隊の任をしっかり果たしている。

アルバム全体に、軽快で爽快、それでいて綿密で小粋な「ジャズを聴かせる」雰囲気が漂っている。リーダーのジョン・アードレイとテナーのズート・シムズは、ジェリー・マリガン・セクステットのレギュラー・メンバーとして活動していたという背景もあってだろう、西海岸風クール・ジャズの質感をしっかり受け継いでいる。これが、このアルバムに独特の雰囲気を与えている。
 

On-eardleythe-jon-eardley-seven

 
冒頭の「Leap Year」。ピアニストのジョージ・サイランが書き下ろした軽快なナンバー。4管アンサンブルが印象に残る哀愁系ハードバップ。4管による調和の取れた爽やかなテーマから、各人の流れるようなソロへと引き継がれる展開。厚みがありつつ、端正で品の良い爽やかな西海岸ジャズ風のアレンジと、小粋でしなやかなスイング感が実に良い。

フロント4管に、白人アルトの名手ウッズや、味のあるテナーのズートが参加しているところが注目ポイント。リーダーのアードレイのトランペットも奥ゆかしくも端正で良好。ゴールドのトロンボーンは、中低音域をカバーして、高音域のアードレイや、鋭く突き抜けるウッズを下から包み込むように支えるクッションの役割を果たしている。

つまりは、フロント4管それぞれの力量豊かな吹奏とアンサンブル、そして、それを支える考え抜かれたアレンジがこの盤の優れたところ。

西海岸ジャズ的な軽快で爽快でお洒落な「聴かせる」アレンジと、東海岸ジャズ的な力強いハードバップなアンサンブルが効果的にミックスした、ユニークな内容の好盤である。
 
 

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2026年7月29日 (水曜日)

ハバードの ”CTIのコンピ盤”です

ジャズ・トランペットの雄、フレディ・ハバードのコンピレーション・アルバムである。ハバードがコロムビア・レコードへ移籍した後にリリースされたCTI時代(1971年〜1973年録音)の未発表テイク集(レア・トラック集)であり、CTIレーベルからリリースされた彼の最後のアルバムである。確かに、アルバムを全編、聴き通すと、曲毎に志向と内容がバラバラで、どの演奏もレベルは高いが、アルバム全体の統一感はない。

Freddie Hubbard『Polar AC』(写真左)。1971年9月 (#1), 1972年4月 (#2–3), 1972年10月 (#4-5) の録音。CTIの6056番。ちなみにパーソネルは、以下の通り。Freddie Hubbard (tp), Junior Cook (ts), Hubert Laws (fl), George Cables (p, tracks 2 & 5), George Benson (g), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds, track 1), Lenny White (ds, tracks 2 & 5), Billy Cobham (ds, track 4), Airto Moreir(perc, tracks 2 & 3)。そして、バックにストリングスとブラス・セクションが入る。

ハバードのトランペットについては、狂ったようにテクニックを駆使して吹きまくる曲もあれば(#1:Polar AC)、抑制の美を全面を押し出した、ストリングスに乗った、イージーリスニング志向のソフト&メロウな吹奏もあれば(#2:People Make The World Go Round, #3:Betcha by Golly, Wow)、スローにアップテンポに、メインストリーム志向のモーダルな吹奏を繰り広げる曲もある(#4:Naturally, #5:Naturally)。
 

Freddie-hubbardpolar-ac

 
1曲目「Polar AC」はアルバム『First Light』のセッションから生まれた、シダー・ウォルトン作曲のナンバー。ロン・カーターのベースとジャック・デジョネットのタイトなドラムの絡みが絶品。2曲目「People Make the World Go Round」と3曲目「Betcha by Golly, Wow」は、スタイリスティックスのカヴァー。1972年4月の同一日録音。どちらの演奏もボブ・ジェームスによるストリングス・アレンジが特徴。

4曲目「Naturally」は、アルバム『Sky Dive』のセッションから、ビリー・コブハムがドラムで参加したナット・アダレイの曲。ラストの5曲目「Son of Sky Dive」は、アルバム『Keep Your Soul Together』のセッション音源で、カルテット+αの編成による熱気溢れる、メイン師とリーム志向のテンション高い長尺ナンバー。タイトルから類推できるが、名盤『Sky Dive』のタイトル曲の別展開・続編的なテイク。

こうやって、このコンピ・アルバムを聴き通すと、いかにハバードのトラペットのテクニックが圧倒的に高くて、様々なニュアンスの吹奏を完璧に吹き通すことが出来る、希有で不世出のジャズ・トランペッターであることが窺い知れる。逆に、統一感のある個性的なトランペットとはちょっと違う訳で、これが長所と出たり、短所と出たり。ハバードが如何に固定した評価がし難いトランペッターであることを実感する。でも、このコンピ・アルバム、内容としては悪く無い。初心者向けハバード入門盤の一枚として良い感じである。
 
 

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2026年7月28日 (火曜日)

再びバップ・マイルス ”Workin’”

僕の「マイルス盤のランキング」の続き。 マラソン・セッションの4枚のアルバムの中で、最悪のジャケット。道路工事の現場に煙草を吸いながら笑うマイルス。しかも、モノトーン、エメラルドグリーン一色。全く金をかけていない。というか気にしちゃいない。まあ、Prestigeレーベルなんで仕方が無い。ジャケットは当時は単なるレコードの入れ物との扱いだったらしいが、それにしても扱いが雑過ぎる(笑)。

Miles Davis『Workin'』(写真左)。1956年5月11日と10月26日の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。1950年代黄金のクインテット。派手さはないが、当時のマイルス・クインテットの凄さを伝える、ライブ感溢れる演奏の数々。

このアルバムには、アコースティック・マイルスで絶対に無視出来ない名演がある。冒頭の「It Never Entered My Mind」。右手シングルトーン+ブロックコードのガーランドのシンプルで儚く美しい前奏で「掴まれる」。

しみじみとした、素晴らしくシンプルで美しい前奏。聴く度に心がジーンとし、目頭が少し熱くなる。情感のこもった、ゆったりとした美しい響き。そして、そのガーランドの素晴らしい前奏。
 

Miles_davis_workin_2

 
そこに滑り込む様に入ってくるマイルスのミュートがテーマを奏でる。至福のひととき。素晴らしいバラード演奏。これがハードバップの真髄である。ビ・バップ時代に、こんな情感溢れる美しいバラード演奏は無い。この曲でのマイルスのミュート・トランペットが実に素晴らしい。これぞ「リリカルで耽美的」という表現がピッタリである。

しかも、である。ゴツゴツとしたフレーズで、野太い音量の大きいコルトレーンは参加していない。ただただシンプルに、ただただ朗々とマイルスは、マイルスだけで、情感溢れるバラードをミュート・トランペットで吹き上げていく。クールでヒップ、「女を口説くように」吹く、バラード・マイルスの真骨頂。

他の演奏も良い。他の演奏は楽しい。当時のマイルス・クインテットの「Theme」が2パターン入っている。「It Never Entered My Mind」〜「Four」〜「In Your Own Sweet Way」〜「Theme」。そして、「Trane's Blues」〜「Ahmad's Blues」〜「Half Nelson」〜「Theme」。演奏の展開が2つに分かれている。ライヴハウスでの短いセッションを聴くような収録曲の構成。プレスティッジにしては粋である。

ジャケット・デザインに騙されてはいけない。ジャケット・デザインに怯んではいけない。このアルバムは、アーティステックな高みに達した、至高のジャズである。
 
 

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2026年7月27日 (月曜日)

再びバップ・マイルス”Steamin’”

僕の「マイルス盤のランキング」の続き。レコード・コレクターズ・2026年7月号は「マイルス・デイヴィス・アルバム/名演ランキング」、1950年代のアコースティック期から、ファンクやロックに接近したエレクトリック期、そして、奇跡のカムバック後、晩年に至るまでの長い活動期間に残されたアルバムと名演の数々をランキング。これにならって、僕なりに、ってことで(笑)。

Miles Davis『Steamin'』(写真左)。1956年5月11日と10月26日の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。1950年代黄金のクインテット。煙草に火を付ける「横顔のマイルス」のジャケット。このジャケットから感じる通りの演奏が、この『Steamin'』の中で繰り広げられている。

冒頭の「Surrey with the Fringe on Top」、邦題「飾りのついた四輪馬車」が、このアルバム全体の雰囲気を決定付ける。マイルスならではハードバップの美学が溢れている。クールでアーティステックでリリカル。適度に抑制された「美しさ」と「ビート」をバックにマイルスのトランペットが映える。ミッドテンポの、悠然としたビートに乗って、マイルスならではのハードバップが展開されている。
 

Steamin_2
 

バックのチェンバースのベース、フィリージョーのドラムのビートが良い。マイルスを如何に引き立てるか、を念頭に若きリズム・セクションの二人が技術の粋の全てを投入して、リズム&ビートを供給する。そのマイルス楽団ならではのリズム&ビートをベースに、マイルスが「美しく男気溢れる魅惑的な」ペット・ソロを展開し、そのマイルスのペットに相対する「ヒール役」として、野太く音量の大きいコルトレーンのテナーが展開される。

このアルバムは一言で言うと「マイルスならではハードバップの美学」。2曲目では、ビ・バップ時代の超有名曲である「Salt Peanuts」を、マイルスならではのハードバップで再構築する。この「Salt Peanuts」は、このマラソン・セッションでは珍しく、メンバーが皆、平等なグループサウンズを前提として、マイルスならではのハードバップを基にした、個性的な「Salt Peanuts」を展開してみせる。

ハードバップ・セッションの「予定調和的なグループ・サウンズ」を早々に見限り、個々の演奏を引きき立たせる為のアレンジと演奏。この『Steamin'』には、本来、アーティステックであるべき「ハードバップ」の真の「あるべき姿」が記録されている。マイルスに妥協は無い。マイルスに予定調和は無い。僕は、毎度毎度『Steamin'』を聴く度に、このマイルスならでは「ハードバップの美学」に感じ入ってしまう。
 
 

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2026年7月26日 (日曜日)

弦と鉄琴のポップ・ファンク

後期オールド・ブルーノートの看板アーティストの一人として、モーダルで前衛的なアプローチ、いわゆる新主流派ジャズを牽引してきたが、1970年代に入ると、コンテンポラリーなニュー・ジャズを模索、しっかりとした成果を上げたにも拘わらず、レーベル全体の商業的方針の転換もあり、よりキャッチーなソウル・ジャズやクロスオーバー路線への転身を図る。それの最初の成果がこのアルバムである。

Bobby Hutcherson『Natural Illusions』(写真左)。1972年3月2–3日の録音。ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib), Hank Jones (p), Gene Bertoncini (g), George Duvivier, Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds), Phil Bodner, Hubert Laws, Romeo Penque, Daniel Trimboli (fl), George Marge (oboe), John Leone (bassoon), Eugene Bianco (harp), Irving Spice, Aaron Rosand (vln), Julian Barber, Seymour Berman (viola), Seymour Barab (cello)。

今までの新主流派の最先端を行く、限りなくモーダルな自由度の高いジャズ、そして、それを発展させた、コンテンポラリーなニュー・ジャズを展開してきたボビー・ハッチャーソンが、いきなり、壮大でメロウなストリングスやフルートなどを大胆にフィーチャーした、ポップで聴きやすいイージー・リスニング〜ジャズ・ファンク路線へとシフトした異色作。音の雰囲気は、まるで当時の「CTIサウンド」である(笑)。
 

