ECM流のフュージョン・ジャズ
前々作、1975年2月の録音の『Clouds in My Head』では、北欧ジャズを基本としたクロスオーバー・ジャズ、若しくはジャズ・ロックをやった。1976年10月録音の前作『Shimri』では、典型的なECMサウンドの中での欧州的なモード・ジャズ、静的でリリカルでクールで透明度溢れるモード・ジャズをやってのけた、ノルウェー出身のベーシスト、アリルト・アンデルセン。このアルバムはECMでのリーダー作第3作目である。
The Arild Andersen Quartet『Green Shading into Blue』(写真左)。1978年4月の録音。ECMの1127番。ちなみにパーソネルは、Juhani Aaltonen (ts, ss, fl), Lars Jansson (p, moog-syn, string ensemble), Arild Andersen (b), Pål Thowsen (ds, perc)。純アコースティックな路線から一歩進み、「初期フュージョン〜アンビエント・ジャズ」への架け橋となった作品。
前作とガラッと変わって、ECMレーベルのサウンド色に見合った、北欧の「フュージョン・ジャズ」的な音作り。1970年代後半の米国フュージョンによくある「派手なシンセ・ソロ」では無い、ラルス・ヤンソンが奏でるミニ・モーグやストリング・アンサンブルによって、アコースティックな響きの中に、ほのかなエレクトロニクスの色彩が加わり、より浮遊感のあるモダンな仕上がりとなっている。
4曲目の「Radka's Samba」が象徴的。クールでありながら疾走感のあるリズムが特徴で、純ジャズ、メインストリーム・ジャズとは明らかに一線を画している。この曲は一言で言うと「ECM流のジャズ・サンバ」。この曲が持つ「思わず頭を振ってしまう(Head-bobbing)ようなダンサブルなビートが、どう聴いても、それまでのECMジャズとは雰囲気が異なる。ECM流の北欧フュージョン・ジャズと言っても良い演奏内容。
リーダーのアンデルセンの「地を這うベース」。ラルス・ヤンソンが操る「背景に溶け込む電子音」。ポール・トヴセンの「自然界のざわめきの様な」繊細なパーカッション。ユハニ・アールトネンの「スピリチュアルな咆哮と静寂」。この4人の個性が、ECM流のフュージョン・ジャズを奏でている。この聴き易く、エレクトリックなイージーリスニング志向の音作りは、当時流行した「フュージョン・ミュージック」と符号が一致する。
長らくオリジナルのLPは廃盤状態が続き、わが国では、CDリイシューもなされず、完全にマイナーな存在のアルバムである。今では、2010年に、本作を含む初期カルテットの3部作が『Green in Blue: Early Quartets』という3枚組CDボックスとしてECMから復刻され、サブスク・サイトからストリーミング聴取が可能となって、やっとその内容を確認することが出来るようになった。ECMの異色盤である。
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