69年のカウント・ベイシー楽団
1969年のカウント・ベイシー楽団の演奏である。ジャズ人気は曲がり角を迎え、演奏内容もフリー、スピリチュアル、クロスオーバー、そして、電気楽器での演奏が混ざって、混迷の度合いを深めつつある時代。そんな時代に、このアルバムは、ドイツのジャズ専門レーベルMPSレーベルの創設者ハンス・ゲオルク・ブルーナー=シュヴェアの強い要望により制作されたものとのこと。
Count Basie and His Orchestra『Basic Basie』(写真左)。1969年10月20日の録音。 MPSレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Count Basie (p), Oscar Brashear, Gene Coe, Sonny Cohn, Waymon Reed (tp), Frank Hooks, Grover Mitchell, Mel Wanzo (tb), Bill Hughes (b-tb), Marshal Royal, Bobby Plater (as), Eric Dixon, Eddie "Lockjaw" Davis (ts), Charlie Fowlkes (bs), Freddie Green (g), Norman Keenan (b), Harold Jones (ds), Chico O'Farrill (arr)。
このアルバムは、ベイシー楽団の黄金時代を支えたスタープレイヤーたちが去った後、新たな布陣で「ベイシー・スタイル」の真髄であるシンプルかつ強力なスウィングを追求した作品となっている。1曲が約2〜3分と短くまとめられた12曲のスタンダード・ナンバーで構成されており、無駄を削ぎ落とした「機能美」とも言えるアンサンブルが特徴で、とても聴き易く、親しみ易い内容となっている。
タイトルの通り、ベイシー・スタイルの「基本(Basic)」に立ち返り、装飾を排した純粋なスウィングを追求しているところが良い。ベイシー楽団初心者にも判り易く、ベイシー楽団の個性と特徴が良く理解出来る内容になっている。しかも、それまでは、ピアニストとして前面に出ることを控えていたベイシー本人が、通常よりも長くピアノ・ソロを披露しているところもこのアルバムの大きな特徴である。
演奏を追って聴いていて、やはり、アレンジが良いのだろう。アフロ・キューバン・ジャズの大家チコ・オファリルが、ベイシー独特の「間」と「スウィング感」を完璧に理解したアレンジを施していて、これがこのアルバムの成功につながっている。それと、ドラマーの交代が良い効果を生んでいる。 長年連れ添ったソニー・ペインに代わり、より正確で抑制の効いたドラマー、ハロルド・ジョーンズが加入したことで、バンドに新たな規律が生まれ、軽快さを備える様になっている。
4曲目「Red Roses for a Blue Lady」、続く「Moonglow」、8曲目の「Sweet Lorraine」、9曲目「Ain't Misbehavin'」、11曲目「As Long as I Live」などでベイシーのピアノが堪能できる。1950年代の黄金期(ニュー・ベイシー時代)と1970年代以降のパブロ・レーベル期を繋ぐ「円熟味を増した隠れた傑作」として評価出来る好盤である。
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