Bobby-hutchersonnatural-illusions

 
このアルバムの最大の特徴は、成功したかどうかは良く判らないが、ジャズ・ヴィブラフォンと豪華なストリングス(弦楽オーケストラ)、さらにはフルートやオーボエ、ファゴットといった木管楽器を大胆に融合させた点にある。サウンド的には、変則編成のオーケストラをバックにしたフュージョン(融合)・ジャズの趣きである。制作志向としては、当時のCTIレーベルのサウンドに酷似しているが、オーケストラのアレンジが旧来然としていて、垢抜けないフュージョン・ジャズに陥っているところが惜しい。

冒頭「When You're Near」は、耽美的なヴァイブとピアノが美しく響く、スローな純ジャズ志向な演奏なのだが、2曲目の「The Thrill Is Gone」から、ストリングスが優美に拡がり、流麗なヴィブラフォンのメロディが美しく響く、本作の方向性を決定づける演奏に度肝を抜かれる。しかし、4曲目「Rain Every Thursday」は、そのストリングスをバックに、ビートの効いたイージーリスニングなジャズ・ファンクが展開されてビックリする。しかし、直ぐにポップで聴きやすいイージー・リスニング志向に戻る。

当時のアルバム評としては、あまりに商業的、音楽はしばしばありきたりに聞こえる、と劣悪な評価が並ぶ。1980〜90年代以降のクラブ・ジャズやレア・グルーヴシーンにおいて再評価されはするが、純粋にモダン・ジャズのアルバム内容としては、あまり良い評価は下せない。演奏はハイレベルなのだが、いかんせん、アレンジとプロデュースが古すぎる。そこが、CTIレーベルとの差として現れた。このアルバム以降、ブルーノートは急速に勢いを失い、1970年代末に新規録音が途絶えて一時休眠状態となる。
 
 

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2026年7月25日 (土曜日)

プレスティッジの ”中間派”盤

いわゆる「中間派」のサウンドである。「中間派」とは、スイング・ジャズとモダン・ジャズ(ビ・バップ)の間に位置する、わが国独自のジャズ音楽用語である。音楽性としては、激しいバップの難解さを避け、「スイング・ジャズ」のジャジーなスイング感とブルージー感を全面に押し出した、小粋で親しみ易いジャズの演奏スタイル。ハードバップ基調でありながら、スイング感が強調されている演奏スタイルとも言える。

Bennie Green『Blows His Horn』(写真左)。1955年6月10日、9月22日の録音。Prestigeの7052番。ちなみにパーソネルは、Bennie Green (tb, vo), Charlie Rouse (ts), Cliff Smalls (p), Paul Chambers (b), Osie Johnson (ds), Candido Camero (conga :tracks 1–4)。1955年6月10日の録音だけ、キャンディドのコンガが入る、トロンボーンのベニー・グリーンがリーダーで、チャーリー・ラウズとフロント2管のクインテット編成。

録音当時は、ビ・バップでのトロンボーンを牽引したJ.J.ジョンソンの影響が強いジャズ・トロンボーンの世界の中で、ベニー・グリーンのトロンボーンは、スインギーで余裕のあるブルース感覚が豊かな、いわゆる「中間派」のトロンボーン。チャーリー・ラウズのテナーとのフロント2管で、哀愁感溢れるファンキーなパフォーマンスを聴かせてくれる。
 

Bennie-greenblows-his-horn  

 
前半セッション(1955年6月10日録音 / トラック1〜4)は、ラテン調の軽快なリズムや、独特のエキゾチックなスウィング感が加わったキャッチーな演奏がメイン。キャンディドのコンガの参加が効いている。ベニー・グリーンの大らかで陽気なトロンボーンがコンガのリズムに良く乗っている。太くマイルドなトロンボーンの音色で吹き上げるバラードも絶品。トロンボーンのディープな低音と柔らかな中音域を駆使して唄い上げるソロも魅力的。

後半セッション(1955年9月22日録音 / トラック5〜9)は、純粋なクインテット(5人編成)によるストレートなハードバップ・ブルースを展開している。でもフレーズの取り回しはあくまで「中間派」。それでもスピード感溢れ、切れ味の良い演奏続きで、中間派侮り難し、である。この後半のセッションでは、力強い推進力のあるベースが目立つが、これは若き日のポール・チェンバースである。ベニー・グリーンのミュート・プレイも味わい深い。

このアルバムは、ベニー・グリーンのプレスティッジ・レコードにおける12インチLPとしての第1作目であり、「中間派」のユーモラスで温かみのあるスウィング感とモダンジャズの融合が好要素として反映された好盤です。こういう「中間派」のリーダー作を押さえていたなんて、プレスティッジもなかなか「侮り難し」である。
 
 

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2026年7月24日 (金曜日)

CTIビッグバンドの傑作盤です。

CTI Recordsの創設者であるクリード・テイラーによるプロデュース作。当時最先端だったシンセサイザーの未来的な響きと、大編成の生ブラス/ストリングスが見事に融合した、1970年代後半の「クロスオーバー/フュージョン」志向のビッグバンド・サウンドの傑作である。CTIレーベルらしいサウンド・カラーが芳しい。

David Matthews『Dune』(写真左)。1977年6月の録音。CTIの5005番。邦題「砂の惑星」。ピアニスト/アレンジゃー、デヴィッド・マシューズのアルバム。ちなみにパーソネルは以下の通り。パーソネルをつぶさに見渡すと、当時のクロスオーバー&フュージョン・ジャズ畑で活躍していた、名うてのジャズマンたちが勢揃い。錚々たるメンバー構成。

David Matthews (key, arr), Cliff Carter (syn), David Sanborn (as), Grover Washington, Jr.(ss,ts), Lew Del Gatto (oboe, cl), Dave Tofani (fl, piccolo), Hiram Bullock, Eric Gale (g), Randy Brecker, Jon Faddis, Lew Soloff, John Gatchell, Burt Collins, Jim Bossy, Joe Shepley (tp, flh), Wayne Andre, Tom "Bones" Malone, Sam Burtis, Gerald Chamberlain, Dave Taylor (tb), Mark Egan, Gary King (b), Steve Gadd, Andy Newmark (ds), Sue Evans, Gordon Gottlieb (perc), Googie Coppola (vo)。

フランク・ハーバートのSF小説『デューン 砂の惑星』の世界観をモチーフにして制作された「企画盤」。アナログ盤のA面(トラック1〜4)は、小説のキャラクターや舞台をテーマにした組曲風の構成。

Part I: Arrakis:
砂の惑星「アザキス(アラキス)」をテーマにした楽曲。
Part II: Sandworms:
砂漠に生息する巨大な砂虫を表現した、本作屈指の名曲。
Part III: Song Of The Bene Gesserit:
謎の女性結社「ベネ・ゲセリット」をイメージした曲。
Part IV: Muad'Dib:
主人公ポール・アトレイデスの称号「ムアディブ」の名を冠した曲。
 

David-matthewsdune

 
B面(トラック5〜8)は、映画『スター・ウォーズ』のメインテーマや、デヴィッド・ボウイの「Space Oddity」といったSFに関連する映画音楽やポップスのカバーで構成されている。

Space Oddity:
ボウイの名曲を女性ボーカルをフィーチャーしてカバー。
Silent Running:
1972年のSF映画『サイレント・ランニング』のテーマ。
Princess Leia's Theme:
スター・ウォーズの「レイア姫のテーマ」のカバー。
Main Theme From Star Wars:
ドラムブレイクから始まるディスコ調ジャズ・カバー。

振り返ると、なかなかの内容の組曲であり、当時の映画音楽かのカヴァーで締められていて、マシューズのアレンジの才能が溢れんばかり。クロスオーバー&フュージョン志向のビッグバンドの演奏としても、かなり充実した内容になっている。それも、そのはずで、参加ミュージシャンがふるっている。しかし、この当時のクロスオーバー&フュージョン・ジャズ畑で活躍していた、名うてのジャズマンたちを統率し、合同演奏にフィットさせたマシューズの指揮も素晴らしい。

特にB面(トラック5〜8)については、ディスコ・ファンクとクロスオーバーの融合、スティーヴ・ガッドらによる「極上のドラム・ブレイク」、先進的なシンセサイザーの導入が特徴的で、クロスオーバー&フュージョン志向のジャズ・ファンクとしても、その出来は秀逸。

このアルバムは当時「曰く付き」で、「砂の惑星」の原作者のフランク・ハーバートから正規の許諾を取らずに『Dune』の名称と世界観を使ってリリースした為、のちに著作権侵害の訴訟が勃発。これによりアルバムは回収、一時期は廃盤(プレス禁止)状態になったそう。その影響か、今でも、音楽のサブスク・サイトでは聴くことができないようだ(YouTubeで、フルアルバム、聴くことができるみたい)。
 
 

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2026年7月23日 (木曜日)

BN4400番台のエルヴィン

ブルーノートの4400番台は、BNLAシリーズへの移行前(1972年リリース)、4413番から4423番までの11枚と、Modern Jazz New 4400シリーズ(1984年〜1986年リリース)の、4424番から4435番の12枚。まず、ここで押さえるべきは、1972年リリースの4413番から4423番までの11枚。オールド・ブルーノートの最後の姿。ジャズ・ファンクとフュージョンの時代への適応です。

Elvin Jones『Merry-Go-Round』(写真左)。1971年2月12日と12月16日の録音。ブルーノートの4414番。ちなみにパーソネルは、下記の通り。ドラマーでリーダーのエルヴィン・ジョーンズが、当時の若手精鋭ミュージシャンを大挙、招聘して、ポスト・バップ〜初期フュージョン・サウンドを展開したアルバム。

Elvin Jones (ds), Joe Farrell (ss (2, 6, 8), ts (1), fl (4), piccolo (7)), Steve Grossman (ss (2, 7), ts (1, 6)), Dave Liebman (ts (1, 6, 8), ss (2, 6, 7)), Frank Foster (alto-cl (8)), Pepper Adams (bs (6, 7)), Chick Corea (p (4–6), el-p (5)), Jan Hammer (el-p (1, 5), p (2, 3), glockenspiel (7)), Yoshiaki Masuo (g (1, 4)), Gene Perla (b (2–5), el-b (1, 6, 7)), Don Alias (congas (1, 3, 5, 6), oriental bells (2))。
 

Elvin-jonesmerrygoround  
 

録音日は2日に渡っているが、1971年2月12日の録音は、8曲目の「Who's Afraid...」のみ。その他の演奏は、全て、1971年12月16日の録音になる。録音日毎に、ポスト・バップ志向と初期フュージョン志向と演奏が分かれている訳では無い。なので、アルバムの内容評価としては、主に、1971年12月16日録音の7曲に着目することになる。

アルバムの内容としては、ポスト・バップな演奏、2曲目「Brite Piece」3曲目「Lungs」8曲目「Who's Afraid」と、後のフュージョン・ジャズの音要素を含んだ、1曲目「Round Town」、4曲目「A Time for Love」、5曲目「Tergiversation」、6曲目「La Fiesta」、が混在した、ちょっと拡散した内容。そこに、音遊び風の7曲目「The Children's Merry-Go-Round March」が入るので、かなりエルヴィンの趣味性に偏った演奏集に感じる。

