ジャズ喫茶で流したい・321
ジャズを聴き始めた頃から、ディー・ディー・ブリッジウォーター(以降「ディーディー」)のボーカルがお気に入りである。圧倒的なスキャット能力と即興性、ドラマチックな表現力と声量、多彩なジャンルを内包するスタイル、圧倒的なエネルギーと迫力。伝統的なジャズの技術と圧倒的なエンターテインメント性を融合させたボーカルスタイルは、リアルタイムでずっと愛聴してきた。
Dee Dee Bridgewater and Bill Charlap『Elemental』(写真左)。2025年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Dee Dee Bridgewater (vo, produce), Bill Charlap (p)。現代の女性ジャズ・ボーカリストの重鎮、ディー・ディー・ブリッジウォーターと、現代のネオ・バップなピアニスト、ビル・チャーラップとのデュオ・コラボレーション盤。久し振りにディーディーの個性を聴いた。
2019年から始まった2人のライブ活動、とある。この盤は、2019年から始まった二人のデュオ・コラボレーションの集大成の様なアルバムなんだろう。ピアノだけを伴奏にジャズ・ボーカルを唄い上げる。これって、簡単そうに見えて、ボーカルからしてもピアノからしても、意外と難しいのだが、この二人は濃密な一体感、打てば響く共鳴感、お互いがお互いを高め合う相互な化学反応が、収録された音から醸し出されていて、思わず引き込まれる。
ディーディーのボーカルは相変わらず見事である。ディーディーのボーカルの個性が溢れんばかりに伝わってくる。「原曲のメロディ」に立ち返る、彼女ならではの円熟の表現。深みを増した「低音域」とダイナミクス。そして、伴奏がピアノだけというところから、人声を「打楽器や管楽器」に変える圧倒的な技術を聴かせてくれている。
そして、現代のネオ・バップなピアニスト、ビル・チャーラップの歌伴ピアノが絶品。チャーラップは明確なバップ・ピアノで、ディーディーの圧倒的なエネルギーと迫力のあるボーカルに相対し、ディーディーのボーカルをがっちりとサポートし、ガッツリと鼓舞する。彼女の熱くダイナミックなボーカルが、チャーラップの繊細で端正なバップ・ピアノと合わさることで、極上の緊張感と調和を生み出している。
ディーディーの感情と芸術性のすべてが剥き出しになった素晴らしい内容のアルバム。チャーラップの歌伴としてのバップ・ピアノの優秀性が露わになった素晴らしい内容のアルバム。「お互いが主役であり伴奏者である」という対等な対話、そして一瞬の隙もない緊張感と遊び心の共存。これ、近年のボーカルの優秀盤である。
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