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2026年5月 7日 (木曜日)

アリスのスピリチュアルを見直す

アリス・コルトレーンが、インパルスからワーナー・ブラザース・レコードへ移籍した第一弾として1976年に発表した、スピリチュアル・ジャズの金字塔的作品である。オーケストラからトリオまで多彩な編成で、アリス・コルトレーン独自のスピリチュアル・ジャズを創出している。

Alice Coltrane『Eternity』(写真左)。邦題「永遠なる愛」。1975年8月13日〜10月15日の録音。ちなみにパーソネルは、核となるリズム・セクションは、Alice Coltrane (org, harp, el-p, tambura), Charlie Haden (b), Ben Riley (ds), Armando Peraza (congas)。主なゲストは、Hubert Laws (fl), Jerome Richardson(ss, alto-fl, Ernie Watts (english-horn), Oscar Brashear (tp), George Bohanon(tb)など。

演奏のアレンジが彼女独特なところがあって、スピリチュアル・ジャズとは言っても、精神性を楽器の吹き上げ、嘶きに託すような、一種、社会性を孕んだ、フリー・ジャズの延長線上のスピリチュアル・ジャズではなく、精神面を前面に押し出した、精神性を楽器それぞれの響きに託す、そんな一種、宗教性を孕んだ、限りなく自由度の高いモード・ジャズの延長線上にある、精神性の高いスピリチュアル・ジャズである。

振り返ってみると、アリスの様な精神性、宗教性の高いスピリチュアル・ジャズは、他に無かった様な気がする。

音の傾向からすると、ECMレコードの「ニュー・ジャズ」に親和性が高いが、アリスのスピリチュアル・ジャズは、ブラック・ミュージックの音要素が濃い。ECMのスピリチュアル・ジャズは、欧州のレーベルだけ合って、ブラック・ミュージックの音要素は皆無。音の裏に潜む宗教性についても、アリスはあくまで「米国」、ECMはあくまで「欧州」である。
 

Alice-coltraneeternity

 
このアルバムには、そんなアリス・コルトレーン印のスピリチュアル・ジャズの代表的演奏がギッシリ詰まっている。亡き夫ジョン・コルトレーンへの愛を捧げた作品とされ、ハープ、オルガン、さらにはインドの伝統楽器やストリングスを駆使した壮大なサウンドが特徴。ハープやオルガンを演奏するだけでなく、管弦楽団を含む大規模な編成を指揮した野心作で、アレンジも演奏もそのレベルは高く、アリスのスピリチュアル・ジャズの代表作の一枚と言って良いと思う。

印象的な曲としては、4曲目の「Om Supreme」では、6人の男女混声合唱団が加わり、ヒンドゥー教の聖歌(バジャン)をテーマにした幻想的なサウンドを創出、ラストの6曲目「Spring Rounds」は、ストラヴィンスキーの『春の祭典』を引用した曲で、大規模なブラス・セクションとストリングス(バイオリン、ヴィオラ、チェロなど計12名以上)が導入されていて、壮大なスピリチュアル・ジャズが展開されている。

本作が録音された1975年から1976年にかけて、アリスは生涯最大の転換期を迎えており、「俗世を離れ、ヒンドゥー教の修行者(スワミ)として生きる」という啓示のもと、宗教家として「出家」を果たしている。この宗教家としての「出家」が、今までのフリー・ジャズ的展開の中に潜んでいた「宗教性」が、より具体的で崇高な「祈り」の形として表出した結果が、このアルバムに色濃く反映されている様に思う。

今まで、どうも、ジョン・コルトレーンと演奏を共にしていた頃のスピリチュアル・ジャズの印象が、自分の頭の中に色濃く残っていて、今まで、アリスのスピリチュアル・ジャズはちょっと敬遠していたのだが、今回、このアルバムをひょんなことから聴いてみて、最初の印象が「これ、プログレッシヴ・ロックに近いやん」。

精神性、宗教性が色濃く、基本的にブラック・ミュージックとジャズに軸足をしっかり残してはいるが、基本的に統制の取れた、しっかりとコントロールされたスピリチュアル・ジャズだと思う。
 
 

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