チック・コリアの大名曲「La Fiesta」の初録音、チック自身のバンド「リターン・トゥ・フォーエヴァー」の名盤(ECM)に吹き込まれる2か月前の演奏が入っていたり、渡米間もない増尾好秋の流麗なギターソロが大きくフィーチャーされていたり(「Round Town」)、リーブマンとグロスマンという、新進気鋭のテナーまんの競演があったり(「Brite Piece」)で、話題には事欠かない内容なので、好盤というよりは「人気盤」の位置づけのアルバムだろう。
 
 

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2026年7月22日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・328

ハードバップの名盤・好盤の宝庫としては、ブルーノートが有名だが、このプレスティッジ・レコードも意外とハードバップの名盤・好盤が沢山ある。

録音日の異なる演奏を平気でひとつのアルバムに収録する脳天気さが嫌われる最たる原因で、アルバムの枚数は多いが、どれもやっつけ、玉石混交としたカタログ、と評価されている。が、カタログ順にアルバムを聴き進めて行くと、そうでも無いことに気がつく。

Gene Ammons All Stars『The Happy Blues』(写真左)。April 23, 1956年4月23日の録音。プラスティッジの7039番。ちなみにパーソネルは、Gene Ammons (ts), Art Farmer (tp), Jackie McLean (as), Duke Jordan (p), Addison Farmer (b), Art Taylor (ds), Candido (congas)。リーダーのアモンズのテナー、ファーマーのトランペット、マクリーンのアルトが3管フロントのコンガ入りセプテット編成。

ソウルフルなブロウで「ボス・オブ・ザ・テナー」と称されたテナー・サックス奏者のアモンズが率いる「オールスターズ」名義の、スタジオ録音ではありながら、ジャズの醍醐味である熱気あふれるジャム・セッションの形式を採用しており、一一発勝負、一期一会のファンキーでブルージーな演奏が繰り広げられている。
 
Gene-ammons-all-starsthe-happy-blues  
 
リズム隊にキューバ出身のパーカッショニストである キャンディドのコンガが効いている。通常のハードバップ・セクステットにラテン・パーカッションの色彩が加わることで、従来、ジャズが持つブルージーな泥臭さが中和され、洗練された「跳ねるようなグルーヴ」が生まれている。これが、このアルバムに軽快なファンクネスを与えている。

その雰囲気は、冒頭のタイトル曲「Happy Blues」を聴けば判る。それぞれのソロの後ろで他の管楽器が即興的で心地よいリフを重ね、アルバムの陽気でリラックスした雰囲気を象徴する名演。暗さや重さが一切ない陽気で開放的なグルーヴが特徴。アモンズの骨太なテナーから、マクリーンのエッジの効いたアルト、ファーマーの端正なトランペットへと引き継がれるソロ・リレーに聴き惚れてしまう。

リーダーのアモンズがわが国で馴染みが薄いということ、そして、あのやっつけレーベルのプレスティッジのオールスター・ジャムセッションの録音なので内容が薄い、という聴かず嫌いが作用して、このアルバムは、わが国では、まず取りあげられることは無い。しかし、内容は良い。

プレスティッジの「ジャム・セッション・シリーズ」の第1弾として、事前のリハーサルをあえて行わないことで生まれるジャズ本来の生々しいエネルギーと、ミュージシャン同士の自発的なインタープレイの質の高さを良い形で捉えた好盤と言える。
 
 

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2026年7月21日 (火曜日)

ジャズ演奏の重要要素=”編曲”

タッド・ダメロン(Tadd Dameron, 1917年2月21日 – 1965年3月8日没)は、ビ・バップの誕生と成熟を「洗練されたアレンジ(編曲)」という側面から支えたジャズマン。本作は全5曲すべてが、タッド・ダメロンによるオリジナル作品。このアルバムには、その卓越したアンサンブル・ライティングの才が遺憾なく発揮されている。

Tadd Dameron『Fontainebleu』(写真左)。1956年3月9日、Van Gelder Studio での録音。プレスティッジの7037番。ちなみにパーソネルは、Tadd Dameron (p), Kenny Dorham (tp), Henry Coker (tb), Cecil Payne (bs), Sahib Shihab (as), Joe Alexander (ts),, John Simmons (b), Shadow Wilson (ds)。モダン・ジャズの発展において重要な役割を果たした名ピアニスト兼編曲家、タッド・ダメロンのリーダー作。

タッド・ダメロンは、ビ・バップの「ロマンティシスト(叙情派)」と呼ばれ、力業的アクロバティックな即興演奏が主流だったビ・バップ時代において、オーケストレーション(編曲)の美しさを持ち込んだ先駆者とされる。本作は、1949年にマイルスらとパリのジャズ・フェスに参加したダメロンが、現地で訪れたフランスの「フォンテーヌブロー宮殿」の美しさに深い感銘を受け、その情景を音楽で表現したコンセプト・アルバムとなっている。
 

Tadd-dameronfontainebleu  

 
このアルバムのパーソネルを見渡せば、8人編成での演奏。しかし、まるでビッグバンドを聴いているかの様な「重厚かつ色彩豊かな響き」を実現、ジャズが「単なる娯楽音楽から芸術音楽へと進化する過程」を示す1枚として評価が高い。冒頭のタイトル曲「Fontainebleau」は、仏の宮殿に感銘を受けて書かれた、アルバムのコンセプトを象徴する曲で、この曲を聴けば、その狙いが当時の「先をいくもの」ということがよく判る。

冒頭の「Fontainebleau」。アドリブ・ソロを一切含まない通作歌曲で、管楽器隊の響きが美しい。続く「Delirium」はスリリングで典型的なビ・バップなナンバー、管楽器隊の複雑なアンサンブル。3曲目『The Scene Is Clean』は、メロディアスで気品溢れるバラード。4曲目「Flossie Lou」の独自の洗練されたホーン・アレンジ、ラストの「Bula-Beige」は、ドラマチックな組曲風で、各ソリスト達の実力を存分に引き出す巧みな構成。

このアルバムは、ジャズ盤鑑賞の定石、ジャズマン毎のソロ演奏の素晴らしさとか、グループ全体の演奏の優秀性とか、で聴くべきアルバムではないだろう。オーケストレーション(編曲)の美しさに着目し、それを実現し、ジャズが「単なる娯楽音楽から芸術音楽へと進化する」ひとつの重要要素の成功例を提示した、そんな企画盤である。ジャズ演奏の重要要素に「編曲」がある、ということをこのアルバムは教えてくれる。
 
 

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2026年7月20日 (月曜日)

AEOCの”Great Black Music”

ECMレコード・カタログの1100〜1200番台のカタログを見ていて、アート・アンサンブル・オブ・シカゴのアルバムが、ECMレコードのもとで4枚もリリースしていることに気がついた。

今から語るアルバムは、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ(AEOC)が、5年間のレコーディング活動休止を経てリリースした最初のアルバムであり、ECMレーベルからのグループ初のアルバムである。

Art Ensemble of Chicago『Nice Guys』(写真左)。1978年5月、独の「Tonstudio」での録音。ECMの1126番。ちなみにパーソネルは、Lester Bowie (tp, celeste, b-ds), Joseph Jarman (sax, cl, perc, vo), Roscoe Mitchell (sax, cl, fl, perc), Malachi Favors Maghostut (b, perc, melodica), Famoudou Don Moye (ds, perc, vo)。

シカゴ派フリージャズの伝説的グループであるアート・アンサンブル・オブ・シカゴ(Art Ensemble of Chicago=AEOC)の、ECMレーベルでの初のアルバム。活動休止以降、5年振りのアルバムであり、グループにとって大きな転換点となったアルバムでもある。

1960年代後半から、アフリカの民族音楽や演劇的な要素を取り入れたアヴァンギャルドな即興演奏で知られていた彼らが、プロデューサーのマンフレート・アイヒャー率いるECMとタッグを組んだ作品。

ECMレコードのアルバム制作方針と録音手法により、従来の荒々しいフリー・ジャズとは一線を画す、整理されたエレガントな空間構成と緻密なアンサンブルがメインのフリー・ジャズに変身しているのが判る。
 

Art-ensemble-of-chicagonice-guys

 
5人のメンバーそれぞれが作曲を手掛け、ユーモア、アブストラクト、叙情性など多彩な世界観が1枚に凝縮されている。彼らの特徴は、サックスやベースといった通常のジャズ楽器に加え、「リトル・インストゥルメンツ(おもちゃの楽器)」と呼ばれる無数の小楽器を使用することです。これが、他のフリー・ジャズな演奏との大きな差異化要素のひとつになっている。

この盤でのAEOCのフリー・ジャズの特徴は、従来の一般的なフリー・ジャズの、エモーショナルなエネルギーの爆発や、高密度で激しい即興演奏では無く、音と音の間のスペースを重視した、静寂と空間を聴かせるフリー・ジャズであるということ。この「音の引き算の美学」は、従来のフリー・ジャズの熱量とは対極にある、現代音楽に近い緻密な空間構成を持っている。これが、AEOCならではの、唯一無二のフリー・ジャズになっている。

加えて、多くのフリー・ジャズが政治的メッセージや精神性を帯び、シリアスで難解な方向へ進む中、AEOCは演劇的なユーモアを前面に出している。

1曲目の「Ja」が象徴的で、フリー・ジャズの不穏な空気から突如として、当時最先端のポップスであった「レゲエ」のリズムへとジャンプする。リトル・インストゥルメンツを鳴らし、コミカルな歌声を即興の中に融合するスタイルは、シリアス一辺倒だったフリー・ジャズにおいて極めて異質であり、ポップかつ批評的な新しさを持っている。

そういうAEOCのフリー・ジャズは、自らの音楽をフリージャズという枠に留めず、「古代から未来へ(Ancient to the Future)」を掲げた「Great Black Music」と呼んでいる。R&B、レゲエ、ゴスペル、ファンクなど、黒人音楽の歴史すべてを内包したアプローチが、本作でより洗練された形で提示されている。欧州系フリー・ジャズの名盤です。
 
 

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2026年7月19日 (日曜日)

ユッコのデビュー10周年盤です

この10周年アルバムには3つの特徴がある。一つ目は「初の全曲オリジナル」。過去の作品で見せた優れたカヴァー演奏を封印し、全10曲すべてを自身が作曲。ソングライター・編曲家としての進化が確認できる。二つ目は「こだわりの一発録り」。ライブさながらの息の合った生々しいグルーヴがそのまま録音されている。三つ目は「新たな表現への挑戦」。ソプラノ・サックスのプレイを多く取り入れ、一部楽曲では自身によるボーカルも披露している。

Yucco Miller『Bloomin'』(写真左)。2026年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、ユッコ・ミラー (sax), 平手裕紀 (p, key), 中村ヒロキ (b), Dennis Lwabu (ds), 一彩 (taiko)。ピンクヘアーのエキセントリックなビジュアルと卓越した演奏力とのギャップが人気のジャズ・サックス奏者、ユッコ・ミラー。そんなユッコ・ミラー自身、初の全曲オリジナルとなるメジャー・デビュー10周年アルバム。

冒頭の「Miracle Shine」がこのアルバムの雰囲気、内容、出来を代表している。四つ打ちのダンサブルなアッパー・チューン。ユッコ・ミラーの愛器「YAMAHA YAS-62(初期モデル)」のポテンシャルを最大限に引き出して、とても良い音で鳴っている。まさに“踊れるジャズ”を体現する一曲。この音が、この演奏が、ユッコ・ミラーのメジャー・デビュー10周年の音である。
 

Yucco-millerbloomin  

 
2曲目「Hair Style」と9曲目「Anemone」では、ユッコ・ミラー自身が作詞とボーカルを担当している。普段の超絶技巧のカッ飛びサックス・プレイとは打って変わって、空気に優しく溶け込んでいくような、柔らかい歌声が新鮮に響く。意外といっては失礼だが、このボーカルがなかなか良い感じ。フュージョン志向のボーカルとして一級品である。

3曲目「3-3-7」と8曲目「AKUJYO」では、太鼓パフォーマー・一彩(Taiko)をゲストに迎え、「和楽器×ジャズ」の融合に挑戦した楽曲。「和楽器×ジャズ」の融合については、1970年代のフリー・ジャズ畑を中心に、何枚かのアルバムの成果はあったが、近年では珍しい。お互いの限界をぶつけ合った壮絶なアンサンブルが素晴らしい。

当アルバム『Bloomin'』のサウンドは、本人曰く「トッピング全部入りのラーメン」。メジャー・デビュー10周年を迎えた彼女が「今やりたいこと」をストレートに詰め込んだ、バラエティ豊かで生々しいエネルギーに満ちたサウンドが最大の特徴である。音的にも、今までのフュージョン・ジャズ志向というより、ストレート・アヘッドな、コンテンポラリー・ジャズと評価出来る。、着実にステップアップした秀作だと僕は思う。
 
 

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2026年7月18日 (土曜日)

クリス・ポッターの異色の企画盤

1859年にアメリカで起きた「ハーパーズ・フェリー襲撃事件」と、その中心人物である奴隷制度廃止運動家 John Brown(ジョン・ブラウン)の物語にインスパイアされている。アメリカの核心にある矛盾や暴力、理想、そして現代にも通じる未解決の緊張感をテーマに描いた、コンセプチュアルで社会派な作品。歴史的にジャズが得意とする一作品ジャンルである。

Chris Potter『Alive with Ghosts Today』(写真左)。2025年3月24〜26日、NYでの録音。2026年5月にリリース。ちなみにパーソンネルは、Chris Potter (ts, ss), Bill Frisell (g), Rane Moore (cl), Zekkereya El-magharbel (tb), Sara Caswell (vln), Burniss Travis (b), Nate Smith (ds)。「限られた楽器編成ながらも深い個性を持つ 小さな町のバンド」のような響きを目指し、独自の変則的なアンサンブルを編成している。

本作はブルースやフォーク、現代音楽を想起させる和声、力強いリズム&ビートが交錯する、泥臭くも美しい「米国ルーツ・ミュージック」を彷彿とさせる、スピリチュアルなサウンドが特徴。19世紀のアメリカ奴隷解放の歴史、不屈の精神、そしてアメリカの「ルーツ」が、ジャズの即興演奏を通じて、より立体的に浮かび上がる仕掛けになっている。
 

Chris-potteralive-with-ghosts-today

 
アルバムの核となる楽曲群はクリス・ポッターのオリジナル作曲だが、曲の終盤の展開や一部フレーズには「John Coltrane / Traditional: 『Song of the Underground Railroad(地下鉄道の歌)』の要素、「Antonin Dvořák: 交響曲第9番『新世界より』第2楽章の『Going Home(家路)」を一部抜粋・引用しているのが特徴。アレンジに相当な力を入れているのが判る。

奴隷制度廃止運動家、ジョン・ブラウンの足跡を追うように、アルバムは厳かに展開していく。フロント陣に通常の管楽器セクションに加え、ヴァイオリン、クラリネット、トロンボーンを配した変則的なアンサンブルと、現代ジャズ界の最高峰であるリズムセクションの対話が見事。特に、リーダーのポッターのエモーショナルなサックスの咆哮と抑制された吹奏は、嫌が応にも、スピリチュアルな響きを増幅させている。

古き良きアメリカの「小さな田舎町のバンド」のような素朴で生々しい響きとゆったりしたテンポの演奏は、現代の「コンテンポラリーなスピリチュアル・ジャズ」な響きを湛えていて、実に個性的な内容になっている。演奏の響きは、ブルースやフォークの「泥臭さ」をあえて残した、エモーショナルで力強いトーンで、米国ルーツ・ミュージック志向の音世界を展開している。異色の企画盤。ジャズとして優れた内容だと僕は思う。
 
 

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2026年7月17日 (金曜日)

タイトルは『エヴァーグリーン』

最近の当ブログの記事は、1950年代から1960年代のブルーノートやプレスティッジの隠れ好盤とか、ECMレコードの1100番台とか、CTIレーベルの全作品の記事化とか、レーベルのアルバム・カタログを片っ端から記事化する、なんてことを進めているが、最近のジャズについても、時間を見つけては、都度、聴いている。決して、懐古趣味、昔のアルバムに偏ったリスニングにはならないように心がけている。

Julius Rodriguez『Evergreen』(写真左)。2024年6月のリリース。ちなみにパーソネルは、曲によって異なるので、以下を参照されたい。ジュリアス・ロドリゲス本人のマルチ演奏を中心に、楽曲ごとに多数の気鋭ミュージシャンを迎えて、ロサンゼルスで録音されている。

Julius Rodriguez (p, key, syn, cl, g, b,ds), Nate Mercereau (g-syn :#1,#3, el-g :#4, #9), Philip Norris (b :#2, #3, #5, #7, ds :#5, ), Nicole McCabe (as :#1, #3), Chris Lewis (ts :#7), Emilio Modeste (sax :#9), Alonzo Demetrius (tp :#3, #7), Keyon Harrold (tp :#8), Jermaine Paul (b :#10), Declan Miers (el-b :4), Brian Richburg Jr. (ds :#2, #3), Luke Titus (ds :#1), Tim Anderson (ds-program :#2, #5), Jay Adlher (vo :#4)Georgia Anne Muldrow (vo :#10), Maddi St John (back-vo :#4)。
 

Julius-rodriguezevergreen

 
従来のジャズという枠組みに囚われず、ゴスペル、R&B、ポップス、サイケデリック・ロック、エレクトロニックなどの要素をシームレスにに融合させた、ジャンルレスなサウンド。現代のコンテンポラリーなクロスオーバー・ジャズといった内容。

僕は冒頭の「Mission Statement」で、グッと心を掴まれた。アルバムの方向性を提示する様な、疾走感のあるオープニング曲。マケイブのアルト・サックスと、マーセローによる浮遊感のあるギター・シンセがユニゾン&ハーモニーを奏で、モダンでダイナミックなアンサンブルを展開する。これが、まるで、プログレッシヴ・ロックみたくもあり、コンテンポラリーなエレ・ジャズみたくもあり、この音世界は今までに無い。現代のコンテンポラリーなクロスオーバー・ジャズである。

すべての曲において、ゲスト・ミュージシャンの組み合わせや、ジュリアス自身が担当する楽器の構成が毎回異なっており、1枚のアルバムでありながら、曲ごとに全く異なるセッションの様な、ロドリゲスの音のショーケースの様なサウンドがこの盤の特徴。

タイトルの『エヴァーグリーン(時を経ても色あせない)』の通り、「ジャンルに縛られない不変の音楽」を追求した作品。ロドリゲス自身がピアノ、シンセサイザー、ドラム、ベース、ギターなど、ほぼすべての楽器を演奏するマルチな才能が遺憾なく発揮されている。「Z世代のジャズ」を象徴する一枚。好盤です。
 
 

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2026年7月16日 (木曜日)

ECMのスピリチュアル・ジャズ

英国の現代ジャズ・トリオであるAzimuth(アジマス)。ブラジルの有名なクロスオーバー/フュージョン・バンド「Azymuth(アジムス)」とは異なる(気を付けたい)。本作の「アジマス」はイギリスの即興音楽や現代ジャズにおける重要人物たちによって結成された室内楽的ジャズ・トリオである。

Azimuth『The Touchstone』(写真左)。1978年6月、オスロの「Talent Studio」での録音。ECMの1130番。ちなみにパーソネルは、John Taylor (p, org), Kenny Wheeler (tp, flh), Norma Winstone (vo)。トランペット奏者のケニー・ウィーラー、ボーカリストのノーマ・ウィンストン、ピアニストのジョン・テイラーで構成された変則トリオ編成。とことんECMのサウンド・イメージを踏襲したスピリチュアル・ジャズ。

テイラーによるミニマルで催眠的なパルス・パターンやリリカルなピアノの旋律が演奏全体をリードしながら、ウィンストーンの楽器の一部として溶け込むような美しいヴォイス・パフォーマンスと、ホイーラーの哀愁を帯びたトランペットの音色とが、独創的かつスピリチュアルな絡み合いで、フレーズを紡ぎ上げていく。そこに、ECMらしい透明感のある、深いエコーの音響空間の中で、静謐ながらも緊張感に満ちた独自の即興演奏が展開される。
 

Azimuththe-touchstone  

 
実にユニークな即興演奏の世界。ECMレコードでしか為し得ない、欧州的で現代音楽志向な、ECMならではのスピリチュアル・ジャズの音世界。ウィンストンのボイス&ボーカルが効いている。これが明らかな差異化要素。歌詞を歌うだけでなく、自身の声を楽器のように扱う「ヴォイス」という即興表現が唯一無二である。このボーカルが、このあるアルバムの浮遊感&静謐感の中で、幽玄にスピリチュアルに響く。ボーカルを一つの楽器として扱う。見事である。

全曲の作曲をピアニストのジョン・テイラーが担当。現代音楽家スティーヴ・ライヒからの影響を強く感じさせる、ミニマルなピアノの反復パターンが催眠的であり、叙情的であり、ジャズで言うビートとグルーヴを提供している。このテイラーのピアノが、即興演奏ジャズの要となるリズム&ビートをしっかりと恐々している。そして、そこに、哀愁を帯びたホイーラーのホーンと、歌詞を持たないウィンストンの幽玄なヴォイスがレイヤリングされていくのが最大の特徴である。

アジマスの個性である「催眠的なミニマリズムと静謐な抒情性」が最大限に発揮されたアルバム。その変則的な楽器編成とスピリチュアルな音世界から、従来のジャズの枠に収まらない、ECMらしい「ニュー・ジャズ」として捉えられていたが、アンビエントやニューエイジ、チルアウト・ミュージックの先駆としての評価も高まっている。とにかく、とてもECMらしい音世界であり、スピリチュアルなジャズ世界である。
 
 

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2026年7月15日 (水曜日)

ワールド・ミュージック系即興盤

コドナ(Codona)は、アメリカのシタール・タブラ奏者であるコリン・ウォルコット、ジャズ・トランペット奏者のドン・チェリー、ブラジルのパーカッション奏者のナナ・ヴァスコンセロスの3人がメンバー。

ジャズ、インド古典音楽、ブラジル音楽、アフリカの伝統音楽など、世界中のあらゆるルーツ・ミュージックを融合させた「ワールド・ミュージック」の先駆的な存在である。グループ名は、3人の名前(Collin, Don, Naná)の頭文字を組み合わせて名付けられた、とのこと。

Collin Walcott,  Don Cherry, Naná Vasconcelos『Codona』(写真左)。1978年9月、独の「Tonstudio」での録音。ECMの1132番。 ちなみにパーソネルは、グループ名「Codona」で、Collin Walcott (sitar, tabla, hammered dulcimer, kalimba, vo), Don Cherry (tp, wood-fl, doussn' gouni, vo), Naná Vasconcelos (perc, cuica, berimbau, vo)。1978年に結成された、伝説的なワールド・ミュージック/フリー・ジャズ・トリオのファースト・アルバム。

全編を聴き通して思うのは、何だか「日本の雅楽」に良く似ているフレーズがガンガンに出てくる、ということ。透明感あふれる詩的なアンサンブルと、独自のスピリチュアルな音響空間が個性なのだが、とにかく「日本の雅楽」を想起するフレーズが印象的。ドン・チェリーのフルートや木管楽器: 雅楽で宇宙や空間を切り裂くように鳴り響く「龍笛(りゅうてき)」や「篳篥(ひちりき)」の掠れた、息づかいを感じる響きに酷似している。
 

Collin-walcott-don-cherry-nana-_20260715195201

 
そして、コリン・ウォルコットのシタールが、シタール特有の「バズ音(共鳴弦のジーンという残響)」や持続音は、雅楽で天から降り注ぐ光を表すオルガンのような和音を奏でる「笙(しょう)」の持続音と、空間的な役割が非常に近い。ナナのパーカッションは、コリンのインド音楽の静寂と、ドンのジャズの自由さを、ブラジル音楽の「生命力で包み込む様な」リズム&ビートで演奏のボトムをしっかり支える。

インド音楽のシタール、ブラジルのビリンバウ、ジャズのポケット・トランペットが対等に、かつ極めて高い精神性をもって融合された様は、ワールド・ミュージック系即興演奏ジャズの出発点であり、ワールド・ミュージック系スピリチュアル・ジャズの萌芽である。緊迫感と開放感が共存する静謐な音世界は、ECMレーベルの美学を純粋に体現したといっていい。

お互いの呼吸や空気感を察知しながら音を重ねていく引き算の美学。この張り詰めた静寂と、音が消えていく余韻を大切にする演奏は、まさに日本の伝統音楽や雅楽の持つ「間」の感覚そのもの。

しかしながら、1984年11月にコリン・ウォルコットがツアー中の交通事故により39歳で急逝したため、トリオの活動は、アルバム3枚を残して、幕を閉じました。この残されたアルバム3枚、ワールド・ミュージック系即興演奏ジャズの傑作だと思います。
 
 

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2026年7月14日 (火曜日)

デジョネットの”New Directions”

ECMレコード・カタログの1100番台(#1101-1199)の当ブログでの記事化のコンプリートを目指している。1000番台については、全くの現代音楽志向(ECMのアイヒャーはこれが好きみたい)の即興演奏のアルバムについては記事化を控えたが、その他のアルバムについては記事化が完了している。そして、次は1100番台。これが結構、記事化が進んでいない。

Jack DeJohnette『New Directions』(写真左)。1978年6月の録音。ECMの1128番。ちなみにパーソネルは、Jack DeJohnette (ds, p), John Abercrombie (g, el-mandolin), Lester Bowie (tp), Eddie Gómez (b)。屈指のポリリズミックなドラマー、ジャック・デジョネットがリーダー。基本はピアノレス、ギターとトランペットがフロントと変則カルテット編成。曲によって、デジョネットがピアノを弾いている。

デジョネットの「一見交わりそうにない、強力で異なる個性を持ったキャラクターを一堂に会する」というアイデアのもと、集められたメンバーらしい。デジョネットのドラム、ゴメスのベースという、メインストリーム志向の純ジャズなリズム隊に、アート・アンサンブル・オブ・シカゴから、トランペットのレスター・ボウイ、欧州ジャズ志向のソリッドでストレートで、プログレッシヴなギターのジョン・アバークロンビーと、確かに一見どころか、こんなチャンスでもないと未来永劫交わることの無いメンバーである。
 

Jack-dejohnettenew-directions  

 
ディジョネットの空間的かつシャープなポリリズミックなドラミング、ジョン・アバークロンビーの浮遊感溢れる捻れギター、そしてエディ・ゴメスの堅実なベース。この3人が創り出すECMらしい透明感のあるサウンドがベースとなって、そこにフリー・ジャズ界の奇才レスター・ボウイが加わる。独特の緊張感と実験精神の下、そしてスピリチュアルでモーダルな即興演奏が展開されている。そして、時折、静寂とカオスが織りなす緊張感が顔を出す。

アバークロンビーのアタック感を消した、浮遊感のあるギター&エレクトリック・マンドリンが、アルバム全体にスピリチュアルなトーンを与え、アヴァンギャルドなボウイのトランペットが、ハーフバルブを駆使した歪んだ音、うなり声のようなグロウ・トーン、叫び声のようなハイノートなどを多用して、そのスピリチュアルなトーンを増幅する。そして、デジョネットとゴメスの変幻自在、硬軟自在、緩急自在なリズム&ビートが、フロントの二人をがっちりサポートしている。

ECMの洗練された欧州的なニュー・ジャズの音世界と、米国ブラック・ジャズの生々しいダイナミズムとの完璧な融合がここにある。緻密な4ビートや美しいモーダル・ジャズ(伝統)、フリー・インプロビゼーション(前衛)、そしてエレクトリック・ギターやマンドリンを取り入れたクロスオーバーなアプローチ(フュージョン)が、1枚のアルバムの中に違和感なく同居している。1970年代ジャズの名盤の一枚。
 
 

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2026年7月13日 (月曜日)

レイニーの70年代の傑作の一枚

ジミー・レイニー(Jimmy Raney・1927年8月20日 - 1995年5月10日)は、アメリカ合衆国ケンタッキー州ルイビル生まれのアメリカ人ジャズギタリスト。1946年よりギタリストとして活動。ハードバップ時代を駆け抜け、1967年、アルコール依存症やその他の職業上の問題により、NYを離れ、故郷のルイビルに戻る。1970年代にカムバック、ルイビルで心不全のため死去するまで、活動を続けた。

Jimmy Raney『Momentum』(写真左)。1974年7月21日、NYのRCAスタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、Jimmy Raney (g), Richard Davis (b), Alan Dawson (ds)。モダンジャズ・ギターの達人であるジミー・レイニーが、1974年に録音し、ドイツの名門レーベル「MPS」から1975年に発表したピアノレス・トリオ編成の好盤である。本作は、レイニーが1970年代に本格的なカムバックを遂げた彼の円熟期の妙技を堪能できる秀作。

白人ギタリストの代表格、ジミー・レイニーのギターは、ファンクネスや音の粘りや翳りが希薄で、テクニックを全面に押し出した、素直でシンプルで硬質なギター。1950年代にどっと現れた白人ギタリストの音である。明らかに、チャーリー・クリスチャンから派生したタル・ファーロウ〜バーニー・ケッセルの流れの中にある音。このアルバムでは、そんな燻し銀の様な、職人芸的ジャズ・ギターが堪能出来る。
 

Jimmy-raneymomentum

 
全編を通して、オーソドックスな、流麗で知的なシングル・トーンが展開される。エフェクターに頼らないストレート・アヘッドなジャズ・ギター。フレーズのアイデアが湧き出る様に溢れ出すプレイが最大の聴きどころ。エリック・ドルフィーやヴァン・モリソンとの共演で知られる重厚ベースのリチャード・デイヴィスと、デイヴ・ブルーベックらと活動した敏腕ドラマーのアラン・ドーソンが脇を固め、このリズム隊のスイング感が、レイニーを煽りに煽る。

本作はジミー・レイニーのオリジナル曲が2曲、ジャズ・スタンダードが4曲という構成になっている。レイニー自身のオリジナル曲の演奏は良いのは当たり前として、このアルバムでは、スタンダード曲におけるパフォーマンスが聴きもの。「Autumn in New York」について、このトリオによる演奏はジャズ・ギター史に残る屈指の名演のひとつとされる。僕はラストの「Just Friends」が好きだなあ。

本作は、ジャズ・プロデューサーのドン・シュリッテンに促される形でシーンに完全復帰を果たした、彼のカムバック劇を象徴する一枚。ピアノレスのギター・トリオのハイレベルな妙技が堪能出来る。ベース〜ドラムスとのトリオ編成で展開される、レイニーの円熟期のパフォーマンス。これ、1970年代のジャズ・ギター盤の傑作の一枚だと思います。
 
 

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2026年7月12日 (日曜日)

スーパーサックスの4枚目の盤

スーパーサックスは、モダンジャズの父であるアルトサックス奏者チャーリー・パーカー(愛称:バード)の残した天才的な即興ソロを、5人編成のサックス・セクションによって完璧にハモらせて再現するというコンセプトで作られた超絶技巧集団である。本作は彼らの4作目にあたるアルバムで、ドイツの老舗ジャズレーベルであるMPSレコードからリリースされた。

Supersax『Chasin` The Bird』(写真左)。1976年7月〜9月の録音。ちなみにパーソネルは、Blue Mitchell, Conte Candoli (tp), Frank Rosolino (tb), Jay Migliori, Warne Marsh (ts), Joe Lopes, Med Flory (as), Jack Nimitz (bs), Lou Levy (p), Fred Atwood (b), Jake Hanna, John Dentz (ds)アレンジが、Buddy Clark (#8), Med Flory (曲: #1 to #3, #5-6, #9), Warne Marsh (曲: #4, #7)。

緻密にハモる5本のサックス・セクションと、ソロ層を支える一流のリズム・セクションおよび管楽器のゲストで構成されている。タイトル曲をはじめ、パーカーの歴史的名演や珠玉のビバップ・ナンバーが、驚異的なスピード感と一糸乱れぬアンサンブルで鮮やかに蘇っている。その職人技とも言える極上のアンサンブルは見事という他は無い。
 

Supersaxchasin-the-bird

 
アルバムの冒頭「Shaw 'Nuff」は、超高速ビバップ・ナンバー。チャーリー・パーカーとディジー・ガレスピーの伝説的な演奏をベースに、5本のサックスが一糸乱れぬ驚異的なスピードでシンクロする、グループの超絶技巧が最も堪能できる1曲。この1曲だけでも、スーパサックスの実力が良く判る。とにかく、聴いていて楽しい。

続く「A Night in Tunisia(チュニジアの夜)」は、超有名スタンダード曲。パーカーが残した有名な「アルトサックス・ブレイク(無伴奏のソロフレーズ)」の瞬間を、なんと5本のサックス全員で完璧にハモらせて再現している。これにはビックリした。6曲目の「Round Midnight」だけが、直接、パーカーにゆかりの無い曲なので、あしからず(笑)。

こういう企画には優れたアレンジが必須。サックス・セクションの緻密な編曲には、グループのリーダーであるメド・フローリーのほか、クール・ジャズを代表するテナー・サックス奏者のウォーン・マーシュらもアレンジャーとして名を連ねている。ビバップの歴史的名曲・名演を、スーパーサックス用に見事にアレンジしている。1970年代のジャズ好盤である。
 
 

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2026年7月11日 (土曜日)

パスのギター・トリオの秀作

最近、MPSレコードのアルバムがリマスターされて、サブスク・サイトにアップロードされている。MPSレコードとは、1968年にドイツのハンス・ゲオルグ・ブルナー=シュワーによって設立された名門ジャズ・レコードレーベル。ジャズ専門レーベルとしてスタート。オスカー・ピーターソンやフリードリヒ・グルダ、モンティ・アレキサンダーといった世界的な巨匠の名演を数多く世に送り出している。

Joe Pass『Intercontinental』(写真左)。1970年6月8–10日、独の「Tonstudio」での録音。ちなみにパーソネルは、Joe Pass (g), Eberhard Weber (b), Kenny Clare (ds)。バックに、独出身のエバーハルト・ウェーバーのベースと、英国出身のケニー・クレアのドラムを従えた、ピアノレスのギター・トリオ。主にスウィングとラテンジャズのスタンダード曲を集めた秀作である。

本作以前のジョー・パスは、サイドマンとしての活動や、他の管楽器・鍵盤を含む編成が中心。本アルバムは、彼にとって初めて本格的に取り組んだギター・トリオのスタジオ録音アルバム。アルバムは、軽快なスウィング、ボサノヴァ、ブルース、そして当時のポップス・ヒットまで、バラエティに富んだスタンダード曲を中心に構成されている。
 

Joe-passintercontinental

 
本作のパスは、全編を通して、リラックスして肩の力が抜けた自然体のスウィンギーなギターを披露している。アップテンポの「I Love You」からボサノヴァの「Meditation」、ブルースの「Joe's Blues」にいたるまで、一音一音の粒立ちが美しく、流れるようなフレージングが堪らない。バックのウェーバーのベースとクレアのドラムのリズム隊のサポートも小粋で味わい深い。

ギタリストらしい流麗なシングル・トーンのソロを存分に弾き倒している。そこに絶妙なタイミングで美しい代理コードを挟み込む、彼ならではの職人技が光っている。コンボ編成の正統派ジャズ・ギタリストとしてのパスの魅力を存分に捉えている。太く甘いアコースティックな響きを残しつつも、ピッキングのアタック感がくっきりと聴こえる極上のジャズ・ギター・トーンが心地良い。

最後に、MPSレーベル特有の「重厚でクリアな音質」が遺憾なく発揮されている。目の前で生演奏を聴いているかのようなピッキングの生々しさ、ウッドベースのふくよかな低音、繊細なシンバルワークが抜群のバランスで捉えられており、オーディオ・システムのリファレンスとしても現在まで高く評価されている秀作である。
 
 

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2026年7月10日 (金曜日)

再びバップ・マイルス ”Relaxin’”

レコード・コレクターズ・2026年7月号は「マイルス・デイヴィス・アルバム/名演ランキング」。1950年代のアコースティック期から、ファンクやロックに接近したエレクトリック期、そして、奇跡のカムバック後、晩年に至るまでの長い活動期間に残されたアルバムと名演の数々をランキングしたもの。これに触発されて、僕の「マイルス盤のランキング」を記事にしてみようと思った。

Miles Davis『Relaxin'』(写真左)。1956年5月11日と10月26日の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。1950年代黄金のクインテット。現代絵画キュビズムを思わせる「横たわる女性画」が印象的なジャケット・デザイン。

冒頭1曲目から4曲目まで「If I Were a Bell」「You're My Everything」「I Could Write a Book」「Oleo」が、1956年10月26日の録音。5曲目から6曲目「It Could Happen to You」「Woody 'n' You」が、1956年5月11日の録音。ただ、この6曲の場合、録音日による演奏レベルの差は無い。プレスティッジの総帥プロデューサー、ワインストックは、そこは配慮していた様だ。

そういう配慮があってか、このアルバムの演奏には統一感がある。マイルスのトランペット吹奏は「ミュート」がメイン。それも、このアルバムの統一感に一役かっている。そして、このアルバムの特徴というか、ユニークな点は、このアルバムには、レコーディングでの会話が断片的に収録されており、プレスティッジのマラソン・セッションの臨場感が感じられるところ。

冒頭の「If I Were A Bell」では、マイルスの「かすれ声」から始まる。「先に演奏して、後から曲を教えるよ」。指を鳴らしてのカウントが格好良い。そして、次の「You're My Everything」では、これまた最初に打ち合わせのような会話が入り、続いてガーランドの美しいシングルトーンのイントロが始まるが、イントロの途中で、マイルスが口笛を吹いて演奏を中断し、ブロックコード中心のイントロに変更させる。このやりとりが、これまた臨場感を強く感じさせて実に良い雰囲気だ。
 

Miles_davis_relaxin_2 

 
ラストの「Woody 'N You」の演奏が終わった後の会話が面白い。プロデューサーかスタッフの誰かが「もう一回やろう」と言った声に対して、マイルスがすかさず苛立ち気味に「ホワイ?」と返す。一瞬走る緊張感。しかし、続いて、コルトレーンが一言。これはいったい・・・、緊張感を緩和させようとする機微なのか、脳天気なのか。「栓抜きどこ?」・・・・(笑)。 

収録曲6曲、演奏内容は申し分無い。冒頭「If I Were A Bell」は絶品。マイルスの調子も良い、アレンジも良い。キンコンカンコン、キンコンカンコン、とシングルトーンで有名な鐘の音を模した短いイントロから、マイルスのミュート・トランペットが滑り出すところは実にスリリング。コルトレーンのソロが音が大きすぎて、ちょっとうるさいけど(笑)。

親分マイルスは好調を維持。ハーマン・ミュートを使用した「ミュート・プレイ」はマイルスならでは。これが、この盤のマイルスの吹奏の大凡を占めるから堪らない。美しく男気溢れる魅惑的なペット・ソロを展開し、抑制の美を徹底的に追求する。マイルスならではの「ハードバップの音の美しさ」が溢れている。

ガーランドのピアノが絶好調である。バラード良し、ハイテンポの曲も良し。右手のシングルトーンは良く回るし、左のブロックコードの伴奏を入れるタイミングは絶妙で狂いが無い。マラソン・セッションから編集された4枚のアルバムの中で、この『Relaxin'』でのガーランドが一番良い。「You're My Everything」のイントロで、マイルスがガーランドに弾き分けさせる、このシングルトーンとブロックコードのニュアンスの違いなど、惚れ惚れする。

ガーランドのピアノが好調なので、ミッドテンポからハイテンポの曲が、実にノリの良い演奏になっていて、リズムセクションのチェンバースのベース、フィリージョーのドラムも、うきうきと弾むように、活き活きと軽やかにビートを刻んでいる。

マラソン・セッションから編集された4枚のアルバムの中で、この『Relaxin'』は2番目に好きなアルバム。ハードバップ期のマイルスの傑作の一枚である。
 
 

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2026年7月 9日 (木曜日)

タレンタインの寄せ集めの傑作

Stanley Turrentine『The Sugar Man』(写真左)。1971年2月〜6月の録音。CTIの6052番。タレンタインがファンタジー・レコードへ移籍した後にリリースされた本作は、1971年から1973年にかけての4つの異なるセッションから未発表テイクを集めて構成されている。よって、パーソネルは、4つのセッション毎に異なる。セッション毎のパーソネルと概要は以下の通り。

1971年2月セッション、収録曲は、映画主題歌のカバーの4曲目「More」と、タレンタインのオリジナルブルースの6曲目「Just As I Am」。ドン・セベスキーが全体の編曲・指揮を統括し、ラテン・ジャズ界の巨匠チコ・オファリルがブラス(管楽器)セクションのアレンジを担当している。

パーソネルが、Stanley Turrentine (ts), Blue Mitchell (tp), Curtis Fuller (tb). Jerome Richardson (ts, fl), Butch Cornell (org), Dave Friedman (vib), George Benson (g), Ron Carter (b), Billy Cobham (ds), Ray Barretto (conga)。

1971年3月セッション、収録曲は、軽快な4ビートジャズの2曲目「The Stretch」と、優美なナンバー5曲目「Make Me Rainbows」。アレンジはクレジット無し(コンボによるヘッド・アレンジだろう)。パーソネルが、Stanley Turrentine (ts), Butch Cornell (org), Kenny Burrell (g), Ron Carter (b), Billy Cobham (ds), Ray Barretto (conga)。
 

Stanley-turrentinethe-sugar-man

 
1971年4月セッション、収録曲は、ミルトン・ナシメント作のブラジリアン・ナンバーの3曲目「Vera Cruz」。アレンジャーは、エウミール・デオダート。パーソネルが、Stanley Turrentine (ts), Eumir Deodato (el-p), Sivuca (ac-g), Ron Carter (b), Russell George (additional-b), Joao Palma (ds), Airto Moreira, Dom Um Romão (perc), Hubert Laws, George Marge, Romeo Penque, Jerome Richardson (fl)。

1973年6月セッション、収録曲は、ミシェル・ルグランの名曲の1曲目「Pieces of Dreams」。アレンジャー・指揮がボブ・ジェームス。パーソネルが、Stanley Turrentine (ts), Harold Mabern (p), Eric Gale (g), Ron Carter (b), Idris Muhammad (ds), Rubens Bassini (onga)。

4つのセッションの寄せ集めで、アレンジも異なるが、タレンタインのテナーの存在感が抜群で、タレンタインのテナーが、この4つのセッションの寄せ集めアルバムに、圧倒的な統一感を与えている。それほどまでに、タレンタインのテナーは充実している。

異なるパーソネルでの演奏の寄せ集めは、フュージョン・ジャズのアルバム作成の常套手段ではあるので、アルバム全体で統一感があれば、フュージョン・ジャズにおいては問題にならないだろう。

デオダートやボブ・ジェームス、ドン・セベスキー、チコ・オファリルといった豪華なアレンジャー陣が参加しており、CTIらしい洗練されたストリングス・アレンジと、タレンタインの骨太でブルース感溢れる豪快な演奏が、見事に融合したクロスオーバー&フュージョン・ジャズの傑作である。
 
 

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2026年7月 8日 (水曜日)

再びバップ・マイルス ”Cookin’”

レコード・コレクターズ・2026年7月号は「マイルス・デイヴィス・アルバム/名演ランキング」。

1950年代のアコースティックな演奏から、ファンクやロックに接近したエレクトリック期、そして晩年に至るまでの長い活動期間に残されたアルバムと、それに含まれる名高い名演の数々をランキングしたもの。これに触発されて、僕の「マイルス盤のランキング」を記事にしてみようと思った。

Miles Davis『Cookin'』(写真左)。1956年10月26日の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。1950年代黄金のクインテット。プレスティッジのマラソン・セッションの中の、一番好きなアルバムである。

このアルバムだけが、マラソン・セッション、1956年5月11日と10月26日に分かれているんだが、 この『Cookin'』だけが、1956年10月26日の録音からだけの選曲になっている。2つのセッションが5ヶ月ほど間隔が空いているので、特にコルトレーンのテナーのテクニックとガーランドのピアノのアレンジが進化していて、二つのセッションの演奏が混在していると、ちょっと戸惑うことがあるのだが、『Cookin'』にはそれが無い。

しかも、マラソン・セッションの後半なので、メンバー全員、各々のテクニック、パフォーマンスについて、その時期の最高のものがこのアルバムに記録されている。ハードバップ期のマイルス・ディヴィスのバンドとして、最高のパフォーマンスがこの『Cookin'』に詰まっている。
 

Miles_cookin_1

 
レッド・ガーランドの「左手ブロックコード」、間とスペースを意識した「右手シングルトーン」のピアノが美しい。間を意識し吹き過ぎを意識的に抑制し、すーっと伸びた音がクールなコルトレーンのテナー。聴こえはシンプルだが、実に高度なビートとリズムを紡ぎ出すドラムのフィリー・ジョーと、ベースのチェンバース。

マイルスは、ダンディズムが溢れるトランペットを吹きまくる。音を洗練し、音数を絞り込み、間とスペースを最大限に活かした「クール」なハード・バップ。洗練された、アーティスティックな音世界。決して熱くなり過ぎない、決してファンキーにならない、ファンキーな要素を極力排除したリリカルな、マイルス・ディヴィスの音世界。

「静のダンディズム」の代表が、冒頭の「My Funny Valentine」。レッド・ガーランドの愛らしい前奏に導かれて登場するマイルスのミュート・トランペット。絶品。ミュートの魔術師、マイルスの真骨頂。そして、2曲目以降に「動のダンディズム」の嵐が吹き荒れる。

2曲目の「Blues by Five」のアーティスティックなファンキー・ビート。3曲目の「Airegin」のコントロールされた「大人の熱さ」。4曲目の「Tune Up/When Lights Are Low」の間とスペースを最大限に活かした、熱くて「クール」な、マイルス印のハードバップ。

CBSに移籍後は、マイルスのハードバップ期としては、ギル・エヴァンスとのコラボ、モード奏法への挑戦とモード奏法への確信がメインなので、純粋に「ハードバップのマイルス」を捉えるなら、このマラソン・セッションだろうし、その中でも、この『Cookin'』が、僕の中での一番である。ジャケットも最高。プレスティッジらしからぬ、ハードバップ・マイルスの大名盤である。
 
 

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2026年7月 7日 (火曜日)

ベニー・グリーンと ”Kai & JJ”

Prestige Records 7000 Seriesのカタログ全アルバムの記事化を進めているんだが、プレスティッジ・レーベルの悪い癖として、録音年月日が異なる、全く異なるセッションの音源をひとつのアルバムに平気で収録してしまうという、支離滅裂なアルバム編集方針がある。この7000シリーズで多発しているので、記事化する側からするとたまらない。

Kai Winding, J. J. Johnson, Bennie Green『Kai and Jay, Bennie Green with Strings』(写真左)Prestigeの7030番。元々は別々にリリースされていた10インチLPやEPの音源を、1956年に1枚のアルバムとして再編・統合した作品である。その10インチ時代のアルバムと録音日とパーソネルは以下の通り。

まず、1曲目〜4曲目が『Bennie Green with Strings』。1952年5月13日、シカゴでの録音。ちなみにパーソネルは、Bennie Green (tb), John Malachi (p), Tommy Potter (b), Osie Johnson (ds), Adam Micevich, Alan Lane, Autrey McKissack (曲: A1 to A4), Max Waxler (strings)。

ベニー・グリーンの温かく豊かなトロンボーンの音色を、4人編成のストリングス(弦楽四重奏)が包み込む珍しいバラード・セッション。ベニー・グリーンのトロンボーンの音が心地良い。リラックスしたバラード演奏が素敵である。
 

Kai-and-jay-bennie-green-with-strings
 

5曲目〜12曲目は『Kai & Jay Quintet』。1954年12月3日、NY(RVG)での録音。ちなみにパーソネルは、Jay Jay Johnson, Kai Winding (tb), Dick Katz (p), Peck Morrison (b), Al Harewood (ds)。

ジャズ界最強のトロンボーン二人組「Kai & Jay」が、結成してからわずか数ヶ月という最初期のスインギーでエキサイティングな快演が収められている。結成ごく初期のみずみずしいアンサンブルが堪能できる。

2つの10インチ時代のアルバムのカップリング、しかも、LP時代はA面の途中、CDでは5曲目で演奏の雰囲気がガラリと変わる、相当やっつけな収録曲のチョイスと並べ方であるが、演奏の内容としては、どちらもハードバップ初期の好演として、意外と楽しめる内容になっている。手にして損はないカップリング盤である。

タイトルからすると、Kai Winding, Jay Jay Johnson, Bennie Greenの3トロンボーン+Stringsだと思うんだが、実は、「Kai Winding, Jay Jay Johnson(Kai & JJ)」と「Bennie Green with Strings」の2作品が混在しているアルバムでした。全く、プレスティッジのすること、ウェインストックのすることと言ったら(笑)。
 
 

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2026年7月 6日 (月曜日)

東西の精鋭が紡ぐ知的なジャズ

1950年代前半にアメリカ西海岸で巻き起こった「ウエストコースト・ジャズ」の精鋭たちと、独自の音楽理論を展開していたテディ・チャールズの音楽性が融合した異色盤である。

Teddy Charles『Collaboration West』(写真左)。1953年8月21, 31日、ハリウッドでの録音。Prestigeの7028番。ちなみにパーソネルは、Teddy Charles (vib, p), Shorty Rogers (tp), Jimmy Giuffre (ts, bs), Curtis Counce (b), Shelly Manne (ds)。西海岸のトップ・ミュージシャンとの出会いと、テディ・チャールズの音楽的実験が交錯した非常に興味深い背景を持ったアルバムである。

当時のプレスティッジは、1953年に録音された2枚の10インチLP(『New Directions 3』および『New Directions 4』)の音源を1本に統合し、12インチ盤『Collaboration West』(型番:PRLP 7028)として1956年に再編集・リリースしている。これが、オリジナル・アルバムの位置付け。

LP時代のA面の「Variations on a Motive by Bud」「Wailing Dervish」「Further Out」、そして、B面の「Etudiez le Cahier」(ここまでが、1953年8月21日録音)、「Margo」「Bobalob (I & II)」(ここまでが、1953年8月31日録音)の全6曲。
 

Teddy-charlescollaboration-west 

 
A面の1曲目の「Variations on a Motive by Bud」は、バド・パウエルへのオマージュである。ジャズ・ピアニストのバド・パウエルのモチーフ(名曲『Get Happy』のコード進行など)をベースに構築された知的な楽曲。

B面の3曲目の「Bobalob」は、完全なスタジオの即興(ジャムセッション)からその場で生まれた楽曲。あまりの出来の良さに現場が盛り上がり、レコードには別テイク(複数のテイク)が残される形になっている(アルバムでは、テイク1と2が採用されている)。

ニューヨークを拠点に、前衛的なジャズ理論を学んでいたテディ・チャールズは、自らの音楽的な不満や変化への渇望から1953年にカリフォルニアへ旅に出ている。そこで彼を迎えたのが、当時ウエストコースト・ジャズの顔役だった、ショーティ・ロジャースやシェリー・マンたち。

東海岸の難解なモダン理論と、西海岸の軽快で知的、かつ洗練されたアンサンブル能力がガッチリと噛み合い、この歴史的なコラボレーションが実現した。その成果がこのアルバム。モダン・ジャズの「融合」の良い成果としての好盤である。
 
 

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2026年7月 5日 (日曜日)

白人テナーの極上アンサンブル

ウディ・ハーマン楽団の伝説的なサックス・セクション「フォー・ブラザーズ(Four Brothers)」の系譜を継ぐ、クール・ジャズ/白人テナーサックスの軽快で洒脱なアンサンブルを堪能できるアルバム内容。アルバム名義は、スタン・ゲッツとズート・シムズになっているが、後半の1953年9月8日の録音には入っていないので注意が必要。全く、当時のプレスティッジのボブ・ワインストックのアルバム編集、アルバムリリースのマナーについては、全く理解出来ない。

Stan Getz and Zoot Sims『The Brothers』(写真左)。録音日とパーソネルは下記の通り。Prestigeの7022番。テナー・サックス奏者のスタン・ゲッツとズート・シムズをフィーチャーし、1956年にプレスティッジ・レコードからリリースされた、プレスティッジお得意の全くかけ離れた2セッションの合体盤である。1953年9月8日の録音は、1953年、プレスティッジから、Zoot Sims All-Stars名義で、10 inch盤としてもリリースされている。

パーソネルについては、Zoot Sims, Al Cohn (ts) は、2セッション共通で、
1949年4月8日の録音のパーソネルは、Stan Getz, Allen Eager, Brew Moore (ts), Walter Bishop (p), Gene Ramey (b), Charlie Perry (ds)。
1953年9月8日の録音のパーソネルは、Kai Winding (tb), George Wallington (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。
 

Stan-getz-and-zoot-simsthe-brothers  

 
1949年のセッションについては、当時、ウディ・ハーマン楽団のサックス・セクションが「フォー・ブラザーズ」として一世を風靡していて、そのスタイルをさらに推し進め、当時のトップ白人テナー奏者を5人も集めて結成された、まさに「ドリーム・チーム」によるセッションの記録になっている。

レスター・ヤングの流れを汲む、軽やかでクールなトーンが特徴。アレンジは主にジェリー・マリガンが担当しており、緻密でありながらもスリリングな4本のテナーサックスによるアンサンブルをバックに、代わる代わる登場するテナーのアドリブ・ソロが最大の聴きどころ。

1952年のセッションについては、ジャズ界きっての名テナー・コンビとして知られる、ズート・シムズとアル・コーンの「ズート&アル」によるセッション。1949年のセッションに比べると、より黒っぽく、アーシーで力強いモダン・バップの色彩が強い演奏になっている。リズム隊が充実していて、ピアノのウォリントン、ベースのヒース、ドラムのブレイキーと、ドライブ感のあるタフなスイング感溢れるリズム&ビートを供給している。
 
1949年と1952年の録音なので、録音状態はあまりよくないが、それでも、テナーのアンサンブルと、それぞれのテナー奏者の個性溢れるアドリブ・ソロが楽しめる内容にはなっている。ちなみに、オリジナル・アルバムのライナーにはソロオーダーが記載されている。ネットでもその情報が拾えるので、それを片手に鑑賞するのも乙なものである。
 
 

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2026年7月 4日 (土曜日)

若き日のズートに耳を傾ける。

プレスティッジ・レーベルの「7000 Series Catalog」を順に記事化している。既に記事化しているものもあるが、これは一度、聴いたことがあるが、いつ聴いたっけ、という未記事化のアルバムもある。プレスティッジ・レーベルも一応1950年代から1960年代のハードバップ・ジャズの黄金期における老舗レーベル。アルバムの編集の「やっつけ感」は欠点としてあるが、演奏の内容自体は水準レベルのものが大多数。一聴の価値のある「7000 Series Catalog」である。

Zoot Sims『Zoot Sims Quartets』(写真左)。Prestigeの7026番。録音日とパーソネルは以下の通り。テナー・サックス奏者ズート・シムズが、1950年と1951年に吹き込んだ初期の傑作10インチ音源を、1956年に12インチLPとして再編・発売したアルバムである。ピンクを基調としたジャケットに、ズートがサックスを構えるモノクロ写真が大きくあしらわれたデザインが印象的。

1950年9月16日の録音。パーソネルは、Zoot Sims(ts), Harry Biss(p), Clyde Lombardi(b), Art Blakey(ds)。
1951年4月14日の録音。パーソネルは、Zoot Sims(ts), John Lewis(p), Curly Russell(b), Don Lamond(ds)。
プレスティッジの初期の録音でもあり、ルディ・ヴァン・ゲルダーの自宅スタジオ(ハッケンサック)ではなく、ニューヨーク市内の商業スタジオ(Apex Studiosなど)で録音されている。
 

Zoot-simszoot-sims-quartets  

 
20代半ばの、若きズート・シムズによる、瑞々しくもスインギーなワンホーン・カルテット演奏が堪能できる。録音時期の違いにより、ピアノにジョン・ルイス(のちにMJQを結成)を迎えたセッション(1950年)と、ハリー・ビシンが参加したセッション(1951年)の2種が収録されているが、リズム・セクションの変化には影響を受けない、超然としてシムズのブロウが清々しい。

ズートのテナー・サックス一本の「ワンホーン・カルテット」なので、若き日のズートのテナーの瑞々しさが感じ取れる。ズートの個性である、歌うが如くの歌心と軽快で芯のしっかりしたスイング感が楽しめる。「Zootcase」や「Trotting」といったズートの自作曲に加え、「It Had to Be You」などのスタンダード曲を、軽快で心地よい歌心溢れるトーンでブロウしている。特に、ズートのテナーの良さは、スタンダード曲にグイグイ出てくる。

ちなみに、この盤は、本作として12インチ化される際、伝説の録音エンジニア、ルディ・ヴァン・ゲルダー(RVG)が初期のテープをリマスタリングしている(1956年のリマスター)。彼の手によって、SP時代の平坦な音から、ズートのテナーがぐっと前に出る「図太く聴きやすいモダンな音」へとアップデートされている。このズートの演奏を堪能するには、絶対にこの12インチ化がベスト。
 
 

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2026年7月 3日 (金曜日)

ロニー・フォスターのデビュー盤

ブルーノート・レーベルの4300番台は「ブルーノート・レーベルらしい」ところと「ブルーノート・レーベルらしくない」ところ、とが混在している。そんな玉石混交として4300番台。記事化のラストはこの従来の「ブルーノートらしくない」ジャズ・ファンク盤である。

Ronnie Foster『Two-Headed Freap』(写真左)。1972年1月20-21日の録音。ちなみにパーソネルは、Ronnie Foster (org), Eugene Bianco (harp), George Devens (vib, cabasa, shaker, cowbell), Gene Bertoncini, Gordon Edwards (g), George Duvivier (b), Jimmy Johnson (ds), Arthur Jenkins (congas), Wade Marcus (arr)。米国のオルガン奏者ロニー・フォスターのデビューアルバム。

オルガンがメインの1970年代のジャズ・ファンク。全く地味な存在のアルバムであるが、内容的には、ハモンド・オルガンのメロウでファンキーな音色と、タイトでキレのあるリズムセクションが融合した1970年代ジャズ・ファンクの象徴的な作品。1970年代のエレクトリック・ジャズ・ファンクとして、スライ・ストーンやハービー・ハンコックに比肩する内容である。
 

Ronnie-fostertwoheaded-freap

 
1960年代後半のジャズ・ファンクとは違う、どっぷりとしたファンクネスではなく、都会的でロックっぽい、ポップス性の高いジャズ・ファンク。ハープやヴァイブの起用が効果的で、単に泥臭いファンクにとどまらない、メロウで幻想的な空気感を生み出している。この辺りが、ポップでロックっぽく、後のフュージョンに繋がる雰囲気を生み出す「鍵」になっている。

ジーン・ベルトンシーニのワウワウ・ギターと、名手ゴードン・エドワーズのうねるフェンダー・ベースが、フォスターの激しいオルガン・プレイをガッチリと支えているところも聴き逃せない。計算された都会的なアレンジと、若きフォスターの熱くお洒落でクールなオルガン・プレイとが融合した緻密なアンサンブルが最大の特徴である。

このアルバムは、ブルーノートの4300番台のジャズ・ファンク盤の例に漏れず、発売当時、ジャズの伝統的な即興演奏が少ないことから、硬派なジャズ批評家からは「商業主義的」と冷遇された。しかし、1980年代末〜1990年代のレアグルーヴ・ブームやヒップホップのサンプリングカルチャーによって評価が激変し、アシッド・ジャズやレア・グルーヴの文脈でもカルト的な人気を誇るタイムレスな傑作となっている。
 
 

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2026年7月 2日 (木曜日)

再びマイルスのXmasセッション

レコード・コレクターズ・2026年7月号は「マイルス・デイヴィス・アルバム/名演ランキング」。1950年代のアコースティックな演奏から、ファンクやロックに接近したエレクトリック期、そして晩年に至るまでの長い活動期間に残されたアルバムと、それに含まれる名高い名演の数々をランキングしたもの。これに触発されて、僕の「マイルス盤のランキング」を記事にしてみようかと想った。

『Miles Davis And The Modern Jazz Giants』(写真左)。昨日ご紹介した「Bags' Groove (Take 1)」「Bags' Groove (Take 2)」の2曲と同じ、1954年12月24日の録音が、1曲目「The Man I Love (Take 2)」、2曲目「Swing Spring」、4曲目「Bemsha Swing」とラストの「The Man I Love (Take 1)」。以上この6曲が、いわゆる「マイルスのXmasセッション」である。

この『Miles Davis And The Modern Jazz Giants』の、3曲目の「'Round Midnight」だけが、1956年10月26日の録音。これは、かの有名なプレスティッジ・レーベルでの「マイルスのマラソンセッション」の音源からの1曲。なんでこんなところに収録したのか。これ、CBSからのリリースの同曲とアレンジはほぼ一緒。演奏レベルは少し落ちる。なぜここに収録したのか。謎である。

ということで、3曲目の「'Round Midnight」は省いて、残りのXmasセッションの4曲が聴きもの。「Bags' Groove (Take 1)」「Bags' Groove (Take 2)」の流れを汲む、マイルス・デイヴィスとミルト・ジャクソンの、珠玉の名セッションの記録である。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Milt Jackson (vib), Thelonious Monk (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。
 

Milesdavisandthemodernjazzgiants

 
僕はこのアルバムの1曲目「The Man I Love (Take 2)」の出だしのたっぷりエコーのかかった、ミルト・ジャクソンのどっぷり耽美的でリリカルで叙情的なヴァイヴと、マイルスの繊細でリリカル、クールでヒップなトラペットの前奏部分が大好き。そして、アドリブ部に入ってのミルトのヴァイヴとマイルスのトランペットのパフォーマンスは筆舌に尽くしがたい。この1曲だけでも、僕はこのアルバムをランキングの上位に持ってきたい。

今では作り話とされる「クリスマス・セッションでの喧嘩セッション」の証拠とされていた「The Man I Love (Take 2)」。この録音に入る前に、マイルスはモンクに、彼が作曲した「ベムシャ・スイング」以外は、自分の即興パートでのピアノのバッキングはやめてくれと言ったという。モンクはそれを忠実に守っただけ。そう解釈すると、この演奏は名演である。

モンク自身の作で、マイルスも気合を入れて吹いている「Bemsha Swing」も良い出来だし、話題に上がらない2曲目「Swing Spring」も、ミルトのヴァイブもマイルスのトランペットも、思いっ切りバップしていて、良い出来だと思う。「The Man I Love (Take 1)」も、Take 2には劣るが及第点。こうやって聴いていると、マイルスとミルトの相性は抜群に良い。

前にも書いたが、『Miles Davis And The Modern Jazz Giants』は、同一パーソネルの『Bags' Groove』のタイトル曲の2テイクと合わせて聴くと、このセッションが如何に優れた内容のセッションなのかが良く判る。但し、『Miles Davis And The Modern Jazz Giants』のど真ん中にいる「'Round Midnight」は必ず「除いて」、である(笑)。
 
 

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2026年7月 1日 (水曜日)

再び, マイルス『Bags’ Groove』

 

レコード・コレクターズ・2026年7月号は「マイルス・デイヴィス・アルバム/名演ランキング」。今年、生誕100年を迎えるマイルス。その偉大な功績を偲び、1950年代のアコースティックな演奏から、ファンクやロックに接近したエレクトリック期、そして晩年に至るまでの長い活動期間に残されたアルバムと、それに含まれる名高い名演の数々をランキング。その記事を読んでいて、僕の「マイルス盤のランキング」を記事にしてみようかと想った。

Miles Davls『Bags' Groove』(写真左)。プレスティッジ・レーベルお得意の2つのセッションの寄せ集め。しかも、この盤のリリースは1957年12月。なんと3年も録音以来「お蔵入り」。CBSに移籍して、人気ジャズマンとなったマイルス人気に完全に乗っかったリリースだろう。ちなみに録音日とパーソネルは以下の通り。

LPのA面は1954年12月24日の録音。「Bags' Groove" (Take 1)」「Bags' Groove" (Take 2)」の2曲のみ。どちらも収録時間10分前後と、ハードバップらしい、かなりのロングプレイである。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Milt Jackson (vib), Thelonious Monk (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。ミルトの参加していた、初代MJQ(Modern Jazz Quartet)のメンバーから、ピアノのジョン・ルイスをセロニアス・モンクに代えたもの。

LPのB面は1954年6月29日の録音。「Airegin」「Oleo」「But Not for Me (Take 2)」「Doxy」「But Not for Me (Take 1)」の5曲。それぞれの収録時間は4〜5分程度。ソニー・ロリンズ作の曲が3曲を占める。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Sonny Rollins (ts), Horace Silver (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。LPのA面のパーソネルから、ピアノがホレス・シルヴァーになっている。
 

Bags_groove_2

 
なにを隠そう、この『Bags' Groove』、ジャズを本格的に聴き始めて、マイルスに心底、感じ入って、永遠のアイドルになった、記念すべきアルバムなのだ。この盤では、やはりLPのA面を占めるタイトル曲「Bags' Groove」が白眉の出来。何回聴いても飽きがこない、ハードバップ時代の名曲名演の一つである。

「Bags' Groove" (Take 1)」「Bags' Groove" (Take 2)」の2テイクが続けて収録されているのだが、これが「ジャズは即興の音楽」、「二度と同じアドリブが演奏されることは無い」というジャズの定番評価が、しっかりと比較リスニング出来る。ジャズを本格的に聴き始めた時、この2曲を繰り返し繰り返し聴いた。これが何度、繰り返し聴き返しても飽きない。繰り返す度に新しい発見がある。マイルスも良い、バグスも良い、モンクも良い、ヒースも良い、クラークも良い、皆、良い。

LPのB面は、実は10" LP時代の『Miles Davis with Sonny Rollins』の収録曲を、そっくりそのまま持ってきたもの。「But Not for Me」のみ、未収録の別テイクを持ってきている。CBSに移籍して、人気ジャズマンとなったマイルス人気に完全に乗っかったリリースをするための「帳尻合わせ」。プレスティッジらしい仕業である(笑)。

しかし、僕が凄く感じ入ったのは、このA面のマイルスのトランペットと、バグス(ミルト・ジャクソンの渾名)のヴァイブとの共演に凄く感じ入った訳で、この「Bags' Groove" (Take 1)」「Bags' Groove" (Take 2)」の2テイクしかないのか、と思ったら、実は、他の演奏は、別のアルバム『Miles Davis and the Modern Jazz Giants』に収録されているのに、後日、気がついた。

とにかく、マイルスのトランペットと、バグスのヴァイブとの共演は絶品。気がついたすぐに『Miles Davis and the Modern Jazz Giants』の入手に走ったのは言うまでも無い。
 
 

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